説明

銅微粒子の製造方法

【課題】所望の平均粒子径に制御された銅微粒子を簡便に製造することのできる、銅微粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】銅微粒子の製造方法は、銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、ゼラチンの存在下、前記銅化合物が持つ銅イオンを還元することにより、銅微粒子を得る方法において、前記ゼラチンの量を選択することによって前記銅微粒子の粒子径を制御する。粒子径の制御とともに粒子径分布の制御をも行うことが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅微粒子の製造方法に関し、詳しくは、銅イオンを還元して銅微粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属微粒子の製造方法としては、バルク金属を粉砕することによって微粒子を調製する物理法と、溶液中の金属イオンを還元することにより微粒子を調製する化学法(湿式法)が知られているが、均一な粒径の微粒子を得るためには化学法の方が一般に優れている。
【0003】
このような化学法として、例えば、少なくとも、銅イオン、ハロゲンイオンおよび有機物分散媒が溶解している還元反応溶液において、銅イオンの還元反応により粒子径が1〜500nmの範囲にある銅微粒子を析出させることを特徴とする銅微粒子の製造方法が知られている(特許文献1参照)。また、保護コロイドと金属微粒子を含有した分散液に保護コロイド除去剤を添加して金属微粒子を凝集させ、次いで、分別することを特徴とする金属微粒子の製造方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−231564号公報
【特許文献2】特開2009−19256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術は、粒径が小さく、粒度分布が比較的狭く、分散安定性に優れ、かつ、デンドロイト化が抑制された銅微粒子を、簡便かつ大量に生成できる金属微粒子の製造方法であるとされ、上記特許文献2の技術は、一般的な湿式法により得られる保護コロイドと金属微粒子を含有した分散液から保護コロイドを除去することで、金属微粒子を凝集させ、ろ過を容易とするものとされている。
【0006】
このように、従来技術としては、粒径を小さくすることや、金属微粒子の回収方法の改善などに関するものだけであり、粒子径を広範囲で制御するための方法については一切提案されてこなかったのであるが、金属微粒子の粒径は、如何なる用途に用いるかなどによって求められる値が異なるものであり、今後は、目的に応じて粒子径を制御することが必要となってくる。
【0007】
特に、従来、複数の誘電体層と複数の内部電極が積層された構造を有する積層セラミックスコンデンサ向けの電極材料などの用途において、その電極材料として、ニッケル微粒子が主として用いられてきたが、最近では、高導電性、高周波特性、低毒性、低融点、安価といった点でニッケル微粒子より優れる銅微粒子の使用が求められてきており、この場合、特に、銅微粒子の粒子径の制御が求められている。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、所望の平均粒子径に制御された銅微粒子を簡便に製造することのできる、銅微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、ゼラチンの存在下、前記銅化合物が持つ銅イオン還元することにより、銅微粒子を得る方法において、前記ゼラチンの量の大小によって、得られる銅微粒子の平均粒子径が大小変動することを見出し、その確認を経て、本発明を完成するに至った。
【0010】
なお、その際、銅微粒子の「融点」は結晶子の大きさによって定まるのであるが、ゼラチン量の選択によって粒子径制御した場合、結晶子の大きさを変化させることなく、この結晶子の集合体である粒子の粒子径を制御することができるため、その結晶子集合体粒子の粒子径の大小にかかわらず、融点の低いものが得られることも分かった。
【0011】
すなわち、本発明にかかる銅微粒子の製造方法は、銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、ゼラチンの存在下、前記銅化合物が持つ銅イオンを還元することにより、銅微粒子を得る方法において、前記ゼラチンの量を選択することによって前記銅微粒子の粒子径を制御することを特徴とする。
【0012】
以下において、銅化合物とは、錯体をも含む概念であり、銅化合物が持つ銅イオンとは、錯イオンをも含む概念である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所望の平均粒子径に制御でき、微小な銅微粒子を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例で得られた各銅微粒子のSEM写真である。
【図2】本発明の実施例において、ゼラチンの量と得られた銅微粒子の粒子径との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0016】
〔銅化合物〕
本発明にかかる銅微粒子の製造方法では、銅化合物が持つ銅イオンを還元することにより銅微粒子を得るようにするが、例えば、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、酸化物などの銅化合物を水系溶剤あるいは有機溶剤に溶解あるいは分散させるようにする。
【0017】
前記溶液に錯化剤を添加しても良く、この場合、前記錯化剤としては、特に限定されないが、例えば、配位子のドナー原子が、銅イオンまたは銅と結合して銅錯体化合物を形成し得る化合物を言い、ドナー原子としては、例えば、窒素、酸素、硫黄などが挙げられる。
【0018】
窒素がドナー原子である錯化剤としては、アミン類(例えば、ブチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどの1級アミン類、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、および、ピペリジン、ピロリジンなどのイミン類などの2級アミン類、トリブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどの3級アミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンの1分子内に1〜3級アミンを2種以上有するものなど)、窒素含有複素環式化合物(例えば、イミダゾール、ピリジン、ビピリジンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)およびシアン化合物、アンモニアおよびアンモニウム化合物(例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムなど)、オキシム類などが挙げられる。
【0019】
酸素がドナー原子である錯化剤としては、カルボン酸類(例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などのオキシカルボン酸類、酢酸、ギ酸などのモノカルボン酸類、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸類、安息香酸などの芳香族カルボン酸類など)、ケトン類(例えば、アセトンなどのモノケトン類、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトンなどのジケトン類など)、アルデヒド類、アルコール類(1価アルコール類、グリコール類、グリセリン類など)、キノン類、エーテル類、リン酸(正リン酸)およびリン酸系化合物(例えば、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、次亜リン酸など)、スルホン酸またはスルホン酸系化合物などが挙げられる。
【0020】
硫黄がドナー原子である錯化剤としては、脂肪族チオール類(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルメルカプタンなど)、脂環式チオール類(シクロヘキシルチオールなど)、芳香族チオール類(チオフェノールなど)、チオケトン類、チオエーテル類、ポリチオール類、チオ炭酸類(トリチオ炭酸類)、硫黄含有複素環式化合物(例えば、ジチオール、チオフェン、チオピランなど)、チオシアナート類およびイソチオシアナート類、無機硫黄化合物(例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素など)などが挙げられる。
【0021】
2種以上のドナー原子を有する錯化剤としては、アミノ酸類(ドナー原子が窒素および酸素:例えば、グリシン、アラニンなどの中性アミノ酸類、ヒスチジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸類、アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸類)、アミノポリカルボン酸類(ドナー原子が窒素および酸素:例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、エチレンジアミンジ酢酸(EDDA)、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸(GEDA)など)、アルカノールアミン類(ドナー原子が窒素および酸素:例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、ニトロソ化合物およびニトロシル化合物(ドナー原子が窒素および酸素)、メルカプトカルボン酸類(ドナーが硫黄および酸素:例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、ジメルカプトコハク酸、チオ酢酸、チオジグリコール酸など)、チオグリコール類(ドナーが硫黄および酸素:例えば、メルカプトエタノール、チオジエチレングリコールなど)、チオン酸類(ドナーが硫黄および酸素)、チオ炭酸類(ドナー原子が硫黄および酸素:例えば、モノチオ炭酸、ジチオ炭酸、チオン炭酸)、アミノチオール類(ドナーが硫黄および窒素:アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミンなど)、チオアミド類(ドナー原子が硫黄および窒素:例えば、チオホルムアミドなど)、チオ尿素類(ドナー原子が硫黄および窒素)、チアゾール類(ドナー原子が硫黄および窒素:例えばチアゾール、ベンゾチアゾールなど)、含硫黄アミノ酸類(ドナーが硫黄、窒素および酸素:システイン、メチオニンなど)などが挙げられる。
【0022】
上記の化合物の塩や誘導体としては、例えば、クエン酸トリナトリウム、酒石酸ナトリウム・カリウム、次亜リン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウムなどのアルカリ金属塩や、カルボン酸、リン酸、スルホン酸などのエステルなどが挙げられる。
【0023】
〔ゼラチン〕
本発明に用いるゼラチンは、牛や豚などの哺乳動物の骨、皮部分や、サメやティラピアなどの魚類の骨、皮、鱗部分などのコラーゲンを含有する原料から従来公知の方法で得ることができ、具体的には、例えば、熱水抽出、アルカリ処理、酸処理などによって得ることができる。
【0024】
本発明は、上記ゼラチンの量によって、得られる銅微粒子の粒子径を制御するものである。ゼラチンの量としては、特に限定されないが、例えば、その添加量を、銅化合物100重量部に対し5〜60重量部の範囲とすることができる。
【0025】
〔還元処理〕
本発明にかかる銅微粒子の製造方法における還元処理としては、特に限定されず、例えば、還元剤を添加することによって行っても良いし、還元剤を用いない電解還元などによる還元処理であっても良い。
【0026】
前記還元剤としては、特に限定されず、例えば、ヒドラジンや、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、抱水ヒドラジンなどのヒドラジン系還元剤や、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム、亜リン酸、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、アルデヒド類、アルコール類、アミン類、糖類などが挙げられ、これらを1種または2種以上を用いても良い。還元剤の還元作用を促すために、必要に応じて、温度やpHを調整するようにしても良い。例えば、還元温度は10〜50℃が好ましく、pHは11.5〜12.5が好ましい。また、還元剤の使用量は、銅イオンを還元するのに適した量であれば、特に限定されず、例えば、銅化合物に含まれる銅元素1モルに対し0.2〜5モルの範囲とすることができる。
【0027】
電解還元を行う場合、陰極材料としては、白金、カーボンなどの棒状、板状電極、ドット電極のようなナノ構造電極が例示でき、陽極としては、銅、カーボン、白金などの棒状・板状・網状の形状電極が例示できる。なお、陰極表面付近に析出した粒子を脱離、回収するために陰極に超音波振動などの揺動を与えることが可能な構造とすることもできる。電流密度は好ましくは0.01〜100kA/dm、より好ましくは0.1〜50kA/dm程度であり、直流のほかパルス電流とすることもできる。還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒径は小さくなる傾向がある。
【0028】
具体的には、例えば、上記した電極を有する浴中に、銅イオン、保護コロイド、錯化剤などを含む溶液を調製し、上記した条件で電解還元反応を行い、還元反応終了後、カソード表面付近に析出した銅微粒子を回収する。
【0029】
いずれの還元処理を採用する場合においても、ハロゲンイオン存在下で行うことにより、デンドロイト状の凝集を抑制し、粒子径分布の狭い銅微粒子が得られやすいので、これにより、銅微粒子の粒子径分布を制御することができる。ハロゲンイオンは、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンおよび沃素イオンから選択される1種または2種以上であり、イオン性ハロゲン化物が該ハロゲンイオンの供給源となることができ、その具体例としては、塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、弗化アンモニウムなどが挙げられる。これらは2種以上であってもよい。上記ハロゲンイオンのうち特に好ましいのは、塩素イオンである。ハロゲンイオンの濃度は、溶液中において0.002〜1.0モル/リットル(L)が好ましい。ハロゲンイオンの濃度が前記0.002モル/L未満では一価ないし二価の銅イオン性化合物の混入という不都合を生じ、1.0モル/Lを超えるとハロゲンイオンの除去に不都合を生じる場合がある。より好ましいハロゲンイオンの濃度は、0.005〜0.2モル/Lである。
【0030】
また、いずれの還元処理を採用した場合においても、銅微粒子を析出させた後は、ろ過や遠心分離などによる銅微粒子の回収、洗浄、乾燥などの通常の処理を行うことができる。
【0031】
〔銅微粒子の用途〕
本発明にかかる銅微粒子の製造方法により得られる銅微粒子は、例えば、インクペースト化することで、電極材料や配線材料に好適に利用でき、特に、積層セラミックスコンデンサ向けの電極材料に好適に利用できる。積層セラミックスコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極が積層された構造を有するものであり、その電極材料としては、従来、ニッケル微粒子が主として用いられてきたが、本発明にかかる製造方法で得られる銅微粒子は、高導電性、高周波特性、低毒性、低融点、安価といった点でニッケル微粒子より優れる銅微粒子の製造方法としても適用可能である。
【0032】
本発明にかかる製造方法で得られる銅微粒子をペースト化する方法としては、例えば、銅微粒子を有機溶媒に添加し混練する方法が挙げられるが、前記有機溶媒としては、例えば、テルピネオール、デカノール、ヘキサノール、メタノール、エタノール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジオール類、グリコール類、ポリオール類などのアルコール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミン類、ヘキサン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン、ウンデカン、テトラウンデカンなどの炭化水素類、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのエステル類を用いることができる。このとき、銅微粒子と有機溶媒との重量比率は、例えば、1:1〜1.1とするのが好ましい。また、ペーストの物性安定化や品質向上のために、エチルセルロースなどの有機バインダーや、可塑剤、増粘防止剤、分散剤などの添加剤を加えても良い。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
下記実施例において、銅微粒子の平均粒子径は、以下の測定方法により算出した値である。
【0035】
<銅微粒子の平均粒子径>
SEM写真観察により視野から無作為に粒子を選択して平均粒子径を求めた。
【0036】
〔実施例〕
水100mLに、硫酸銅五水和物5g、L−酒石酸ナトリウム二水和物2g、下記所定量の「G−0856K」(魚由来ゼラチン、新田ゼラチン社製)を添加し混合したのち、水酸化ナトリウム6gを添加してpHを調整し、さらに30分間撹拌を続けた。その後、10Mヒドラジン水溶液30mLを加え、1.5時間撹拌した。得られた銅微粒子を含む溶液をろ過、洗浄、乾燥して、銅微粒子を回収した。
【0037】
上記操作を、ゼラチンの量を、8mg、40mg、80mg、200mg、400mg、800mgとして行った。
【0038】
〔結果〕
実施例で得られた各銅微粒子の平均粒子径を表1に示すとともに、各銅微粒子のSEM写真を図1に示した。
【0039】
また、図2には、ゼラチンの量と銅微粒子の平均粒子径との関係を示すとともに、ゼラチンの量と銅微粒子の結晶子の平均粒子径との関係を示した。なお、結晶子の平均粒子径は、X線回折法で得られたデータに基づき、シェラーの式から算出した値である。
【0040】
【表1】

【0041】
表1および図1,2に示す結果から、銅微粒子の平均粒子径は、ゼラチンの量によって制御できていることが分かる。すなわち、粒子径は添加したゼラチンの量に大きく依存し、ゼラチン量が増大するにつれ、粒子径が増大している。これは、ゼラチンと銅イオンとの錯形成の促進が粒子の増大に寄与しているためと推測される。粒子径分布は、粒子径の増大とともに大きくなるが、電極形成を阻害するような粗大粒子は、いずれの実施例においても見受けられず、本発明の方法により得られるナノ粒子の均一性が評価できる。
【0042】
さらに、図2に示す結果からは、銅微粒子が、微小な結晶子の集合体であることが確認できるとともに、銅微粒子の結晶子の平均粒子径については、ゼラチンの量によらず、ほぼ一定の低い値となっていることが分かる。銅微粒子の融点は、その結晶子の大きさに依存するので、前記結果は、所望の平均粒子径を有するものであって、かつ、常に低い融点を持った銅微粒子を製造し得ることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、銅微粒子が適用される種々の分野、例えば、電子材料部品、低融点銅はんだ、銅微粒子ペーストなどの分野、特に積層セラミックスコンデンサ用の電極材料に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅化合物が溶解あるいは分散している液中で、ゼラチンの存在下、前記銅化合物が持つ銅イオンを還元することにより、銅微粒子を得る方法において、前記ゼラチンの量を選択することによって前記銅微粒子の粒子径を制御することを特徴とする、銅微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記粒子径の制御とともに粒子径分布の制御をも行う、請求項1に記載の銅微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−52283(P2011−52283A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202944(P2009−202944)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 平成21年度 日本鉄鋼協会・日本金属学会 両支部合同サマーセッション 主催者名 社団法人 日本鉄鋼協会北海道支部 升光 法行 社団法人 日本金属学会北海道支部 井口 学 開催日 平成21年7月24日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、ナノテクノロジープログラム(ナノマテリアル・プロセス技術)/ナノテク・先端部材実用化研究開発事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】