説明

鉱物処理

供給原料を処理する処理方法を提供する。供給原料は、鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方から成る。当該処理方法では、反応ステップにおいて、鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方を、NH4F・xHFの一般式を有する酸性フッ化アンモニウムと反応させることで、反応生成物としてアンモニウムフルオロメタレート化合物を生成する、というやり方で供給原料を処理する。前記一般式において、1<x≦5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広くは鉱物処理に関する。より具体的に言えば、鉱物、および/または、鉱物に由来または関連する(associated)金属酸化物/金属ケイ酸塩を処理する鉱物処理の工程に関する。
【背景技術】
【0002】
天然鉱物から下流化学物質を製造するためには、あるいは、出発材料である鉱物から金属を得るためには、鉱物を可溶化しなければならない。また、そうして形成された可溶化中間生成物は、最終目的の用途に関して定められている規格(とりわけ、純度の規格)に適合するよう、純化しなければならない。例えば、核等級のジルコニウム金属は非常に厳しい純度規格に適合しなければならない。通常、核等級のジルコニウム金属の場合、熱中性子断面吸収見込みから、ハフニウム含入量が100ppm未満であることが求められる。同様の厳しい純度条件は、フッ化アルミン酸ガラス産業において、アルミニウム製造の前駆体として用いられるフッ化アルミニウムに適用され、更に、電子産業で用いられるタンタルとニオブとの化合物にも適用される。しかし、ジルコン、ボーキサイト、タンタライト、パイロクロール、イルメナイトといった鉱物が属する鉱物群は性質として、金属酸化物および金属ケイ酸塩を多く含むが、可溶化が困難なことで知られている。通常、こうした材料の可溶化を実現するには、濃酸中での長時間にわたる高温分解(digestion)、高温アルカリ溶解工程、あるいは、高温炭素塩素化工程が必要となる。このように、上記鉱物、並びに、それらに関連する元素の酸化物およびケイ酸塩は、特に不活性で可溶化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】露国特許第2 365 647号
【特許文献2】豪国特許第428758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、有用な中間生成物および最終生成物を得るために、各種の天然鉱物並びに、それらに関連する金属酸化物および金属ケイ酸塩に施される処理について、より容易な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方から成る供給原料を処理する処理方法であって、反応ステップにおいて、鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方を、NH4F・xHFの一般式を有する酸性フッ化アンモニウムと反応させることで、反応生成物としてアンモニウムフルオロメタレート化合物を生成する、というやり方で供給原料を処理し、前記一般式において、1<x≦5であること、を特徴とする処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
「金属酸化物/金属ケイ酸塩」は、金属酸化物、金属ケイ酸塩の一方または両方を意味する。
供給原料は、酸化ジルコニウム系鉱物(例:ジルコン)、および/または、酸化ジルコニウム系鉱物由来の金属酸化物/金属ケイ酸塩(例:酸化ジルコニウムおよび/または二酸化ケイ素)から成るものとする。また、供給材料は、これらの代わりに、「タンタライト、コロンバイト、パイロクロール、イルメナイト、ルチル、モナズ石、ボーキサイト、そして、これらのうち2以上のものの混合物」から選択した鉱物、および/または、こうした鉱物に由来する金属酸化物/金属ケイ酸塩から成るものとしてもよい。更に、供給原料は、鉱物(ここまでに開示したもの)に関連する異なる金属酸化物および/または金属ケイ酸塩の混合物から成るものとしてもよい。鉱物のタンタライトは、[(Fe,Mn)(Ta,Nb)26]という一般式を有する。一方、パイロクロールは、(Na,Ca)2Nb26(OH,F) という一般式で表される。ボーキサイトはアルミニウムおよびケイ素を含む鉱物であり、イルメナイトは鉄およびチタンを含む。ルチルはチタニアを含む。発明者は、これらの可溶化困難な供給原料材の全てについて、本発明に従って酸性フッ化アンモニウムで処理すると、アンモニウムフルオロメタレートを非常に形成しやすくなることを確認した。更に、後述するように、本発明の工程による処理で形成される金属フッ化物については、選択的に揮発させることで、分離および/または純化できるはずである。
【0007】
酸性フッ化アンモニウムは液体である。従って、本工程は湿方式であり、それは特に、化学量論的に過剰な量の酸性フッ化アンモニウムが通常用いられるからである。
供給原料は酸化ジルコニウム系であって、解離ジルコン(ZrO2・SiO2)またはDZとすることができる。反応処理は下記の反応式1.1に従って進行する。
ZrO2・SiO2 +NH4F・1.5HF →
(NH43ZrF7 +(NH42SiF6 + H2O .........1.1
上記反応式1.1においてx = 1.5(不平衡)であり、前記反応生成物として(NH43ZrF7および(NH42SiF6が生じる。
【0008】
その代わりに、供給原料を酸化ジルコニウムとし、脱ケイ酸処理した酸化ジルコニウム成分(ZrO2)を有する、少なくとも部分的に脱ケイ酸処理された解離ジルコンから成るものとしてもよい。脱ケイ酸処理した酸化ジルコニウム成分は下記の反応式1.2に従って反応する。
ZrO2 + NH4F・1.5HF→(NH43ZrF7 +H2O ...1.2
上記反応式1.2においてx = 1.5(不平衡)であり、前記反応生成物として(NH43ZrF7が生成される。
【0009】
供給原料は、部分的に脱ケイ酸処理した解離ジルコン、または、完全に脱ケイ酸処理した解離ジルコンから成る。当然のことであるが、解離ジルコンが部分的に脱ケイ酸処理されている場合は、反応生成物として、いくらかの(NH42SiF6も形成される。
よって、解離ジルコンも、部分的または完全に脱ケイ酸処理された解離ジルコンも、鉱物ジルコンに由来する金属酸化物である。
【0010】
使用時、解離ジルコンは、何らかの適当な工程(具体的には加熱工程)によって得られる。つまり、例えば、酸化条件、不活性条件または還元条件において、プラズマ炉またはプラズマ発生器の中で高温まで加熱することによってジルコン(ZrSiO4)の結晶マトリックスを破壊する、というやり方で解離ジルコンを得ることができる。ジルコンは、大量に入手可能で、コストも比較的低いが、化学的には不活性な鉱物である。つまり、本発明によれば、プラズマ解離を用いることで、不活性なジルコン鉱物も容易に化学処理できるものとなる。プラズマ解離において、ジルコンは解離されて酸化ジルコニウム(ZrO2)と二酸化ケイ素(SiO2)との2つの鉱物相に分かれ、生成物は一般に、解離ジルコン(「DZ」)、プラズマ解離ジルコン(「PDZ」)、またはZrO2・SiO2と称される。
【0011】
PDZについては、反応は約150℃を下回る温度(通常は約50℃から100℃の間(一例として、約55℃))で生じさせればよい。反応式(1.1)に従い、反応生成物として(NH43ZrF7および(NH42SiF6が形成される。反応時間は、使用される供給原料などによって決まる。PDZの場合、反応時間は、数秒(例えば、5〜10秒)から5分の間、通常は2分であり、解離ジルコンの粒子サイズやその他の反応条件に応じて変わる。他の供給原料、例えばイルメナイトの場合、反応時間は大幅に長くなり、100分以上(例えば、100分から250分の間)になる可能性もある。
【0012】
上に示したのと同様の反応条件は、他の極端に不活性の鉱物(例えば、上述の鉱物や、これら鉱物に由来または関連した極端に不活性の金属酸化物または金属ケイ酸塩)の処理にも適用される。例えば、タンタル酸化物(鉱物のタンタライト内で自然に生じる金属酸化物)は、下記の反応式1.3(x = 2.5)に従って、酸性フッ化アンモニウムでフッ化処理することができる:
Ta25 + 4NH4F・2.5HF →
2(NH42TaF7 + 5H2O ............ 1.3
上に示す通り、(NH42TaF7が反応生成物として生じる。
【0013】
別の例として、イルメナイト(FeTiO3)は酸性フッ化アンモニウムでフッ化処理することができる。これは下記の反応式1.4(x = 2)による:
FeTiO3 + 3NH4F・2HF →
(NH42TiF6 + FeF2 + 3H2O + NH4F ......... 1.4
本工程には、熱処理によってアンモニウムフルオロメタレート化合物反応生成物を熱分解して無水フッ化物(例:ZrF4、AlF3、TaF5、NbF5、TiF4等)を形成する、という処理を含ませることもできる。こうした無水フッ化物からは所望の生成物を生成することができる。
【0014】
アンモニウムフルオロメタレートの熱分解は、約300℃超の温度(通常は約450℃)で、下記の反応式(2)に従って生じる。
(NH43ZrF7→ZrF4 + NH3 + HF (2.1)
(NH43AlF6→AlF3 + NH3 + HF (2.2)
(NH42TaF7→TaF5 + NH3 + HF (2.3)
(NH42TiF6→TiF4 + NH3 + HF (2.4)
そうして、熱処理ステップでは、アンモニウムフルオロメタレートが、対応するフッ化物とNH4Fとに熱分解される。そして、NH4Fからは、更なる分解生成物としてアンモニア(NH3)およびフッ化水素(HF)が放出される。分解中に放出されるNH3およびHFの蒸気は、再びお互いと反応して、例えば冷却器トラップにおいて、フッ化アンモニウムを形成する。
【0015】
ケイ素がジルコンの場合(すなわち式1.1の場合)のように鉱物マトリックスに存在する場合、工程には第1熱処理ステップが含まれる。当該第1熱処理ステップは反応ステップより後、上述した熱分解より前に行われる。熱分解については、第2熱処理ステップを構成することになる。第1熱処理ステップでは、約250〜300℃の温度(通常は約280℃の温度)で、下記の反応式(3)に従って、ケイ素化合物(例えば(NH42SiF6)が揮発させられる。
【0016】
(NH42SiF6(s)→(NH42SiF6(g) (3)
本工程は、反応性のHFやNH3といった気体成分の損失を防ぐために、特に密閉型反応器において実行することにしてもよい。反応器は通常、隣接する3つの異なる温度区域を有する構成とする。そして、反応ステップ、第1熱処理ステップ、第2熱処理ステップをそれぞれ、3つの温度区域のいずれかで実行し、材料を1つの区域から次の区域へと順番に送っていく。反応ステップは第1の比較的低温の温度区域で実行し、第1熱処理ステップは第1の温度区域よりも高温である第2の温度区域で実行し、第2の熱処理ステップは、第2の温度区域に隣接し、第2の温度区域よりも高温である第3の温度区域において実行する。反応器は回転窯とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による鉱物処理の工程を示す概略フローである。
【図2】実施例1について、様々に異なる温度でPDZをNH4F・1.5HFと反応させた場合の変換率を、時間を横軸にして示すグラフである。
【図3】実施例2について、酸性フッ化アンモニウム(AAF、56℃)と二フッ化アンモニウム(ABF、148℃)とのPDZに対するフッ化能力を比較するグラフであり、変換率を縦軸に、時間を横軸にして示すグラフである。
【図4】実施例3について、NH4F・1.5HFおよびNH4F.2HFをそれぞれイルメナイトと反応させた場合の変換率を、時間を横軸にして示すグラフである。
【図5】NH4F・1.5HFとイルメナイトとの反応に対する熱の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、添付図面を参照しながら、非限定的な例を挙げて説明する。
図1において、供給材料はジルコン酸化物/ジルコンケイ酸塩(すなわち、プラズマ解離ジルコン「PDZ」)の形を取り、これは鉱物ジルコンに由来するものである。PDZは、反応式(1.1)に従って、NH4F・1.5HFで処理される。
図1において、参照番号10はPDZ処理の工程全体を指している。
【0019】
工程10の上流には、プラズマ解離ステージ12が設けられている。ジルコン(ZrSiO4)供給ライン14がプラズマ解離ステージ12に通じている。そして、PDZ移動ライン16が、プラズマ解離ステージ12から反応ステップ(反応ステージ)18に通じており、これは工程10の一部を形成している。また、酸性フッ化アンモニウム(NH4F・1.5HF)供給ライン20も、反応ステージ18に通じている。そして、反応生成物移動ライン22が、反応ステージ18から第1熱処理ステップ(第1熱処理ステージ)24に通じている。また、第1熱ステージ揮発性生成物回収ライン25が、第1熱処理ステージ24から、外部のガス処理(またはガス回収)手段(図示せず)に通じているが、これは必須ではない。そして、第1熱ステージ生成物移動ライン26が、第1熱処理ステージ24から第2熱処理ステップ(第2熱処理ステージ)28に通じている。第2熱処理ステージ28からは第2熱ステージ生成物ライン30が出ている。そして、第2熱処理ステップ揮発性生成物回収ライン29が、第2熱処理ステージ28から外部のガス処理(またはガス回収)手段(図示せず)に通じているが、これは必須ではない。
【0020】
使用時、ZrSiO4は、ジルコン供給ライン14に沿ってプラズマ解離ステージ12に供給される。プラズマ解離ステージ12では、プラズマ解離によって、ジルコンがPDZに解離される。PDZは、PDZ移動ライン16に沿って反応ステージ18に進む。
PDZに加えてNH4F・1.5HFが、酸性フッ化アンモニウム供給ライン20に沿って、反応ステージ18に供給される。反応ステージ18において、PDZとNH4F・1.5HFとは、約55℃の温度で、反応式(1.1)に従って反応する。反応時間は通常、約2分間である。そして、(NH43ZrF7および(NH42SiF6が、反応生成物として形成され、反応生成物移動ライン22に沿って第1熱処理ステージ24に移動する。
【0021】
第1熱処理ステージ24では、約280℃の温度で、約5分間の反応時間の間、(NH43ZrF7および(NH42SiF6に熱処理を施し、これによって、(NH42SiF6は反応式(3)に従って揮発する。揮発性の(NH42SiF6は、第1熱ステージ揮発性生成物回収ライン25を通して第1熱処理ステージ24から回収される。残余物の(NH43ZrF7は、第1熱ステージ生成物移動ライン26に沿って第2熱処理ステージ28に進む。
【0022】
第2熱処理ステージ28では、約450℃の温度で、約10分間の反応時間の間、(NH43ZrF7に熱処理を施し、これによって、(NH43ZrF7は反応式(2.1)に従ってZrF4に分解される。ZrF4は第2熱ステージ生成物ライン30に沿って回収される。第2熱処理ステージ28では更に、気体のHFおよびNH3が生成されるが、それらは第2熱処理ステップ揮発性生成物回収ライン29を通して第2熱処理ステージ28から回収される。
【0023】
反応ステージ18、第1熱処理ステージ24、第2熱処理ステージ28は通常、3つの異なる温度区域を備える回転窯(図示せず)によって実現されている。各々の区域がステージ18、24、28のいずれか1に当たる。言うまでもないことであるが、移動ライン22、26はそれぞれ、窯の内部で、反応生成物および(NH43ZrFが1つの温度区域から次の温度区域に移動することを表している。
【0024】
以下に示す実施例において、「変換率」または「変換効率」は、揮発性生成物の形で工程の間に失われる供給材料の割合を意味する。例えば、下記のように百分率で表される。
【0025】
【数1】

【0026】
実施例1
実験室規模で、工程10の反応ステップ(反応ステージ)18の実験を行った。出発物質であるPDZ(約94%まで解離させたもの)を、化学量論的な必要量を上回る量のNH4F・1.5HFと反応させ、確実にPDZの最大変換を実現した。すなわち、1gのPDZにつき10gのNH4F・1.5HFを使用した。
【0027】
1回目では、NH4F・1.5HF(室温の懸濁液)をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の反応容器または反応用坩堝に入れ、水槽の中で56℃の温度まで予備加熱した。その後、反応容器を水槽から取り出し、正確に重量を量ったPDZを液体のNH4F・1.5HFに加えた。そして、56℃の温度で8分間の反応時間の間、反応容器を注意深く揺らした。
【0028】
反応時間経過後、ホウ酸溶液を加えて反応を停止させた。それから、溶液を濾過し、PDZから(NH43ZrF7および(NH42SiF6への変換率を求めた。
約5分間の反応時間で本質的に完全な変換が実現され、PDZ出発物質のうち約6%の非解離ジルコン部分だけが残されたことが分かった(図2)。これは、全ての反応生成物および余剰NH4F・1.5HFが水溶性だからである。
【0029】
反応ステップ18を更に3回、それぞれ61℃、71℃、81℃の反応温度で繰り返した(図2)。結果は類似しており、対応する形で約2分まで反応時間が短くなった。
実施例2
反応ステップ(または反応ステージ)18における、酸性フッ化アンモニウム(AAFまたはNH4F・xHF)のPDZに対するフッ化能力を、二フッ化アンモニウム(ABFまたはNH4F・HF)のフッ化能力と比較したところ、酸性フッ化アンモニウムの反応性の方が大幅に高いことが、明らかに見てとれる(図3)。
実施例3
イルメナイト(FeTiO3)を酸性フッ化アンモニウムに溶かすことで、水溶性の(NH42TiF6と未知の組成の不溶性残留物とが生じる。
【0030】
図4は、イルメナイトとNH4F・xHF(x=1.5、2)との、90℃の反応温度における反応の変換効率を示している。イルメナイトとの反応は、PDZとの反応の場合に比べて、非常に時間がかかることが分かった。これは、イルメナイトのような天然鉱物に比べて、プラズマ解離しているPDZは、すでに化学処理を施し易くなっているからである。
【0031】
図5は、イルメナイトとNH4F・1.5HFとの反応効率に対する、反応温度の正の影響を示している。つまり、反応を生じさせる温度が高いほど、反応速度が向上することが期待できる。これは、標準的な実験によって最適化できるかもしれない。
このように、出願者が確認したところでは、本発明による方法では、予想以上に早く、コスト効率に優れた形で、天然鉱物(特に解離型ジルコン、タンタライト、パイロクロール、イルメナイト、ボーキサイト等、ただし、これらに限定はされない)から、有用な生成物(更に処理することで最終生成物として関連金属および/または関連金属酸化物を得ることのできる生成物)を得ることができる。
【0032】
本発明は更に、天然鉱物の無水ルートの選鉱を実現し、それによって、無水フッ化物を製造することができる。例えば、ZrF4は、数多くの用途において、含水(hydrous)ZrF4・H2Oよりも好適な前駆体である。含水ZrF4・H2Oは、従来のやり方のように、含水の可溶化ルート(hydrous solubilization route)を用いて上記のような材料を処理する際に形成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方から成る供給原料を処理する処理方法であって、
反応ステップにおいて、鉱物と、当該鉱物に由来または関連する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方を、NH4F・xHFの一般式を有する酸性フッ化アンモニウムと反応させることで、反応生成物としてアンモニウムフルオロメタレート化合物を生成する、というやり方で供給原料を処理し、
前記一般式において、1<x≦5であること、
を特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記供給原料は、酸化ジルコニウム系鉱物と、酸化ジルコニウム系鉱物に由来する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方であること、
を特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記供給原料は、タンタライト、コロンバイト、パイロクロール、イルメナイト、ルチル、モナズ石、ボーキサイト、そして、これらの2以上の混合物の中から選択された鉱物と、当該鉱物に由来する金属酸化物または金属ケイ酸塩との両方または一方から成ること、
を特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記供給原料は、鉱物に関連した異なる金属酸化物および異なる金属ケイ酸塩の両方または一方の混合物から成ること、
を特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項5】
前記供給原料は解離ジルコン(ZrO2・SiO2)から成り、反応処理は下記の反応式1.1に従って進行し、反応式1.1とは、
ZrO2・SiO2 +NH4F・1.5HF →
(NH43ZrF7 +(NH42SiF6 + H2
であり、上記反応式1.1においてx = 1.5であり、前記反応生成物として(NH43ZrF7および(NH42SiF6が生じること、
を特徴とする請求項2に記載の処理方法。
【請求項6】
前記供給原料は、脱ケイ酸処理した酸化ジルコニウム成分(ZrO2)を有する、少なくとも部分的に脱ケイ酸処理された解離ジルコンから成り、脱ケイ酸処理した酸化ジルコニウム成分は下記の反応式1.2に従って反応し、反応式1.2とは
ZrO2 + NH4F・1.5HF→(NH43ZrF7 +H2
であり、上記反応式1.2においてx = 1.5であり、前記反応生成物として(NH43ZrF7が生成されること、
を特徴とする請求項2に記載の処理方法。
【請求項7】
約150℃を下回る温度で反応を生じさせること、
を特徴とする請求項6に記載の処理方法。
【請求項8】
反応が実行される反応時間は、数秒間から5分間の間であること、
を特徴とする請求項6または7に記載の処理方法。
【請求項9】
前記供給原料は、下記の反応式1.3に従って酸性フッ化アンモニウムでフッ化処理されたタンタル酸化物から成り、反応式1.3とは
Ta25 + 4NH4F・2.5HF → 2(NH42TaF7 + 5H2
であり、上記反応式1.3においてx = 2.5であり、前記反応生成物として2(NH42TaF7が生成されること、
を特徴とする請求項3に記載の処理方法。
【請求項10】
前記供給原料は、下記の反応式1.4に従って酸性フッ化アンモニウムでフッ化処理されたイルメナイトから成り、反応式1.4とは、
FeTiO3 + 3NH4F・2HF →
(NH42TiF6 + FeF2 + 3H2O + NH4
であり、上記反応式1.4においてx = 2であること、
を特徴とする請求項3に記載の処理方法。
【請求項11】
前記アンモニウムフルオロメタレート化合物反応生成物を熱処理して熱分解させ、それによって無水フッ化物を形成する処理を含むこと、
を特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項12】
前記アンモニウムフルオロメタレート化合物の熱処理が約300℃を上回る温度で実行され、前記アンモニウムフルオロメタレート化合物は対応するフッ化物とNH4Fとに熱分解され、当該NH4Fからは、アンモニアとNH3とフッ化水素(HF)とが更なる分解生成物として放出されること、
を特徴とする請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
気体成分の損失を防ぐために密閉反応器内で実行されること、
を特徴とする請求項12に記載の処理方法。
【請求項14】
前記反応器が回転窯であること、
を特徴とする請求項13に記載の処理方法。
【請求項15】
約150℃を下回る温度で反応を生じさせること、
を特徴とする請求項5に記載の処理方法。
【請求項16】
反応が実行される反応時間は、5秒間から5分間の間であること、
を特徴とする請求項5または15に記載の処理方法。
【請求項17】
前記アンモニウムフルオロメタレート化合物反応生成物を熱処理して熱分解させ、それによって無水フッ化物を形成する処理を含むこと、
を特徴とする請求項5、15、16のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項18】
前記アンモニウムフルオロメタレート化合物の熱処理が約300℃を上回る温度で実行され、前記アンモニウムフルオロメタレート化合物は対応するフッ化物とNH4Fとに熱分解され、当該NH4Fからは、アンモニアとNH3とフッ化水素(HF)とが更なる分解生成物として放出されること、
を特徴とする請求項17に記載の処理方法。
【請求項19】
前記熱処理には、前記反応ステップに続く第1熱処理ステップが含まれ、当該第1熱処理ステップの後には、第2熱処理ステップを構成する前記アンモニウムフルオロメタレート化合物の熱分解処理が行われること、
を特徴とする請求項17または18に記載の処理方法。
【請求項20】
前記第1熱処理ステップは、約250℃から約300℃の間の温度で下記の反応式3に従って(NH42SiF6を揮発させる処理から成り、反応式3とは、
(NH42SiF6(s)→(NH42SiF6(g)
であること、
を特徴とする請求項19に記載の処理方法。
【請求項21】
気体成分の損失を防ぐために密閉反応器内で実行されること、
を特徴とする請求項19または20に記載の処理方法。
【請求項22】
前記反応器は、隣接する3つの異なる温度区域を有し、前記反応ステップ、前記第1熱処理ステップ、前記第2熱処理ステップはそれぞれ、いずれか1つの温度区域で実行され、前記反応生成物は1つの温度区域から次の温度区域へと順番に送られ、前記反応ステップは比較的低温の第1の温度区域で実行され、前記第1熱処理ステップは当該第1の温度区域よりも高温である第2の温度区域で実行され、前記第2の熱処理ステップは、当該第2の温度区域に隣接し、当該第2の温度区域よりも高温である第3の温度区域において実行されること、
を特徴とする請求項21に記載の処理方法。
【請求項23】
前記反応器が回転窯であること、
を特徴とする請求項21または22に記載の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504690(P2013−504690A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528492(P2012−528492)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054067
【国際公開番号】WO2011/030301
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(508160923)ザ サウス アフリカン ニュークリア エナジー コーポレーション リミテッド (4)
【Fターム(参考)】