説明

鋼管の連結構造および鋼管構造体

【課題】鋼管に作用する軸力を確実に伝達可能でかつ低コスト化および施工効率の向上を図ることができる鋼管の連結構造および鋼管構造体を提供すること。
【解決手段】上側鋼管2および下側鋼管3の当接端面23,33同士を互いに当接するとともに、これらの当接端面23,33と所定の傾斜角度で交差して連結部材4のボルト41を設けたことで、上側鋼管2と下側鋼管3とで圧縮の軸力が当接端面23,33を介して伝達できるとともに、引っ張りの軸力がボルト41を介して伝達できる。さらに、当接端面23,33と交差してボルト41が設けられているので、上側鋼管2の外側への外側突出部22やボルト41頭部の突出寸法を小さくすることができるとともに、鋼管の外側からボルト41が締め付られることから、連結作業の作業性を向上させて鋼管杭1の施工効率を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の連結構造および鋼管構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管を材軸方向に連結した鋼管柱や鋼管杭等の鋼管構造体が利用されており、そのような鋼管同士の連結構造としては、ネジ方式や嵌め込み方式、ボルト方式、溶接方式などが一般的である。
ネジ方式の連結構造は、連結する鋼管の一方に雄ネジを形成し、他方に雌ネジを形成しておき、現場において一方および他方の鋼管を相対回転させて雄ネジと雌ネジとを螺合させることで、鋼管同士が連結されるようになっている。このようなネジ方式の連結構造は、比較的小径かつ軽量な鋼管に対しては適用しやすいものの、鋼管柱や鋼管杭などの構造体を構成するような鋼管では、雄ネジや雌ネジを高い精度で加工するために加工手間が多大になるとともに、現場における回転施工が大掛かりで施工手間も多大になり、さらに施工誤差を吸収できないという不都合がある。
【0003】
また、嵌め込み方式の連結構造は、一方および他方の鋼管にそれぞれ機械式の継ぎ手を設けておき、現場にて継ぎ手同士を機械的に接続することで、鋼管同士が連結されるようになっている。このような嵌め込み方式の連結構造は、機械式継ぎ手の高い精度での製造および鋼管への取り付けに要する手間およびコストが大きくなるとともに、継ぎ手同士の接続ガタを低減させること、さらに施工誤差を吸収することが困難になるという不都合がある。
また、溶接方式の連結構造は、現場にて鋼管同士を溶接によって接合するものであるが、現場における溶接作業に多大な手間を要することから工期の長期化を招いてしまうとともに、溶接接合部の品質を確保するために高度な施工管理が要求され、さらに手間と時間とが掛かってしまうという不都合がある。
【0004】
一方、ボルト方式の連結構造としては、外ダイヤフラム形式の連結構造(例えば、特許文献1参照)や、添接板(スプライスプレート)形式の連結構造(例えば、特許文献2参照)などが一般的である。
特許文献1に記載された外ダイヤフラム形式の連結構造は、鋼管の端縁に円環状のダイヤフラムを溶接接合しておき、鋼管の外側に突出したダイヤフラム同士をボルトおよびナットで接続することで、鋼管同士が連結されるようになっている。
一方、特許文献2に記載の添接板形式の連結構造では、一対の鋼管の端部に渡って内側および外側の添接板を配置し、これら内外の添接板および鋼管にボルトを貫通させるとともに、このボルトとナットとを螺合させることで、添接板と鋼管との摩擦接合によって鋼管同士が連結されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−302940号公報
【特許文献2】特開2006−152796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の外ダイヤフラム形式の連結構造では、鋼管の外側に偏心した位置でダイヤフラム同士が接合されるため、鋼管に引っ張りの軸力が作用した場合にダイヤフラムが曲げ変形する可能性があり、応力伝達が不十分になってしまうことから、多数の補強リブを設ける必要があるなど、構造が複雑化して加工コストが増大するという問題がある。さらに、ダイヤフラムが鋼管から側方に大きく突出して設けられることから、鋼管柱として利用する場合には、柱の仕上げ寸法が大きくなるという不都合を生じ、また鋼管杭として利用する場合には、地盤への杭の貫入抵抗が増大するとともに地盤を乱してしまうと不都合を生じさせてしまう。
また、特許文献2記載の添接板形式の連結構造では、鋼管の内面側にも添接板を設置する必要があることから、現場での連結作業の作業性が低下してしまうという問題がある。さらに、添接板と鋼管との摩擦接合によって鋼管同士が連結されることから、鋼管に作用する圧縮および引っ張りの軸力を伝達するためには、ボルト本数が多くなるとともに添接板も大きくなってしまい、コストおよび施工手間の増大を招くという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、鋼管に作用する軸力を確実に伝達可能でかつ低コスト化および施工効率の向上を図ることができる鋼管の連結構造および鋼管構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鋼管の連結構造では、材軸方向に直列して一対の鋼管同士を連結する鋼管の連結構造であって、前記一対の鋼管は、材軸方向に延びる鋼管本体と、この鋼管本体の端部にて材軸に交差して互いに当接する当接端面とを各々有して形成され、前記一対の鋼管のうちの一方の鋼管には、前記当接端面と並んで鋼管本体よりも外側に突出する外側突出部と、この外側突出部から前記当接端面まで貫通する外側挿通孔とが設けられ、前記一対の鋼管のうちの他方の鋼管には、前記当接端面と並んで鋼管本体よりも内側に突出する内側突出部と、この内側突出部から前記当接端面まで貫通する内側挿通孔とが設けられ、前記外側挿通孔から前記内側挿通孔に渡って挿通されるとともに前記当接端面と所定の傾斜角度で交差する連結部材によって前記一対の鋼管同士が連結されることを特徴とする。
【0009】
以上の本発明によれば、鋼管の当接端面同士を当接させることにより、一方から他方(または他方から一方)の鋼管に圧縮の軸力を伝達することができるとともに、当接端面と交差して連結部材を設けることにより、鋼管本体と偏心しない位置の連結部材によって引っ張りの軸力を伝達することができる。従って、従来の添接板形式の連結構造のように、添接板と鋼管との摩擦力を得るためにボルトに張力を導入する必要もなく、当接端面同士を当接させるとともに、外側突出部と内側突出部とに渡って連結部材を設けるだけで、一対の鋼管同士において圧縮および引っ張りのいずれの軸力も確実に伝達することができる。また、連結部材としては、鋼管に作用する引っ張りの軸力に対応して断面積や本数などが設定されていればよいため、その断面積や本数が必要以上に多くなることがなく、従来の添接板形式の連結構造と比較してコストが低減できるとともに、鋼管の内面側に添接板を設置する必要もないことから、連結作業の作業性も向上させることができる。さらに、当接端面と交差して連結部材を設けることにより、外側突出部の突出寸法を小さくすることができ、鋼管柱として利用される場合の仕上げ寸法が小さくでき、また鋼管杭として利用される場合の貫入抵抗を小さくして施工性を向上させることができる。
【0010】
この際、本発明の鋼管の連結構造では、前記外側突出部および内側突出部には、前記連結部材の挿通方向に直交する傾斜面が一体に形成されるか、または前記連結部材の挿通方向に直交する傾斜面を有した伝達部材が別体で設けられることが好ましい。
このような構成によれば、外側突出部および内側突出部に一体に形成された傾斜面、または伝達部材に形成された傾斜面によって、連結部材と外側突出部および内側突出部とを確実に当接させて連結力を伝達することができ、鋼管同士のがたつきを防止しつつ連結することができる。さらには、外側挿通孔または内側挿通孔の内径を予め連結部材の軸部外径より大きくすることにより、連結構造の製作誤差および施工誤差を容易に吸収することができるために、施工効率を向上することができる。
【0011】
また、本発明の鋼管の連結構造では、前記一対の鋼管における一方および他方の当接端面には、互いに凹凸嵌合可能な突条および凹溝が形成されていることが好ましい。
また、前記外側突出部には、前記他方の鋼管に向かって突出して当該他方の鋼管における鋼管本体の外面に係合可能な外側係合突部が形成されていることが好ましい。
さらに、前記内側突出部には、前記一方の鋼管に向かって突出して当該一方の鋼管における鋼管本体の内面に係合可能な内側係合突部が形成されていることが好ましい。
【0012】
以上の各構成によれば、当接端面に突条および凹溝を設けたり、外側突出部に外側係合突部を設けたり、内側突出部に内側係合突部を設けたりすることで、一対の鋼管同士が材軸方向と交差する方向にずれる力であるせん断力を伝達することができ、連結部材によってせん断力を負担する場合と比較して、機械的に係合させることでせん断強度を格段に向上させることができる。さらに、鋼管同士の連結作業において、材軸方向と交差する方向へのずれが防止できることから、鋼管同士の位置決めが容易にできて作業性を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明の鋼管の連結構造では、前記連結部材は、前記外側挿通孔から前記内側挿通孔に向かって挿入されるボルトと、前記内側突出部に予め固定されて前記ボルトと螺合可能なナットとで構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、内側突出部に予めナットを固定しておき、外側挿通孔から挿通したボルトをナットに螺合することで、連結作業を鋼管の外側から実施することができ、鋼管の内側において作業を行う必要がないことから、作業性をより一層向上させることができる。
【0014】
一方、本発明の鋼管構造体は、前記いずれかの鋼管の連結構造を備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、鋼管構造体としての鋼管柱や鋼管杭において、前述したように、高い製作精度を必要とせず、連結部材の本数が少なくても鋼管同士の応力伝達が確実にできて低コスト化を図ることができるとともに、鋼管外側への突出寸法が小さくでき、さらには施工誤差を容易に吸収できるために連結作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明の鋼管の連結構造および鋼管構造体によれば、鋼管の当接端面同士を当接させるとともに当接端面と交差して連結部材を設けることで、必要最小限の連結部材によって鋼管同士で軸力を確実に伝達することができる。さらに、当接端面と交差して連結部材を設けることにより、鋼管外側への突出寸法を小さくすることができるとともに、鋼管の内部側における作業が省略できることから、連結作業の作業性を向上させて施工効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る鋼管構造体を示す断面図および側面図である。
【図2】前記鋼管構造体における鋼管の連結構造を示す断面図である。
【図3】(A)〜(C)は、前記鋼管の連結手順を示す断面図である。
【図4】前記実施形態の変形例を示す断面図である。
【図5】図4とは異なる変形例を示す断面図である。
【図6】図4、5とは異なる変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る鋼管の連結構造を示す断面図である。
【図8】前記実施形態の変形例を示す断面図である。
【図9】図8とは異なる変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態の鋼管構造体としての鋼管杭1を示す断面図および側面図であって、図1(A)は、図1(B)に矢視A−A線で示す断面図である。また、図2は、鋼管杭1を構成する上下一対の鋼管2,3の連結構造を示す断面図であって、図1(A)に矢視II−II線で示す断面図である。
図1および図2において、鋼管杭1は、一方の鋼管である上側鋼管2と、他方の鋼管である下側鋼管3とが、鋼管杭1の外周に沿って等間隔で設けられる連結部材4で連結されることによって構成されている。
【0019】
上側鋼管2は、材軸方向である上下方向に延びる円筒状の鋼管本体21と、この鋼管本体21の下端部にて鋼管本体21よりも外側に突出する外側突出部22と、鋼管本体21の下端面であり材軸に直交して設けられる当接端面23とを有して形成されている。そして、上側鋼管2には、外側突出部22から当接端面23までを斜めに貫通する外側挿通孔24と、この外側挿通孔24の上端が開口して外側挿通孔24と直交する傾斜面25とが形成されている。外側突出部22は、鋼管本体21の外周に沿って円環状に形成され、この外側突出部22の上面に沿って傾斜面25が連続して形成されている。
【0020】
下側鋼管3は、上下方向に延びる円筒状の鋼管本体31と、この鋼管本体31の上端部にて鋼管本体31よりも内側に突出する内側突出部32と、鋼管本体31の上端面であり材軸に直交して設けられる当接端面33とを有して形成されている。そして、下側鋼管3には、内側突出部32から当接端面33までを斜めに貫通する内側挿通孔34と、この内側挿通孔34の下端が開口して内側挿通孔34と直交する傾斜面35とが形成されている。内側突出部32は、鋼管本体31の内周に沿って円環状に形成され、この内側突出部32の下面に沿って傾斜面35が連続して形成されている。
【0021】
連結部材4は、外側挿通孔24から内側挿通孔34に向かって挿入されるボルト41と、内側突出部32の傾斜面35に固定されてボルト41に螺合されるナット42とを有して構成されている。ボルト41は、ナット42に螺合された状態において、その頭部が外側突出部22の傾斜面25に当接し、ボルト41とナット42とを締め付けることで、外側突出部22と内側突出部32とが互いに緊結されるようになっている。ここで、ボルト41は、鋼管杭1の材軸に対して略30°程度の傾斜角度で交差し、つまり当接端面23,33に対して略60°程度の傾斜角度で交差して配置されるようになっている。
【0022】
以上のような上側鋼管2および下側鋼管3は、各々の鋼管本体21,31が上下に直列し、互いの当接端面23,33同士が当接するとともに、これらの当接端面23,33にボルト41が所定の傾斜角度で交差した状態でナット42と螺合されることで、当該上側鋼管2と下側鋼管3とが連結されて鋼管杭1が構成されるようになっている。
【0023】
なお、本実施形態において、鋼管杭1の各部は、以下の図4〜図6に示すような構成であってもよい。ここで、図4〜図6は、それぞれ鋼管杭1の変形例を示す断面図である。
図4において、外側突出部22および内側突出部32には、前記傾斜面25,35が一体に形成されておらず、外側突出部22と鋼管本体21との交差部、および内側突出部32と鋼管本体31との交差部には、それぞれボルト41およびナット42の締め付け力を伝達する伝達部材である傾斜座金43が別体で設けられ、これらの傾斜座金43に傾斜面44が形成されている。ここで、下側鋼管3に設けられる傾斜座金43は、内側突出部32と鋼管本体31との交差部に溶接固定されており、この傾斜座金43にナット42が固定されている。なお、下側鋼管3において、ナット42および傾斜座金43が一体的に形成されて下側鋼管3に溶接固定されていてもよい。
【0024】
図5において、連結部材4は、ナット42を有しておらず、下側鋼管3の内側挿通孔34に雌ねじ34Aが形成され、この雌ねじ34Aにボルト41が螺合されるようになっている。このような構成によれば、下側鋼管3の内側においてナット42や傾斜座金43を固定する固定作業が省略できて、下側鋼管3の加工作業や現場での連結作業を簡単化することができる。また、外側挿通孔24の内径をボルト41の軸部外径より大きくしておくことにより、施工誤差を容易に吸収することができ、施工効率の向上を図ることができる。
図6において、上側鋼管2および下側鋼管3の外側挿通孔24および内側挿通孔34は、鋼管杭1の材軸に対して略45°程度に傾斜して形成され、従って、連結部材4のボルト41も、当接端面23,33に対して略45°程度の傾斜角度で交差して配置されるようになっている。
【0025】
以上の本実施形態によれば、上側鋼管2および下側鋼管3の当接端面23,33同士が互いに当接されるとともに、これらの当接端面23,33と所定の傾斜角度で交差して連結部材4のボルト41が設けられているので、上側鋼管2と下側鋼管3とで圧縮の軸力が当接端面23,33を介して伝達できるとともに、引っ張りの軸力がボルト41を介して伝達できる。従って、圧縮の軸力が支配的な鋼管杭1において、必要最小限の連結部材4によって材軸方向に沿った軸力を確実に伝達することができる。さらに、当接端面23,33と交差してボルト41が設けられているので、上側鋼管2の外側への外側突出部22やボルト41頭部の突出寸法を小さくすることができ、鋼管杭1を地盤に貫入する際の貫入抵抗が小さくできるとともに、地盤を乱すことが抑制できる。さらに、ナット42や傾斜座金43が予め下側鋼管3に固定されているので、現場において鋼管内部における作業が省略できることから、連結作業の作業性を向上させて鋼管杭1の施工効率を向上させることができる。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る鋼管杭1Aにおける鋼管の連結構造を図7〜図9に基づいて説明する。
図7において、上側鋼管2の外側突出部22には、当接端面23よりも下方に突出し、外側突出部22に沿って連続した円環状の外側係合突部26が形成されている。この外側係合突部26は、下側鋼管3の鋼管本体31の外周面に沿って係合可能に構成されている。一方、下側鋼管3の内側突出部32には、当接端面33よりも上方に突出し、内側突出部32に沿って連続した円環状の内側係合突部36が形成されている。この内側係合突部36は、上側鋼管2の鋼管本体21の内周面に沿って係合可能に構成されている。なお、ここでは、外側係合突部26または内側係合突部36のいずれかが形成されていればよく、さらには外側係合突部26や内側係合突部36は、連続した円環状でなく、円環の一部に形成されていてもよい。
【0027】
図8において、上側鋼管2の当接端面23には、当該当接端面23よりも上方に凹んだ凹溝27が形成されている。一方、下側鋼管3の当接端面33には、当該当接端面33よりも上方に突出した突条37が形成されている。これらの凹溝27と突条37とは、互いに凹凸嵌合可能に構成されている。なお、図8は、鋼管杭1Aにおける周方向の位置のうち、外側挿通孔24および内側挿通孔34や連結部材4が設けられていない部分を断面した図であって、外側挿通孔24、内側挿通孔34および連結部材4の構成は、前述と同様である。
【0028】
図9において、上側鋼管2の当接端面23および下側鋼管3の当接端面33は、それぞれ鋼管杭1Aの材軸と直交する面(水平面)に対して所定角度だけ傾斜して形成されている。このように傾斜した当接端面23,33に対し、外側挿通孔24、内側挿通孔34および連結部材4のボルト41は、さらに所定角度だけ傾斜して交差するようになっている。具体的には、例えば、水平面に対して当接端面23,33が径方向外側に下がる方向に15°程度の傾斜角度を有して形成され、外側挿通孔24、内側挿通孔34およびボルト41は、材軸に対して15°よりも大きい45°程度の傾斜角度を有し、従って、当接端面23,33に対して外側挿通孔24、内側挿通孔34および連結部材4のボルト41は、30°程度の傾斜角度で交差して配置されるようになっている。
【0029】
以上の本実施形態によれば、外側係合突部26および内側係合突部36による上側鋼管2と下側鋼管3との係合や、凹溝27と突条37との凹凸嵌合、傾斜した当接端面23,33同士の当接によって、上側鋼管2と下側鋼管3とが材軸直交方向(横方向)にずれないようになっている。従って、前記第1実施形態の軸力に加えてせん断力も上側鋼管2および下側鋼管3間で確実に伝達することができ、鋼管杭1Aの構造性能を向上させることができる。また、上側鋼管2と下側鋼管3とが材軸直交方向にずれないことから、連結部材4を締め付けた際の横方向の力に抵抗することができ、上側鋼管2と下側鋼管3の変形を防止することができる。
【0030】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、円形の鋼管杭1,1Aを例示したが、本発明の鋼管構造体は、鋼管杭に限らず、鋼管柱でもよく、また鋼管の断面形状は円形に限らず、上下の鋼管断面が類似であれば矩形断面などの任意形状でもよく、さらには鋼管を組み合わせて構成されるトラス構造体などであってもよい。
また、前記実施形態では、上側鋼管2と下側鋼管3との連結構造を説明したが、本発明の連結構造は、2本の鋼管同士を連結するものに限らず、3本以上の鋼管を連結してもよいし、また鋼管を上下に連結するものに限らず、水平方向や斜め方向など任意の方向に連結するものでもよい。
【0031】
また、前記実施形態では、上側鋼管2および下側鋼管3のうち、上側鋼管2を一方の鋼管として下側鋼管3を他方の鋼管とし、上側鋼管2に外側突出部22や外側挿通孔24を設け、下側鋼管3に内側突出部32や内側挿通孔34を設けたが、このような構成に限られない。すなわち、上側鋼管2に内側突出部や内側挿通孔を設け、下側鋼管3に外側突出部や外側挿通孔を設けるとともに、連結部材を下方からに向かって挿通するように構成されていてもよい。
また、前記実施形態では、外側係合突部26、内側係合突部36および突条37は、鋼管本体21,31または当接端面23,33に一体で形成されているが、必要に応じてボルトなどにより機械的に鋼管本体や当接端面に接続されていてもよい。
また、前記実施形態では、連結部材4としてボルト41およびナット42を例示したが、連結部材としては、互いに螺合することによって対象物を緊結するものに限らず、互いに機械的に係合するものや、嵌着するものや溶着するものなど、任意の固着形式の連結部材が採用可能である。
【0032】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1,1A…鋼管杭(鋼管構造体)、2…上側鋼管(一方の鋼管)、3…下側鋼管(他方の鋼管)、4…連結部材、21,31…鋼管本体、22…外側突出部、23,33…当接端面、24…外側挿通孔、25,35…傾斜面、26…外側係合突部、27…凹溝、32…内側突出部、34…内側挿通孔、36…内側係合突部、37…突条、41…ボルト、42…ナット、43…傾斜座金(伝達部材)、44…傾斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材軸方向に直列して一対の鋼管同士を連結する鋼管の連結構造であって、
前記一対の鋼管は、材軸方向に延びる鋼管本体と、この鋼管本体の端部にて材軸に交差して互いに当接する当接端面とを各々有して形成され、
前記一対の鋼管のうちの一方の鋼管には、前記当接端面と並んで鋼管本体よりも外側に突出する外側突出部と、この外側突出部から前記当接端面まで貫通する外側挿通孔とが設けられ、
前記一対の鋼管のうちの他方の鋼管には、前記当接端面と並んで鋼管本体よりも内側に突出する内側突出部と、この内側突出部から前記当接端面まで貫通する内側挿通孔とが設けられ、
前記外側挿通孔から前記内側挿通孔に渡って挿通されるとともに前記当接端面と所定の傾斜角度で交差する連結部材によって前記一対の鋼管同士が連結されることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管の連結構造において、
前記外側突出部および内側突出部には、前記連結部材の挿通方向に直交する傾斜面が一体に形成されるか、または前記連結部材の挿通方向に直交する傾斜面を有した伝達部材が別体で設けられることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の鋼管の連結構造において、
前記一対の鋼管における一方および他方の当接端面には、互いに凹凸嵌合可能な突条および凹溝が形成されていることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋼管の連結構造において、
前記外側突出部には、前記他方の鋼管に向かって突出して当該他方の鋼管における鋼管本体の外面に係合可能な外側係合突部が形成されていることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の鋼管の連結構造において、
前記内側突出部には、前記一方の鋼管に向かって突出して当該一方の鋼管における鋼管本体の内面に係合可能な内側係合突部が形成されていることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の鋼管の連結構造において、
前記連結部材は、前記外側挿通孔から前記内側挿通孔に向かって挿入されるボルトと、前記内側突出部に予め固定されて前記ボルトと螺合可能なナットとで構成されていることを特徴とする鋼管の連結構造。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の鋼管の連結構造を備えた鋼管構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate