説明

鋼管柱、取付け部材、及び根かせ部材

【課題】 コンクリートを打設することなく鋼管柱の沈下を防止できる鋼管柱及びこれを固定するための取付け部材並びに根かせ部材を提供する。
【解決手段】 鋼管柱12は、地中に設けられた根かせ部材14に取付け部材13によって固定される。鋼管柱12には、取付け部材13が接触する部位12aの直上に所定の大きさの突起部15が設けられている。取付け部材13は、鋼管柱12に接触する面に滑り止め部材20が設けられている。根かせ部材14は、鋼管柱12に接触する面に、鋼管柱12の外周面12bと略合致する曲面状凹部14cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を架設するために用いられる鋼管柱及びこれを固定させるための取付け部材並びに根かせ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電線や通信線を架設するための電柱には、コンクリート製のものが多く用いられている。しかし、コンクリート製の電柱(以下「コンクリート柱」という)は、幅の狭い道路や街角等では電柱の運搬や設置のための作業スペースを確保するのが困難或いは不可能な場合がある。そこで、コンクリート柱の代わりに鋼管柱が用いられる。
【0003】
鋼管柱とは、長さ 8 m 程度の円形断面の鋼管から成る電柱である。必要に応じて、2 本以上の鋼管柱を繋ぎ合わせることもある。
【0004】
図7を参照して、鋼管柱の設置方法について説明する。まず、鋼管柱2の根元部を地面6から通常,長さの6分の1(15mの電柱の場合、2.5 m)の深さまで埋め込む。次に、地下約 0.5 m の深さに埋設された「根かせ」と称される横長のコンクリート製支持部材4に、「Uバンド」と称される略U字形の金属製ベルト3を用いて、鋼管柱2を取り付ける。詳しくは、Uバンド3を鋼管柱2に巻きつけ、ボルト及びナット(ともに図示しない)を用いてUバンド3を締め付け、根かせ4に固定することにより、鋼管柱2を地中に支持する。さらに、鋼管柱2に電線5を架設したときに電線5の張力によって鋼管柱2が倒れることを防ぐために、鋼管柱2の上端部2aと地面6との間で斜めに支線7を張設し、その地面側の先端7aを地下に埋設されたアンカ8と称される錘部材に連結して固定する。ただし、鋼管柱2の設置場所が軟弱地盤の場合には、鋼管柱2が支線7の張力によって沈下することを防ぐために、鋼管柱2を設置する前に設置位置を中心に地面を掘り下げ、コンクリート9を打設する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コンクリートを打設する場合には、コンクリートが固まるのに数日かかるため、作業効率が悪い。また、コンクリート打設のための費用がかかるという問題もある。
【0006】
本発明は、コンクリートを打設することなく鋼管柱の沈下を防止できる鋼管柱及びこれを固定するための取付け部材並びに根かせ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼管柱は、地中に設けられた根かせ部材に取付け部材によって固定されるものであって、前記取付け部材が接触する部位の直上に所定の大きさの突起部が設けられていることを特徴とする。ここでいう所定の大きさとは、取付け部材を鋼管柱に接触させて取り付ける際に取付け部材と鋼管柱との間に発生する1 mm 程度の隙間よりも大きいことをいい、前記取付け部材の厚さと同じ程度が好ましい。このとき、前記突起部は溶接により取り付けられていることにしてもよい。これにより、突起部を鋼管柱に容易に取り付けることができる。また、前記突起部は、例えば、前記部位に所定の間隔で配置された略半球体或いは略直方体で形成できる。さらに、前記突起部は前記部位に巻きつけられた板で形成してもよく、これにより突起部のそれぞれの大きさを容易に揃えることができる。
【0008】
本発明の取付け部材は、地中に設けられた根かせ部材に固定される鋼管柱を固定させるのに用いられるものであって、前記鋼管柱が接触する面に滑り止め部材を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の根かせ部材は、取付け部材によって鋼管柱を固定するために地中に設置されるものであって、前記鋼管柱が接触する面に、前記鋼管柱の外周面と略合致する曲面状凹部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の鋼管柱によれば、取付け部材によって根かせ部材に固定させたときに、鋼管柱に設けられた突起部が前記取付け部材の上に載って鋼管柱の下方向の滑りを妨げるので、コンクリートを打設することなく鋼管柱の沈下を防止することができる。
【0011】
本発明の取付け部材によれば、鋼管柱を根かせ部材に固定させたときに、鋼管柱に接触する面に設けられた滑り止め部材が鋼管柱の下方向の滑りを妨げるので、コンクリートを打設することなく鋼管柱の沈下を防止することができる。
【0012】
本発明の根かせ部材によれば、取付け部材によって鋼管柱を固定させたとき、着座部が鋼管柱の外周面と略合致するため、より強く固定されて鋼管柱の下方向の滑りを妨げるので、コンクリートを打設することなく鋼管柱の沈下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、実施例の取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に取り付ける方法について説明する。図1は、実施例の鋼管柱を示す斜視図である。図2は、実施例の取付け部材を示す斜視図である。図3は、実施例の根かせ部材を示す斜視図である。図4は、取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に固定させた状態の全体構成を示す斜視図である。図5はその正面図、図6はその平面図である。
【0014】
図1に示される鋼管柱12は、取付け部材13が接触する部位12aの直上に、所定の大きさの突起部15を有する。
【0015】
突起部15は、取付け部材13の厚さと同程度の突出高さを有する、略半球状の金属部材であって、鋼管柱12に溶接で固着されている。その高さは、取付け部材13を鋼管柱12に接触させて取り付ける際に取付け部材13と鋼管柱12との間に発生する1 mm 程度の隙間よりも大きいことが好ましい。その位置は、取付け部材13の上面13aに接していて(図5)、かつ、鋼管柱12の根かせ部材14とは反対側の外周面12a上であって(図6)、等間隔に配列されている。なお、鋼管柱12を根かせ部材14にしっかりと固定するためには、根かせ部材14に向かう外周面12b上には突起部15が存在しないことが望ましい。突起部15の形状は、略直方体であってもよく、取付け部材13が鋼管柱12に接触する部位12aに巻きつけられた板であってもよい。また、突起部15の数は5個でなくてもよく、多ければ鋼管柱の下方向の滑りを妨げる力がさらに大きくなる。
【0016】
図2に示される取付け部材13は、図7のUバンド3の代わりに使用されるものである。取付け部材13は、略U字形の金属製部材であって、その両端に取り付けられたボルト17と、その先端に取り付けられるナット18とワッシャ19とを有している。
【0017】
取付け部材13は、鋼管柱12の外周面12aと略合致するような略U字形をしている。内側面には、滑り止め部材20を有している(図の斜線部)。滑り止め部材20として、紙やすりに用いられる砥粒が塗布されていてもよいし、ゴムテープが貼付されていてもよいし、スリット加工が施されていてもよい。
【0018】
図6に示されるように、取付け部材13の両端に取り付けられたボルト17は、根かせ部材14に設けた貫通孔14aを貫通して、裏面14bでナット18及びワッシャ19にて締め付けられる。これによって、取付け部材13によって鋼管柱12を根かせ部材14に固定し、鋼管柱12がぐらつかないように、ナット18を強固に締め付ける。
【0019】
図3に示される根かせ部材14は、横方向に細長い直方体のコンクリート製の部材である。図6に示されるように、根かせ部材14の平面形状は、鋼管柱に接する側の面の中央部が厚くなっていて、この中央部から左右の両端に向かって薄くなるように傾斜している。そして、中央部は、鋼管柱12の外周面12bと略合致する曲面状凹部14cとなっており、この形状によって鋼管柱12はしっかり固定される。また、傾斜部には、取付け部材13のボルト17を貫通させるための貫通孔14aが設けられている。
【0020】
次に、図4〜図6を参照して、実施例の取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に固定させる方法を説明する。まず、鋼管柱12を立設し、鋼管柱12の外周面12bを地下に埋設された根かせ部材14の曲面状凹部14cに接触させる。次に、取付け部材13の上面13aが鋼管柱12の突起部15に接し、かつ取付け部材13の内側面の円弧部分が鋼管柱12の外周面12aに接触する位置で取付け部材13を保持して、ボルト17を根かせ部材14の貫通孔14aを貫通させる。最後に、取付け部材13のボルト17を根かせ部材14の裏面14bでナット18及びワッシャ19で強固に締め付ける。
【0021】
以上、実施例の鋼管柱、取付け部材及び根かせ部材を同時に使用する場合について説明したが、例えば、実施例の取付け部材を用いて従来の鋼管柱を従来の根かせ部材に固定する組合わせでもよく、実施例を個別に従来の鋼管柱、取付け部材及び根かせ部材と適宜組み合わせて使用してもよい。また、鋼管柱は、取付け部材が接触する部位に上述の滑り止め部材を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例の鋼管柱を示す斜視図。
【図2】実施例の取付け部材を示す斜視図。
【図3】実施例の根かせ部材を示す斜視図。
【図4】取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に固定させた状態の全体構成を示す斜視図。
【図5】取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に固定させた状態の全体構成を示す正面図。
【図6】取付け部材を用いて鋼管柱を根かせ部材に固定させた状態の全体構成を示す平面図。
【図7】従来の鋼管柱設置方法の説明図。
【符号の説明】
【0023】
2:鋼管柱、3:Uバンド、4:根かせ、5:電線、6:地面、7:支線、8:アンカ、9:コンクリート、12:鋼管柱、13:取付け部材、14:根かせ部材、15:突起部材、17:ボルト、18:ナット、19:ワッシャ、20:滑り止め部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設けられた根かせ部材に取付け部材によって固定される鋼管柱であって、前記取付け部材が接触する部位の直上に所定の大きさの突起部が設けられていることを特徴とする鋼管柱。
【請求項2】
請求項1記載の鋼管柱において、
前記突起部は、前記部位に巻きつけられた板から成ることを特徴とする鋼管柱。
【請求項3】
地中に設けられた根かせ部材に鋼管柱を固定させるのに用いられる取付け部材であって、
前記鋼管柱が接触する面に滑り止め部材を有することを特徴とする取付け部材。
【請求項4】
取付け部材によって鋼管柱を固定するために地中に設置される根かせ部材であって、
前記鋼管柱が接触する面に、前記鋼管柱の外周面と略合致する曲面状凹部を有することを特徴とする根かせ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−182730(P2007−182730A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2539(P2006−2539)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】