説明

鋳物砂組成物及び鋳型

【課題】溶湯と鋳型の焼付き反応が少なく、低膨張で割れ欠陥が少ない鋳物砂組成物であって、繰り返し再生使用が容易であり、また、産廃物として廃棄する際には有害物質の発生しない鋳物砂組成物の提供を図る。
【解決手段】MgOを2〜8質量%含有する天然硅砂であって、前記MgOが風化を受けた鉱物(特に、輝石)中に含有されている鋳物砂組成物、及び、鋳型を提供する。この天然硅砂は、青森県の六ヶ所村鉱区から産出されるものが望ましい。この天然硅砂と、このMgO含有の天然硅砂以外の天然硅砂・人造硅砂・再生砂などの石英を主な鉱物とする硅砂、ムライトやアルミナなどのセラミックサンド、ジルコンサンド・クロマイトサンド・オリビンサンドなどの特殊砂、フェロニッケルやフェロクロムを生産する際の鉱滓から生産するスラグサンドなどの鋳型用に用いられる鋳物砂とを、混合して用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造に使用される鋳型用の鋳物砂組成物及びこれにより製造される鋳型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鋳物砂と比較して、低い鋳型膨張量、良好な耐焼付き性、繰り返し再生使用可能な耐破砕性、粘結剤を添加した際の良好な鋳型強度を併せ持っている。従来の鋳物砂は何れか良くても、何れかが悪い。
【0003】
(1)硅砂を主成分とし長石を二次成分とする天然硅砂、人造硅砂及びこれらの再生砂においては、主成分が石英(SiO2)であるために、鋳造用合金として最も生産量の多い鋳鉄において、2FeO + SiO2 → 2FeO SiO2・・・・(式1)の反応による焼付き欠陥が発生し易い。
【0004】
(2)MgOを含む塩基性の鋳物砂としては、橄欖石を砕き砂状としたオリビンサンドが既に使用されている(特許文献1)。ところが、本来、オリビンサンドは脆い鉱物であり、繰り返し使用すると微粉化し、繰り返し使用が難しい。これはオリビンサンドが風化(Mg、Feの溶出)の影響を受けやすいことに由来する。また化学的にも物理的にも脆い特徴がある。
【0005】
(3)スラグサンドの鋳物砂はMgOが含まれているものがあるが、一般に使用される物は粒形が悪く鋳型強度が発現しない。これは塊状スラグを砕いて砂状とした物が鋳物砂用として一般に使用されているからである。また、スラグサンドは鋳鉄溶湯と接する1300℃では溶融する。
【0006】
(4)特許文献1に示されるクロマイトサンドはその成分にMgOを含有しているものがあるが、Cr2O3が主成分であるために、鋳物砂として使用後に廃棄する際に六価クロムの溶出問題が発生する。
【0007】
(5)特許文献2に示されるセラミックサンドは低膨張であり、耐火度も高く、鋳型強度も発現し易い。しかし、塩基性骨材物質は含まれていないために焼付きが発生するおそれが残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−251435号公報
【特許文献2】特許2859653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、溶湯と鋳型の焼付き反応が少なく、低膨張で割れ欠陥が少ない鋳物砂組成物の提供を図ることにある。さらに本発明の他の目的は、繰り返し再生使用が容易であり、また、産廃物として廃棄する際には有害物質の発生しない鋳物砂組成物の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋳鉄溶湯に対して、MgOを含む塩基性骨材であるオリビンサンドを使用するとモールドリアクションが少なく焼付きの少ない鋳物が生産できることは既に知られていたが、オリビンサンドは脆いために鋳物砂として適当でなく、その使用用途は限定的なものである。
【0011】
そこで、本発明者らは、MgOを含む鉱物、特に、輝石が天然硅砂となると繰り返し使用できることを発見し、これを鋳物砂に適用することで塩基性と耐破砕性を具備する鋳物砂組成物、並びに、当該鋳物砂組成物によって製造された鋳型を発明した。
【0012】
なお、風化とは安山岩や橄欖岩などの岩石が、風、雨、熱、凍結などの風化作用により崩れ、それらが川あるいは海に移動し、長期に渡る川や海での移動や潮の満ち引きにより、天然に鋳物砂と使用するための適当な粒子サイズとなり、また、砂表面が天然に磨鉱されて硬度が改質された状態である。鋳物砂として使用されるには、更に、それらの川砂あるいは海砂が海岸や打ち寄せられたり、川が氾濫して堆積したものが、極めて長期に渡る雨水による風化作用で、塩分や貝殻などの夾雑物が溶出して無くなったものが鋳物砂として使用可能な状態となる。従って、鋳物砂用に用いられる天然硅砂の産地は極めて限定される。本発明の条件に合致するものであれば、特に産地は限定されるものではないが、実施可能な例として、青森県の六ヶ所村鉱区から産出される天然硅砂を挙げることができる。
【発明の効果】
【0013】
天然珪砂による鋳物砂の反応は、前記(式1)に示すとおり、酸性酸化物のSiO2と塩基性酸化物のFeOの反応であるが、本発明に係る鋳物砂組成物においては、塩基性酸化物のMgOが2〜8質量%含まれているために、酸性酸化物と塩基性酸化物の反応が少なくなる。本発明は天然硅砂であるために、風化作用によって粒形が良くなっているため、鋳型強度が発現しやすい。従って、溶湯と鋳型の焼付き反応が少なく、低膨張で割れ欠陥が少ない。
【0014】
前述のオリビンサンドにあっては、橄欖石を砕き砂状としたものであり、脆く、繰り返し使用すると微粉化し、繰り返しの使用が困難であったが、本発明に係る鋳物砂組成物にあっては、天然珪砂砂粒の角などの脆い箇所は風化により取り除かれ硬いもののみが残った天然硅砂として存在した状態となっており、繰り返し使用が可能となる。
前述のスラグサンドの鋳物砂は、粒形が悪く鋳型強度が発現しないが、本発明の鋳物砂組成物は、天然硅砂であるために粒形が良く鋳型強度が良好である。
【0015】
前述のクロマイトサンドはその成分にMgOを含有しているものがあるが、Cr2O3が主成分であるために、鋳物砂として使用後に廃棄する際に六価クロムの溶出問題が発生したが、本発明の鋳型組成物においてはこの問題を解決し得る。特に、輝石由来の物はCr2O3やNiOを含んでいないのでクリーンな低膨張鋳物砂として有利な特性である。マントル中で先に橄欖石が出来た後に輝石が出来るため重金属を含まない。
【0016】
以上のように、本発明に係る鋳物砂組成物にあっては、溶湯と鋳型の焼付き反応が少なく、低膨張で割れ欠陥が少ない。さらに本発明に係る鋳物砂組成物は、繰り返し再生使用が容易であり、また、産廃物として廃棄する際には有害物質の発生が少ないことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係るシェル鋳型の1000℃の膨張量変化を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例及び比較例について行った砂粒子の圧縮強度測定の概念図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例について行った鋳込み実験に用いた鋳型の模式図であり、(A)は平面図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明の鋳物砂組成物は、MgOを2〜8質量%含有する天然硅砂であって、前記MgOが風化を受けた鉱物中(特に、輝石中)に含まれている天然珪砂を用いる。この輝石は、前記MgO含有の天然硅砂中に、10〜40質量%含まれるものが適当である。このMgO含有の天然硅砂の産地は特に限定されないが、一例を挙げると、青森県の六ヶ所村鉱区から産出される天然硅砂を示すことができる。この六ヶ所村鉱区の天然硅砂は、ルナサンド(登録商標)の名称で供給されているが、ゴルフ場用の砂、競馬場用の砂、各種土木工事用の砂(下水道埋戻し砂、コンクリート吹付砂、サンドパイル砂、道路築造用砂、港湾荷役、ジオファイバー用砂、造園植裁工事用砂など)として用いられていたに止まる。本発明者は、数ある日本内外の砂から、このルナサンドが本発明の条件に合致することを知見し、本発明を実施可能なものとした。このルナサンドは、MgOを2〜8%含有しているため、単独で鋳物砂組成物として用いる場合にあっても、他の鋳物砂と配合して用いる場合にあっても、MgOを鋳型製造時の鋳物砂組成物に含有させることができる。
【0020】
前記MgO含有の天然硅砂は、単独でも用いることができるが、前記MgO含有の天然硅砂以外の天然硅砂・人造硅砂・再生砂などの石英を主な鉱物とする硅砂、ムライトやアルミナなどのセラミックサンド、ジルコンサンド・クロマイトサンド・オリビンサンドなどの特殊砂、フェロニッケルやフェロクロムを生産する際の鉱滓から生産するスラグサンドなどの鋳型用に用いられる鋳物砂と混合して用いることもできる。鋳物砂と混合して用いた場合の鋳物組成物全体としてのMgOの含有量は、0.1%以上となることが適当である。
【0021】
本発明の鋳物砂組成物の粒度は、特に限定はないが、鋳型用として使用されるおよそ20mesh(850μm)以下の粒子サイズから構成させることが望ましい。一般に35mesh(425μm)から50mesh(300μm)ピークの鋳物砂、70mesh(212μm)から100mesh(150μm)ピークの鋳物砂が鋳型用として主に使用される。鋳物砂は粒度構成を有するため各種サイズの砂粒から成り立っており、粒度分布を有する。また、精密鋳造用鋳型としてミクロンサイズの砂粒が使用されることもあり、鋳型をバックアップするためにmm単位の砂粒が使用されることがある。本発明はそれら鋳物砂の全てに適用可能である。
【0022】
本発明の鋳物砂組成物が用いられる鋳型としては、特に限定はされないが、フラン鋳型、アルカリフェノール鋳型、コールドボックス鋳型、シェル鋳型、生型、精密鋳造用鋳型、金型、消失模型、Vプロセス等の鉄鋳物、アルミ鋳物、銅鋳物等の各種合金の鋳造に用いられる各種鋳型を例示できる。
【0023】
一般的に鋳物砂に添加されるベンガラ、砂鉄、石炭粉、黒鉛粉、澱粉、糖類、木粉、界面活性剤、増粘剤、崩壊促進剤などが使用されても本発明の効果は阻害されない。
【実施例】
【0024】
次に、本発明の理解を高めるために、本発明の実施例と比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して理解されるべきではない。
表1に各実施例における各鋳物砂の配合量等と、試験結果を示す。表2に各比較例における各鋳物砂の配合量等と、試験結果を示す。表3から表5に、各実施例と各比較例における各鋳物砂の配合量等と、試験結果を示す。
【0025】
表1〜表4に示す実施例1及び実施例2は、青森県の六ヶ所村鉱区から産出される天然硅砂である前述の2種の六ヶ所村天然硅砂−1、六ヶ所村天然硅砂−2からなる鋳物砂組成物である。六ヶ所村天然硅砂−1と六ヶ所村天然硅砂−2とは、表6にその成分を詳しく示すが、MgO含有量が相違する。なお、本明細書において、%は、原則としてすべて質量%である。
【0026】
実施例3〜16は、六ヶ所村天然硅砂と他の鋳物砂とを配合した鋳物砂組成物である。
比較例1〜16は、表2〜表4に示す従来の鋳物砂を用いた鋳物砂組成物である。比較例には、鋳物砂としてよく使用されるものを選定した。
表5及び図1には六ヶ所村天然硅砂をオーストラリア産天然硅砂に一定の割合にて配合した場合のシェル鋳型特性、特に1000℃における膨張量の変化を示す。
表6に、実施例と比較例に用いた鋳物砂の化学成分を示す。
表7に、実施例と比較例に用いた鋳物砂の粒度分布を示す。鋳物砂の粒度分布としては、AFS.FN50からAFS.FN 70のいわゆる6号相当とした。ただし、ジルコンサンドについてはAFS1.FN 10の7号相当とした。なお、AFS.FNとはアメリカ鋳造協会が定めた粒度指数であり、平均meshを表す指標である。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
ここで表1〜4における測定結果及び試験結果を説明しておく。
【0035】
(1)MgO含有量
実施例及び比較例の各鋳物砂組成物について、蛍光X線分析を行いオーダー分析法により化学成分を求めた。
【0036】
(2)六ヶ所村天然硅砂MgO含有量
実施例及び比較例の各鋳物砂組成物について、配合されている六ヶ所村天然硅砂に含まれたMgOの量を、各鋳物砂組成物に対する100分率で示した。これは配合量により算出した数値である。
【0037】
(3)砂粒の圧縮強度
図2に圧縮強度測定の概念図を示す。まず、電磁力式微小強度試験機(以下、微小強度試験機という)で最大破壊荷重を測定した。最大荷重容量が50Nであり、一定変位速度1mm/分の条件で負荷を加えた。圧縮強度は試料一粒毎に顕微鏡で撮影して長径と短径を求めた後、微小強度試験機を用いて最大破壊荷重を測定した。
最大破壊荷重から圧縮強度を求めるには試料粒子1の断面積を知る必要である。ここで言う断面積とは圧縮試験時の加圧板2と試料粒子の接触面積である。しかしながら、試料粒子1は不整形粒子であるためにその接触面積は一定で無い。そこで、本明細書では試料粒子1を楕円体と仮定して断面積を求め、圧縮強度を算出する方法を用いる。鋳物砂粒子の長径(2a)と短径(2b)は顕微鏡写真から実測した。鋳物砂粒子高さ(2c)と破壊時の加圧板2の位置(2c-2d)は微小強度計の読み値である。
圧縮強度(σK)はσK=P/Sにより算出した。ここに、σK:圧縮強度,P:破壊荷重,S:変位dにおける楕円体断面積(加圧板と粒子の推定接触面積)である。
【0038】
(4)鋳込み試験
図3に鋳込み実験に用いた鋳型の模式図を示す。主型3はフラン鋳型で作製した。鋳物は直径300mm×高さ100mmの円筒状である。直径50mm×高さ50mmの中子4を6カ所均等に設置した。中子4に、実施例及び比較例に示す鋳物砂を用い、シェル鋳型(表1及び表2)、コールドボックス鋳型(表3)、フラン鋳型(表4)で作製した。
【0039】
表1及び表2のシェル鋳型は、耐PB用フェノール樹脂2.0%、ヘキサメチレンテトラミンをフェノール樹脂に対して15%、ステアリン酸カルシウムを0.1%添加して混練し、280℃で1分間硬化させて鋳型を作製した。
表3のフラン鋳型は、フラン樹脂0.8%、キシレンスルホン酸系硬化剤をフラン樹脂に対して40%添加して造型し24時間後に抜型して鋳型を作製した。
【0040】
表4のコールドボックス鋳型は、Part-1(フェノール樹脂)を1.0%、Part-2(イソシアネート樹脂)1.0%添加して混練砂とし、コールドボックス用自動造型機を用いて鋳型を作製した。
【0041】
主型3をフラン鋳型としたのは、鋳型の張り気が少なく、溶湯圧が中子試験片に集中し、ベーニング欠陥や焼付き欠陥を発生しやすくするためである。溶湯5は片状黒鉛鋳鉄(FC250)相当とし、1400℃で注湯した。表8に溶解材料の化学組成と配合割合を示す。
【0042】
【表8】

【0043】
(5)ベーニング度合い、焼付き度合い
ベーニング欠陥と焼付き欠陥は、その程度により、表9と表10に示す判定基準に基づいて点数化して判定した。
【0044】
【表9】

【0045】
【表10】

【0046】
(6)鋳型の強度試験
シェル鋳型の強度試験は、10mm×10mm×100mmの試験片を作製し、50mmのスパーンで保持して曲げ試験を行い求めた。
コールドボックス鋳型とフラン鋳型は、直径28mm×50mmの試験片を作製し、圧縮強度試験を求めた。
【0047】
(7)1000℃急熱最大膨張量
それぞれ、直径28mm×50mmの試験片を作製し、1000℃急熱膨張量試験を行い、最大膨張量を求めた。
【0048】
実施例と比較例からの考察
(a)MgOを2%から8%含む天然硅砂を単独及び30%から50%含む本発明の実施例に関して、単独配合の実施例1、2では、鋳込み試験片の写真は滑らかであり、ベーニング欠陥及び焼付き欠陥は発生無しであった。30%から50%配合した実施例3〜16の場合は、ベーニング欠陥と焼付き欠陥は痕跡程度、軽微程度であり、いずれも本発明の目的を達成し得ることが明らかとなった。
【0049】
(b)天然硅砂として、オーストラリア産天然硅砂(比較例1)と静岡県産天然硅砂(比較例2)を比較検討したが、共にベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生度合いが、本発明より悪い傾向であった。
(c)島根県再生砂(比較例3)では、ベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生度合いが、本発明より悪い傾向であった。
【0050】
(d)日本産セラミックサンド-1(比較例4)は、焼付き欠陥が痕跡程度発生し、本発明より僅かに劣る結果であった。この日本産セラミックサンド-1は、人工的にセラミックスを合成し、砂粒状としたものである。その製法の複雑さにより市場価格が本発明品の10倍以上であり、使用する際に極めて限定的となる。本発明は一般的な鋳物砂価格で耐ベーニング性と耐焼付き性を具備した鋳物砂を提供できる。
(e)中国産セラミックサンド-2(比較例5)ではベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生度合いが、本発明の実施例より悪い傾向であった。
(f)スラグサンド(比較例6)ではベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生度合いが、本発明の実施例より悪い傾向であった。
【0051】
(g)ジルコンサンド(比較例7)では、本発明品と同様にベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生が無い結果であった。このジルコンサンドは細かな砂粒であるAFS. FN 90品が一般的なために焼付き欠陥が発生し難いとの要因がある。つまり、AFS. FN 50から60の粗め砂粒の本発明の実施例を用いてもAFS. FN110のジルコンサンド程度の耐焼付き性となる。また、ジルコンサンドの市場価格は本発明の実施例の20倍以上である。
【0052】
(h)クロマイトサンド(比較例8)は、ベーニング欠陥と焼付き欠陥の発生度合いが、本発明の実施例より若干、悪い傾向であった。クロマイトサンドはその成分にCr2O3を含むために、溶出試験を行うと六価クロムが検出されるリスクがあり、鋳物砂として繰り返し使用後に廃棄する際に難がある。本発明品はCr2O3を含まないために、廃棄に当たっての問題が発生しない。
【0053】
(i)比較例のオリビンサンド(比較例9)は、焼付き欠陥が痕跡程度発生し、本発明の実施例より僅かに劣る結果であった。オリビンサンドはMgOを多く含む鋳物砂である。本発明はMgOが少なくともオリビンサンドと同様な効果が認められる。また、オリビンサンドは砂粒子の圧縮強度が266MPaと低く、微粉化し易いために繰り返し使用に難がある。更に、オリビンサンドはシェル鋳型、フラン鋳型、コールドボックス鋳型の強度が低い、これは混練中に微粉化することが原因の一つである。この強度の低さが、鋳物砂として使用されるに当たっての制約となっている。本発明の実施例は一般の天然硅砂なみの鋳型強度であるために、鋳型強度の制約が無い。
【0054】
(j)本発明の実施例の最大膨張量は1.0%以下と低く、一般に使用される天然硅砂や再生砂と比較して低い。高価なセラミックサンド、スラグサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド、オリビンサンドと同等の低膨張性を具備している。
【符号の説明】
【0055】
1 試料粒子
2 加圧板
3 主型
4 中子
5 溶湯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgOを2〜8質量%含有する天然硅砂であって、前記MgOが風化を受けた鉱物中に含有されていることを特徴とする天然硅砂を用いた鋳物砂組成物。
【請求項2】
前記MgO含有の天然硅砂は、輝石が10〜40質量%含まれる天然硅砂であることを特徴とする請求項1記載の鋳物砂組成物。
【請求項3】
前記MgO含有の天然硅砂は、青森県の六ヶ所村鉱区から産出される天然硅砂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳物砂組成物。
【請求項4】
前記MgO含有の天然硅砂と、
前記MgO含有の天然硅砂以外の天然硅砂・人造硅砂・再生砂などの石英を主な鉱物とする硅砂、ムライトやアルミナなどのセラミックサンド、ジルコンサンド・クロマイトサンド・オリビンサンドなどの特殊砂、フェロニッケルやフェロクロムを生産する際の鉱滓から生産するスラグサンドなどの鋳型用に用いられる鋳物砂とを、
混合したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の鋳物砂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の鋳物砂組成物によって製造された鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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