説明

鋳造方法及び鋳型

【課題】 消失模型を用いる鋳造において、鋳造と同時に鋳物に高い精度の穴を容易に形成することが可能な鋳造方法及び鋳型を提供する。
【解決手段】 消失模型3に石英硝子によって形成される中子4を埋設して半消失性原型1を形成して、該半消失性原型1を鋳砂5に埋設して鋳型6を造型する。鋳造後、鋳物2に入込まれた中子4を叩き壊して除去することにより、鋳出された鋳物2に貫通穴7が現出される。したがって、鋳造後のドリルによる機械加工が廃止されて、鋳造と同時に高い精度の貫通穴7を容易に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造方法及び鋳型に関するもので、特に、消失模型を用いる鋳造方法及び該鋳造方法に用いられる鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所望の形状の鋳物を得る一手段として、フルモールド法が知られている。このフルモールド法では、得ようとする鋳物の模型を、溶融金属との接触によって消失される消失材料によって形成して、この模型(以下、消失模型と称する。)を鋳砂に埋設することにより鋳型が造型される。そして、造型された鋳型に溶融金属が供給されると、該溶融金属との接触によって消失模型が燃焼して消失して、消失模型に入れ替わって鋳型に溶融金属が充填されて所望の形状の鋳物が得られる。ところで、このようにして得られた鋳物に内径寸法が比較的小さい穴(例えば、φ20mm以下の穴。)を形成する場合、一般に、鋳出された鋳物にドリルによる機械加工(穴あけ加工)が施されるが、穴の深さが内径寸法に対して深い場合や、穴が基準面(加工基準)に対して傾斜している場合は、ドリルによる高精度な穴あけ加工に多大な時間を費やしていた。また、穴あけ加工の発生により工数が増加して生産性が著しく低下するため、穴あけ加工の廃止が求められていた。
【0003】
そこで、穴を消失模型に造り込むことも考えられるが、消失模型には造り込み可能な形状の制約が多く、例えば、内径寸法がφ20mm以下の穴や開口部の短辺の2.5倍以上の深さを有する袋穴等は、鋳造後に穴から鋳砂を取除くのが困難であるため、機械加工に頼らざるを得なかった。また、特許文献1に記載の線状中子部材を埋設して消失模型を形成すると共に該消失模型を鋳砂に埋設して鋳型を造型して、鋳造後、鋳物から線状中子部材を引き抜くことにより当該鋳物に線状中子部材と同一断面形状の穴を形成することが考えられる。しかしながら、この手法では、穴が奥広がりのテーパ形状に形成されている場合、鋳物から線状中子部材を引き抜くのが不可能である。
【特許文献1】特開2001−129655号公報(段落番号0031〜0033、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、消失模型を用いる鋳造において、鋳造と同時に鋳物に高い精度の穴を容易に形成することが可能な鋳造方法を提供することにある。
また、第2の目的は、消失模型を用いる鋳造において、鋳造と同時に鋳物に高い精度の穴を容易に形成することが可能な鋳型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の鋳造方法は、消失性材料によって形成される鋳物の模型に非消失材料によって形成される中子を埋設して半消失性原型を形成しておいて、該半消失性原型が鋳砂に埋設されて鋳型が造型されて、該鋳型に溶融金属が供給されて半消失性原型が中子を残して消失されることにより、鋳型における半消失性原型の専有部分に鋳物が鋳出されて、該鋳物が鋳型から取り出された後、該鋳物に鋳込まれた中子が除去されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鋳造方法において、中子を破砕可能な材料によって形成しておいて、鋳物が鋳型から取り出された後、該鋳物に鋳込まれた中子が破砕されて除去されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の鋳造方法において、中子を石英硝子によって形成しておいて、鋳物に鋳込まれた石英硝子が叩き壊されて除去された後、破砕された石英硝子が回収されることを特徴とする。
【0006】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項4に記載の発明は、上記請求項1〜3のいずれかに記載の鋳造方法に用いられる鋳型であって、消失性材料によって形成される模型と、非消失性材料によって形成されて模型に埋設される中子とによって構成される半消失性原型を備えて、該半消失性原型が鋳砂に埋設されることにより造型されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鋳型において、半消失性原型の中子が破砕可能な材料によって形成されることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の鋳型において、半消失性原型の中子が石英硝子によって形成されることを特徴とする。
【0007】
したがって、請求項1及び4に記載の発明では、半消失性原型が鋳砂に埋設されて造型された鋳型に溶融金属が供給されることにより、半消失性原型の模型部分が消失される。そして、鋳型における半消失性原型の模型が専有していた部分に鋳物が鋳出されて、中子が鋳込まれた鋳物を鋳型から取り出した後、中子を除去することにより所望の形状の鋳物が得られる。
請求項2及び5に記載の発明では、鋳物に鋳込まれた中子を破砕することにより除去する。
請求項3及び6に記載の発明では、鋳物に鋳込まれた石英硝子製の中子を叩き壊すことにより除去する。また、破砕された石英硝子(中子)を回収することにより再利用が可能である。
【発明の効果】
【0008】
消失模型を用いる鋳造において、鋳造と同時に鋳物に高い精度の穴を容易に形成することが可能な鋳造方法及び鋳型を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。本鋳造方法では、消失性材料によって形成される鋳物2の模型3(以下、消失模型3と称する。)に非消失材料によって形成される中子4(本実施の形態では、石英硝子製の管。)が埋設されることにより半消失性原型1が形成されて、該半消失性原型1が鋳砂5に埋設されて鋳型6が造型される。そして、当該鋳型6に溶融金属が供給されることにより、上記半消失性原型1が中子4を残して消失されて、当該鋳型6における上記消失模型3が専有していた部分に、上記中子4が鋳込まれた鋳物2が鋳出される。そして、鋳出された鋳物2を上記鋳型6から取り出した後、当該鋳物2に鋳込まれた中子4が叩き壊されて鋳物2から中子4が除去されることにより、鋳出された鋳物2に、上記中子4の外形が転造された形状を有する貫通穴7が現出される。また、本鋳造方法では、破砕された中子4(石英硝子)が回収されて再利用される。
【0010】
上記半消失性原型1は、上記消失模型3が発泡ポリスチレン(消失性材料)によって形成されると共に、上記中子4が、上記鋳物2に形成する貫通穴7の外径寸法に等しい外径寸法を有する石英硝子製の管(本実施の形態では、外径寸法(8mm及び肉厚0.8mmの管。)によって形成される。そして、上記半消失性原型1は、上記鋳物2の貫通穴7に整合させて上記中子4を上記消失模型3に埋設することにより形成される。なお、図1に示されるように、上記半消失性原型1は、上記中子4の両端部が上記消失模型3から突出された状態で当該消失模型3に埋設される。これにより、本鋳型6では、半消失性原型1を鋳砂5に埋設させた時に、中子4の両端部が鋳砂5によって支持される構造になっている。また、図3に示されるように、上記消失模型3の所定位置には、発泡ポリスチレン(消失性材料)によって形成された溶融金属供給路の模型8が接合される。
【0011】
そして、本鋳型6は、上記模型8が接合された半消失性原型1を型枠9に対して位置決めさせた後、該型枠9に鋳砂5が充填されることにより当該鋳型6が造型される構造になっている。なお、必要に応じて、上記型枠9に充填された鋳砂5をバインダによって固化させる。
【0012】
次に、本鋳造方法の作用を説明する。まず、図1に示されるように、製品形状を有する消失模型3に中子4が埋設されて半消失性原型1が形成される。次に、該半消失性原型1に溶融金属供給路の模型8が接合されて一体化されたものが型枠9内に位置決めされて、この状態で、型枠9に鋳砂5が充填されることにより、図3に示されるように、半消失性原型1が埋設された鋳型6が造型される。そして、該鋳型6の溶融金属供給路に溶融金属が供給されると、該溶融金属は、溶融金属供給路の模型8を消失させつつ消失模型3に向けて移動されて、消失模型3を消失させて当該鋳型6における消失模型3が専有していた部分に充填される。この時、半消失性原型1の中子4は、両端部が鋳砂5に支持された状態で消失しないで残るため、当該鋳型6中には、中子4が鋳込まれた鋳物(2)が鋳出される。
【0013】
そして、鋳出された鋳物(2)における溶融金属供給路部分を除去した後、石英硝子によって形成された中子4が叩き壊されることにより、図2に示されるように、貫通穴7が形成された鋳物2が得られる。また、破砕された中子4(石英硝子)は回収されて再利用される。なお、中子4を除去した後の貫通穴7を目視、光学顕微鏡及びファイバースコープによって観察した結果、当該貫通穴7の表面に、中子4(石英硝子)の破片は認められなかった。
【0014】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
本鋳造方法では、消失性材料によって形成される鋳物2の模型3に石英硝子製の管によって形成される中子4を埋設して半消失性原型1が形成されて、該半消失性原型1が鋳砂5に埋設されて鋳型6が造型される。そして、当該鋳型6に溶融金属が供給されることにより、半消失性原型1が中子4を残して消失されて、当該鋳型6における消失模型3が専有していた部分に、中子4が鋳込まれた鋳物2が鋳出される。また、鋳出された鋳物2を鋳型6から取り出した後、鋳物2に鋳込まれた中子4が叩き壊されて鋳物2から中子4が除去されることにより、鋳出された鋳物2に中子4の外形が高い精度で転造された貫通穴7が現出される。
【0015】
したがって、本鋳造方法によれば、鋳造後のドリルによる機械加工(穴あけ加工)が廃止されて、工数が削減されることにより生産性を大幅に向上させることができる。また、従来、鋳造上の制約で消失模型3に織り込むことができずに機械加工を余儀なくされていた形状の穴であっても、所要の形状を非消失性材料によって形成して消失模型3に埋設しておくことにより、鋳造と同時に形成することができる。さらに、中子4を叩き壊すことで除去することができるため、鋳出された鋳物2から引き出すことが不可能である奥広がりのテーパ形状であっても、鋳造と同時に形成することができる。また、本鋳造方法では、破砕された中子4(石英硝子)が回収されて再利用されるため、型費の低減及び資源の節約に貢献することができる。
【0016】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
実施の形態では、石英硝子によって中子4を形成したが、溶融金属との接触によって消失することがなく、且つ、叩き壊されることにより鋳物2から除去することが可能な非消失性材料であれば石英硝子でなくてもよい。
鋳物2に中子4によって形成される形状は平行な貫通穴7である必要はなく、叩き壊されることにより鋳物2から除去することが可能な形状であれば、例えば、奥広がりのテーパ形状、中膨らみの穴、袋穴等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本鋳型の説明図であって、特に、半消失性原型の断面図である。
【図2】本鋳型の説明図であって、特に、中子が除去された後の鋳物の断面図である。
【図3】本鋳造方法の説明図であって、特に、型枠に半消失性原型が埋設された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 半消失性原型、2 鋳物、3 消失模型、4 中子、5 鋳砂、6 鋳型、7 貫通穴、8 模型、9 型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消失性材料によって形成される鋳物の模型に非消失材料によって形成される中子を埋設して半消失性原型を形成しておいて、該半消失性原型が鋳砂に埋設されて鋳型が造型されて、該鋳型に溶融金属が供給されて前記半消失性原型が中子を残して消失されることにより、前記鋳型における前記半消失性原型の専有部分に鋳物が鋳出されて、該鋳物が前記鋳型から取り出された後、該鋳物に鋳込まれた前記中子が除去されることを特徴とする鋳造方法。
【請求項2】
前記中子を破砕可能な材料によって形成しておいて、前記鋳物が前記鋳型から取り出された後、該鋳物に鋳込まれた前記中子が破砕されて除去されることを特徴とする請求項1に記載の鋳造方法。
【請求項3】
前記中子を石英硝子によって形成しておいて、前記鋳物に鋳込まれた前記石英硝子が叩き壊されて除去された後、破砕された前記石英硝子が回収されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳造方法。
【請求項4】
上記請求項1〜3のいずれかに記載の鋳造方法に用いられる鋳型であって、
消失性材料によって形成される模型と、非消失性材料によって形成されて前記模型に埋設される中子とによって構成される半消失性原型を備えて、該半消失性原型が鋳砂に埋設されることにより造型されることを特徴とする鋳型。
【請求項5】
前記半消失性原型の前記中子が破砕可能な材料によって形成されることを特徴とする請求項4に記載の鋳型。
【請求項6】
前記半消失性原型の前記中子が石英硝子によって形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋳型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−83291(P2007−83291A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276180(P2005−276180)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】