説明

鋼管圧入工法及び鋼管圧入機

【課題】サドル部にクランプ装置を2台設けた自走式の鋼管圧入機を用いて、安定した状態で鋼管を地中に圧入打設できるようにする鋼管圧入工法を提供する。
【解決手段】先行鋼管11aの上端部に固定されるクランプ装置12a,12bを備えるサドル部13と、サドル部13にスライド移動可能に設けられたスライドベース部15と、スライドベース部15に旋回可能に設けられたリーダ部16と、リーダ部16に昇降可能に設けられたチャック装置17を備える昇降圧入部18とからなる自走式の鋼管圧入機10を用いた鋼管圧入工法であって、移動クランプ装置12aが、固定クランプ装置12bに隣接する位置から、先行鋼管12aの直径以上の長さに亘ってスライド移動可能に設けられている。クランプ装置12a,12bを、1本の先行鋼管12a’を飛ばした両側の先行鋼管12aの上端部に固定した状態で、昇降圧入部18によって鋼管11を圧入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先行して地中に圧入打設された先行鋼管に圧入反力を支持させると共に、先行鋼管の上端部に沿ってこれらの連設方向に自走移動しながら鋼管を順次圧入打設してゆく、自走式の鋼管圧入装置を用いた鋼管圧入工法及び鋼管圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば地中や水中に、土留壁、締切壁、仕切壁等を形成する工法として、好ましくは600〜1500mm程度の直径を有する多数の鋼管を、所定の打設予定線に沿って連設させて地中に鉛直方向に打設してゆくことで、連続壁を形成する工法が知られている。このような鋼管を連設させて連続壁を形成する工法では、鋼管を打設する方法として、例えばバイブロハンマーを用いた振動による打設方法や、鋼管圧入機を用いた圧入打設方法が知られているが、周囲の環境等を考慮して、振動や騒音の少ない圧入打設方法が採用されることが多い。
【0003】
また、鋼管を地中に圧入打設する工法として、自走式の鋼管圧入機を用いた鋼管圧入工法が開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。これらの特許文献に記載された鋼管圧入工法では、自走式の鋼管圧入機は、先行して地中に圧入打設された先行鋼管に着脱可能に固定される複数のクランプ装置を備えるサドル部と、このサドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、このスライドベース部に対して旋回可能に設けられたリーダ部と、このリーダ部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼管を把持するチャック装置を備える昇降圧入部とを含んで構成されており、クランプ装置によって先行鋼管の上端部を掴んで先行鋼管に圧入反力を支持させると共に、先行鋼管の上端部に沿ってこれらの連設方向に自走移動しながら、鋼管を順次圧入打設してゆくことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−120743号公報
【特許文献2】特開2006−161477号公報
【特許文献3】特開2009−275388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載された鋼管圧入工法では、例えば直径が1300〜1500mm程度の比較的大口径の鋼管についても安定した状態で地中に圧入打設できるように、自走式の鋼管圧入機は、サドル部に3台のクランプ装置が設けられていて、これらのクランプ装置を、3本の先行鋼管の上端部に固定することで、3本の先行鋼管から相当の大きさの圧入反力を得ることが可能となっているが、3台のクランプ装置が設けられていることで、鋼管圧入機の構造が大掛かりになる。
【0006】
また、サドル部に3台のクランプ装置が設けられている自走式の鋼管圧入機では、例えば円弧形状に湾曲する打設予定線に沿って多数の鋼管を連設して圧入打設して行く際には、3台のクランプ装置が固定される3本の先行鋼管は、1本の直線上に配置されなくなるため、少なくとも一方の端部のクランプ装置を、3台のクランプ装置の連設方向に対して垂直な方向にスライド移動させる機構が必要になって、鋼管圧入機の構造が複雑になる。
【0007】
一方、例えば直径が600〜1000mm程度の比較的小口径の鋼管を地中に圧入打設してゆくことが可能な自走式の鋼管圧入機として、クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた、コンパクトで安価な構造の鋼管圧入機も開発されている。クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機では、圧入される鋼管の直径に合わせて2台のクランプ装置の間隔を調整可能にできるようにするスライド機構が設けられていることで、複数の工事現場において圧入打設される鋼管の口径が異なる場合でも、鋼管圧入機を入れ替えることなく同じ鋼管圧入機を用いて施工することが可能になる。また、例えば円弧形状に湾曲する打設予定線に沿って多数の鋼管を連設して地中に圧入打設して行く際には、2台のクランプ装置を2本の隣接する先行鋼管の上端部に固定した状態として、圧入反力を容易に得ることが可能になる。
【0008】
しかしながら、クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機では、コンパクトで安価な構造を備える一方で、例えば直径が1300〜1500mm程度の比較的大口径の鋼管を地中に圧入打設する際には、クランプ装置を先行鋼管の上端部に固定して得られる圧入反力を十分確保することができなくなって、安定した状態で鋼管を地中に圧入打設することが困難になると考えられることから、例えば比較的大口径の鋼管を圧入打設する場合でも、クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機を用いて、さらに安定した状態で鋼管を地中に圧入打設できるようにする技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機を用いて、さらに安定した状態で鋼管を地中に圧入打設してゆくことのできる鋼管圧入工法、及び該鋼管圧入工法に用いる鋼管圧入機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、先行して地中に圧入打設された先行鋼管の上端部に着脱可能に固定される複数のクランプ装置を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられたリーダ部と、該リーダ部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼管を把持するチャック装置を備える昇降圧入部とを含んで構成される、自走式の鋼管圧入機を用いた鋼管圧入工法において、前記鋼管圧入機のサドル部には、前記クランプ装置が2台設けられていると共に、一方の前記クランプ装置を、前記チャック装置側の他方の前記クランプ装置に隣接する位置から、前記先行鋼管の直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構が設けられており、前記2台のクランプ装置を、1本の前記先行鋼管を飛ばしてこれの両側に配置された前記先行鋼管の上端部に固定した状態で、前記昇降圧入部によって前記鋼管を圧入する鋼管圧入工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
本発明の鋼管圧入工法は、前記先行鋼管及び前記圧入される鋼管は、円弧形状の打設予定線に沿って、円弧形状の平面形状を描くように連設して圧入打設されるようになっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、上記鋼管圧入工法に用いる鋼管圧入機であって、先行して地中に圧入打設された先行鋼管の上端部に着脱可能に固定される複数のクランプ装置を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられたリーダ部と、該リーダ部に対して昇降可能に設けられた、圧入される圧入鋼管を把持するチャック装置を備える昇降圧入部とを含んで構成されており、前記サドル部には、前記クランプ装置が2台設けられていると共に、一方の前記クランプ装置を、前記チャック装置側の他方の前記クランプ装置に隣接する位置から、前記先行鋼管の直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構が設けられている鋼管圧入機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の鋼管圧入工法又は鋼管圧入機によれば、クランプ装置をサドル部に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機を用いて、さらに安定した状態で鋼管を地中に圧入打設してゆくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼管圧入工法で用いる鋼管圧入機の側面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る鋼管圧入工法で用いる鋼管圧入機の上面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係る鋼管圧入工法を説明する略示側面図である。
【図4】円弧形状の打設予定線に沿って鋼管を圧入打設する状況を説明する略示上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい一実施形態に係る鋼管圧入工法は、例えば図1及び図2に示すような自走式の鋼管圧入機10を用いて、好ましくは直径が600〜1500mm程度の口径の多数の鋼管11,11aを、例えば8000〜12000mm程度の直径の円を描くように円弧形状に湾曲する打設予定線Cに沿って連設させて(図4参照)、鉛直方向に向けて順次地中に圧入打設してゆくことで、例えば立坑の周囲を囲う山留用の連続壁を形成する際に採用されたものである。また、本実施形態の鋼管圧入工法は、特に直径が1300〜1500mm程度の比較的大口径の鋼管11,11aを、クランプ装置12a,12bをサドル部13に2台のみ設けたコンパクトで安価な構造の鋼管圧入機10を用いて、先行して地中に圧入打設された先行鋼管11aから圧入反力を得ながら打設する場合でも、安定した状態で先行鋼管11aに圧入反力を支持させることができるようにしたものである。
【0016】
ここで、本実施形態の鋼管圧入工法に用いる自走式の鋼管圧入機10は、後述するクランプ装置12a,12bがサドル部13に2台のみ設けられていること、及び一方のクランプ装置12aを、他方のクランプ装置12bに隣接する位置から先行鋼管11aの直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構14が設けられていることを除いて、上述の特許文献1〜3に開示された鋼管圧入機と略同様の構成を備えている。
【0017】
すなわち、本実施形態の鋼管圧入工法に用いる自走式の鋼管圧入機10は、図1及び図2に示すように、先行して地中に圧入打設された先行鋼管11a(図3参照)の上端部に着脱可能に固定される複数のクランプ装置12a,12bを備えるサドル部13と、サドル部13に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部15と、スライドベース部15に対して旋回可能に設けられたリーダ部16と、リーダ部16に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼管11を把持するチャック装置17を備える昇降圧入部18とを含んで構成されており、サドル部13には、クランプ装置12a,12bが2台設けられていると共に、一方のクランプ装置12aを、チャック装置17側の他方のクランプ装置12bに隣接する位置から、先行鋼管11aの直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構15が設けられている。
【0018】
そして、本実施形態の鋼管圧入工法は、上述のような構成の鋼管圧入機10を用いた鋼管の圧入工法であって、上述のように、鋼管圧入機10のサドル部13には、クランプ装置12a,12bが2台設けられていると共に、一方のクランプ装置12aを、チャック装置17側の他方のクランプ装置12bに隣接する位置から、先行鋼管11aの直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構15が設けられており、図3(a)〜(d)に示すように、2台のクランプ装置12a,12bを、1本の先行鋼管11a’を飛ばしてこれの両側に配置された先行鋼管11aの上端部に固定した状態で、昇降圧入部18によって鋼管11を圧入するようになっている。
【0019】
本実施形態では、鋼管圧入機10を構成する2台のクランプ装置12a,12bは、図1に示すように、サドル部13の下面部に取り付けられることでサドル部13から下方に突出して設けられており、サドル部13に固定された状態でチャック装置13側の端部に配置された、他方のクランプ装置としての固定クランプ装置12bと、固定クランプ装置12bを挟んでチャック装置13とは反対側に配置された、サドル部13の下面部に沿ってスライド移動可能な一方のクランプ装置としての移動クランプ装置12aとからなる。
【0020】
移動クランプ装置12aや固定クランプ装置12bは、各々、例えばクランプ用油圧シリンダを介して接続された固定部や可動部からなる公知の構造を備えており、固定部や可動部に、先行鋼管11aの内径に対応する曲率で湾曲するクランプ爪19が交換可能に装着固定されるようになっている。移動クランプ装置12aや固定クランプ装置12bは、先行鋼管11aの上端部に挿入配置された後に、クランプ用油圧シリンダを伸縮させてクランプ爪19を拡径させ、当該クランプ爪19の外周面を先行鋼管11aの内周面に押し付けることによって、先行鋼管11aを内側から掴んだ状態で、鋼管圧入機10を先行鋼管11aの上端部に強固に固定できるようになっている(図3(a)、(b)、(d)参照)。また、クランプ爪19の外周面を先行鋼管11aの内周面に押し付けた状態から、クランプ用油圧シリンダを収縮させてクランプ爪19を縮径させることで固定状態を開放して、鋼管圧入機10を先行鋼管11aの上端部から取り外すことができるようになっている(図3(c)参照)。
【0021】
本実施形態では、サドル部13は、クランプ装置12a,12bを介して先行鋼管11aの上端部に固定されて、スライドベース部15の基台となる部分であって、3本の先行鋼管11aの上端部に跨る長さを備えるように構成されている。サドル部13は、これの長手方向に案内溝が設けられており、サドル部13の内部に設けられた油圧ジャッキやスプロケット等による進退装置によって、スライドベース部15を案内溝に沿って鋼管11,11aの連設方向に進退スライドさせることができるようになっている(図3(b)参照)。
【0022】
また、サドル部13の下面部には、固定クランプ装置12bの直後の部分からサドル部13の後端部まで連続して延設して、クランプ装置移動機構14としてのスライドガイドレール部が設けられている。このスライドガイドレール部14には、移動クランプ装置12aの基部がスライド可能に係合されており、スライドガイドレール部14の内部には、油圧ジャッキやスプロケット等による進退装置が設けられている。これらの進退装置によって、移動クランプ装置12aを、固定クランプ装置12bに隣接配置されて、固定クランプ装置12bが固定される先行鋼管11aの直後に隣接する先行鋼管11a’に固定可能な位置から、1本の先行鋼管11a’を飛ばして次の先行鋼管11aに固定可能な位置まで、先行鋼管11aの直径以上の長さに亘ってスライドガイドレール部14に沿ってスライド移動させることができるようになっている。
【0023】
これによって、2台のクランプ装置12a,12bを用いて、隣接する2本の先行鋼管11a,11a’から圧入反力を得る状態と、1本の先行鋼管11a’を飛ばしてこれの両側に配置された先行鋼管11aから圧入反力を得る状態とを適宜選択して、鋼管11,11aの口径等に応じて鋼管圧入機10による鋼管11の打設を行うことができるようになっている。
【0024】
本実施形態では、スライドベース部15は、サドル部13に形成された案内溝に沿って進退することにより、これの先端部に支持されて設けられたリーダ部16や昇降圧入部18を、先行鋼管11aに固定されたサドル部13に対して鋼管11,11aの連設方向に進退させることができるようになっている。スライドベース部15の先端部には、昇降圧入部18の昇降をガイドするリーダ部16としてのリーダマストが、操作制御室20の前方に取り付けられて、操作制御室20と共に公知の各種の旋回機構を介してサドル部13やスライドベース部15に対して旋回可能に設けられている(図4参照)。
【0025】
リーダ部16は、リーダマストとして知られる公知の部分であり、縦方向に延設して操作制御室20の前方部分に設けられている。リーダ部16には、昇降圧入部18の基部が上下方向にスライド移動可能に係合していることで、昇降圧入部18が、当該リーダ部16によって案内されながら安定した状態で鉛直方向に繰り返し昇降移動して、鋼管11を地中に圧入できるようになっている。
【0026】
昇降圧入部18は、圧入される鋼管11を把持してリーダ部16に沿って繰り返し昇降移動することで、鋼管11を地中に押し込んで圧入する機能を備える公知の部分であり、径方向に進退可能に設けられた複数のチャック片17aを鋼管11の外周面に押し付けることで、圧入される鋼管11を着脱可能に把持するチャック装置17や、当該昇降圧入部18を上下方向に昇降移動させる油圧シリンダ21等を含んで構成されている。昇降圧入部18は、鋼管11をチャック装置17で把持した状態で地中に押し込む工程と、把持を開放した後にチャック装置17を上方に移動させて鋼管11を把持し直す工程とを繰り返して、鋼管11を油圧シリンダ21のストローク長づつ地中に圧入してゆくことができるようになっている。
【0027】
本実施形態によれば、上述のような構成の鋼管圧入機10を用いて、図3(a)〜(d)及び図4に示すように、以下のようにして、円弧形状に湾曲する打設予定線Cに沿って連設させて、鉛直方向に向けて鋼管11,11aを順次地中に圧入打設してゆく工事が行われる。
【0028】
すなわち、図3(a)に示すように、先行して地中に圧入打設された先行鋼管11aの上端部にサドル部13を固定して圧入反力を得ながら、最先端の先行鋼管11aの次に連設される鋼管11を地中に所定に深さまで圧入する。このような圧入作業は、サドル部13に設けられた2台のクランプ装置12a,12bを、チャック装置17側の固定クランプ装置12bを最先端の先行鋼管11aの上端部に固定すると共に、移動クランプ装置12aを、1本の先行鋼管11a’を飛ばした3番目の先行鋼管11aの上端部に固定した状態で行われる。
【0029】
最先端の先行鋼管11aの次の鋼管11を所定の深さまで地中に圧入したら、図3(b)及び図4に示すように、クランプ装置12a,12bを介してサドル部13を先行鋼管11aの上端部に固定したままの状態で、スライドベース部15をサドル部13に対して鋼管11,11aの連設方向に前進させて、更に次に連設される鋼管11の圧入作業を行う。
【0030】
更に次に連設される鋼管11を、鋼管圧入機10の重量を支持できる深さまで圧入したら、図3(c)に示すように、チャック装置17による鋼管11の把持を開放して、油圧シリンダ21を伸長させながらチャック装置17を鋼管11の外周面に沿って上方に移動させて、鋼管11を把持し直した後に、クランプ装置12a,12bによる先行鋼管11aへの固定状態を開放すると共に、油圧シリンダ21を収縮することで、鋼管圧入機10のサドル部13やスライドベース部15を、更に次に連設される鋼管11に支持させた状態で、先行鋼管11aの上方に持ち上げる。
【0031】
しかる後に、図3(d)に示すように、サドル部13をスライドベース部15に対して前方にスライド移動させてから、油圧シリンダ21を伸長させることで鋼管圧入機10のサドル部13やスライドベース部15を下降させ、固定クランプ装置12bを、次に連設された鋼管11を最先端の先行鋼管11aとして、これの上端部に挿入して固定すると共に、移動クランプ装置12aを、1本の先行鋼管11a’を飛ばした3番目の先行鋼管11aの上端部に挿入して固定する。これによって、作業が鋼管1本分進行した図3(a)の状態に戻るので、以下同様にして図3(a)〜(d)の作業を繰り返すことで、円弧形状に湾曲する打設予定線Cに沿って連設して、多数の鋼管11,11aが順次地中に圧入打設されることになる。
【0032】
そして、上述の構成を備える本実施形態の鋼管圧入工法によれば、クランプ装置12a,12bをサドル部13に2台のみ設けた自走式の鋼管圧入機10を用いて、さらに安定した状態で鋼管11を地中に圧入打設してゆくことが可能になる。
【0033】
すなわち、本実施形態によれば、鋼管圧入機10のサドル部には、一方の移動クランプ装置12aを、チャック装置17部側の他方の固定クランプ装置12bに隣接する位置から、先行鋼管11aの直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構14が設けられており、2台のクランプ装置12a,12bを、1本の先行鋼管11a’を飛ばしてこれの両側に配置された先行鋼管11aに固定した状態で、昇降圧入部18によって鋼管11を圧入するようになっているので、2台のクランプ装置12a,12bが、1本の先行鋼管11a’を挟んだ両側に、相当の間隔を保持した状態で先行鋼管11aに各々固定されることで、鋼管11を圧入打設する際のモーメント力による十分な大きさの圧入反力を、効率良く且つ効果的に得ることが可能になる。これによって、特に直径が例えば1300〜1500mm程度の比較的大口径の鋼管11を地中に圧入打設する場合でも、2台のクランプ装置12a,12bによって十分な大きさの圧入反力を確保して、さらに安定した状態で鋼管11を地中に圧入打設してゆくことが可能になる。
【0034】
また、本実施形態では、2台のクランプ装置12a,12bを、1本の先行鋼管11a’を飛ばしてこれの両側に配置された先行鋼管11aに固定して、圧入反力を得るようになっているので、図4に示すように、円弧形状に湾曲する打設予定線Cに沿って鋼管11,11aを連設して圧入打設して行く場合でも、クランプ装置12a,12bの連設方向に対して垂直な方向にクランプ装置12a,12bをスライド移動させる機構をサドル部13を設けて複雑な構造にすることなく、2台のクランプ装置12a,12bを、1本の先行鋼管11a’を挟んだ両側の先行鋼管11aに各々スムーズに固定させた簡易な構成によって、圧入反力を容易に得ることが可能になる。
【0035】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の鋼管圧入工法や鋼管圧入機は、立坑の周囲を囲う山留用の連続壁を鋼管を連設させて形成する場合の他、締切壁や仕切壁や護岸壁等、その他の種々の連続壁を鋼管を連設させて形成する際にも採用することができる。また、円弧形状の打設予定線に沿って鋼管を連設させる場合の他、直線状等、その他の種々の形状の打設予定線に沿って鋼管を連設させる際にも採用することができる。さらに、鋼管は、継手部22(図4)を介して互いに連結された状態で地中に圧入されるものの他、互いに連結されない状態で地中に圧入されるものであっても良い。互いに連結されない鋼管の場合には、鋼管圧入機に回転機構を設けて、回転させながら鋼管を地中に圧入することもできる。さらにまた、例えば直径が600〜1000mm程度の比較的小口径の鋼管を地中に圧入打設してゆく際にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 鋼管圧入機
11 鋼管
11a 先行鋼管
11a’ 飛ばされる先行鋼管
12a 固定クランプ装置(一方のクランプ装置)
12b 移動クランプ装置(他方のクランプ装置)
13 サドル部
14 クランプ装置移動機構(スライドガイドレール部)
15 スライドベース部
16 リーダ部(リーダマスト)
17 チャック装置
17a チャック片
18 昇降圧入部
19 クランプ爪
20 操作制御室
21 油圧シリンダ
22 継手部
C 打設予定線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行して地中に圧入打設された先行鋼管の上端部に着脱可能に固定される複数のクランプ装置を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられたリーダ部と、該リーダ部に対して昇降可能に設けられた、圧入される鋼管を把持するチャック装置を備える昇降圧入部とを含んで構成される、自走式の鋼管圧入機を用いた鋼管圧入工法において、
前記鋼管圧入機のサドル部には、前記クランプ装置が2台設けられていると共に、一方の前記クランプ装置を、前記チャック装置側の他方の前記クランプ装置に隣接する位置から、前記先行鋼管の直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構が設けられており、
前記2台のクランプ装置を、1本の前記先行鋼管を飛ばしてこれの両側に配置された前記先行鋼管の上端部に固定した状態で、前記昇降圧入部によって前記鋼管を圧入する鋼管圧入工法。
【請求項2】
前記先行鋼管及び前記圧入される鋼管は、円弧形状の打設予定線に沿って、円弧形状の平面形状を描くように連設して圧入打設されるようになっている請求項1記載の鋼管圧入工法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鋼管圧入工法に用いる鋼管圧入機であって、
先行して地中に圧入打設された先行鋼管の上端部に着脱可能に固定される複数のクランプ装置を備えるサドル部と、該サドル部に対してスライド移動可能に設けられたスライドベース部と、該スライドベース部に対して旋回可能に設けられたリーダ部と、該リーダ部に対して昇降可能に設けられた、圧入される圧入鋼管を把持するチャック装置を備える昇降圧入部とを含んで構成されており、
前記サドル部には、前記クランプ装置が2台設けられていると共に、一方の前記クランプ装置を、前記チャック装置側の他方の前記クランプ装置に隣接する位置から、前記先行鋼管の直径以上の長さに亘ってスライド移動可能にするクランプ装置移動機構が設けられている鋼管圧入機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246722(P2012−246722A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121434(P2011−121434)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(511132018)
【Fターム(参考)】