説明

鋳造初期のスラグベアと溶鋼表面の凝固を抑制する連続鋳造方法

【課題】鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で発生するブレークアウトを防ぐ。
【解決手段】鋳型3内に浸漬ノズル2を介して溶鋼を注入し、鋳型3内の溶鋼6の表面が浸漬ノズル2の吐出孔2aの上端を越えた時点で、フロントパウダーを鋳型3内に投入する。フロントパウダーの熱量は60[MJ/m]以上である。鋳型3内の全てのフロントパウダーが溶融して形成されるスラグ溶融層7の厚みTを0.009[m]以上0.014[m]以下とする。鋳型3内に投入されたフロントパウダーが鋳型3内の溶鋼6の表面を覆った後、15秒以内に、本体パウダーを鋳型3内へ投入する。ここで、鋳型3内での本体パウダーの未溶融層9の厚さTが0.03[m]以上となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼を連続して鋳造する連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋳型直下で起こるブレークアウトの発生を防止する技術が検討されている。引用文献1には、浸漬ノズルから鋳型内に吐出される溶鋼流が凝固シェルに衝突する際に生じる凝固遅れを防ぐために、浸漬ノズルに形成された吐出孔の直径及び吐出角等を調整する方法が開示されている。この方法によると、溶鋼流が凝固シェルに衝突する際の衝突力を緩和できることから、ブレークアウトの発生を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレークアウトは、浸漬ノズルから吐出される溶鋼流が凝固シェルに衝突する際に生じる凝固遅れが原因で発生するほかに、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で発生することが知られている。引用文献1では、鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で発生するブレークアウトを防止する方法について考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、鋳造初期における鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で発生するブレークアウトを防ぐことができる連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の連続鋳造方法は、連続鋳造において、ダミーバーをセットした矩形状の鋳型内に浸漬ノズルを介して溶鋼を注入し、鋳型内の溶鋼の表面が前記浸漬ノズルに形成された吐出孔の上端を越えた時点で、フロントパウダーを鋳型内の溶鋼上へ投入し、前記フロントパウダーによる鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.009[m]以上0.014[m]以下とし、鋳型内に投入された前記フロントパウダーが溶鋼表面を覆った後15秒以内に、鋳型内の本体パウダーの未溶融厚さが0.03[m]以上となるように、前記本体パウダーを鋳型内に投入する鋳造初期のスラグベアと溶鋼表面の凝固を抑制する連続鋳造方法である。
なお、前記フロントパウダーは、下記の組成を有する。
CaO :24[wt%]以上36[wt%]以下
SiO:5[wt%]以上8[wt%]以下
CaSi合金:13[wt%]以上28[wt%]以下
Fe:22[wt%]以上26[wt%]以下
Al:1[wt%]以上3[wt%]以下
NaO :5[wt%]以上7[wt%]以下
また、前記フロントパウダーは、下記(1)式を満たす。
{m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)−5.2×n−(M−m− n)×(C×T+C)}/(W×T)≧60 ・・・(1)
但し、
Mは、フロントパウダーの投入量[kg]
mは、フロントパウダーのCaSi合金含有量[kg]
aは、CaSi合金に含まれたSiの重量比
bは、CaSi合金に含まれたCaの重量比
nは、フロントパウダーのFe含有量[kg]
は、スラグ成分の融解熱[MJ/kg]
は、スラグ成分の固相線温度における比熱[MJ/kg・degree]
は、スラグ成分の固相線温度[℃]
Wは、鋳型上端内寸の長辺長さ[m]
Tは、鋳型上端内寸の短辺長さ[m]
また、前記本体パウダーは、下記の組成を有する。
CaO:35[wt%]以上45[wt%]以下
SiO:25[wt%]以上35[wt%]以下
Al:3[wt%]以上5[wt%]以下
NaO:7[wt%]以上9[wt%]以下
LiO:0[wt%]以上2[wt%]以下
MgO:1[wt%]以上4[wt%]以下
F :7[wt%]以上10[wt%]以下
C :3[wt%]以上7[wt%]以下
【0007】
本発明では、鋳造初期に鋳型内に投入されるフロントパウダーが、発熱剤(CaSi合金)及び酸化剤(Fe)を含むものであって、その熱量が60[MJ/m]以上であることにより、フロントパウダーを鋳型内に投入すると、発熱剤が酸化した際に発生する熱を用いてフロントパウダーが溶融し、溶鋼から奪われる熱量が少なくなる。これにより、フロントパウダーが溶鋼上で溶融する際に、溶鋼温度が低下することを抑制できることから、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固を抑制できる。
【0008】
また、鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.009[m]以上にすることにより、スラグ溶融層で鋳型内の溶鋼表面を十分に覆うことができるので、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固を抑制できる。
【0009】
さらに、鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.014[m]以下とすることによって、スラグ溶融層により生成するベアの成長を抑制できる。
【0010】
加えて、フロントパウダーが鋳型内に投入されると、溶鋼上にスラグ溶融層及び粉末層が形成されるが、フロントパウダー投入後、フロントパウダーが鋳型内の溶鋼表面を覆った後15秒以内に本体パウダーを投入することにより、スラグ溶融層上の粉末層が燃焼する前に、本体パウダーでスラグ溶融層及び粉末層を覆うことができる。これにより、スラグ溶融層が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型内でのベアの生成及び成長を抑制できる。
【0011】
また、鋳型内の本体パウダーの未溶融厚さを0.03[m]以上とすることにより、本体パウダーで鋳型内のフロントパウダーの層(スラグ溶融層及び粉末層)を完全に覆うことができる。これにより、スラグ溶融層が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型内でのベアの生成及び成長を抑制できる。
【0012】
よって、本発明によると、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成を抑制できることから、ブレークアウトの発生を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の連続鋳造方法によると、鋳造初期に鋳型内に投入されるフロントパウダーが、発熱剤(CaSi合金)及び酸化剤(Fe)を含むものであって、その熱量が60[MJ/m]以上であることにより、フロントパウダーを鋳型内に投入すると、発熱剤が酸化した際に発生する熱を用いてフロントパウダーが溶融し、溶鋼から奪われる熱量が少なくなる。これにより、フロントパウダーが溶鋼上で溶融する際に、溶鋼温度が低下することを抑制できることから、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固を抑制できる。また、鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.009[m]以上にすることにより、スラグ溶融層で鋳型内の溶鋼表面を十分に覆うことができるので、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固を抑制できる。さらに、鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.014[m]以下とすることによって、スラグ溶融層により生成するベアの成長を抑制できる。加えて、フロントパウダーが鋳型内に投入されると、溶鋼上にスラグ溶融層及び粉末層が形成されるが、フロントパウダー投入後、フロントパウダーが鋳型内の溶鋼表面を覆った後15秒以内に本体パウダーを投入することにより、スラグ溶融層上の粉末層が燃焼する前に、本体パウダーでスラグ溶融層及び粉末層を覆うことができる。これにより、スラグ溶融層が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型内でのベアの生成及び成長を抑制できる。また、鋳型内の本体パウダーの未溶融厚さを0.03[m]以上とすることにより、本体パウダーで鋳型内のフロントパウダーの層(スラグ溶融層及び粉末層)を完全に覆うことができる。これにより、スラグ溶融層が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型内でのベアの生成及び成長を抑制できる。よって、本発明の連続鋳造方法によると、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成を抑制できることから、ブレークアウトの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】連続鋳造機の構成の一部を示す図である。
【図2】本実施形態の連続鋳造方法を説明する図である。
【図3】本実施形態の連続鋳造方法を示す模式図である。
【図4】評価試験の条件を説明する図である。
【図5】ブレークアウトの発生を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
〔連続鋳造機100〕
図1に示すように、連続鋳造機100は、タンディッシュ1と、タンディッシュ1に連結して設けられた2孔式の浸漬ノズル2と、断面形状が略矩形状の鋳型3と、鋳型3の直下から鋳造経路Lに沿って設けられた複数のロール対4とを有する。浸漬ノズル2は、有底円筒形状であって、側部に互いに対向するように形成された一対の吐出孔2aを有する。また、浸漬ノズル2の下部は、鋳型3内の略中央付近に配置されている。
【0017】
〔連続鋳造方法〕
連続鋳造を開始する前に、予め、鋳型3の下方にダミーバー5を設置する。そして、タンディッシュ1内に収容された溶鋼6を、浸漬ノズル2を介して鋳型3内に注入する(連続鋳造開始)。鋳型3内に所定量の溶鋼が収容されると、ダミーバー5を下流へ引き抜く。鋳型3内の溶鋼6は、冷却され、凝固シェル6aを形成しながら、鋳造経路Lに沿って連続鋳造機100の下流へ引き抜かれ、内部まで完全に凝固して鋳片となる。なお、ダミーバー5は、引き抜き距離が所定の距離に達したときに、適宜の手段により回収される。図1には、ダミーバー5を引き抜く前の状態を示している。
【0018】
図2に示すように、上記連続鋳造において、連続鋳造開始後、鋳型3内にフロントパウダーを投入し(S1)、その後、鋳型3内に本体パウダーを投入する(S2)。そして、ダミーバー5を下流へ引き抜き、その後、定期的に本体パウダーを鋳型3内に投入する。
【0019】
図3(a)で鋳型3内に投入されたフロントパウダーの一部は、鋳型3内の溶鋼6上で、フロントパウダーに含まれる発熱剤が酸化した際に発生する熱及び溶鋼6の熱によって溶融する。これにより、図3(b)に示すように、溶鋼6上には、スラグ溶融層7及び粉末層8が形成される。粉末層8が燃焼する前に鋳型3内に本体パウダーを投入すると、図1に示すように、溶鋼6上に、スラグ溶融層7と、粉末層8と、本体パウダーの未溶融層9とが形成される。その後、鋳型3内の全てのフロントパウダーが完全に溶融し、図3(c)に示すように、溶鋼6上の層は、スラグ溶融層7と、本体パウダーの未溶融層9とになる。
【0020】
ところで、連続鋳造初期は、鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が起こりやすく、溶鋼表面の凝固及び生成したベアにより、鋳型直下でブレークアウトが発生しやすい。そこで、本発明は、連続鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で起こるブレークアウトの発生を防止するものであり、以下にそのブレークアウトが発生する理由を説明する。ここで、「連続鋳造初期」とは、鋳型内に溶鋼を注入した時から鋳造速度が操業上の所定の速度に達するまでである。鋳造速度は、ダミーバーを引き抜いた後に、操業上の所定の速度に達する。
【0021】
〔ブレークアウトの発生〕
(溶鋼表面の凝固によるブレークアウトの発生)
連続鋳造初期には鋳型が冷えているため、鋳型の内壁面近傍では溶鋼が冷却されやすい。また、図4(a)に示すように、断面形状が長方形状の鋳型の長辺側の内壁面と浸漬ノズルの外壁面との距離(図4(a)に示す距離H)は約40〜70[mm]と短く、溶鋼流動が滞留することにより、浸漬ノズル近傍では溶鋼が冷却されやすい。したがって、溶鋼の表面が鋳型内壁面から浸漬ノズルの外壁面まで連続して凝固し、これが凝固シェルと繋がると、図5(a)に示すように、鋳片の一端が浸漬ノズルに固着する。この状態で鋳片を引き抜くと、凝固シェルに引張応力が発生し、凝固シェルの一部が破断することがある。凝固シェルが破断すると、図5(b)に示すように、鋳片内部の溶鋼が凝固シェルの外側に流出し、ブレークアウトが発生する。
【0022】
(ベアによるブレークアウトの発生)
連続鋳造初期は、鋳造速度を、操業上の所定の速度になるまで増加させるため、溶鋼の液面レベルが変動しやすい状態である。そのため、溶鋼表面が鋳型内壁面に固着したベアより上昇し、ベアが鋳型内壁面と凝固シェルとの間に噛み込まれることがある。ベアが噛み込まれた部位では、凝固シェルの厚みが非常に薄くなり、その部分では、凝固シェルが破断しやすい。凝固シェルが破断すると、ブレークアウトが発生する。
【0023】
ところで、ベアは、一般的に、溶融したスラグが冷却され凝固して形成されたものと、溶融したスラグやパウダーの焼結層が固まって形成されたもの等により構成される。したがって、スラグ溶融層7の厚みが厚くなるにつれてベアの厚みが厚くなりやすい。そして、ベアの厚みが厚いほど、その部位では、凝固シェルの厚みが薄くなり、ブレークアウトが発生しやすい。そこで、ブレークアウトが発生するベアの厚みについての評価試験を行った。
【0024】
本試験では、連続鋳造開始後、鋳造初期において、複数の時間(t,t,・・・,t)が経過したときに鋳型直下でのブレークアウトの発生の有無を評価し、そのときのベアの厚みを測定した。ベアの厚みは、断面形状が長方形状の鋳型の長辺側の内壁面において、鋳型のコーナーから50[mm]以上350[mm]以内の範囲内(例えば、図4(a)に示すRの範囲の領域)に固着したベアの厚みから評価した。これらの結果を表1に示す。なお、「ベアの厚み」とは、図4(b)に示すように、鋳型内壁面に対して垂直な方向についてのベアの最大長さである。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から、連続鋳造開始後、時間t,t,t,tが経過したときは、ブレークアウトが発生しなかった。一方、連続鋳造開始後、時間tが経過した後は、ブレークアウトが発生した。なお、ブレークアウト発生の原因となったベアの厚みは、鋳型内壁面と凝固シェルとの間に噛み込まれ下方へ沈降しているが、ブレークアウト発生時に鋳型内壁面に固着したベアの厚みと同等であると評価できる。また、鋳型内壁面に固着したベアの厚みは、鋳型の周方向位置が異なっても大きく変化しないことから、鋳型の周方向位置が異なるベアの厚みと同等であると評価できる。
【0027】
表1から、ブレークアウトが発生しない場合はベアの厚みが20[mm]以内であり、ブレークアウトが発生したときは、ベアの厚みが24[mm]以上であった。よって、ベアの厚みを20[mm]以内とすることにより、ブレークアウトの発生を防止できることがわかった。
【0028】
次に、上述した連続鋳造方法について、図2を参照しつつ説明する。
【0029】
最初に、フロントパウダーの投入(S1)について詳細に説明する。
【0030】
(フロントパウダーの組成決定)
フロントパウダーの塩基度(CaO/SiO)が0.8〜1.2となるように、CaO,SiO及びCaSi合金の含有量を調整することにより、フロントパウダーの組成を下記の組成とする。フロントパウダーは、発熱剤であるCaSi合金と、発熱剤の酸化剤となるFeとを含んでいる。なお、フロントパウダーに、フッ素(F)及び炭素(C)が含有されている場合は、フッ素によりフロントパウダーの粘度を調整でき、炭素によりフロントパウダーの焼結性及び滓化性を調整できる。
CaO:24[wt%]以上36[wt%]以下
SiO:5[wt%]以上8[wt%]以下
CaSi合金:13[wt%]以上28[wt%]以下
Fe:22[wt%]以上26[wt%]以下
Al:1[wt%]以上3[wt%]以下
NaO:5[wt%]以上7[wt%]以下
【0031】
(フロントパウダーの熱量決定)
フロントパウダーが鋳型内に投入されると、溶鋼上でフロントパウダーが溶融する際に、フロントパウダーに含まれる発熱剤(CaSi合金)が酸化した際に発生する熱が用いられるので、溶鋼から奪われる熱量が少なくなる。これにより、溶鋼温度の低下が抑えられる。そして、鋳型内の溶鋼表面の凝固の有無は、溶鋼表面に投入されるフロントパウダーの熱量バランスによって決まる。よって、フロントパウダーの熱量を調整することにより、溶鋼表面の凝固を抑制することが可能となる。
【0032】
そこで、フロントパウダーが溶融するときに溶鋼から奪う熱量を少なくするためには、フロントパウダーの熱量を60[MJ/m]以上とする。フロントパウダーの熱量が60[MJ/m]以上である場合は、フロントパウダーの発熱により溶鋼から奪う熱量を低減できることから、溶鋼温度の低下を抑制できる。これにより、溶鋼表面の凝固を抑制できる。
【0033】
ここで、フロントパウダーの熱量は、下記の式(A)により表される。
フロントパウダーの熱量[MJ/m
=(発熱剤の発熱量−酸化剤の吸熱量−スラグ成分が固相線温度に上昇するための 熱量−スラグ成分の融解熱)/鋳型上端の内寸断面積 ・・・(A)
上記式(A)の右辺について説明する。
【0034】
<発熱剤の発熱量>
フロントパウダーの発熱剤(発熱成分)は、CaSi合金であるので、発熱剤(CaSi合金)の発熱量は、下記の式(i)により求められる。
発熱剤の発熱量[MJ]
=発熱剤重量×(Si単位重量当りの発熱量×発熱剤中に含まれたSiの重量比+ Ca単位重量当りの発熱量×発熱剤に含まれたCaの重量比)
=m×(32.3×a/(a+b)+16.0×b/(a+b))
=m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)・・・(i)
但し、mは、フロントパウダーのCaSi合金含有量[kg]
aは、CaSi合金に含まれたSiの重量比
bは、CaSi合金に含まれたCaの重量比
である。
また、式(i)において、Siの単位重量当りの発熱量及びCaの単位重量当りの発熱量として、下記の発熱量の値を用いている(出典: E.T.Turkdogan、「Physical chemistry of hightemperature technology」、1980年 )。
Siの単位重量当りの発熱量:
216500[cal/mol]
=907135[J/g]
=32.3[MJ/kg]
Caの単位重量当りの発熱量:
15300[cal/mol]
=641070[J/g]
=16.0[MJ/kg]
【0035】
<酸化剤の吸熱量>
発熱剤(CaSi合金)を酸化する酸化剤は、フロントパウダーに含まれるFeであるので、酸化剤(Fe)の吸熱量は、下記の式(ii)により求められる。
酸化剤の吸熱量[MJ]
=Fe単位重量当りの吸熱量×n
=5.2×n ・・・(ii)
但し、nは、フロントパウダーのFe含有量[kg]である。
また、式(ii)において、Feの単位重量当りの発熱量として、下記の発熱量の値を用いている(出典: 金属学会編「講座:現代の金属学 冶金物理化学」、1982年)。
Feの単位重量当りの発熱量:5.2[MJ/kg]
【0036】
<スラグ成分が固相線温度に上昇するための熱量>
スラグ成分が固相線温度(T)まで上昇するための熱量[MJ]は、下記の式(iii)により求められる。ここで、スラグ成分とは、フロントパウダーを構成する成分のうち発熱剤(CaSi合金)及び酸化剤(Fe)を除いた成分である。
スラグ成分が固相線温度(T)に上昇するための熱量[MJ]
=スラグ成分重量×スラグ成分比熱×上昇温度
=(M−m−n)×C×T ・・・(iii)
但し、Cは、スラグ成分の固相線温度における比熱[MJ/kg・degree]
は、スラグ成分の固相線温度[℃]
である。
【0037】
<スラグ成分の融解熱>
スラグ成分の融解熱は、下記の式(iv)により求められる。
スラグ成分の融解熱[MJ]
=スラグ成分重量×融解熱
=(M−m−n)×C ・・・(iv)
但し、Cは、スラグ成分の融解熱[MJ/kg]である。
【0038】
<鋳型上端の内寸断面積>
鋳型上端の内寸断面積[m]
=鋳型上端の内寸の長辺長さ×鋳型上端の内寸の短辺長さ
=W×T ・・・(v)
但し、Wは、鋳型上端の内寸の長辺長さ[m]
Tは、鋳型上端の内寸の短辺長さ[m]
である。
【0039】
式(A)及び式(i)〜(v)から、フロントパウダーの熱量は、下記の式(a)により表される。
フロントパウダーの熱量[MJ/m
={m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)−5.2×n−(M−m− n)×C×T−(M−m−n)×C}/(W×T)
={m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)−5.2×n−(M−m− n)×(C+C×T)}/(W×T) ・・・(a)
【0040】
したがって、上記の式(a)によって求められるフロントパウダーの熱量が60[MJ/m]以上となるようにフロントパウダーの投入量及び組成等を調整する(式(1))。
{m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)−5.2×n−(M−m− n)×(C×T+C)}/(W×T)≧60[MJ/m] ・・・(1)
【0041】
(スラグ溶融層の厚み)
上述したように、鋳型3内に投入されたフロントパウダーはスラグ溶融層7と粉末層8となるが(図3(b)参照)、本体パウダー9が投入されてからダミーバーの引き抜き開始までに、フロントパウダーは完全に溶融し、鋳型3内の全てのフロントパウダーがスラグ溶融層7となる(図3(c)参照)。鋳型3内の全てのフロントパウダーが溶融して形成されるスラグ溶融層7の厚み(図3(c)に示すスラグ溶融層7の厚みT)は、下記の式(b)によって表される。
スラグ溶融層の厚み[m]
=(M−n)/(W×T×ρ) ・・・(b)
但し、ρは、溶融時の密度[kg/m]である。
【0042】
鋳型3内の溶鋼6の表面がスラグ溶融層7で覆われることにより、溶鋼6の表面の凝固が抑制される。そこで、鋳型3内の溶鋼6の表面を十分に覆うことができるように、スラグ溶融層7の厚み(図3(c)に示すスラグ溶融層7の厚みT)を0.009[m]以上とする。
【0043】
その一方で、ブレークアウトの発生の原因となるベアは、溶融したスラグが固まって形成されることから、スラグ溶融層7の厚みが厚くなるにつれて、ベアの厚みが厚くなる。上述した評価試験から、ブレークアウトが発生しない場合は、ベアの厚みが20[mm]以内であることがわかっている。そこで、ベアの厚みを20[mm]以内とするために、スラグ溶融層7の厚み(図3(c)に示すスラグ溶融層7の厚みT)を0.014[m]以下とする。
【0044】
よって、上記の式(b)によって求められるスラグ溶融層の厚みが0.009[m]以上0.014[m]以内となるようにフロントパウダーの投入量及び酸化剤の含有量等を調整する(式(2))。
0.009[m]≦(M−n)/(W×T×ρ)≦ 0.014[m] ・・・(2)
【0045】
(フロントパウダーの投入時期)
フロントパウダーが鋳型3内の溶鋼6中に巻き込まれないようにするために、フロントパウダーの投入時期を、図3(a)に示すように、連続鋳造開始後、鋳型3内の溶鋼6の表面が浸漬ノズル2の吐出孔2aの上端を超えた時点とする。なお、鋳型3内の溶鋼6の表面が浸漬ノズル2の吐出孔2aまで達していないときにフロントパウダーを投入した場合、フロントパウダーが、吐出孔2aから吐出される溶鋼流に直接接触し、溶鋼6中に巻き込まれることによってパウダー性の欠陥が生じるおそれがある。フロントパウダーの投入は、一定量のフロントパウダーを一度に鋳型3内に投入することにより行う。フロントパウダー投入後は、金属棒等を用いてフロントパウダーを鋳型3内に均一に分散する。
【0046】
次に、図2に示す本体パウダーの投入(S2)について詳細に説明する。
【0047】
(本体パウダーの組成決定)
本体パウダーの塩基度が約1.0〜1.8となるように、発熱成分を含まない下記の組成とする。
CaO:35[wt%]以上45[wt%]以下
SiO:25[wt%]以上35[wt%]以下
Al:3[wt%]以上5[wt%]以下
NaO:7[wt%]以上9[wt%]以下
LiO:0[wt%]以上2[wt%]以下
MgO:1[wt%]以上4[wt%]以下
F :7[wt%]以上10[wt%]以下
C(Total Carbon):3[wt%]以上7[wt%]以下
【0048】
(鋳型内の本体パウダーの厚み)
本体パウダーの未溶融層9の厚みは、下記の式(c)により求められる。
本体パウダーの厚み
=L/(W×T×ρ) ・・・(c)
但し、Lは、本体パウダー投入量[kg]
ρ2は、本体パウダー(未溶融本体パウダー)のかさ密度[kg/m]である。
【0049】
本体パウダーにより鋳型3内のスラグ溶融層7及び粉末層8を完全に覆うためには、鋳型3内の本体パウダーの未溶融層9の厚み(図3(c)に示す未溶融層9の厚みT)が0.03[m]以上となるように、本体パウダーを鋳型3内に投入する。スラグ溶融層7及び粉末層8が本体パウダーにより完全に覆われない場合、粉末層8の燃焼が進みスラグ溶融層7が表面に現れるので、その部分では、放熱量が大きい。特に、鋳型コーナー付近では、冷却されやすいためベアが成長しやすい。
【0050】
よって、上記の式(c)によって求められる本体パウダーの未溶融層9の厚みが0.03[m]以上となるように調整する(式(3))。
L/(W×T×ρ)≧0.03[m]・・・(3)
【0051】
(本体パウダーの投入時期決定)
図3(b)に示すように、鋳型3内にフロントパウダーを投入すると、鋳型3内の溶鋼6上にスラグ溶融層7と粉末層8とが形成される。粉末層8の燃焼が進んで、スラグ溶融層7が表面に現れる前に、本体パウダーによりスラグ溶融層7及び粉末層8を覆うために、フロントパウダー投入後、フロントパウダーが溶鋼6の表面を覆った後、15秒以内に本体パウダーを鋳型3内に投入する。なお、本体パウダーを投入する前に、スラグ溶融層7の一部が表面に現れた場合、その部分からの放熱量が大きくなり、スラグ溶融層7が冷却されやすくなる。これにより、ベアが生成されやすくなり、また、ベアが成長しやすい。
【0052】
以上に述べたように、本実施形態の連続鋳造方法によると、鋳造初期に鋳型3内に投入されるフロントパウダーが、発熱剤(CaSi合金)及び酸化剤(Fe)を含むものであって、その熱量が60[MJ/m]以上であることにより、フロントパウダーを鋳型3内に投入すると、発熱剤が酸化した際に発生する熱を用いてフロントパウダーが溶融し、溶鋼6から奪われる熱量が少なくなる。これにより、フロントパウダーが溶鋼6上で溶融する際に、溶鋼6の温度が低下することを抑制できることから、鋳造初期の鋳型3内での溶鋼6の表面の凝固を抑制できる。
【0053】
また、鋳型3内のスラグ溶融層7の厚みを0.009[m]以上とすることにより、鋳型3内の溶鋼6の表面をスラグ溶融層7により十分に覆うことができるので、鋳造初期の鋳型3内での溶鋼6の表面の凝固を抑制できる。
【0054】
さらに、鋳型3内のスラグ溶融層7の厚みを0.014[m]以下にすることによって、スラグ溶融層7により生成するベアの生成及び成長を抑制できる。
【0055】
加えて、フロントパウダーが鋳型3内に投入されると、溶鋼6上にスラグ溶融層7及び粉末層8が形成されるが、フロントパウダー投入後、フロントパウダーが鋳型3内の溶鋼6の表面を覆った後15秒以内に本体パウダーを投入することにより、スラグ溶融層7上の粉末層8が燃焼する前に、本体パウダーでスラグ溶融層7及び粉末層8を覆うことができる。これにより、スラグ溶融層7が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層7からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型3内でのベアの生成及び成長を抑制できる。
【0056】
そして、鋳型3内の本体パウダーの未溶融層9の厚さを0.03[m]以上とすることにより、本体パウダーで鋳型3内のフロントパウダーの層(スラグ溶融層7及び粉末層8)を完全に覆うことができる。これにより、スラグ溶融層7が表面に現れることを防止でき、スラグ溶融層7からの放熱を抑止できることから、鋳造初期の鋳型3内でのベアの生成及び成長を抑制できる。
【0057】
よって、本実施形態の連続鋳造方法によると、鋳造初期の鋳型3内での溶鋼6の表面の凝固及びベアの生成を抑制できることから、ブレークアウトの発生を防止できる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
【0059】
(実施例1〜21,比較例1〜14)
鋳型内に投入されるフロントパウダーの条件及びフロントパウダー投入後、鋳型内に最初に投入される本体パウダーの条件を変えたときの鋳型内の溶鋼表面の凝固の有無及びベアの厚みを調べた。
【0060】
本実施例1〜21及び比較例3,5〜7,12〜14では、鋳造開始後、鋳型内の溶鋼表面が浸漬ノズルの吐出孔の上端を超えた時点で、フロントパウダーを鋳型内に投入し、その後、ダミーバーを引き抜く前に本体パウダーを鋳型内に投入した。また、比較例1,2,4,8〜11では、鋳造開始後、鋳型内の溶鋼表面が浸漬ノズルの吐出孔の上端を超えた時点で、フロントパウダーを鋳型内に投入し、その後、ダミーバーを引き抜く前に本体パウダーを投入せず、ダミーバーを引き抜いた後(フロントパウダーを投入してから60秒経過後)に本体パウダーを投入した。また、本実施例及び比較例では、図1に示した連続鋳造機と同様な構成の連続鋳造機を用いた。
【0061】
表2には実施例1〜21及び比較例1〜14の鋳造条件を示し、表3には表2に示すフロントパウダー及び本体パウダーの組成を示している。
【0062】
ここで、表2に示す「立ち上げ加速度」とは、鋳造開始から鋳造速度が操業上の所定の速度になるまでの加速度(鋳造初期の加速度)である。また、表2に示す鋳型の「長辺長さ」及び「短辺長さ」とは、鋳型上端の内寸の長辺長さ及び短辺長さである。さらに、表2に示す「フロントパウダー投入後本体パウダー投入までの時間」とは、フロントパウダー投入後、鋳型内に投入されたフロントパウダーが溶鋼表面を覆ってから本体パウダーを投入するまでの時間である。また、比較例1,2,4,8〜11では、ダミーバーを引き抜く前に本体パウダーを投入していないため、表2の「ダミーバー引き抜き前に投入する本体パウダー」における「フロントパウダー投入後本体パウダー投入までの時間」の欄を「−」と示している。
【0063】
また、表3に示す本体パウダーの「嵩密度ρ」は、内径32[mm]及び高さ105[mm]のプラスチック製容器に本体パウダーを充填し、その重量からプラスチック製容器の重量を差し引いたものを容器体積で除することにより求めた。さらに、表3に示す「T.C.濃度」は、Total Carbon の濃度である。
【0064】
実施例1〜21及び比較例1〜14の評価結果を表2に示す。表2では、評価結果として、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固の有無及びベアの厚みを示している。溶鋼表面が凝固せず且つベアの厚みが20[mm]以下である場合は、ブレークアウトの発生を防止できるとして総合評価を「○」とした。一方、ベアの厚みが20[mm]を超えなかったが溶鋼表面が凝固した場合と、溶鋼表面が凝固しなかったがベアの厚みが20[mm]を超えた場合と、溶鋼表面が凝固し且つベアの厚みが20[mm]を超えた場合とのいずれかのときは、ブレークアウトが発生するおそれがあるとして総合評価を「×」とした。
【0065】
また、表2に示す評価結果を下記の方法により測定した。
<「溶鋼表面の凝固」の確認方法>
フロントパウダーを鋳型内に投入し、ダミーバー引き抜き開始直後に、鋳型内における、鋳型内壁面近傍と、浸漬ノズル近傍とを直径約5mmの金属棒で探ることにより、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固の有無を確認した。
<「ベアの厚み」の測定方法>
フロントパウダーを鋳型内に投入し、鋳片の引き抜き長さが3.0[m]に達したときに、鋳型内の溶鋼面を下げ、鋳型内壁面に固着したベアの厚みを測定した。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表1から、実施例1〜21では、ベアの厚みが20[mm]以内であり、鋳造初期に鋳型内の溶鋼表面が凝固しなかった。
【0069】
一方、比較例1,2,4,8〜11では、フロントパウダー投入後、フロントパウダーが鋳型内の溶鋼表面を覆った後15秒以内に本体パウダーを鋳型内に投入しなかったため、ベアの厚みが20[mm]を超えたと考えられる。また、比較例8〜11では、スラグ溶融層の厚みが厚かったことから、ベアが成長したと考えられる。
【0070】
比較例3,5〜7では、鋳型内での本体パウダーの未溶融層がスラグ溶融層の表面を完全に覆うことができない厚みであったため、ベアの厚みが20[mm]を超えたと考えられる。
【0071】
また、比較例12〜14では、フロントパウダーの熱量が小さかったため、鋳造初期に鋳型内の溶鋼表面が凝固したと考えられる。さらに、比較例13,14では、スラグ溶融層が溶鋼表面を十分に覆うことができない厚みであったため、溶鋼表面が凝固したと考えられる。
【0072】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0073】
例えば、上述の実施形態では、2孔式の浸漬ノズルを有する連続鋳造機を用いて行う連続鋳造方法について説明したが、浸漬ノズルの構成は、2孔式のものに限られず、変更可能なものである。
【0074】
また、本発明の連続鋳造方法は、鋳片の形状及び鋼種に制限されず、スラブ、ブルーム及びビレットの全ての鋳造に適用可能なものである。また、本実施形態では、鋳型の断面形状が、長方形である場合について説明したが、四角形でもよい。
【0075】
さらに、本実施例では、フロントパウダーにフッ素(F)及び炭素(C)が含まれているが、フロントパウダーにフッ素(F)及び炭素(C)が含まれていなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明を利用すれば、鋳造初期の鋳型内での溶鋼表面の凝固及びベアの生成が原因で発生するブレークアウトを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
2a 吐出孔
3 鋳型
5 ダミーバー
6 溶鋼
7 スラグ溶融層
8 粉末層
9 未溶融層
100 連続鋳造機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造において、ダミーバーをセットした矩形状の鋳型内に浸漬ノズルを介して溶鋼を注入し、鋳型内の溶鋼の表面が前記浸漬ノズルに形成された吐出孔の上端を越えた時点で、フロントパウダーを鋳型内の溶鋼上へ投入し、
前記フロントパウダーによる鋳型内のスラグ溶融層の厚みを0.009[m]以上0.014[m]以下とし、
鋳型内に投入された前記フロントパウダーが溶鋼表面を覆った後15秒以内に、鋳型内の本体パウダーの未溶融厚さが0.03[m]以上となるように、前記本体パウダーを鋳型内に投入することを特徴とする鋳造初期のスラグベアと溶鋼表面の凝固を抑制する連続鋳造方法。
なお、前記フロントパウダーは、下記の組成を有する。
CaO :24[wt%]以上36[wt%]以下
SiO:5[wt%]以上8[wt%]以下
CaSi合金:13[wt%]以上28[wt%]以下
Fe:22[wt%]以上26[wt%]以下
Al:1[wt%]以上3[wt%]以下
NaO :5[wt%]以上7[wt%]以下
また、前記フロントパウダーは、下記(1)式を満たす。
{m×(32.3×a+16.0×b)/(a+b)−5.2×n−(M−m− n)×(C×T+C)}/(W×T)≧60 ・・・(1)
但し、
Mは、フロントパウダーの投入量[kg]
mは、フロントパウダーのCaSi合金含有量[kg]
aは、CaSi合金に含まれたSiの重量比
bは、CaSi合金に含まれたCaの重量比
nは、フロントパウダーのFe含有量[kg]
は、スラグ成分の融解熱[MJ/kg]
は、スラグ成分の固相線温度における比熱[MJ/kg・degree]
は、スラグ成分の固相線温度[℃]
Wは、鋳型上端内寸の長辺長さ[m]
Tは、鋳型上端内寸の短辺長さ[m]
また、前記本体パウダーは、下記の組成を有する。
CaO:35[wt%]以上45[wt%]以下
SiO:25[wt%]以上35[wt%]以下
Al:3[wt%]以上5[wt%]以下
NaO:7[wt%]以上9[wt%]以下
LiO:0[wt%]以上2[wt%]以下
MgO:1[wt%]以上4[wt%]以下
F :7[wt%]以上10[wt%]以下
C :3[wt%]以上7[wt%]以下

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−183572(P2012−183572A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49507(P2011−49507)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】