説明

鋳造装置

【課題】カス・屑等の噛み込みを防止し、型閉め不良を回避する。
【解決手段】ベース6上に搭載されるものであって当該ベース6のところに固定される下型2と、下型2上にあって上下方向への移動及び上方に移動した状態において反転運動をするように設けられた上型5と、上型5の周囲に4分割された状態で設置されるものであって横方向へのスライド移動が可能なように設けられる横型3と、からなる。ベース6の横型スライド移動面のところにカス・屑9排出用の凹溝66を設ける。横型3と下型2の設置されるベース6との間に近接センサ1を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金製ホイールの鋳造装置に関するものであり、特に、鋳造工程が完了してワークが取出されて、各金型周りの清掃作業が完了し、新たな型閉め工程が進められるに際して、各型間にバリ等からなる鋳物カスあるいは鋳物屑が噛み込んでいないか等を自動的に判断させるようにした噛み込み防止機構付きの鋳造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルミニウム合金製ホイール等を初めとした各種製品の鋳造装置としては、例えば、特公平7−12538号公報等に記載されるものが挙げられる。そして、このものは、上金型、下金型、横金型等からなる各金型にて形成されるものであって、これら各金型が型閉めされることによって形成される所定のキャビティ空間内へアルミニウム合金製の溶湯が注入されることによって所定の形態からなる鋳物が形成されるようになっているものである。このようにして、所定の形態からなる製品が形成された後には、各金型が型開きされるとともに、型開きされた各金型の周りは、高圧のエアブロー等によって清掃されて、再度各金型が型閉めされて、新たな鋳造工程が進められるようになっているものである。
【特許文献1】特公平7−12538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のものにおける各金型周りの清掃作業は、作業者が、高圧エアの噴射されるエアガン等を用いて、手作業にて行なわれるようになっているものである。従って、作業者の技能の如何によっては、バリ等からなるカス・屑等が金型の周りに残存した状態のまま、型閉め工程が進められてしまうおそれがある。すなわち、各金型間にカス・屑等を噛み込んだ状態で型閉め工程が進められ、次の注湯工程が進められるおそれがあり、その結果、不良鋳造品を生成させてしまうと言う問題点がある。このようなカス・屑等の噛み込み現象に基づく不良品の発生を抑止するために、カス・屑等を排出させるための排出溝を設けるとともに、万が一噛み込み現象が生じた場合には警報を発して次の工程へ進ませないようにした噛み込み防止機構付きの鋳造装置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、上型、下型、及び横型の複数の型からなる鋳造装置に関して、上記下型の設置されるベースのところであって上記横型のスライド移動する面のところに、所定の深さを有する凹溝を設けるとともに、上記横型と上記下型の設置されるベースとの間に近接センサを設けるようにした構成を採ることとした。
【0005】
また、請求項2記載の発明である第二の発明においては、上型、下型、及び横型の複数の型からなる鋳造装置に関して、上記下型の設置されるベースのところであって上記横型のスライド移動する面のところに所定の深さを有する凹溝を設けるとともに、上記横型と上記下型の設置されるベースとの間に近接センサを設け、一方、上記上型の所定の位置にエアブローノズルを設けるとともに上記下型の設置されるベースの所定の位置にもエアブローノズルを設け、上記各型の型開き工程から型閉め工程にかけて、上記各エアブローノズルから所定の高圧エアを噴射させるようにした構成を採ることとした。
【0006】
また、請求項3記載の発明である第三の発明においては、請求項1または請求項2記載の鋳造装置に関して、所定の演算手段を有するものであってコンピュータ装置からなる制御手段を設け、上記横型の型閉め工程時において、上記近接センサからの信号に基づき上記横型の下型接触面との間における隙間の値が所定の範囲内にあるか否かを判断し、所定値の範囲外にあると判断された場合には警報を発するようにした構成を採ることとした。
【0007】
また、請求項4記載の発明である第四の発明においては、請求項1ないし請求項3記載の鋳造装置に関して、上記近接センサを、各横型ごとに設けるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0008】
第一の発明によれば、高圧エアの噴射にて行なわれる各型周りの清掃作業において、各型から振り落とされた鋳物カス・屑等は、上記ベースのところに設けられるものであってカス排出溝を形成する凹溝のところへと排出されること等によって、各型周りにはカス・屑等が存在しないようになる。従って、本清掃工程の後に行なわれる型閉め工程においても、各型間におけるカス・屑等の噛み込み現象、特に横型と当該横型の面と接触作用する下型との間における噛み込み現象等が抑止されるようになる。また、万が一、噛み込み現象が生じたとしても、上記近接センサの作動により、以降の工程を停止させ、不良品の製造を未然に防止することができるようになる。
【0009】
また、第二の発明によれば、各型の型閉め工程時等において、上型等に設けられたエアブローノズルから高圧のエアを噴射させるようにしたので、各型周りに存在するカス・屑等は、上記エアブローノズルからの高圧エアの噴射によって自動的に上記排出溝を形成する凹溝内へと排出されるようになる。その結果、各型周りにはカス・屑等が存在しないようになり、型閉め工程時においてカス・屑等の噛み込み現象を生じさせないようにすることができるようになる。
【0010】
また、第三の発明によれば、万が一、横型と下型の横型接触面との間等において、カス・屑等の噛み込み現象が生じたとしても、上記近接センサからの信号等により警報を発して、以降の注湯工程等を停止させるようにしたので、型閉め不良による不良鋳造品の発生を未然に防止することができるようになる。また、第四の発明によれば、上記近接センサを、各横型ごとに設けるようにしたので、横型の型閉め工程時等における噛み込み現象の発生を、より正確に検出することができるようになり、型閉め不良に基づく不良鋳造品の発生を未然に防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態について、図1及び図2を基に説明する。本発明の実施の形態にかかるものは、図1に示す如く、ベース6上に搭載されるものであって当該ベース6のところに固定される下型2と、当該下型2上にあって上下方向への移動及び上方に移動した状態において反転運動をするように設けられる上型5と、当該上型5の周囲に4分割された状態で設置されるものであって横方向へのスライド移動が可能なように設けられる横型3と、からなるアルミニウム合金製ホイールの鋳造装置に関するものである。なお、このような構成からなるものにおいて、各型2、3、5が型閉めされた後、所定の角度だけ傾けられた状態で上記横型3の一部に設けられたラドル4のところに溶湯が注入され、このような状態において、本鋳造装置全体を所定の速度で回転運動させることによって、上記ラドル4のところに注がれた溶湯が、上記各型2、3、5にて形成されるキャビティ空間内へと注入されて、最終的にはアルミニウム合金製のホイールが鋳造されるようになっているものである。
【0012】
このような構成からなるものにおいて、上記上型5の下面側であるキャビティ空間を形成する面側のところには、図1に示す如く、複数のエアブローノズル55、55が設けられるようになっている。そして、このエアブローノズル55、55からは、所定の高圧エアが適宜噴射されるようになっているものである。なお、これらエアブローノズル55、55からの高圧エアの噴射は、別途設けられた制御手段15からの制御指令(信号)に基づいて制御されるようになっているものである。また、上記下型2の搭載されるベース6のところには、図1及び図2に示す如く、複数のエアブローノズル7、7が設けられるようになっている。そして、当該エアブローノズル7、7からの高圧エアの噴射タイミングも、上記制御手段15からの制御指令(信号)に基づいて行なわれるようになっているものである。
【0013】
このような構成からなるものにおいて、上記ベース6のところであって横型3のスライド移動面のところ、具体的には、図1における横型3の下面33と接触するところには、所定の深さを有する凹溝66が設けられるようになっている。この凹溝66は、図2に示す如く、下型2の周りであって横型3のスライド移動する面のところに、略万遍なく設けられるようになっているものである。そして、当該凹溝66は、上記上型5に設けられたエアブローノズル55またはベース6上であって横型3の側面に設けられたエアブローノズル7からの高圧エアの噴射によって、上記各型2、3、5の周りから払い落とされたカス・屑9等が吹き込まれるようになっているものである。すなわち、カス・屑9等が、排出溝を形成する凹溝66のところへと排出されることによって、各型2、3、5の型閉め時において、カス・屑9等の噛み込み現象の発生等が未然に防止されるようになっているものである。
【0014】
このような構成からなるものにおいて、上記下型2と横型3の下型2との接触面との間には、図1に示す如く、近接センサ1が設けられるようになっている。この近接センサ1は、本実施の形態においては、下型2の設置されるベース6のところに設けられるものであって物体の接近状態を渦電流の発生によって検出するように形成された渦電流方式のものからなるものである。具体的には、図1に示す如く、渦電流の発生量を検出するセンサ接点11を主に形成されるセンサ本体13と、横型3の一部に設けられるものであって上記センサ接点11に相対向するように設けられる金属製プレート12と、からなるものである。そして、このような近接センサ1からは、図1に示すDの値が、渦電流を基礎に形成される電気信号として制御手段15に送られるようになっているものである。このDの値の信号を受けて上記制御手段15が所定の演算処理を行い、警報を発したり、あるいは、以降の注湯工程等を停止させたりするようにしているものである。
【0015】
なお、本実施の形態においては、上記近接センサ1にて検出されるDの値が、+0.8mmから−0.8mmの範囲内にあるときには、カス・屑等の噛み込み現象はなく、各型の型閉めが正常に行なわれているものと判断されるようになっているものである。また、このような近接センサ1は、本実施の形態においては、図2に示す如く、各横型3ごとに設置されるようになっており、これによって、カス・屑9等の噛み込み現象の発生を、より精度良く検出することができるようにしているものである。
【0016】
これら構成からなる上記近接センサ1からの信号に基づき、所定の警報を発し、以降の注湯工程等を進行させないように制御するとともに、上記各エアブローノズル55、7からの高圧エアの噴射作動等の制御を行なう制御手段5は、マイクロプロセッサユニット(MPU)を主に形成されるコンピュータ装置からなるものであって、各種演算処理を行うとともに、当該演算処理の結果に基づいて、各種制御を行なうようになっているものである。
【0017】
このような構成を採ることにより、本実施の形態のものにおいては、各エアブローノズル55、7からの高圧エアの噴射によって、各型2、3、5周りからはカス・屑9等が払い落とされるとともに、これらの払い落とされたカス・屑9等は、排出溝を形成する凹溝66のところへと排出されること等によって、各型2、3、5周りにはカス・屑9等が存在しないようになる。従って、本清掃工程の後に行なわれる型閉め工程においても、各型2、3、5間におけるカス・屑等の噛み込み現象、特に、横型3と当該横型3の面と接触作用する下型2との間における噛み込み現象等が抑止されるようになる。また、万が一、横型3と下型2の横型接触面との間等において、カス・屑9等の噛み込み現象が生じたとしても、上記近接センサ1からの信号等により警報を発して、以降の注湯工程等を停止させるようにしたので、型閉め不良による不良鋳造品の発生を未然に防止することができるようになる。このようにして、本実施の形態のものにおいては、型閉め不良に基因する不良品の発生を未然に防止し、生産性の向上を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の主要部をなす凹溝の全体を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 近接センサ
11 センサ接点
12 金属製プレート
13 センサ本体
15 制御手段
2 下型
3 横型
4 ラドル
5 上型
55 エアブローノズル
6 ベース
66 凹溝(排出溝)
7 エアブローノズル
9 カス・屑

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型、下型、及び横型の複数の型からなる鋳造装置において、上記下型の設置されるベースのところであって上記横型のスライド移動する面のところに、所定の深さを有する凹溝を設けるとともに、上記横型と上記下型の設置されるベースとの間に近接センサを設けるようにしたことを特徴とする鋳造装置。
【請求項2】
上型、下型、及び横型の複数の型からなる鋳造装置において、上記下型の設置されるベースのところであって上記横型のスライド移動する面のところに所定の深さを有する凹溝を設けるとともに、上記横型と上記下型の設置されるベースとの間に近接センサを設け、一方、上記上型の所定の位置にエアブローノズルを設けるとともに上記下型の設置されるベースの所定の位置にもエアブローノズルを設け、上記各型の型開き工程から型閉め工程にかけて、上記各エアブローノズルから所定の高圧エアを噴射させるようにしたことを特徴とする鋳造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の鋳造装置において、所定の演算手段を有するものであってコンピュータ装置からなる制御手段を設け、上記横型の型閉め工程時において、上記近接センサからの信号に基づき上記横型の下型接触面との間における隙間の値が所定の範囲内にあるか否かを判断し、所定値の範囲外にあると判断された場合には警報を発するようにしたことを特徴とする鋳造装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3記載の鋳造装置において、上記近接センサを、各横型ごとに設けるようにしたことを特徴とする鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−26689(P2006−26689A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209321(P2004−209321)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(592173261)エンケイ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】