鋼管杭の防食施工方法
【課題】海洋構造物の鋼管杭とその外周面に形成した各層とを十分に密着させ、防食をより高度に行うことができる防食施工方法の提供。
【解決手段】海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程とを備える、防食施工方法。
【解決手段】海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程とを備える、防食施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭の防食施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯や干満帯は腐食の進行が早いため、表面に防食テープを巻き、またはさらに合成樹脂等の保護シートで被覆する防食施工方法が適用されている。
例えば特許文献1には、鋼管杭の外周面に密着して設けた防錆層と、該防錆層の外周面を覆う発泡プラスチック層と、該発泡プラスチック層を外周から加圧しその外周面を覆うチタンまたはチタン合金の薄板製の保護カバーとを有する複数の帯状の防食帯を、鋼管杭の飛沫帯・干満帯に縦方向に並べて配することを特徴とする、鋼管杭の防食施工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−302701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されたような従来の方法によれば、鋼管杭の防食施工を行うことができる。しかし、鋼管杭とその外周面に形成した各層との密着が不十分になり、防食も不十分となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(1)〜(6)である。
(1)海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、
前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、
前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、
前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程と
を備える、防食施工方法。
(2)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、さらに、それらの折返部を形成する各々の薄板の外周側に2つの補助棒を備え、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(3)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(4)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(5)前記保護層は、2以上の前記薄板を接合したものであり、また、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、
前記加圧工程は、
2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(6)前記保護層は、2以上の前記薄板を含み、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、さらに、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鋼管杭とその外周面に形成した各層とを十分に密着させ、防食をより高度に行うことができる防食施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯に、本発明の防食施工方法を施した状態を示す概略図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】横断面がC字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図4】態様1の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図5】態様2の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図6】別の、横断面がC字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図7】態様3の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図8】横断面がB字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図9】横断面がB字状のサヤ管の概略断面図である。
【図10】態様4の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図11】態様5の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層を内側へ向かって加圧する加圧工程とを備える、防食施工方法である。
【0010】
本発明の防錆層形成工程について説明する。
本発明の防錆層形成工程では、前記鋼管杭の外周面に密着するように防錆層を形成する。
防錆層は特に限定されず、例えば従来公知のものを用いることができるが、例えば市販の防錆剤(ペトロラタム、酸化重合樹脂、エポキシ樹脂など)を含浸した帯状の布を用いることができ、これを前記鋼管杭の外周面に巻き付けることで防錆層を形成することができる。
施工に際しては、例えば鋼管杭の表面付着物を除去し、サンドブラスト等で素地調整し、ペトロラタムのペーストを塗布し、その上からペトロラタムを含浸したテープを固く巻きつけて防錆層を形成することが好ましい。
【0011】
本発明のプラスチック層形成工程について説明する。
本発明のプラスチック層形成工程では、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成する。前記防錆層の外周面上に他の層を1層以上形成し、その外周面上にプラスチック層を形成してもよいが、前記防錆層の外周面に密着するようにプラスチック層を形成することが好ましい。
プラスチック層は、発泡プラスチック層であることが好ましい。例えば三次元の方向に連通した多数の孔を有する市販の発泡ポリエチレンからなる発泡プラスチックを用いることができる。
プラスチックからなる帯状のシートを前記防錆層の外周側に巻き付けることによって、プラスチック層を形成することができる。
【0012】
本発明の保護層形成工程について説明する。
本発明の保護層形成工程では、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する。耐食性金属は海水中で極めて耐食性が優れているために、長期間使用しても腐食による損傷がない。
前記プラスチック層の外周面上に他の層を1層以上形成し、その外周面上に保護層を形成してもよいが、前記プラスチック層の外周面に密着するように保護層を形成することが好ましい。
耐食性金属は特に限定されない。例えば耐食性金属として、チタン、チタン合金、ステンレスが挙げられ、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
耐食性金属の薄板としては板厚が0.3〜3.0mm、好ましくは0.6〜1.0mmのものが軽量であり施工時の取扱いが容易であるので好ましい。
また、薄板は2以上を接合したものであってもよい。前記鋼管杭が大径管である場合、帯状の耐食性金属の薄板も長尺のものとなり、施工における取扱いが厄介になるので、薄板は2以上を接合したものを用いることが好ましい。すなわち、短尺の帯状の耐食性金属の薄板を複数枚円周方向に相互に連結してもよい。薄板の接合方法は特に限定されず、例えば2枚の薄板の端部を抵抗溶接して接合することができる。また、折返部をサヤ管を用いて連結して、複数枚の耐食性金属の薄板を相互に連結することもできる。
【0013】
なお、施工に際しては、発泡ポリエチレン等のプラスチックのシートを一方の面に貼りつけた耐食性金属の薄板を予め作成し、プラスチックのシートを内側にしてこれを防錆層の外周側に巻きつけると、プラスチック層と保護層とを同時に簡易に形成することができるので好ましい。
【0014】
本発明の加圧工程について説明する。
本発明の加圧工程では、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する手段は特に限定されず、例えば従来公知の方法で加圧することができる。例えば、前記保護層を形成する薄板の両端を5〜50mmの幅で外向きに折り返して折返部を形成し、それら2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結する方法が挙げられる。例えば市販のベルト結束機を補助具として用いて、ベルトを帯状の耐食性金属の薄板の外周に回し、ベルトを締めつけると、両端の折返部を容易に突き合わせ状態になるまで接近させることができる。
【0015】
本発明では複数の帯状の防食層を鋼管杭の飛沫帯・干満帯に縦方向に並べて設置することが好ましい。この防食施工は、鋼管杭の表面に2m〜5mの長さにわたって行うことが好ましい。長さが2m〜5mの防食施工を、縦方向に分割しない一体物として形成する際は、使用する部材が大きく、また重くなるために施工が容易ではない。このため縦方向に分割させた複数の帯状の防食層を用いることが好ましい。
【0016】
また、このように複数の防食層を縦方向に並べて設置した場合、最下部の防食層の下であって、鋼管杭の干満帯よりも下方に受け台を設けることが好ましい。また、最下部の防食層は、受け台の上に、鋼管杭と保護層との間に電気的に繋がる部分がないように設置することが好ましい。例えば、受け台が金属製であると、鋼管杭と保護層とが電気的に繋がってしまう。この場合、鋼管杭が腐食しやすい。従って、受け台の上部に例えばプラスチック製のプレートを設置し、その上に最下部の防食層を設置することが好ましい。プラスチック製のプレートに代えて、例えばエポキシ樹脂のパテを受け台の上部に塗り、その上に最下部の防食層を設置することもできる。
【0017】
また、このように複数の防食層を縦方向に並べて設置した場合、縦方向に隣合う防食層は、重ね合わせて設置することが好ましい。重ね合わせると、防食層の縦方向の境目に流木や小舟が衝突しても防食帯は損傷し難い。また長期間の使用でプラスチック層が老化しても保護層の下部から落下し逸散し難く、防錆層やプラスチック層は長期間にわたって施工時と同じ形に保持されるからである。
【0018】
次に、本発明の防食施工方法を施した後の鋼管杭の具体例を、図1〜図3を用いて説明する。
図1は海洋構造物の鋼管杭1の飛沫帯・干満帯に、本発明の防食施工方法を施した状態を示す概略図であり、図2は図1におけるA−A断面図であり、図3は側面に開口91を有する横断面がC字状のサヤ管9の概略斜視図である。なお、各図の各部分の大きさやバランスは、実際とは異なる場合がある。
図1、図2に示すように、鋼管杭1の外周面に密着するように防錆層3が形成されており、その外周面に密着するようにプラスチック層5が形成されており、その外周面に密着するように保護層7が形成されている。また、保護層7は、その両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有し、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけて、側面に開口91を有する横断面がC字状のサヤ管9の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部が連結されている。
また、図1では鋼管杭1に2つの防食層が縦方向に並べて設置されている。
また、上部の防食層10と下部の防食層10´とは重ね合わせて設置されている。
また、最下部の防食層10´の下であって、鋼管杭1の干満帯よりも下方に受け台50が設けられている。また、受け台50は上部にプラスチック製のプレート52を有し、下部に鋼鉄製のスリーブ51を有しており、最下部の防食層10´は受け台50の上に設置されている。この場合、最下部の保護層7´と鋼管杭1との間は電気的に繋がっていない。
【0019】
本発明における好適態様について、以下に説明する。
【0020】
<態様1>
本発明における第1の好適態様(以下「態様1」ともいう。)について、図4を用いて説明する。図4は、態様1の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0021】
態様1では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有し、それらの折返部71、72を形成する各々の薄板の外面に密着するように、断面がU字状の薄板15、16を有し、さらに、それら各々の外表面に密着するように2つの補助棒11、12を備える。すなわち、図4に示すように、折返部71の外周側に補助棒11を備え、折返部72の外周側に補助棒12を備える。
【0022】
態様1における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、一方の薄板と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけ、一方の補助棒11と、各々の折返部71、72を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒12とをこの順にネジ18で貫いて締める。これによって、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧することができる。
【0023】
ここで、補助棒11、12と折返部71、72との間に存する、断面がU字状の短冊型の薄板15、16は、存在しなくてもよいが、存在したほうが好ましい。
補助棒は絶縁性材料(好ましくはエンプラやステンレス(例えば316L))からなるものであることが好ましい。断面がU字状の短冊型の薄板はFRPからなるものであることが好ましい。
【0024】
<態様2>
本発明における第2の好適態様(以下「態様2」ともいう。)について、図5、図6を用いて説明する。図5は、態様2の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)であり、図6は、側面にネジが取り付けられた、横断面がC字状のサヤ管19の概略斜視図である。
【0025】
態様2では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。
【0026】
態様2における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図5に示すように、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づける。そして、図5、図6に示すように、側面に開口291を有する横断面がC字状のサヤ管29の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部を連結する。さらに、サヤ管29の開口側へ伸びる、サヤ管29の側面に取り付けられたネジ25、26を締めることで、2つの折返部71、72をさらに近づけて、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
【0027】
ここで、サヤ管29は、開口291を挟むように1対のネジを有することが好ましい。また、図6では3対のネジが示されているが、ネジの数は限定されない。
【0028】
<態様3>
本発明における第3の好適態様(以下「態様3」ともいう。)について、図7〜9を用いて説明する。図7は、態様3の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)であり、図8は横断面がB字状のサヤ管39の概略斜視図であり、図9は、横断面がB字状のサヤ管におけるバネ構造を説明するための概略断面図である。
【0029】
態様3では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。
【0030】
態様3における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図7に示すように、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づける。そして、側面に開口391を有する横断面がB字状のサヤ管39の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して保護層7の両端部を連結する。
ここで、横断面がB字状のサヤ管はバネ構造を有している。すなわち、図9に示すように、開口391を広げる方向(図9における実線の矢印の方向)に力が加わって、サヤ管39が変形した場合(例えば図9に点線で示す位置まで変形した場合)、バネのように、サヤ管はその変形を戻そうとする(図9における点線の矢印)。この変形を戻そうとする力によって、折返部71と折返部72とをさらに近づけて、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
【0031】
<態様4>
本発明における第4の好適態様(以下「態様4」ともいう。)について、図10を用いて説明する。図10は、態様4の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0032】
態様4では、保護層10は、2以上の前記薄板を接合したものである。図10では保護層10は2枚の薄板(保護層7a、7b)を溶接(例えば抵抗溶接)して接合したものである。また、図10に示すように、プラスチック層5の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部40をその両端に有している。
【0033】
態様4における加圧工程では、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図10に示すように、締付部41と締付部42とを突き合わせるように近づけ、これらをボルト43とナット44とで締めることで、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
ここで締付部は、断面がL字型の薄板と保護層7の端部とを溶接することで形成することができる。
【0034】
<態様5>
本発明における第5の好適態様(以下「態様5」ともいう。)について、図11を用いて説明する。図11は、態様5の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0035】
態様5では、保護層10は、2以上の薄板を含み、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。また、図11に示すように、プラスチック層5の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部40をその両端に有している。
そして、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけて、前述の横断面がC字状のサヤ管9の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部が連結されている。
【0036】
態様5における加圧工程では、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、前述の態様4と同様であって、図11に示すように、締付部41と締付部42とを突き合わせるように近づけ、これらをボルト43とナット44とで締めることで、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
ここで締付部は、断面がL字型の薄板と保護層7の端部とを溶接することで形成することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 鋼管杭
3 防錆層
5 プラスチック層
7、7´、7a、7b 保護層
71、72 折返部
9、19、29、39 サヤ管
91、291、391 開口
10、10´ 防食層
11、12 補助棒
15、16 薄板
18 ネジ
25、26 ネジ
40、41、42 締付部
43 ボルト
44 ナット
50 受け台
51 スリーブ
52 プレート
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭の防食施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯や干満帯は腐食の進行が早いため、表面に防食テープを巻き、またはさらに合成樹脂等の保護シートで被覆する防食施工方法が適用されている。
例えば特許文献1には、鋼管杭の外周面に密着して設けた防錆層と、該防錆層の外周面を覆う発泡プラスチック層と、該発泡プラスチック層を外周から加圧しその外周面を覆うチタンまたはチタン合金の薄板製の保護カバーとを有する複数の帯状の防食帯を、鋼管杭の飛沫帯・干満帯に縦方向に並べて配することを特徴とする、鋼管杭の防食施工方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−302701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されたような従来の方法によれば、鋼管杭の防食施工を行うことができる。しかし、鋼管杭とその外周面に形成した各層との密着が不十分になり、防食も不十分となる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(1)〜(6)である。
(1)海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、
前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、
前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、
前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程と
を備える、防食施工方法。
(2)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、さらに、それらの折返部を形成する各々の薄板の外周側に2つの補助棒を備え、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(3)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(4)前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(5)前記保護層は、2以上の前記薄板を接合したものであり、また、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、
前記加圧工程は、
2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
(6)前記保護層は、2以上の前記薄板を含み、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、さらに、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、上記(1)に記載の防食施工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鋼管杭とその外周面に形成した各層とを十分に密着させ、防食をより高度に行うことができる防食施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯に、本発明の防食施工方法を施した状態を示す概略図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】横断面がC字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図4】態様1の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図5】態様2の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図6】別の、横断面がC字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図7】態様3の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図8】横断面がB字状のサヤ管の概略斜視図である。
【図9】横断面がB字状のサヤ管の概略断面図である。
【図10】態様4の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【図11】態様5の場合における鋼管杭および防食層の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について説明する。
本発明は、海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、前記保護層を内側へ向かって加圧する加圧工程とを備える、防食施工方法である。
【0010】
本発明の防錆層形成工程について説明する。
本発明の防錆層形成工程では、前記鋼管杭の外周面に密着するように防錆層を形成する。
防錆層は特に限定されず、例えば従来公知のものを用いることができるが、例えば市販の防錆剤(ペトロラタム、酸化重合樹脂、エポキシ樹脂など)を含浸した帯状の布を用いることができ、これを前記鋼管杭の外周面に巻き付けることで防錆層を形成することができる。
施工に際しては、例えば鋼管杭の表面付着物を除去し、サンドブラスト等で素地調整し、ペトロラタムのペーストを塗布し、その上からペトロラタムを含浸したテープを固く巻きつけて防錆層を形成することが好ましい。
【0011】
本発明のプラスチック層形成工程について説明する。
本発明のプラスチック層形成工程では、前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成する。前記防錆層の外周面上に他の層を1層以上形成し、その外周面上にプラスチック層を形成してもよいが、前記防錆層の外周面に密着するようにプラスチック層を形成することが好ましい。
プラスチック層は、発泡プラスチック層であることが好ましい。例えば三次元の方向に連通した多数の孔を有する市販の発泡ポリエチレンからなる発泡プラスチックを用いることができる。
プラスチックからなる帯状のシートを前記防錆層の外周側に巻き付けることによって、プラスチック層を形成することができる。
【0012】
本発明の保護層形成工程について説明する。
本発明の保護層形成工程では、前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する。耐食性金属は海水中で極めて耐食性が優れているために、長期間使用しても腐食による損傷がない。
前記プラスチック層の外周面上に他の層を1層以上形成し、その外周面上に保護層を形成してもよいが、前記プラスチック層の外周面に密着するように保護層を形成することが好ましい。
耐食性金属は特に限定されない。例えば耐食性金属として、チタン、チタン合金、ステンレスが挙げられ、チタンまたはチタン合金であることが好ましい。
耐食性金属の薄板としては板厚が0.3〜3.0mm、好ましくは0.6〜1.0mmのものが軽量であり施工時の取扱いが容易であるので好ましい。
また、薄板は2以上を接合したものであってもよい。前記鋼管杭が大径管である場合、帯状の耐食性金属の薄板も長尺のものとなり、施工における取扱いが厄介になるので、薄板は2以上を接合したものを用いることが好ましい。すなわち、短尺の帯状の耐食性金属の薄板を複数枚円周方向に相互に連結してもよい。薄板の接合方法は特に限定されず、例えば2枚の薄板の端部を抵抗溶接して接合することができる。また、折返部をサヤ管を用いて連結して、複数枚の耐食性金属の薄板を相互に連結することもできる。
【0013】
なお、施工に際しては、発泡ポリエチレン等のプラスチックのシートを一方の面に貼りつけた耐食性金属の薄板を予め作成し、プラスチックのシートを内側にしてこれを防錆層の外周側に巻きつけると、プラスチック層と保護層とを同時に簡易に形成することができるので好ましい。
【0014】
本発明の加圧工程について説明する。
本発明の加圧工程では、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する手段は特に限定されず、例えば従来公知の方法で加圧することができる。例えば、前記保護層を形成する薄板の両端を5〜50mmの幅で外向きに折り返して折返部を形成し、それら2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結する方法が挙げられる。例えば市販のベルト結束機を補助具として用いて、ベルトを帯状の耐食性金属の薄板の外周に回し、ベルトを締めつけると、両端の折返部を容易に突き合わせ状態になるまで接近させることができる。
【0015】
本発明では複数の帯状の防食層を鋼管杭の飛沫帯・干満帯に縦方向に並べて設置することが好ましい。この防食施工は、鋼管杭の表面に2m〜5mの長さにわたって行うことが好ましい。長さが2m〜5mの防食施工を、縦方向に分割しない一体物として形成する際は、使用する部材が大きく、また重くなるために施工が容易ではない。このため縦方向に分割させた複数の帯状の防食層を用いることが好ましい。
【0016】
また、このように複数の防食層を縦方向に並べて設置した場合、最下部の防食層の下であって、鋼管杭の干満帯よりも下方に受け台を設けることが好ましい。また、最下部の防食層は、受け台の上に、鋼管杭と保護層との間に電気的に繋がる部分がないように設置することが好ましい。例えば、受け台が金属製であると、鋼管杭と保護層とが電気的に繋がってしまう。この場合、鋼管杭が腐食しやすい。従って、受け台の上部に例えばプラスチック製のプレートを設置し、その上に最下部の防食層を設置することが好ましい。プラスチック製のプレートに代えて、例えばエポキシ樹脂のパテを受け台の上部に塗り、その上に最下部の防食層を設置することもできる。
【0017】
また、このように複数の防食層を縦方向に並べて設置した場合、縦方向に隣合う防食層は、重ね合わせて設置することが好ましい。重ね合わせると、防食層の縦方向の境目に流木や小舟が衝突しても防食帯は損傷し難い。また長期間の使用でプラスチック層が老化しても保護層の下部から落下し逸散し難く、防錆層やプラスチック層は長期間にわたって施工時と同じ形に保持されるからである。
【0018】
次に、本発明の防食施工方法を施した後の鋼管杭の具体例を、図1〜図3を用いて説明する。
図1は海洋構造物の鋼管杭1の飛沫帯・干満帯に、本発明の防食施工方法を施した状態を示す概略図であり、図2は図1におけるA−A断面図であり、図3は側面に開口91を有する横断面がC字状のサヤ管9の概略斜視図である。なお、各図の各部分の大きさやバランスは、実際とは異なる場合がある。
図1、図2に示すように、鋼管杭1の外周面に密着するように防錆層3が形成されており、その外周面に密着するようにプラスチック層5が形成されており、その外周面に密着するように保護層7が形成されている。また、保護層7は、その両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有し、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけて、側面に開口91を有する横断面がC字状のサヤ管9の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部が連結されている。
また、図1では鋼管杭1に2つの防食層が縦方向に並べて設置されている。
また、上部の防食層10と下部の防食層10´とは重ね合わせて設置されている。
また、最下部の防食層10´の下であって、鋼管杭1の干満帯よりも下方に受け台50が設けられている。また、受け台50は上部にプラスチック製のプレート52を有し、下部に鋼鉄製のスリーブ51を有しており、最下部の防食層10´は受け台50の上に設置されている。この場合、最下部の保護層7´と鋼管杭1との間は電気的に繋がっていない。
【0019】
本発明における好適態様について、以下に説明する。
【0020】
<態様1>
本発明における第1の好適態様(以下「態様1」ともいう。)について、図4を用いて説明する。図4は、態様1の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0021】
態様1では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有し、それらの折返部71、72を形成する各々の薄板の外面に密着するように、断面がU字状の薄板15、16を有し、さらに、それら各々の外表面に密着するように2つの補助棒11、12を備える。すなわち、図4に示すように、折返部71の外周側に補助棒11を備え、折返部72の外周側に補助棒12を備える。
【0022】
態様1における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、一方の薄板と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけ、一方の補助棒11と、各々の折返部71、72を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒12とをこの順にネジ18で貫いて締める。これによって、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧することができる。
【0023】
ここで、補助棒11、12と折返部71、72との間に存する、断面がU字状の短冊型の薄板15、16は、存在しなくてもよいが、存在したほうが好ましい。
補助棒は絶縁性材料(好ましくはエンプラやステンレス(例えば316L))からなるものであることが好ましい。断面がU字状の短冊型の薄板はFRPからなるものであることが好ましい。
【0024】
<態様2>
本発明における第2の好適態様(以下「態様2」ともいう。)について、図5、図6を用いて説明する。図5は、態様2の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)であり、図6は、側面にネジが取り付けられた、横断面がC字状のサヤ管19の概略斜視図である。
【0025】
態様2では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。
【0026】
態様2における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図5に示すように、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づける。そして、図5、図6に示すように、側面に開口291を有する横断面がC字状のサヤ管29の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部を連結する。さらに、サヤ管29の開口側へ伸びる、サヤ管29の側面に取り付けられたネジ25、26を締めることで、2つの折返部71、72をさらに近づけて、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
【0027】
ここで、サヤ管29は、開口291を挟むように1対のネジを有することが好ましい。また、図6では3対のネジが示されているが、ネジの数は限定されない。
【0028】
<態様3>
本発明における第3の好適態様(以下「態様3」ともいう。)について、図7〜9を用いて説明する。図7は、態様3の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)であり、図8は横断面がB字状のサヤ管39の概略斜視図であり、図9は、横断面がB字状のサヤ管におけるバネ構造を説明するための概略断面図である。
【0029】
態様3では、保護層10は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。
【0030】
態様3における加圧工程では、2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図7に示すように、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づける。そして、側面に開口391を有する横断面がB字状のサヤ管39の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して保護層7の両端部を連結する。
ここで、横断面がB字状のサヤ管はバネ構造を有している。すなわち、図9に示すように、開口391を広げる方向(図9における実線の矢印の方向)に力が加わって、サヤ管39が変形した場合(例えば図9に点線で示す位置まで変形した場合)、バネのように、サヤ管はその変形を戻そうとする(図9における点線の矢印)。この変形を戻そうとする力によって、折返部71と折返部72とをさらに近づけて、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
【0031】
<態様4>
本発明における第4の好適態様(以下「態様4」ともいう。)について、図10を用いて説明する。図10は、態様4の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0032】
態様4では、保護層10は、2以上の前記薄板を接合したものである。図10では保護層10は2枚の薄板(保護層7a、7b)を溶接(例えば抵抗溶接)して接合したものである。また、図10に示すように、プラスチック層5の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部40をその両端に有している。
【0033】
態様4における加圧工程では、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、図10に示すように、締付部41と締付部42とを突き合わせるように近づけ、これらをボルト43とナット44とで締めることで、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
ここで締付部は、断面がL字型の薄板と保護層7の端部とを溶接することで形成することができる。
【0034】
<態様5>
本発明における第5の好適態様(以下「態様5」ともいう。)について、図11を用いて説明する。図11は、態様5の場合における鋼管杭1および防食層10の概略断面図(図1におけるA−A断面図である図2に相当する図)である。
【0035】
態様5では、保護層10は、2以上の薄板を含み、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部71、72を有する。また、図11に示すように、プラスチック層5の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部40をその両端に有している。
そして、折返部71と折返部72とを突き合わせるように近づけて、前述の横断面がC字状のサヤ管9の中へ2つの折返部71、72を一緒に挿入して、保護層7の両端部が連結されている。
【0036】
態様5における加圧工程では、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する。
すなわち、前述の態様4と同様であって、図11に示すように、締付部41と締付部42とを突き合わせるように近づけ、これらをボルト43とナット44とで締めることで、保護層7によってプラスチック層5を内側へ向かって加圧する。
ここで締付部は、断面がL字型の薄板と保護層7の端部とを溶接することで形成することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 鋼管杭
3 防錆層
5 プラスチック層
7、7´、7a、7b 保護層
71、72 折返部
9、19、29、39 サヤ管
91、291、391 開口
10、10´ 防食層
11、12 補助棒
15、16 薄板
18 ネジ
25、26 ネジ
40、41、42 締付部
43 ボルト
44 ナット
50 受け台
51 スリーブ
52 プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、
前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、
前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、
前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程と
を備える、防食施工方法。
【請求項2】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、さらに、それらの折返部を形成する各々の薄板の外周側に2つの補助棒を備え、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項3】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項4】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項5】
前記保護層は、2以上の前記薄板を接合したものであり、また、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、
前記加圧工程は、
2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項6】
前記保護層は、2以上の前記薄板を含み、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、さらに、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項1】
海洋構造物の鋼管杭の飛沫帯・干満帯の外周面に、防錆層、プラスチック層および保護層を含む防食層を形成して防食する防食施工方法であって、
前記鋼管杭の外周面に防錆層を密着させて形成する防錆層形成工程と、
前記防錆層の外周側にプラスチック層を形成するプラスチック層形成工程と、
前記プラスチック層の外周側に、耐食性金属の薄板からなる保護層を形成する保護層形成工程と、
前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する加圧工程と
を備える、防食施工方法。
【請求項2】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、さらに、それらの折返部を形成する各々の薄板の外周側に2つの補助棒を備え、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、一方の補助棒と、各々の折返部を形成する2枚の薄板と、他方の補助棒とをこの順にネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項3】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、前記サヤ管の開口側へ伸びる、前記サヤ管の側面に取り付けられたネジを締めることで、2つの折返部をさらに近づけて、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項4】
前記保護層は、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がB字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結することで前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項5】
前記保護層は、2以上の前記薄板を接合したものであり、また、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、
前記加圧工程は、
2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【請求項6】
前記保護層は、2以上の前記薄板を含み、前記プラスチック層の外周側に設置した際に、内周側から外周側への方向へ伸びる締付部をその両端に有し、さらに、その薄板の両端を外向きに折り返して形成した折返部を有し、
前記加圧工程は、
2つの前記折返部を突き合わせるように近づけ、側面に開口を有する横断面がC字状のサヤ管の中へ2つの折返部を一緒に挿入して前記保護層の両端部を連結し、さらに、2つの前記締付部を突き合わせるように近づけ、これらをネジで貫いて締めることで、前記保護層によって前記プラスチック層を内側へ向かって加圧する工程である、請求項1に記載の防食施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−57411(P2012−57411A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203446(P2010−203446)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000227261)日鉄防蝕株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000227261)日鉄防蝕株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]