説明

鋳造装置

【課題】金型や溶湯の設定温度が高い場合でも離型剤を効率よく回収する離型剤回収機を備える鋳造装置を提供する。
【解決手段】鋳造装置は、金型と真空ポンプと離型剤回収機とを備える。金型は、キャビティ内面に離型剤が塗布される。真空ポンプは、金型に配管で接続され、キャビティ内部の気化した離型剤を含むガスを吸い出す。離型剤回収機は、配管に接続され、下部に設けられた吸気口から上部に設けられた排気口に向かう旋回流を発生させてガスから離型剤を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、離型剤を金型に塗布する鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型によって鋳造を行うダイキャスト成形において、金型のキャビティの内面に離型剤を塗布することがある。離型剤を供給する場合、真空ポンプでキャビティを減圧し、粉体離型剤、または、霧化装置で液体をミスト化した離型剤を、キャビティの中へ供給する鋳造装置がある。いずれの鋳造装置においても、余剰な離型剤は、金型から真空ポンプまでの間に設置されるサイクロン式の離型剤回収機によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−69218号公報
【特許文献2】特許第2927925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋳造温度条件が高い金属材料を鋳造する場合、鋳造前の金型や溶湯の設定温度が高いので、金型に塗布した離型剤が蒸発しやすい。蒸発した離型剤は、キャビティの中の圧力を高くする。そのため、キャビティ内の真空度を維持し溶湯を金型に均質に流すために、離型剤の蒸気を含むガスを真空タンクや真空ポンプで引き続ける必要がある。このとき、吸引したガスの温度が高いと、鋳造装置を長時間稼動し続けた場合に離型剤回収機の温度も徐々に上がる。その結果、離型剤が蒸気のまま離型剤回収機を通過してしまうので、効率よく回収できない。
【0005】
そこで、本発明は、金型や溶湯の設定温度が高い場合でも離型剤を効率よく回収する離型剤回収機を備える鋳造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の鋳造装置は、金型と真空ポンプと離型剤回収機とを備える。金型は、キャビティ内面に離型剤が塗布される。真空ポンプは、金型に配管で接続され、キャビティ内部の気化した離型剤を含むガスを吸い出す。離型剤回収機は、配管に接続され、下部に設けられた吸気口から上部に設けられた排気口に向かう旋回流を発生させてガスから離型剤を分離する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の鋳造装置を示す概略図。
【図2】図1に示した離型剤回収機の鉛直方向に沿う断面図。
【図3】図1に示した離型剤回収機の水平方向に沿う断面図。
【図4】第2の実施形態の鋳造装置の離型剤回収機を示す断面図。
【図5】第3の実施形態の鋳造装置の離型剤回収機を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の実施形態の鋳造装置は、図1から図3を参照して説明する。図1に示す鋳造装置1は、金型10とプランジャ3と溶湯タンク31と吸引配管102とバルブ103と真空ポンプ4と真空タンク40と離型剤回収機5と冷却装置50と制御装置6とを備える。金型10は、製品の分割線に沿って第1の金型11と第2の金型12とに分かれる。第1の金型11および第2の金型12は、第1の型面111および第2の型面121を接合面に有している。第1の型面111および第2の型面121は、第1の金型11および第2の金型12が合わされることで製品を鋳造するためのキャビティCを形成する。このキャビティC内面に離型剤14が塗布される。金型10は、キャビティCに連通する溶湯供給口2および吸出し口101を有している。
【0009】
図1に示すようにプランジャ3は、金属材料の溶湯Mが貯留された溶湯タンク31と接続されている。プランジャ3の吐出口32は、溶湯供給口2に接続され、溶湯タンク31から溶湯MをキャビティCに供給する。溶湯供給口2が設けられた金型10のプランジャ側を上流とすると、吸出し口101は溶湯流れの下流に配置されている。真空ポンプ4は、吸出し口101に吸引配管102で接続される。吸出し口101から真空ポンプ4までの間の吸引配管102には、吸出し口101側から順に、バルブ103、離型剤回収機5、真空タンク40が取り付けられている。
【0010】
バルブ103は、真空ポンプ4までの経路を連通または遮断する。真空タンク40は、キャビティCおよび離型剤回収機5を合わせた容積よりも十分に大きい容積を有している。真空タンク40は、真空ポンプ4によって減圧されており、バルブ103が開放されてキャビティCと連通されることによって、キャビティC内部の気化した離型剤14を含むガスGを一気に吸い出す。真空ポンプ4の排気能力がキャビティC内のガスGを吸い出すのに十分であれば、真空タンク40は、無くてもよい。
【0011】
離型剤回収機5は、図1に示すように、金型10から真空ポンプ4までの吸引配管102の途中、バルブ103と真空タンク40の間に接続されている。離型剤回収機5は、図1および図2に示すように下部に吸気口51を、上部に排気口52を有している。また、離型剤回収機5は、吸気口51から排気口52までの間にフィルタ53を有している。吸引配管102に導かれたガスGは、離型剤回収機5の外周壁54の内面に沿って、下部の吸気口51から上部の排気口52に向かう螺旋状の旋回流Sを発生させる。吸気口51および排気口52は、外周壁54の内面および旋回流Sの向きに沿って開口している。
【0012】
バルブ103が開放されると、キャビティC内のガスGは、一気に離型剤回収機5に流れ込む。離型剤回収機5は、このガスG中の液化した離型剤14を旋回流Sの遠心力で分離する。図1および図2に示す離型剤回収機5の外周壁54は、下部から上部に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐形である。ガスGによる旋回流Sは、排気口52に向うにしたがって徐々に回転半径が小さくなり、回転数も増す。その結果、粒径の小さい離型剤14も回収される。離型剤14が分離された後の気体は、排気口52から吸引配管102および真空タンク40を通って真空ポンプ4から排出される。回収された離型剤14など底部に溜まったスラッジDは、底部のドレン55から排出される。
【0013】
冷却装置50は、離型剤回収機5の外周壁54に捲回された冷却管501と、この冷却管501に冷媒Aを流す循環ポンプ502とを含む。循環ポンプ502によって冷媒Aを流すことで、離型剤回収機5の外周壁54を冷却する。このとき、冷却管501は、離型剤回収機5の外周壁54の上部から下部に向かって螺旋状に捲回されている。離型剤回収機5の吸気口51側である下部はキャビティCに近いためガスGの温度が高い。そして、ガスGの温度は、排気口52に向かうにしたがって冷却され、低くなる。冷媒Aは、冷却管501に沿って上部から下部へ螺旋状に流れる。
【0014】
つまり、冷めた冷媒Aが温度の低いガスGに対して提供され、下部まで流れるまでにガスGの熱を吸収して温まった冷媒Aが温度の高いガスGに対して提供される。離型剤回収機5の中を吸気口51から排気口52まで流れるガスGの温度に対する冷媒Aの温度の差が一定以上に保たれるため、ガスGを冷却する効率が良い。第1の実施形態における真空鋳造装置1の場合、図3に示すように、離型剤回収機5の中を流れるガスGの旋回流Sの回転方向とは反対の回転方向に冷媒Aが流れるように、冷却装置50の冷却管501を捲回している。このように冷却管501を配置することによって、ガスGを効率よく冷却できる。その結果、ガスG中の離型剤が凝縮されやすくなり、離型剤の回収効率が上がる。
【0015】
制御装置6は、図1に示すように、バルブ103と循環ポンプ502と真空ポンプ4とプランジャ3とに接続されてこれらの動作を制御する。制御装置6は、金型10に取り付けられた金型温度センサ104、溶湯タンク31に設けられた溶湯温度センサ33、真空タンク40に設けられた圧力ゲージ41の各計測値に基づいて制御する。
【0016】
以上のように構成された鋳造装置1は、金型温度センサ104および溶湯温度センサ33の計測値や、設定されたプランジャ3の溶湯供給速度およびバルブ103の開放率に基づき、循環ポンプ502および真空ポンプ4の制御することで、離型剤回収機5においてキャビティCから引き出したガスGから効率よく離型剤14を分離して回収する。なお、図1は、鋳造装置1の一実施形態であって、各構成を記載したものに特定するものではないし、各構成の配置の変更や更なる構成の追加を許容する。
【0017】
第2の実施形態の鋳造装置1の離型剤回収機5は、図4を参照して説明する。図4に示した離型剤回収機5は、外周壁54の形状が第1の実施形態の離型剤回収機5と異なっている。第2の実施形態において離型剤回収機5の外周壁54は、図4に示すように下部から上部に向かうにしたがって直径が大きくなる円錐形である。鋳造装置1の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、図中に同一の符号を付してここでの説明を省略し、必要に応じて第1の実施形態の記載および図面を参酌する。
【0018】
このように構成された離型剤回収機5の中を流れるガスGの旋回流Sは、旋回半径の小さい下部で回転速度が速く、旋回半径の大きい上部で回転速度が遅い。キャビティCから吸い出された直後の吸気口51から出るガスGは、温度も高く、離型剤14の凝縮が進んでいない。つまり、ガスG中に含まれる離型剤14の粒径は小さい。旋回流Sの回転数の多い、つまり回転速度が早い下部に吸気口51があるので、粒径が小さい離型剤14であっても、旋回流Sで遠心分離できる。ガスGが上部に移行するにしたがって、旋回流Sの回転半径は大きくなるとともに、冷却装置50によってガスGの温度が下がる。離型剤14の凝縮が進み、粒径が大きくなる。したがって、ガスGが排気口52に近づき、ガスGの回転速度が低下しても、離型剤14を効率よくガスGから分離して回収できる。
【0019】
第3の実施形態の鋳造装置1の離型剤回収機5は、図5を参照して説明する。図5に示した離型剤回収機5は、外周壁54の形状が第1の実施形態の離型剤回収機5と異なっている。第3の実施形態において離型剤回収機5の外周壁54は、図5に示すように下部から上部まで直径が変わらない、円筒形である。鋳造装置1の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、図中に同一の符号を付してここでの説明を省略し、必要に応じて第1の実施形態の記載および図面を参酌する。
【0020】
このように構成された離型剤回収機5の中を流れるガスGの旋回流Sは、下部から上部まで回転半径が変化しないため、一定の回転速度である。吸気口51から排気口52まで旋回流Sが安定しており、また、ガスGと外周壁54との接触時間も一定する。冷却されるガスG中の離型剤14の凝縮が安定して促進されるので、離型剤14を効率よく回収できる。
【0021】
各実施形態の鋳造装置1は、キャビティCにおいて気化した離型剤14を効率よく回収できる離型剤回収機5を備えている。したがって、鋳造温度条件がアルミニウム合金よりも高い、マグネシウム合金などの真空鋳造にも、離型剤回収機5を備えるこの鋳造装置1を採用できる。また、上述の各実施形態で示したいずれの離型剤回収機5であっても、回収する対象物は、離型剤14のみではなく、溶湯Mで供給された金属が蒸発したヒュームや、大気中の水分なども含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態を説明した。これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0023】
以下に分割直前の原出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
キャビティ内面に離型剤が塗布される金型と、
金属材料の溶湯をキャビティに供給するプランジャと、
前記金型に配管で接続されて前記キャビティ内部の気化した前記離型剤を含むガスを吸い出す真空ポンプと、
前記配管に接続され、下部に設置された吸気口から上部に設置された排気口に向かう旋回流を発生させて液化した前記離型剤を分離し、残りの気体を前記排気口から排出する離型剤回収機と、
前記離型剤回収機の外周壁に捲回された冷却管と
を備える鋳造装置。
【符号の説明】
【0024】
1…鋳造装置、3…プランジャ、4…真空ポンプ、5…離型剤回収機、51…吸気口、52…排気口、53…フィルタ、54…外周壁、10…金型、14…離型剤、31…溶湯タンク、50…冷却装置、501…冷却管、102…吸引配管、C…キャビティ、M…溶湯、G…ガス、S…旋回流、A…冷媒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ内面に離型剤が塗布される金型と、
前記金型に配管で接続されて前記キャビティ内部の気化した前記離型剤を含むガスを吸い出す真空ポンプと、
前記配管に接続され、下部に設けられた吸気口から上部に設けられた排気口に向かう旋回流を発生させて前記ガスから前記離型剤を分離する離型剤回収機と、
を備える鋳造装置。
【請求項2】
キャビティ内面に離型剤が塗布される金型と、
前記キャビティで気化された前記離型剤を含むガスを吸い出す真空ポンプと、
下部に設けられた吸気口および上部に設けられた排気口を含み前記真空ポンプで吸い出された前記ガスから前記離型剤を分離する離型剤回収機と
を備える鋳造装置。
【請求項3】
前記離型剤回収機は、前記吸気口から前記排気口までの間にフィルタを有する
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項4】
前記離型剤回収機の外周壁に捲回された冷却管を備え、
前記冷却管は、前記離型剤回収機の前記外周壁の上部から下部に向かって螺旋状に捲回されている
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項5】
前記離型剤回収機の外周壁に捲回された冷却管を備え、
前記冷却管は、前記離型剤回収機の前記外周壁の上部から下部に向かって前記旋回流と反対方向の螺旋状に捲回されている
請求項1に記載された鋳造装置。
【請求項6】
前記離型剤回収機の外周壁は、下部から上部に向かうにしたがって直径が小さくなる円錐形である
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項7】
前記離型剤回収機の外周壁は、下部から上部に向かうにしたがって直径が大きくなる円錐形である
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項8】
前記離型剤回収機の外周壁は、円筒形である
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項9】
前記離型剤回収機の前記吸気口および前記排気口は、前記外周壁の内面および旋回流の向きに沿って開口している
請求項1に記載された鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−671(P2012−671A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126653(P2011−126653)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2010−139792(P2010−139792)の分割
【原出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】