説明

【課題】 良好な切断性能を確保しつつ、対象物を切断するために刀体を動かす切断操作を補助することが可能な鋏を提供する。
【解決手段】
鋏100において、第1刀体1の首部13に第1吸引磁石14が取り付けられており、第2刀体2の首部23に第2吸引磁石24が取り付けられている。第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とは、互いに異なる磁極が対向するように配置されており、第1吸引磁石14と第2吸引磁石24との間で第1刃部と第2刃部2とが閉じる方向へ作用する吸引力が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏に関し、特に理美容で使用される整髪用の鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに連通する軸孔が設けられた動刃体と静刃体が設けられ、前記動刃体と静刃体が前記軸孔に軸部材が挿通されX状に交差して回動可能に結合されており、前記動刃体と静刃体の互いに対面する面には、前記軸部材の周囲の前記動刃体に第一磁石が設けられ、前記静刃体に第二磁石が設けられた鋏が開示されている。この鋏は、前記第一磁石と第二磁石が、前記動刃体と静刃体を閉じた状態でその互いに異なる極性の磁石が対面する面積が最大となり、所定角度開いた状態では、前記第一磁石と第二磁石の互いに同極性の磁石が対面する面積が最大となるように、第一磁石と第二磁石とが配置されている。これにより、当該鋏は、前記動刃体と静刃体を閉じた状態で第一磁石と第二磁石とが互いに安定に引き合い、所定角度開いた状態では第一磁石と第二磁石とが反発し合い不安定となり、前記動刃体と静刃体が前記反発する位置から引き合う位置へ磁力により自動的に、相対的に回動可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−296702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている鋏にあっては、動刃体と静刃体が所定角度開いた状態のとき、第一磁石と第二磁石とが反発し合い、動刃体と静刃体とが軸部材の軸長方向へ離反するように磁力が作用する。このため、動刃体と静刃体との間に隙間が生じ、対象物の切断に支障が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる鋏を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の鋏は、第1刃部が一端側に設けられ、指を通すための指孔が形成された第1保持部が他端側に設けられた第1刀体と、第2刃部が一端側に設けられ、指を通すための指孔が形成された第2保持部が他端側に設けられ、その長手方向中間部分において、前記第1刀体の長手方向中間部分と回動可能に連結された第2刀体と、前記第1刀体において、前記第2刀体との連結位置から離隔した位置に取り付けられた第1吸引磁石と、前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じるときに前記第1吸引磁石と互いに異なる磁極が対向するように、前記第2刀体において、前記第1刀体との連結位置から離隔した位置に取り付けられ、前記第1吸引磁石との間で前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じる方向へ作用する吸引力を生じる第2吸引磁石と、前記第1刀体において、前記連結位置より前記第1保持部側の位置に取り付けられた第1反発磁石と、前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じるときに前記第1反発磁石と互いに同一の磁極が対向するように、前記第2刀体において、前記連結位置より前記第2保持部側の位置に取り付けられ、前記第1反発磁石との間で前記第1刃部と前記第2刃部とが開く方向へ作用する反発力を生じる第2反発磁石と、を備える。
【0007】
上記態様においては、前記第1反発磁石が、前記第1刀体において、前記第1吸引磁石が前記第1刀体に取り付けられている位置よりも、前記連結位置からの距離が大きい位置に取り付けられており、前記第2反発磁石が、前記第2刀体において、前記第2吸引磁石が前記第2刀体に取り付けられている位置よりも、前記連結位置からの距離が大きい位置に取り付けられていることが好ましい。
【0008】
また、上記態様においては、前記第1吸引磁石が、前記第1刀体において、前記連結位置より前記第1保持部側の位置に取り付けられており、前記第2吸引磁石が、前記第2刀体において、前記連結位置より前記第2保持部側の位置に取り付けられていることが好ましい。
【0009】
また、上記態様においては、前記第1吸引磁石及び前記第2吸引磁石が、前記第1刃部と前記第2刃部とが所定角度をなして開いているときに互いに正対する平面部をそれぞれ具備することが好ましい。
【0010】
また、上記態様においては、前記第1吸引磁石が、前記第1刀体において位置調節可能に取り付けられており、前記第2吸引磁石が、前記第2刀体において位置調節可能に取り付けられていることが好ましい。
【0011】
また、上記態様においては、前記第1吸引磁石が、前記第1刀体において着脱可能に取り付けられており、前記第2吸引磁石が、前記第2刀体において着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
また、上記態様においては、前記第1反発磁石が、前記第1刀体において位置調節可能に取り付けられており、前記第2反発磁石が、前記第2刀体において位置調節可能に取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鋏によれば、良好な切断性能を確保しつつ、対象物を切断するために刀体を動かす切断操作を補助することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る鋏が閉じた状態のときの当該鋏の全体構成を示す平面図。
【図2】実施の形態1に係る鋏が開いた状態のときの当該鋏の全体構成を示す平面図。
【図3】第1吸引磁石及び第2吸引磁石の取り付け状態を示す鋏の部分拡大平面図。
【図4】実施の形態2に係る鋏の第1吸引磁石の構成を示す平面図。
【図5】図4に示すA−A線による断面矢視図。
【図6】実施の形態3に係る鋏の第1吸引磁石の構成を示す平面図。
【図7】図6に示すB−B線による断面矢視図。
【図8】他の実施の形態の鋏の全体構成の一例を示す平面図。
【図9】他の実施の形態の鋏の全体構成の他の例を示す平面図。
【図10】実施の形態1の変形例に係る鋏が開いた状態のときの当該鋏の全体構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る鋏は、回動可能に連結された第1刀体と第2刀体とを備え、第1刀体のハンドル部に第1吸引磁石が取り付けられ、第1吸引磁石と互いに異なる磁極が対向するように第2刀体のハンドル部に第2吸引磁石が取り付けられ、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の間で第1刀体及び第2刀体の刃部が互いに重なる方向へ吸引力が生じることにより、切断操作を補助することが可能な鋏である。
【0017】
図1及び図2は、本実施の形態に係る鋏の全体構成を示す平面図である。本実施の形態に係る鋏100は、第1刀体1と、第2刀体2とを備えている整髪用の鋏である。第1刀体1と第2刀体2とは、X字状に交叉するように、それぞれの中間位置で連結ネジ及び調節ナット3によって回動可能に連結されている。
【0018】
第1刀体1の一端側には第1刃部11が設けられている。第1刃部11は一方向へ長く延びており、その一側縁には刃11aが形成されている。第1刀体の他端側にはハンドル部12が設けられている。かかるハンドル部12には指孔12aが設けられており、この指孔12aに指を通すことができるようになっている。
【0019】
第2刀体2の一端側には第2刃部21が設けられている。第2刃部21は一方向へ長く延びており、その一側縁には刃21aが形成されている。第2刀体の他端側にはハンドル部22が設けられている。かかるハンドル部22には指孔22aが設けられており、この指孔22aに指を通すことができるようになっている。
【0020】
第1刀体1の第1刃部11とハンドル部12との間には連結孔が形成されており、同様に第2刀体2の第2刃部21とハンドル部22との間にも連結孔が形成されている(図示せず)。第1刀体1及び第2刀体2は、それぞれの連結孔が同軸上に並ぶように重ねられる。このとき、第1刃部11及び第2刃部21は連結孔に対して同一側に位置し、ハンドル部12及び第2ハンドル部22はその反対側に位置する。この状態で、第1刀体1及び第2刀体2の連結孔に連結ネジが挿通され(図示せず)、当該連結ネジのネジ部に調節ナット3が螺合され、これによって第1刀体1と第2刀体2とが回動可能に連結される。また、第1刀体1の連結孔の周囲及び第2刀体2の連結孔の周囲にはそれぞれ円環状の凹部が形成されており、これらの凹部に円環状の合成樹脂性ワッシャが配置され(図示せず)、このワッシャを前記連結ネジのネジ部が貫通している(図示せず)。これによって第1刀体1及び第2刀体2が連結ネジを中心として滑らかに回動するようになっている。また、鋏100においては、調節ナット3の締め付け力を調節することにより、鋏100の切断能力及び第1刀体1と第2刀体2との回動に要する力を調節可能である。
【0021】
第1刀体1と第2刀体2とが連結された状態では、ハンドル部12と第2ハンドル部22とが同一平面上に並ぶように配置される。したがって、図2に示すように、第1刃部11と第2刃部21とが開いている状態から、ハンドル部12と第2ハンドル部22とが近接する方向へ第1刀体1と第2刀体2とを相対的に回動させると、ハンドル部12と第2ハンドル部22とが当接することとなる(図1参照)。ハンドル部12の第2ハンドル部側の側面には、第2ハンドル部22に当接する当接部12bが突設されており、この当接部12bが第2ハンドル部22に当接する。
【0022】
図2に示すように、第1刃部11と第2刃部21とが開いている状態のときには、刃11aの大部分及び刃21aの大部分が互いに対向するように露出されており、刃11a及び刃21aが調節ナット3の近傍位置において交叉している。この状態からハンドル部12と第2ハンドル部22とを近接させると、これにしたがって第1刃部11と第2刃部21とが閉じられ、刃11aと刃21aとの交叉位置が先端側へと移動していく。そして、図1に示すように、当接部12bがハンドル部22に当接した状態のときには、第1刃部11と第2刃部21とが完全に閉じられた状態となり、刃11aの全体が刃21aの全体を相対的に越える。
【0023】
図1及び図2に示すように、第1刀体1は、第2刀体2との連結位置31からハンドル部12へと続く首部13を具備し、同様に第2刀体2は、連結位置31からハンドル部22へと続く首部23を具備している。首部13,23及びハンドル部12,22は、非磁性体のステンレス鋼製(オーステナイト系ステンレス鋼)である。また、首部13の首部23との対向面には台座14aが設けられており、当該台座14aに第1吸引磁石14が取り付けられている。首部23の首部13との対向面には台座24aが設けられており、当該台座24aに第2吸引磁石24が取り付けられている。図3は、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の取り付け状態を示す、鋏100の部分拡大平面図である。図3に示すように、第1吸引磁石14は直方体形状をなしており、その長手方向が首部13の長手方向に沿うように配置されている。また、第1吸引磁石14は、S極が台座14aの取付面側に位置し、N極が首部23との対向面側に位置するように台座14aを介して首部13に取り付けられている。第2吸引磁石24は第1吸引磁石と同一の直方体形状をなしており、長手方向が首部23の長手方向に沿うように配置され、N極が台座24aの取付面側に位置し、S極が首部13との対向面側に位置するように台座24aを介して首部23に取り付けられている。
【0024】
図3に示すように、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の対向面、即ち第1吸引磁石14のN極面及び第2吸引磁石24のS極面は、鋏100が若干開いた状態のときに正対する。この第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の対向面が正対するときにおける、第1刀体1及び第2刀体2の間の角度は、本実施の形態においては5度である。鋏100を使用して対象物を切断する際、一般的には第1刀体1及び第2刀体2の間の角度が5度以上となるまで鋏100が開かれ、その後鋏100を閉じる操作(以下、「切断操作」という。)が行われる。したがって、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24が上記のように配置されていることにより、第1刀体1及び第2刀体2が5度以上開いた状態から第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の間に吸引力が発生し、第1刀体1及び第2刀体2が閉じられる過程において徐々に吸引力が増大し、第1刀体1及び第2刀体2の間の角度が5度となったときには第1吸引磁石14及び第2吸引磁石の間に強い吸引力が発生することになる。このようにして切断操作が補助される。
【0025】
理美容で使用される整髪用の鋏の場合、頭髪(特に短い頭髪)を切断する際に第1刃部11と第2刃部21とが素早く閉じられなければ頭髪が第1刃部11及び第2刃部21の間から逃げてしまい、うまく頭髪を切断することができない。このため、整髪用の鋏では、一般的な紙用の鋏及び植木用の鋏よりも素早く切断操作が行われる必要がある。本実施の形態に係る鋏100では、上記のように第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24により切断操作が補助されるため、従来に比して容易に素早い切断操作を行うことができる。
【0026】
また、鋏100が閉じられた状態のとき、即ち当接部12bが第2ハンドル部22に当接した状態のとき、第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とが当接する。このとき、第1刀体1及び第2刀体2の間の角度は0度であり、第1吸引磁石14のN極面及び第2吸引磁石24のS極面がなす角度は5度(−5度)である。したがって、第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とは、対向面の全面が密着するのではなく、対向面の端縁の角部において当接する。このように、鋏100が閉じられた状態において、第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とが当接する面積は非常に小さく、対向面全面が密着する場合に比べて第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とを小さな力で引き離すことができる。したがって、上記のように第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24を配置することにより、第1吸引磁石14と第2吸引磁石24とによって生じる磁力が鋏100を開く操作に対して与える影響を抑制することができる。
【0027】
また、図1及び図2に示すように、ハンドル部12には台座15aを介して第1反発磁石15が取り付けられており、ハンドル部22には台座25aを介して第2反発磁石25が取り付けられている。ハンドル部12の先端部分(連結位置31から遠い部分)に角柱状の台座15aが突設されており、当該台座15aの先端に、第1反発磁石15がハンドル部22側へ突出するように取り付けられている。一方、ハンドル部22の先端部分に角柱状の台座25aが突設されており、当該台座25aの先端部分に、第2反発磁石25がハンドル部12側へ突出するように取り付けられている。第1反発磁石15は円柱形状をなしており、S極がハンドル部22との対向面側に位置し、N極がハンドル部22との反対面側に位置するように配置されている。第2反発磁石25も第1反発磁石15と同様に円柱形状をなしており、S極がハンドル部12との対向面側に位置し、N極がハンドル部12との反対面側に位置するように配置されている。つまり、第1反発磁石15及び第2反発磁石25はN極同士が対向しており、互いに反発する磁力を発生している。
【0028】
図1に示すように、第1反発磁石15と第2反発磁石25とは、鋏100が閉じた状態のときに当接するようにハンドル部12,22にそれぞれ取り付けられている。また、第1反発磁石15及び第2反発磁石25には、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24よりも磁力が小さいものが使用されている。このように第1反発磁石15及び第2反発磁石25を設けることにより、ハンドル部12,22間を離反させる方向の力が生じ、この力が第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の吸引力の一部を打ち消すため、使用者が鋏100を開く操作を容易に行うことが可能となる。
【0029】
理美容で使用される整髪用鋏の場合、上記のように切断操作を素早く行うことが必要であるが、整髪を迅速に行うために鋏を開く操作を素早く行うことも重要である。本実施の形態に係る鋏100では、上記のように第1反発磁石15及び第2反発磁石25を備えたことにより鋏100を開く操作を容易に行うことが可能となる。さらに、鋏100が切断操作によって完全に閉じられた状態になると、当接部12bがハンドル部22とが当接し、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の反発力に加え、その当接したときにおける衝撃によりハンドル部12,22間に反発力が生じることになる。これにより、鋏100を開く操作をより一層容易に行うことができる。
【0030】
また、理美容で使用される整髪用の鋏においては、他の用途に用いられる鋏に比べて素早く連続して開閉操作が行われることがある。本実施の形態に係る鋏100では、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24による切断操作の補助に加え、上記のように第1反発磁石15及び第2反発磁石25を備えたことにより鋏100を開く操作を容易に行うことが可能となるため、素早く開閉操作を連続して行うことが容易となる。
【0031】
また上記のように、第1反発磁石15及び第2反発磁石25は第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24よりも連結位置31から離れた位置に設けられている。したがって、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の磁力が第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の磁力に比べて小さくても、第1反発磁石15及び第2反発磁石25によって発生する、ハンドル12,22を離反させる方向のトルクは、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24によって発生する、ハンドル部12,22を近接させる方向のトルクに対して十分に対抗できる大きさとなる。ここで、第1反発磁石15及び第2反発磁石25によって発生するトルクが第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24によって発生するトルクよりも小さくなるように、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24、第1反発磁石15及び第2反発磁石25、並びにこれらの配置位置が決定される。本実施形態においては、第1反発磁石15及び第2反発磁石25によって発生するトルクが第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24によって発生するトルクの半分の大きさとされている。このように第1反発磁石15及び第2反発磁石25を配置することにより、使用者が鋏100を開く操作をより一層容易に行うことが可能となる。
【0032】
また、上記のように第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24が第1反発磁石15及び第2吸引磁石25よりも連結位置31に近接した位置に設けられている。第1刀体1及び第2刀体2は連結位置31を中心に相対的に回動するため、鋏100が開いた状態のときには、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の間の距離は、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の間の距離よりも大きい。したがって、鋏100が開いている状態では、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の間で生じる磁力が、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の間に生じる磁力に対して非常に小さくなり、鋏100を閉じる方向に作用する力を殆ど打ち消さない。このように、本実施の形態に係る鋏100においては、鋏100が開いた状態では第1刃部11及び第2刃部12が閉じる方向へ力が生じ、使用者による切断操作が補助され、鋏100が閉じた状態では上記の第1刃部11及び第2刃部12が閉じる方向へ作用する力とともにハンドル部12,22間を離反させる力が生じ、使用者が鋏100を開く操作を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、第1吸引磁石14及び第2吸引磁石24の磁力は鋏100を開閉する平面と平行な方向に作用し、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の磁力も鋏100を開閉する平面と平行な方向に作用する。したがって、鋏100の第1刃部11及び第2刃部21を連結ネジの軸長方向、即ち第1刃部11及び第2刃部21の重なり方向へ離反させる方向に磁力が作用せず、第1刃部11及び第2刃部21の間に前記軸長方向の隙間を生じさせることがない。このため、鋏100の切断操作において第1刃部11及び第2刃部21が確実に擦れ合い、良好な切断性能を確保することが可能である。
【0034】
本実施の形態では、上述したように、ハンドル部12の先端部分に角柱状の台座15aが突設されており、その台座15aの先端に第1反発磁石15が取り付けられているが、本発明はこのような態様に限定されるわけではない。図10は、本実施の形態の変形例に係る鋏が開いた状態のときの当該鋏の全体構成を示す平面図である。図10に示すとおり、変形例においては、ハンドル部12の先端部分に可撓性を有する板状の台座151aが突設されており、その台座151aの先端に、第1反発磁石15がハンドル部22側へ突出するように取り付けられている。この台座151aは、図中の矢印方向に撓むことが可能となっている。また、台座151aは、ハンドル部22側へ若干傾斜するようにしてハンドル部12の先端部分に設けられている。鋏100が閉じた状態のとき、ハンドル部12の当接部12bがハンドル部22に当接するとともに、第1反発磁石15と第2反発磁石25とが当接する。このとき、台座151aは、ハンドル部22の反対側(即ちハンドル部12側)に撓み、ハンドル部22に向かって弾性的に付勢された状態となる。そのため、その後に鋏100を開く操作を行う場合、台座151aの付勢力によって当該操作をより一層容易に行うことが可能になる。
【0035】
なお、上記の変形例において、第1反発磁石15及び第2反発磁石25の磁力が比較的大きい場合では、切断操作のとき、第1反発磁石15と第2反発磁石25とが当接する前に、これらの第1反発磁石15及び第2反発磁石25の反発力によって、台座151aがハンドル部12側に少し撓むことになる。これにより、切断操作のときに作用する第1反発磁石15及び第2反発磁石25の反発力を抑制することができるため、切断操作をより一層容易に行うことが可能になる。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る鋏は、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の位置調節が可能な鋏である。
【0037】
図4は、本実施の形態に係る鋏の第1吸引磁石の構成を示す平面図であり、図5は、図4に示すA−A線による断面矢視図である。図4及び図5に示すように、本実施の形態に係る第1吸引磁石214は、ケース214aにより保持されている。ケース214aは合成樹脂製であり、第2吸引磁石との対向面側が開放された箱状をなしている。図5に示すように、この開口により、第1吸引磁石214の第2吸引磁石との対向面が露出された状態となり、またケース214aの開口の周囲の面は、第1吸引磁石214の前記対向面と同じ高さとされている。
【0038】
図4に示すように、ケース214aは、内側の空間214bに第1吸引磁石214を収容するようになっており、この空間214bの幅が直方体形状の第1吸引磁石214の幅と実質的に同一とされている。また、ケース214aの内部空間214bの長さは、第1吸引磁石214の長さの約2倍であり、第1吸引磁石214は、内部空間214b内において長手方向へ移動可能となっている。第1吸引磁石214の両側面には、長手方向中央部分に突起214cがそれぞれ設けられている。内部空間214bの両内側面には、長手方向へ等間隔にそれぞれ3つの凹部214dが設けられており、一対の凹部214dに上記の突起214cが係合するようになっている。つまり、第1吸引磁石214は、突起214cがケース214aの長手方向一端側の凹部214dに係合した第1位置、突起214cがケース214aの長手方向中央の凹部214dに係合した第2位置、及び突起214cがケース214aの長手方向他端側の凹部214dに係合した第3位置において安定してケース214aに保持され、容易に移動することがない。また、突起214cの突出高さは僅かであり、ケース214aがある程度柔軟性を有する合成樹脂製であることから、使用者が第1吸引磁石214を長手方向へ押すことにより、突起214cと凹部214dの係合状態が解除され、第1吸引磁石214を移動させることができる。
【0039】
また図5に示すように、第1吸引磁石214の両側面の首部213への取付面側端には、第1吸引磁石214の全長に亘る板状の突出部214eが設けられている。一方、ケース214aの内部空間214bには、開口の反対側、つまり首部213側の端部において両側方へ段状に広がっており、凹状の拡大部214fが設けられている。この拡大部214fには、第1吸引磁石214の突出部214eが係合し、これによって第1吸引磁石214がケース214aから脱落することなく、長手方向へスライド可能となっている。
【0040】
なお、本実施の形態に係る鋏では、第2吸引磁石も第1吸引磁石214と同様の構成で長手方向に位置調節可能に首部23に取り付けられているため、その説明を省略する。また、本実施の形態に係る鋏のその他の構成は、実施の形態1に係る鋏100の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0041】
上記のように第1吸引磁石214及び第2吸引磁石の位置調節を可能としたことにより、連結位置31から第1吸引磁石214及び第2吸引磁石までの距離が調節可能となる。これにより、使用者の好みに合わせて第1吸引磁石214及び第2吸引磁石により生じる吸引力・トルクを変化させることができる。
【0042】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る鋏は、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の着脱が可能な鋏である。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る鋏の第1吸引磁石の構成を示す平面図であり、図7は、図6に示すB−B線による断面矢視図である。図6及び図7に示すように、本実施の形態に係る第1吸引磁石314は、ケース314aにより保持されている。ケース314aは合成樹脂製であり、第2吸引磁石との対向面側が開放された箱状をなしている。図7に示すように、この開口により、第1吸引磁石314の第2吸引磁石との対向面が露出された状態となり、またケース314aの開口の周囲の面は、第1吸引磁石314の前記対向面と同じ高さとされている。
【0044】
図6に示すように、ケース314aは、内側の空間314bに第1吸引磁石314を収容するようになっており、この空間314bの幅及び長さが直方体形状の第1吸引磁石314の幅及び長さと実質的に同一とされている。第1吸引磁石314の両側面には、長手方向中央部分に突起314cがそれぞれ設けられている。内部空間314bの両内側面には、長手方向中央部分に凹部314dが設けられており、これら一対の凹部314dに上記の突起314cが係合するようになっている。これによって、第1吸引磁石314のケース314aからの脱落が防止される。また、突起314cの突出高さは僅かであり、ケース314aがある程度柔軟性を有する合成樹脂製であることから、使用者が第1吸引磁石314をケース314aの開口側へ引き出すことにより、突起314cと凹部314dの係合状態が解除され、第1吸引磁石314をケース314aから取り外すことができる。
【0045】
なお、本実施の形態に係る鋏では、第2吸引磁石も第1吸引磁石314と同様の構成でケースに着脱可能とされているため、その説明を省略する。また、本実施の形態に係る鋏のその他の構成は、実施の形態1に係る鋏100の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0046】
本実施の形態に係る鋏においては、磁力の強さが異なる複数対の第1吸引磁石及び第2吸引磁石を備えている。使用者は、好みの磁力の強さの第1吸引磁石及び第2吸引磁石を選び、それぞれ第1吸引磁石用のケース314a及び第2吸引磁石用のケースに取り付けることが可能である。このように第1吸引磁石及び第2吸引磁石を交換することにより、使用者の好みに合わせて第1吸引磁石及び第2吸引磁石により生じる吸引力・トルクを変化させることができる。
【0047】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面はそれぞれ露出されており、鋏を閉じた状態のときには第1吸引磁石及び第2吸引磁石が直接当接する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1吸引磁石及び第2吸引磁石を開口していない箱状のケースに収納したり、それぞれの対向面にシートを貼り付けたりすることにより、鋏を閉じた状態のときに、第1吸引磁石と第2吸引磁石とが直接当接しない構成とすることもできる。このように構成することで、鋏を閉じた状態のときに第1吸引磁石と第2吸引磁石とが密着せず、第1吸引磁石と第2吸引磁石とを小さな力で引き離すことができる。
【0048】
また、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面はそれぞれ露出されているが、鋏を閉じた状態のときに第1吸引磁石と第2吸引磁石とが所定距離離隔するように第1吸引磁石及び第2吸引磁石を取り付けてもよい。このようにすることによっても、鋏を閉じた状態のときに第1吸引磁石と第2吸引磁石とが密着せず、第1吸引磁石と第2吸引磁石とを小さな力で引き離すことができる。
【0049】
また、上述した実施の形態においては、理美容で使用される整髪用の鋏の構成について述べたが、これに限定されるものではない。紙用鋏、植木用鋏等の他の用途の鋏を、上述した実施形態と同様の構成としてもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態においては、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面同士が、鋏を閉じた状態のときに5度(−5度)をなし、対向面の端縁の角部において当接する構成について述べたが、これに限定されるものではない。鋏を閉じた状態のときに、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面同士が平行となり、それぞれの対向面の実質的に全面において密着する構成としてもよい。また、鋏の第1刀体及び第2刀体の間の角度が5度以外のときに、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面が正対する構成としてもよい。この場合において、鋏を使用して対象物を切断する際、一般的には第1刀体及び第2刀体の間の角度が5〜30度以上となるまで鋏が開かれ、その後切断操作が行われることから、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の対向面が正対するときにおける第1刀体及び第2刀体の間の角度は0度以上30度以下であることが好ましい。
【0051】
また、上述した実施の形態においては、第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力によって生じる、鋏を開く方向に作用するトルク(以下、「吸引トルク」という)が、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の磁力によって生じる、鋏を閉じる方向に作用するトルク(以下、「反発トルク」という)の半分の大きさとなるように、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の磁力、第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力、並びにこれらの配置位置が決定されているが、これに限定されるものではなく、反発トルクの大きさが、吸引トルクの大きさの半分以外であってもよい。しかし、反発トルクが吸引トルクより大きければ、自然状態(鋏に外力が作用しない状態)において鋏が開いたままの状態となってしまうため、反発トルクと吸引トルクとが等しい大きさであるか、反発トルクが吸引トルクよりも小さくなるように、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の磁力、第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力、並びにこれらの配置位置が決定されていることが好ましい。
【0052】
また、上述した実施の形態においては、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を一対の首部の対向面にそれぞれ取り付け、第1反発磁石及び第2反発磁石を一対のハンドル部の先端にそれぞれ取り付ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1吸引磁石及び第2吸引磁石、並びに第1反発磁石及び第2反発磁石を、上記の位置とは異なる位置に取り付けてもよい。例えば、第1吸引磁石及び第2吸引磁石をハンドル部に取り付けてもよいし、第1反発磁石及び第2反発磁石を首部に取り付けてもよい。また、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を第1刃部及び第2刃部に取り付けてもよいし、第1反発磁石及び第2反発磁石を第1刃部及び第2刃部に取り付けてもよい。しかし、上記のように鋏が開いた状態では第1刃部及び第2刃部が閉じる方向へ力が生じ、これにより使用者による切断操作が補助され、鋏が閉じた状態では第1刃部及び第2刃部が閉じる方向へ作用する力とともに一対のハンドル部間を離反させる力が生じ、これにより使用者が鋏を開く操作を容易に行うことを可能とするために、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の磁力を第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力よりも大きくし、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を、第1反発磁石及び第2反発磁石よりも連結位置31に近接した位置に取り付ける構成とすることが好ましい。
【0053】
また、上述のように第1吸引磁石及び第2吸引磁石を第1刃部及び第2刃部に取り付ける場合には、第1吸引磁石は、第1刃部の外側面、即ち第1刃部の第2刃部と接触する面の反対側の面に取り付けられ、第2吸引磁石は、第2刃部の外側面に取り付けられる。さらに、第1吸引磁石は、鋏が開いた状態のときに第1刃部の刃側に特定の磁極(例えばS極)が向くように配置され、第2吸引磁石は、鋏が開いた状態のときに第2刃部の刃側に前記特定の磁極と異なる磁極(例えばN極)が向くように配置される。これにより、鋏が開いた状態のときに第1吸引磁石及び第2吸引磁石の間に吸引力が作用することとなる。また、かかる構成とすれば、第1吸引磁石と第2吸引磁石とが第1刀体及び第2刀体の重なり方向に離隔して配置されるため、鋏が開いた状態のときに、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の間には第1刃部と第2刃部とが重なる方向に作用する吸引力も生じることとなる。このため、第1刃部と第2刃部とが確実に擦れ合い、より一層良好な切断性能を確保することができる。またこの場合において、第1刃部及び第2刃部がフェライト系ステンレス鋼等の磁性体であれば、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の磁力によってこれらの磁石を第1刃部及び第2刃部に取り付けることが可能となる。したがって、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を取り付けるための部品又は接着剤等が必要なく、しかも容易に第1吸引磁石及び第2吸引磁石の取り外し及び位置調節が可能となる。また、これに限定されず、第1刃部及び第2刃部それぞれに第1吸引磁石及び第2吸引磁石を取り付けるための部材を設け、この部材により第1吸引磁石及び第2吸引磁石の位置調節が可能な構成とすることもできる。
【0054】
また、上述した実施の形態2においては、第1吸引磁石214及び第2吸引磁石をケース214aの内部空間において移動可能とすることにより、第1吸引磁石214及び第2吸引磁石を位置調節可能とした構成について述べ、実施の形態3においては、第1吸引磁石314及び第2吸引磁石をケース314aに着脱可能とすることにより、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を交換可能とした構成について述べたが、これらの構成に限定されるものではない。第1吸引磁石及び第2吸引磁石を着脱可能とし、且つ、第1吸引磁石及び第2吸引磁石の位置調節を可能とした構成とすることもできる。例えば、磁力の強さが異なる複数対の第1吸引磁石及び第2吸引磁石を備え、ケースに第1吸引磁石(第2吸引磁石)よりも長手方向に長い内部空間を設け、この内部空間の任意の位置に第1吸引磁石(第2吸引磁石)を着脱可能な構成としてもよい。これにより、使用者は自分の好みの磁力の強さの第1吸引磁石及び第2吸引磁石を選択し、選択した第1吸引磁石及び第2吸引磁石をケースの内部空間の好みの位置に取り付けることで、第1吸引磁石及び第2吸引磁石により生じる吸引力・トルクをきめ細かく調節することができる。
【0055】
また、上述した実施の形態2においては、第1吸引磁石214及び第2吸引磁石をケース214aの内部空間において長手方向に移動可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1吸引磁石を第1刀体の長手方向に交叉する方向へ移動可能とし、第2吸引磁石を第2刀体の長手方向に交叉する方向へ移動可能としてもよい。また、上述した実施の形態3においては、第1吸引磁石314及び第2吸引磁石をケース314aの内部空間の長手方向の任意の位置に着脱可能な構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1吸引磁石を第1刀体の長手方向に交叉する方向の任意の位置に着脱可能とし、第2吸引磁石を第2刀体の長手方向に交叉する方向の任意の位置に着脱可能としてもよい。このようにすることによっても、第1吸引磁石と第2吸引磁石との相対的位置関係を調節することができ、第1刀体及び第2刀体に作用する吸引力・吸引トルクの大きさを調節することができる。
【0056】
また、上述した実施の形態においては、第1反発磁石15及び第2反発磁石25が、ハンドル部12及び22に固定的に取り付けられている構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1反発磁石を第1刀体に位置調節可能に取り付け、第2反発磁石を第2刀体に位置調節可能に取り付けてもよい。この場合、第1反発磁石及び第2反発磁石を、実施の形態2で説明した第1吸引磁石214と同様に、ケース内でスライド可能な構成とすることができる。また、第1反発磁石を第1刀体に着脱可能に取り付け、第2反発磁石を第2刀体に着脱可能に取り付け、第1反発磁石及び第2反発磁石を交換可能な構成としてもよい。この場合、第1反発磁石及び第2反発磁石を、実施の形態3で説明した第1吸引磁石314と同様に、首部に設けられたケースに着脱可能な構成とすることができる。さらに、第1反発磁石及び第2反発磁石を着脱可能とし、且つ、第1反発磁石及び第2反発磁石の位置調節を可能とした構成とすることもできる。このようにすることにより、第1反発磁石及び第2反発磁石により生じる反発力・トルクを使用者の好みに応じて調節することが可能となる。
【0057】
また、上述した実施の形態においては、第1吸引磁石及び第2吸引磁石が互いに正対し、第1反発磁石及び第2反発磁石が互いに正対する構成について述べたが、これに限定されるものではない。第1吸引磁石及び第2吸引磁石は、吸引力を生じる程度に刀体の長手方向にずれて配置されていてもよい。ここにいう「対向」とは、第1刀体及び第2刀体が開いている状態のときにおいて、第1吸引磁石の第1磁極(例えばS極)が第2刀体のハンドル部側を向いており、第2吸引磁石の第2磁極(例えばN極)が第1刀体のハンドル部側を向いていれば、第1吸引磁石及び第2吸引磁石が、第1刀体及び第2刀体が閉じた状態のときにおいて、刀体の長手方向に互いにずれた位置に配置されている場合を含む概念である。
【0058】
また、第1反発磁石15とハンドル部12との間にバネを介装し、第2反発磁石25とハンドル部22との間にバネを介装して、ハンドル部12及びハンドル部22の間に発生する反発力を調節してもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態においては、首部に第1吸引磁石及び第2吸引磁石が設けられ、ハンドル部に第1反発磁石及び第2反発磁石が設けられた構成について述べたが、これに限定されるものではない。上記の磁石の他、第1刃部及び第2刃部に一対の磁石を取り付ける構成としてもよい。ここで、第1刃部に取り付けられる磁石は、第1刃部の外側面、即ち第1刃部の第2刃部と接触する面の反対側の面に取り付けられ、第2刃部に取り付けられる磁石は、第2刃部の外側面に取り付けられる。さらに、一対の磁石は、磁極方向が、第1刃部と第2刃部とが重なる方向と一致するように配置され、第1刃部に取り付けられる磁石における第1刃部側の磁極と、第2刃部に取り付けられる磁石における第2刃部側の磁極とが異極同士となるように配置される。これにより、一対の磁石間には第1刃部と第2刃部とが重なる方向に作用する吸引力が生じ、第1刃部と第2刃部とが確実に擦れ合い、より一層良好な切断性能を確保することができる。またこの場合において、第1刃部及び第2刃部がスレンレス鋼等の磁性体であれば、一対の磁石の磁力によってこれらの磁石を第1刃部及び第2刃部に取り付けることが可能となる。したがって、磁石を取り付けるための部品又は接着剤等が必要なく、しかも容易に磁石の取り外し及び位置調節が可能となる。また、これに限定されず、第1刃部及び第2刃部それぞれに磁石を取り付けるための部材を設け、この部材により磁石の位置調節が可能な構成とすることもできる。
【0060】
また、第1反発磁石を第1刀体の長手方向に交叉する方向へ移動可能とし、第2反発磁石を第2刀体の長手方向に交叉する方向へ移動可能としてもよい。また、第1吸引磁石を第1刀体の長手方向に交叉する方向の任意の位置に着脱可能とし、第2吸引磁石を第2刀体の長手方向に交叉する方向の任意の位置に着脱可能としてもよい。このようにすることによっても、第1反発磁石と第2反発磁石との相対的位置関係を調節することができ、第1刀体及び第2刀体に作用する反発力・反発トルクの大きさを調節することができる。
【0061】
また、上述した実施の形態においては、第1吸引磁石及び第2吸引磁石並びに第1反発磁石及び第2反発磁石を備える構成の鋏について述べたが、これに限定されるものではない。図8に示すように、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を備え、第1反発磁石及び第2反発磁石を備えない構成とすることもできる。これによっても、上述したように第1吸引磁石及び第2吸引磁石によって第1刀体及び第2刀体間に吸引力が発生し、切断操作が補助され、素早い切断操作が可能となる。
【0062】
また、上述した実施の形態1においては、第1吸引磁石14を、鋏100の首部13に固定的に設けられた台座14aに取り付け、第2吸引磁石24を、鋏100の首部23に固定的に設けられた台座24aに取り付け、第1反発磁石15を、鋏100のハンドル部12に固定的に設けられた台座15aに取り付け、第2反発磁石25を、鋏100のハンドル部22に固定的に設けられた台座25aに取り付けた構成について述べたが、これに限定されるものではない。図9は、他の実施の形態の鋏の全体構成の他の例を示す平面図である。この図9に示した鋏においては、首部413に第1吸引磁石414が直接固着され、首部423に第2吸引磁石424が直接固着されている。また、ハンドル部412の先端に延長部415aが設けられ、延長部415aに第1反発磁石415が直接固着されている。ここで、延長部415aとハンドル部412の他の部分とは一体成形されている。同様に、ハンドル部422の先端に延長部425aが設けられ、延長部425aに第2反発磁石425が直接固着されている。延長部415aと同様に、延長部425aとハンドル部422の他の部分とは一体成形されている。このように、第1吸引磁石、第2吸引磁石、第1反発磁石、及び第2反発磁石を、台座を介することなく直接第1刀体及び第2刀体に固着することもできる。
【0063】
また、図9に示したような延長部415a,425aをハンドル部412,422の先端部分から延設し、又は図1に示したような台座15a,25aをハンドル部12,22の先端側から突設し、延長部415a,425a又は台座15a,25aに第1反発磁石及び第2反発磁石を設ける構成とすることで、ハンドル部の刀体長手方向中間位置に第1反発磁石及び第2反発磁石を取り付ける構成よりも、連結位置31から第1反発磁石及び第2反発磁石までの距離を大きくすることができ、第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力により生じるトルクを大きくすることができる。
【0064】
また、図9に示した構成では、鋏が閉じた状態のときに第1反発磁石415及び第2反発磁石425が互いに当接せず、所定距離離隔している。このように、鋏が閉じた状態のときに、第1反発磁石及び第2反発磁石が離隔していてもよく、かかる状態においても第1反発磁石及び第2反発磁石の磁力により両ハンドル部に互いに反発する力を作用させることが可能である。
【0065】
また、上述した実施の形態3においては、一方の首部に固着されたケース314aに第1吸引磁石314を着脱可能に取り付け、他方の首部に固着されたケースに第2吸引磁石を着脱可能に取り付ける構成について述べたが、これに限定されるものではない。一方の首部に巻回することにより当該首部に取り付け可能な合成樹脂製のケースを設け、このケースに第1吸引磁石を収容し、他方の首部に巻回することにより当該首部に取り付け可能な合成樹脂製のケースを設け、このケースに第2吸引磁石を収容し、両ケースを対応する首部に取り付けることによって、第1吸引磁石及び第2吸引磁石を第1刀体及び第2刀体に取り付ける構成としてもよい。さらに、一方のハンドル部に設けられた延長部に巻回することにより当該延長部に取り付け可能な合成樹脂製のケースを設け、このケースに第1反発磁石を収容し、他方のハンドル部に設けられた延長部に巻回することにより当該延長部に取り付け可能な合成樹脂製のケースを設け、このケースに第2反発磁石を収容し、両ケースを対応する延長部に取り付けることによって、第1反発磁石及び第2反発磁石を第1刀体及び第2刀体に取り付ける構成とすることもできる。このようにすることにより、第1刀体及び第2刀体からケースと共に磁石を取り外すことができ、磁石を着脱するためのケースが第1刀体及び第2刀体に残らないため、磁石を取り外したときにおいて鋏の美観を良好にすることができる。
【0066】
また、上述した実施の形態においては、首部及びハンドル部を非磁性体のステンレス鋼製とする構成について述べたが、これに限定されるものではない。首部及びハンドル部を非磁性体の他の金属又は合成樹脂製としてもよいし、磁性体のステンレス鋼又は他の金属磁性材料製としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の鋏は、特に理美容で使用される整髪用の鋏として有用である。
【符号の説明】
【0068】
100 鋏
1 第1刀体
11 第1刃部
12 ハンドル部
12a 指孔
12b 当接部
13 首部
14 第1吸引磁石
14a 台座
15 第1反発磁石
15a,151a 台座
2 第2刀体
21 第2刃部
22 ハンドル部
22a 指孔
23 首部
24 第2吸引磁石
24a 台座
25 第2反発磁石
25a 台座
3 調節ナット
31 連結位置
213 首部
214 第1吸引磁石
214a ケース
314 第1吸引磁石
314a ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1刃部が一端側に設けられ、指を通すための指孔が形成された第1保持部が他端側に設けられた第1刀体と、
第2刃部が一端側に設けられ、指を通すための指孔が形成された第2保持部が他端側に設けられ、その長手方向中間部分において、前記第1刀体の長手方向中間部分と回動可能に連結された第2刀体と、
前記第1刀体において、前記第2刀体との連結位置から離隔した位置に取り付けられた第1吸引磁石と、
前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じるときに前記第1吸引磁石と互いに異なる磁極が対向するように、前記第2刀体において、前記第1刀体との連結位置から離隔した位置に取り付けられ、前記第1吸引磁石との間で前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じる方向へ作用する吸引力を生じる第2吸引磁石と、
前記第1刀体において、前記連結位置より前記第1保持部側の位置に取り付けられた第1反発磁石と、
前記第1刃部と前記第2刃部とが閉じるときに前記第1反発磁石と互いに同一の磁極が対向するように、前記第2刀体において、前記連結位置より前記第2保持部側の位置に取り付けられ、前記第1反発磁石との間で前記第1刃部と前記第2刃部とが開く方向へ作用する反発力を生じる第2反発磁石と、
を備える、鋏。
【請求項2】
前記第1反発磁石は、前記第1刀体において、前記第1吸引磁石が前記第1刀体に取り付けられている位置よりも、前記連結位置からの距離が大きい位置に取り付けられており、
前記第2反発磁石は、前記第2刀体において、前記第2吸引磁石が前記第2刀体に取り付けられている位置よりも、前記連結位置からの距離が大きい位置に取り付けられている、請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
前記第1吸引磁石は、前記第1刀体において、前記連結位置より前記第1保持部側の位置に取り付けられており、
前記第2吸引磁石は、前記第2刀体において、前記連結位置より前記第2保持部側の位置に取り付けられている、請求項1又は2に記載の鋏。
【請求項4】
前記第1吸引磁石及び前記第2吸引磁石は、前記第1刃部と前記第2刃部とが所定角度をなして開いているときに互いに正対する平面部をそれぞれ具備する、請求項1乃至3の何れかに記載の鋏。
【請求項5】
前記第1吸引磁石は、前記第1刀体において位置調節可能に取り付けられており、
前記第2吸引磁石は、前記第2刀体において位置調節可能に取り付けられている、請求項1乃至4の何れかに記載の鋏。
【請求項6】
前記第1吸引磁石は、前記第1刀体において着脱可能に取り付けられており、
前記第2吸引磁石は、前記第2刀体において着脱可能に取り付けられている、請求項1乃至5の何れかに記載の鋏。
【請求項7】
前記第1反発磁石は、前記第1刀体において位置調節可能に取り付けられており、
前記第2反発磁石は、前記第2刀体において位置調節可能に取り付けられている、請求項1乃至6の何れかに記載の鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−269134(P2010−269134A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97466(P2010−97466)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(509114402)
【Fターム(参考)】