説明

銀鏡皮膜の形成方法

【課題】基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、得られる銀鏡皮膜自身の色調が調整可能な方法を提供することにある。詳しくは第一に色調が青味を帯びた鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる方法、第二に色調が金色の鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる方法を提供する。
【解決手段】1.基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。
2.基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、二酸化珪素の水系分散物の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等の基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品、屋内装飾品、釣具製品、家電製品、通信機器製品、仏具品、建築材等のプラスチック、金属、ガラス、ゴム、陶磁器、木材、竹、皮革、発泡スチロール等に使用される基材には、主として装飾を目的として、その表面に銀鏡皮膜を形成することがある。また銀鏡皮膜は電磁波を遮断する目的で、電磁波シールド品においても利用される場合がある。
【0003】
このような基材から成る製品の銀鏡皮膜の形成は通常、以下の方法を用いることが知られている。最初に各種基材の表面を、銀鏡皮膜が形成されるに適した表面(以下、「銀鏡皮膜被形成表面」という)とするための前処理を実施する。これによって得られた清浄な銀鏡皮膜被形成表面に、銀鏡反応により銀を析出させるため塩化第1スズ等を含有する活性化処理液で処理し、第1スズイオンを触媒として担持させる。その後、活性化処理された該基材表面に銀鏡メッキを施すことによって銀鏡皮膜を形成する。そして洗浄、乾燥した後、銀メッキ層の表面に保護層を設ける。上記銀鏡皮膜の形成、特に活性化処理液、銀鏡メッキ液、洗浄および保護層の塗布等には一般にスプレー塗布が用いられている。
【0004】
塩化第1スズ等を含有する活性化処理液は、例えば金属表面技術便覧(金属表面技術協会編集、昭和52年 日刊工業新聞社発行)に記載されている(非特許文献1)。また従来から例えば、特公平02−014431号公報、特開2003−13240号、特開2003−129249号、特開平11−335858号公報(特許文献1)等に記載の活性化処理液等が知られている。
【0005】
銀鏡用メッキ液は、一般に硝酸銀またはアンモニアを含有する硝酸銀溶液と、ホルマリン、ブドウ糖、グリオキザール、ヒドラジン等の還元剤を含有する液の混合物から成る無電解メッキ液を用いる。銀鏡用メッキ液としては、例えば特開平09−111472号、特開平11−162211号、特開平11−335858号、特開2003−293148号、特開2004−149909号公報等に記載の銀鏡用メッキ液が知られている。また特開2004−190061号公報には活性化処理液による処理を施した後に銀イオンによる処理および、銀鏡皮膜の形成後にさらにチオ硫酸塩を含有する溶液で処理する方法が、更に特開2004−169157号公報には銀メッキ層を銀と反応性もしくは親和性を有する有機化合物で処理する方法が開示されている。
【0006】
上記方法は、銀鏡皮膜と銀鏡皮膜被形成表面との間の接着性および耐久性に優れ、また作業性が良好な簡易な方法として優れた性能の銀鏡皮膜を有する製品を得ることが出来る方法として知られている。
【0007】
上記活性化処理液及び銀鏡メッキ液等を用いて得られる銀鏡皮膜の色調は、一般には白色〜わずかに黄色味を帯びた色調を有する銀鏡光沢面である。しかし基材の装飾を目的に銀鏡皮膜を利用する場合、意匠性等の観点から求められる銀鏡皮膜の色調は白色の鏡面光沢だけにとどまらず、様々な色調の鏡面光沢が求められる。この要求に応じるため、従来は耐久性に優れ美しい外観を備える積層品とすることを目的に設層される銀鏡皮膜の保護層、いわゆるトップコート層に色材を混入させ着色する手法が一般に用いられていた。このことは例えば特開平11−310752号公報(特許文献2)に、クロームクリアー、ゴールドクリアー、ピンククリアー、グリーンクリアー、パープルクリアー等、用途に応じて様々な色材を組み合わせたトップコート層が開示されている。
【0008】
このようなトップコート剤には、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等が用いられ、塗布が容易であることから2液硬化型ポリウレタン樹脂またはアクリル変性シリコーン樹脂が好適に使用される。また必要に応じて紫外線吸収剤、エポキシ系添加剤等の塩素系トラップ剤が添加されることがある。色材としては、光沢を低下させる原因となる顔料よりも染料が使用されるのが一般的であるが、色材の利用によって光沢の低下が生じる場合がある。またトップコート層を設層する手段としては、一般にトップコート剤の浴に銀鏡皮膜層を設けた基材を浸漬、もしくはスプレー等で銀鏡皮膜表面に吹き付ける等の方法が用いられる。しかし色材を組み合わせたトップコート層を前記方法により設層する場合、基材の形状、トップコート液の粘度等の液性により、トップコート剤の付着量が部分的に異なることによる色ムラが発生しやすいという問題を有していた。
【非特許文献1】金属表面技術便覧 金属表面技術協会編集、 日刊工業新聞社発行(昭和52年)p476−477
【特許文献1】特開平11−335858号公報(第一項〜第二項)
【特許文献2】特開平11−310752号公報(第一項〜第五項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、得られる銀鏡皮膜自身の色調が調整可能な方法を提供することにある。詳しくは第一に色調が青味を帯びた鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる方法を提供することにある。第二に色調が黄色を帯びた、いわゆる金色の鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の方法によって達成された。
1.基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。
2.基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、二酸化珪素の水系分散物の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トップコート剤により色調を調整させることなく基材の表面に形成される銀鏡皮膜の色調が調整可能であり、更に青味を帯びた銀鏡光沢、もしくは黄色味を帯びた、いわゆる金色の鏡面光沢を有する銀鏡皮膜を基材表面に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
銀鏡反応を利用した銀メッキ法は、アンモニア性硝酸銀([Ag(NH32+ OH-)溶液と還元剤溶液とを基材上で混合されるように処理することにより還元反応を引き起こし、基材表面に銀(Ag)を析出させる方法である。前記還元剤溶液としては、グリオキサール等のアルデヒド基を有する有機化合物(R−CHO)、ホルマリン、ブドウ糖、ヒドラジン等が好適に使用される。前記アンモニア性硝酸銀溶液とアルデヒド基を有する有機化合物とを銀鏡反応させる際の反応を以下に示す。
【0013】
2[Ag(NH32+OH- + R−CHO
→ 2Ag + R−CO2NH4 + H2O + 3NH3
【0014】
従来、上述のような反応により得られる銀鏡皮膜の色調は一般には白色〜わずかに黄色味を帯びた色調を有する銀鏡光沢面である。本発明は、上記のようにして形成された銀メッキ層の色調を調整することを目的に、従来技術にはない新規な処理を施すことによってその改良を図るものである。
【0015】
本発明は上記問題について鋭利検討した結果、色材を用いることなく青味を帯びた銀鏡光沢、もしくは金色の鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られる方法を見い出したものである。本発明のカルボキシ基含有水溶性重合体を用いることにより、青味を帯びた銀鏡光沢を有する銀鏡皮膜が得られる理由、本発明の二酸化珪素の水分散物を用いることより、金色の銀鏡光沢を有する銀鏡皮膜が得られる理由は定かではないが、カルボキシ基含有水溶性重合体および二酸化珪素の水分散物自身は青色や黄色を有する化合物ではないので、これらの化合物が銀鏡皮膜中の銀の粒子径やその配置等を変化させ、光の反射、屈折および干渉の度合いが大きく変化して、青色や金色の鏡面光沢が得られたと推測する。
【0016】
本発明の課題は、基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、第一にカルボキシ基含有水溶性重合体の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法により青味を帯びた銀鏡光沢が得られる。第二に二酸化珪素の水分散物の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法により金色の銀鏡光沢が得られる。ここで「カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下」、「二酸化珪素の水分散物の存在下」とは、活性化処理液によって処理された銀鏡皮膜被形成表面に銀鏡メッキ液による処理を施すことによって銀鏡反応が進行し銀鏡皮膜が得られるが、前記銀鏡反応がカルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物の存在下で進行することを表す。
【0017】
従って、カルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物の存在下で銀鏡反応を進行させる手段としては、(1)活性化処理液中に含有させ、活性化処理を施した後に銀鏡メッキ液による処理を施す方法、(2)活性化処理液による処理を施した後にカルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物を銀鏡皮膜被形成表面に供給し、その後銀鏡メッキ液による処理を施す方法、(3)基材表面に活性化処理液による処理を施した後に、カルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物を含有する銀鏡用メッキ液で処理する方法等により、色調が調整された銀鏡光沢を有する銀鏡皮膜を基材表面に設けることが可能となる。これらの中でも銀鏡皮膜を得る方法において、工程を増やすことなく実施可能である等の理由により、銀鏡用メッキ液にカルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物を含有させることが好ましい。
【0018】
銀鏡用メッキ液としては、前述の特開平09−111472号公報に記載されるようなアンモニアあるいはロシェル塩を還元剤とした1液タイプ、あるいは例えば特開平11−162211号公報に記載されるようなアンモニア性硝酸銀水溶液と還元剤を含有する水溶液から成る2液タイプ、あるいは特開2004−149909号公報等に記載されるようなアンモニア性硝酸銀水溶液、苛性ソーダ液、還元剤を含有する水溶液から成る3液タイプの銀鏡用メッキ液等が知られているが、本発明に用いるカルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物はこれら何れの液にも含有させることができる。また銀鏡メッキ液を長期間に渡って保存する目的で銀鏡メッキ液が硝酸銀水溶液、アンモニア水溶液、還元剤含有水溶液の3液から構成される場合にも、何れの液にも含有させることができる。銀鏡メッキ液の保存安定性の観点からは、カルボキシ基含有水溶性重合体あるいは二酸化珪素の水分散物は銀を含有しない液に含有させることが好ましい。
【0019】
本発明に用いるカルボキシル基含有水溶性重合体は、カルボキシル基(その塩あるいは酸無水物を含む)を含む水溶性重合体である。このような水溶性重合体は、モノマー単位としてのカルボキシル基を含むオレフィン系不飽和化合物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸などの単独重合体、あるいはモノマー単位としてのカルボキシル基を含むオレフィン系不飽和化合物と共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体等を挙げることができる。
【0020】
本発明に用いられる共重合体を得るためのビニル系モノマーとしては、スチレン、あるいはメチル、エチル等のアルキル置換スチレン、メトキシ、エトキシ等のアルコキシ置換スチレン、クロル等のハロゲン置換スチレン等のスチレン誘導体、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロピルケトン等のビニル類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン類等を挙げることができ、カルボキシル基を含むオレフィン系不飽和化合物の異種のものを共重合体成分とするものであってもよい。
【0021】
共重合体に占めるカルボキシル基を含むオレフィン系不飽和化合物は、約10モル%以上、好ましくは約20モル%以上であり、このカルボキシル基は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩になっていてもよい。
【0022】
本発明に用いられるカルボキシル基含水溶性重合体は、数平均分子量(Mn)が1,000〜500,000のものが好ましく、より好ましくは約2,000〜100,000の範囲のものが好ましい。本発明に用いられる水溶性重合体は、溶液重合等の公知の製造法によって容易に作ることができる。以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、重合比率はモル%で示す。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
また本発明に用いるカルボキシル基含有水溶性重合体は一般の市販品から容易に入手することが出来る。例えば東亞合成社製 アロンA−30L、アロンT−40等として市販されている。
【0026】
本発明に用いられるカルボキシル基含水溶性重合体の添加量の範囲は、活性化処理液、銀鏡用メッキ液何れの場合においても固形分換算で、使用液1L 当たり、0.01〜100gが好ましく、さらに好ましくは1L 当たり0.1〜10gの範囲内で用いることができる。カルボキシル基を含有する水溶性重合体を銀鏡メッキ液に含有させて処理する方法においては、カルボキシ基含有水溶性重合体を含有する水溶液の粘度が高いと、得られる銀鏡皮膜の色調ムラを生じやすいので、その数平均分子量にもよるが、10質量%以下の濃度を有する水溶液とすることが好ましい。またカルボキシ基含有水溶性重合体を含有する水溶液を、活性化処理液での処理を施した銀鏡皮膜被形成表面に供給する手段としては、前記カルボキシ基含有水溶性重合体を含有する水溶液中に銀鏡皮膜被形成表面を形成した基材を浸漬するか、またはスプレー塗布することにより実施することができる。その場合でも浸漬する液あるいはスプレーする液への添加量の範囲は上記と同様である。上記方法では特にスプレー塗布が好適である。
【0027】
次に本発明に用いる二酸化珪素の水系分散物について説明する。
二酸化珪素は天然シリカ、合成シリカとして一般に市販されている。合成シリカにはその製法により気相法シリカと湿式シリカに分類できるが、本発明の活性化処理液に用いる二酸化珪素の水系分散物は、何れの二酸化珪素も用いることができる。
【0028】
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られており、例えば日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。湿式法シリカは、製造方法によって更に沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造される。沈降法シリカの粉体としては、例えば東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。ゲル法シリカの粉体としては例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
【0029】
気相法シリカおよび湿式法シリカの粉体は、好ましくは分散媒にシリカ微粒子を添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液中のシリカを粉砕する二次分散工程によって媒体中に分散し得ることができる。または一時分散工程のみでも得ることができる。一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。二次分散方法としては、分散媒中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができる。更に気相法シリカの水分散に関しては、特公平5−338号公報記載の方法により得ることもできる。分散媒は水を主体とするが、少量の有機溶剤(エタノール等の低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤)を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対して20質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましい。また必要に応じて分散剤を用いても良く、例えば特開2002−095949号、特開平8−333144号公報記載の分散剤等、を用いても良い。得られる二酸化珪素の水系分散物中の含有量は、5〜80重量%が好ましく、水素イオン濃度が特に中性域(pH6〜8)でないものの方が安定性の面で好ましい。
【0030】
本発明に用いる二酸化珪素の水系分散物は上記方法で得ること以外に、湿式法シリカはシリカゾルとして市販されているものも用いることができる。ゾル法シリカはコロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。これらは日産化学工業(株)からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−20L、ST−O、ST−OL、ST−S、ST−XS、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL等が市販されている。これらのコロイダルシリカは、通常アニオン性である。
【0031】
本発明に用いる二酸化珪素の水系分散物としては上記アニオン性コロイダルシリカに限らず、カチオン性コロイダルシリカを用いることもできる。カチオン性コロイダルシリカは、例えばケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカに、アルミニウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ジルコニウムイオン等の多価金属イオンを反応させて得られたものであり、特公昭47−26959号公報にはアルミニウム処理によるカチオン性コロイダルシリカが開示されている。市販されているカチオン性コロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)のスノーテックスST−AK−L、ST−UP−AK、ST−AK、ST−PS−M−AK、ST−AK−YL等がある。
【0032】
また本発明に用いるコロイダルシリカとしては、一般的なコロイダルシリカが球状または球状に近い粒子が連結せずに独立して存在しているコロイダルシリカの他に、小さいシリカ粒子が細長く連結した鎖状、針状粒子、またそれらが三次元網目構造を有しているもの、球状の一次粒子が複数個連結し、真珠のネックレスに似た形状を示すパールネックレス状の粒子等の形状で存在する等の非球状コロイダルシリカを用いることができる。またシリカ表面をカルシウムやアルミナ等のイオンや化合物で被覆してイオン性やpH変動に対する挙動を変えた変性コロイダルシリカの何れも用いることができる。
【0033】
水系分散物中の二酸化珪素粒子の粒子サイズに特に限定は無いが、おおよそ1nmから1μmの平均粒子サイズである。平均粒子サイズが比較的大きいと得られた銀鏡皮膜の光沢がややくすむことがあり、また平均粒子サイズが比較的大きいと水系分散物を保存した場合に粒子が沈降することがあるが、かきまわすと分散し、再度沈降に時間がかかるようないわゆるコロイド状沈殿が生じるような水分散組成物であれば本発明に用いる二酸化珪素の水系分散物として本発明の効果を得ることができる。このような観点から水系分散物中の二酸化珪素粒子の平均粒子サイズは200nm以下が好ましく更に50nm以下が好ましい。
【0034】
本発明に用いられる二酸化珪素の水系分散物の添加量の範囲は、活性化処理液、銀鏡用メッキ液何れの場合においても固形分換算で、使用液1L当たり、0.01〜50gが好ましく、さらに好ましくは1L当たり0.1〜10gの範囲内で用いることができる。二酸化珪素の水系分散物をメッキ液に含有させ処理する方法においては、10質量%以下の濃度を有する水溶液とすることが好ましい。また二酸化珪素の水系分散物を含有する水溶液を、活性化処理液での処理を施した銀鏡皮膜被形成表面に供給する手段としては、前記二酸化珪素の水系分散物を含有する水溶液中に銀鏡皮膜被形成表面を形成した基材を浸漬するか、またはスプレー塗布することにより実施することができる。その場合でも浸漬する液またはスプレーする液への添加量の範囲は上記と同様である。上記方法では特にスプレー塗布が好適である。
【0035】
次に、本発明の活性化処理液を使用する銀鏡皮膜方法の具体例について説明する。
【0036】
本発明において、銀鏡皮膜が形成される基材としては、金属、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂等のプラスチック樹脂、ゴム、木材、皮革、ガラス板、陶磁器など、様々なものが使用できる。
【0037】
これらの基材は以下に述べる各処理工程に先立ち、前処理としてその表面を清浄化して銀鏡皮膜被形成表面を形成することが好ましい。すなわち、基材が、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂等のプラスチック樹脂、ゴム、木材、皮革の場合には、表面の油、その他の汚れをイソプロピルアルコール、洗剤等の素材を傷めない前処理剤を用いて脱脂し、充分に乾燥させる。基材がガラスである場合には、エチルアルコールで脱脂する。基材が陶磁器である場合には、ガラスと同様の前処理でよいが、多孔質の場合には、上記のプラスチックと同様の前処理を行うことが好ましい。基材が金属である場合には、表面が油、錆び等で汚染されていることが多いので、十分に脱脂、脱錆した後、必要に応じてプラスチックと同様の前処理を行うことが好ましい。
【0038】
更に、清浄化した後の基材の表面には、予め、アンダーコート層を設けておくことが好ましい。アンダーコート層としては、例えば特開2002−256454号公報や特開平10−309774号公報に記載されている如き、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、2液硬化型ポリウレタン樹脂等からなるアンダーコート層、あるいはアルコキシチタニウムエステル並びにエポキシ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ樹脂のうちの少なくとも一方を含有する塗料からなるアンダーコート層が挙げられる。このようにして、各基材表面に清浄な銀鏡皮膜被形成表面を形成することができる。
【0039】
続いて、この清浄な銀鏡皮膜被形成表面に対して、活性化処理液を用いて活性化処理を行う。前記活性化処理液を用いて処理する方法としては、活性化処理液中に銀鏡皮膜被形成表面を形成した基材を浸漬するか、または銀鏡皮膜被形成表面に本発明の活性化処理液をスプレー塗布することにより実施する。特にスプレー塗布は好適である。
【0040】
活性化処理液は、第1スズ化合物の塩基性塩の沈殿を抑制する目的で酸を利用する。酸としては、例えば塩化水素、臭化水素等の水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等のオキソ酸を用いることができる。これらの中でも特に塩酸、硝酸を用いると白色沈殿の析出を長期間に渡って抑制することができるが、銀鏡被膜の腐食、いわゆる「シケ」等に影響を及ぼす塩素系の酸よりも硝酸の使用が好ましい。活性化処理液の酸の使用量としては、活性化処理液の使用液1リットルあたり0.01モル〜0.4モル、より好ましくは0.02モル〜0.3モルの範囲で用いることができる。このようにして調整される活性化処理液のpHは2.0以下に調整することが好ましく、更に1.5以下がより好ましい。
【0041】
活性化処理液は第1スズ化合物を含有する酸性水溶液であるが、第1スズ化合物単独、あるいは第1スズ化合物と第2スズ化合物を含有する液であってもよい。活性化処理液に第1スズ化合物と第2スズ化合物を用いることは、活性化処理液の保存安定性を高めるために両者を併用することが好ましい。
【0042】
第1スズ化合物と第2スズ化合物の使用比率には好ましい範囲があり、第1スズ化合物と第2スズ化合物を合わせたスズ化合物の総モル量に対して、第2スズ化合物が20乃至85モル%の範囲で用いられる。活性化処理液中の第2スズ化合物の使用量が、スズ化合物の総モル量に対して20モル%を超えると、活性化処理液の経時安定性と直後活性が著しく改善され、また活性化処理液中の第2スズ化合物の使用量が、スズ化合物の総モル量に対して85モル%を超えると、保存後の活性化処理液の活性度と活性化処理液の直後活性が次第に低下する。第1スズ化合物と第2スズ化合物の使用比率は前記範囲が好ましいが、更に30乃至75モル%の範囲がより好ましい。
【0043】
活性化処理液に用いる第1スズ化合物と第2スズ化合物を合わせたスズ化合物の総モル量としては、活性化処理液の使用液1リットルあたり0.01モル〜0.4モル、より好ましくは0.02モル〜0.3モルである。また長期保存を目的として例えば2倍希釈して用いるに相当するスズ化合物を有する、いわゆる濃縮液として作製することもできる。
【0044】
第1スズ化合物としては、塩化第1スズ、酸化第1スズ、硫酸第1スズ、およびこれらの混合物を用いることができる。また第2スズ化合物としては塩化第2スズ、酸化第2スズ、およびこれらの混合物を用いることができる。
【0045】
第1スズ化合物の溶解方法は、第1スズ化合物の水への溶解性をさらに高める等の目的で、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、エーテル、アセトン、および少量の塩酸等を加えた水溶液中で溶解することもできる。
【0046】
次いで、本発明の活性化処理液による活性化処理工程で基材表面に余分に付着した活性化処理液を脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄することが好ましい。この洗浄液には例えば特開平6−38860号公報に記載されたような界面活性剤を含んでいてもよい。
【0047】
上記の洗浄の後、塩化物を形成し得る金属塩化合物による処理を行う。前記金属として好ましいものは銀であり、特に硝酸銀が好適である。
【0048】
この処理工程は、上記金属塩化合物の水溶液に基材を浸漬するか、あるいは金属塩化合物の水溶液を基材表面にスプレー塗布することにより実施される。特に、スプレー塗布は好適である。
【0049】
続いて、銀鏡用メッキ液を使用する銀鏡反応処理の工程に進む。この工程では、例えば以下の銀鏡用メッキ液を使用することにより、均一な光沢を有し、しかも、特に、ラッカーもしくは二液反応型塗料を塗布したアンダーコート層を有する銀鏡皮膜被形成表面に対する強固な密着性を発現することができる。
【0050】
銀鏡用メッキ液は、銀溶液(A)と還元剤溶液(B)からなり、(A)液は例えば以下のようにして調製される。すなわち、まず、水、好適には脱イオン水1リットルに対して、硝酸銀0.1〜50g、好ましくは0.5〜20gと、28%アンモニア水溶液1〜150g、好ましくは5〜100gで銀溶液(A)を調整する。また例えば、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)ジエタノールアミン、N−(3−アミノプロピル)エタノールアミン、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、N,N’−(ジエタノール)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−(テトラエタノール)エチレンジアミン等のアミノアルコール化合物、及び、例えば、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することもできる。
【0051】
別に、脱イオン水1リットルに対して、例えば、硫酸ヒドラジン又はヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物0.1〜50g、好ましくは0.5〜20gと、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム0〜20g、好ましくは0〜10gで還元剤溶液(B)を調整する。また上記銀溶液(A)と同様のアミノアルコール化合物及びアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有することができる。
【0052】
また、銀溶液(A)及び/又は還元溶液(B)にアミノアルコール化合物及びアミノ酸又はその塩よりなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有させる場合は、メッキ液1リットル当たり、合計量が0.1〜50g、好ましくは3〜30gとなるように調整することが好ましい。
【0053】
上記により得られた銀溶液(A)と還元溶液(B)とを別々の圧送タンクに収納しておき、各溶液用のスプレーガンによって、両溶液を同時に銀鏡皮膜被形成表面に吹き付けて銀鏡反応処理を行い、銀鏡皮膜を形成する。処理後、脱イオン水又は精製蒸留水で洗浄し、十分に乾燥させる。
【0054】
本発明においては、更に、この銀鏡皮膜上にトップコート層として、公知のクリヤーコーテイングを施すことによって、耐密着性、耐食性、耐摩耗性、耐変色性等を一段と向上することができる。このようなトップコート剤としては、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂等が挙げられ、塗布が容易であることから2液硬化型ポリウレタン樹脂またはアクリル変性シリコーン樹脂が好適に使用される。また必要に応じて紫外線吸収剤、エポキシ系添加剤等の塩素系トラップ剤が添加することができる。
【0055】
本発明の銀鏡皮膜形成方法を用いることにより、青味を帯びた鏡面光沢、あるいは金色の鏡面光沢を有する銀鏡皮膜が得られるが、得られた銀鏡皮膜上に設けられるトップコート層は色材を有することができる。この場合、所望の色調とするための色材使用量は、本発明の銀鏡皮膜形成方法で得た銀鏡皮膜は、従来から知られる銀鏡皮膜形成方法で得られた銀鏡皮膜に対してより少なくすることが可能であり、トップコート層の付着ムラがより目立ちにくくなるという利点がある。
【0056】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
【実施例1】
【0057】
ABS樹脂製品の脱脂、水洗、乾燥した表面に、銀鏡用のアンダーコート塗料(大橋化学工業株式会社製;アンダーブラックNo.0128)を、硬化剤及びシンナーと10:2:4〜5の重量割合で混合して塗布し、次いで、溶剤を揮発させた後、80℃で30分乾燥し、銀鏡皮膜被形成表面を得た。
【0058】
〈活性化処理液1の作製〉
銀鏡皮膜被形成表面を処理する活性化処理液として、硝酸を0.07モル/L、塩化第1スズを0.04モル/L、塩化第2スズを0.04モル/L含有する活性化処理液1を作製した。
【0059】
前記方法で得られた基材の清純な銀鏡皮膜被形成表面に活性化処理液1をスプレーガンで吹き付けて活性化処理を行い、精製水にて洗浄した。
【0060】
続いて、脱イオン水1リットルに塩化物を形成し得る金属塩化合物としての硝酸銀10gを1リットルの水に溶解した水溶液(a)をスプレーガンで吹き付けて処理した。
【0061】
銀鏡用メッキ液は、次のようにして調製した。先ず、脱イオン水1リットルに硝酸銀20gを溶解して(1)液とし、別に、脱イオン水1リットルに28%アンモニア水溶液100gを溶解して(2)液とし、使用前に、これら(1)液及び(2)液を1対1で混合してアンモニア性銀溶液(A)とした。次に、脱イオン水1リットルに硫酸ヒドラジン10g及び水酸化ナトリウム10gを溶解して還元溶液(B1)とした。
【0062】
〈還元溶液(B2)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にスチレン無水マレイン酸交互共重合体(数平均分子量=約8000)を3g/L添加した還元溶液(B2)作製した。
【0063】
〈還元溶液(B3)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にアクリル酸の単独重合体(数平均分子量=約12000)を3g/L添加した還元溶液(B3)作製した。
【0064】
〈還元溶液(B4)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にアクリル酸の単独重合体のナトリウム塩(数平均分子量=約5000)を3g/L添加した還元溶液(B4)を作製した。
【0065】
〈還元溶液(B5)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にアクリル酸とアクリルアミド共重合体(数平均分子量=約5000、アクリル酸の含有量は50モル%)を3g/L添加した還元溶液(B5)を作製した。
【0066】
〈還元溶液(B6)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にアクリル酸と酢酸ビニル共重合体(数平均分子量=約45000、アクリル酸の含有量は30モル%)を3g/L添加した還元溶液(B6)を作製した。
【0067】
〈還元溶液(B7)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更にクロトン酸と酢酸ビニル共重合体(数平均分子量=約70000、クロトン酸の含有量は10モル%)を3g/L添加した還元溶液(B7)を作製した。
【0068】
〈還元溶液(B8)の作製〉
前記還元溶液(B1)に更に、例示化合物WP−8を3g/L添加した還元溶液(B8)を作製した。
【0069】
このように調製したアンモニア性銀溶液(A)と還元溶液(B1〜B8)とを、上記の銀鏡皮膜被形成表面に、2頭スプレーガンを使用して同時に吹き付けて銀鏡を形成させ、精製水にて洗浄した。このスプレーガンは、銀溶液と還元溶液とを同時に被処理面に到達させ、瞬時に銀イオンが還元されて銀鏡皮膜を形成することを可能にする。
【0070】
最後に銀鏡皮膜表面にトップコート剤として大橋化学株式会社製の「ポリナール No.880」をスプレー塗布し、約70℃の乾燥炉内で70分乾燥させることによりトップコート層を形成させた。
【0071】
還元溶液(B1〜B8)を用いて得られたそれぞれのメッキ製品について、得られた銀鏡皮膜を有する基材の色調の視覚的評価を実施した。評価結果を下記表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
表1の結果より、本発明の活性化処理液を用いて得られた基材の銀鏡皮膜が青味を帯びた色調の銀鏡皮膜であることが判る。
【実施例2】
【0074】
実施例1で作製した活性化処理液1の活性化処理済み銀鏡皮膜被形成表面を精製水にて洗浄した後、実施例1で用いたカルボキシル基含水溶性重合体の2%水溶液をそれぞれ銀鏡皮膜被形成表面にスプレーガンで吹き付けて処理した。その後実施例1と同様にアンモニア性銀溶液(A)と還元溶液(B1)とを、上記の銀鏡皮膜被形成表面に、2頭スプレーガンを使用して同時に吹き付けて銀鏡を形成させ、精製水にて洗浄し、トップコート層を形成させた。これらの銀鏡皮膜の色調の視覚的評価を実施したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【実施例3】
【0075】
ABS樹脂製品の脱脂、水洗、乾燥した表面に、銀鏡用のアンダーコート塗料(大橋化学工業株式会社製;アンダーブラックNo.0128)を、硬化剤及びシンナーと10:2:4〜5の重量割合で混合して塗布し、次いで、溶剤を揮発させた後、80℃で30分乾燥し、銀鏡皮膜被形成表面を得た。
【0076】
〈活性化処理液1の作製〉
銀鏡皮膜被形成表面を処理する活性化処理液として、硝酸を0.17モル/L、塩化第1スズを0.11モル/L、塩化第2鉄を0.009モル/L含有する水溶液を作製し、調整後30L/hrの酸素吹き込み速度で1時間曝気処理し、活性化処理液2を作製した。
【0077】
前記方法で得られた基材の清純な銀鏡皮膜被形成表面に活性化処理液2をスプレーガンで吹き付けて活性化処理を行い、精製水にて洗浄した。
【0078】
続いて、脱イオン水1リットルに塩化物を形成し得る金属塩化合物としての硝酸銀10gを1リットルの水に溶解した水溶液(a)をスプレーガンで吹き付けて処理した。
【0079】
銀鏡用メッキ液は、次のようにして調製した。先ず、脱イオン水1リットルに硝酸銀20gを溶解して(1)液とし、別に、脱イオン水1リットルに28%アンモニア水溶液100gを溶解して(2)液とし、使用前に、これら(1)液及び(2)液を1対1で混合してアンモニア性銀溶液(A)とした。次に、脱イオン水1リットルに硫酸ヒドラジン10g、モノエタノールアミン5g及び水酸化ナトリウム10gを溶解して還元溶液(B9)とした。
【0080】
〈還元溶液(B10)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に日産化学工業(株)製スノーテックスC(シリカ粒子径10nm〜20nm、pH=8.5〜9.0、シリカ濃度20%分散物)を30g/L添加した還元溶液(B10)を作製した。
【0081】
〈還元溶液(B11)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に日産化学工業(株)製スノーテックス30(シリカ粒子径10nm〜20nm、pH=9.5〜10.5、シリカ濃度30%分散物)を20g/L添加した還元溶液(B11)を作製した。
【0082】
〈還元溶液(B12)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に日産化学工業(株)製スノーテックスAK(シリカ粒子径10nm〜20nm、pH=4.0〜6.0、シリカ濃度19%分散物、表面電荷がカチオン化されたコロイダルシリカ)を30g/L添加した還元溶液(B12)を作製した。
【0083】
〈還元溶液(B13)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に日産化学工業(株)製スノーテックスS(シリカ粒子径8nm〜11nm、pH=9.5〜10.5、シリカ濃度30%分散物)を30g/L添加した還元溶液(B13)を作製した。
【0084】
〈還元溶液(B14)の作製〉
前記還元溶液(B9)に日産化学工業(株)製スノーテックス20L(シリカ粒子径40nm〜50nm、pH=9.5〜11.0、シリカ濃度20%分散物)を20g/L添加した還元溶液(B14)を作製した。
【0085】
〈還元溶液(B15)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に日産化学工業(株)製スノーテックスOL(シリカ粒子径40nm〜50nm、pH=2.0〜4.0、シリカ濃度20%分散物)を15g/L添加した還元溶液(B15)を作製した。
【0086】
〈還元溶液(B16)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に、日産化学工業(株)製スノーテックスMP−4540M(シリカ粒子径450nm、pH=8.0〜10.0、シリカ濃度40%分散物)を10g/L添加した還元溶液(B16)を作製した。
【0087】
〈還元溶液(B17)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に、日産化学工業(株)製スノーテックスPS−M(シリカ粒子径80nm〜150nm、pH=9.0〜10.5、シリカ濃度20%分散物、パールネックレス形状のシリカゾル)を20g/L添加した還元溶液(B17)を作製した。
【0088】
〈還元溶液(B18)の作製〉
前記還元溶液(B9)に更に、日産化学工業(株)製スノーテックスOUP(シリカ粒子径40nm〜100nm、pH=2.0〜4.0、シリカ濃度15%分散物、細長い形状のシリカゾル)を40g/L添加した還元溶液(B18)を作製した。
【0089】
このように調製したアンモニア性銀溶液(A)と還元溶液(B9〜B18)とを、上記の銀鏡皮膜被形成表面に、2頭スプレーガンを使用して同時に吹き付けて銀鏡を形成させ、精製水にて洗浄した。このスプレーガンは、銀溶液と還元溶液とを同時に被処理面に到達させ、瞬時に銀イオンが還元されて銀鏡皮膜を形成することを可能にする。
【0090】
最後に銀鏡皮膜表面にトップコート剤として藤倉化成(株)製の「PTC−02」をスプレー塗布し、約70℃の乾燥炉内で70分乾燥させることによりトップコート層を形成させた。
【0091】
還元溶液(B9〜B18)を用いて得られたそれぞれのメッキ製品について、得られた銀鏡皮膜を有する基材の色調の視覚的評価を実施した。評価結果を下記表2に示した。
【0092】
【表2】

【0093】
表2の結果より、本発明の活性化処理液を用いて得られた基材の銀鏡皮膜が金色の色調を有する銀鏡皮膜であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、カルボキシ基含有水溶性重合体の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。
【請求項2】
基材の表面に銀鏡皮膜を形成する方法において、二酸化珪素の水系分散物の存在下で銀鏡皮膜を形成することを特徴とする銀鏡皮膜の形成方法。