説明

銀系液体無機抗菌剤

【課題】水溶性珪酸溶液中において銀もしくは銀化合物が分散不良を起こさず、水溶性珪酸溶液中に銀もしくは銀化合物が安定良く存在し、別途バインダーを用いなくても抗菌処理の対象となる繊維製品や植物に対する付着性を維持させる銀系液体無機抗菌剤を提供する。
【解決手段】珪酸濃度が60%以下の水溶性珪酸溶液に硝酸銀、電解銀の何れかを銀濃度10,000ppm未満となるように溶融状態で含有させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性珪酸溶液に銀もしくは銀化合物を含有させてなる銀系液体無機抗菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から繊維製品に対し抗菌剤を用いて抗菌性を付与するものとして、例えば特許文献1に開示されているものが知られている。
この特許文献1に開示されているものは、銀などの抗菌剤微粉末と自己架橋型樹脂バインダーとを配合してなる混合溶液を使用しており、この混合溶液を繊維製品の表面に塗布して抗菌剤微粉末分散層を形成しようとするものである。
【特許文献1】特開平9−13279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているものでは、繊維製品に対する抗菌剤微粉末の付着性を維持させるために自己架橋型樹脂バインダーを用いなければならず、また微粉末状の抗菌剤を用いているがために液中における安定性が悪く、分散不良を起こすという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、水溶性珪酸溶液中において銀もしくは銀化合物が分散不良を起こさず、水溶性珪酸溶液中に銀もしくは銀化合物が安定良く存在し、別途バインダーを用いなくても抗菌処理の対象となる繊維製品や植物に対する付着性を維持させる銀系液体無機抗菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の銀系液体無機抗菌剤は、水溶性珪酸溶液に銀もしくは銀化合物を溶融状態で含有させてなることを特徴とする。
請求項2に記載の銀系液体無機抗菌剤は、水溶性珪酸溶液中の珪酸濃度が60%以下であり、この水溶性珪酸溶液に硝酸銀、電解銀の何れかを銀濃度10,000ppm未満となるように含有させてなることを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の銀系液体無機抗菌剤は、水溶性珪酸として水溶性珪酸塩を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の銀系液体無機抗菌剤は、水溶性珪酸溶液を用い、この溶液中に硝酸銀、電解銀などを含有させてなるものであるので、水溶性珪酸溶液中における珪酸と硝酸銀、電解銀などが結合して溶融状態となり、硝酸銀、電解銀などが分散不良を起こさず、水溶性珪酸溶液中に硝酸銀、電解銀などが安定良く存在することになる。また、前記特許文献1に開示されているもののように別途バインダーを用いなくても水溶性珪酸溶液はバインダー効果を発揮するので、抗菌処理の対象となる繊維製品や植物に対する付着性を維持させることができる。
【0008】
また、水溶性珪酸溶液中の珪酸濃度が60%以下であることにより、溶液中での珪酸の沈殿現象も殆んどなく、また、銀濃度が10,000ppm未満であることにより、溶液中での銀の沈殿現象も殆んどない。
【0009】
さらに、水溶性珪酸として水溶性珪酸塩を用いることにより、溶液中での硝酸銀、電解銀などの分散性、安定性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、具体的に説明する。
実施の形態1
珪酸濃度が17%の水溶性珪酸溶液1リットル中に硝酸銀を1,600mg溶解させ、銀濃度が約1,000ppmとなるように調整して抗菌剤1を作成した。
比較例1
蒸留水1リットル中に硝酸銀を1,600mg溶解させ、銀濃度が約1,000ppmとなるように調整して抗菌剤2を作成した。
実施の形態2
抗菌剤1を蒸留水にて200倍希釈することにより銀濃度5ppmの抗菌剤3を得た。
比較例2
抗菌剤2を蒸留水にて200倍希釈することにより銀濃度5ppmの抗菌剤4を得た。
比較例3
珪酸濃度が17%の水溶性珪酸溶液1リットル中に硝酸銀を17,600mg溶解させ、銀濃度が約11,000ppmとなるように調整して抗菌剤5を作成した。
比較例4
珪酸濃度が62%の水溶性珪酸溶液1リットル中に硝酸銀を1,600mg溶解させ、銀濃度が約1,000ppmとなるように調整して抗菌剤6を作成した。
比較例5
珪酸濃度が17%の水溶性珪酸溶液1リットル中に粉末銀系抗菌剤を添加して、銀濃度が約1,000ppmとなるように調整した。これを蒸留水にて200倍希釈することにより銀濃度5ppmの抗菌剤7を得た。
【0011】
上記の各抗菌剤を10日間室内常温で放置して、溶液中での安定性を見た。その結果を表1に示す。
【0012】
【表1】

表1からも分かるように、抗菌剤1,3,4では沈殿が見られず、安定していたが、抗菌剤2,5,6では沈殿が見られた。また、抗菌剤7は僅かではあるが沈殿が見られた。
【0013】
上記抗菌剤1〜7の内、抗菌剤1,2,5,6が原液であるため、蒸留水にて希釈された抗菌剤3,4,7を用いて抗菌性について試験を行なった。その結果を表2に示す。
なお、試験方法はJIS L−1902;2002繊維製品の定量試験方法に基づく。
【0014】
供試細菌は黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus NBRC 12732である。
判定;静菌活性値が2.2以上で抗菌効果を有する(JAFET基準)。
【0015】
【表2】

表2からも分かるように、抗菌剤3は抗菌力にばらつきが少なく、洗濯後において抗菌力の持続が認められる。抗菌剤4は洗濯により抗菌力が低下しており、これは溶液中にバインダー成分が存在せず、物理的に銀が洗濯により剥離したものと考えられる。また、抗菌剤7は粉末銀を用いているので溶液中で完全に溶解しにくく、沈殿現象が生じ、分散性にばらつきがあり、繊維への付着量が一定とならず、洗濯の有無に拘わらず効果にばらつきが見られる。
【0016】
ところで、以上述べた説明では、抗菌剤を繊維に付着させて抗菌性を得ようとしているが、抗菌剤が付着される対象物は繊維に限定されるものではなく、例えば植物などに噴霧するなどして抗菌性を付与することも可能である。また、抗菌剤原液の希釈倍率は抗菌剤が付着される対象物と抗菌剤の原液銀濃度に応じて決定すれば良い。抗菌処理や植物の葉面散布で使用する場合は、銀濃度は0.1ppm〜10ppmで用いるのが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性珪酸溶液に銀もしくは銀化合物を溶融状態で含有させてなることを特徴とする銀系液体無機抗菌剤。
【請求項2】
水溶性珪酸溶液中の珪酸濃度が60%以下であり、この水溶性珪酸溶液に硝酸銀、電解銀の何れかを銀濃度10,000ppm未満となるように含有させてなることを特徴とする請求項1記載の銀系液体無機抗菌剤。
【請求項3】
水溶性珪酸として水溶性珪酸塩を用いることを特徴とする請求項1または2記載の銀系液体無機抗菌剤。

【公開番号】特開2009−221119(P2009−221119A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65011(P2008−65011)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(591128877)抗菌化研株式会社 (2)
【Fターム(参考)】