説明

鋼矢板の円形打設方法

【課題】曲率半径の小さな円弧状に連設させて複数の鋼矢板を圧入打設して行く際に、自走移動式圧入装置のクランプ部により先行鋼矢板の上端部を安定した状態で把持させて、鋼矢板を精度良く打設してゆくことのできる鋼矢板の円形打設方法を提供する。
【解決手段】自走移動式圧入装置11を用いた鋼矢板11の円形打設方法であって、先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cに、先端側2番目の先行鋼矢板11’bの接線方向s2と、当該先端側1番目又は先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの接線方向s1、s3との交差角度θに応じたテーパー角度αのテーパー部20aを有する調整アタッチメント板20を表裏の把持面21との間に各々介在させた状態で、自走移動式圧入装置10のクランプ部14によって先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの上端部を把持させて、次の鋼矢板11を地中に圧入打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板の円形打設方法に関し、特に、地中に先行打設された先行鋼矢板に圧入反力を支持させると共に、先行鋼矢板の上端部に沿って鋼矢板の連設方向に自走移動して、鋼矢板を順次圧入打設してゆく自走移動式圧入装置を用いた鋼矢板の円形打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼矢板は、例えば地盤面の開削作業に先立って、地中に連設して打設されることで、山留め用の連続壁を形成するものであり、主としてU形鋼矢板、ハット形鋼矢板、Z形鋼矢板等が用いられている。鋼矢板を地中に打設する方法としては、例えばバイブロハンマーを用いた振動による打設方法や、圧入装置を用いた圧入打設方法が知られているが、近年、周囲の環境等を考慮して、圧入打設方法が採用されることが多い。
【0003】
また、鋼矢板の圧入打設方法に用いる圧入装置として、種々の重機や装置が用いられているが、例えば都市部における狭隘な作業ヤードでの施工に適した装置として、自走移動式の圧入装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。自走移動式の圧入装置は、例えば地中に先行打設された先行鋼矢板の上端部を把持する複数組のクランプ部を備えるサドル部と、このサドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、このスライドベース部に対して旋回可能に設けられた旋回部と、この旋回部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼矢板を把持するチャック部を備える昇降圧入部とを含んで構成され、クランプ部によって先行鋼矢板の上端部を把持して先行鋼矢板に圧入反力を支持させると共に、先行鋼矢板の上端部に沿って鋼矢板の連設方向に自走移動しながら、鋼矢板を順次圧入打設してゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−2069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような自走移動式圧入装置を用いて、例えば立坑の周囲を囲む連続壁を形成する場合、自走移動式圧入装置は、スライドベース部がサドル部に対してスライド移動可能な機構や、旋回部がスライドベース部に対して旋回可能な機構を備えていることから、コーナー部において折れ曲がった方向に鋼矢板を圧入打設することで、多数の鋼矢板を矩形形状に連設配置して、例えば矩形の中空断面形状を有する立坑を形成することが可能になる。また、カーブ施工を行うことで、曲率半径が比較的大きな円弧形状を描くように多数の鋼矢板を連設配置して、例えば直径が16〜25m程度の円形の中空断面形状を有する、大規模な立坑を形成することが可能になる。
【0006】
一方、例えばさらに狭隘な作業ヤードにおいて、例えば直径が7〜16m程度の大きさの、円形の中空断面形状を有する中小規模の立坑を形成する場合には、曲率半径が比較的小さな円弧形状を描くように複数の鋼矢板を連設配置してゆく必要があることから、クランプ部によって先行鋼矢板の上端部を安定した状態で把持することが困難になって、先行鋼矢板の上端部を破損したり、鋼矢板を円弧形状に連設させて精度良く圧入打設してゆくことが困難になる。すなわち、曲率半径が小さいと、隣接する一対の先行鋼矢板間で、予定する円弧形状に沿わせるための折れ曲がり角度が大きくなることから、例えばサドル部の複数組のクランプ部のうちの一組で、一方の先行鋼矢板を把持面に沿わせて把持すると、他方の先行鋼矢板の把持面は、他の組のクランプ部に対して相当の角度で斜めに配置されることになるので、必要な把持面積で他方の先行鋼矢板の上端部を安定した状態で把持することが困難になる。
【0007】
本発明は、曲率半径の小さな円弧形状を描くように複数の鋼矢板を連設させて圧入打設して行く場合でも、自走移動式圧入装置のクランプ部によって先行鋼矢板の上端部を安定した状態で把持できるようにして、鋼矢板を円弧形状に連設させて精度良く圧入打設してゆくことのできる鋼矢板の円形打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、地中に先行打設された先行鋼矢板の上端部を把持する複数組のクランプ部を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられた旋回部と、該旋回部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼矢板を把持するチャック部を備える昇降圧入部とを含んで構成され、前記先行鋼矢板に圧入反力を支持させると共に、前記先行鋼矢板の上端部に沿って鋼矢板の連設方向に自走移動して、鋼矢板を順次圧入打設してゆく自走移動式圧入装置を用いた鋼矢板の円形打設方法であって、円弧形状に連設して打設された前記先行鋼矢板の少なくも先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板に、先端側2番目の前記先行鋼矢板の接線方向と、当該先端側1番目又は先端側3番目の前記先行鋼矢板の接線方向との交差角度に応じたテーパー角度のテーパー部を有する調整アタッチメント板を、前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の表裏の把持面との間に各々介在させた状態で、前記自走移動式圧入装置の前記クランプ部によって前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の上端部を把持させて、次の鋼矢板を地中に圧入打設する鋼矢板の円形打設方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明の鋼矢板の円形打設方法は、前記調整アタッチメント板が、これの上端部に、前記先行鋼矢板の上端縁部に係着される係止金具を備えると共に、これの下端部に、前記先行鋼矢板の表面に接着される磁石部材を備えており、前記クランプ部が前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の上端部を把持するのに先立って、前記係止金具を前記先行鋼矢板の上端縁部に係着すると共に、前記磁石部材を前記先行鋼矢板の表面に接着させて、前記調整アタッチメント板を、前記先行鋼矢板の表裏の把持面に沿った所定の位置に位置決めすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋼矢板の円形打設方法によれば、曲率半径の小さな円弧形状を描くように複数の鋼矢板を連設させて圧入打設して行く場合でも、自走移動式圧入装置のクランプ部によって先行鋼矢板の上端部を安定した状態で把持できるようにして、鋼矢板を円弧形状に連設させて精度良く圧入打設してゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法において用いる自走移動式圧入装置を説明する略示側面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法によって形成される円形の中空断面形状を有する立坑を説明する略示上面図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法の施工状況を説明する略示側面図である。
【図4】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法の施工状況を説明する略示拡大上面図である。
【図5】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法に用いた調整アタッチメント板の構成を説明する、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【図6】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法に用いた調整アタッチメント板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい一実施形態に係る鋼矢板の円形打設方法は、例えば図1に示すような公知の自走移動式圧入装置10を用いて複数のU形の鋼矢板11を地中に打ち込むことで、例えば図2に示すように、直径が7〜16m程度の円を描くように鋼矢板11を地中に連設配置することによって、これらの複数のU形の鋼矢板11で形成される連続壁12を周囲の山留壁とする、小規模でコンパクトな形状の立坑13を、例えば都市部における狭隘な作業ヤードにおいて形成する際に採用されたものである。また、本実施形態の円形打設方法は、予定する円弧形状の連設方向に沿って、各鋼矢板11を、圧入反力を先行鋼矢板11に安定した状態で支持させつつ、順次精度良く地中に圧入してゆくことができるようにするために採用されたものである。
【0013】
ここで、自走移動式圧入装置10は、地中に先行打設された先行鋼矢板11’の上端部を把持する複数組のクランプ部14を備えるサドル部15と、このサドル部15に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部16と、このスライドベース部16に対して旋回可能に設けられた旋回部17と、この旋回部17に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼矢板11を把持するチャック部18を備える昇降圧入部19とを含んで構成され、クランプ部14によって先行鋼矢板11’の上端部を把持して先行鋼矢板11’に圧入反力を支持させると共に、先行鋼矢板11’の上端部に沿って鋼矢板11の連設方向に自走移動しながら、鋼矢板11を順次圧入打設してゆく機構を備えている。
【0014】
本実施形態では、自走移動式圧入装置10は、例えば反力架台(図示せず)を用いて初期の鋼矢板11を数枚圧入打設した後に、これらの初期の鋼矢板11を先行鋼矢板11’としてクランプ部14で把持して、圧入反力を支持させつつ以後の鋼矢板11を順次圧入打設してゆくことができる。そして、自走移動式圧入装置10は、次の鋼矢板11を圧入打設した後に、クランプ部14によって先行鋼矢板11’を把持したそのままの状態で、更に次の鋼矢板11を圧入打設し、当該更に次の鋼矢板11を自走移動式圧入装置10の重量を支持するのに十分な深さまで圧入したら、昇降圧入部19のチャック部18によって当該更に次の鋼矢板11を把持した状態で、先行鋼矢板11’を把持していたクランプ部14を開放して自走移動式圧入装置10を上昇させる。自走移動式圧入装置10を上昇させたら、サドル部15を先行鋼矢板11’の1枚分前進させて、自走移動式圧入装置10を次の反力支持位置において下降させると共に、水平度を確認してからクランプ部14を再び閉じることにより新たに反力基盤を構築して、そのまま連続して次の鋼矢板11を圧入打設してゆく。このように、自走移動式圧入装置10は、先行鋼矢板11’の上端部に沿って鋼矢板11の連設方向に自走移動しながら、鋼矢板11を順次圧入打設してゆくことが可能な機構を備えている。
【0015】
また、本実施形態では、自走移動式圧入装置10は、スライドベース部16が、サドル部15に対して、鋼矢板11の連設方向に沿って直線状にスライド移動可能な構成を備えている。また複数組のクランプ部14は、各々、サドル部15に対して、スライドベース部16のスライド方向と垂直な方向にスライド移動可能に構成されていて、把持のために用いない後部のクランプ部14を適宜先行鋼矢板11’の位置から外した状態で、自走移動式圧入装置10を使用できるようになっているが、その一方で、各クランプ部14は、サドル部15に対して回転可能な構造を備えていない。本実施形態の円形打設方法は、クランプ部14がサドル部15に対して回転可能な構造を備えていなくても、曲率半径の小さな円弧形状を描くように複数の鋼矢板11を連設させて圧入打設してゆく際に、クランプ部14によって先行鋼矢板11’の上端部を安定した状態で把持できるようにして、鋼矢板11を円弧形状に連設させて精度良く圧入打設してゆくことができるようにする。
【0016】
そして、本実施形態の円形打設方法は、上述の構成を備える自走移動式圧入装置11を用いた鋼矢板11の円形打設方法であって、図3及び図4に示すように、円弧形状に連設して打設された先行鋼矢板11’(図4参照)の少なくも先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cに、先端側2番目の先行鋼矢板11’bの接線方向s2と、当該先端側1番目又は先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの接線方向s1、s3との交差角度θ(図4参照、例えば5°程度)に応じたテーパー角度α(図5参照、例えば5°程度)のテーパー部20aを有する調整アタッチメント板20(図6参照)を、先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの表裏の把持面21との間に各々介在させた状態で、自走移動式圧入装置10のクランプ部14によって先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの上端部を把持させて、次の鋼矢板11を地中に圧入打設するようになっている。
【0017】
また、本実施形態では、調整アタッチメント板20は、図5(a)〜(c)及び図6に示すように、これの上端部に、先行鋼矢板11の上端縁部に係着される係止金具22を備えると共に、これの下端部に、先行鋼矢板11の表面に接着される磁石部材23を備えており、クランプ部14が先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの上端部を把持するのに先立って、係止金具22を先行鋼矢板11’a、11’cの上端縁部に係着すると共に、磁石部材23を先行鋼矢板11’a、11’cの表面に接着させて、調整アタッチメント板20が、先行鋼矢板11’a、11’cの表裏の把持面21に沿った所定の位置に位置決めされるようになっている。
【0018】
ここで、本実施形態では、先端側1番目の先行鋼矢板11’aや先端側2番目の先行鋼矢板11’bや先端側3番目の先行鋼矢板11’cは、図3及び図4に示すように、自走移動式圧入装置10の複数組のクランプ部14によって同時に把持された先行鋼矢板11’のうちの、鋼矢板11の連設方向の先端側の1番目、2番目、又は3番目の先行鋼矢板11’cを意味するものであり、上述のように、先端側に更に次の鋼矢板11を圧入打設する際には、最先端の先行鋼矢板11’から2番目、3番目、又は4番目の先行鋼矢板11’が、各々、先端側1番目の先行鋼矢板11’aや先端側2番目の先行鋼矢板11’bや先端側3番目の先行鋼矢板11’cとなる。
【0019】
また、本実施形態では、円弧状に連設して打設される先行鋼矢板11’a、11’b、11’cの接線方向s1、s2、s3は、各先行鋼矢板11’a、11’b、11’cにおける両側のセクション部の中心を結んだ方向として置き換えることができる(図4参照)。さらに、先行鋼矢板11’a、11’b、11’cの表裏の把持面21は、U形の鋼矢板11における、先端にセクション部を備える両側の斜め側辺部の間の、中間辺部の表裏の面によって構成される。
【0020】
そして、本実施形態では、テーパー部20aを有する調整アタッチメント板20を、先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの表裏の把持面21との間に各々介在させた状態で、自走移動式圧入装置10のクランプ部14によって先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cの上端部を把持させて、次の鋼矢板11を地中に圧入打設する。
【0021】
調整アタッチメント板20は、例えば9mm程度の厚さの鋼板を加工して形成されるもので、図5(a)〜(c)及び図6に示すように、例えば横幅125mm、縦幅450mm程度の大きさの縦長矩形の正面形状を有している。また、調整アタッチメント板20には、図5(a)の正面図における左側45mm程度の幅の帯状縁部分20bを除いて、これよりも右側部分を肉厚が徐々に小さくなるように正面側を斜めにカットすることによって、テーパー角度αが例えば5°程度となった、テーパー部20aが形成されている。さらに、調整アタッチメント板20には、上述のように、帯状縁部分20bの上端角部に溶着固定されて、コの字形状を有する金属製の係止金具22が、上端角部の背面側に鉤形に突出して取り付けられており、また帯状縁部分20bの下端部から下方に突出して、磁石部材23が接合固定されて取り付けられている。
【0022】
本実施形態では、自走移動式圧入装置10の3組のクランプ部14によって、先端側1番目の先行鋼矢板11’a、先端側2番目の先行鋼矢板11’b、及び先端側3番目の先行鋼矢板11’cの上端部を同時に把持するのに先立って、これらのうちの先端側1番目の先行鋼矢板11’a及び先端側3番目の先行鋼矢板11’cの上端部の表裏の把持面21に沿って、調整アタッチメント板20を各々配置する。すなわち、各先行鋼矢板11’a、11’cの上端部の表裏の把持面21に沿って、各一対の調整アタッチメント板20を、これらのテーパー部20aの先端側が鋼矢板11の連設方向の反対側に配設されるように(一方のアタッチメント板20のテーパー部20aの先端側が連設方向の前方側に、他方のアタッチメント板20のテーパー部20aの先端側が連設方向の後方側に配設されるように)、各先行鋼矢板11’a、11’cの中間辺部の両側の面に配置することによって、当該把持面21の所定の位置に各々取り付ける。これらの取り付け作業は、調整アタッチメント板20に各々取り付けられた、上述の係止金具22や磁石部材23を用いて、容易に且つスムーズに行うことができる。
【0023】
これによって、本実施形態では、先端側1番目の先行鋼矢板11’a及び先端側3番目の先行鋼矢板11’cには、表裏の把持面21に調整アタッチメント板20が各々取り付けられることによって、当該調整アタッチメント板20の各表面による、調整アタッチメント板20が取り付けられていない先端側2番目の先行鋼矢板11’bの把持面21と平行又は略平行に配置された、新たな把持面21’が形成されることになる。
【0024】
そして、本実施形態の鋼矢板の円形打設方法によれば、曲率半径の小さな円弧形状を描くように複数の鋼矢板11を連設させて圧入打設して行く場合でも、自走移動式圧入装置10のクランプ部14によって先行鋼矢板11’a、11’b、11’cの上端部を安定した状態で把持できるようにして、鋼矢板11を円弧形状に連設させて精度良く圧入打設してゆくことができる。
【0025】
すなわち、本実施形態によれば、先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’cには、これらの接線方向s1、s3と先端側2番目の先行鋼矢板11’bの接線方向s2との交差角度θに応じたテーパー角度αのテーパー部20aを有する調整アタッチメント板20が、表裏の把持面21に沿って取り付けられることで、調整アタッチメント板20の各表面による、調整アタッチメント板20が取り付けられていない先端側2番目の先行鋼矢板11’bの把持面21と平行又は略平行に配置された、新たな把持面21’が形成されることになるので、こられの平行又は略平行に配置された先端側1番目、先端側2番目、及び先端側3番目の先行鋼矢板11’a、11’b、11’cを、3組のクランプ部14によって相当の把持面積で同時に把持することによって、次の鋼矢板11を円弧形状に連設させて精度良く安定した状態で圧入打設してゆくことが可能になる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の鋼矢板の円形打設方法は、中小規模の円形の立坑の他、大規模の円形の立坑を構築する際に採用することもでき、鋼矢板によって形成される連続壁は、立坑の周囲の連続壁の他、その他の土留め用の連続壁であっても良い。円形に閉じた連続壁以外の、その他の円弧形状部分を含む連続壁を形成する際に採用することもできる。また、先端側1番目及び先端側3番目の先行鋼矢板の他、例えば先端側4番目の先行鋼矢板にも調整アタッチメント板を取り付けて、本発明を実施することもできる。
【0027】
さらに、調整アタッチメント板は、上端縁部に設けられた係止金具や下端部に設けられた磁石によって先行鋼矢板の把持面に取り付けられるものである必要は必ずしも無い。例えば、先行鋼矢板の表裏の把持面に配置される一対の調整アタッチメント板を、上端で連結してコの字断面形状に一体として形成し、一対の調整アタッチメント板の間の間隔部分に、天面が上端連結部に当接するまで先行鋼矢板の上端部を差し込んで、一対の調整アタッチメント板を先行鋼矢板の上端部に装着することもできる。また、調整アタッチメント板の外側面から横方向に突出させて操作ロッドを一体そして固定しておき、クランプ部によって先行鋼矢板が把持されるまで、この操作棒を介して作業員が調整アタッチメント板の位置決めを行えるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 自走移動式圧入装置
11’ 先行鋼矢板
11’a 先端側1番目の先行鋼矢板
11’b 先端側2番目の先行鋼矢板
11’c 先端側3番目の先行鋼矢板
12 連続壁
13 立坑
14 クランプ部
15 サドル部
16 スライドベース部
17 旋回部
18 チャック部
19 昇降圧入部
20 調整アタッチメント板
20a テーパー部
20b 帯状縁部分
21 把持面
21’ 新たな把持面
22 係止金具
23 磁石部材
s1、s2、s3 接線方向
θ 接線方向の交差角度
α テーパー角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に先行打設された先行鋼矢板の上端部を把持する複数組のクランプ部を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられた旋回部と、該旋回部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼矢板を把持するチャック部を備える昇降圧入部とを含んで構成され、前記先行鋼矢板に圧入反力を支持させると共に、前記先行鋼矢板の上端部に沿って鋼矢板の連設方向に自走移動して、鋼矢板を順次圧入打設してゆく自走移動式圧入装置を用いた鋼矢板の円形打設方法であって、
円弧形状に連設して打設された前記先行鋼矢板の少なくも先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板に、先端側2番目の前記先行鋼矢板の接線方向と、当該先端側1番目又は先端側3番目の前記先行鋼矢板の接線方向との交差角度に応じたテーパー角度のテーパー部を有する調整アタッチメント板を、前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の表裏の把持面との間に各々介在させた状態で、前記自走移動式圧入装置の前記クランプ部によって前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の上端部を把持させて、次の鋼矢板を地中に圧入打設する鋼矢板の円形打設方法。
【請求項2】
前記調整アタッチメント板は、これの上端部に、前記先行鋼矢板の上端縁部に係着される係止金具を備えると共に、これの下端部に、前記先行鋼矢板の表面に接着される磁石部材を備えており、前記クランプ部が前記先端側1番目及び先端側3番目の前記先行鋼矢板の上端部を把持するのに先立って、前記係止金具を前記先行鋼矢板の上端縁部に係着すると共に、前記磁石部材を前記先行鋼矢板の表面に接着させて、前記調整アタッチメント板を、前記先行鋼矢板の表裏の把持面に沿った所定の位置に位置決め配置する請求項1記載の鋼矢板の円形打設方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate