説明

鋼管の継手部材

【課題】ボルト穴を開口した場合のようなせん断破壊の心配がない鋼管の継手部材を提供する。
【解決手段】同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材である。外筒の内部に内筒が位置する二重筒によって構成する。外筒には筒の中心軸に向けたネジ穴を設ける。内筒には、ネジ穴に対応する位置に窓を開口する。この窓の開口断面は、筒の中心に向けて広くなるように形成する。窓の外筒側の縁は鋭角に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の継手部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転力を伝える鋼管を、同一軸線上で接続して延長することが必要な場合がある。
その場合に、簡単な構造はネジによる接続、溶接による接続、あるいはピンを貫通させる接続などが、文献を挙げるまでもなく公知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来の鋼管の継手部材にあっては、次のような問題点がある。
<1> 2本の鋼管の端部を直接溶接して連結する方法は、溶接に専門の溶接工を必要とし、熟練と時間がかかり、雨天では作業ができないなど、不経済である。
<2> 鋼管の端部にネジ筒を溶接し、このネジ筒によって接続する継手構造は、オス、メスのネジ筒を溶接する作業が必要であり、かつ反対方向に回転を与えると鋼管間の接続が解体してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために本発明の鋼管の継手部材は、同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、外筒の内部に内筒が位置する二重筒によって構成し、外筒には筒の中心軸に向けたネジ穴を設け、内筒には、ネジ穴に対応する位置に窓を開口し、この窓の開口断面は、筒の中心に向けて広くなるように形成し、窓の外筒側の縁は鋭角に形成した、鋼管の継手部材を特徴としたものである。
【0005】
さらに本発明は、同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、外筒の内部に内筒が位置する二重筒によって構成し、外筒には筒の中心軸に向けた貫通穴を設け、貫通穴の内側には、ナットを収納するナット座を凹設し、内筒には、ナット座に対応する位置に窓を開口し、この窓の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、窓の外筒側の縁は鋭角に形成した、鋼管の継手部材を特徴としたものである。
【0006】
さらに本発明は、同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、外筒の内部に内筒が位置する二重筒と、外筒の外側に嵌合可能な反力リングによって構成し、外筒には筒の中心軸に向けた貫通穴を設け、反力リングには、反力リングを外筒の外側に嵌合した際に貫通穴に対応する位置に挿入孔を設け、挿入孔の内側には、ナットを収納するナット座を凹設し、内筒には、ナット座に対応する位置に窓を開口し、この窓の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、窓の外筒側の縁は鋭角に形成した鋼管の継手部材を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の鋼管の継手部材は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 鋼管を溶接したり、穴を開けるような加工をしないで、継手治具のみを用いて迅速に接続することができる。すなわち鋼管には一切、加工することなく、接続できる点が大きな特徴である。
<2> 鋼管を左右のいずれの方向に回転しても、ネジのように解体してしまうことがない。
<3> 鋼管を接続する作業が簡単であり、熟練や長い時間を要しないから経済的である。
<4> 回転力の伝達は、鋼管が窓内に膨出して食い込む変形面で伝達するから、ボルト穴を開口した場合のような、せん断破壊の心配がない。
<5> 鋼管は、外筒と内筒の間の狭い空間の内部において、窓の部分で膨張して変形しているから、広い接触面で摩擦を得ることができ、その上に鋭角に形成した窓の鉛直縁が鋼管に食い込んでいるから大きな回転力であっても確実に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>本発明の用途。
本発明は、図6に示すように、2本の鋼管A、すなわち下側の鋼管A1の上端に、上側の鋼管A2の下端を同一軸線上に接続する際に使用する継手部材Bである。
本発明の継手部材Bによって接続した2本の鋼管Aは、上側の鋼管A2を吊り上げても下側の鋼管A1が離れないだけではなく、上側の鋼管A2に加えた回転力を下側の鋼管A1へ伝達することができる。
【0010】
<2>二重筒。
本発明の継手部材Bは、貫通した鋼製の筒体である外筒1と内筒2によって構成する。
すなわち、外筒1の内部に、同心円状に内筒2を位置させた二重筒である。
外筒1と内筒2との間には鍔状の連結棚板3を介在させ、この連結棚板3で連結して一体に構成することができる。
外筒1の内面と内筒2の外面との間隔は、接続する対象の鋼管Aの板厚よりも多少、広い間隔を設ける。
その結果、二重筒の上からと下から、外筒1と内筒2との間に別の鋼管Aを挿入して同一軸線上に配置することができる。
【0011】
<3>外筒1。
外筒1の内径は、接続予定の鋼管Aを容易に挿入できるように、鋼管Aの外径よりも多少大きい寸法に形成する。
外筒1には適宜の位置に、外筒1の中心軸に向けたネジ穴11を設ける。
このネジ穴11に、外筒1の外側からボルト12をねじ込んで、外筒1の内部に挿入した鋼管Aに変形を与える。
【0012】
<4>内筒2。
内筒2の外径は、接続予定の鋼管Aの内部に容易に挿入できるように、鋼管Aの内径よりも多少、小さい寸法に形成する。
内筒2には窓21を開口する。
この窓21の位置は、外筒1に設けたネジ穴11の軸線上に、すなわちネジ穴11に対応する位置に開口する。
この窓21の開口断面は、筒の中心に向けて広くなるように、すなわち内広がり状に形成する。
したがってこの窓21の外筒1側の縁22は鋭角に形成されることになる。
【0013】
<5>継手方法。
次に本発明の継手部材Bを使用した鋼管Aの接続方法について説明する。
【0014】
<6>鋼管Aの挿入。
すでに鉛直に設置した先行する鋼管A1の上端に、本発明の継手部材Bの下部を嵌合する。
すなわち先行鋼管A1の上端が、継手部材Bの下部の外筒1と内筒2との間に挿入する状態で嵌合する。
次いで、継手部材Bの上部から、接続する鋼管A2の下部を挿入する。
すなわち接続鋼管A2の下端が、継手部材Bの上部の外筒1と内筒2との間に挿入する状態で嵌合する。
その場合に外筒1と内筒2との間をリング状の連結棚板3で連結してあるから、鋼管A1、A2の端部は連結棚板3に当接して挿入寸法が決まることになる。
【0015】
<7>ボルト12による加圧。
継手部材Bに鋼管Aを挿入することによって、ネジ穴11と窓21との間には鋼管Aが位置している。
このネジ穴11にボルト12をねじ込む。
ボルト12の先端はすぐに鋼管Aの外面に当接するが、ボルト12を強力にねじ込むことによって、その推進力により鋼管Aの一部が窓21側へ膨出する状態で変形する。
窓21の縁22は鋭角に切り立っているから、特に変形がなされ易い。
継手部材Bのすべてのネジ穴11に、強力にボルト12をねじ込むことによって、下側に位置する先行する鋼管Aと、上に位置する接続する鋼管Aとは継手部材Bを介して同一線上に一体に接続されることになる。
【0016】
<8>力の伝達。
以上のように構成すると、上側の鋼管Aから下側の鋼管Aへの鉛直方向の力は、中間の棚板を介して下側の鋼管Aに伝達する。
また鋼管Aを持ち上げた場合にも、窓21内へ膨出した膨出部が抵抗となり、水平方向の縁22が鋼管Aへ食い込んで抵抗して抜け出しを阻止することができる。
回転力は、窓21の内側に向けて変形した鋼管Aの膨出部が、窓21の鉛直方向の縁22に食い込んで、確実に回転力を伝達する。
さらに外筒1と内筒2の間の狭い隙間に挿入した鋼管Aは、窓21の位置で内側へ膨張して変形しているから、水平断面で見ても窓21の両側において広い延長線で内外筒に接して大きな摩擦を得ることがでる。
【0017】
<9>他の実施例1。(図4)
以上の例では外筒1にネジ穴11を開設する構成であった。
しかし、外筒1に直接ネジ穴11を開設しない構成を採用することもできる。
すなわち外筒1にはネジ穴11に代えて、ネジの切っていない、貫通穴13を筒の中心軸に向けて開口する。
そして貫通穴13の内側には、貫通穴13の断面よりも大きい面積の凹みである、ナット座14を凹設する。
このナット座14は、例えば六角形に形成し、そのナット座14へ市販の安価なナット15を収納できるように構成する。
内筒2には、ナット座14に対応する位置に窓21を開口し、この窓21の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、窓21の外筒1側の縁22は鋭角に形成する。
すなわち内筒2の構成は前記の実施例と同じである。
この実施例の場合には、継手部材Bへの鋼管Aの挿入の前に、窓15側からナットを挿入してナット座14にナット15を嵌合しておく。
そしてこのナット15に対して、外部からボルト12をねじ込む。
ボルト12の回転による推進力によって鋼管Aの一部を変形させて窓21側へ膨出させる作用は、前記の実施例と同じである。
こうして外筒1にネジ穴11を形成することなく、ナット座14に嵌合した安価な市販のナット15を使用してボルト12の推進力の反力を取って鋼管Aを変形させ、接続することができる。
【0018】
<10>他の実施例2.(図5右)
この実施例では外筒1にはネジ穴11を設けず、さらにナット座14も設けず、単なる貫通穴13だけを開口する。
内筒2には、貫通穴13に対応する位置に窓21を開口し、この窓21の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、窓21の外筒1側の縁22は鋭角に形成する。
一方、外筒1の外側に嵌合可能な反力リング4を使用する。
この反力リング4は一定の厚さと幅を有する鋼製の短筒であり、その内径は、外筒1の外径とほぼ等しく形成し、外筒1の外周に容易に嵌合しうるように構成する。
そしてこの反力リング4には、反力リング4を外筒1の外側に嵌合した際に貫通穴13に対応する位置に挿入孔41を設けておく。
この挿入孔41は、ボルト12の直径よりも大きく、しかしナットの外径よりも小さい内径を有する穴であり、反力リング4を貫通している。
この実施例では、特に外筒1の貫通穴13の直径を、市販のナット15が挿入できる程度の大きさに形成する点に特徴を有する。
鋼管Aを接続する場合には、反力リング4を外筒1の外周に嵌合しておき、鋼管Aの端部を、外筒1と内筒2の間の隙間に挿入する。
そして外筒1の貫通穴13にナット15をセットして、反力リング4の挿入孔41の位置と外筒1の貫通穴13の位置を一致させる。
そして挿入孔41にボルト12を挿入する。
ボルト12は反力リング4の挿入孔41を通過し、貫通穴13に収納したナット15にネジ込まれる。
このボルト12の推進力が鋼管Aを加圧して窓21の内部に膨出させ、水平方向の縁22と鉛直方向の縁22とが膨出部に食い込む機能は、他の実施例と同じである。
このように、外筒1にも反力リング4にもネジ穴を形成することなく、市販のナット15を貫通穴13内に嵌合してボルト12の推進力の反力を反力リング4から得て、鋼管Aを変形させ、接続することができる。
【0019】
<11>他の実施例3.(図5左)
この実施例では外筒1にはネジ穴11もナット座14も設けず、単なる貫通穴13だけを開口する。
内筒2には、貫通穴13に対応する位置に窓21を開口し、この窓21の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、窓21の外筒1側の縁22は鋭角に形成する。
一方、外筒1の外側に嵌合可能な反力リング4を使用する。
この反力リング4は一定の厚さと幅を有する鋼製の短筒であり、その内径は、外筒1の外径とほぼ等しく形成し、外筒1の外周に容易に嵌合しうるように構成する。
そしてこの反力リング4には、反力リング4を外筒1の外側に嵌合した際に貫通穴13に対応する位置に挿入孔41を設けておく。
この挿入孔41は、ボルト12の直径よりも大きい内径を有する貫通した穴である。
そしてこの挿入孔41の、内筒2側の面には、ナット15を収納するための、例えば六角形に凹んだナット14座を凹設し、市販の安価なナット15を嵌合できるように構成する。
鋼管Aの接続の場合には、反力リング4を外筒1の外周に嵌合する。
そして挿入孔41にボルト12を挿入する。
ボルト12は反力リング4の挿入孔41を通過し、ナット座14内のナット15にネジ込まれる。
このボルト12の推進力が鋼管Aを加圧して窓21の内部に膨出させ、水平方向の縁22と鉛直方向の縁22とが膨出部に食い込む機能は、他の実施例と同じである。
このように、外筒1にも反力リング4にもネジ穴を形成することなく、市販のナット15をナット座14に嵌合してボルト12の推進力を得て、鋼管Aを変形させ、接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の継手部材の実施例の切り欠き図。
【図2】継手部材の要部断面図。
【図3】接続状態の説明図。
【図4】他の実施例の説明図。
【図5】他の実施例の説明図。
【図6】鋼管と鋼管を接続する作業の説明図。
【符号の説明】
【0021】
A:鋼管
B:継手部材
1:外筒
11:ネジ穴
14:ナット座
15:ナット
2:内筒
21:窓
22:縁
4:反力リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、
外筒の内部に内筒が位置する二重筒によって構成し、
外筒には筒の中心軸に向けたネジ穴を設け、
内筒には、ネジ穴に対応する位置に窓を開口し、
この窓の開口断面は、筒の中心に向けて広くなるように形成し、
窓の外筒側の縁は鋭角に形成した、
鋼管の継手部材。
【請求項2】
同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、
外筒の内部に内筒が位置する二重筒によって構成し、
外筒には筒の中心軸に向けた貫通穴を設け、
貫通穴の内側には、ナットを収納するナット座を凹設し、
内筒には、ナット座に対応する位置に窓を開口し、
この窓の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、
窓の外筒側の縁は鋭角に形成した、
鋼管の継手部材。

【請求項3】
同一軸線上に2本の鋼管を接続する継手部材であって、
外筒の内部に内筒が位置する二重筒と、
外筒の外側に嵌合可能な反力リングによって構成し、
外筒には筒の中心軸に向けた貫通穴を設け、
反力リングには、反力リングを外筒の外側に嵌合した際に貫通穴に対応する位置に挿入孔を設け、
貫通穴の内径はナットを収納できる寸法に構成し、
内筒には、貫通穴に対応する位置に窓を開口し、
この窓の開口断面は、筒の中心軸に向けて広く形成し、
窓の外筒側の縁は鋭角に形成した、
鋼管の継手部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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