説明

錠前

【課題】 ダイヤルを合わせる開錠方法でもキーを用いる開錠方法でも、どちらの方法でも開錠することができ、また、どちらの開錠方法を取ることも可能で、どちらの開錠方法でも施錠端子を共通とし、施錠時に施錠端子を挿し込む位置も同じである便利で使い勝手のよい錠前の提供。
【解決方法】 従来のダイヤル錠本体の外筒にキー開錠用のキーシリンダーを内嵌し、一つの錠前本体に二つの異なる開錠機構を有しながら、キーによる開錠でもダイヤルによる開錠でも、それぞれの開錠方法が独自に優先される機能を持ち、どちらの開錠機構においても施開錠回転軸および施錠端子が共通であり、また端子孔も同じ位置であるため、部品数も少なく、従来のダイヤル式錠前の外観を大きく変えることがなく、一つの錠前に二つの開錠機構を施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの錠前本体に、キー式開錠機構及びダイヤル合わせ式開錠機構の両方の開錠機構を備え持ち、ダイヤル錠本体にキー開錠用のキーシリンダーを内嵌し、開錠時にどちらの開錠方法も優先され、キーを用いずダイヤル合わせのみでも開錠可能であり、またダイヤルを合わせなくてもキーのみでも開錠可能であり、どちらの開錠方法においても本体に内嵌される施開錠回転軸が共通であり、かつ施錠端子も共通であり同じ位置の端子孔である錠前に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車等の盗難防止用に使用されるワイヤー錠等は、キー開錠式のものとダイヤル合わせにて開錠するものとの二つの方式がある。
【0003】
ダイヤル式錠前は、暗い所ではダイヤル文字の判読が容易でなく、またキー式はキーをなくしやすい欠点があった。
【0004】
一つの錠前本体の一方にダイヤル式開錠機構を設け、もう一方にキー式開錠機構を同時に設けられた錠前も開発されているが、ただ単に二つの既存の開錠装置を一つの本体に並列に合わせ設けられているに過ぎず、施錠端子部が錠前本体の固定端子孔に挿し込むダイヤル式開錠用の施錠端子と錠前本体外端の固定端子孔に挿し込むもう一つの施錠端子とが別々にあり、部品数が多く、錠前本体が相当な幅及び長さを必要とするため製品外観上の制約を受け、またそれぞれの開錠方法により、別々の固定端子が外れるため、使用時に戸惑いや使いにくさがあった。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイヤル開錠式錠前の場合、暗い所では、ダイヤル文字の判読が困難であり、開錠するためには明かりの点いている場所まで移動するか懐中電灯のようなものが必要であった。また、中にはダイヤル文字盤に蛍光塗料または蓄光塗料を練り込んだものも開発されているが光量が足りないため、ダイヤル文字の判読は容易ではなかった。
【0006】
キー式錠前の場合、キーをなくしやすい欠点があり、開錠時の不便さえなければキーを使用しないダイヤル式錠前の方が便利である。
【0007】
一方、一つの錠前本体の一方にダイヤル式開錠機構を設け、もう一方にキー式開錠機構を同時に設けられたものも開発されているが、ただ単に既存の二つの開錠装置を一つの本体に並列に合わせ設けたに過ぎず、施錠端子部が錠前本体の端子孔に挿し込むダイヤル開錠用の施錠端子と錠前本体外端の端子孔に挿し込むもう一つのキー開錠用の施錠端子とが別々にあり、部品数が多く、錠前本体が相当な幅及び長さを必要とするため製品外観上の制約を受け、またそれぞれの開錠方法により別々の固定端子が外れるため、使用時に戸惑いや使いにくさがあった。
【0008】
本発明は、二輪車の盗難防止用等に使用される錠前において、上記の問題点を解決し、一つの錠前本体にキー式開錠機構及びダイヤル合わせ開錠機構の両方の開錠機構を備え持ち、ダイヤル錠本体にキー開錠用のキーシリンダーを内嵌し、開錠時にどちらの開錠方法も優先され、キーを用いずダイヤル合わせのみでも開錠可能であり、またダイヤル合わせをしなくてもキーのみでも開錠可能であり、かつどちらの開錠方法においても施開錠回転軸が共通なため施錠端子も共通であり、施錠時に施錠端子を挿し込む位置も同じで使用時に戸惑いがなく使い勝手のよい錠前の提供を目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0009】
本発明は、一つの錠前本体にキー式開錠機構とダイヤル式開錠機構の二つの開錠機構を施し、ダイヤル開錠でもキー開錠でもどちらの方法も優先され、キーを用いず、ダイヤル合わせのみでも開錠を可能とし、また、ダイヤルを合わせず、キーのみでも開錠を可能とする開錠機構を施した。
【0010】
さらに本発明の錠前は、ダイヤル式開錠の場合においても、キー開錠の場合においても施錠端子は共通とし、どちらの方法でも開錠時は同じ位置の端子が外れる機構とした。
【0011】
一方、上記解決手段を実施するにあたり、従来のダイヤル錠本体の外筒にキー開錠用シリンダーを内嵌し、一つの錠前本体に二つの異なる開錠機構を有しながら、それぞれの開錠方法が独自に優先される機能を持ち、どちらの開錠機構においても施開錠回転軸が共通であるため、施錠端子が共通であり端子孔も同じ位置であり、従来のダイヤル式錠前の外観を大きく変えることがなく一つの錠前本体に二つの開錠機構を施すことを可能とした。
【発明の効果】
【0012】
開錠時にキーによる開錠でもダイヤルによる開錠でも、どちらの開錠方法でも優先され、使用者の好み及び使用状況により、キーのみでも開錠ができ、また、キーを用いずダイヤルを合わせるだけでも開錠が可能となった。
【0013】
暗いところでダイヤル文字が判読しづらい場合、キーのみを用いて開錠が可能となった。また、キーをなくした場合など、キーを用いず、ダイヤルを合わせるだけでも開錠が可能となった。
【0014】
キーでの開錠でもダイヤルでの開錠でも施錠端子が共通であり、また挿し込み位置も同じであり、どちらの方法で開錠しても施錠するときの施錠端子の挿し込み位置が同じであるため、従来の一つの本体にキー式とダイヤル式の開錠機構を持った錠前と比較すると、使用時に戸惑うことがなく使い勝手もよく大変便利になった。
【0015】
従来のダイヤル錠本体の外筒にキー開錠用のシリンダーを内嵌する二重構造とし、どちらの開錠機構でも施錠端子を固定する施開錠回転軸が共通なため、一つの錠前本体に二つの異なる開錠機構を有しながら、部品数も少なく、従来のダイヤル式錠前の外形を大きく変えることなくコンパクトな本体サイズとすることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の錠前について図面を参考にしながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、施錠の状態を示す構造図および本体断面図であるが、ダイヤル5がセットされている錠前本体の収納外筒4の内側に一端が取っ手1となっているローター2を内嵌し、更に内側にロッキングバー3aにてローター2と係止されたキーシリンダー3及びその延長上に軸着またはリターンスプリング7bを介して係着される施開錠回転軸7を内嵌する。施錠端子19は、端子固定球15が施開錠回転軸7に押し出される状態で施錠端子19の溝に嵌り、施錠状態を保持する。開錠する際は、ローター2の一端の取っ手1を回し、ローター2に内嵌されロッキングバー3aにてローター2と係止されたキーシリンダー3に軸着またはリターンスプリング7bを介して係着された施開錠回転軸7を回転させ、施開錠回転軸7に切欠された端子固定球15の逃げ穴7aに端子固定球15を落とし込むと開錠状態となり、施錠端子19を抜き去ることができるが、ローター2を回転させようとしても可動障害板12により可動を阻害され、ローター2に連動する施開錠回転軸7を回転させることができないため、施錠状態が保持される。尚、図2の(a)〜(c)は、施錠からダイヤルでの開錠およびキーでの開錠の作動状態を示す展開図であり、(a)は、施錠状態の展開図である。
【0018】
図2の(b)は、ダイヤル合わせによる開錠の状態を示す展開図であるが、ダイヤル5を開錠番号に合わせた場合は、それぞれのダイヤル5の内側に設けられた切欠溝5aが、可動障害板12の上に一直線に揃い、可動障害板12に設けられた突起12fを通過させることが可能となり、取っ手1を回すことを阻害していた可動障害板12がローター2に切欠された坂溝2aにて後方へ押し出され、ローター2の回転を係止する障害が取り除かれることによりローター2を回すことが可能となり、ローター2に内嵌されロッキングバー3aにてローター2と係止されたキーシリンダー3に軸着またはリターンスプリング7bを介して係着された施開錠回転軸7を回転させることが可能となり、回転させることにより施開錠回転軸7に切欠された端子固定球15の逃げ穴7aが端子固定球15の位置まで回転し、端子固定球15が逃げ穴7aに落ち込み、施錠端子19の溝より外れ、施錠端子19を抜き去ることができ開錠状態となる。
【0019】
図2の(c)は、キーによる開錠の状態を示す構造図であり、図4〜図6は、キーを挿し込む側から見たキーシリンダーの状態を示す断面図である。ダイヤルを開錠番号に合わせていない場合、すなわちダイヤル5の内側に設けられた切欠溝5cが可動障害板12の上に一直線上に揃わず可動障害板12に設けた突起12aを通過させられずローター2を回転させることが阻害されている施錠状態である場合でも、キー23をキーシリンダー3に挿し込み、キーシリンダー内のキータンブラーが揃った状態(合ったキーを挿し込んだ場合)で回転させる動作を加えるとキーシリンダー3とローター2を係止しているロッキングバー3bがキーシリンダー3に切欠された溝に落ち込み、キーシリンダー3とローター2の係止状態が解除され、ダイヤル開錠機構とは独立して施開錠回転軸7を直接回転させることができ、施開錠回転軸7に切欠された端子固定球15の逃げ穴7aが端子固定球15の位置まで回転し、端子固定球15が逃げ穴7aに落ち込み、施錠端子19の溝より外れ、施錠端子19を抜き去ることができ開錠状態となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の錠前の施錠状態を示す構造図および本体断面図である。
【図2】本発明の錠前の施錠状態から開錠までの作動状態を示す展開図である。
【図3】本発明の錠前の本体のそれぞれの箇所での断面図である。
【図4】本発明の錠前のキーシリンダーの断面図である。
【図5】本発明の錠前のキーにて開錠する場合、キーを挿し込みキータンブラーが揃った状態で、キーに回転動作を加えた状態を示す断面図である。
【図6】本発明の錠前のキーにて開錠する場合、開錠位置までキーを回転させた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の錠前の分解図である。
【図8】本発明の錠前における実施例の正面図である。
【図9】本発明の錠前における実施例の斜視図である。
【図10】本発明の錠前における実施例のキーを差し込む側の側面図である。
【符号の説明】
1 取っ手
2 ローター
2a 坂溝
3 キーシリンダー
3a ロッキングバー
3b キータンブラー
4 収納外筒
5 ダイヤル
5a 切欠溝
6 クリックバネスペーサー
7 施開錠回転軸
7a 逃げ穴
7b リターンスプリング
8 テールカバー
9 固定ピン
10 後部収納外筒
11 キーガイド
12 可動障害板
12a 突起
13 ボールリテーナー
14 押接スプリング
15 端子固定球
16 ケーブル固定端子
17 ケーブル固定端子カバー
18 ケーブル
19 施錠端子
20 施錠端子カバー
21 施錠端子押し上げ座
22 施錠端子押し上げスプリング
23 キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの錠前本体に、キー式開錠機構及びダイヤル式開錠機構の両方の開錠機構を備え持ち、開錠時にどちらの開錠方法も優先され、キーを用いずダイヤル合わせのみでも開錠可能であり、またダイヤルを合わせなくてもキーのみでも開錠可能であり、かつどちらの施開錠方法においても施錠用端子が共通で同じ位置の端子孔である錠前。
【請求項2】
ダイヤル錠本体の収納外筒にキー開錠用のキーシリンダーを内嵌し、開錠時にそれぞれの開錠機構が独自に優先される機能を持った請求項1の錠前。
【請求項3】
ダイヤル錠本体の収納外筒に内嵌され、キーシリンダーと係着されたキー開錠用の施開錠回転軸が、キー開錠の場合でもダイヤル開錠の場合でもどちらの開錠機構においても共通に作動し、施錠用端子も共通で同じ位置の端子孔である請求項1および2の錠前。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−16944(P2006−16944A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222631(P2004−222631)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(300017566)ユニロックス商事株式会社 (6)