説明

錠剤組成物

【課題】 口腔内での咀嚼や嚥下を容易にする低い硬度を有しながらも、摩損度が低く取扱い上十分な強度を有する錠剤を提供すること。
【解決手段】 本発明は、凝固点が−30℃〜15℃である中鎖脂肪酸トリグリセリドを錠剤全体に対して3〜10重量%含有する圧縮成型錠剤であって、5〜50Nの硬度を有する圧縮成型錠剤を提供する。好ましくは、本発明の圧縮成型錠剤は糖アルコールをさらに含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内での咀嚼や嚥下を容易にする低い硬度を有しながらも、摩損度が低くて割れや欠けなどが少ない、取扱い上十分な強度を有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内で、咀嚼などにより崩壊又は溶解させて服用する咀嚼型錠剤は、水がなくても服用できるため携帯に便利であり、また、手間なく服用できるという利点がある。しかし、一般的な咀嚼型錠剤は、お年寄りや、咀嚼を困難とするような体の不自由な患者が服用するには、硬度が高く、咀嚼が容易でない。またお年寄り等でなくとも一般に、硬度の硬い錠剤よりも低い錠剤の方が服用感が良いので、消費者に好まれる傾向にある。
【0003】
このような点から、錠剤の硬度を下げて、咀嚼性を改善することが考えられている。しかし硬度を下げると、咀嚼性は改善できるものの、硬度が低下するにつれて錠剤の磨耗や割れや欠けの発生頻度が高まるため、実用上十分な強度が得られなくなる。すなわち、製造、運搬、投薬などの種々の段階で錠剤が破損又は摩耗し易くなり、そして錠剤が破損又は摩耗すると、質量が減少して必要な服用量を摂取するのが困難となる。例えば、複数の錠剤を瓶詰めしたり、携帯用の容器に詰めて運搬又は移動すると、錠剤の破損や摩耗により、一定の品質や服用量を確保するのが困難となる。また、強度が不十分な錠剤の破損や摩耗を防止するために、SP包装やPTP包装などの包装方法により1錠毎に個装すると、コストが高くなる。
【0004】
そこでこれまでにも、口腔内での咀嚼や嚥下を容易にするために必要とされる低い硬度と、製造・流通工程において必要とされる十分な強度とを兼ね備えた錠剤の開発が検討されてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、薬効成分、糖類、及び融点が40℃〜70℃である固体状ポリエチレングリコールを含有し、かつ前記ポリエチレングリコールが前記薬効成分及び前記糖類との間に粒子間架橋を形成した多孔質構造を有する口腔内溶解型錠剤が開示されている。
【0006】
さらに特許文献2には、薬効成分、糖類、及び融点が40℃〜90℃である低融点物質を含有し、かつ前記低融点物質が前記薬効成分及び前記糖類との間に粒子間架橋を形成した多孔質構造を有する口腔内溶解型錠剤が開示されている。特許文献3ではまた、40℃より低い融点を示すものは、室内保存時、その保存場所によっては低融点物質が再溶融し、錠剤特性が変化する等、所望の効果が期待できない旨の教示がなされている。
【0007】
一方、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、可塑剤等としてこれまでにも製剤上利用されている液状の脂肪油物質であり、極めて低い凝固点を有することが知られている。ところで一般に、液状の可塑剤は、圧縮成型錠剤中に配合する場合には、せいぜい多くても2重量%程度しか配合できないと考えられていた。例えば、特許文献3は、可塑剤が多すぎるとそれ自体錠剤の圧縮性質に影響を及ぼす(例を示せば、応々にして可塑剤は液体であり、従って多すぎる可塑剤の使用は錠剤中に過剰の液体を与える)という自明の要件により支配され、かくして錠剤中の可塑剤の量の上限は2重量%とするのが良いという教示を与えている。
【0008】
従ってこれまで、極めて低い凝固点を有し、液状の可塑剤として使用され得る中鎖脂肪酸トリグリセリドを、3〜10重量%もの量で含む圧縮成型錠剤は全く教示も示唆もされておらず、よってこれまで、そのような中鎖脂肪酸トリグリセリドが、口腔内での咀嚼や嚥下を容易にするために必要とされる低い硬度と、製造・流通工程において必要とされる十分な強度とを兼ね備えた錠剤の開発のために有益に用いられ得ることは、全く教示も示唆もされていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−33084号公報
【特許文献2】特開平11−35451号公報
【特許文献3】特開昭58−32820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来の問題に鑑み、口腔内での咀嚼や嚥下を容易にする低い硬度を有しながら、一方で、摩損度が低く錠剤の磨耗や割れ、欠けなどが少ないという取扱い上十分な強度をも兼ね備えた新規の有用な錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、−30℃〜15℃という極めて低い凝固点を有する中鎖脂肪酸トリグリセリドを錠剤全体に対して3〜10重量%という特定の高い割合で配合して圧縮成型すると、低い硬度を有しながらも、磨耗や割れ、欠けの発生頻度が低く取扱い上十分な強度を備えた錠剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
従って、本発明は以下を提供する。
(1)凝固点が−30℃〜15℃である中鎖脂肪酸トリグリセリドを錠剤全体に対して3〜10重量%含有する圧縮成型錠剤であって、5〜50Nの硬度を有する圧縮成型錠剤。
(2)糖アルコールをさらに含有する、項目(1)に記載の圧縮成型錠剤。
(3)前記糖アルコールの37℃における臨界相対湿度が70%以上である、項目(2)に記載の圧縮成型錠剤。
(4)前記糖アルコールが、D−マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、および還元パラチノースからなる群より選択される少なくとも一種である、項目(2)または(3)に記載の圧縮成型錠剤。
(5)前記圧縮成型錠剤の摩損度が1%以下である、項目(1)〜(4)のいずれかに記載の圧縮成型錠剤。
(6)咀嚼型錠剤である、項目(1)〜(5)のいずれかに記載の圧縮成型錠剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、口腔内での咀嚼や嚥下を容易にする低い硬度を有しながら、一方で、摩損度が低く錠剤の磨耗や割れ、欠けなども少ないという取扱い上十分な強度をも兼ね備えた新規の有用な錠剤が提供される。本発明の錠剤は、取扱い上十分な強度を有するので、SP包装やPTP包装などの包装方法により1錠毎に個装することを必ずしも必要としない。従って本発明の錠剤は、瓶やライター型携帯容器などの包装容器中に、複数個を一緒に充填して流通・販売を行うことも可能であり、コスト的にも有利である。
【0014】
また下記の実施例に示されるように、本発明によれば、打錠圧を厳密にコントロールしなくても、幅広い範囲の打錠圧で、目的とする硬度及び強度を有する錠剤を容易に得ることができる。さらに本発明の錠剤は、従来、易崩壊錠を得るのに有用とされた凍結乾燥や複雑な製造工程を必ずしも経る必要がなく、単に構成成分を混合した組成物を圧縮成型するという非常に簡便な操作で製造することができる。以上のように、本発明の錠剤は、非常に簡便に製造可能であるという点においても極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたって、単数形の表現は、特に他に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書中において使用される用語は、特に他に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられていることが理解されるべきである。
【0016】
本明細書において用いられる用語「中鎖脂肪酸」とは、CH(CHCOOHで表される飽和脂肪酸であって、n=4〜10のものをいい、好ましくはn=6〜8のものをいう。
【0017】
本発明に用いられる「中鎖脂肪酸トリグリセリド」は、単にMCT(Medium Chain Fatty Acid Triglycerideの略) とも称され、グリセリンにエステル結合している3つの脂肪酸の少なくとも1つが中鎖脂肪酸であるトリグリセリド、より好ましくは、グリセリンにエステル結合している3つの脂肪酸の少なくとも2つが中鎖脂肪酸であるトリグリセリド、最も好ましくは、グリセリンにエステル結合している3つの脂肪酸のすべてが中鎖脂肪酸であるトリグリセリドをいう。
【0018】
本発明には、グリセリンにエステル結合している中鎖脂肪酸種が一種類のみのトリグリセリド(例えば、グリセリンにエステル結合している中鎖脂肪酸がカプリル酸のみのトリグリセリド)が用いられても良いし、グリセリンにエステル結合している中鎖脂肪酸種が複数種であるトリグリセリド(例えば、グリセリンにエステル結合している中鎖脂肪酸が、カプリル酸及びカプリン酸である(カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド)が用いられても良い。また本発明の中鎖脂肪酸トリグリセリドには、一種類の中鎖脂肪酸トリグリセリドのみが用いられても良いし、複数種の中鎖脂肪酸トリグリセリドの混合物が用いられても良い。
【0019】
本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドは、天然物からの抽出物であってもよいし、合成物であってもよい。また本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドには市販品も利用可能であり、例えば、花王株式会社(商品名:ココナード)、日清サイエンス株式会社(商品名:ODO−L)、ミツバ貿易株式会社(商品名:ミグリオール)、日本油脂株式会社(商品名:パナセート)、高級アルコール工業株式会社(商品名:TCG−M)、または理研ビタミン株式会社(商品名:アクター)などから容易に入手可能である。
【0020】
用語「凝固点」は、当業者に一般に理解され得る通り、液体または気体の凝固が始まる温度をいい、例えば、第十四改正日本薬局方に収載される凝固点測定法等により当業者に容易に測定され得る。不純物や混合物の場合、凝固過程で凝固点が変化するので融点と凝固点は一致せず、一般に混合物などの凝固点は純物質の凝固点よりも、やや低くなることが知られている。なお、純物質の場合には、凝固点は融点に一致する。
【0021】
本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドは、−30℃〜15℃の凝固点を有する。より好ましくは、本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセリドは、−20℃〜10℃の凝固点を有し、さらに好ましくは−15℃〜5℃の凝固点を有し、特に好ましくは−10℃〜0℃の凝固点を有し、最も好ましくは−8℃〜−2℃の凝固点を有する。
【0022】
本発明の錠剤は、錠剤全体に対して3〜10重量%となる範囲内で中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する。この中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有割合は、使用する中鎖脂肪酸トリグリセリドの種類や性質などから、上記範囲内で当業者により適宜変動され得る。好ましくは、錠剤全体に対する中鎖脂肪酸トリグリセリドの含有率は、錠剤全体に対して3〜8重量%であり、より好ましくは錠剤全体に対して3〜7重量%であり、さらに好ましくは錠剤全体に対して3〜6重量%であり、特に好ましくは錠剤全体に対して3〜5重量%である。
【0023】
本発明の錠剤は、圧縮成型法により製造される。通常、凝固点が極めて低い液状物質を錠剤中に多量に含有させると、錠剤の構成成分が打錠杵に付着し(スティッキング)、圧縮成型法で錠剤を製造することは困難と考えられていた。しかるに本発明者らは、意外にも、凝固点が著しく低い液状の中鎖脂肪酸トリグリセリドを本発明のように高い割合で配合しても、円滑に打錠でき、容易に錠剤を製造できることを見出した。
【0024】
具体的には、本発明の錠剤は、上述した中鎖脂肪酸トリグリセリド及び必要に応じて配合される他の任意成分(例えば、錠剤の形を整えるために配合される賦形剤などが挙げられるが、これに限定されない)などの錠剤配合成分を、秤量し混合した後、そのまま直接的にこの混合物を圧縮成型するか(直打法)、または上記のようにして得られた混合物に造粒処理を施して造粒物を製造し、さらに必要に応じてこの造粒物を整粒して顆粒物とした後に、この造粒物又は顆粒物を圧縮成型することにより製造される(間接圧縮法)。
【0025】
錠剤配合成分の混合方法としては、各錠剤配合成分を安定かつ均一に混ぜることができる当該分野で公知の任意の方法が利用され得る。最も簡便には、例えば、容器回転型混合機や容器固定型混合機などの混合機を利用して混合され得る。
【0026】
必要に応じて、下記に説明する圧縮成型処理を施す前に、このようにして得られた混合物に造粒処理をして造粒物を製造するか、又はさらに整粒処理をして顆粒物を製造する。本発明の錠剤を得るために行われ得る造粒処理方法としては、例えば、押出造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、高速攪拌造粒法、スプレードライ法、乳化造粒法などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の錠剤を得るために行われ得る整粒処理方法としては、湿式解砕整粒法、乾式解砕整粒法、ロール式粉砕法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
上記のようにして得られた混合物、造粒物又は顆粒物を圧縮成型するためには、当該分野で公知の任意の圧縮成型装置が利用され得る。圧縮成型装置としては、例えば、ロータリー式打錠機、単発打錠機などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、ロータリー式打錠機を利用して圧縮成型される。
【0028】
本明細書において、錠剤の「硬度」とは、錠剤を破壊するために必要な力の程度、具体的には錠剤の直径方向に力を加えて、破断したときの力(単位:N)をいい、例えば、下記実施例に記載のように錠剤破壊強度測定器などを用いて容易に測定され得る。
【0029】
本発明者らは、凝固点−30℃〜15℃である中鎖脂肪酸トリグリセリドを錠剤全体に対して3〜10重量%含有するように錠剤配合成分を秤量し混合した後、この錠剤配合成分を、その硬度が5〜50Nの範囲内となるように成型すると、口腔内での咀嚼や嚥下が容易となって、滑らかな食感が得られ、極めて良好な服用感が得られる一方で、驚くべき事に摩損度も低く錠剤の磨耗や割れ、欠けなどが少ない取扱い上十分な強度をも兼ね備えた有益な錠剤となることを見出した。
【0030】
以上より本発明の錠剤は、5〜50Nの硬度を有する。本発明の錠剤の硬度は、5〜50Nの範囲内である限りにおいて任意の硬度であり得る。特定の実施形態において、本発明の錠剤の硬度の下限は、例えば10N以上であり得、12N以上であり得、15N以上であり得、20N以上であり得、25N以上であり得、または29N以上であり得る。また本発明の錠剤の硬度の上限は、例えば48N以下であり得、45N以下であり得、40N以下であり得、35N以下であり得、または30N以下であり得る。錠剤の硬度は、下記実施例に記載のような錠剤の硬度試験等により容易に決定され得る。
【0031】
錠剤の硬度が5N〜50Nとなる範囲内であれば、圧縮成型する際の打錠圧は、任意の打錠圧が利用され得る。当業者は、目的の硬度を得るために必要な打錠圧を、技術常識や経験則などから適宜決定し得る。また下記の実施例に示されるように、本発明によれば、打錠圧を特に厳密にコントロールすることは必要ではなく、比較的幅広い範囲の打錠圧で、5〜50Nの硬度を有する錠剤を得ることができる。好ましくは、圧縮成型する際の打錠圧は1〜30kN/杵であり、より好ましくは5〜20kN/杵、特に好ましくは5〜15kN/杵である。
【0032】
本明細書において、錠剤の「摩損度」とは、衝撃に対する錠剤の磨耗性やもろさを示す値をいい、具体的には、第十四改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法に準拠して、内径約287mm、深さ約38mmの透明で内面は滑らかなプラスチック性ドラム型の試験器に錠剤を入れ、24〜26回転/1分間の回転速度で100回転させたのち、全錠剤の質量を精密に量り、初期質量に対する減少質量の質量百分率を算出することにより求められる値をいう。
【0033】
本発明の錠剤は、低い硬度を有するにもかかわらず、摩損度が著しく低い。好ましい実施形態において、本発明の錠剤の摩損度は1%以下である。より好ましくは、本発明の錠剤の摩損度は0.8%以下であり、さらに好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0034】
本発明の錠剤は任意の形態をとり得るが、好ましくは、口腔内において、必要により咀嚼して崩壊又は溶解することにより嚥下可能な形態(本明細書では、この形態を「咀嚼型錠剤」という)をとる。咀嚼型錠剤の例としては、チュアブル錠、口腔内速崩壊錠、口腔内速溶解錠などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の錠剤はチュアブル錠である。
【0035】
本発明の錠剤はさらに、糖アルコールを含有し得る。下記の実施例に示すように、本発明の錠剤では、糖アルコールを併用することにより、錠剤の硬度が著しく低くなっても摩損度が低く、取扱い上十分な強度を有し得ることが実証されている。
【0036】
本発明に用いられる「糖アルコール」は、糖分子のカルボニル基を還元して得られる任意の多価アルコールをいい、D体またはL体またはDL体のいずれでもあってもよい。例えば、糖アルコールは、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース(パラチニット)、ソルビトールなどであり得る。
【0037】
なお、実施例で使用した糖アルコールのD−マンニトール、キシリトール、及びラクチトールはいずれも、37℃における臨界相対湿度が70%以上であることが知られている。よって好ましくは、本発明には、37℃における臨界相対湿度が70%以上の糖アルコールが用いられる。用語「臨界相対湿度」とは、臨界比湿度とも呼ばれる当該分野で周知の吸湿性パラメーターであり、目的とする物質に固有の吸湿度を示す。臨界相対湿度が低いことはその物質が吸湿し易い性質を有することを意味し、逆に、臨界相対湿度が高いことはその物質が吸湿し難い性質を有することを意味する。37℃における臨界相対湿度が70%以上である糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、キシリトール、D−マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノースなどが挙げられ、本発明にはこれらの糖アルコールが好適に用いられ得る。より好ましくは、本発明に用いられる糖アルコールは、エリスリトール、キシリトール、D−マンニトール、及び/又はラクチトールである。
【0038】
本発明の錠剤には、上述のような糖アルコールの中から1種類のみが用いられても良いし、2種類以上が組み合わせて用いられても良い。
【0039】
本発明に用いられる糖アルコールは、天然物からの抽出物であってもよいし、合成物であってもよく、また市販品も利用可能である。例えば、糖アルコールの市販品は、三菱化学工業(商品名:エリスリトール)、東和化成工業(商品名:キシリット、マンニット、ソルビット、アマルティ、レシス、ミルヘンなど)、花王株式会社(商品名:日本薬局方マンニトール花王)、日研化成株式会社(商品名:ラクチトール日研)などから容易に入手可能である。
【0040】
本発明の錠剤に糖アルコールを配合する場合、錠剤全体に対するその配合率は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限はなく、また使用する糖アルコールの種類や性質などに基づき当業者により適宜変動され得る。しかし好ましくは、錠剤全体に対する糖アルコールの含有率は、錠剤全体に対して30〜97重量%、好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜75重量%である。
【0041】
本発明の錠剤における中鎖脂肪酸トリグリセリドと糖アルコールとの配合比は、本発明の効果を奏し得る限り特に制限はなく、また使用する中鎖脂肪酸トリグリセリド及び糖アルコールの種類や性質などに基づき当業者により適宜変動され得る。しかし好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリド1重量部に対して、糖アルコールが3〜32重量部、より好ましくは4〜30重量部、特に好ましくは5〜25重量部である。
【0042】
さらに本発明の錠剤は、必要に応じて、下記に列挙するような他の成分を含み得る。下記のような他の成分は、単独で又は二種以上組み合わせて配合され得る。また下記に列挙するような他の成分は、その生理学的又は薬学的に許容可能な塩の形態でもあり得る。
【0043】
さらなる成分として配合可能な成分としては、例えば、薬効成分(生理活性成分、薬理活性成分、又は有効成分)などが挙げられる。これらの成分としては、特に制限されず、例えば、解熱鎮痛成分(アスピリン、サリチル酸メチルなどのサリチル酸誘導体;アセトアミノフェン、サザピリン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリン、インドメタシン、イブプロフェンなど)、鎮静催眠成分(ブロムワレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素など)、抗炎症成分(セレコキシブ、リゾチーム、アズレンスルホン酸など)、抗ヒスタミン成分(クロルフェニラミン、メキタジン、ジフェンヒドラミンなど)、抗アレルギー成分(エメダスチンなど)、去痰成分(グアヤコールスルホン酸カリウム、塩酸L−エチルシステイン、クレゾールスルホン酸カリウム、塩酸ブロムヘキシン、塩酸アンブロキソール、グアイフェネシンなど)、鎮咳成分(マオウ、ナンテンジツなどの生薬など)、気管支拡張剤(カフェインなどのキサンチン誘導体など)、副交感神経遮断剤(ベラドンナアルカロイド、ベラドンナ総アルカロイドなど)、殺菌成分(塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジンなど)、昇圧剤(塩酸フェニレフリンなど)、健胃成分(アニス実、アロエなどの生薬;カルニチンなどの副交感神経興奮剤;メトクロプラミドなどの抗ドーパミン薬;トリメブチン、メントール、グルタミン酸など)、制酸成分(炭酸マグネシウム、沈降炭酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ヒスタミンH2受容体拮抗剤(シメチジンなど)、プロトンポンプ阻害剤(ランソプラゾールなど)など)、粘膜修復成分(グリチルリチン酸又はその塩など)、消化成分(ジアスターゼ、パンクレアチン、ペプシンなど)、細胞賦活成分(レチナール、レチノールなど)、生薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類などが例示できる。薬効成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0044】
上述のような薬効成分の含有量は、錠剤の大きさや用途などによって適宜選択でき、錠剤全体に対して、例えば、0.001〜80重量%、好ましくは0.001〜30重量%、より好ましくは0.001〜10重量%などであり得る。
【0045】
本発明の錠剤はまた、前記薬効成分以外の他の成分として、医薬部外品や医薬品又は食品に使用される慣用の成分、例えば、甘味剤、矯味剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、賦形剤、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、清涼化剤の他、コーティング剤、崩壊補助剤、安定化剤、懸濁化剤、流動化剤、乳化剤、粘稠化剤、増粘剤、緩衝剤、香料、着色剤、分散剤、吸着剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤、発泡剤などを含有してもよい。本発明の製剤は、非イオン性界面活性剤を含有することが特に好ましい。とりわけ中鎖脂肪酸トリグリセリドと糖アルコールを含有する本願発明の実施形態において、非イオン性界面活性剤をさらに加えることにより製剤の崩壊性を顕著に向上させることができる。ここで非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましくは、本発明の製剤には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート80(別名:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.))、ポリソルベート60(別名:モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.))、ポリソルベート20(別名:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.))など)が用いられる。
【0046】
上述のような、薬効成分以外の他の成分の含有量は、錠剤の大きさや用途などによって適宜選択でき、錠剤全体に対して、例えば、0.001〜97重量%、好ましくは0.01〜90重量%などであり得る。例えば、上述のような理由から本願製剤に非イオン性界面活性剤を加える場合、非イオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されるものではないが、錠剤全体に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%などとするのがよい。
【0047】
さらに、本発明の圧縮成形錠剤は、苦味を有する成分を配合しても、苦味が有意にマスキングされることが明らかとなっている。この苦味マスキング効果は、凝固点が−30℃〜15℃の中鎖脂肪酸トリグリセリドを全く含有しない圧縮成形錠剤と比較して顕著な差異を示した。従って、本発明の錠剤には、苦味を有する成分をも好適に配合することができる。苦味を有する成分としては、例えば、ビンポセチン、フルスルチアミン、塩酸フルスルチアミン、塩酸セフキャネルダロキセート、塩酸セフォチアムヘキセチル、塩酸レナンピシリン、塩酸バカンピシリン、塩酸タランピシリン、塩酸ピブメシリナム、タンニン酸オキセラジン、塩酸クロブチノール、塩酸ベルベリン、臭化プロパテリン、塩酸パパベリン、塩酸チクロピジン、塩酸クロロプロマジン、トシル酸スルタミシリン、無水カフェイン、カフェイン、ジプロフィリン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ピリドキシン、ジメンヒドリナート、塩酸メクリジン、塩酸メチルエフェドリン、グアヤコールスルホン酸カリウム、グアイフェネジン、塩酸クロルヘキシジン、リン酸ジヒドロコデイン、塩酸エフェドリン、スピロノラクトン、テガフール、ステアリン酸エリスロマイシン、アラセプリル、パルプロ酸ナトリウム、塩酸メクロフェノキサート、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、ホパテン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、フェノバルビタール、シメチジン、塩酸エチレフリン、塩酸ピレンゼピン、塩酸ブチルスコポラミン、塩酸ジルチアミン、エノキサシン、ピロミド酸三水和物、塩酸プロプラノロール、フルフェナム酸、クロルプロマジン、ジギトキシン、塩酸プロメタジン、塩酸メトクロプラミド、オフロキサシン、スルピリン、アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、塩酸ペンジダミン、塩酸アルプレノロール、塩酸ビフェメラン、リドカイン、塩酸ジフェンヒドラミン、トルメチンナトリウム、塩酸ノルトリプチリン、塩酸ロペラミド、塩酸アゼラスチン、塩酸ビフェメラン、硫酸キニジン、S−(+)−(2−クロロフェニル)−3−シクロプロパンカルボニル−8、11−ジメチル−2、3、4、5−テトラヒドロ−8H−ピリド−〔4,3:4,5〕チエノ〔3,2−f〕〔1,2,4〕トリアゾロ〔4,3−a〕〔1,4〕ジアゼピン、(+)−(5R,6S)−6−〔(R)−1−ヒドロキシエチル〕−3−(3−ピリジル)−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ〔3.2.0〕ヘプト−2−エン−2−カルボン酸アセトキシメチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
上述のような苦味を有する成分の含有量は、錠剤の大きさや用途などによって適宜選択でき、錠剤全体に対して、例えば、0.001〜30重量%、好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%などであり得る。
【0049】
錠剤は、内服が容易な大きさ及び形状を適宜選択することができ、素錠であってもよく、フィルムコート基剤や糖類、糖アルコール類などで被覆されていてもよい。
【0050】
本発明の錠剤は、任意の包装形態で包装され得る。例えば、包装形態は、SP包装やPTP包装などのように1錠毎に個装する形態であってもよいし、あるいは任意の形状・用途の瓶または容器(例えば、ライター型携帯容器)等の包装体中に、複数個の錠剤を一緒にまとめて充填する形態をとってもよい。複数個の錠剤を一緒にまとめて包装体に充填する後者の形態は、コスト的に有利であり好ましい。包装体は、任意の材質のものであり得、例えば、ガラス製またはプラスチック製などであり得るが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の錠剤は、医薬品、医薬部外品、食品(例えば、老人用食品、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性食品、健康補助食品、サプリメント、健康食品、製菓、菓子、動物用食品、ペットフード、飼料)などの用途に幅広く利用することができる。また本発明の錠剤は、鼻炎薬、乗り物酔い薬、胃腸薬、下痢止め薬などの任意の用途の医薬品として利用され得る。特に好ましくは、本発明の錠剤は、水無しでも服用できる錠剤として好適に利用され得る。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0053】
実施例1:
(試験錠剤の調製)
本実施例の試験錠剤を下記方法により調製した。
まず、d−マレイン酸クロルフェニラミン6重量部、ベラドンナ総アルカロイド0.4重量部、無水カフェイン60重量部、塩酸フェニレフリン15重量部、アスパルテーム21重量部、トウモロコシデンプン190重量部、ヒドロキシプロピルセルロース27重量部、およびD−マンニトール439.6重量部を予め混合し、これにエタノールを適量加えて練合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)36重量部で分散させた後、押出造粒法により造粒した。この造粒物を整粒して顆粒にし、次いで、この顆粒に軽質無水ケイ酸75重量部およびステアリン酸マグネシウム30重量部を添加し、V型混合機((株)徳寿工作所製)にて15分間混合した。この混合物を、ロータリー式打錠機(コレクト19、(株)菊水製作所製)により打錠圧9.8kN/杵で打錠し、円形錠剤(直径9.5mm、一錠300mg)を得た。
【0054】
得られた試験錠剤に対して、下記の方法に従って錠剤の硬度及び摩損度について調べた。
【0055】
(錠剤の硬度試験)
得られた試験錠剤の中から任意に採取した10錠に対し、常法に従い、錠剤破壊強度測定器(富山産業(株)製、錠剤破壊強度測定器TH203型)で錠剤の直径方向に加圧し、錠剤が割れたときの力の程度(N)を測定して、その平均測定値を硬度とした。その結果、この試験錠剤の硬度は26.5Nであった。
【0056】
(錠剤の摩損度試験)
第十四改正日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法に準拠して試験を行った。すなわち、試験錠剤19錠の全質量(初期質量)を精密に量り、内径約287mm、深さ約38mmの透明で内面は滑らかなプラスチック性ドラム型の試験器に錠剤を入れ、24〜26回転/1分間の回転速度で100回転させた。回転終了後、全錠剤の質量を精密に量り、摩損度(初期質量に対する減少質量の質量百分率)を求めた。その結果、この試験錠剤の摩損度は、わずか0.25%であることが示された。
【0057】
実施例2:
本実施例の試験錠剤を下記方法により調製した。
まず、臭化水素酸スコポラミン0.5重量部、塩酸ピリドキシン12重量部、塩酸メクリジン50重量部、トウモロコシデンプン250重量部、キシリトール906.86重量部、ヒドロキシプロピルセルロース36重量部、アスパルテーム30重量部、および香料1.44重量部を予め混合し、これにエタノールを適量加えて練合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)43.2重量部で分散させた後、攪拌造粒法により造粒した。この造粒物を整粒して顆粒にし、次いで、この顆粒に軽質無水ケイ酸70重量部およびステアリン酸マグネシウム40重量部を添加し、V型混合機((株)徳寿工作所製)にて15分間混合した。この混合物を、ロータリー式打錠機(コレクト19、(株)菊水製作所製)により打錠圧9.8kN/杵で打錠し、円形錠剤(直径10mm、一錠360mg)を得た。
【0058】
実施例1に記載の方法と同様にして、錠剤の硬度及び摩損度について調べた。その結果、この試験錠剤の硬度は31.4Nであり、摩損度はわずか0.12%であることが示された。
【0059】
実施例3〜5及び比較例1:
下記の表1に示す処方の試験錠剤をそれぞれ調製した。
【表1】

【0060】
具体的には、表1に記載の各重量比で各配合成分を予め混合し、これにエタノールを適量加えて練合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)で分散させた後、押出造粒法により造粒した。この造粒物を整粒して顆粒にし、次いで、この顆粒に軽質無水ケイ酸(後末)およびステアリン酸マグネシウムを添加し、V型混合機((株)徳寿工作所製)にて15分間混合した。この混合物を、ロータリー式打錠機(コレクト19、(株)菊水製作所製)により、打錠圧5、10、15、または20kN/杵で打錠し、円形錠剤(直径10mm、一錠360mg)をそれぞれ得た。
【0061】
実施例1に記載の方法と同様にして、各錠剤の硬度について調べた。その結果を図1に示す。
【0062】
図1に示されるように、本発明の錠剤は、5〜20kN/杵の幅広い範囲の打錠圧において、硬度を5〜30Nの範囲にコントロールすることができた。
【0063】
一方、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含まない比較例1の錠剤の場合では、錠剤の硬度を5〜50Nとするためには約5〜約13.1kN/杵の打錠圧にする必要があり、また硬度を5〜30Nとするためには、さらに厳密に約5〜約9.3kN/杵の打錠圧にコントロールする必要があった。
【0064】
さらに、20Nの硬度を有する実施例3〜5及び比較例1の各錠剤を用いて、錠剤の摩損度試験を行った。摩損度試験は、実施例1に記載の方法に準じて行った。その結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0065】
表2から明らかなように、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)を3〜7重量%含有する実施例3〜5の圧縮成型錠剤は非常に摩損度が低く、取扱い上十分な強度を有することが実証された。一方、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含まない比較例1の錠剤の場合では、摩損度が非常に高かった。
【0066】
実施例6〜9:
下記の表3に示す処方の試験錠剤をそれぞれ調製した。
【表3】

【0067】
具体的には、表3に記載の各重量比で各配合成分を予め混合し、これにエタノールを適量加えて練合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)で分散させた後、押出造粒法により造粒した。この造粒物を整粒して顆粒にし、次いで、この顆粒にステアリン酸マグネシウムを添加し、V型混合機((株)徳寿工作所製)にて15分間混合した。この混合物を、ロータリー式打錠機(コレクト19、(株)菊水製作所製)により、打錠圧15kN/杵で打錠し、円形錠剤(直径10mm、一錠365mg)をそれぞれ得た。
【0068】
実施例1に記載の方法と同様にして、錠剤の硬度及び摩損度について調べた。その結果を、上記表3の下欄に示す。この結果、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)を5重量%含有する実施例6〜9の圧縮成型錠剤は、いずれも非常に低い硬度を有するにもかかわらず、摩損度が低く取扱い上十分な強度を有することが実証された。また驚くべきことに、D−マンニトール、キシリトール、ラクチトールといった糖アルコールを配合した場合には、取扱い強度の点から錠剤の硬度として通常想定され得ないような極めて低い錠剤の硬度を有するにもかかわらず、摩損度が低く取扱い上十分な強度を有することが明らかとなった。
【0069】
実施例10:
本実施例の試験錠剤を下記方法により調製した。
まず、塩酸ピリドキシン62.5重量部、ヒドロキシプロピルセルロース42重量部、トウモロコシデンプン270重量部、及びD−マンニトール933.86重量部を予め混合し、これにエタノールを適量加えて連合し、中鎖脂肪酸トリグリセリド((カプリル酸・カプリン酸)トリグリセリド、凝固点:約−5℃)43.2重量部及び12重量部のポリソルベート80で分散させた後、押出造粒法により造粒した。この造粒物を整粒して顆粒にし、次いでこの顆粒に1.44重量部の香料、50重量部の軽質無水ケイ酸および25重量部のステアリン酸マグネシウムを添加し、V型混合機((株)徳寿工作所製)にて15分間混合した。この混合物を、ロータリー式打錠機(コレクト19、(株)菊水製作所製)により打錠圧15kN/杵で打錠し、円形の咀嚼型錠剤(直径10mm、一錠360mg)を得た。
【0070】
実施例1に記載の方法と同様にして、錠剤の硬度及び摩損度について調べた。
その結果、この試験錠剤の硬度は23.5Nであり、摩損度は0.00%であり、割れ欠けは全く認められなかった。
【0071】
さらに、崩壊性試験法(一般試験法 日本薬局方第15改正)に準じて、この試験錠剤の崩壊性を試験した。詳細には、この試験錠剤と試験液(水を使用)をガラスの試験器に入れ(n=6)、試験液の温度を37℃±2℃に保ったままで、1分間に29〜32往復、振幅53〜57mmで滑らかに上下運動させた。そして錠剤の残留物が試験器内に認められなくなる迄の時間を計測した。その結果、この試験錠剤の崩壊時間は1.8〜3.2分と極めて短時間となり、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)を加えることにより、非イオン性界面活性剤を加えない場合(実施例3など)と比較して崩壊時間が極めて短くなることも明らかになった。
【0072】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示した。しかし本願発明は、添付の特許請求の範囲の記載によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、それらの内容が具体的に本明細書に記載されているのと同様に、その内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、実施例3〜5及び比較例1の圧縮成型錠剤における、打錠圧と硬度との間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固点が−30℃〜15℃である中鎖脂肪酸トリグリセリドを錠剤全体に対して3〜10重量%含有する圧縮成型錠剤であって、5〜50Nの硬度を有する圧縮成型錠剤。
【請求項2】
糖アルコールをさらに含有する、請求項1に記載の圧縮成型錠剤。
【請求項3】
前記糖アルコールの37℃における臨界相対湿度が70%以上である、請求項2に記載の圧縮成型錠剤。
【請求項4】
前記糖アルコールが、D−マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、および還元パラチノースからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項2または3に記載の圧縮成型錠剤。
【請求項5】
前記圧縮成型錠剤の摩損度が1%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮成型錠剤。
【請求項6】
咀嚼型錠剤である、請求項1〜5のいずれかに記載の圧縮成型錠剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−51133(P2007−51133A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196560(P2006−196560)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】