説明

銅表面を処理するための組成物およびその方法

本発明は、銅不動態化のための組成物およびこのような組成物の使用の方法に関する。特定の銅不動態化組成物を使用することによって銅腐食問題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅不動態化のための組成物およびこのような組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスには、該プロセス中に多くのプロセスおよび化学反応が含まれる。フロントエンド製造プロセス、またはウェハプロセスには、ウェハ製造、トランジスタ形成(すなわち、ラインプロセスのフロントエンド(FEOL))および相互接続形成(すなわち、ラインプロセスのバックエンド(BEOL))が含まれる。バックエンド製造プロセスには、例えば、バンピングおよびウェハレベルパッケージングが含まれる。フロントエンドおよびバックエンドの製造プロセスを通して、銅表面は、最終製品の性能を損なうことがある潜在的に損傷を与える溶液および化学反応に曝露されることがある。これまで、その重大な金属の保護は、その金属が特定のプロセスステップで接触する特定の溶液に集中して対処されてきた。
【0003】
この集中により、種々の化学会社によって、川下にあたるプロセスおよび化学反応に影響を与えたり与えなかったりする独自の化学反応が適用されたためブラインド効果が生じている。
【0004】
さらに、それぞれのプロセスステップは、異なる目的のために異なる化学反応を用いるいくつかのサブ工程を含むことができる。例えば、最新の集積回路は通常、導電線およびプラグ(「ビア」を含む単一および複数レベルの相互接続を用いて電気的に相互接続された、単一基板上の数百万の能動素子を含む。従来、集積回路には、半導体基板ならびに複数のシーケンス的に形成された誘電体層および(導電線、ビアおよび相互接続を含む)導電パターンが含まれる。通常、異なる層上の導電パターンは、すなわち、上層および下層は、導電性相互接続または層間誘電体(「ILD」)を通してビア開口部を充填するプラグによって電気的に接続されるが、接触開口部を充填する導電プラグにより、ソース/ドレイン領域などの、半導体基板上の能動領域と電気的な接続が確立される。ダマスク技術を用いて、ILDに開口部またはチャネルを形成し、導電材料(通常金属)でその開口部を充填することによって相互接続を形成することができる。この金属は通常ILDにおけるチャネルを充填し、チャネル間のILDの上のフィールド領域を被覆する。平坦化は通常、次の工程であり、フィールド領域の金属を除去し、バリヤー/接着層(もしあれば)を除去し、さらにコーティングおよびパターンニングするために実質的に平坦な表面を与える。これらのサブ工程のそれぞれは、異なる化学反応およびプロセスを含むことができる。
【0005】
集積回路製造は、ますます複雑になってきており、かつシリコンまたは他の半導体ウェハ上で加工された回路素子の大きさはますます小さくなっているので、このような材料から形成される残留物を除去するために用いられる技術の継続した改善が必要とされている。さらに、縮小されたジオメトリデバイスにおいて、相互接続RC遅延時間は、この装置性能を制限する要因になり得る。この遅延は、トラック間の低誘電率を合わせて、より良好な導体として銅を用いることによって改善することができる。銅および銅含有金属が半導体用途で用いられる場合、銅を腐食および不要なエッチングから保護する必要がある。電気製品の製造にわたる各プロセスステップでのより有効な化学反応が求められているために、各プロセスステップに対してカスタマイズされた化学反応手法への傾向がある。このため、広範囲の化学反応、プロセス、およびプロセス条件において銅を保護することができる添加剤が求められている。
【0006】
本出願は、驚くべきことに多数の組成物で有用かつ有効であることが見いだされている不動態化化合物の使用によって銅腐食問題を解決することに関する。銅表面を不動態化する能力は、半導体ウェハプロセスに関連する様々な用途でさらなる利点を与える。
【0007】
この不動態化能はさらに、これまで銅金属に対して攻撃的すぎると考えられてきたより有効なレジスト除去剤組成物を使用することができる利点を与える。銅は容易にドライエッチングすることができないので、ダマスクまたは二重ダマスク構造の使用は、この統合を実現する重要な解決法になりつつある。金属間誘電体材料のための有機ポリマーなどの新たな材料の出現、および誘電体材料の複合層をエッチングする必要によって、フォトレジスト除去およびクリーニングの工程では、広範な材料および/または残留物にわたって有効な除去剤が必要とされる。したがって、新規な除去剤および/またはクリーニング化学反応、およびそれに用いられるプロセスの開発、それらは、広範な材料を除去する際に有効であり、銅に適合し、かつプロセス統合に不可欠である。
【0008】
ポジ型およびネガ型レジストの両方を除去するために、多くの配合物が開発されている。レジストにはポリマー材料が含まれ、これは、架橋させ、イオン注入しまたはベーキングにより硬化させることができる。溶剤の単なる組合せにより、レジストは除去され得るが、製造プロセスにおける時間および温度の制限によりこのような溶剤の使用は排除され得る。ウェハと湿った化学物質との基板適合性も重要である。例えば、有効な除去剤である一部の組成物は、銅基板上に腐食を生じた。銅に対してあまり攻撃的でない他の組成物は、一般にあまり有効でない除去剤であるか、または広範な材料にわたって有効でない。したがって、クリーニング効率または銅化合物適合性のいずれかを犠牲にする必要性を最小限にする残留物除去組成物およびプロセスにおける改善が求められている。
【0009】
集積回路加工に適した様々な有効な残量物除去組成物およびプロセスが、本出願の譲受人である、本件特許出願人によって開発および市販されている。これらの組成物およびプロセスの一部も、集積回路加工において基板からレジスト(例えば、フォトレジスト)、ポリイミド、残留物、または他のポリマーおよび有機金属の層を除去するために有用であり、本件特許出願人は、特に、集積回路加工において基板からこのようなポリマー層を除去するための様々な組成物およびプロセスも開発している。さらに、本件特許出願人は、制御された速度で基板表面から特定の基板組成物を選択的に除去する様々な組成物およびプロセスを開発している。このような組成物およびプロセスは以下の同一出願人により取得された特許に開示されており、それらの例は以下に列挙される:
【0010】
Smallらに付与された特許文献1(「Post clean treatment」と表題され、2003年4月15日に発行された);
【0011】
Leeらに付与された特許文献2(「Etylenediaminetetraacetic acid or its ammonium salt semiconductor process residue removal process」と表題され、2002年4月9日に発行された);
【0012】
Smallらに付与された特許文献3(「Chemical mechanical polishing composition and process」と表題され、2001年11月6日に発行された);
【0013】
Leeに付与された特許文献4(「Process using hydroxylamine−gallic acid composition」と表題され、2001年4月21日に発行された);
【0014】
Smallらに付与された特許文献5(「Compositions for cleaning organic and plasma etched residues for semiconductors devices」と表題され、2001年6月19日に発行された);
【0015】
Leeに付与された特許文献6(「Method of stripping resists from substrates using hydrdoxylamine and alkanolamine」と表題され、2001年6月5日に発行された);
【0016】
Chengらに付与された特許文献7(「Lactam compositions for cleaning organic and plasma etched residues for semiconductor devices」と表題され、2001年5月22日に発行された);
【0017】
両方ともLeeに付与された特許文献8および特許文献9(「Hydroxylamine−gallic compound composition and process」と表題され、それぞれ、2001年2月13日および2001年4月24日に発行された);
【0018】
Smallに付与された特許文献10(「Post clean treatment」と表題され、2000年12月5日に発行された);
【0019】
Leeに付与された特許文献11(「Cleaning compositions for removing etching residue and method of using」と表題され、2000年10月31日に発行された);
【0020】
Leeに付与された特許文献12(「Alkanolamine semiconductor process residue removal composition and process」と表題され、2000年9月19日に発行された);
【0021】
Leeらに付与された特許文献13(「Cleaning solutions including nucleophilic amine compound having reduction and oxidation potentials」と表題され、2000年8月29日に発行された);
【0022】
Leeに付与された特許文献14(「Cleaning compositions for removing etching residue and method of using」と表題され、1999年12月14日に発行された);
【0023】
Smallに付与された特許文献15(「Post Clean treatment composition comprising an organic acid and hydroxylamine」と表題され、1999年11月9日に発行された);
【0024】
Leeらに付与された特許文献16(「Method of removing etching residue」と表題され、1999年6月15日に発行された);
【0025】
Leeに付与された特許文献17(「Cleaning compositions for removing etching residue and method of using」と表題され、1999年5月11日に発行された);
【0026】
Picardiらに付与された特許文献18(「Chemical mechanical polishing composition」と表題され、1999年4月6日に発行された);
【0027】
Leeに付与された特許文献19(「Cleaning compositions for removing etching residue with hydroxylamine,alkanolamine,and chelating agent」と表題され、1997年9月30日に発行された);
【0028】
Leeに付与された特許文献20(「Method for removing etching residue using a hydroxylamine−containing composition」と表題され、1996年1月9日に発行された);
【0029】
Leeに付与された特許文献21(「Triamine positive photoresit stripping composition and post−ion implantation baking」と表題され、1995年3月21日に発行された);
【0030】
Leeに付与された特許文献22(「Method of stripping resists from substrates using hydroxylamine and alkanolamine」と表題され、1995年1月17日に発行された);
【0031】
Leeに付与された特許文献23(「Cleaning compositions for removing ethcing residue and method of using」と表題され、1994年8月2日に発行された);
【0032】
Leeに付与された特許文献24(「Stripping compositions comprising hydroxylamine and alkanolamine」と表題され、1994年1月18日に発行された);
【0033】
Leeに付与された特許文献25(「Triamine positive photoresist stripping composition and prebaking process」と表題され、1989年4月25日に発行された);
【0034】
Leeに付与された特許文献26(「Photoresist stripping composition and method」と表題され、1983年7月26日に発行された)。
【0035】
これらの出願に開示された求核アミン、有機溶媒、およびキレート剤、ならびに本発明に関係すると当業者によって認められるそれらの開示の他の部分は、あたかも本明細書に明示的に含まれるように全ての目的のために本明細書に組み込まれる。これらの組成物は、集積回路加工用途でかなりの成功を達成している。
【0036】
したがって、保護されたままであることが意図される表面を損なうことなく、最大の有効性を可能にする相乗的相互作用の特定および理解も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】米国特許第6,546,939号明細書
【特許文献2】米国特許第6,367,486号明細書
【特許文献3】米国特許第6,313,039号明細書
【特許文献4】米国特許第6,276,372号明細書
【特許文献5】米国特許第6,248,704号明細書
【特許文献6】米国特許第6,242,400号明細書
【特許文献7】米国特許第6,235,693号明細書
【特許文献8】米国特許第6,187,730号明細書
【特許文献9】米国特許第6,221,818号明細書
【特許文献10】米国特許第6,156,661号明細書
【特許文献11】米国特許第6,140,287号明細書
【特許文献12】米国特許第6,121,217号明細書
【特許文献13】米国特許第6,110,881号明細書
【特許文献14】米国特許第6,000,411号明細書
【特許文献15】米国特許第5,981,454号明細書
【特許文献16】米国特許第5,911,835号明細書
【特許文献17】米国特許第5,902,780号明細書
【特許文献18】米国特許第5,891,205号明細書
【特許文献19】米国特許第5,672,577号明細書
【特許文献20】米国特許第5,482,566号明細書
【特許文献21】米国特許第5,399,464号明細書
【特許文献22】米国特許第5,381,807号明細書
【特許文献23】米国特許第5,334,332号明細書
【特許文献24】米国特許第5,279,771号明細書
【特許文献25】米国特許第4,824,763号明細書
【特許文献26】米国特許第4,395,348号明細書
【特許文献27】欧州特許出願公開第485,161A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本出願の目的は、半導体プロセスステップを通して腐食を減少させ、銅表面の保護を損なうことなく最も有効な化学反応の使用を可能にする広範な化学反応における一様な手法を可能にする、銅表面を処理することに対する添加剤手法を提供することである。
【0039】
本発明の目的はまた、半導体プロセスステップを通してより有利な手法を提供する化学的相乗作用を特定することである。
【0040】
本発明のさらなる目的は、広範な用途およびプロセスにわたって銅の腐食を防止しながら、広範なレジスト、残留物、ポリマー(例えば、有機金属)、および平坦化残留物を除去するための改良された組成物であって、銅および銅含有材料に対してあまり攻撃的でなく、現在の半導体加工の要求を満たすために適切である組成物を提供することである。
【0041】
これらのおよび他の関連した目的は、本明細書に開示される組成物およびプロセスの使用によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の一態様は、半導体プロセスステップにかかわる銅含有表面の腐食を防止するために、半導体製品の製造ステップにおける半導体プロセスステップにおける、ジチオカルバメート化合物、好ましくは、アンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、およびモルホリンジチオカルバメートの使用に関する。
【0043】
これらの使用において、ジチオカルバメートは、約0.0001から約1パーセント、より好ましくは約0.001から約0.1パーセント、さらにより好ましくは約0.002から約0.02パーセントの量で存在している。
【0044】
本発明の別の態様は、例えば、広範なレジスト、残留物、ポリマー(例えば、有機金属)、および平坦化残留物を除去するための、銅を不動態化する組成物、およびこのような組成物の使用の方法に関する。前記組成物は、銅および銅含有材料に対してあまり攻撃的でなく、かつ現在の半導体加工の要求を満たすために適切である。
【0045】
本発明の別の態様は、銅不動態化組成物および半導体用途におけるそれらの使用に関し、ここで、このような組成物は、酸化および還元電位を有する少なくとも1種の求核アミン化合物、該求核アミン化合物と混和性である少なくとも1種の有機溶媒、水ならびに少なくとも1種のキレート剤および少なくとも1種のジチオカルバメート化合物を含む。水は、それ自体でまたは求核アミン化合物などの別の成分の担体として、該組成物に添加することができ、すなわち、該求核アミンは水溶液で存在する。
【0046】
本発明の別の態様は、銅不動態化組成物であって、a)1種または複数の求核アミンまたはその塩;b)1種または複数の有機溶媒;c)1種または複数のキレート剤またはその塩;d)1種または複数のジチオカルバメートまたはその塩、およびe)水を含む組成物に関する。
【0047】
本発明の別の態様は、求核アミンが、
【0048】
【化1】

【0049】
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、水素、任意に置換されたC1〜C6の直鎖、分岐、もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基、任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、またはスルホン酸基である)
からなる群から選択される組成物に関する。
【0050】
本発明の別の態様は、キレート剤が、
【0051】
【化2】

【0052】
(式中、n=1〜4、m=2〜5およびRは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜C6の直鎖、分岐、もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、またはスルホン酸基である)
である、組成物に関する。
【0053】
本発明の別の態様は、a)ヒドロキシルアミンまたはその塩;b)アルカノールアミン;c)カテコールまたはその塩;d)ジチオカルバメートまたはその塩、およびe)水を含む、銅不動態化組成物に関する。
【0054】
本発明の別の態様は、求核アミンが約1から約50重量パーセントの量で存在し、有機溶媒が約10から約80重量パーセントの量で存在し、キレート剤が約0.1から約30重量パーセントの量で存在し、ジチオカルバメートが約0.0001から約1重量パーセントの量で存在し、およびその残りが水である、組成物に関する。
【0055】
本発明の別の態様は、ジチオカルバメートが、アンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、およびモルホリンジチオカルバメートからなる群から選択される、本発明の組成物に関する。
【0056】
本発明の別の態様は、a)ヒドロキシルアミンまたはその塩;b)ジチオカルバメートまたはその塩;c)コリン;およびd)任意に有機溶媒を含む組成物に関する。
【0057】
本発明の別の態様は、a)ジチオカルバメートまたはその塩;b)ヒドロキシ置換カルボン酸;およびc)水を含む組成物に関する。
【0058】
本発明の別の態様は、銅含有基板からレジスト、エッチング残留物、および平坦化残留物の1種または複数を除去する方法であって、該基板を本発明の組成物と接触させるステップを含む、方法に関する。
【0059】
本発明の別の態様は、銅含有基板からレジスト、エッチング残留物、および平坦化残留物の1種または複数を除去する方法である。
【0060】
参照により本明細書に組み込まれ、特許文献27に対応する、現在特許文献24である関連米国特許出願には、基板からレジストを除去するために有用であるとして、ヒドロキシルアミンと混和性であるアルカノールアミンと組み合わせたヒドロキシルアミンが開示されている。ジチオカルバメート化合物、好ましくはアンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、またはモルホリンジチオカルバメート、および別のキレート剤、好ましくはヒドロキシルベンゼン、より好ましくはカテコールまたは没食子酸を添加することによって、ジチオカルバメート化合物または他のキレート剤が単独で用いられる場合よりも、この組成物と接触させるときに、銅化合物で、腐食またはエッチング速度がより低下することが今や見いだされた。この効果はまた、銅化合物を腐食またはエッチングし得る他の化合物、例えば、求核アミン化合物が使用される場合にも適用される。
【0061】
求核アミン化合物は、還元および酸化に対する電位を有しなければならないが、その組成物の使用中に還元および酸化が実際に起こることは必要とされない。本発明に有用な求核アミン化合物の例には、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ある種の特定のアミン、および以下にさらに記載されるようなそれらの誘導体が含まれる。有機溶媒は、アミンである必要はないが、アミン溶媒の存在は好ましい。
【0062】
さらに、少なくとも1種の求核アミン化合物および該求核アミン化合物と混和性である有機溶媒を含有する水溶液中で、ジチオカルバメートが別のキレート剤、例えば、カテコールまたは没食子酸と存在する場合、少なくとも3つの利点が達成される、すなわち:(1)キレート剤が、クリーニング溶液中のエッチング残留物を保持し、それにより残留物の基板上への再沈降を回避することによって、クリーニングにおいて役立つ;(2)キレート剤が、組成物に対して長期間の有効性を与える安定剤として機能する;および(3)銅の腐食速度またはエッチング速度が減少する、ことが見いだされている。
【0063】
最初の2つの利点は、本件特許出願人により所有される前の特許および出願において知られ、かつ開示されていたが、しかし、三番目の利点は、驚くべき飛躍的進歩および利点であって、銅を必要とする用途に対する優れた、広範な求核アミン除去剤配合物の適用を増進させ、本発明の組成物を、銅および銅化合物を使用する基板からレジスト、ポリマー、および残留物を除去する際に、特に有用なものとさせた。さらに、そして驚くべきことに、本除去剤濃度の有効性は、残留物、レジストまたはポリマーが銅または銅成分を含む場合でさえ、ジチオカルバメートの添加によって悪影響を受けないことが見いだされている。
【0064】
本発明の組成物を用いて基板からレジストまたはエッチング残留物を除去する方法はまた、複雑なプロセス工程および装置を必要としない点で有利である。本発明の使用の方法の1つには、レジストまたはエッチング残留物を含む基板を本明細書で記載されるとおりの本発明の組成物と、存在する特定のレジストまたはエッチング残留物を除去するために十分な温度および時間で接触させるステップが含まれる。本組成物は、本組成物と接触する基板または表面が銅または銅化合物を含む場合の使用に特に好ましいが、本組成物は、銅を含まない他の基板、例えば、アルミニウム、タングステン、および誘電体含有材料とともに使用される場合も有効な除去剤である。
【0065】
好ましい実施形態において、求核アミンはヒドロキシルアミンであり、有機溶媒はアルカノールアミンであり、キレート剤はカテコールであり、ジチオカルバメート化合物はアンモニウムジエチルジチオカルバメートである。
【0066】
別の好ましい実施形態において、キレート剤は没食子酸であり、ジチオカルバメート化合物はアンモニウムジエチルジチオカルバメートである。
【0067】
他の好ましいジチオカルバメート化合物には、ピペリジンジチオカルバメートおよびモルホリンジチオカルバメートが含まれる。
【0068】
別の好ましい実施形態において、求核アミンは、約1から約50重量パーセント、より好ましくは約10から約30パーセントの量で存在し;有機溶媒は、約20から約80重量パーセントの量で存在し;キレート剤は、約2から約30重量パーセント、より好ましくは約5から約15パーセントの量で存在し、ジチオカルバメート化合物は、約0.0001から約1パーセント、より好ましくは約0.001から約0.1パーセント、さらにより好ましくは約0.002から約0.02パーセントの量で存在する。
【0069】
一実施形態には、半導体のプロセスを通じて溶液化学反応を用いて銅表面を不動態化する、ジチオカルバメートの使用が含まれる。
【0070】
本組成物には通常、銅表面と接触させるジチオカルバメートが含まれる。本発明の一実施形態には、還元および酸化電位を有する少なくとも1種の求核アミン化合物、該求核アミンと混和性である少なくとも1種の有機溶媒、水ならびに、2種以上のキレート剤(例えば、ジヒドロキシベンゼン)および少なくとも1種のジチオカルバメート化合物(例えば、アンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、またはモルホリンジチオカルバメート)が含まれる。この溶液は、銅不動態化が好ましい銅を必要とする用途、例えば、製造プロセス中のマイクロ回路からレジストおよびエッチング残留物を除去することなどに有用である。
【0071】
本発明はさらに一般に、銅不動態化組成物、ならびに半導体基板からレジスト、ポリマー、金属酸化物、(有機および有機金属)汚染物質、および/または金属残留物を除去するためにこのような組成物を使用する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0072】
定義
特に断らない限り、本明細書で表されるパーセントは全て、重量によるパーセントを指すと理解されるべきである。また、「約」という用語は、値の範囲に関連して用いられる場合、その範囲のいずれかの値、またはその範囲の両方の値を指すと理解されるべきである。
【0073】
本明細書で用いられる場合、組成物に関連して「実質的に含まない(contains substantially no)」および「実質的に含まない(is substantially free of)」という表現は、無視できる量を意味する。
【0074】
好ましくは、前述の表現の1つが用いられる場合、本組成物は、その後に具体的に述べられるいずれの添加要素も全く含まないか、またはその要素が、本組成物の効果、貯蔵性、必要な安全事項に関する使用性、または安定性に影響を与えるような量で、添加要素を少なくとも含まない。
【0075】
特に断らない限り、および可能な限り、化合物は一般に、本発明による組成物の2以上の列挙された要素の下で特徴付けされるべきではない。化合物が、例えば、本組成物の2つの列挙された実施形態の下で特徴付けされることができる場合、このような化合物は、両方の下ではなく、この2つの列挙要素のいずれか一方の下でのみ本明細書で特徴付けることができる。時に、組成物中の化合物の含有量に基づいてその区別がなされ得る。例えば、カテコールまたは没食子酸は、「高い」濃度、すなわち、約0.5%から20%で主として腐食防止剤として作用し、または「低い」濃度で、すなわち、ppmから0.5重量%の範囲で主として金属キレート剤として作用し得る。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「接触させる」という用語は、基板または表面と本発明の組成物とを物理的に一緒にさせる任意の手段を指し、これには、含浸、スプレー、ミクロ液滴フォギング(micro−droplet fogging)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
ジチオカルバメート化合物を含む組成物は、TFT LCDプロセス、プリント回路基板プロセス、および半導体基板の加工に関連するプロセスを含む、電子部品加工に関連するプロセスにおいて銅腐食を防止することが見いだされた。
【0078】
第1の実施形態は、銅含有基板をジチオカルバメート化合物、好ましくはジチオカルバメート化合物、より好ましくはアンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、およびモルホリンジチオカルバメートと接触させることによって半導体プロセス用途において銅を不動態化させる方法である。
【0079】
別の実施形態は、ジチオカルバメート化合物が、半導体プロセス組成物の使用前に、このような組成物と混合される銅を不動態化させる方法であって、該組成物は、その後に半導体プロセス用途で使用される銅表面と接触し、該銅表面上に不動態化効果を示す、方法である。
【0080】
一部の実施形態において、本組成物は、相乗作用のために、第2の腐食防止剤またはキレート剤、例えば、ヒドロキシベンゼンからさらになる。
【0081】
別の実施形態は、レジスト、エッチング残留物、ポリマー、および平坦化残留物の1種または複数を除去するステップを含む、電子加工プロセスに関与した多くの用途において記載されるとおりの銅を不動態化する方法に有用である組成物であり、該組成物は、a)1種または複数の求核アミン;b)1種または複数の有機溶媒;c)1種または複数のキレート剤;d)1種または複数のジチオカルバメート化合物、およびe)水を含む。
【0082】
本発明の好ましい実施形態による組成物は、ヒドロキシルアミン、アンモニウムジエチルジチオカルバメート、およびカテコールまたは没食子酸を含む。
【0083】
一部の実施形態において、本組成物は有機溶媒を含まない。他の実施形態において、本組成物は求核アミンを含まない。
【0084】
求核アミン
酸化および還元電位を有する求核アミン化合物としての使用のために好適な化合物には、ある種のアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンおよび以下に示されるようなそれらの誘導体が含まれる。本発明において使用される求核アミン化合物は、クリーニングまたはストリッピングのプロセスにおいて実際に酸化または還元に関与する必要はないが、クリーニングまたはストリッピング環境において酸化および還元特性を持つことだけは必要である。一実施形態において、本発明に有用な、好適な求核アミン化合物は、以下の式を有する化合物またはその塩である:
【0085】
【化3】

【0086】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、同一であるか異なっており、かつ水素;ヒドロキシル基;置換C1〜C6直鎖、分岐、もしくはシクロのアルキル、アルケニルもしくはアルキニル基;置換アシル基;直鎖もしくは分岐のアルコキシ基;アミジル基;カルボキシル基;アルコキシアルキル基;アルキルアミノ基;アルキルスルホニル基;またはスルホン酸基を含む群から選択され、ここで、y=1のときx=0;またはy=0のときx=0もしくは1;x=1のときy=0;またはx=0のときy=0もしくは1;但し、R4は、x=1とのきのみ存在することを条件とする)。求核アミノ化合物の具体的な例は、以下にさらに記載される。
【0087】
別の実施形態において、還元および酸化電位を有する求核アミン化合物としての使用に好適なヒドロキシルアミンは、以下の式またはその塩で表される:
【0088】
【化4】

【0089】
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、水素;ヒドロキシル基;任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、またはスルホン酸基である)。これらの化合物の誘導体、例えば、上記のアミドも使用のために好適である。
【0090】
別の実施形態において、本発明の求核アミン化合物としての使用のために好適なアミンは、以下の式:
【0091】
【化5】

【0092】
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、水素;任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐、もしくシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、またはアルキルスルホニル基、スルホン酸基である)またはこのような化合物の塩で表され得る。
【0093】
本発明の求核アミン化合物としての使用のために好適なヒドラジンは、以下の式またはその塩で表され得る:
【0094】
【化6】

【0095】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は、独立して、水素;ヒドロキシル基;任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、またはスルホン酸基である)。
【0096】
還元および酸化電位を有する好ましい求核アミン化合物は、アルコキシ置換アミン、ヒドロキシルアミン、アルキルまたはカルボキシル置換ヒドロキシルアミン、およびアルキルまたはカルボキシル置換ヒドラジンである。最も好ましい化合物は、ヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、およびメチルヒドラジンである。
【0097】
本発明の一部の実施形態において、本組成物は求核アミン化合物を含まない。
【0098】
有機溶媒
本発明における使用のために好適な有機溶媒は、求核アミン化合物と混和性であり、好ましくは水溶性である。さらに、本発明に有用な有機溶媒は好ましくは、比較的高い沸点、例えば、100℃以上、および高いフラッシュポイント、例えば、45℃以上を有する。
【0099】
好適な有機溶媒には、アルカノールアミンおよびそれらの誘導体が含まれる。さらに、非アミン溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、使用のために好適である。好ましくは、アミン溶媒は、単独でまたは別の溶媒と組み合わせて存在する。以前は、アルカノールアミン溶媒は用いられなければならないと考えられていた。アルカノールアミン溶媒は依然として好ましい溶媒であるが、還元および酸化電位を有する少なくとも1種の求核アミン化合物と一緒に用いられる場合、他の溶媒が使用に好適であることが今や見いだされた。
【0100】
好適なアルカノールアミンは、第一級、第二級または第三級アミンであり、好ましくは、モノアミン、ジアミンまたはトリアミン、最も好ましくは、モノアミンである。アミンのアルカノール基は好ましくは、1から5個の炭素原子を有する。
【0101】
本発明における使用のために好適な、好ましいアルカノールアミンは、化学式R12−N−CH2CH2−O−R3(ここで、R1およびR2は、H、CH3、CH3CH2またはCH2CH2OHであり、R3は、CH2CH2OHである)で表され得る。
【0102】
好適なアルカノールアミノの具体的な例には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ターシャリーブチルジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、イソブタノールアミン、2−アミノ−2−エトキシ−プロパノール、および2−アミノ−2−エトキシエタノール(これは、ジグリコールアミンとしても知られている)が含まれる。
【0103】
一部の実施形態において、本組成物はアルカノールアミンを含まない。
【0104】
本発明の組成物における使用のために好適な有機溶媒のさらなる例には、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルプロパンアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールアルキルエーテル、ジエチレングリコールアルキルエーテル、トリエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールアルキルエーテル、ジプロピレングリコールアルキルエーテル、トリプロピレングリコールアルキルエーテル、N−置換ピロリドン、エチレンジアミン、およびエチレントリアミンが含まれる。当技術分野で知られているようなさらなる極性溶媒も、本発明の組成物に使用され得る。
【0105】
一部の実施形態において、本組成物は有機溶媒を含まない。
【0106】
キレート剤
本発明の組成物に有用な、好ましいキレート剤は、以下の式によるヒドロキシベンゼンまたはその塩である:
【0107】
【化7】

【0108】
(式中、n=1〜4、m=2〜5、Rは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基、またはスルホン酸基である)。好ましい化合物は、ジヒドロキシベンゼン異性体、およびアルキル置換ジヒドロキシベンゼンである。最も好ましい化合物は、1,2−ジヒドロキシベンゼンおよび1,2−ジヒドロキシ−4−t−ブチルベンゼンである。
【0109】
さらなるキレート剤、例えば、当技術分野で知られているものも、本発明の組成物に使用され得る。例えば、金属イオンを持たないキレート剤であるキレート剤、例えば、式:
【0110】
【化8】

【0111】
(式中、R1=OHもしくはCOOH)によるチオフェノールおよびその誘導体;または
以下の式:
【0112】
【化9】

【0113】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、HまたはNH4+である)に示されるようなエチレンジアミンテトラカルボン酸もしくはそのアンモニウム塩が用いられ得る。ナトリウム、カリウムなどの塩は、クリーニングによって引き起こされるようなマイクロ回路におけるイオン汚染の理解された機構に基づいて、使用のために好適でないと考えられる。上記式から明らかなように、モノ、ジ、トリおよびテトラアンモニウムカルボキシレート塩が包含される。四級アンモニウム化合物以外のキレート剤は、約1から約30重量パーセント、より好ましくは約2.5から約20重量パーセント、より好ましくは約5から約15重量パーセントの量で存在し得る。
【0114】
さらなる好適なキレート剤には、以下の式:
1234+-
(ここで、R1、R2、R3、およびR4は、好ましくは1から5個の炭素原子を有する、短鎖のアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、かつR1、R2、R3、およびR4は、同一であっても異なっていてもよく、但し、全ての基がヒドロキシルアルキル基であることはないことを条件とし、Xにはハロゲン化物(Cl-およびBr-など)および水酸化物アニオンが含まれるが、これらに限定されない)で表され得る四級アンモニウム塩を含む。
【0115】
好ましい四級アンモニウム化合物には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、コリン、ビスコリン化合物(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−エチル)−ジメチル−アンモニウムイオン)およびトリスコリン化合物(例えば、トリス−(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−アンモニウムイオン)、またはそれらの組合せが含まれる。
【0116】
本発明の組成物およびプロセスにおいて、コリン化合物には、水酸化トリス−コリン、水酸化ビス−コリン、重炭酸トリス−コリン、重炭酸ビス−コリン、塩化トリス−コリン、または塩化ビス−コリンが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、コリン化合物は、水酸化ビス−コリンおよび/または水酸化トリス−コリンである。
【0117】
【化10】

【0118】
四級アンモニウム化合物は、約0.1から約60重量パーセント、より好ましくは約1から約20パーセントの量で存在し得る。
【0119】
一部の実施形態において、本組成物は、四級アンモニウム化合物を含まない。
【0120】
ジチオカルバメート化合物
本発明のジチオカルバメート化合物は、式R2NCS2[M](ここで、Rは、独立して、H、C1からC24アルキルもしくはシクロアルキル基、C6からC24アリール、アルキルアリールもしくはアラルキル基であり、またはNR2はモルホリノ基であり;Mはカチオン(例えば、Na+、またはNR4+)である)からなる。好ましいジチオカルバメート化合物は、式:
【0121】
【化11】

【0122】
の化合物である。
【0123】
最も好ましいジチオカルバメート化合物は、以下:
【0124】
【化12】

【0125】
に示される、アンモニウムジエチルジチオカルバメートである。
【0126】
可能性のある理論のいずれにも制限されることなく、このジチオカルバメート化合物は、末端チオ基を介する二座金属配位を示すと考えられ、これは、処理中の銅腐食/エッチング速度を低下させるように働く。
【0127】
本発明の他の実施形態において、本組成物は、有機溶媒を実質的に含まない。これらの実施形態は一般に好ましくない。一実施形態において、本発明の化合物は、糖および糖アルコールを含まない。代わりの実施形態において、本組成物は、スルホン、イミダゾリジノン、およびラクトンを実質的に含まない。別の実施形態において、本組成物は、グリコールを実質的に含まない。本発明のさらに別の代わりの実施形態において、本組成物は、スルホン、イミダゾリジノン、ラクトン、およびグリコールを実質的に含まない。
【0128】
有機酸
一実施形態において、本発明の組成物は、有機酸、または無機酸と有機酸との混合物を含む、または代わりに、それらから本質的になる。無機酸は、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、またはホスホン酸、より好ましくはホスホン酸および/または亜リン酸であり得る。
【0129】
好ましい有機酸は、カルボン酸、例えば、ヒドロキシ、カルボニルまたはアミノ基でベータ位において任意に置換された、モノ、ジおよび/またはトリカルボン酸である。本組成物に有用な有機酸化学種には、ギ酸、酢酸、プロパン酸、酪酸など;ヒドロキシル置換カルボン酸(グリコール酸、乳酸、酒石酸などを含むが、これらに限定されない);シュウ酸;グリコール酸;アミノ置換カルボン酸(グリシン、ヒドロキシエチルグリシン、システイン、アラニンなどを含むが、これらに限定されない)、環状カルボン酸(アスコルビン酸などを含むが、これに限定されない);シュウ酸、クエン酸、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の一実施形態において、除去剤組成物は、約1から約20重量パーセントの有機酸、約10から約1,000ppmのジチオカルバメート化合物、および残りの水を含む。
【0131】
カルボキシル基炭素に隣接した炭素上で置換されたカルボニル基を有する有機酸が、より好ましい。例示的な好ましい有機酸は、シュウ酸、グリコール酸、過ヨウ素酸またはそれらの混合物である。
【0132】
酸は、有利には、最大約10%、好ましくは約0.1%から約8%、例えば、約0.15%から約6%で存在する。
【実施例】
【0133】
本発明の例示的な実施形態は、以下の実施例を参照して例証され、これらは、例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。特に、実施例は残留物を除去するための組成物の使用に関連するが、当業者は、このような組成物が、多くの用途で使用することができ、銅不動態化に関する利点が、銅化合物がこのような組成物と接触する場合はどこでも実現されることが容易に理解されるものである。
【0134】
[実施例1]
グリコール酸
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、水中10重量%のグリコール酸で調製した。一方の試料に200ppmのアンモニウムジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は9.37Å/分から1.53Å/分に低下した。
【0135】
[実施例2]
ヒドロキシルアミン/コリン(有機溶媒なし)
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、5重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);25重量%のコリン(40%水溶液)、および74重量%の水で調製した。一方の試料に20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加した。20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は6.4Å/分から0.95Å/分に低下した。
【0136】
[実施例3]
ヒドロキシルアミン/コリン(有機溶媒なし)
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、12.5重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);1重量%のコリン(40%水溶液)、および86.5重量%の水で調製した。一方の試料に、100ppmジエチルジチオカルバメートを添加した。100ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は2.3Å/分から0Å/分に低下した。
【0137】
[実施例4]
ヒドロキシルアミン/コリン(有機溶媒なし)
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、12.5重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);1重量%のコリン(40%水溶液)、および86.5重量%の水で調製した。一方の試料に、100ppmジエチルジチオカルバメートを添加した。100ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は2.9Å/分から0Å/分に低下した。その試料にジエチルジチオカルバメートなしで1000ppmの二フッ化水素アンモニウムを添加すると激しい銅エッチングを生じたが、その試料に100ppmのジエチルジチオカルバメートを用いて添加すると、銅エッチングは生じなかったことに留意されたい。
【0138】
[実施例5]
ヒドロキシルアミン/コリン(有機溶媒なし)
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、12.5重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);1重量%のコリン(40%水溶液)、および86.5重量%の水で調製した。一方の試料に20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加した。20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は2.9Å/分から0Å/分に低下した。20ppmによる初期のエッチングは、100ppmのジエチルジチオカルバメートによるものより少なかった。
【0139】
[実施例6]
ヒドロキシルアミン/コリン(有機溶媒なし)
銅基板上の物質を剥離するための2つの組成物を、16重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);4.7重量%のコリン(40%水溶液)、および78.5重量%の水で調製した。一方の試料に20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加した。20ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は5.7Å/分から0Å/分に低下した。
【0140】
[実施例7]
ヒドロキシルアミン/有機溶媒
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、35重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);5重量%のカテコール;および60重量%の2−アミノ−2−エトキシエタノール(DGAまたはジグルコールアミン)で調製した。一方の試料に、200ppmのジエチルジチオカルバメートを添加した。200ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度は、10Å/分超から0.9Å/分に低下した。
【0141】
[実施例8]
ヒドロキシルアミン/有機溶媒
銅基板上の物質を除去するための2つの組成物を、35重量%のヒドロキシルアミン(50%水溶液);60重量%の2−アミノ−2−エトキシエタノール(DGAまたはジグルコールアミン)、および残りの水で調製した。一方の試料に、200ppmのジエチルジチオカルバメートを添加した。200ppmのジエチルジチオカルバメートを添加すると、銅エッチング速度の低下を生じた。
【0142】
上記に強調したように、本明細書で記載された用途は、限定的であることを意図せず、他の用途、例えば、ウェハレベルパッケージング再加工、はんだ瘤の除去、フォトレジスト除去または、Cuもしくは他の金属が処理中に露呈している他の電子加工プロセスを含み得る。
【0143】
上記したとおりのジチオカルバメート化合物(例えば、ジエチルジチオカルバメート)およびキレート剤(例えば、カテコール)で処理された後のウェハ表面は、耐腐食性である。当業者は、本発明のクリーニング溶液と接触する、または接触させられ得る他の銅関連表面も、ジチオカルバメートおよびキレート剤の化合物で有効に不動態化されることを理解するであろう。例えば、本発明の腐食防止化合物はまた、基板腐食を防止するのみでなく、クリーニングプロセスの間に用いられる銅含有機械類の腐食を防止し、それによりこのような機械類の寿命を長くするために用いることができる。
【0144】
本発明の腐食防止化合物には、ジチオカルバメート化合物に加えて他の腐食防止化合物、例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献13に見られる、アゾール化合物、1−ピロリジンカルボジチオエートNH+など、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが含まれ得る。例として、代表的なアゾール化合物には、トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、イソチアゾールおよびチアゾールが含まれる。しかし、好ましい実施形態において、本発明の腐食防止化合物はジチオカルバメート化合物である。腐食防止剤の上記列挙は、排他的な列挙と解釈されるべきではなく、当業者は、他の化合物が本発明の腐食防止化合物として使用され得ることを理解するであろう。
【0145】
前述の発明は、理解の明瞭さのためにいくらか詳細に説明してきたが、ある種の変化および変更が添付の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることは明らかである。例えば、本明細書では、半導体クリーニングおよびストリッピングのために腐食防止化合物を導入することが説明されるが、原理上、本発明の腐食防止化合物が銅およびヒドロキシルアミンを必要とする他の用途、例えば、ポスト−CMP用途で導入され得ないという理由はない。したがって、本実施形態は、例証としておよび制限的でないとして考えられるべきであり、かつ本発明は、本明細書で示される詳細に限定されるべきではないが、添付の特許請求の範囲内で変更され得る。
【0146】
詳細に本発明を説明してきたが、当業者は、本開示を考慮すると、本明細書で記載された本発明の概念の精神から逸脱することなく本発明に変更がなされ得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、例証および説明された具体的な実施形態に限定されることを意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種または複数の求核アミンまたはその塩;
b)任意に1種または複数の有機溶媒;
c)任意に1種または複数のキレート剤またはその塩;
d)1種または複数のジチオカルバメートまたはその塩;および
e)水
を含むことを特徴とする銅不動態化組成物。
【請求項2】
求核アミンは、
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、水素、任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基またはスルホン酸基である)
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
求核アミンはヒドロキシルアミンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
有機溶媒はアルカノールアミンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
キレート剤は、
【化2】

(式中、n=1〜4、m=2〜5、Rは、独立して、水素、任意に置換されたC1〜C6直鎖、分岐もしくはシクロのアルキル、アルケニル、もしくはアルキルニル基;任意に置換されたアシル基、直鎖もしくは分岐のアルコキシ基、アミジル基、カルボキシル基、アルコキシアルキル基、アルキルアミノ基、アルキルスルホニル基またはスルホン酸基である)
であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
キレート剤はカテコールであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
コリンをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
a)ヒドロキシルアミンまたはその塩;
b)ジチオカルバメートまたはその塩;
c)コリン;および
d)任意に有機溶媒
を含むことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
a)求核アミンとしてヒドロキシルアミンまたはその塩;
b)有機溶媒としてアルカノールアミン;
c)キレート剤としてカテコールまたはその塩;
d)ジチオカルバメートまたはその塩;および
e)水
を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
求核アミンは、約1から約50重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
有機溶媒は、約10から約80重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
キレート剤は、約0.1から約30重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ジチオカルバメートは、約0.0001から約1重量パーセントの量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
求核アミンは約1から約50重量パーセントの量で存在し、有機溶媒は約10から約80重量パーセントの量で存在し、キレート剤は約0.1から約30重量パーセントの量で存在し、ジチオカルバメートは、約0.0001から約1重量パーセントの量で存在し、残りは水であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
a)ジチオカルバメートまたはその塩;
b)ヒドロキシル置換カルボン酸;および
c)水
を含むことを特徴とする銅不動態化組成物。
【請求項16】
ヒドロキシル置換カルボン酸はグリコール酸であることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
ジチオカルバメートは、アンモニウムジエチルジチオカルバメート、ピペリジンジチオカルバメート、およびモルホリンジチオカルバメートからなる群から選択されることを特徴とする請求項1、7および15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
銅含有基板からレジスト、エッチング残留物、および平坦化残留物の1種または複数を除去する方法であって、該基板を請求項1、7および15のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
銅含有基板を不動態化する方法であって、該基板を請求項1、7および15のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップを含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2010−538167(P2010−538167A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524048(P2010−524048)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/010456
【国際公開番号】WO2009/032322
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(505373535)イー.ケー.シー.テクノロジー.インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】