説明

錠剤容器の中栓

【課題】容器内の錠剤を1錠ずつ確実に排出させる。
【解決手段】錠剤の取出口を有するベース板11と、取出口の上部に固定する排出口12a付きの排出部12と、操作部13と、錠剤の保持口14a付きの制御部14とを組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円盤形やレンズ形などの円形の錠剤を容器から1錠ずつ排出させ、所定量の錠剤を確実に取り出すことができる錠剤容器の中栓に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、一般に容器内に多数が収容されており、服用に際し、所定量を容器から取り出す必要がある。すなわち、一般の蓋付きの容器では、蓋を外した上、服用量以上の多数の錠剤を一旦掌などに受けて排出させ、服用量を超える余分の錠剤を容器内に戻し入れるのが普通である。
【0003】
そこで、かかる手順の不便、不衛生を解消するために、たとえば揺動動作を加えて容器内の錠剤を1錠ずつ排出させる容器の蓋が提案されている(特許文献1)。この場合の容器の蓋は、錠剤を整列させるためのガイド溝を下面に形成し、ガイド溝の一端に開口する蓋付きの取出口を介し、錠剤を1個ずつ振り出すようにして排出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭46−9819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来技術によるときは、取出口から排出させる錠剤は、1錠ずつを積極的に分離させる訳でないため、2錠以上が連続的に流出してしまうことが少なくなく、動作が不確実であるという問題があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、押し操作可能な操作部に制御部を連動させることによって、容器内の錠剤を1錠ずつ確実に排出させることができる錠剤容器の中栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、錠剤の取出口を開口するベース板と、取出口の上部に固定する錠剤の排出口付きの排出部と、ベース板上に搭載する操作部と、上下開放の錠剤の保持口付きの制御部と、容器内の錠剤を整列させて取出口に導くガイド部とを備えてなり、制御部は、操作部に連動して取出口、排出口の間で相対移動可能であり、操作部を押し操作しないとき、取出口からの錠剤を保持口に保持し、操作部を押し操作すると、保持口内の錠剤を排出口に移行させるとともに、取出口からの錠剤の進出を阻止することをその要旨とする。
【0008】
なお、取出口、保持口、排出口は、それぞれ1錠の錠剤が径方向に通過可能に形成することができる。
【0009】
また、ガイド部は、錠剤が径方向に進入可能なガイド溝を介して非対称の屈曲板を対向させてもよく、ガイド溝の一方の端面には、取出口の内周に連続するガイドリブを形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
かかる発明の構成によるときは、制御部の保持口、排出部の排出口は、ベース板に開口する取出口の上部にこの順に配置され、容器内の錠剤を外部に排出させる際の一連の通路を形成する。一方、制御部は、取出口からの錠剤を一旦保持口に保持し、操作部を押し操作するごとに排出口に移行させることにより、錠剤を1錠ずつ確実に排出させることができる。また、ベース板の下面のガイド部は、容器内の錠剤を整列させ、ブリッジを生じさせることなく取出口にまで円滑に導く。
【0011】
取出口、保持口、排出口は、それぞれ錠剤が径方向に通過可能に形成することにより、円盤形、レンズ形などの円形の錠剤を1錠ずつ円滑に排出させることができる。
【0012】
非対称の屈曲板を対向させるガイド部は、各屈曲板を介し、錠剤をガイド溝と平行な正しい姿勢に確実に整列させることができ、たとえば滑り難く、ブリッジを生じ易いフィルムコート錠の錠剤であっても、有害なブリッジを生じるおそれが殆どない。
【0013】
ガイド溝の一方の端面に形成するガイドリブは、ガイド溝内の錠剤を取出口にスムーズに導き、取出口の外部に進出させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】全体構成斜視説明図
【図2】使用状態を示す中央縦断面図
【図3】全体構成断面説明図
【図4】動作説明図(1)
【図5】動作説明図(2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0016】
錠剤容器の中栓は、ベース板11、排出部12、操作部13、制御部14を備えてなり(図1、図2)、キャップ30付きの容器20の口部21に装着して使用する。ただし、図1(A)、(B)は、それぞれ異なる方向から見る全体斜視図である。
【0017】
容器20は、口部21の外周にキャップ30用の雄ねじ22を形成するとともに、本体23の外部に保護筒23aを付設して形成されている。ただし、容器20は、保護筒23a付きでなくてもよく、口部21の口径が本体23より小さくてもよい。また、本体23は、円筒形の他、角筒形などであってもよい。
【0018】
ねじ式のキャップ30は、内周下部に雌ねじ31を形成し、外周に滑り止め用のローレット32、32…を有する。キャップ30は、雄ねじ22、雌ねじ31を介して容器20の口部21に着脱自在に装着することができる。また、キャップ30の内部天面には、口部21に対する締付限界を規定し、中栓のベース板11上の各部材を収納するために、口部21とほぼ同径のスカート33が垂設されている。
【0019】
ベース板11は、容器20の口部21とほぼ同径の円板である。ベース板11の直径上には、容器20内の錠剤の取出口11aが偏心位置に開口されている。なお、取出口11aは、ベース板11の径方向に長い長方形に形成されている。また、ベース板11の下面外周には、容器20の口部21に適合する段部11bが形成されている。
【0020】
排出部12は、上下開放の錠剤の排出口12aを有し、左右の脚12b、12bを介して取出口11aの上部に固定されている。ただし、各脚12bは、ベース板11上に立設されており、取出口11aと同方向に長い排出口12aは、取出口11aより長い長孔状に形成され、取出口11aに比して、ベース板11の中心寄りに配置されている。
【0021】
操作部13は、後方から前方にかけて滑らかに低くするとともに、排出部12用の溝形の窪み13aが前端から後向きに形成されている。操作部13は、後方が開放されており、操作部13の内部には、左右の補強板13b、13bが垂設されている。操作部13は、補強板13b、13bの両外側の屈曲ヒンジ13c、13cを介し、ベース板11上に弾発的に搭載されている(図1(B)、図3(A))。ただし、図3(A)は、図1(B)のX−X線矢視相当断面図であり、図3(B)は、同図(A)のY−Y線矢視相当断面図である。
【0022】
屈曲ヒンジ13c、13cは、それぞれベース板11の上面と平行な可撓性の帯板の後端を下向きに屈曲させてベース板11に連結するとともに、帯板の前端を操作部13の前部下端に連結して形成されている。操作部13は、上面後部を下向きに押し操作すると(図3(A)の矢印K1 方向)、屈曲ヒンジ13c、13cを介して後方に傾くが(同図の矢印K2 方向)、押し操作を解放すると、屈曲ヒンジ13c、13cの弾性により元の姿勢に自動復帰する。
【0023】
制御部14は、上下開放の保持口14aを有する(図1(A)、図2)。制御部14は、後向きの支持片14bを介して操作部13に連結され、取出口11a、排出口12aの間に介装されている。制御部14の保持口14aは、取出口11aと同方向に、しかも、ほぼ同形同大に形成されている。制御部14は、操作部13を押し操作しないとき、保持口14aが取出口11aの直上にあるように位置しているが、操作部13を押し操作すると、操作部13が後方に傾くことにより支持片14bを介して後向きに相対移動し、保持口14aのほぼ全体が上方の排出口12aの下に位置するものとする。
【0024】
ベース板11の下面には、ガイド溝15aを介して非対称の屈曲板15b、15cを対向させるガイド部15が形成されている(図3(B))。一方の屈曲板15bは、垂直面と下向きの斜面との組み合わせであり、他方の屈曲板15cは、滑らかに連続する曲面であり、前者の屈曲位置は、後者のそれより低く設定されている。ガイド溝15aは、ベース板11の径方向であって、取出口11aと同方向に形成されており(図2)、ガイド溝15aの両端面は、壁15a1 、15a2 を介して閉じられている。また、取出口11a側の壁15a1 の上部には、上向きに高さが漸増するガイドリブ15dが形成され、ガイドリブ15dの上端は、取出口11aの内周に連続している。
【0025】
なお、屈曲板15b、15cの下端には、円形の短いスカート部15eが形成されている(図1、図3)。また、屈曲板15b、15cの外面には、ベース板11の下面からスカート部15eの上面に到達する補強板15f、15fが付設されている。スカート部15eの内面は、下向きに斜めに開拡され、スカート部15eの外径は、容器20の口部21に適合している(図2)。
【0026】
図2において、容器20内に多数の錠剤を収納し、全体を下向きにすると、ランダムな姿勢の錠剤Tは、非対称な屈曲板15b、15cを介してガイド溝15aの方向に姿勢が転換され(図4(A)〜(D))、ガイドリブ15dを介して取出口11aに円滑に導くことができる。ただし、図4には、1錠の錠剤Tのみが図示されている。なお、ガイド溝15aの最小幅は、錠剤Tが径方向に進入可能に設定されている。また、取出口11aは、1錠の錠剤Tが径方向に通過可能な長方形に形成され、ガイド溝15aと同方向に形成されている。
【0027】
容器20内の錠剤T、T…の排出動作を図5に示す。
【0028】
キャップ30を外して容器20を斜め下向きにすると(図5(A))、容器20内の錠剤T、T…の一部は、ガイド溝15a内に進入して整列され、先頭の1錠の錠剤Tは、取出口11aを経て制御部14の保持口14a内に保持される。保持口14a内の錠剤Tは、保持口14aの位置が排出口12aの位置と合致していないため、排出口12aに移行することが阻止されるからである。なお、このとき、容器20は、取出口11a、排出口12aを下側にして斜め下向きにするものとする。
【0029】
そこで、操作部13の上面後部を押し操作すると(図5(A)の矢印K1 方向)、操作部13が後方に傾く(図5(B))。したがって、制御部14は、支持片14bを介し、排出部12に接するようにして後方に引かれ(図5(B)の矢印K3 方向)、保持口14aの位置が排出口12aの位置に合致し、保持口14a内に保持されていた錠剤Tは、排出口12aに移行して外部に排出される。
【0030】
一方、容器20内の錠剤Tは、制御部14が後方に相対移動しているため、取出口11aから保持口14aに進出することができず、外部に排出される錠剤Tは、先頭の1錠のみである。
【0031】
つづいて、操作部13に対する押し操作を解放すると、操作部13は、図5(A)の元の姿勢に自動復帰し、次の錠剤Tが取出口11aから保持口14aに進出して保持される。そこで、操作部13を再度押し操作すれば、次の1錠を外部に排出させることができ、以下同様にして、操作部13を押し操作するごとに錠剤Tを1錠ずつ確実に外部に排出させることができる。なお、図5において、操作部13の押し操作を解放する都度、容器20を振ると、ガイド溝15a内の錠剤T、T…を再整列し、排出口12aからの錠剤Tの排出動作を一層確実にすることができる。
【0032】
以上の説明において、ガイド部15の屈曲板15b、15cは、対称形の曲面に形成してもよい。また、ベース板11上の操作部13、排出部12、制御部14は、図示以外の任意の形状に変形してもよく、操作部13を支持する屈曲ヒンジ13c、13cについても、同様である。なお、この発明の中栓は、たとえば、ポリプロピレンのような適切な弾性を有する硬質プラスチック材料により一体成形することができる。ただし、屈曲ヒンジ13c、13cをたとえば金属製のばね材に代えることにより、操作部13を別部材に形成してもよい。また、保持口14aの幅をたとえば錠剤Tの2錠分の厚さ相当に拡大すれば、複数錠を一度に排出させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、円盤形やレンズ形などの円形の錠剤の糖衣錠、フィルムコート錠などに対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
T…錠剤
11…ベース板
11a…取出口
12…排出部
12a…排出口
13…操作部
14…制御部
14a…保持口
15…ガイド部
15a…ガイド溝
15b、15c…屈曲板
15d…ガイドリブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤の取出口を開口するベース板と、前記取出口の上部に固定する錠剤の排出口付きの排出部と、前記ベース板上に搭載する操作部と、上下開放の錠剤の保持口付きの制御部と、容器内の錠剤を整列させて前記取出口に導くガイド部とを備えてなり、前記制御部は、前記操作部に連動して前記取出口、排出口の間で相対移動可能であり、前記操作部を押し操作しないとき、前記取出口からの錠剤を前記保持口に保持し、前記操作部を押し操作すると、前記保持口内の錠剤を前記排出口に移行させるとともに、前記取出口からの錠剤の進出を阻止することを特徴とする錠剤容器の中栓。
【請求項2】
前記取出口、保持口、排出口は、それぞれ1錠の錠剤が径方向に通過可能に形成することを特徴とする請求項1記載の錠剤容器の中栓。
【請求項3】
前記ガイド部は、錠剤が径方向に進入可能なガイド溝を介して非対称の屈曲板を対向させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の錠剤容器の中栓。
【請求項4】
前記ガイド溝の一方の端面には、前記取出口の内周に連続するガイドリブを形成することを特徴とする請求項3記載の錠剤容器の中栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1214(P2012−1214A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134802(P2010−134802)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】