説明

鋼製煙突の分離及び解体工法

【課題】ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染されている焼却施設の解体と撤去に際し、鋼製煙突の分離及び解体を焼却施設の解体と撤去の養生に先行して行ない、ダイオキシン類や重金属類等の有害物の飛散を防止する分離及び解体工法を提供する。
【解決手段】鋼製煙突と連結されている誘引送風機のダクト又はケーシングへ集塵機のダクトを接続し、鋼製煙突の周側面の上下に吊り手段を設備すると共に、カバー材で鋼製煙突の上端開口を密閉し、鋼製煙突側からのダクトと前記誘引送風機側からのダクトとの連結部の外周面にシート材を装着し、集塵機を運転して煙突内部を減圧状態に維持した状態で、前記鋼製煙突と前記誘引送風機とを前記連結部で離間し、前記シートの収縮部分の略中央を二箇所にわたって密封した上で、その中間を切断し、鋼製煙突の底部のアンカーフランジを基礎から分離して同鋼製煙突を吊り上げつつ、横倒しする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染されている焼却施設の解体と撤去に際し、鋼製で成る煙突(以下、単に鋼製煙突と云う。)を分離及び解体する工法の技術分野に属し、更に云うと、前記鋼製煙突の分離及び解体を焼却施設の解体と撤去の養生に先行して行ない、ダイオキシン類や重金属類等の有害物が周辺に飛散することを可及的に防止する分離及び解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染されている焼却施設における、煙突を分離し解体する場合、前記煙突は特に汚染状態が劣悪で、地上の高さが大きいので、解体時に周囲に有害物を飛散させてしまう虞があり、作業環境及び周辺環境に対して格別に注意を払う必要がある。
近年、ダイオキシン類や重金属類等が付着した煙突の解体作業にはダイオキシン類にばく露することを防止する「廃棄物焼却施設内作業におけるばく露防止対策要綱」が制定され厳しい基準が課せられている。
その内容を要約すると、解体作業に伴って生じるダイオキシン類等で汚染された空気や粉じんなどはチャコールフィルターなどで適切な除去処理を行った上で排出基準に従って大気中へ排出すべきであり、ダイオキシン類の濃度によって管理区域を設定し、外部環境と隔離するために養生した各区分内で解体作業することが求められている。
【0003】
周辺環境への影響を最小限に止める目的で特許文献1には、鉄筋コンクリートの外筒及びその径方向内側に煉瓦壁を形成したRC造の煙突を分離、解体する際、前記煙突のダクト(煙道口)に集塵機を接続し、煙突の上端開口にカバー材を装着して内部を密閉し、前記外筒と煉瓦壁との間に軽量発泡モルタルを充填し、減圧状態を保ったまま、煙道内の洗浄を行い、煙突を短尺切断加工により順次切断し、しかる後に解体作業所へ移動させて安全に解体処理する工法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−121906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、煙突の分離及び解体時にダイオキシン類や重金属類等の有害物を大気中へ飛散することを最小限に防止している点は認められる。しかし、この工法は鉄筋コンクリートで外筒を形成されたRC造の煙突を対象とするものであり、鋼製で成る煙突について実施する内容ではないし、鋼製煙突を短尺切断することは至難である。
【0006】
また、煙突を横倒しせずに短尺切断して分離、解体するので、足場の設置、洗浄機械の設置等の高所での危険な作業が長く続き安全性の問題が危惧される。加えて、明細書の段落番号[0030]には、煙突の切断作業時に粉じんの発生による周辺環境や作業者への汚染を防止するべく、仮囲いを煙突より高く構築することが記載されている。そのように高い仮囲いを構築することは非常に面倒で危険であるから、作業の長期化と経済的な負担が多い。
【0007】
特にダイオキシン類や重金属類等の濃度が高い場合は、上述したように焼却施設全体を密閉状態に養生する事が定められており、せいの高い煙突が存在すると養生作業の工数が増え、作業性と経済性が著しく悪いものとなる。
更に、煙突の外筒と煉瓦壁との間に充填された軽量発泡モルタルは、解体後は余計な廃棄物となりその処理作業や処理に係るコストを増やす要因となっている。
【0008】
本発明の目的は、ダイオキシン類や重金属類等等の有害物で汚染されている焼却施設の鋼製煙突を、焼却施設の解体と撤去及び該施設全体の養生に先行して分離及び解体し、ダイオキシン類や重金属類等の有害物の大気中への飛散を可及的に防止し、大幅な工期の短縮とコストの削減を可能とする鋼製煙突の分離及び解体工法を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、煙突分離に係る吊り材及びカバー材の装着を地上で行なって、不要な高所作業を削除し安全な作業をならしめる鋼製煙突の分離及び解体工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る鋼製煙突の分離及び解体工法は、
ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染された焼却施設の解体に際し、鋼製で成る煙突を先行して分離し解体する工法であって、
前記鋼製煙突と連結されている誘引送風機のダクト又はケーシングへ集塵機のダクトを接続する工程と、
前記鋼製煙突の周側面の上下に吊り手段を設備すると共に、カバー材で鋼製煙突の上端開口を密閉する工程と、
前記鋼製煙突側からのダクトと前記誘引送風機側からのダクトとの連結部の外周面にシート材を装着する工程と、
前記集塵機を運転して煙突内部を減圧状態に維持した状態で、前記鋼製煙突と前記誘引送風機とを前記連結部で離間し、前記シートの収縮部分の略中央を二箇所にわたって密封した上で、その中間を切断する工程と、
前記鋼製煙突の底部のアンカーフランジを基礎から分離して同鋼製煙突を吊り上げつつ、横倒しする工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法において、
鋼製煙突を管理区域内に置き内部を洗浄した後に、解体する工程を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法において、
鋼製煙突の上部へ適用する吊り手段として、同煙突に嵌める円形状の吊り材に、複数のリング形状のワイヤー通し具を設け、上位のワイヤーの端部及び下位のワイヤーの端部は前記ワイヤー通し具に連結されており、同上位のワイヤーの上端はクレーンのフックへ掛けていること、
前記鋼製煙突の下部へ適用する吊り手段として、前記下位のワイヤーの下端を煙突のアンカーフランジの補強材の孔に取り付けて、前記クレーンにより鋼製煙突を吊り上げ可能とすることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1又は3に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法において、
上位のワイヤーの端部及び下位のワイヤーの端部は、着脱自在な連結具を介してワイヤー通し具に連結されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1又は3又は4に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法において、
鋼製煙突の上部へ適用する吊り手段の吊り材には、内部に糊状の接着材を塗布したカバー材を装備し、遠隔操作により同吊り材の内径を大小に変化させて煙突外周面へ定着する定着手段を装備しておき、前記カバー材及び吊り材をクレーンで吊り上げて鋼製煙突の上端へ吊り込み、前記定着手段の遠隔操作により吊り材及びカバー材を鋼製煙突へ定着することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法において、
集塵機は、誘引送風機のダクト又はケーシングの点検口に接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に記載した発明に係る鋼製煙突の分離及び解体工法は、誘引送風機のダクト又はケーシングへ集塵機のダクトを接続し、鋼製煙突の側周面の上下に吊り手段を設備し、カバー材で上端開口を密閉し、鋼製煙突側からのダクトと前記誘引送風機側からのダクトの連結部の周側面にシート材を装着し、集塵機により減圧状態に維持したまま、両者を前記連結部で離間し、密封し切断した後、煙突を基礎から分離して横倒しして解体する工法としたので、焼却施設の解体と撤去及び該施設全体の養生に先行して鋼製煙突の分離ができる。したがって、ダイオキシン類の濃度が高い焼却施設全体を密閉状態に養生する必要がある場合には特に、せいの高い煙突の養生を省け、大幅な工期短縮とコストの削減を実現することができる。
【0017】
また、鋼製煙突の分離作業時に生じるダイオキシン類や重金属類等を含んだ粉じんは予め集塵機内へ全て吸収させて、有害物を煙突から大気中へ飛散させることを可及的に防止できる。
【0018】
請求項5に記載した発明によれば、吊り材には、内部に糊状の接着材を塗布したカバー材と、遠隔操作により吊り材の内径を大小に変化させて煙突の外周面へ定着する定着手段とを装備しておき、前記カバー材及び吊り材を吊り上げて鋼製煙突の上端へ吊り込み、前記定着手段の遠隔操作により吊り材及びカバー材を鋼製煙突へ定着したので、鋼製煙突の分離に係る吊り材及びカバー材の装着を地上で行うことができ危険な高所作業を削減して安全面と作業効率を飛躍的に改善できる。
【0019】
請求項6に記載した発明によれば、集塵機は、誘引送風機のダクト又はケーシングの点検口へ取り付けるので、ダイオキシン類の再合成を誘引する火気の使用によるダクトの開口部の設置が不要となり、作業員の安全確保とダイオキシン類の更なる合成及び飛散を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染されている焼却施設の解体に際し、鋼製で成る煙突を先行して分離し解体する工法である。
前記鋼製煙突2と連結されている誘引送風機3のダクト31又はケーシング32へ集塵機4のダクト40を接続する。
前記鋼製煙突2の側周面の上下に吊り手段5を設備すると共に、カバー材7で鋼製煙突2の上部開口を密閉する。
前記鋼製煙突2側からのダクト20と前記誘引送風機3側からのダクト31との連結部Bの外周面にシート9を装着する。
前記集塵機4を運転して煙突内部を減圧状態に維持した状態で、前記鋼製煙突2と前記誘引送風機3とを連結部Bで離間し、前記シート9の収縮部分の略中央を二箇所にわたって密封した上で、その間を切断する。
鋼製煙突2の底部のアンカーフランジ22を基礎14から分離して同鋼製煙突2を吊り上げ、横倒しする。
【実施例1】
【0021】
本発明に係る鋼製煙突の分離及び解体工法の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明は、ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染されている焼却施設1の解体・撤去に際し、鋼製で成る煙突2(以下、単に鋼製煙突2と云う。)を先行して分離し解体する工法として実施される。特に図1に示すように、ダイオキシン類や重金属類等の濃度が高い焼却施設1の全体を取り囲む養生を仮設して管理区域Aを構築し、その中で解体作業を行う必要がある場合に、前記焼却施設1の養生の仮設に先行して鋼製煙突2を管理区域A内の地上へ横倒しにして解体を進め、もって養生を煙突の高さまで仮設しないで済ませることを特徴とする。
【0022】
前記鋼製煙突2を焼却施設1から分離し解体する概略手順を図2に示し、図3〜図10にその様態を示した。
図3Aは、鋼製煙突2が焼却施設1の一部として稼働している状態を示している。鋼製煙突2は誘引送風機3と連結されており、焼却炉に生じた煙を鋼製煙突2の上端開口21から排出している。鋼製煙突2と誘引送風機3とは、連結部Bで接続されている。連結部Bは、鋼製煙突2側から伸びるダクト20の端部に設けられたフランジ継手であり、誘引送風機3側から伸びるダクト31とボルトで接合されている。
【0023】
図3Bは、鋼製煙突2を分離する前工程のステップ101(以下単にSと省略する。図2参照)として、前記誘引送風機3のファンが内蔵されているケーシング32に、集塵機4のダクト40を接続した状態を示している。前記集塵機4の接続方法としては、例えば、誘引送風機のケーシング32の点検口(図示省略)へ集塵機4のダクト40を差し入れて取り付ける。その理由は、煙突内の負圧化を効果的に可能にする距離にあること、及びダイオキシン類の再合成を誘引する(200〜400℃近郊)火気の使用による開口部の設営を不要にできるからである。こうして作業員の安全確保とダイオキシン類の更なる合成、及び飛散を防止できる。勿論、集塵機4のダクト40は直接ダクト31の点検口に取り付けて実施しても良い。前記集塵機4は例えば、「ジェットダスターEJD5F型」、「JETDUSTER」と称されるエバラ炉内清掃用超微細粉塵対策型集塵機を用いることが好ましい。
上記のように取り付けた後、サブステップ201(以下、SBと省略する。)で集塵機4の稼働を開始する。
【0024】
次にS102で、上記鋼製煙突2には、図4に示すように、その周側面の上下に吊り手段5が用意される。前記吊り手段5は、全て地上で用意して鋼製煙突2へ適用できるように工夫した構成に特徴がある。具体的には、鋼製煙突2の上部へ適用する吊り手段5Aとして、図5、図6に示すように鋼製煙突2に嵌める円形状の吊り材6が、その周方向にほぼ等間隔で4つ(但し、4つに限らない。)のリング形状のワイヤー通し具60が設けられている。鋼製煙突2を吊るワイヤーは、前記吊り材6より上方へクレーン15のフック15bで吊られる上位のワイヤー11と、吊り材6から煙突下端部まで配置する下位のワイヤー10とに大別され、上位のワイヤー11の下端部および下位のワイヤー10の上端部は前記ワイヤー通し具60に連結されている。具体的には、図5A、Bに示すように、上位のワイヤー11、下位のワイヤー10の各端部に形成された環状のシンブル11a、10aが、着脱可能な連結具12を介してワイヤー通し具60と連結されている。前記連結具12とは例えばシャックル、カラナビ等である。前記上位のワイヤー11…は、その上端部11a’…をクレーン15のブーム15aのフック15bへ掛けている。
【0025】
前記吊り材6には、鋼製煙突2の上端開口21を密閉するカバー材7を番線又はテープ材(図示省略)で装備すると共に、同吊り材6の鋼製煙突2への締め付け機能及び同シート材7の接着機能を発揮させる定着手段8が設けられている。
具体的に定着手段8は、遠隔操作で同吊り材6の内径を大小に変化させて鋼製煙突2の外周面へ締め付けるモーター等の受信機制御機器で成る巻き締め機80と、鋼製煙突2の周側面に配置され遠隔操作によりマイクロ波等を流すベルト81とから構成されている。前記巻き締め機80は、図6A、Bに示すように吊り材6の切込延長部61、61に取り付けてその内径の大小を可変する。
上記吊り材6に装備されたカバー材7の内部に糊状の接着材を塗布しておき、前記ベルト81からマイクロ波が流れることにより前記接着剤が低温にて反応し、巻き締め機80の締め付けと相まって、同カバー材7が鋼製煙突2へしっかりと接着する工法である。つまり、火気を使用せずに接着する工法とされている。上記定着手段8はこの限りではなく、構成煙突2が軽量の場合には単に締め付け機80のみで実施することもできる。
上記吊り手段5Aの用意は上述した構成としたので、上記ブーム15aのフック15bを作業者の高さまで下げることにより全て地上で行うことができる。
【0026】
次に、鋼製煙突2の下部へ適用する吊り手段5Bとして、上記下方に垂れる下位のワイヤー10の下端部のシンブル10a’に取り付けたシャックル13を、図7A、Bに詳示したように、鋼製煙突2の底部のアンカーフランジ22の補強材23の孔23aに取り付けて、前記クレーン15により鋼製煙突2を吊り上げ可能に用意する。この作業もやはり地上で行う。
【0027】
次にS103において、上記のように地上で用意された吊り手段5Aの吊り材6及びカバー材7を、クレーン15のブーム15aにより鋼製煙突2の上端開口21を越える高さまで吊り上げ、図4に示すように、前記カバー材7を上端開口21へ覆い被せて配置する。
そして、集塵機4を稼働させて吸引を行ない、前記カバー材7が鋼製煙突2の周側面に張り付く状態とする。この際カバー材7の内側へ塗布した上記接着剤によりある程度の接着効果が得られる。そして、地上からリモートコントロール等の遠隔操作手段で前記定着手段8の巻き締め機80を作動させて、吊り材6を鋼製煙突2の周側面に締め付けて定着する(図6A、B参照)と共に、やはり遠隔操作でベルト81にマイクロ波を発生させて、前記カバー材7の接着剤の接着反応を促し、同カバー材7を鋼製煙突2の周側面に確実に定着させる。
したがって、上下の吊り手段5A、5Bの用意は全て地上で行え、カバー材7、吊り材6の定着作業も地上から行えるので、危険な高所作業を削減して安全面と作業効率を飛躍的に改善できる。
【0028】
次に、S104では、図3Bに示すように前記鋼製煙突2のダクト20と前記誘引送風機3のダクト31との連結部Bの外周面へ、同連結部Bのフランジボルトの本緩めを行った上で、ジャバラシート材9を粘着テープ等により装着する。具体的に前記シート材9は、フランジ継手(連結部B)で分離しやすいようにシートに余裕を持たせるジャバラ状にして同連結部Bの外周面に装着する。
【0029】
上記のように準備した後、S105において、図3Cに示すように、前記集塵機4を稼働させ煙突内の上端から下方へ向かう空気の流れを生じさせて煙突内を減圧状態に維持させ、前記鋼製煙突2と誘引送風機3とを前記連結部Bで所定の距離だけ離間する。具体的には、図8に示すように、鋼製煙突2側のダクト20を右方向に引いて(図示省略)、若しくは誘引送風機3側のダクト31を左方向へ引いてダクト20と切り離すと、集塵機4の吸引力で切り離された部分を覆っている前記シート材9が収縮する。その収縮部分の中央部の前後を二箇所に亘って紐又は接着手段等により縛り、その中間を切断する。ジャバラシート材9の切断方法はこの限りではなく、同ジャバラシート材9の内部へ予め接着剤を塗布しておき、収縮時に外部からマイクロ波等を照射して内部に接着反応を生じさせて接着し、接着部分の中間位置を切断する方法としても良い。鋼製煙突2の離間後、SB202で集塵機4の運転を停止する。
【0030】
次に、S106で鋼製煙突2のアンカーフランジ22のアンカーボルト24のナットを緩めて同煙突2を基礎14から分離する(図4参照)。そして、鋼製煙突2をクレーン15により吊り上げ横倒しにする。因みに、鋼製煙突2の底面には、図7Bに示すように、底版25が設けられており、同煙突2を横倒しにしても同底面からダイオキシン類や重金属類等の有害物が飛散する虞はない。上記のようにして、鋼製煙突2は、図1に示す上記管理区域A内に配置される。
【0031】
しかる後に、前記管理区域A内に、図9に示すような焼却施設1の全体を覆う養生16を構築した後、S107で前記横倒しにした鋼製煙突2を洗浄し解体する。
工期を早めるために、横倒しにした上記鋼製煙突2を別の作業場所にある解体施設へ移動し、そこで洗浄・解体作業を行うことも好適に実施される。
【実施例2】
【0032】
本発明の実施形態は上記の限りではなく、鋼製煙突2を誘引送風機3から離間した後、鋼製煙突2の横倒しや、上端開口21の確認、汚染物の除去等々の作業工程が実施される事に伴い、上記の各作業時に鋼製煙突2内の有害物が大気中に飛散することを防止するべく、同開口21へ小型の負圧集塵機17を接続しておくことが好ましい。前記小型の負圧集塵機17は、内蔵されるファンと集塵フィルターと集塵パイプ17aを備えて成り、図10に示すように、上述した吊り手段5Aの一部として吊り材6へ接続し、集塵パイプ17aの先端をカバー材7に設けた孔に突き刺して設置される。勿論、集塵パイプ17aはシート材7の内側に配置する構成としても良い。また、同集塵機17は吊り材6には接続せず地上に置き、同パイプ17aを下から煙突2に沿わせて設置する構成としても良い。前記小型の負圧集塵機17は、分離作業時(S105)から解体前まで稼働し続けることが好ましい。
斯くすると、鋼製煙突2は分離後に適宜生じる作業工程においても確実に有害物を飛散すること防止して安全な分離及び解体作業を行うことができる。
【0033】
以上に本発明の実施例を説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る鋼製煙突の分離及び解体工法が実施される焼却施設の平面図である。
【図2】本発明に係る鋼製煙突の分離及び解体工法の作業手順を示したフローチャートである。
【図3】A〜Cは鋼製煙突の分離及び解体工法の手順を示す立面図を示す。
【図4】鋼製煙突へ上下の吊り手段を取り付けた状態を示した図である。
【図5】A、Bは上部へ適用する吊り手段の実施形態の一例を示す拡大図である。
【図6】A、Bは上部へ適用する吊り手段の吊り材の定着手段を示した図である。
【図7】A、Bは下部へ適用する吊り手段の実施形態の一例を示す拡大図である。
【図8】ジャバラシート材による煙突と誘引送風機との分離の概要を示す参考図である。
【図9】図1の管理区域内に養生を実施した一例を示す側面図である。
【図10】実施例2において吊り材へ小型集塵機を取り付けた状態を示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 焼却施設
2 鋼製煙突
20 ダクト
21 上端開口
22 アンカーフランジ
23 補強材
23a 孔
3 誘引送風機
31 ダクト
4 集塵機
40 ダクト
5 吊り手段
6 吊り材
60 ワイヤー通し具
7 カバー材
8 吊り手段
9 ジャバラシート
10、11 ワイヤー
12、13 シャックル
14 基礎
15 クレーン
15a ブーム
15b フック
16 養生

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン類や重金属類等の有害物で汚染された焼却施設の解体に際し、鋼製で成る煙突を先行して分離し解体する工法であって、
前記鋼製煙突と連結されている誘引送風機のダクト又はケーシングへ集塵機のダクトを接続する工程と、
前記鋼製煙突の周側面の上下に吊り手段を設備すると共に、カバー材で鋼製煙突の上端開口を密閉する工程と、
前記鋼製煙突側からのダクトと前記誘引送風機側からのダクトとの連結部の外周面にシート材を装着する工程と、
前記集塵機を運転して煙突内部を減圧状態に維持した状態で、前記鋼製煙突と前記誘引送風機とを前記連結部で離間し、前記シートの収縮部分の略中央を二箇所にわたって密封した上で、その中間を切断する工程と、
前記鋼製煙突の底部のアンカーフランジを基礎から分離して同鋼製煙突を吊り上げつつ、横倒しする工程と、
を含むことを特徴とする、鋼製煙突の分離及び解体工法。
【請求項2】
鋼製煙突を管理区域内に置き内部を洗浄した後に、解体する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法。
【請求項3】
鋼製煙突の上部へ適用する吊り手段として、同煙突に嵌める円形状の吊り材に、複数のリング形状のワイヤー通し具を設け、上位のワイヤーの下端部及び下位のワイヤーの上端部は前記ワイヤー通し具に連結されており、同上位のワイヤーの上端はクレーンのフックへ掛けていること、
前記鋼製煙突の下部へ適用する吊り手段として、前記下位のワイヤーの下端を煙突のアンカーフランジの補強材の孔に取り付けて、前記クレーンにより鋼製煙突を吊り上げ可能とすることを特徴とする、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法。
【請求項4】
上位のワイヤーの下端部及び下位のワイヤーの上端部は、着脱自在な連結具を介してワイヤー通し具に連結されていることを特徴とする、請求項1又は3に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法。
【請求項5】
鋼製煙突の上部へ適用する吊り手段の吊り材には、内部に糊状の接着材を塗布したカバー材を装備し、遠隔操作により同吊り材の内径を大小に変化させて煙突外周面へ定着する定着手段を装備しておき、前記カバー材及び吊り材をクレーンで吊り上げて鋼製煙突の上端へ吊り込み、前記定着手段の遠隔操作により吊り材及びカバー材を鋼製煙突へ定着することを特徴とする、請求項1又は3又は4に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法。
【請求項6】
集塵機は、誘引送風機のダクト又はケーシングの点検口に接続することを特徴とする、請求項1に記載した鋼製煙突の分離及び解体工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−308825(P2008−308825A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155232(P2007−155232)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【Fターム(参考)】