説明

鋳物砂導入式鋳型造型装置

【課題】鋳物砂を型枠内又は鋳枠内に圧縮空気を用いて導入し充填するようにして鋳型を造型する装置において、圧縮空気によるサンドタンク内の圧力変化を模型板の形状に合わせ最適に充填圧力を調整できる鋳物砂導入式鋳型造型装置を提供する。
【解決手段】鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ圧縮空気によって加圧するサンドタンク1と、サンドタンク1に連通接続された連通管2と、連通管2にその排出口が接続されて並列的に配設されかつその供給口が圧縮空気源4に接続され、圧縮空気の圧力、流量を調整する複数個の調整手段5と、その供給ポートが圧縮空気源4にかつその排出ポートが連通管2に連通された電空比例弁6と、サンドタンク1内の圧力を検出する圧力検出手段7と、複数個の調整手段5、電空比例弁6及び圧力検出手段7に電気的に接続されて複数個の調整手段5、電空比例弁6を制御するコントローラ8と、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物砂を型枠内あるいは鋳枠内に圧縮空気を用いて導入し充填するようにして鋳型を造型する鋳物砂導入式鋳型造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置の一つとして、ブローヘッドと、このブローヘッドにその吐出口が連通されかつ複数個設けられて前記ブローヘッドとの連通状態が並列的であり、圧縮空気の圧力、流量を調整する調整手段と、これら調整手段の給気口に連通された圧縮空気源と、前記ブローヘッド内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記調整手段および前記圧力検出手段に電気的に接続されてこれらの調整手段および圧力検出手段の動作を制御するコントローラとを備えて、前記ブローヘッドに圧縮空気を供給してブローヘッド内の鋳物砂を型枠内または鋳枠内に吹き込み充填し、その後、充填した鋳物砂を圧縮して鋳型を造型するようにした吹込み式鋳型造型装置がある。
【特許文献1】特開平6−277800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このように構成された従来の吹込み式鋳型造型装置では、圧縮空気の供給によるブローヘッド内の圧力変化が、図3に示すように、段階的にまたは緩慢にしか変化しないため、模型板の形状に合わせた最適な砂充填圧力にブローヘッド内の圧力を制御することができず、そのため、鋳物砂の型枠内等への充填が十分でなかったり、必要以上の圧縮空気を消費したりするといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、圧縮空気の供給によるサンドタンク内の圧力変化を模型板の形状に合わせた最適なものに調整可能な鋳物砂導入式鋳型造型装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために発明の鋳物砂導入式鋳型造型装置は、鋳物砂を型枠内あるいは鋳枠内に圧縮空気を用いて導入し充填するようにして鋳型を造型する装置であって、鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ鋳物砂を圧縮空気によって加圧するサンドタンクと、このサンドタンクに連通接続された連通管と、この連通管にその排出口が接続されて並列的に配設されかつその供給口が圧縮空気源に接続され、サンドタンクに導入する圧縮空気の圧力、流量を調整する複数個の調整手段と、その供給ポートが前記圧縮空気源にかつその排出ポートが前記連通管にそれぞれ連通された電空比例弁と、前記サンドタンクに装着されてサンドタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記複数個の調整手段および前記圧力検出手段及び前記電空比例弁に電気的に接続されて前記複数個の調整手段および前記電空比例弁の動作を制御するコントローラと、を具備したことを特徴とする。
ここで、鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段とは、サンドタンクの内面に圧縮空気を噴出する手段であり、その方式は問わない。たとえば、圧力タンク構造を成すサンドタンク本体の胴壁が通気性の仕切り板によって仕切られて中空室を有する二重構造を成し、この仕切り板を多孔質材料で構成したものでよい。この仕切り板は、平均孔径が10〜500μmであって砂粒子の粒径よりも小さい多数の貫通孔を有しかつ厚さが5〜20mmである樹脂板で構成することができる。
また、空気を通さない仕切り板に間隔を設けて微細な孔を穿孔した構成でもよい。
また、サンドタンクは、少なくとも鋳物砂の上面を前記噴出手段を通さない圧縮空気によって加圧する機能を有することもできる。
さらに、前記調整手段に接続される圧縮空気源と前記電空比例弁に接続される圧縮空気源は、圧力が同一でもよく、異なってもよい。加えて、これらの圧縮空気源を一つで兼用しても良い。
【0006】
このように構成された装置は、予め調整手段の作動条件をコントローラに設定して、調整手段からの圧縮空気の供給により、サンドタンク内が模型板の形状に合わせた最適な砂充填圧力にするのに必要な圧力よりも低い圧力となるようにしたのち、圧力検出手段の管理の下に、複数の調整手段を段階的にまたは一度に開くとともに電空比例弁を作動させ、これにより、サンドタンク内の圧力変化を、任意の理想的な圧力曲線を描くものにすることができることになる。
【0007】
ここで、任意の理想的な圧力曲線とは、理想的な充填密度を実現する圧力曲線である。理想的な充填密度は例えば充填キャビティの上・下部の充填密度が高く、模型のある中央部が低くなり、その後圧縮すると充填キャビティの上・下部および模型のある中央部とも同様な密度の高品質な鋳型となる充填密度である。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明からも明らかなように本発明は、圧力検出手段の管理の下に、複数の調整手段を段階的にまたは一度に開くとともに電空比例弁を作動させることにより、サンドタンク内の圧力変化を模型板の形状に合わせた最適なものに調整することが可能になるなどの優れた実用的効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した鋳物砂導入式鋳型造型装置の一実施例について、図1〜図3に基づき詳細に説明する。本鋳物砂導入式鋳型造型装置は、図1に示すように、鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ鋳物砂を圧縮空気によって加圧するサンドタンク1と、このサンドタンク1に連通接続された連通管2と、この連通管2にその排出口が接続されて並列的に配設されかつその供給口が補助管3を介して圧縮空気源4aに接続され、圧縮空気の圧力、流量を調整する複数個の調整手段としての複数個のVPバルブ(流量・圧力制御弁)5、その供給ポートが圧縮空気源4bにかつその排出ポートが前記連通管2にそれぞれ連通されたVYバルブ(電空比例弁)6と、前記サンドタンク1に装着されてサンドタンク1内の圧力を検出する圧力検出手段7と、前記複数個のVPバルブ5および前記圧力検出手段7に電気的に接続されて前記複数個のVPバルブ5および圧力検出手段7の動作を制御するコントローラ8と、で構成してある。
【0010】
なお、電空比例弁とはコントローラからの指令により任意の圧力の圧縮空気を供給することが可能な電磁弁である。
【0011】
このように構成した装置は、予め前記複数個のVPバルブ5の作動条件を前記コントローラ8に設定して、前記複数個のVPバルブ5からの圧縮空気の供給により、前記サンドタンク1内が模型板の形状に合わせた最適な砂充填圧力にするのに必要な圧力よりも前記サンドタンク1内が低い圧力となるようにしたのち、前記圧力検出手段7の管理の下に、前記複数のVPバルブ5を段階的に開くとともに前記VYバルブ6を作動させる。これにより、前記サンドタンク1内の圧力変化を、図2に示すような任意の理想的な圧力曲線を描くものにすることができることになる。
【0012】
このような任意の理想的な圧力曲線を描くことができる本発明の構成を使用して、理想的な充填密度を実現する方法を以下に説明する。本発明を適用した鋳型造型装置の模式図を図4に示す。サンドタンク内の理想的な圧力曲線を示すグラフを図5に示す。
【0013】
図4は図1と、ほぼ同様に構成されている。相違は、コントローラ8が、複数個のVPバルブ5、VYバルブ6及び圧力検出手段7に電気的に接続されて複数個のVPバルブ5、VYバルブ6の動作を制御するように構成されていることである。
【0014】
そして、本鋳型造型装置によれば、予め前記VPバルブ5の動作条件および前記VYバルブ6の動作条件と理想的な圧力曲線を前記コントローラ8に設定して、前記VPバルブ5からの圧縮空気の供給により、サンドタンク1内が模型板の形状に合わせた最適な砂充填圧力にするよりも低い圧力とすると共に前記圧力検出手段7の管理のもとに、前記最大個数のVPバルブ5の段階的な開閉と前記VYバルブ6を作動させることができる。
【0015】
この結果、吹き込み充填時に充填キャビティの上・下部の砂Sの充填密度を高く、模型のある中央部を低くなる。
【0016】
そのような形状の鋳型を均一な密度にするためには、吹き込み充填過程のサンドタンク内圧力を変化させて、この充填を行なうための理想的なサンドタンク圧力曲線(図5)を得る必要がある。
【0017】
すなわち、前記VPバルブ5から前記サンドタンク1に供給される圧縮空気の圧力曲線は図6に示す。また、前記VYバルブ6から前記サンドタンク1に供給される圧縮空気の圧力曲線は図7に示す。そして、これらを合成すると、前記サンドタンク1内の圧力曲線は図8に示すように理想的なものになる。
【0018】
合成されたサンドタンク内の圧力曲線(図8)は、理想的な圧力曲線(図5)に極めて類似するように調整される。
【0019】
この結果、充填キャビティの上・下部の砂Sの充填密度が高く、模型のある中央部が低くなり、その後圧縮すると充填キャビティの上・下部および模型のある中央部とも同様な密度の高品質な鋳型となる。
【0020】
なお、調整手段への圧力は、0.1〜0.3MPaとし、電空比例弁への圧力は、0.5MPa程度とすることができる。ここで、電空比例弁は電気信号で任意の圧力に調整できるので工場エア圧をそのまま使用することもできる。
【0021】
なお、上記の実施例では、サンドタンク1は、鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ噴射された圧縮空気によって鋳物砂を加圧する機能を有しているが、これに限定されるものではなく、少なくとも鋳物砂を圧縮空気によって加圧する機能を有しているなら、どのような構造のものでもよい。さらに、理想的な砂充填が得られれば、その後のスクイズボードB1、B2による圧縮により均一な鋳型ができるのは明白である。
【0022】
また、本発明の鋳物砂は、ベントナイトを粘結剤とする生砂が最も好ましい。また本発明は有枠の造型機である鋳枠内のみならず抜枠造型機である型枠内への砂充填に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した鋳型造型装置の模式図である。
【図2】本発明によるサンドタンク内の圧力変化を示すグラフである。
【図3】従来の鋳型造型装置におけるブローヘッド内の圧力変化を示すグラフである。
【図4】本発明を適用した鋳型造型装置の模式図である。
【図5】サンドタンク内の理想的な圧力曲線を示すグラフである。
【図6】調整手段からサンドタンクに供給される圧縮空気の圧力曲線である。
【図7】電空比例弁からサンドタンクに供給される圧縮空気の圧力曲線である。
【図8】合算されたサンドタンク内の圧力曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
1 サンドタンク
2 連通管
4 圧縮空気源
5 VPバルブ(流量・圧力制御弁)
6 VYバルブ(電空比例弁)
7 圧力検出手段
8 コントローラ
S 砂(鋳物砂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂を型枠内あるいは鋳枠内に圧縮空気を用いて導入し充填するようにして鋳型を造型する装置であって、
鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ鋳物砂を圧縮空気によって加圧するサンドタンクと、
このサンドタンクに連通接続された連通管と、
この連通管にその排出口が接続されて並列的に配設されかつその供給口が圧縮空気源に接続され、圧縮空気の圧力、流量を調整する複数個の調整手段と、
その供給ポートが前記圧縮空気源にかつその排出ポートが前記連通管にそれぞれ連通された電空比例弁と、
前記サンドタンクに装着されてサンドタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記複数個の調整手段および前記圧力検出手段に電気的に接続されて前記複数個の調整手段の動作を制御するコントローラと、
を具備したことを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。
【請求項2】
鋳物砂を型枠内あるいは鋳枠内に圧縮空気を用いて導入し充填するようにして鋳型を造型する装置であって、
鋳物砂を流動化する圧縮空気の噴射手段を備えかつ鋳物砂を圧縮空気によって加圧するサンドタンクと、
このサンドタンクに連通接続された連通管と、
この連通管にその排出口が接続されて並列的に配設されかつその供給口が圧縮空気源に接続され、圧縮空気の圧力、流量を調整する複数個の調整手段と、
その供給ポートが前記圧縮空気源にかつその排出ポートが前記連通管にそれぞれ連通された電空比例弁と、
前記サンドタンクに装着されてサンドタンク内の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記複数個の調整手段、前記電空比例弁及び前記圧力検出手段に電気的に接続されて前記複数個の調整手段、前記電空比例弁の動作を制御するコントローラと、
を具備したことを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋳物砂導入式鋳型造型装置において、
前記サンドタンクは、少なくとも鋳物砂の上面を前記噴出手段を通さない圧縮空気によって加圧する機能を有することを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の鋳物砂導入式鋳型造型装置において、前記調整手段に接続される圧縮空気源及び前記電空比例弁に接続される圧縮空気源の圧力が異なる圧力に調整されていることを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の鋳物砂導入式鋳型造型装置において、前記調整手段に接続される圧縮空気源及び前記電空比例弁に接続される圧縮空気源の圧力が同じ圧力に調整されていることを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の鋳物砂導入式鋳型造型装置において、前記調整手段に接続される圧縮空気源及び前記電空比例弁に接続される圧縮空気源が1つの圧力源により兼用されていることを特徴とする鋳物砂導入式鋳型造型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−690(P2009−690A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160932(P2007−160932)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】