説明

鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造

【課題】鋼製容器等の塔槽類などを構成する鋼板等の鋼製部材に直接溶融溶接できないチタン等からなるライニングプレートの端部を密封状態で固定することができる鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造を提供する。
【解決手段】鋼板からなる鏡板2上に設けられたチタンからなるライニングプレート5の端部の固定構造であって、ライニングプレート5の端部の近傍に、母材が鋼材でかつクラッド金属がチタンからなるチタンクラッド鋼6が前記母材と鏡板2とが溶接されることにより固定され、ライニングプレート5とチタンからなるシールプレート7がライニングプレート5の端部からチタンクラッド鋼6の端部にわたってこれらの端部およびこれらの端部の間の隙間を覆うように配置され、このシールプレート7とライニングプレート5とがシール溶接されるとともに、シールプレート7とチタンクラッド鋼のチタンとがシール溶接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製容器等の塔槽類などを構成する鋼板等の鋼製部材にチタン等からなるライニングプレートの端部を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製装置の常圧蒸留装置や減圧蒸留装置の主蒸留塔などの塔槽類では、長年の使用により胴板等の鋼板が腐食により減肉した場合、更新や補修をする必要がある。
そして、胴板等の鋼板をチタンクラッド鋼等のクラッド鋼に代えて更新すると、胴板等を腐食に強いものにすることができる。
しかし、このクラッド鋼による更新は、現場の工事期間が長くなるとともに、コストが非常に高くなるという問題がある。
【0003】
また、胴板等の鋼板の内面にチタン等のライニングプレートを固定する補修を行うことにより、胴板等を腐食に強いものにすることができる。
従来、鋼板にチタン等のライニングプレートを溶接により固定するには、銀ろう付け(ろう接)が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、銀ろう付けは加工コストが高くなるとともに、塔槽類等の内部流体の腐食成分により銀ろうが採用できないものがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、鋼製容器等の塔槽類などを構成する鋼板等の鋼製部材に直接溶融溶接(融接)できないチタン等からなるライニングプレートの端部を密封状態で固定することができる鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、鋼製部材上に設けられた金属からなるライニングプレートの端部の固定構造であって、
前記ライニングプレートの前記端部の近傍に、母材が鋼材でかつクラッド金属が前記ライニングプレートと同じ金属からなるクラッド鋼が前記母材と前記鋼製部材とが溶接されることにより固定され、
前記ライニングプレートと同じ金属からなる接合部材が前記ライニングプレートの前記端部からこのクラッド鋼の端部にわたってこれらの端部およびこれらの端部の間の隙間を覆うように配置され、この接合部材と前記ライニングプレートとがシール溶接されるとともに、前記ライニングプレートと前記クラッド鋼のクラッド金属とがシール溶接(密封溶接)されていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明においては、鋼製部材に直接溶融溶接できないチタン等の金属からなるライニングプレートの端部を、ライニングプレートと同じ金属からなるクラッド鋼と接合部材を用いることにより、密封状態で固定することができる。
【0008】
請求項2に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記クラッド鋼は、前記母材のクラッド金属と反対側の面が前記鋼製部材に接するように配置されて、前記母材と前記鋼製部材とが溶接されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明においては、クラッド鋼が母材のクラッド金属と反対側の面を鋼製部材に接するように配置されて、母材と鋼製部材とが溶接されているので、ライニングプレートの端部の固定構造の厚さを低く抑えることができる。
【0010】
請求項3に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、請求項2に記載の発明において、前記クラッド鋼のクラッド金属に、このクラッド金属と同じ金属からなる他の部材が溶接により固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、クラッド鋼のクラッド金属にこのクラッド金属と同じ金属からなる他の部材が溶接により固定されているので、前記他の部材を支持部材等として用いることができる。
【0012】
請求項4に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記クラッド鋼は、前記母材の端面が前記鋼製部材に接するように配置されて、前記母材と前記鋼製部材とが溶接されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明においては、クラッド鋼が母材の端面を鋼製部材に接するように配置されて、母材と鋼製部材とが溶接されているので、クラッド鋼自体を支持部材等として用いることができる。
【0014】
請求項5に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記鋼製部材は、塔槽類を構成する鋼板であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明においては、塔槽類を構成する鋼板と直接溶融溶接できないチタン等の金属からなるライニングプレートの端部を、ライニングプレートと同じ金属からなるクラッド鋼と接合部材を用いることにより、密封状態で固定することができるので、ライニングプレートの前記端部から腐食性の強い液体等の流体が鋼板に接触するのを防止することができる。
【0016】
請求項6に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記ライニングプレートは、チタン、タンタルまたはジルコニウムからなることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明においては、チタン、タンタルまたはジルコニウムからなるライニングプレートを用いることにより、鋼製部材の表面を耐食性あるいは強度等に優れたものにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鋼製部材に直接溶融溶接(融接)できないチタン等の金属からなるライニングプレートの端部を、ライニングプレートと同じ金属からなるクラッド鋼と接合部材を用いることにより、密封状態で固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る主蒸留塔を示す断面図である。
【図2】図1の丸円部Aの拡大断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る主蒸留塔を示す断面図である。
【図4】図3の丸円部Bの拡大断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る主蒸留塔を示す断面図である。
【図6】図5の丸円部Cの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1、図3および図5に示すように、本発明の各実施の形態は、本発明を石油精製装置の常圧蒸留装置や減圧蒸留装置の主蒸留塔を補修あるいは改良する場合に適用したものである。
本発明の各実施の形態に係る主蒸留塔(塔槽類)Tは、横断面形状が円筒形の大型の塔(蒸留塔)であり、その胴部の直径は例えばおよそ4〜10m程度のものである。胴部の上側には鏡部が設けられ、鏡部の上端部中央にはノズル部が設けられている。胴部の円筒状の胴板(鋼製部材)1、鏡部のドーム状の鏡板(鋼製部材)2およびノズル部の円筒状のノズル板(鋼製部材)3はそれぞれ、鋼板で形成されている。
【0021】
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態は、本発明を鏡板2の下端部からこの鏡板2の上端から連続するノズル板3の上下方向中央部にわたって補修あるいは改良する場合に適用したものである。
【0022】
すなわち、炭素鋼またはステンレス鋼等の鋼板からなる鏡板2の内面全部およびノズル板3の上下方向下部の内面には、チタンからなるライニングプレート5が固定されている。ライニングプレート5の厚さは例えばおよそ2〜3mmである。さらに具体的に説明すると、ライニングプレート5は、複数個が周方向に並べられて、各ライニングプレート5が鏡板2にライニングプレート5を貫通するボルトやビス等を用いて密封状態で固定されるとともに、隣接するライニングプレート5どうしがチタンの溶加材(チタン溶加材)を用いたTIG溶接によりシール溶接(密封溶接)により互いに密封状態で固定され、これにより上下方向に一定の高さを有する筒状ライニングプレート部分51が形成されている。この筒状ライニングプレート部分51が上下方向に複数個重ねて配置され、隣接する筒状ライニングプレート部分51どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0023】
ライニングプレート5は、鏡板2においては、筒状ライニングプレート部分51を周方向に略均等に複数個に分割した場合に得られる形状の円弧板状に形成されている。この部分のライニングプレート5は、下方に向かうにつれて次第に幅広い形状になっている。
また、ライニングプレート5は、ノズル板3においては、筒状ライニングプレート部分51を周方向に略均等に複数個に分割した場合に得られる形状である方形の円弧板状(正面視において方形でかつ平面視において円弧形の板状)に形成されている。
【0024】
図2に示すように、鏡板2の下端部に位置する筒状ライニングプレート部分51の下端の近傍には、チタンクラッド鋼(クラッド鋼)6が鏡板2の周方向に延びる筒状に配置されて鏡板2に固定されている。チタンクラッド鋼6のクラッド金属(合せ材)はライニングプレート5と同じ金属のチタンであり、母材は炭素鋼またはステンレス鋼等からなる鋼材である。チタンクラッド鋼6は円弧形状の帯板状に形成され、このチタンクラッド鋼6が母材のクラッド金属と反対側の面が鏡板2に接するようにかつ長手方向を周方向に向けて、複数個が周方向に並べられ、これにより筒状チタンクラッド鋼部分61が形成されている。この筒状チタンクラッド鋼61は、母材の上下端をそれぞれ、鏡板2の内面に円環状に炭素鋼またはステンレス鋼等の溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するチタンクラッド鋼6どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0025】
また、筒状ライニングプレート部分51の下端部から筒状チタンクラッド鋼部分61の上端部にかけて、ライニングプレート5と同じ金属のチタンからなるシールプレート(接合部材)7が、これらの端部および筒状ライニングプレート部分51と筒状チタンクラッド鋼部分61との間の隙間を覆うように、鏡板2の周方向に延びる筒状に配置されて固定されている。シールプレート7は上下方向中央部に段差のある円弧形状の帯板状に形成され、このシールプレート7が長手方向を周方向に向けて複数個が周方向に並べられ、これにより筒状シールプレート部分71が形成されている。この筒状シールプレート部分71の上端と筒状ライニングプレート部分51の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されるとともに、筒状シールプレート部分71の下端と筒状チタンクラッド鋼部分61の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するシールプレート7どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0026】
このように、筒状シールプレート部分71の上端と筒状ライニングプレート部分51の表面とがシール溶接され、筒状シールプレート部分71の下端と筒状チタンクラッド鋼部分61の表面とがシール溶接され、さらに筒状チタンクラッド鋼部分61の母材の下端と鏡板2の内面とがシーム溶接されていることにより、鏡板2の下端部に設けられた筒状ライニングプレート部分51の下端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなる鏡板2に接触するのを防止されている。
【0027】
また、ノズル板3の内面を覆い、最も上側に設けられた筒状ライニングプレート部分51においても、最も下側に設けられた筒状ライニングプレート部分51の場合と同様にして、この筒状ライニングプレート部分51の上端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなるノズル板3に接触するのを防止されている。すなわち、ノズル板3の内面を覆うとともに、最も上側に位置する筒状ライニングプレート部分51の上端の近傍に、最も下側の筒状ライニングプレート部分51の場合と同様にして、チタンクラッド鋼6が鏡板2の周方向に延びる円環板状に配置され、炭素鋼またはステンレス鋼等の溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接によりノズル板2に固定されて、筒状チタンクラッド鋼部分61が形成されている。そして、最も下側の筒状ライニングプレート部分51の場合と同様にして、チタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接により筒状シールプレート部分71が固定されている。
【0028】
本実施の形態にあっては、主蒸留塔Tを構成し鋼板からなる鏡板2およびノズル板3に直接溶融溶接できないチタンからなる筒状ライニングプレート部分51、51(ライニングプレート5)の下端部および上端部を、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる筒状チタンクラッド鋼部分61(チタンクラッド鋼6)と筒状シールプレート部分71(シールプレート7)とを用いることにより、密封状態で固定することができる。したがって、鏡板2およびノズル板3の筒状ライニングプレート部分51、51の下端部および上端部からそれぞれ、腐食性の強い液体等の流体が鏡板2およびノズル板3に接触するのを防止することができる。このように、主蒸留塔Tにおいて、鏡板2の下端部からこの鏡板2の上端から連続するノズル板3の上下方向中央部にわたって、ライニングプレート5を用いて補修あるいは改良することが可能になる。
【0029】
また、筒状チタンクラッド鋼部分61が母材のクラッド金属と反対側の面を鏡板2、ノズル板3に接するように配置されて、母材と鏡板2、ノズル板3とが溶接されているので、筒状ライニングプレート部分51、51の下端部および上端部の固定構造の厚さを低く抑えることができる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
図3に示すように、本発明の第2の実施の形態は、本発明を胴板1の上端部から鏡板2さらにノズル板3の上下方向中央部にわたって補修あるいは改良する場合に適用したものである。
【0031】
すなわち、鋼板からなる胴板1の内面の上端部、鏡板2の内面全部およびノズル板3の上下方向下部の内面には、第1の実施の形態と同様にして、チタンからなるライニングプレート5が固定されている。胴板1においては、ライニングプレート5は、筒状ライニングプレート部分51を周方向に略均等に複数個に分割した場合に得られる形状である方形の円弧板状(正面視において方形でかつ平面視において円弧形の板状)に形成されている。胴板1の筒状ライニングプレート部分51と、鏡板2の下端部を形成する筒状ライニングプレート部分51とは、チタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接(密封溶接)により互いに密封状態で固定されている。
【0032】
図4に示すように、胴板1の上端部に位置し、最も下側の筒状ライニングプレート部分51の下端の近傍には、チタンクラッド鋼6が胴板1の周方向に延びる円環板状に配置されて鏡板2に固定されている。チタンクラッド鋼6のクラッド金属はチタンであり、母材は炭素鋼またはステンレス鋼等からなる鋼材である。チタンクラッド鋼6は扇形状の帯板状に形成され、大径側の側面が胴板1に接するようにかつチタンを上側(筒状ライニングプレート部分51側)に向けて、複数個が周方向に並べられ、これにより円環板状チタンクラッド鋼部分62が形成されている。チタンクラッド鋼6のクラッド金属(チタン)は、胴板1に接する大径側の端部には設けられておらず、これにより円環板状チタンクラッド鋼部分62の露出した上側の母材の部分と胴板1の内面とが円環状に炭素鋼またはステンレス鋼等の溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接されるとともに、母材のチタンと反対側の面と胴板1の内面とが炭素鋼またはステンレス鋼等の溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接されている。また、隣接するチタンクラッド鋼6どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。円環板状チタンクラッド鋼部分62は、サポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)として機能するものである。
【0033】
また、筒状ライニングプレート部分51の下端部から円環状チタンクラッド鋼部分62の上面(クラッド金属の表面)の端部にかけて、ライニングプレート5と同じ金属のチタンからなるシールアングル(接合部材)8が、これらの端部および筒状ライニングプレート部分51と円環状チタンクラッド鋼部分62との間の隙間を覆うように、胴板1の周方向に延びる円環状に配置されて固定されている。シールアングル8は横断面形状がL字状の円弧板状に形成され、このシールアングル8が複数個が周方向に並べられて、これにより円環状シールアングル部分81が形成されている。この円環状シールアングル部分の上端と筒状ライニングプレート部分51の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されるとともに、円環状シールアングル部分81の下端(下方の先端)と筒状チタンクラッド鋼部分6の1表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するシールアングル8どうしがシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0034】
このように、円環状シールアングル部分81の上端と筒状ライニングプレート部分51の表面とがシール溶接され、円環状シールアングル部分81の下端と円環状チタンクラッド鋼部分62の表面とがシール溶接され、さらに円環状チタンクラッド鋼部分62の母材のチタンと反対側の面の端部と胴板1の内面とがシーム溶接されていることにより、胴板1の上端部に設けられて最下側に位置する筒状ライニングプレート部分51の下端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなる胴板1に接触するのを防止されている。
【0035】
また、ノズル板3の内面を覆い、最も上側に設けられた筒状ライニングプレート部分51は、第1の実施の形態と同様にして、この筒状ライニングプレート部分51の上端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなるノズル板3に接触するのを防止されている。
【0036】
本実施の形態にあっては、主蒸留塔Tを構成し鋼板からなる胴板1に直接溶融溶接できないチタンからなる筒状ライニングプレート部分51(ライニングプレート5)の下端部を、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる円環板状チタンクラッド鋼部分62(チタンクラッド鋼6)と円環状シールアングル部分81(シールアングル8)とを用いることにより、密封状態で固定することができる。
また、鋼板からなるノズル板3に直接溶融溶接できないチタンからなる筒状ライニングプレート部分51(ライニングプレート5)の上端部を、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる筒状チタンクラッド鋼部分61(チタンクラッド鋼6)と筒状シールプレート部分71(シールプレート7)とを用いることにより、密封状態で固定することができる。
したがって、胴板1およびノズル板3の筒状ライニングプレート部分51、51の下端部および上端部からそれぞれ、腐食性の強い液体等の流体が胴板1およびノズル板3に接触するのを防止することができる。
【0037】
また、環板状チタンクラッド鋼部分62が母材の端面を鋼製部材に接するように配置されて、母材と鋼製部材とが溶接されているので、環板状チタンクラッド鋼部分62をサポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)として用いることができる。
このように、主蒸留塔Tにおいて、胴板1の上端部から鏡板2さらにノズル板3の上下方向中央部にわたって、サポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)62を設けつつ、ライニングプレート5を用いて補修あるいは改良することができる。
【0038】
また、筒状チタンクラッド鋼部分61が母材のクラッド金属と反対側の面をノズル板3に接するように配置されて、母材とノズル板3とが溶接されているので、筒状ライニングプレート部分51の上端部の固定構造の厚さを低く抑えることができる。
【0039】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
図5に示すように、本発明の第3の実施の形態は、本発明を胴板1の上下方向中央部から鏡板2さらにノズル板3の上下方向中央部にわたって補修あるいは改良する場合に適用したものである。
【0040】
すなわち、鋼板からなる胴板1の内面の上下方向上部、鏡板2の内面全部およびノズル板3の上下方向下部の内面には、第2の実施の形態と同様にして、チタンからなるライニングプレート5が固定されている。
【0041】
図6に示すように、胴板1の上端部に位置する筒状ライニングプレート部分51とこの下側に位置する筒状ライニングプレート部分51との間には、円環状の隙間が設けられている。この隙間には、チタンクラッド鋼6が、これらの筒状ライニングプレート部分51の下端および上端との間にそれぞれ少しの間隔をおいて、かつ、胴板1の周方向に延びる筒状に配置されて、胴板1に固定されている。胴板1の上端部を形成する筒状ライニングプレート部分51の下端の近傍には、チタンクラッド鋼6が鏡板2の周方向に延びる筒状に配置されて鏡板2に固定されている。チタンクラッド鋼6のクラッド金属はチタンであり、母材は炭素鋼またはステンレス鋼等からなる鋼材である。チタンクラッド鋼6は円弧形状の帯板状に形成され、このチタンクラッド鋼6が母材のクラッド金属と反対側の面が胴板1に接するようにかつ長手方向を周方向に向けて、複数個が周方向に並べられ、これにより筒状チタンクラッド鋼部分61が形成されている。この筒状チタンクラッド鋼61は、母材の上下端をそれぞれ、鏡板2の内面に円環状に炭素鋼またはステンレス鋼等の溶加材を用いたTIG溶接によりシーム溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するチタンクラッド鋼6どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0042】
また、胴板1の上端部に位置する筒状ライニングプレート部分51の下端部から筒状チタンクラッド鋼部分61の上端部にかけて、ライニングプレート5と同じ金属のチタンからなるシールプレート7が、これらの端部および筒状ライニングプレート部分51と筒状チタンクラッド鋼部分61との間の隙間を覆うように、鏡板2の周方向に延びる筒状に配置されて固定されている。シールプレート7は上下方向中央部に段差のある円弧形状の帯板状に形成され、このシールプレート7が長手方向を周方向に向けて複数個が周方向に並べられ、これにより筒状シールプレート部分71が形成されている。この筒状シールプレート部分71の上端と筒状ライニングプレート部分51の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されるとともに、筒状シールプレート部分71の下端と筒状チタンクラッド鋼部分6の1表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するシールプレート7どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0043】
また、筒状チタンクラッド鋼部分61の下端部からこの筒状チタンクラッド鋼部分61の下側に位置する筒状ライニングプレート部分51の上端部からにかけて、シールプレート7が、これらの端部および筒状チタンクラッド鋼部分61と筒状ライニングプレート部分51との間の隙間を覆うように、鏡板2の周方向に延びる筒状に配置されて固定されている。この下側のシールプレート7は上側のシールプレート7とは上下方向に線対象になるように配置されて、筒状シールプレート部分71が形成されている。この筒状シールプレート部分71の上端と筒状チタンクラッド鋼部分61の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されるとともに、筒状シールプレート部分71の下端と筒状ライニングプレート部分51の表面とが円環状にチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接されて密封状態で固定されている。また、隣接するシールプレート7どうしがチタンの溶加材を用いたTIG溶接によりシール溶接により互いに密封状態で固定されている。
【0044】
筒状チタンクラッド鋼部分61のクラッド金属の表面には、上下方向中央部に、内側に向けて突出するサポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)91が設けられている。ライニングプレート5と同じ金属のチタンからなり、扇形状の帯板状に形成された支持部材片9が、大径側の側面が筒状チタンクラッド鋼部分61のクラッド金属のチタンの表面に接するようにして、複数個が周方向に並べられ、これらがクラッド金属にチタンの溶加材を用いたTIG溶接により溶接されて固定されることにより、この支持部材91が形成されている。なお、支持部材片(他の部材)9は、予めチタンクラッド鋼6に固定しておくようにしてもよい。
【0045】
このように、上側の筒状シールプレート部分71の上端と上側の筒状ライニングプレート部分51の表面とがシール溶接され、上側の筒状シールプレート部分71の下端と筒状チタンクラッド鋼部分61の表面とがシール溶接されているとともに、下側の筒状シールプレート部分71の上端と筒状チタンクラッド鋼部分61の表面とがシール溶接され、下側の筒状シールプレート部分71の下端と下側の筒状ライニングプレート部分51の表面とがシール溶接されていることにより、筒状ライニングプレート部分51、51との間、ならびに、上側の筒状ライニングプレート部分51の下端および下側の筒状ライニングプレート部分51の上端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなる胴板1に接触するのを防止されている。
【0046】
また、ノズル板3の内面を覆い、最も上側に設けられた筒状ライニングプレート部分51は、第1の実施の形態と同様にして、この筒状ライニングプレート部分51の上端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなるノズル板3に接触するのを防止されている。
また、胴板1に位置し、最も下側の筒状ライニングプレート部分51は、第2の実施の形態と同様にして、この筒状ライニングプレート部分51の下端から、腐食性の強い液体等の流体が鋼材からなる胴板1に接触するのを防止されている。
【0047】
本実施の形態にあっては、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる筒状チタンクラッド鋼部分61(チタンクラッド鋼6)と上側および下側の2つの筒状シールプレート部分71(シールプレート7)とを用いることにより、胴板1の上下に隣接する筒状ライニングプレート部分51、51の間にサポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)91を設けつつ、上側の筒状ライニングプレート部分51の下端部および下側の筒状ライニングプレート部分51の上端部を密封状態で固定することができる。
また、鋼板からなる胴板1に直接溶融溶接できないチタンからなる筒状ライニングプレート部分51(ライニングプレート5)の下端部を、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる円環板状チタンクラッド鋼部分62(チタンクラッド鋼6)と円環状シールアングル部分81(シールアングル8)とを用いることにより、密封状態で固定することができる。
また、鋼板からなるノズル板3に直接溶融溶接できないチタンからなる筒状ライニングプレート部分51(ライニングプレート5)の上端部を、筒状ライニングプレート部分51と同じ金属からなる筒状チタンクラッド鋼部分61(チタンクラッド鋼6)と筒状シールプレート部分71(シールプレート7)とを用いることにより、密封状態で固定することができる。
【0048】
また、環板状チタンクラッド鋼部分62が母材の端面を鋼製部材に接するように配置されて、母材と鋼製部材とが溶接されているので、環板状チタンクラッド鋼部分62をサポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)として用いることができる。
したがって、主蒸留塔Tにおいて、胴板1の上下方向中央部から鏡板2さらにノズル板3の上下方向中央部にわたって、サポートリング等の支持部材(強度部材、構造部材)91、62設けつつ、ライニングプレート5を用いて補修あるいは改良することが可能になる。
【0049】
また、筒状チタンクラッド鋼部分61が母材のクラッド金属と反対側の面をノズル板3に接するように配置されて、母材とノズル板3とが溶接されているので、筒状ライニングプレート部分51の上端部の固定構造の厚さを低く抑えることができる。
【0050】
なお、前述の各実施の形態では、ライニングプレート5としてチタンからなるものを用いたが、本発明はこれに限らず、鋼材と直接溶融溶接できないタンタルまたはジルコニウムなどの他の金属からなるライニングプレートを用いることもできる。
【0051】
また、前述の各実施の形態では、本発明を主蒸留塔の鋼板からなる胴板1、鏡板2、ノズル板3に直接溶融溶接できない金属からなるライニングプレート7を設ける場合に適用したが、本発明はこれに限らず、他の鋼製部材に直接溶融溶接できない金属からなるライニングプレートを設ける場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
T 主蒸留塔(塔槽類)
1 胴板(鋼板、鋼製部材)
2 鏡板(鋼板、鋼製部材)
3 ノズル板(鋼板、鋼製部材)
5 ライニングプレート
51 筒状ライニングプレート部分
6 チタンクラッド鋼(クラッド鋼)
61 筒状チタンクラッド鋼部分
62 円環状チタンクラッド鋼部分
7 シールプレート(接合部材)
71 筒状シールプレート部分
8 シールアングル(接合部材)
81 円環状シールアングル部分
9 支持部材片(他の部材)
91 支持部材(強度部材、構造部材、)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製部材上に設けられた金属からなるライニングプレートの端部の固定構造であって、
前記ライニングプレートの前記端部の近傍に、母材が鋼材でかつクラッド金属が前記ライニングプレートと同じ金属からなるクラッド鋼が前記母材と前記鋼製部材とが溶接されることにより固定され、
前記ライニングプレートと同じ金属からなる接合部材が前記ライニングプレートの前記端部からこのクラッド鋼の端部にわたってこれらの端部およびこれらの端部の間の隙間を覆うように配置され、この接合部材と前記ライニングプレートとがシール溶接されるとともに、前記ライニングプレートと前記クラッド鋼のクラッド金属とがシール溶接されていることを特徴とする鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。
【請求項2】
前記クラッド鋼は、前記母材のクラッド金属と反対側の面が前記鋼製部材に接するように配置されて、前記母材と前記鋼製部材とが溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。
【請求項3】
前記クラッド鋼のクラッド金属に、このクラッド金属と同じ金属からなる他の部材が溶接により固定されていることを特徴とする請求項2に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。
【請求項4】
前記クラッド鋼は、前記母材の端面が前記鋼製部材に接するように配置されて、前記母材と前記鋼製部材とが溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。
【請求項5】
前記鋼製部材は、塔槽類を構成する鋼板であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。
【請求項6】
前記ライニングプレートは、チタン、タンタルまたはジルコニウムからなることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼製部材へのライニングプレートの端部の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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