説明

銅箔のめっき方法及びそのめっき装置

【課題】めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れない工夫をすることにより、銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを改善した銅箔のめっき方法及びそのめっき装置を提供すること。
【解決手段】めっき液3を入れためっき槽4内に設置された陽極板6に対向して長尺の銅箔2を平行に走行させることにより銅箔2の片面を連続的にめっきする方法において、陽極板6の位置に対応する銅箔2の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板8を設けた状態で銅箔2の片面を連続的にめっきする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い銅条を含む銅箔のめっき方法及びそのめっき装置に関し、特に銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時にその幅方向のめっきの膜厚分布を改善した銅箔のめっき方法及びそのめっき装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高性能化、低コスト化によって、配線板などの電子部品材料にも高性能化、低コスト化の要求が高まっている。このため、例えば配線板の製造に使用される銅箔に対しては、その表面を平滑化、粗化、防錆処理する等の目的で銅箔を電気めっきすることが行われている。
【0003】
配線板の製造に使用される銅箔には、その製造方法によって電解銅箔と圧延銅箔がある。電解銅箔は、チタンなどの回転する陰極ドラムと、その陰極ドラムに沿って配置された不溶性陽極を使用し、さらに、めっき液を使用して陰極ドラム上に析出(電気めっき)された銅を引き剥がすことにより連続的に製造される。一方、圧延銅箔は、鋳造された銅の塊(インゴット、ケーク等)を繰り返し圧延及び焼鈍して薄く平らにすることにより製造される。
【0004】
これらの銅箔は、いずれもコイル巻きされた状態で取り扱われるが、既に述べた通り、これらの銅箔に対しては、その表面を平滑化、粗化、防錆処理する等の目的で銅箔を電気めっきしたり、さまざまな機能を付与する目的で銅箔を表面処理することが一般に行われている。この場合、一度に表面処理可能な銅箔の面積を増やすことによって、銅箔の表面処理効率が向上し、銅箔の低コスト化が可能になることから、銅箔の大面積化、広幅化が望まれている。
【0005】
図5に、一般に採用されている縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図を示す。このめっき装置1において、所定の幅を有する長尺の銅箔2は、図示しない送り出しリールから送り出され、めっき液3を入れためっき槽4の内外に設置された複数の搬送用ロール5を介してめっき槽4を経由して、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。いわゆるリール・ツー・リール方式によって、銅箔2は搬送される。
【0006】
めっき槽4内において、長尺の銅箔2は、めっき槽4内に設置された陽極板6に対向して平行に走行され、この際、所定の金属イオンを含有するめっき液3の下で陰極電解によりその片面が連続的に電気めっきされる。この電気めっきは、必要により複数回連続して行われ、図5の場合、陽極板6の数に応じて2回連続して電気めっきされる。また、めっき槽4内のめっき液3は、随時、めっきにより消費された成分の補充や新たに建浴されためっき液の投入とともに循環されるようになっている。
【0007】
めっき槽4内に設置された陽極板6としては、通常、チタン板などの表面に酸化イリジウム、白金などを被覆した不溶性陽極板が用いられる。めっき液3中に添加剤として有機化合物成分が含まれる場合は、不溶性陽極板では添加剤の消費が早くなるため、銅箔と不溶性陽極板の間をイオン交換膜で仕切ることがある。また、めっきの種類によっては、可溶性陽極板を用いることがある。
【0008】
ここで、陽極板6の幅は、銅箔2のめっきすべき幅(必要めっき幅)によって決まる。図5のめっき装置1を用いた従来の銅箔のめっき方法においては、前記陽極板6に対し、銅箔2の幅方向全体に均一に電気めっきすることが難しいという大きな課題がある。さらに、陽極板6に対向していない銅箔2の反対側の面(非めっき面)にも、電流が回り込んでめっき金属が析出してしまうという問題がある。これを図6により説明すると、図6は図5のめっき装置1の上面概略図を示し、併せて、めっき時の電流分布を示す。この図2から分かるように、めっき槽4内に設置された陽極板6に対向して平行に(紙面垂直方向に)走行される銅箔2の両端部には、陽極板6からの電流線7が集中しやすく、この結果、銅箔2の両端部では電流密度が増加し、めっき厚が厚くなったり、膜質が変化したりする。また、銅箔2の反対側の面(非めっき面)にも、電流が回り込んでめっき金属が析出してしまう。
【0009】
めっき厚が厚くなったり、膜質が変化したりする銅箔2の両端部は、いわゆる不均一なめっき部分として配線板などの不良の原因となるので除去する必要があり、これは歩留まりの低下並びにコスト上昇の要因となる。また、銅箔2の反対側の面(非めっき面)へのめっき金属の析出は、変色などの不良発生の要因となる。
【0010】
これに関連し、特許文献1には、銅箔と対向すべく電解槽内に設置されたアノード板の前を連続的に銅箔を通過させることにより銅箔の表面処理を行う際に、通過する銅箔の両エッジ部とアノード板の両エッジ部との間に一対の絶縁性整流板を配置して表面処理を行う、銅箔の表面処理方法が提案されている。また、その際に、アノード板と通過する銅箔との間に両者を部分的に遮蔽する絶縁性遮蔽板を設けて表面処理を行う、銅箔の表面処理方法が提案されている。
【0011】
また、特許文献2には、表面に導電膜を形成したフィルムの表面をめっき槽内を通過させることによりめっきする方法において、フィルムの通過部分と陽極電極との間に、陽極電極からフィルムへの電流分布をほぼ均一にさせる導電板を配置し、さらに、両者の間に、フィルムの幅方向両端部への電流集中を防ぐシールド板を設ける、フィルムのめっき方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−328194号公報
【特許文献2】特開平7−228992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、めっき処理中のめっき液の流れについて十分に考慮されておらず、めっき液を入れためっき槽内の銅箔と陽極板との間に整流板や遮蔽板、あるいは導電板やシールド板を配置すると、めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れてめっき反応が不均一になり、これが銅箔の幅方向におけるめっきの膜厚分布や膜質のばらつきの要因となることが新たな知見=(イコール)課題として分かった。
【0014】
したがって、本発明の目的は、上記に鑑み、めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れない工夫をすることにより、銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを改善した銅箔のめっき方法及びそのめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、めっき液を入れためっき槽内に設置された陽極板に対向して長尺の銅箔を平行に走行させることにより前記銅箔の片面を連続的にめっきする方法において、前記陽極板の位置に対応する前記銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けた状態で前記銅箔の片面を連続的にめっきすることを特徴とする銅箔のめっき方法を提供する。
【0016】
上記において、所定の間隔とは、銅箔が非接触状態で容易に通過し得る間隔をいう。また、銅箔としては、電解銅箔及び圧延銅箔のいずれも適用可能である。
【0017】
この銅箔のめっき方法によれば、上記構成の採用により、特に陽極板の位置に対応する銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けた状態で銅箔の片面を連続的にめっきすることにより、めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れてめっき反応が不均一になる恐れがなくなると共に、前記遮蔽板の存在により銅箔の非めっき面への電流の回り込みによるめっき金属の析出が抑制され、銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを著しく改善することができる。
【0018】
請求項2の発明は、前記遮蔽板が、前記銅箔の両端に対応するその側面の位置が前記銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることを特徴とする請求項1に記載の銅箔のめっき方法を提供する。
【0019】
この銅箔のめっき方法によれば、請求項1の発明の効果に加えて、銅箔の両端に対応する遮蔽板の側面の位置が銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることにより、めっき時に銅箔の非めっき面への電界の広がりを抑えることができ、遮蔽板が存在しない場合に非めっき面へ向かっていた電流線がめっき面へ向かうことになり、これにより請求項1の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【0020】
請求項3の発明は、前記間隔が、前記遮蔽板と前記銅箔との間の垂直距離で3〜15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅箔のめっき方法を提供する。
【0021】
上記において、遮蔽板と銅箔との間の間隔が3mmに満たない近接した位置関係にある場合には、処理すべき銅箔を取り替える際に遮蔽板と銅箔が接触する可能性が高くなり、メンテナンスが困難になる。一方、遮蔽板と銅箔との間の間隔が15mmを超える離れた位置関係にある場合には、遮蔽板による電流遮蔽効果が十分に得られなくなる。
【0022】
この銅箔のめっき方法によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、遮蔽板と銅箔との間の間隔を垂直距離で3〜15mmとすることにより、処理すべき銅箔を取り替える際に遮蔽板と銅箔との接触が起きにくくなり、これによりそのメンテナンスが容易になると共に、遮蔽板による電流遮蔽効果を十分に発揮させることができる。
【0023】
請求項4の発明は、前記銅箔走行方向の前記遮蔽板の長さが、同方向の前記陽極板の長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔のめっき方法を提供する。
【0024】
この銅箔のめっき方法によれば、請求項1〜3のいずれかの発明の効果に加えて、銅箔走行方向の遮蔽板の長さを同方向の陽極板の長さよりも長くすることにより、陽極板の長さに対応する銅箔の長さ(処理範囲)の全長にわたって遮蔽効果を確実に発揮させることができる。
【0025】
請求項5の発明は、前記遮蔽板が、前記陽極板に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の銅箔のめっき方法を提供する。
【0026】
この銅箔のめっき方法によれば、請求項1〜4のいずれかの発明の効果に加えて、遮蔽板を陽極板に固定することにより、遮蔽板専用の固定治具を不要とすることができる。また、この場合、遮蔽板を陽極板の銅箔対向面側に固定することにより、固定部分の遮蔽板の幅(寸法)によって陽極板の実効幅を容易に調整することができる。さらに、この調整により、幅の異なる銅箔に取り替えたときに銅箔と陽極板の位置関係に基づく遮蔽条件の調整を容易に行うことができる。
【0027】
請求項6の発明は、めっき液を入れためっき槽内に設置された陽極板に対向して長尺の銅箔を平行に走行させることにより前記銅箔の片面を連続的にめっきする装置において、前記陽極板の位置に対応する前記銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けたことを特徴とする銅箔のめっき装置を提供する。
【0028】
この銅箔のめっき装置によれば、上記構成の採用により、特に陽極板の位置に対応する銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けたことにより、めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れてめっき反応が不均一になる恐れがなくなると共に、前記遮蔽板の存在により銅箔の非めっき面への電流の回り込みによるめっき金属の析出が抑制され、銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを著しく改善することができる。
【0029】
請求項7の発明は、前記遮蔽板が、前記銅箔の両端に対応するその側面の位置が前記銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることを特徴とする請求項6に記載の銅箔のめっき装置を提供する。
【0030】
この銅箔のめっき装置によれば、請求項6の発明の効果に加えて、銅箔の両端位置に対応する遮蔽板の側面の位置が銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることにより、めっき時に銅箔の非めっき面への電界の広がりを抑えることができ、遮蔽板が存在しない場合に非めっき面へ向かっていた電流線がめっき面へ向かうことになり、これにより請求項6の発明の効果をより確実なものとすることができる。
【0031】
請求項8の発明は、前記間隔が、前記遮蔽板と前記銅箔との間の垂直距離で3〜15mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の銅箔のめっき装置を提供する。
【0032】
この銅箔のめっき装置によれば、請求項6又は7の発明の効果に加えて、遮蔽板と銅箔との間の間隔を垂直距離で3〜15mmとすることにより、処理すべき銅箔を取り替える際に遮蔽板と銅箔との接触が起きにくくなり、これによりそのメンテナンスが容易になると共に、遮蔽板による電流遮蔽効果を十分に発揮させることができる。
【0033】
請求項9の発明は、前記銅箔走行方向の前記遮蔽板の長さが、同方向の前記陽極板の長さよりも長いことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の銅箔のめっき装置を提供する。
【0034】
この銅箔のめっき装置によれば、請求項6〜8のいずれかの発明の効果に加えて、銅箔走行方向の遮蔽板の長さを同方向の陽極板の長さよりも長くすることにより、陽極板の長さに対応する銅箔の長さ(処理範囲)の全長にわたって遮蔽効果を確実に発揮させることができる。
【0035】
請求項10の発明は、前記遮蔽板が、前記陽極板に固定されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の銅箔のめっき装置を提供する。
【0036】
この銅箔のめっき装置によれば、請求項6〜9のいずれかの発明の効果に加えて、遮蔽板を陽極板に固定することにより、遮蔽板専用の固定治具を不要とすることができる。また、この場合、遮蔽板を陽極板の銅箔対向面側に固定することにより、固定部分の遮蔽板の幅(寸法)によって陽極板の実効幅を容易に調整することができる。さらに、この調整により、幅の異なる銅箔に取り替えたときに銅箔と陽極板の位置関係に基づく遮蔽条件の調整を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の銅箔のめっき方法及びそのめっき装置によれば、銅箔の非めっき面へのめっき付着を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図である。
【図2】図1のめっき装置の上面概略図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図である。
【図4】本発明の更に他の実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図である。
【図5】従来の縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図である。
【図6】図5のめっき装置の上面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好適な実施の形態を図1〜4に基づいて詳述する。
【0040】
図1は本発明の一実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図であり、図2は図1のめっき装置の上面概略図である。図2には、めっき時の電流分布が併せて示される。
【0041】
このめっき装置の基本的な構成は、既に述べた図5及び図6のめっき装置と同じである。したがって、内容を分かり易くするため、同一部材には同一符号を付して説明する。
【0042】
図1及び図2のめっき装置10において、図示しない送り出しリールから送り出された所定の幅を有する長尺の銅箔2は、めっき液3を入れためっき槽4の内外に設置された複数の搬送用ロール5を介してめっき槽4を経由し、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0043】
めっき槽4内において、長尺の銅箔2は、めっき槽4内に設置された陽極板6に対向して平行に走行され、この際、所定の金属イオンを含有するめっき液3の下で陰極電解によりその片面が連続的に電気めっきされる。この電気めっきは、必要により複数回連続して行われ、この実施の形態の場合は、陽極板6の数に応じて2回連続して電気めっきされる。また、めっき槽4内のめっき液3は、随時、めっきにより消費された成分の補充や新たに建浴されためっき液の投入とともに循環されるようになっている。
【0044】
8は、銅箔2を間において、めっき槽4内に設置された陽極板6の位置に対応して設けられた絶縁性の遮蔽板である。図2に見られるように、遮蔽板8は、陽極板6に対向する銅箔2の反対側の面(非めっき面)の両端付近の面に所定の間隔Dをおいて設けられる。7は陽極板6から銅箔2に向かって流れる電流の電流線である。図2によれば、このように遮蔽板8を設けることにより、めっきすべき銅箔2表面部分のめっき液3の流れが乱れてめっき反応が不均一になる恐れがなくなると共に、前記遮蔽板8の存在により銅箔2の非めっき面への電流の回り込みによるめっき金属の析出が抑制され、銅箔2の非めっき面へのめっき付着(変色発生)を防止すると同時に銅箔2の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを著しく改善することができる。
【0045】
前記間隔Dは、遮蔽板8と銅箔2との間の垂直距離で3〜15mmであり、こうすることにより、処理すべき銅箔2を取り替える際に遮蔽板8と銅箔2との接触が起きにくくなり、そのメンテナンスが容易になると共に、遮蔽板8による電流遮蔽効果を十分に発揮させることができる。
【0046】
また、銅箔走行方向の遮蔽板8の長さが、同方向の陽極板6の長さよりも長くなっており、こうすることにより、陽極板6の長さに対応する銅箔2の長さ(処理範囲)の全長にわたって遮蔽効果を確実に発揮させることができる。
【0047】
なお、図2においては、銅箔2と陽極板6の幅はほぼ同等であるが、銅箔2の非めっき面の両端付近の面に設けられた遮蔽板8の側面は、夫々銅箔2及び陽極板6の両端よりも外側に10mm程度はみ出している。こうすることにより、陽極板6からの電流の回り込みに対し非めっき面を効果的に遮蔽することができる。これは、銅箔2の両端に対応する遮蔽板8の側面の位置が銅箔2の両端よりも外側にはみ出していることにより、めっき時に銅箔2の非めっき面への電界の広がりを抑えることができ、遮蔽板8が存在しない場合に非めっき面へ向かっていた電流線がめっき面へ向かうことになり、これにより遮蔽効果が効果的に高められるからである。
【0048】
図3は、本発明の他の実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図であり、この実施の形態においては、遮蔽板80は、陽極板6に対向する銅箔2の反対側の面(非めっき面)の全面に単一板として設けられる。また、遮蔽板80の幅が、陽極板6の幅よりも大きくなっている。これによっても、同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、図4は、本発明の更に他の実施の形態に係る縦型の銅箔のめっき装置の側面概略図であり、この実施の形態においては、遮蔽板800が陽極板5の銅箔対向面側に固定されており、こうすることにより遮蔽板800専用の固定治具を不要とすることができると共に、固定部分の遮蔽板800の幅(寸法)によって陽極板6の実効幅を容易に調整することができる。この調整により、幅の異なる銅箔2に取り替えたときに銅箔2と陽極板6との位置関係に基づく遮蔽条件の調整を容易に行うことができる。
【0050】
このほか、図2〜4の本発明の実施の形態で採用されている部材等の寸法について補足説明すると、銅箔2の幅については、理論上の制限はなく、実用上100〜2000mm程度のものを使用することができる。ここでは600〜700mmのものを使用した。また、搬送用ロール5の直径については、φ100〜300mmのものを使用したが、めっき液への直接的な影響はない。また、陽極板6の大きさについては、銅箔2の被めっき面積と同程度の大きさとすることが望ましく、ここでは幅700mm、高さ900m、厚さ12mmのものを使用した。なお、陽極板6の幅については、銅箔2の幅よりも小さめが良く、例えば銅箔2の幅が600mm程度であれば、陽極板6の幅は570mm程度とするのが好ましい。また、陽極板6の高さについては、めっき処理時間に応じて変えるようにする。また、陽極板6の材質については、ここでは表面に白金(Pt)や酸化イリジウム(IrO2)をコーティングしたチタン板を使用した。また、遮蔽板8の寸法については、厚さについては強度上問題がなければよく、ここでは厚さ5〜20mmの塩化ビニル製の板を使用した。さらに、銅箔2の移動速度については、理論上の制限はないが、実用範囲は0.1〜20m/分程度であり、ここでは1〜18m/分を採用した。搬送用ロール5の回転速度については、銅箔2の移動速度に順ずるものとした。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
図1及び図2の銅箔のめっき装置を用いて、厚さ15μmの銅箔2の片面に電流密度2A/dm2で5秒間電解処理することによりニッケルを電気めっきした。ニッケルめっき液としては、硫酸ニッケル六水和物300g/dm3、塩化ニッケル45g/dm3、硼酸50g/dm3を含む水溶液を用いた。めっき液温は50℃とした。また、遮蔽板8としては、塩化ビニル製の板を用いた。遮蔽板8と銅箔2との間の間隔Dは3mmとし、銅箔2走行方向の遮蔽板8の長さは同方向の陽極板6の長さよりも10mm長くした。なお、電流密度や電解処理時間(めっき時間)、めっき液中のニッケル濃度、めっき液温、めっき液PH等のめっき諸条件は、めっきの要求機能に基づいて技術的に許容可能な範囲で適宜定めることができる。
【0052】
(実施例2)
遮蔽板8と銅箔2との間の間隔Dを5mmとすると共に、図4に見られるように遮蔽板8を陽極板6の銅箔対向面側に固定した以外は、実施例1と同じ方法で銅箔2の片面にニッケルを電気めっきした。
【0053】
(実施例3)
遮蔽板8と銅箔2との間の間隔Dを15mmとした以外は、実施例1と同じ方法で銅箔2の片面にニッケルを電気めっきした。
【0054】
(実施例4)
遮蔽板8と銅箔2との間の間隔Dを1mmとすると共に、銅箔2走行方向の遮蔽板8の長さを同方向の陽極板6の長さと同じにした以外は、実施例1と同じ方法で銅箔2の片面にニッケルを電気めっきした。
【0055】
(実施例5)
遮蔽板8と銅箔2との間の間隔Dを17mmとすると共に、銅箔2走行方向の遮蔽板8の長さを同方向の陽極板6の長さよりも10mm短くした以外は、実施例1と同じ方法で銅箔2の片面にニッケルを電気めっきした。
【0056】
(比較例1)
遮蔽板8を用いない以外は、実施例1と同じ方法で銅箔2の片面にニッケルを電気めっきした。
【0057】
実施結果について、以下の項目で、その評価方法に基づいて評価を行った。
【0058】
(膜厚ばらつき)
銅箔幅方向におけるニッケルめっきの膜厚ばらつきについては、Inductively Coupled Plasma(ICP)分析によりニッケルの付着量から求めた。また、膜厚ばらつきの数値は、銅箔幅方向における中央部のニッケル付着量に対する両端部のニッケル付着量を平均した値の割合(%)で示した。
【0059】
(変色発生位置)
銅箔の非めっき面の変色発生位置については、目視により観察し、変色が見られる部位の長さを銅箔の端部からの距離(mm)で評価した。
【0060】
表1に評価結果を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1より、ニッケルめっきの膜厚ばらつきに関しては、陽極板に対向する銅箔の反対側の面(非めっき面)に遮蔽板を設けた実施例1〜5では、膜厚ばらつきが95%以上と高く、これに対し遮蔽板を設けない比較例1では、めっきの膜厚ばらつきが80%以下であることが分かる。また、銅箔の非めっき面の変色発生位置に関しては、同様に遮蔽板を設けた実施例1〜5では、20mm以下であり、これに対し遮蔽板を設けない比較例1では、46mmであり、大きく改善されていることが分かる。
【0063】
この結果、本発明においては、陽極板の位置に対応する銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けることにより、めっきすべき銅箔表面部分のめっき液の流れが乱れてめっき反応が不均一になる恐れがなくなることは勿論、遮蔽板の存在により銅箔の非めっき面への電流の回り込みによるめっき金属の析出が抑制され、銅箔の非めっき面へのめっき付着(変色発生)を防止すると同時に銅箔の幅方向における均一なめっき処理を可能とし、これにより同方向のめっきの膜厚分布や膜質のばらつきを著しく改善できることが分かる。
【0064】
以上の実施例では、ニッケルめっきの場合についてのみ述べたが、銅、コバルト、錫、インジウム及びこれらの合金等のめっきについても、同様に適用可能なことは勿論である。また、これらのめっき処理について、実施可能なめっき条件の下記に例示するが、これに限定されるものではない。
【0065】
(銅めっき)
銅濃度:1〜200g/L、
めっき液温度:15〜60℃、PH:1.0〜3.0、
電流密度:15〜50A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(ニッケルめっき)
ニッケル濃度:1〜30g/L、
めっき液温度:15〜60℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:0.5〜5A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(コバルトめっき)
コバルト濃度:1〜30g/L、
めっき液温度:15〜60℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:0.5〜5A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(錫めっき)
錫濃度:5〜100g/L、
めっき液温度:15〜40℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:1.0〜5A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(インジウムめっき)
インジウム濃度:10〜50g/L、
めっき液温度:15〜40℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:1.0〜20A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(亜鉛−コバルトめっき)
亜鉛濃度:1〜20g/L、コバルト濃度:1〜30g/L
めっき液温度:15〜50℃、PH:1.5〜4.0、
電流密度:0.5〜5A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(銅−ニッケルめっき)
Cu濃度:1〜30g/L、Ni濃度:1〜30g/L、
めっき液温度:15〜50℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:10〜45A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(銅−コバルトめっき)
Cu濃度:5〜20g/L、Co濃度:5〜20g/L、
めっき液温度:25〜50℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:10〜45A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(亜鉛−ニッケルめっき)
亜鉛濃度:1〜10g/L、Ni濃度:10〜30g/L、
めっき液温度:40〜50℃、PH:3.0〜4.0、
電流密度:0.5〜5A/dm2、めっき時間:1〜30秒
(コバルト−ニッケルめっき)
Co濃度:5〜20g/L、Ni濃度:5〜20g/L、
めっき液温度:20〜50℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:0.5〜10A/dm2、めっき時間:1〜180秒
(銅−コバルト−ニッケルめっき)
Co濃度:1〜15g/L、Ni濃度:1〜15g/L、
Cu濃度:5〜25g/L、
めっき液温度:20〜50℃、PH:1.0〜4.0、
電流密度:0.5〜10A/dm2、めっき時間:1〜180秒
【0066】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、その発明の範囲において種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1、10 めっき装置
2 銅箔
3 めっき液
4 めっき槽
5 搬送用ロール
6 陽極板
7 電流線
8、80、800 遮蔽板
D 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を入れためっき槽内に設置された陽極板に対向して長尺の銅箔を平行に走行させることにより前記銅箔の片面を連続的にめっきする方法において、前記陽極板の位置に対応する前記銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けた状態で前記銅箔の片面を連続的にめっきすることを特徴とする銅箔のめっき方法。
【請求項2】
前記遮蔽板が、前記銅箔の両端に対応するその側面の位置が前記銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることを特徴とする請求項1に記載の銅箔のめっき方法。
【請求項3】
前記間隔が、前記遮蔽板と前記銅箔との間の垂直距離で3〜15mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅箔のめっき方法。
【請求項4】
前記銅箔走行方向の前記遮蔽板の長さが、同方向の前記陽極板の長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の銅箔のめっき方法。
【請求項5】
前記遮蔽板が、前記陽極板に固定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の銅箔のめっき方法。
【請求項6】
めっき液を入れためっき槽内に設置された陽極板に対向して長尺の銅箔を平行に走行させることにより前記銅箔の片面を連続的にめっきする装置において、前記陽極板の位置に対応する前記銅箔の反対側の面(非めっき面)の全面もしくは両端付近の面に所定の間隔をおいて絶縁性の遮蔽板を設けたことを特徴とする銅箔のめっき装置。
【請求項7】
前記遮蔽板が、前記銅箔の両端に対応するその側面の位置が前記銅箔の両端よりも外側にはみ出ていることを特徴とする請求項6に記載の銅箔のめっき装置。
【請求項8】
前記間隔が、前記遮蔽板と前記銅箔との間の垂直距離で3〜15mmであることを特徴とする請求項6又は7に記載の銅箔のめっき装置。
【請求項9】
前記銅箔走行方向の前記遮蔽板の長さが、同方向の前記陽極板の長さよりも長いことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の銅箔のめっき装置。
【請求項10】
前記遮蔽板が、前記陽極板に固定されていることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の銅箔のめっき装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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