説明

鋳物門扉

【課題】鋳物門扉において、ボルトカバーの取付を容易にし、経年劣化の影響を避け、門扉が所定閉鎖位置を越えて回動されてボルトカバーが門柱に強打されることがあってもボルトカバーの脱落を防止する。
【解決手段】門扉用ヒンジ装置の壺金物を構成する第1金物と第2金物を結合する上下のボルトにより固定片を第2金物に挟持固定し、前記ボルトの頭と前記固定片を収容して隠蔽するボルトカバーを、その側面から側方に突出する係止部を第2金物に形成してある係止縁に係合するとともに、被覆部に前記固定片とボルト頭を収容被覆した状態で、前記被覆部の前記係止部と反対側の側壁に形成されているビス貫通孔から前記固定片のビス受け部にビスをねじ込んで固定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物門扉、特に門扉用ヒンジ装置の壺金物を門扉に締め付け固定するボルトの頭を隠蔽するボルトカバーを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
門扉を門柱に回動自在に吊るには、門柱側に取り付けられる肘金物と、門扉側に取り付けられる壺金物とからなる門扉用ヒンジ装置が用いられ、図5に例示するように、門扉1が鋳物製である場合は、壺金物2は、鋳物門扉(以下、単に門扉という。)1の吊り元側を挟持する第1金物21と第2金物22の二つの金物から構成されており、その一方から他方に上下のボルト3をねじ込んで二つの金物21,22を結合すると同時に、門扉1を挟持するようになっている。
【0003】
さらに詳しくは、第1金物21は、肘金物(図示せず)に上向きに突設されたピンを挿通する軸受211と、その軸受に連続するように形成され、ボルト3をねじ込むねじ孔を形成されたボルト受け部212と、そのボルト受け部から直角方向に延び、先端近傍に門扉1の吊り元側の表裏両面に形成してある溝11の内の一方に嵌合される凸条2131を備えた挟持部213とを有する。また、第2金物22は、第1金物21のボルト受け部212のねじ孔に対応する貫通孔2211を形成されたボルト挿通部221と、ボルト挿通部から第1金物21の挟持部213と平行に延び、先端近傍に門扉1の前記溝11の内の他方に嵌合される凸条2221を備えた挟持部222とを有する。そして、両金物の挟持部213,222をそれぞれ門扉の吊り元側の所定高さにおいて両側に配置するとともに、それぞれの凸条2131,2221を門扉1の両側の溝11に嵌合するとともに、両金物のボルト挿通部212とボルト受け部221とを突き合わせて、第2金物22のボルト挿通部221の貫通孔2211からボルト3を第1金物21のボルト受け部212のねじ孔にねじ込んで、両金物を結合し、かつ門扉1を挟持している。図5には、紙面の都合上、門扉の上部に取り付けられる壺金物2のみが示されているが、門扉の下部にも同様の構成の壺金物が取り付けられる。
【0004】
壺金物2を上記のように取り付けられた状態のまま放置すると、ボルト3の頭31が壺金物の外面に露出されて防犯上好ましくないので、従来、第2金物22の表面にボルト頭を隠蔽するためのボルトカバー4を取り付けていた。
【0005】
従来のボルトカバー4は、全体が硬質合成樹脂で図5に示されている形状及び構造に成形されたものである。すなわち、上下のボルト3の軸の間に嵌合され、かつ、締め付けられるボルトの頭31と第2金物22のボルト挿通部221の間に挟持して固定される固定部41と、この固定部から側方に延出された連結部42と、その連結部の先端に薄肉により形成されたヒンジ部43を介して結合されたカバー本体44とを一体に有する。
【0006】
そして、ボルト3を貫通孔2211からボルト受け部22に締め付け、その終了直前に、ボルトカバー4の固定部41を第2金物22に形成してある凸条223,224の間に嵌合し、かつ、固定部の上下両端部を上下のボルト3の軸部に当接した状態で、ボルト3を完全に締め付けて、その固定部をボルトの頭と第2金物との間に挟持固定した後、カバー本体44をヒンジ部43を中心として、ボルト頭が隠蔽されるように、図5の矢印方向に回転し、カバー本体44の中にボルトの頭を収容して隠蔽するとともに、カバー本体の先端に形成してある係止片45を第2金物22の挟持部222に形成してある断面L字形の係止縁225に差し込んで固定するように構成されている。
【特許文献1】特になし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のボルトカバー4は、硬質合成樹脂で成形され、固定部41をボルトで固定した後、ヒンジ部43を強引に折り曲げてカバー本体44を回動し、さらにカバー本体の側面を押して先端の係止片45を係止縁225に係合させるため、取付けが容易でなく、薄肉で形成されているヒンジ部43の機械的強度がカバー本体の回動時に劣化する。また、その薄肉のヒンジ部43は、折り曲げによる残留応力により、早い時期に経年劣化を起こし、何らかの衝撃を受けた際に破断され易い。例えば、一枚扉型の門扉の場合は、戸当たり部材に不具合があるために門扉閉鎖時に門扉が所定の閉鎖位置を越えて回動されたとき、また、両開き扉型の門扉の場合は、一方の扉が開放状態にある際に他の門扉を閉めたためにその門扉が所定の閉鎖位置を越えて回動されたときは、いずれのときも、ボルトカバー4が門柱に強打されるので、経年劣化したヒンジ部43が破断され、その結果、カバー本体44が連結部42から切り離されて脱落するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、解決しようとする課題は、ボルトカバーの取付が容易であるばかりでなく、経年劣化の影響を避けることができ、しかも、門扉が所定の閉鎖位置を越えて回動されたためにボルトカバーが門柱に強打されることがあっても、ボルトカバーの脱落が防止されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、ボルトカバーを上記既存のボルトカバーの係止部を備えたカバー本体のみの形状とほぼ等しいものとするとともに、上記既存のボルトカバーの固定部に相当するものをカバー本体から分離独立した固定片を形成したこと、その固定片は壺金物を構成する第1金物と第2金物を結合する上下のボルトにより第2金物に挟持固定され、かつ、側面にビス受け部を一体に有すること、及び、前記ボルトカバーは、前記上下のボルトの頭と前記固定片を収容して隠蔽するカップ状の被覆部と、その被覆部の側面から側方に突出し、壺金物の第2金物に形成してある係止縁に係合して係止される係止部とを一体に有し、前記被覆部の前記係止部と反対側の側壁に、前記被覆部にボルトの頭と固定された固定片とを収容し隠蔽した状態で前記固定片のビス受け部のねじ孔と合致するビス貫通孔が形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成により、固定片は、上下のボルトで壺金物の第1金物と第2金物を結合する際に、ボルトの頭と第2金物との間に挟持固定される。ボルトカバーは、その係止部を第2金物の係止縁に係合するとともに、被覆部の中にボルトの頭と固定片を収容して隠蔽し、そのボルトカバーの側壁に設けてあるビス貫通孔にビスを貫通して固定片のビス受け部のねじ孔にねじ込むことにより固定される。従って、ボルトカバーには薄肉のヒンジ部は形成されず、また、取付過程において折り曲げられることもない。
【0011】
固定片は所要の剛性を有する金属製であることが望ましく、ボルトカバーは、量産が容易な硬質合成樹脂製であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、固定片とボルトカバーに分割して構成したので、壺金具に対する取付が容易になった。また、固定片を金属製とし、カバー本体を合成樹脂製とすることができる。カバー本体は取付時に折り曲げられることがないので、機械的強度の低下や曲げ応力による経年劣化の促進がなく、耐久性が向上する。従って、材料の経年劣化によるボルトカバーの脱落が防止される。
【0013】
請求項2の発明によれば、固定片が金属製であるから、ボルトカバーの取付状態が堅固になる。また、門扉が所定閉鎖位置を越えて開けられたためにボルトカバーが門柱に強打されることがあっても、その反力がビスを介して強固な固定片に受けられるので、ボルトカバーの機械的強度が補強され、破断を防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明の構成を示す要部の斜視図、図2はボルトカバーの取付要領を示す要部の平面図、図3は同じく取付後の状態を示す要部の断面図、図4は本発明に係るボルトカバーを取り付けたヒンジ装置を用いて門扉が門柱に支持されている状態を示す要部平面図である。図5に示された部材と同一の部材には同一の符号を用いる。
【0015】
図1(a)の5は、所要の強度と剛性を備えるために鉄などの金属板の曲げ加工により形成された固定片であり、上下方向に延びる板状の被挟持部51を有し、その中間に所要の強度を備えるためにコ字形に屈曲して形成された凸部52を有し、その凸部の側面にねじ孔54が設けられたねじ受け部53が形成されている。被挟持部51は、その先端が第1金物21と第2金物22を結合するためにねじ込まれる上下のボルト3の軸に当接され又は近接されて、そのボルトが締め付けられた場合にボルト頭と第2金物22との間に挟み込まれて固定される長さを有している。また、好ましくは、ボルトを締め付ける間にボルトの軸と第2金物22の凸条223,224の一方又は双方の間に安定して保持されるように、かつ、ボルトによる挟持面積を大きくするために、被挟持部51の先端の少なくとも片側に湾曲されている。
【0016】
固定片5は、両金物21,22を結合するためボルト3を第2金物22の貫通孔2211から第1金物21のねじ孔に一部ねじ込んだ状態のときに、その両ボルトの間に挿入し、被挟持部51をボルト3の軸と凸条223,224の一方又は双方とで保持する。その場合、被挟持部51の先端はボルト3の頭と第2金物22との間に、ワッシャ3bが用いられる場合は、そのワッシャと第2金物との間に介在される。そして、ボルト3を完全に締め付けることにより固定片5が、図1(b)に示すように、壺金物2に固定される。
【0017】
同図における4Eは、本発明において用いられるボルトカバーであり、製造コストの低減のために合成樹脂成形品である。そして、従来のボルトカバーのカバー本体とほぼ同様の形状に形成され、ボルト3の頭とそのボルト3により固定された固定片5を収容できる収容部41と、その収容部を形成する一方の側壁の端部から他方の側壁と反対方向に突出する係止部45を有し、前記他方の側壁には、固定片5のねじ受け部53のねじ孔54と合致しうる孔46が形成されている。
【0018】
ボルトカバー4Eは、カバー本体44の収容部に固定片5及び上下のボルト頭を収容するとともに、係止部45を第2金物22の係止縁225に係合した後、凸条223,224に当接した状態で、カバー本体44の孔46からビス6を固定片5のねじ受け部53のねじ孔54にねじ込むことにより、壺金物2に固定される。
なお、ビス7は、壺金物2を門扉1に取り付けた後、第1金物21のボルト受け部212の側面に設けてあるねじ孔214から門扉1の側面に向けてねじ込まれて、壺金物2の門扉の溝11の幅方向のずれを防止するためのものである。
【0019】
図4は、上記のようにして壺金物2が取り付けられ、かつ、ボルトの頭を隠蔽するためのボルトカバー4Eが取り付けられ門扉1が、門柱8に固定金具9を介して取り付けられた肘金物10のピン101により、そのピンを中心として回動自在に吊られ、閉鎖位置に保持されている状態を示す。この図示の門扉1は、ピン101を中心として時計方向に回動されて門を開放し、逆に、反時計方向に図示の位置まで回動されて門を閉鎖する。しかし、一枚扉型の門扉において、左側の図外の門柱に取り付けられている戸当たり部材に不具合があるために、門扉1が図4に示されている所定の閉鎖位置を越えて回動される場合があり得る。また、両開き扉型の門扉において、左側の門扉が開放位置に存在するまま、あるいは、閉鎖位置にあっても落とし錠が施錠されていない状態で、不注意で門扉1が閉鎖されたために、同様に、門扉1が図4に示されている所定の閉鎖位置を越えて回動される場合があり得る。このように所定の閉鎖位置を越えて回動された時は、ボルトカバー 4Eが門柱8の側面に強打されることがある。本発明によるボルトカバー4は、ビス6により金属製の強固な固定片5に固定され、その固定片もより強固な壺金物2に固定されているから、門柱から受ける強い力がその固定片5及び壺金物2に受け止められる。従って、ボルトカバーが容易に破損されたり、壺金物2から脱落したりすることが確実に防止される。
【0020】
カバー本体の互いに反対側に設けられた係止部45と、収容部の側壁の一方を第2金物の係止縁225に係止し、他方を凸条223に係合させれば、ビス6のねじ込み時の安定性が向上し、ボルトカバーの取付が一層容易になるとともに、ボルトカバーの取付状態が一層堅固になり、門柱への強打に対する耐破壊力がさらに増強される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の構成を示す要部の斜視図。
【図2】カバー本体の取付要領を示す要部の平面図。
【図3】同じく取付後の状態を示す要部の断面図。
【図4】本発明に係るボルトカバーを取り付けたヒンジ装置を用いて門扉が門柱に支持されている状態を示す要部平面図。
【図5】従来のボルトカバーの構成及び取付構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0022】
1 門扉
11 ヒンジ取付用溝
2 門扉用ヒンジ装置の壺金物
21 第1金物
211 軸受
212 ボルト受け部
213 挟持部
22 第2金物
221 ボルト挿通部
222 挟持部
3 ボルト
31 頭
4 ボルトカバー
4E ボルトカバー
44 収容部
45 係止部
5 固定片
51 被挟持部
52 凸部
53 ねじ受け部
54 ねじ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面にビス受け部を有する固定片を、門扉用ヒンジ装置の壺金物を構成する第1金物と第2金物を結合する上下のボルトにより前記第2金物に挟持固定し、前記上下のボルトの頭と前記固定片を収容して隠蔽する被覆部と、その被覆部の側壁から側方に突出する係止部と、前記被覆部の前記係止部と反対側の側壁に前記固定片のビス受け部のねじ孔と合致するように形成されたビス貫通孔とを有するボルトカバーを、前記係止部を前記壺金物の第2金物に形成してある係止縁に係合するとともに、前記被覆部に前記固定片とボルト頭を収容被覆した状態で、前記ボルトカバーのビス貫通孔から前記固定片のビス受け部にビスをねじ込んで固定することを特徴とする鋳物門扉。
【請求項2】
固定片は金属製であり、ボルトカバーは硬質合成樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の鋳物門扉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−193973(P2006−193973A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6609(P2005−6609)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】