説明

銀系化合物含有ハウスダスト処理剤

【課題】ハウスダスト中のアレルゲンを、少量使用した場合にも有効に不活性化させることのできるハウスダスト処理剤、該処理剤から構成されるハウスダスト処理用物品及びハウスダスト処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】1種以上の銀系化合物を含有することを特徴とするハウスダスト処理剤を提供する。本発明はまた、上記ハウスダスト処理剤と繊維から構成されるハウスダスト処理用物品を提供する。本発明はまた、上記ハウスダスト処理剤を、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用して該ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化させる工程を含む、ハウスダスト処理方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウスダストによって起こるアレルギー、アトピー性疾患、喘息などの予防技術に関し、特に、ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化(低減化)させるハウスダスト処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気密化等の住宅環境変化によるハウスダストの増加が問題となっている。ハウスダストは1mm以下の微細塵としてアレルゲン物質を含み、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息等のアレルギー性疾患の原因とされている。厚生労働省の「2003年保健福祉動向調査」では国民の3人に1人がアレルギー疾患のような症状があり、アレルギー性疾患対策への要望は高いものとなっている。ハウスダストにはヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)、コナヒョウヒダニ(D.farinae)等のチリダニの糞や死骸の破片から由来するアレルゲン、クラドスポリウム(クロカビ)やアスペルギルス(コウジカビ)等のカビ由来のアレルゲン、ゴキブリ、チャタテムシ等の糞や死骸の破片から由来するアレルゲン、犬、猫のフケ、肛門の分泌物、唾液、尿に由来されるアレルゲン等、1μm〜100μm程度の特に微細なアレルゲン物質が含まれている。ハウスダストは、カーペット、寝具等の繊維物質に多く存在し、カーペット上の歩行や掃除、布団の上げ下ろし等の日常生活により、室内空気中に浮遊したり、落下する。フローリング等の床にも存在していることが明らかになっている。
ハウスダスト対策としては、日常の掃除機がけを頻繁に行い、さらに1平方メートル当り20秒以上の掃除機かけで丁寧にハウスダストを取り除く等が、厚生労働省、東京都等から推奨されているが、家事等に負われている主婦にとっては面倒なものとなっている。
【0003】
これまでに、エタノール等の水との共沸温度が100℃未満の有機化合物と水とを含む液状成分中に、その溶液の乾燥後に固体を生成してアレルゲンを担持する固体源物質を含有する組成物、及び該組成物を対象物に噴霧又は塗布し、ハウスダスト中のアレルゲンを乾燥後の析出物に包含させることにより、掃除機等によって効率よく除去する方法が開示されているが(特許文献1〜4)、掃除前に噴霧するのが面倒くさい、噴霧した後乾くまで待っていなくてはならない等の不便さがある。
また、ハウスダスト中のアレルゲンを低減化及び不活化(不活性化)する方法及び抗アレルゲン剤等も提案されている。アレルゲン低減化剤としては、特許文献5にセスキテルペンアルコール、特許文献6に硫酸アルミニウム、特許文献7に芳香族ヒドロキシ化合物等が開示されている。アレルゲン不活化剤としては、特許文献8及び9にモクセイ科オリーブ属またはイボダノキ属の植物及びザクロの葉の抽出物が夫々開示されている。特許文献10にPVA、水膨潤性粘土鉱物、植物抽出物、特許文献11にアンモニウム又はアミン基を有する高分子、特許文献12〜15にカルシウム塩、ストロンチウム塩、希土類金属塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩が開示されている。抗アレルゲン剤として特許文献16にタンニン酸が開示されている。しかしながら、アレルゲンの低減化又は不活化(不活性化)するには効果が不充分であり、多くの有効成分量を必要とするので、被洗物の変色や風合いの劣化等に問題を生じ好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−336100号公報
【特許文献2】特開2003−336099号公報
【特許文献3】特開2003−334504号公報
【特許文献4】特開2003−334237号公報
【特許文献5】特開2003−238394号公報
【特許文献6】特開2003−334240号公報
【特許文献7】特開2003−81727号公報
【特許文献8】特開2003−55122号公報
【特許文献9】特開2003−370996号公報
【特許文献10】特開2002−128680号公報
【特許文献11】特開2001−354573号公報
【特許文献12】特開2001−328936号公報
【特許文献13】特開2001−322937号公報
【特許文献14】特開2001−247467号公報
【特許文献15】特開2001−139479号公報
【特許文献16】特開昭61−44821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解決しようとするものであり、有効成分が少量であり、かつ処理剤の使用量が少量であっても、ハウスダスト中のアレルゲンを有効に不活性化(低減化)させることのできるハウスダスト処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銀系化合物を含有するハウスダスト処理剤を用いることで、ハウスダスト中のアレルゲンを効果的に不活性化することを見出すと共に、ハウスダストに含まれるダニ、花粉、カビ、ペット等から由来するアレルゲン全てに著しい効果を発揮されることを見出すことにより、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は1種以上の銀系化合物を含有することを特徴とするハウスダスト処理剤を提供する。
本発明はまた、上記ハウスダスト処理剤と繊維から構成されるハウスダスト処理用物品を提供する。
本発明はまた、上記ハウスダスト処理剤を、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用して該ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化させる工程を含む、ハウスダスト処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有効成分量が極く少量であり、且つ処理剤の使用量が少量であっても、ハウスダスト中に存在するアレルゲンを効果的に不活性化することができる。本発明によればまた、本発明のハウスダスト処理剤を適用した物品の変色や風合いを損なうことが少なく、物品表面上の残存感が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<銀系化合物>
本発明のハウスダスト処理剤は、ハウスダスト中のアレルゲンを不活性化するため、銀系化合物を含有する。
本発明に使用できる銀系化合物は、一般的に銀系抗菌剤として使用されているものであれば、広く使用することができる。
銀化合物としては、酸化銀、フィチン酸等との銀錯体、及び硝酸銀やN-ステアリル-L-グルタミン酸銀等の銀塩が好ましいものとしてあげられる。このうち、特に酸化銀、銀錯体が好ましい。
このような銀系化合物としては商業的に入手可能なものを使用することができる。例えば、ATOMYBALL-S、ATOMYBALL-L、ATOMYBALL-UAの商品名で触媒化成工業(株)から販売されているもの、バスシルビー、ルナシルビーの商品名で近畿パイプ技研(株)から販売されているものを使用することができる。
特に、酸化銀については、性能向上助剤として担体に担持された形で構成され、担体としては、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)、粘土鉱物、シリカゲル等のケイ酸塩、リン酸ジリコニウム、リン酸カルシウム等のリン酸塩類、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジリコニウム等の酸化物、溶解性ガラス、活性炭、金属担体、有機金属等などがあげられる。このうち、特に、酸化物が好ましい。
【0009】
また、酸化物に担持された酸化銀をコロイド分散液として使用する場合、そのコロイド粒子の平均粒子径が、1〜500nmであることが好ましく、1〜100nmであることがより好ましい。銀系化合物の平均粒子径がこのような範囲内にあると、粒子が安定な分散状態で存在することが可能で、また、粒子径が小さいのでアレルゲンとの接触の観点からも有利に働く。なお、本発明において、平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA-700)により測定することができる。
銀系化合物の配合量は、銀元素濃度に換算して、好ましくは0.001ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上であって、好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。このように、本発明のハウスダスト処理剤は、有効成分量が極少量で所望の効果を発揮することができる。0.001ppm以上であればアレルゲンを十分に不活化できる。100ppmより配合量が高くなると、高温(例えば50℃)、日光暴露等の条件下で保存した場合に液変色や被洗物に適応した場合の材質変色が発生することがある。
本発明のハウスダスト処理剤のpHは、4〜10であるのが好ましく、7〜9であるのがより好ましい。処理剤のpHがこのような範囲内にあると、銀系化合物の分散安定性が良好であるので好ましい。
【0010】
本発明のハウスダスト処理剤には、液安定性、被洗物への浸透性、スプレーの使用性等を向上させる観点から、任意成分として界面活性剤、溶剤、香料、pH調整剤、防腐剤等を配合することができる。
<界面活性剤>
界面活性剤の具体例としては陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して適宜使用することができる。
(1)陰イオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノキシフェニルジスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフインスルホン酸塩、脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられ、これらの対イオンとしての陽イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルカノールアミンイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
(2)両性界面活性剤としては、ベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
(3)非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルジメチルアミンオキシド、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0011】
<溶剤>
溶剤としては特に限定されるものではないが、低級アルコールまたは下記一般式(I)で表されるグリコール化合物が好ましい。
RO{(C24O)m(C36O)n}H (I)
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはベンゼン環を示す。m及びnは各々0〜3の数字であって、両者が同時に0になることはなく、{ }内はm及びnが0より大きいときに、オキシエチレン基とオキシプロピレン基がランダム状及び/またはブロック状に結合しているポリオキシアルキレン鎖である。)
低級アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールを含有できる。この中でも好ましくはエタノールが好適であり、エタノールは発酵、合成のエタノールが用いられる。また、変性アルコールを用いても良い。変性アルコールにはメタノール変性、ベンゾール変性、トリオール変性、メチルエチルケトン変性、安息香酸デナトニウム変性、香料変性等の一般変性アルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、クロロホルム、炭酸ジエチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン、工業用エチルエーテル、ゲラニオール、8アセチル化ショ糖、フェニルエチルエーテル、ジエチルフタレート、ブルシン、リナリールアセテート、フレーバーH-No.4、フレーバーH-No.6、フレーバーH-No.9、フレーバーH-No.11、フレーバーH-No.1、フレーバーH-No.3、フレーバーH-No.10、フレーバーH-No.12、フレーバーH-No.13、フレーバーT-No.100、フレーバーT-No.101、フレーバーT-No.102、フレーバーT-No.103、フレーバーT-No.107、フレーバーS-No.201、ヘキサン、リナロール、アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液、酢酸ビニル単量体、ヘプタン、イソプロピルアルコール、ブタノール変性等の選択変性アルコール、アクリル酸エチル、ベンジルアセテート、メタノール/10%安息香酸デナトニウムアルコール溶液、フレーバーH-No.14、種酢及び水(酸量10%以上、アルコール分15%以下)、高酸度醸造酢(酸量10%以上)、フレーバーT-No.3、フレーバーT-No.4、フレーバーH-No.2、フレーバーT-No.104、フレーバーT-No.105、フレーバーT-No.106、メタノール/ホルマリン/ローダミンB、メチルエチルケトン/8アセチル化ショ糖/イソプロピルアルコール、パラオキシ安息香酸ブチル、白ラックまたは精製セラックまたはセラック等の特別変性アルコールが挙げられる。
【0012】
上記一般式(I)で表せられる化合物の具体例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル等を挙げることができる。
これらの溶剤は、単独で用いても、また2種以上併用して用いても良い。
【0013】
<香料>
香料成分としては特に限定されるものではないが、具体的には、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料及び植物からの天然香料を挙げることができる。さらに、植物精油としてペパーミント抽出液、チャ抽出液、甜茶抽出液、トウガラシチンキ、セイジエキス、サルビア抽出液、オウバク抽出液、チョウジ抽出液、ワイルドタイム抽出液、ローズマリーエキス、ローズマリー油、ジュウヤク抽出液、サンザシ抽出液、シコンエキス、サンショウ抽出液、サボンソウ抽出液、クジン抽出液、ジュ抽出液、ユズ抽出液、ヒキオコシエキス、エンメイソウ、ローヤルゼリー抽出液、レモン抽出液、レモン油、グレープフルーツ抽出液、グレープフルーツ油、ライム果汁、マジョラム抽出液、ユーカリ抽出液を挙げることができる。配合量は、これらの中の1種または2種以上の成分を組み合わせ、組成中に0.005重量%〜0.3重量%が最適である。
【0014】
<液安定化剤>
液安定化剤として、pH調整剤を配合することできる。pH調整剤としては特に限定されるものではないが、アルカリ、酸等を適宜配合することができる。アルカリとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属炭酸塩やアンモニア、アミン等水溶液で塩基性を示すものであれば特に限定されることはない。酸としては、有機酸や無機酸があげられ、無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、メタ珪酸などをあげることができる。
【0015】
<防腐剤等>
本発明に用いることのできる防腐剤としては限定されるものではないが、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソンブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等の安息香酸系防腐剤類、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸系防腐剤類、デヒドロ酢酸類、プロピオン酸類、ジフェニル、オルトフェニルフェノール及びナトリウム等のジフェニル類、チアベンゾール、イマザリル等が挙げられる。
その他、抗菌剤、殺菌剤、除菌剤、住居用洗剤などの洗浄剤組成物、紫外線吸収剤、着色剤、増粘剤、酸化防止剤等を配合することができる。尚、これらの任意成分に用いられる化合物は、通常使用されるものであればどの様なものでも良く、特に限定されるものではない。
【0016】
増粘剤は鉱物性、植物性、海藻類等の天然高分子、ビニル系高分子が挙げられ、植物性増粘剤としてはキサンタンガム、セルロース系高分子等が挙げられ、海藻類増粘剤としてはアルギニン酸等が挙げられる。ビニル系高分子としては親水性基を有するビニル化合物が挙げられ、親水基を有するビニル化合物はイオン性基または非イオン性基を有するビニル化合物が挙げられる。イオン性基としてアニオン性基を有するビニル化合物はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリロイルアミノ2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられ、カチオン性基を有するビニル化合物としてはメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド、メタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。また、非イオン性を有するビニル化合物としてはアクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の三級アミンを有する親水性ビニル化合物が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明のハウスダスト処理剤に、銀系化合物に加え、ハウスダスト中のアレルゲンを不活性化する剤及び/又は除去する剤を配合してもよい。例えば、ヒドロキシ安息香酸、重合度が200〜30000のポリビニルアルコール、天然または合成スメクタイト粘土、ベントナイト、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどの水膨潤性粘土鉱物、植物精油をあげることができる。
【0018】
本発明の処理剤の好ましい配合例としては、銀系化合物として、酸化銀を酸化チタンに担持させた平均粒径5nmの銀系化合物を、銀元素濃度換算で、組成物の全量に対して0.5ppm以上、及び溶剤としてエタノールを含有するものがあげられる。
本発明の処理剤は、各成分を所定量量りとり、攪拌混合することにより調製することができる。
本発明の処理剤は、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用することにより使用することができる。適用方法としては、噴霧、塗布等があげられる。噴霧する場合、本発明の処理剤を、トリガー型スプレー容器、ディスペンサー式スプレー容器または噴射剤と共に充填されるエアゾール容器、詰め替え可能な蓄圧式エアゾール容器などの噴射容器に充填し、室内の空中又は、カーペット、絨毯、フローリング、ビニル床、クッションフロア、畳等の床対象物、カーテン、ソファ−、クッション、ぬいぐるみ等の繊維製品、布団、毛布、枕等の寝具、フラスチック製、金属製、ガラス製等の家具や電化製品の表面に直接噴霧することができる。また、その後布部材、紙部材、不織布などの拭き取り部材による拭き取る操作を行うことも可能である。また、
シート状の不織布などに本発明の処理剤をあらかじめ含浸させ、ウェットティッシュの様な形状で使用することも可能である。その際、シートは水に流せる水解性タイプであっても、非水解性タイプであってもよい。
【0019】
本発明のハウスダスト処理剤はまた、不織布、織布や、衣料、カーペット、絨毯等の繊維製品に含浸、塗布又は吸着させることによりハウスダスト処理剤物品を製造することが出来る。また、合繊の製造段階で本発明のハウスダスト処理剤を混ぜ込んで製造した原糸を使用して繊維製品を得、それを加工してハウスダスト処理剤物品を製造することができる。このようなハウスダスト処理剤物品によっても、ハウスダスト中のアレルゲンを不活性化することが可能である。
【0020】
本発明のハウスダスト処理剤を含浸させる場合に使用する不織布としては、特に限定されるものではないが、レーヨン又はコットン単繊維の1種以上を含む親水性繊維を50質量%以上含むことが好ましい。レーヨン繊維としては、例えば、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンの再生繊維が挙げられ、1〜4デニール、長さ30〜50mmの単繊維が好ましい。コットン繊維としては、例えば、米綿、エジプト綿、アップランド綿、インド綿等の天然繊維が挙げられ、1〜4デニール、長さ10〜40mmの単繊維が好ましい。また、不織布の種類は、特に限定するものではないが、サーマルボンド、ニードル・パンチ、スパンボンド、スパンレース等が挙げられ、特に好ましくはスパンレース不織布が挙げられる。
【0021】
上記レーヨンまたはコットン単繊維の1種以上の親水性繊維を50質量%以上含むものであれば、これ以外に親水性繊維および疎水性繊維を用いることができるが、好ましくは、疎水性繊維である。疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、アセテート等を原料とする合成繊維が挙げられ、単一繊維あるいは2種以上の複合繊維でも良く、特に好ましくはポリエステル単繊維、ポリプロピレン単繊維、ポリエチレン単繊維等の単一繊維またはポリプロピレン/ポリエチレンの芯/鞘複合繊維またはポリエステル/ポリエチレンの芯/鞘複合繊維が挙げられる。疎水性繊維の構成割合は、50質量%以下、特に好ましくは上記レーヨン繊維および/またはコットン繊維60質量%〜90質量%と疎水性繊維の1種以上の繊維10質量%〜40質量%である。尚、使用する不織布は、レーヨン又はコットン単繊維の1種以上を含む親水性繊維が50質量%未満であると、毛羽残りの問題を生じることとなり、好ましくない。
【0022】
不織布の構造は、レーヨンまたはコットン1種以上の親水性繊維および/または疎水性繊維の不織布を含む1層構造、またはこれらの組み合わせの2層構造、または3層構造のものが挙げられ、好ましい構造としては親水性繊維および/または疎水性繊維の不織布を含む1層構造、または疎水性繊維を中層として外層に親水性繊維とした3層構造が望ましい。
【0023】
また、不織布の坪量は、30〜100g/m2であることが必要である。不織布の坪量が30g/m2未満では、床面などに付着したハウスダストを完全に拭き取ることができず好ましくなく、100g/m2を越えると、狭い場所や細部に対する拭き取り性が悪く、いずれも、ハウスダスト除去効果を低下させる原因となる。更に、不織布の厚さは、特に限定するものではないが、0.2mm〜1mmが好ましい。
【0024】
本発明のハウスダスト処理用物品は、上記不織布/ハウスダスト処理剤が質量比(質量%)で50/50〜40/60、好ましくは、49/51〜42.5/57.5となるように、本発明のハウスダスト処理剤を上記不織布に含浸させるのが好ましい。質量比が上記範囲内であると、ハウスダストを効率的に除去できるばかりでなく、不織布に捕集されたハウスダスト中のアレルゲンを効果的に不活性化できるので好ましい。ハウスダスト除去効果に問題を生じることとなり、40/60を越えると、拭きムラを生じるので好ましくない。
【実施例】
【0025】
以下の表1に記載の成分を用い、各成分を所定量量りとり、攪拌混合することにより、実施例及び比較例のハウスダスト処理剤を調製した。
このようにして調製したハウスダスト処理剤について、スギ花粉アレルゲン低減化率、ダニアレルゲン低減化率及び実ダニアレルゲン低減化効果を、以下に記載のハウスダスト処理剤試験方法[0029]〜[0033]に従って評価した。結果を表1に併記する。
次に、以下の表2に記載の不織布に、表2に記載のハウスダスト処理剤を含浸したシートタイプについて、アレルゲン低減化効果を評価した。ハウスダスト処理剤含浸シートは、下記方法により作製した。
以下の表2に記載の各繊維(共に1.4〜1.5デニール、長さ40〜44mm)を用い、所定比率で混合しカードによりウェブを形成した後、表裏面から高圧水流をあて交絡させた不織布シート(300×200×0.65mm)を得た。なお、ポリエチレン/ポリプロピレン芯・鞘複合繊維は、ポリエチレン/ポリプロピレン=50/50(質量比)からなるものである。得られた各不織布シートに対して、下記表2に示す配合組成となるハウスダスト処理剤を下記表2に示す不織布/ハウスダスト処理剤の各質量比で含浸し、ハウスダスト処理剤含浸シートを作製した。
このようにして得られたハウスダスト処理剤含浸シートについて、実スギ花粉アレルゲン低減化効果、実ダニアレルゲン低減化効果を、下記に記載のハウスダスト処理剤含浸シートの試験方法[0034]に従って評価した。結果を表2に併記する。
さらに、以下の表3に記載のハウスダスト処理剤をトリガー型スプレー容器に充填し、フローリングや家具などに噴霧後、表3に記載の拭き具で拭き取った場合の実スギ花粉アレルゲン低減化効果、実ダニアレルゲン低減化効果を、下記に記載のハウスダスト処理剤拭き取り試験方法[0035]に従って評価した。結果を表3に併記する。













【0026】
【表1】



【0027】
【表2】





















【0028】
【表3】

【0029】
<ハウスダスト処理剤試験方法>
スギ花粉アレルゲン(Cryj1)及びダニアレルゲン(Der f II)の低減化効果について
は、ELISAサンドイッチ法を用いて測定した。また、実ダニアレルゲンに対する低減化効果については、実ダニアレルゲンとして家庭で使用したカーペット中のダニアレルゲンの低減化効果を測定した。以下〔0029〕〜〔0033〕の順で測定方法を示す。
【0030】
<スギ花粉アレルゲン低減化効果測定方法(ELISAサンドイッチ法)>
ELISAサンドイッチ法を用いてCry j1(スギ花粉アレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1)抗体の固相化:抗Cry j1モノクロナール抗体013(生化学工業(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2)洗浄:プレートをPBS200μLで3回洗浄した。
(3)ブロッキング:1%BSAを含むPBSを各ウエルに200μLずつ分注し、室温で2時間静置した。BSAはSIGMA社のALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4)洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween - PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5)抗原-不活化剤反応:精製スギ花粉抗原Cry j1(生化学工業(株))をPBSで500ng/mLの濃度に希釈し、不活化剤が添加されたテストサンプル950μLと抗原50μLを混合し、1分間静置した。
(6)抗原-抗体反応:抗原-不活化剤混合液100μLをPBS900μLで希釈混合後、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置する。同時に検量線用抗原溶液(抗原をPBSで希釈したもの)、テストサンプルのスタンダードとして蒸留水をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(7)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(8)標識抗体反応:ペルオキシダーゼ標識 抗Cry j II モノクローナル抗体053(生化学工業)をPBSで至適濃度に希釈し、各ウエルに100μL分注し室温で2時間静置した。
(9)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(10)基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とした。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注し、光を遮った状態で室温で15分間反応させる。
(11)停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(12)吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
(13) Cry j1濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてテストサンプル及びスタンダードのCry j1濃度(それぞれT、Sとする)を算出した。
(14) アレルゲン低減化率の算出:下記の式により、不活化剤(実施例又は比較例の処理剤)が添加されたテストサンプルのアレルゲン低減化率Rを求めた。
R = (1−T/S)×100 (%)
各サンプルについて上記試験を3回行ない、アレルゲン低減化率の平均値を該テストサンプルのアレルゲン低減化率とした。
【0031】
<ダニアレルゲン低減化効果測定方法(ELISAサンドイッチ法)>
ELISAサンドイッチ法を用いてDer f II(コナヒョウヒダニ虫体に含まれるアレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1)抗体の固相化:抗Der f IIモノクロナール抗体15E11(アサヒビール薬品(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2)洗浄:プレートをPBS200μLで3回洗浄した。
(3)ブロッキング:1%BSAを含むPBSを各ウエルに200μLずつ分注し、室温で2時間静置した。BSAはSIGMA社のALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4)洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween -PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5)抗原-不活化剤反応:精製ダニ抗原rDer f II(アサヒビール薬品(株))をPBSで500ng/mLの濃度に希釈し、不活化剤が添加されたテストサンプル950μLと抗原50μLを混合し、1分間静置した。
(6)抗原-抗体反応:抗原-不活化剤混合液100μLをPBS900μLで希釈混合後、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置する。同時に検量線用抗原溶液(抗原をPBSで希釈したもの)、テストサンプルのスタンダードとして蒸留水をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(7)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(8)標識抗体反応:西洋ワサビペルオキシダーゼ標識 抗Der f IIモノクローナル抗体13A4PO(アサヒビール薬品(株))をPBSで至適濃度に希釈し、各ウエルに100μL分注し室温で2時間静置した。
(9)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(10)基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とする。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注し、光を遮った状態で室温で15分間反応させた。
(11)停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(12)吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定する。
(13) Der f II濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてテストサンプル及びスタンダードのDer f II濃度(それぞれT、Sとする)を算出した。
(14) アレルゲン低減化率の算出:下記の式により、不活化剤(実施例又は比較例の処理剤)が添加されたテストサンプルのアレルゲン低減化率Rを求めた。
R = (1−T/S)×100 (%)
各サンプルについて上記試験を3回行ない、アレルゲン低減化率の平均値を該テストサンプルのアレルゲン低減化率とした。
【0032】
<実ダニアレルゲン低減化効果測定方法(マイティーチェッカー)>
一般家庭で使用したカーペットを1m2の大きさに切り取りとり、屋内塵性ダニ簡易検査キット マイティーチェッカー(シントーファイン(株))を使用し、ダニアレルゲン低減化効果の測定を行なった。測定は、各サンプル処理したものとしないもの(イニシャル)について各3回行ない、下記に記載のマイティーチェッカーの判定基準に従い判定したアレルゲン量の平均値を、イニシャル及び該テストサンプルのアレルゲン量とした。
【0033】
<イニシャルのダニアレルゲン量の測定方法>
(1)ダストサンプラーに6メッシュと200メッシュのダストフィルター、及びマイティフェルト(全てシントファイン(株)製)をとりつけ、掃除機にセットした。
(2)カーペットを250Wの掃除機で1分間吸引した。
(3)マイティフェルト上のダニアレルゲンを10mLのPBSで抽出した。
(4)マイティーチェッカーにて、ダニアレルゲン量を判定した。
<テストサンプル使用後のダニアレルゲン量の測定方法>
(1)カーペットに、以下の表1に示した実施例又は比較例記載のハウスダスト処理剤をトリガー型スプレー容器に充填し、10gをカーペットに均一に噴霧後、室温で15分間放置した。
(2)ダストサンプラーに6メッシュと200メッシュのダストフィルター、及びマイティフェルト(全てシントファイン(株)製)をとりつけ、掃除機にセットした。
(3)250Wの掃除機で1分間吸引した。
(4)マイティフェルト上のダニアレルゲンを10mLのPBSで抽出した。
(5)マイティーチェッカーにて、ダニアレルゲン量を判定した。
(マイティーチェッカーの判定基準)
1:ダニアレルゲンの汚染はない(全く発色していない、<1μg/m2
2:ややダニアレルゲンで汚染されている(うっすらと発色しているのがわかる、5μg/m2
3:ダニアレルゲンで汚染されている(ラインであることがはっきりとわかる、10μg/m2
4:非常に汚染されている(濃く、太いハッキリとしたライン、>35μg/m2
【0034】
<ハウスダスト処理剤含浸シートの試験方法>
表2に記載した各サンプルシートを使用し、一般家庭で使用している、N家居間のフローリング(12畳)、O家居間の畳(6畳)の90cm×90cmの大きさを、T家居間にある家具の上面については、20cm×20cmの大きさを縦横2回ずつ拭き掃除を行った。30分経過後、拭き掃除を行った部分の中央部分(家具の上面については拭き掃除を行った部分)20cm×20cmの面積を4つにわけ、10cm×10cmの面積ごとに栄研器材(株)製の拭き取り検査用ふきふきチェックを用いて拭き取った。ふきふきチェックの使い方は、ふきふきチェックの使用法に準拠した。容器中のリン酸緩衝食塩水の容量については、初期値が3mLになるようあらかじめピペットを用いてリン酸緩衝食塩水を抜き取った(この時の綿球は、ボトルの絞り部で綿球を指で軽く圧迫し、余分な液を絞り取った状態である)。また、全ての面積を拭き取った後は、リン酸緩衝食塩水の容量が3mLとなるよう抜き取ったリン酸緩衝食塩水を用い、容量の調整を行った(この時の綿球は、ボトルの絞り部で綿球を指で軽く圧迫し、余分な液を絞り取った状態である)。その後、キャップを硬く閉めて容器を数回振り子状に振り、均一な試料液とした。以降、この試料液をハウスダスト処理剤含浸シートによるアレルゲン回収液と呼ぶ。
同時に、サンプルシートを使用しなかった場合のアレルゲン回収液も同様の操作を行い調整した。以降、この試料液をイニシャル時のアレルゲン回収液と呼ぶ。
アレルゲン回収液中のスギ花粉アレルゲン(Cryj1)及びダニアレルゲン(Der f II)の量については、ELISAサンドイッチ法[0036]、[0037]を用いてそれぞれ測定した。
【0035】
<ハウスダスト処理剤拭き取り試験方法>
表3に記載したハウスダスト処理剤及び拭き具を使用し、一般家庭で使用している、B家居間のフローリング(12畳)、U家居間の畳(6畳)の90cm×90cmの大きさに対し、スプレー容器に充填したハウスダスト処理剤8gを均一に噴霧した。G家居間にある家具の上面については、20cm×20cmの大きさに対し、ハウスダスト処理剤0.4gを均一に噴霧した。その後、綿タオルやテッシュペーパーといった拭き具を用いて、表面を縦横2回ずつ拭き取った。30分経過後、スプレーした部分の中央部分(家具の上面については拭き掃除を行った部分)20cm×20cmの面積を4つにわけ、10cm×10cmの面積ごとに栄研器材(株)製の拭き取り検査用ふきふきチェックを用いて拭き取った。ふきふきチェックの使い方は、ふきふきチェックの使用法に準拠した。容器中のリン酸緩衝食塩水の容量については、初期値が3mLになるようあらかじめピペットを用いてリン酸緩衝食塩水を抜き取った(この時の綿球は、ボトルの絞り部で綿球を指で軽く圧迫し、余分な液を絞り取った状態である)。また、全ての面積を拭き取った後は、リン酸緩衝食塩水の容量が3mLとなるよう抜き取ったリン酸緩衝食塩水を用い、容量の調整を行った(この時の綿球は、ボトルの絞り部で綿球を指で軽く圧迫し、余分な液を絞り取った状態である)。その後、キャップを硬く閉めて容器を数回振り子状に振り、均一な試料液とした。以降、この試料液をハウスダスト処理剤含浸シートによるアレルゲン回収液と呼ぶ。
同時に、ハウスダスト処理剤及び拭き具を使用しなかった場合のアレルゲン回収液も同様の操作を行い調整した。以降、この試料液をイニシャル時のアレルゲン回収液と呼ぶ。
アレルゲン回収液中のスギ花粉アレルゲン(Cryj1)及びダニアレルゲン(Der f II)の量については、ELISAサンドイッチ法[0036]、[0037]を用いてそれぞれ測定した。
【0036】
<スギ花粉アレルゲン低減化効果測定方法(ELISAサンドイッチ法)>
ELISAサンドイッチ法を用いて、Cry j1(スギ花粉アレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1) 抗体の固相化:抗Cry j1モノクロナール抗体013(生化学工業(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2) 洗浄:プレートをPBS 200μLで3回洗浄した。
(3) ブロッキング:1% BSAを含むPBS を各ウエルに200μLずつ分注 し、室温で2時間静置した。BSAはSIGMA社のALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4) 洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween - PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5) 抗原-抗体反応:アレルゲン回収液(ハウスダスト処理剤含浸シートによるアレルゲン回収液、ハウスダスト処理剤拭き取りによるアレルゲン回収液)を、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。同時に検量線用抗原溶液(生化学工業(株)製精製スギ花粉抗原Cry j1をPBSで希釈したもの)をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(6) 洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(7) 標識抗体反応:ペルオキシダーゼ標識 Cry j1モノクローナル抗体053(生化学工業(株))をPBSで至適濃度に希釈し(通常0.5μg/mLの濃度であるが、ロットにより濃度が異なる)、各ウエルに100μL分注 し室温で2時間静置した。
(8) 洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(9) 基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とする。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注 し、光を遮った状態で室温で15分間反応させた。
(10) 停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(11) 吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
(12) Cry j1濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてアレルゲン回収液中のCry j1濃度を算出した。
(13) イニシャル時のアレルゲン回収液中のCry j1濃度も測定し、下記の式により、テストサンプルを使用した場合のアレルゲン低減化率Rを求めた。
R=(1−アレルゲン回収液中のCry j1濃度/イニシャル時のアレルゲン回収液中のCry j1濃度)×100 (%)
【0037】
<ダニアレルゲン低減化効果測定方法(ELISAサンドイッチ法)>
ELISAサンドイッチ法を用いて、Der f II(コナヒョウヒダニ虫体に含まれるアレルゲン)に対する低減化効果の測定を行なった。
(1) 抗体の固相化:抗Der f IIモノクロナール抗体15E11(アサヒビール薬品(株))をPBS(pH7.4±0.05リン酸バッファー液(NaCl, Na2HPO4, KH2PO4をそれぞれ8g/L、1.15g/L、0.2g/Lとなるように蒸留水に溶解したもの)で2μg/mLの濃度に希釈し、マイクロプレート(住友ベークライト(株) ELISA用プレートHタイプ)の各ウエルに100μLずつ分注し、冷蔵庫中(約4℃)で16時間(1晩)静置した。
(2) 洗浄:プレートをPBS 200μLで3回洗浄した。
(3) ブロッキング:1% BSAを含むPBS を各ウエルに200μLずつ分注 し、室温で2時間静置した。BSAはSIGMA社のALBUMIN, BOVINEを使用した。
(4) 洗浄:プレートをTween20(東京化成工業(株))を0.05質量%含むPBS(以下Tween - PBSとする)200μLで3回洗浄した。
(5) 抗原-抗体反応:アレルゲン回収液(ハウスダスト処理剤含浸シートによるアレルゲン回収液、ハウスダスト処理剤拭き取りによるアレルゲン回収液)を、マイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。同時に検量線用抗原溶液(アサヒビール薬品(株)製精製ダニ抗原rDer f IIをPBSで希釈したもの)をマイクロプレートの各ウエルに100μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(6) 洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(7)標識抗体反応:西洋ワサビペルオキシダーゼ標識 抗Der f IIモノクローナル抗体13A4PO(アサヒビール薬品(株))をPBSで至適濃度に希釈し(通常1μg/mLの濃度であるが、ロットにより濃度が異なる)、各ウエルに100μL分注し室温で2時間静置した。
(8)洗浄:プレートをT-PBSで3回洗浄した。
(9) 基質、発色反応:ペルオキシダーゼ用発色キットO(住友ベークライト(株))を用いて発色反応を行なう。基質液100容量に対し、発色剤20錠の割合で溶解し発色液とする。この発色液を各ウエルに100μLずつ分注し、光を遮った状態で室温で15分間反応させた。
(10) 停止反応:発色キットの停止液100μLを分注した。
(11) 吸光度測定:マイクロプレートリーダーで492nmにおける吸光度を測定した。
(12) Der fII濃度の算出:検量線の吸光度から得られる値を用いてアレルゲン回収液中のDer fII濃度を算出した。
(13)イニシャル時のアレルゲン回収液中のDer fII濃度も測定し、下記の式により、テストサンプルを使用した場合のアレルゲン低減化率Rを求めた。
R=(1−アレルゲン回収液中のDer fII濃度/イニシャル時のアレルゲン回収液中のDer fII濃度)×100 (%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の銀系化合物を含有することを特徴とするハウスダスト処理剤。
【請求項2】
前記銀系化合物が、酸化銀、銀錯体及び銀塩からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のハウスダスト処理剤。
【請求項3】
前記銀系化合物の濃度が銀元素濃度に換算して0.001ppm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のハウスダスト処理剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のハウスダスト処理剤と繊維から構成されるハウスダスト処理用物品。
【請求項5】
ハウスダスト処理剤が、ハウスダスト処理剤:不織布=60/40〜50/50の質量比で不織布に含浸されてなる請求項4記載のハウスダスト処理用物品。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項記載のハウスダスト処理剤を、物品の表面に存在するハウスダスト及び/又は空気中に舞っているハウスダストに適用して該ハウスダスト中に含まれるアレルゲンを不活性化させる工程を含む、ハウスダスト処理方法。

【公開番号】特開2006−183045(P2006−183045A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346436(P2005−346436)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】