説明

錠剤製造用の脂肪族アミンポリマー塩

脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価のアニオンを含む本発明の錠剤、組成物および方法は、アシドーシス、特に腎疾患を有する患者におけるアシドーシスを予防するか、または改善し得る。本発明の錠剤および組成物は、60℃にて少なくとも10週間に対し、37℃および少なくとも1のpHにて30分以下の崩壊時間を維持する。さらに、錠剤は特別な貯蔵条件を必要とせずに長期間安定である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2004年11月1日に出願された米国特許仮出願第60/624,001号および2004年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/628,752号の利益を主張する。上記出願の全体の教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
リン酸過剰血症は、不充分な腎機能、副甲状腺機能亢進、およびある他の医学状態と関連する疾患を頻繁に伴う。リン酸過剰血症はヒトに対し、約4.5mg/dLよりも大きい血清リン酸レベルとして典型的に規定される。特に長期間にわたって存在する場合、状態はカルシウムとリン代謝の重篤な異常を導き、関節、肺および眼の異常石灰化によって発現され得る。
【0003】
脂肪族アミンポリマー等のアニオン交換ポリマーは、リン酸過剰血症の処置に用いられている。これらのポリマーは、任意の臨床上望ましくない物質の吸収が付随的に増大することなく、リン酸の血清レベルを減少させるための効果的な処置を提供する。
【0004】
代謝性アシドーシスは、不充分な腎機能に関連する疾患を伴う他の状態である。ヒトの身体は、糖類、脂肪類、タンパク質および(嫌気性代謝の下で生成される)乳酸の代謝からH+イオンを常に得ている。一定のpHを維持するために、身体はH+イオンを排出しなければならない。H+イオンの減少した排出が、腎疾患または腎不全を患う患者に起こり、それは代謝性アシドーシスをもたらし、それ故に過剰なH+イオンによる低血液pHをもたらす。
【0005】
リン酸過剰血症の現在の処置は、代謝性アシドーシスの問題に取り組んだものでない。本発明者はこの目的のために脂肪族アミンポリマーの炭酸塩を調製したが、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩から製造された錠剤は、短い貯蔵寿命となる欠点を有する。さらに、炭酸塩から製造された錠剤の崩壊時間は、標準的な貯蔵条件下で貯蔵した場合、時間が経つと増大する。崩壊時間のこの増大は、患者に対する薬物の活性成分の減少した利用可能性を導き得る。
【0006】
(発明の概要)
ここに、脂肪族アミン炭酸塩の錠剤に一価のアニオン源を添加することは、有意に貯蔵寿命を増大させ、錠剤を標準的な貯蔵条件下で貯蔵した場合、経時的に崩壊時間が増大するのを妨げることが分かった。さらに、錠剤中の脂肪族アミンポリマー粒子の粒径の増大が有意に貯蔵寿命を増大させ、錠剤を標準的な貯蔵条件下で貯蔵した場合、経時的に崩壊時間が増大するのを妨げることが分かった。
【0007】
一態様において、本発明は脂肪族アミンポリマーの炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩または乳酸塩を含む錠剤であり、該錠剤は60℃にて少なくとも10週間貯蔵されるとき、37℃、少なくとも1のpHにて30分以下の崩壊時間を維持する。好ましくは、脂肪族アミンポリマーはセベラマー(sevelamer)である。
【0008】
別の態様において、本発明は脂肪族アミンポリマーの炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩または乳酸塩、および一価のアニオン源を含む錠剤であり、一価のアニオンは、炭酸塩と一価のアニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する。
【0009】
別の態様において、本発明は脂肪族アミンポリマーの炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩または乳酸塩、および一価のアニオン源を含む組成物であり、一価のアニオンは、炭酸塩と一価のアニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する。好ましくは、該組成物は医薬用途のためであり、薬学的に許容され得る担体または希釈剤をさらに含む。
【0010】
別の態様において、本発明は炭酸セベラマー粒子からなる錠剤であり、粒子の少なくとも95容量%は、少なくとも45ミクロンの直径を有する。
【0011】
一態様において、本発明は、リン酸を除去する処置を必要とする患者からリン酸を除去する方法であり、本明細書中に開示された錠剤、組成物または医薬組成物の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0012】
本発明の錠剤、組成物および方法は、アシドーシス、特に腎疾患を有する患者のアシドーシスを予防するかまたは改善し得る。本発明の錠剤および組成物の崩壊時間は、標準的な条件下で貯蔵した場合、時間が経っても増大しない。さらに、錠剤は特別な貯蔵条件を必要とせずに長期間安定である。
【0013】
(発明の詳細な説明)
リン酸過剰血症の現在の処置は、しばしば腎不全を伴う低血液pHの問題に注意を向けない。脂肪族アミンポリマーの炭酸塩の使用は、この問題に注意を向けるのに有用であるが、炭酸塩の錠剤は、しばしば短い貯蔵寿命および標準的な貯蔵条件下で時間が経つと崩壊時間が増大する欠点を有する。ここに、炭酸塩に一価のアニオン源を添加することは、錠剤の崩壊時間の増大を妨げ、貯蔵寿命を増大させることが分かった。脂肪族アミンポリマーの粒径の増大が、錠剤の崩壊時間の増大を妨げ、貯蔵寿命を増大させることも分かった。
【0014】
一態様において、本発明は脂肪族アミンポリマーの炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩または乳酸塩からなる錠剤であり、該錠剤は37±2℃にて、60分、45分、30分、好ましくは20分、より好ましくは15分、最も好ましくは10分以下の崩壊時間を維持する。開示された錠剤は、少なくとも1のpH、より好ましくは1〜5のpH範囲にて、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、最も好ましくは1〜2、さらにより好ましくはpH1.2にて等の、酸性条件を含む広範なpH範囲にわたってこれらの崩壊時間を示す。崩壊時間は、実施例1にしたがって適合された米国薬局方27−国民医薬品集22(USP27-NF22)に記載される手順を用いて測定され得る。好ましい態様において、錠剤の崩壊時間は、密閉された水不浸透性容器で貯蔵されたとき、60℃にて少なくとも1週間、2週間、1ヶ月間、5週間、2ヶ月間、10週間、3ヶ月間、6ヶ月間、1年間または2年間一定のままである。本明細書中で炭酸塩をいうとき、出願人はまた重炭酸塩、酢酸塩、および乳酸塩もいう。
【0015】
アミンポリマーは、少なくとも1つのアミノ基を含む繰り返し単位によって特徴付けられる。アミノ基はポリマー主鎖(例えばポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン)の一部であり得、ポリマー主鎖からたれさがるもの(例えばポリアリルアミン)であるか、または両方型のアミノ基が、同一の繰り返し単位および/もしくはポリマーの内側に存在し得る。アミンポリマーとしては、脂肪族アミンポリマーおよび芳香族アミンポリマーが挙げられる。
【0016】
脂肪族アミンポリマーは、脂肪族アミンモノマーを重合することで得られる。脂肪族アミンは、アミノ置換基および任意に1つ以上のさらなる置換基を有する、飽和または不飽和、直鎖、分岐鎖または環式の非芳香族炭化水素である。脂肪族アミンモノマーは、オレフィン等の重合可能な基を含む脂肪族アミンである。脂肪族アミンポリマーの例としては、以下:





に示される1つ以上の繰り返し単位によって特徴付けられるポリマーが挙げられ、式中、yは0、または1以上の整数(例えば約1〜10、1〜6、1〜4、または1〜3の間)であり、各R、R1、R2、およびR3は独立して、Hあるいは(例えば、アミノエチルまたはポリ(アミノエチル)等、例えば1〜5(両端を含む)個の炭素原子を有するアミノアルキル等の、1〜25個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する)置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール(例えばフェニル)基であり、各X-は独立して、交換可能な負に帯電した対イオンである。典型的に、R、R1、R2、およびR3は各々が独立して、Hまたは置換もしくは非置換アルキル基である。
【0017】
本発明に用いられる1つの好ましいポリマーにおいて、R、R1、R2、またはR3基の少なくとも1つは、水素原子である。より好ましい態様において、これらの基の各々は水素である。一態様において、R、R1、R2、およびR3は、Hであり、ポリマーは構造式I〜IV、VIIおよび/またはVIIIで特徴付けられる繰り返し単位を含む。
【0018】
アルキルまたはアリール基として、R、R1、R2、またはR3は、1つ以上の置換基を有し得る。好適な置換基としては、カチオン基、例えば第四アンモニウム基、またはアミン基、例えば、第一、第二もしくは第三アルキルもしくはアリールアミンが挙げられる。他の好適な置換基の例としては、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキサミド、スルホンアミド、ハロゲン、アルキル、アリール、ヒドラジン、グアナジン、ウレア、ポリ(エチレンイミン)等のポリ(アルキレンイミン)、およびカルボン酸エステルが挙げられる。
【0019】
好ましい脂肪族アミンポリマーの一例は、構造式IX:


の1つ以上の繰り返し単位によって特徴付けられるもの、またはその薬学的に許容され得る塩であり、式中xは0または1〜4の整数、好ましくは1である。構造式IXで表されるポリマーは、多官能性架橋剤によって有利に架橋される。
【0020】
本発明に用いるための別の好ましいポリマーは、ポリアリルアミンであり、それは重合アリルアミンモノマーの繰り返し単位を有するポリマーである。アリルモノマーのアミン基は非置換であるか、または例えば1つか2つのC1〜C10直鎖アルキル基もしくは分岐アルキル基で置換され得る。アルキル基は任意に1つ以上のヒドロキシル基、アミン基、ハロ基、フェニル基、アミド基、またはニトリル基で置換される。好ましくは、本発明のポリアリルアミンポリマーは、構造式X:


で表される繰り返し単位を含む。
【0021】
アミンポリマーは、1つ以上のアミン含有モノマーのホモポリマーもしくはコポリマー、または1つ以上の異なるアミン含有モノマーもしくは非アミン含有モノマーと組み合わされた1つ以上のアミン含有モノマーのコポリマーであり得る。上記の構造式I〜Xで表される1つ以上の繰り返し単位を含むコポリマーは、好ましくは不活性で非毒性であるコモノマーを含む。好適な非アミン含有モノマーの例としては、ビニルアルコール、アクリル酸、アクリルアミド、およびビニルホルムアミドが挙げられる。
【0022】
ポリアリルアミンはまた、2つ以上の異なる重合アリルモノマーの繰り返し単位を含むか、または1つ以上の重合アリルモノマーの繰り返し単位、および1つ以上の重合非アリルモノマーの繰り返し単位を有するコポリマーであり得る。好適な非アリルモノマーの例としては、アクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、マレイン酸、マレイミド(malimide)モノマー、ビニルアシレート(acylate)モノマーおよびアルキル置換オレフィンが挙げられる。しかしながら好ましくは、本発明に用いられるポリアリルアミンは、重合アリルアミンモノマーのみの繰り返し単位を含む。より好ましくは、本発明に用いられるポリアリルアミンポリマーはホモポリマーである。さらにより好ましくは、本発明に用いられるポリアリルアミンポリマーは、構造式Xで表される繰り返し単位のホモポリマーであるか、またはその架橋ホモポリマーである。
【0023】
好ましくは、脂肪族アミンポリマーは、ホモポリアリルアミン、ホモポリビニルアミン、ホモポリジアリルアミンまたはポリエチレンアミン等のホモポリマーである。単語「アミン」は、本明細書中で用いられる場合、第一級、第二級および第三級アミン、ならびにトリアルキルアンモニウム等のアンモニウム基を含む。
【0024】
芳香族アミンポリマーは、1つ以上の繰り返し単位にアミン含有芳香族部分を含む。芳香族アミンポリマーの例はポリ(アミノスチレン)である。
【0025】
本発明に用いられるアミンポリマーは、H2CO3、またはHCO3-によりプロトン化される。好ましくは、40%未満、30%未満、20%未満、または10%未満のアミン基がプロトン化される。別の態様において、Genzyme Corporationから市販で入手可能なRenagel(登録商標)等の、10%〜70%、20%〜60%、30%〜50%、または35%〜45%のアミンがプロトン化される(例えばおよそ40%)。
【0026】
本発明に使用される好ましいポリマーは、水不溶性であり、非吸収性であり、任意に架橋ポリアミンである。好ましいポリマーは脂肪族である。好ましいポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、およびポリジアリルアミンポリマーが挙げられる。上記したように、ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであり、置換されるかまたは非置換であり得る。主張された発明に用いられ得るこれらのポリマーおよび他のポリマーは、米国特許第5,487,888号;5,496,545号;5,607,669号;5,618,530号;5,624,963号;5,667,775号;5,679,717号;5,703,188号;5,702,696号;5,693,675号;5,900,475号;5,925,379号;6,083,497号;6,177,478号;6,083,495号;6,203,785号;6,423,754号;6,509,013号;6,556,407号;6,605,270号;および6,733,780号に開示され、その全内容はここに参照によって本明細書中に援用される。本発明に用いるための好適なポリマーはまた、米国出願第08/823,699号(今では放棄);08/835,857号(今では放棄);08/470,940号(今では放棄);08/927,247号(今では放棄);08/964,498号;09/691,429号;10/125,684号;10/158,207号;10/322,904号;10/441,157号;および10/766,638号に開示され、その全内容は参照によって本明細書中に援用される。
【0027】
好ましくは、ポリマーは多官能性架橋剤等による架橋によって水不溶性となる。架橋剤は典型的に、モノマーのアミノ基と反応する官能基によって特徴付けられる。あるいは架橋剤は、アミンモノマーとフリーラジカル重合する2つ以上のビニル基で特徴付けられ得る。架橋ポリマーの重合の度合いは、一般に決定され得ない。
【0028】
好適な多官能性架橋剤の例としては、ジアクリレート類およびジメチルアクリレート類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、およびポリエチレングリコールジアクリレート)、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、エチリデンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビスフェノールA、ジメタクリレートおよびビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。架橋剤としてはまた、塩化アクリロイル、エピクロルヒドリン、ブタンジオールジグリシジルエーテル、エタンジオールジグリシジルエーテル、二塩化スクシニル、ビスフェノールAのジグリシダル(diglycidal)エーテル、ピロメリット酸二無水物、トルエンジイソシアネート、エチレンジアミンおよびジメチルスクシネートが挙げられる。
【0029】
架橋のレベルは、ポリマーを不溶性ならびに実質的に吸収および分解に対して耐性とし、それにより胃腸管に対するポリマーの活性を制限し、患者の潜在的副作用を減少させる。したがって組成物は活性において非全身性の傾向にある。典型的に架橋剤は、モノマーと架橋剤の全重量に基づいて、約0.5〜35重量%、または(約2.5〜20重量%もしくは約1〜10重量%等の)約0.5〜25重量%の量で存在する。
【0030】
いくつかの場合において、ポリマーは重合後に架橋される。かかる架橋を得る1つの方法は、ポリマーとエピクロルヒドリン、二塩化スクシニル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ピロメリット酸二無水物、トルエンジイソシアネート、およびエチレンジアミン等の二官能性架橋剤の反応を含む。典型的な例は、ポリ(エチレンイミン)とエピクロルヒドリンの反応である。この例において、エピクロルヒドリン(1〜100部)を、ポリエチレンイミン(100部)を含有する溶液に添加し、加熱して反応を促進させる。既に重合した材料に対して架橋を誘導する他の方法としては、限定されないが、電離放射線、赤外放射線、電子ビーム、ラジカルおよび熱分解に対する曝露が挙げられる。
【0031】
好ましい架橋剤の例としては、エピクロルヒドリン、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ジクロロプロパン、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジブロモプロパン、1,2-ジブロモエタン、二塩化スクシニル、ジメチルスクシネート、トルエンジイソシアネート、塩化アクリロイル、およびピロメリット酸二無水物が挙げられる。エピクロルヒドリンは、その高い利用性と安価のために好ましい架橋剤である。エピクロルヒドリンはまた、その低分子量および親水性素質のために有利であり、ポリアミンの水膨張可能性およびゲル特性が増大する。エピクロルヒドリンは、2-ヒドロキシプロピルの架橋基を形成する。好ましい態様において、本発明は、エピクロルヒドリンと架橋したポリアリルアミンポリマーである。
【0032】
典型的に、約9%〜約30%のアリル窒素(allylic nitrogen)原子が架橋基に結合され、好ましくは15%〜約21%である。
【0033】
好ましい態様において、本発明に用いられるポリアリルアミンポリマーは、約9.0〜9.8% w/w、好ましくは9.3〜9.5%のエピクロルヒドリンと架橋している、セベラマーとして公知のポリアリルアミンである。構造は以下で表され:


式中、
aおよびbの合計(第一のアミン基の数)は9である;
c(架橋基の数)は1である;
n(プロトン化アミンの割合(fraction))は0.4である;ならびに
mは大きい数である(ポリマー網目の拡張(extended)を示す)。
典型的に、エピクロルヒドリンの量は、ポリマーおよび架橋剤を合わせた重量の百分率として測定される。
【0034】
ポリマーはまた、さらに誘導体化され得る;例としては、例えば米国特許第5,679,717号、5,607,669号および5,618,530号に記載されるようなアルキル化アミンポリマーが挙げられ、その教示は全体において参照によって本明細書中に援用される。好ましいアルキル化剤は、(脂肪族疎水基等の)疎水基、および/または、第四アンモニウム置換アルキル基もしくはアミン置換アルキル基を含む。
【0035】
非架橋および架橋ポリアリルアミンならびにポリビニルアミンは、一般に当該分野で公知であり、市販で入手可能である。ポリアリルアミンおよびポリビニルアミン、ならびにその架橋誘導体の製造方法は、上記の米国特許に記載されている。Harada et al.による特許(米国特許第4,605,701号および4,528,347号)は、その全体が参照によって本明細書中に援用されるが、ポリアリルアミンおよび架橋ポリアリルアミンの製造方法も記載する。Stutts et al.による特許(米国特許第6,180,754号)は、架橋ポリアリルアミンを製造するさらなる方法を記載する。
【0036】
他の態様において、ポリマーはポリブテニルアミン、ポリリシン、またはポリアルギニンのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。あるいはポリマーは、アミンまたはアンモニウム置換ポリスチレン(例えばコレスチラミン)等の芳香族ポリマーであり得る。
【0037】
本発明のポリマーの分子量は重要だと思われないが、ただしポリマーが胃腸管に非吸収であるために、分子量は十分に大きいものとする。典型的に、分子量は少なくとも1000である。例えば分子量は、約1000〜約500万、約1000〜約300万、約1000〜約200万または約1000〜約100万であり得る。
【0038】
上記したように、ポリマーはプロトン化され、塩の形態で投与される。「塩」によって、繰り返し単位の窒素基はプロトン化され、負に帯電した対イオンと関連する正に帯電した窒素原子を作り出すことを意味する。好ましくは、塩は炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩または乳酸塩等の弱酸性塩である。
【0039】
一態様において、本発明は、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価のアニオン源を含む錠剤または組成物であり、一価のアニオンは、炭酸塩および一価のアニオン源を合わせた重量の少なくとも0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0040】
一価のアニオンは、患者に対する有害効果を最小限にするように選択される。好適なアニオンの例としては、有機イオン、無機イオン、またはその組み合わせ、例えばハロゲン化物イオン(Cl-、I-、Fl-およびBr-)、CH3OSO3-、HSO4-、酢酸イオン、乳酸イオン、酪酸イオン、プロピオン酸イオン、硫酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、蓚酸イオン、琥珀酸イオン、またはパモ酸イオン(palmoate)が挙げられる。好ましいアニオンはハロゲン化物イオンであり、最も好ましいのは塩化物イオンである。一価のアニオンはHSO3-以外である。
【0041】
一態様において、一価のアニオン源は、一価のアニオンの薬学的に許容され得る酸、アンモニウムまたは金属塩である。例えば一価のアニオン源は、一価のアニオンのリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ランタニドまたはアクチニド塩であり得る。一価のアニオン源は、アンモニウム、モノ、ジ、トリまたはテトラアルキル化アンモニウムであり得る。任意の上記された一価のアニオンは、上に挙げられた任意の金属と結合し、任意のH+と結合し得る。好ましくは、一価のアニオン源は、塩化ナトリウムまたは塩酸である。一態様において、錠剤または組成物は、セベラマーの炭酸塩および塩化ナトリウムを含む。1つの好ましい態様において、錠剤または組成物は、セベラマーの炭酸塩および塩化ナトリウム粉末を含む。別の好ましい態様において、錠剤または組成物は、塩化ナトリウム溶液でコーティングされたセベラマーの炭酸塩を含む。さらに別の態様において、錠剤または組成物は、セベラマーの炭酸塩および塩酸を含む。
【0042】
上記の態様において、一価のアニオン、例えば塩化イオンは、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩と金属塩または酸の重量、例えば炭酸セベラマーと塩化ナトリウムの重量の、0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0043】
別の態様において、一価のアニオン源は、上記の構造式I〜XIで表される繰り返し単位を含む脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩である。脂肪族アミンポリマーの炭酸塩と脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩の組み合わせは、本明細書中で「物理的に混合されたポリマー」として規定される。脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩は、脂肪族アミンポリマー炭酸塩と同一であるか、異なる脂肪族アミンポリマーであり得る。好ましくは、脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩はポリアリルアミンであり、より好ましくは、脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩はホモポリマーであり、最も好ましくは、脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩はセベラマーである。好ましい態様において、一価のアニオン源はセベラマーのハロゲン化物塩であり、より好ましくは塩化セベラマー(商品名RENAGEL(登録商標)で販売される)である。別の好ましい態様において、脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩はセベラマーの塩化物塩であり、脂肪族アミンポリマー炭酸塩は炭酸セベラマーである。
【0044】
上記した態様において、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩は、好ましくは、一価のアニオン:炭酸塩のモル比で1:2000、1:500、1:100、1:50、1:20、1:9、1:6、1:4、1:3、1:2、または1:1であり、より好ましくは一価のアニオン:炭酸塩のモル比で1:4である。この態様において、一価のアニオン、例えば塩化物イオンは、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩の重量と脂肪族アミンポリマーの一価のアニオン塩の重量、例えば炭酸セベラマーの重量と塩化セベラマーの重量を合わせた重量の、少なくとも0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0045】
別の態様において、一価のアニオン源は、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩である。この態様において、脂肪族アミンポリマーは主に炭酸イオンを含むが、またさらに炭酸以外の一価のアニオンを含む。この態様において、本発明は、脂肪族アミンポリマーの混合された炭酸および一価のアニオン塩を含む錠剤である。単一の脂肪族アミンポリマーにおける炭酸塩および一価のアニオン塩の組み合わせは、本明細書中で「化学的に混合されたポリマー」として規定される。脂肪族アミンポリマーは、上記の構造式I〜XIで表される繰り返し単位を含み;好ましくは、脂肪族アミンポリマーはセベラマーである。上記された任意の一価のアニオンがこの態様に用いられ得る。好ましくは、一価のアニオン塩はハロゲン化物塩であり、より好ましくは塩化物塩である。好ましくは、一価のアニオン塩に対する炭酸塩の混合は、一価のアニオン:炭酸のモル比で、1:2000、1:500、1:100、1:50、1:20、1:4、または1:1である。この態様において、一価のアニオン、例えば塩化物イオンは、脂肪族アミンポリマーの混合された炭酸および一価のアニオン塩の重量、例えば炭酸イオンおよび塩化物イオンの双方を有するセベラマーの重量の、少なくとも0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0046】
これらの化学的に混合されたポリマーは、例えば炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムの水溶液を塩化セベラマーの水溶液に添加することで調製され得る。塩化セベラマーに対する塩の比は、化学的に混合されたポリマーの所望の塩比を得るために変化し得る。好ましいモル比としては、塩酸セベラマー:炭酸セベラマーの1:2000、1:500、1:100、1:50、1:20、1:4、または1:1が挙げられる。
【0047】
別の態様において、化学的に混合された脂肪族アミンポリマーは、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩と混合され得る。脂肪族アミンポリマーは、上記の構造式I〜XIで表される繰り返し単位を含み、同一であるかまたは異なり得る。好ましくは、化学的に混合されたポリマーおよび炭酸塩ポリマーは、セベラマーである。化学的に混合されたポリマーの好ましいアニオンは、上記の通りである。好ましくは、化学的に混合されたポリマーおよび炭酸ポリマーは、化学的に混合された塩:炭酸塩のモル比で、1:2000、1:500、1:100、1:50、1:20、1:4、または1:1である。
【0048】
脂肪族アミンポリマー粒子の粒径を増大させると、本発明の錠剤の貯蔵寿命の増大がもたらされ、錠剤の崩壊時間が経時的に増大するのが抑制される。粒子は脂肪族アミンポリマー、好ましくはポリアリルアミンポリマー、より好ましくはホモポリマー、最も好ましくはセベラマー、および任意に1つ以上のさらなる薬学的に許容され得る成分を含む。好ましい態様において、粒子は脂肪族アミンポリマーの少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも100重量%を構成する。
【0049】
一態様において、本発明は、脂肪族アミンポリマー、好ましくはポリアリルアミン(polyallyamine)ポリマー、より好ましくはセベラマー、最も好ましくは炭酸セベラマーの炭酸塩の粒子を含む錠剤であり、粒子の少なくとも95容量%が、少なくとも45ミクロン、少なくとも60ミクロン、少なくとも80ミクロンまたは少なくとも100ミクロンの直径を有する。
【0050】
これらの脂肪族アミンポリマー粒子は、例えば賦形剤、担体または希釈剤と組み合わされ、本発明の錠剤または組成物を形成し得る。
【0051】
本発明の錠剤は、結合剤、流動促進剤(glidant)および潤滑剤等の1つ以上の賦形剤を含み得、それらは当該分野で公知である。好適な賦形剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、スクロース、セルロース、ステアリン酸カルシウム、ヘベン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸亜鉛およびステアリルフマル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、アカシア、トラガカント、ペクチン、ゼラチン、ポリエチレングリコールが挙げられる。好ましくは、セルロース誘導体は微結晶性セルロースであり、より好ましくはCeolus(登録商標)(Asahi Kasei Chemicals Corporation)である。
【0052】
本発明の錠剤は、(1)脂肪族アミンポリマーを水和化または乾燥して所望の含水レベルとする工程;
(2)脂肪族アミンポリマーを、含める任意の賦形剤と混ぜる工程;および
(3)従来の錠剤化技術を用いて混合物を圧縮する工程
を含む方法によって調製され得る。
【0053】
錠剤は任意にコーティングされる、すなわち脂肪族アミンポリマーおよび賦形剤は、コーティング剤で覆われたコアを形成する。一態様において、コーティング組成物は、セルロース誘導体および可塑剤を含む。好ましくは、セルロース誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。セルロース誘導体は水溶液として存在し得る。好適なヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液としては、低粘性HPMCおよび/または高粘性HPMCを含有するものが挙げられる。さらなる好適なセルロース誘導体としては、薄膜コーティング製剤に有用なセルロースエーテルが挙げられる。可塑剤は、例えばジアセチル化モノグリセリド等のアセチル化モノグリセリドであり得る。コーティング組成物は、所望の色のコーティングを錠剤に提供するために選択される顔料をさらに含み得る。例えば、白のコーティングを生成するために、二酸化チタン等の白い顔料が選択され得る。
【0054】
一態様において、本発明のコーティングされた錠剤は、上記したような本発明の錠剤コアを、溶剤、該溶剤中に溶解または懸濁された少なくとも1種類のコーティング剤、および任意に1つ以上の可塑剤を含むコーティング溶液と接触させる工程を含む方法によって調製され得る。好ましくは、溶剤は水もしくは水性緩衝液、または混合された水性/有機性溶剤等の水性溶剤である。好ましいコーティング剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。典型的に錠剤コアは、錠剤コアの重量が約3%〜6%の範囲の量だけ増加し、コーティングされた錠剤を形成するための錠剤コアにおける好適なコーティングの堆積を示すまでコーティング液と接触される。
【0055】
一つの好ましい態様において、コーティング溶液の固形物組成は:


である。
【0056】
錠剤は、当該分野で公知の回転パンコ―ター(rotary pan coater)、またはカラム(column)コーターもしくは連続コーター等の任意の他の従来のコーティング装置でコーティングされ得る。
【0057】
本発明はまた、錠剤以外の医薬組成物を包含する。これらの医薬組成物は、薬学的に許容し得る担体または希釈液、ならびに脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および上記したような一価のアニオン源を含む。好ましくは、一価のアニオン源は、炭酸塩および一価のアニオン源を合わせた重量の、少なくとも0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0058】
本発明の脂肪族アミンポリマー、錠剤および組成物は、好ましくは、経口投与される。これらは、被験体に、単独または医薬組成物で、任意に1種類以上のさらなる薬物が投与され得る。本発明の医薬組成物は、好ましくは、化合物または混合物を経口投与可能にするのに適した薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含有する。活性成分は、従来の薬学的に許容され得る担体または希釈剤と混合または配合され得る。当業者には、従来より使用され、活性剤に対して不活性である任意の投与様式、ビヒクルまたは担体が、本発明の医薬組成物の調製および投与のために利用され得ることが理解されよう。かかる方法、ビヒクルおよび担体の例示は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(1990)に記載されているものであり、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0059】
被験体における使用のための本発明の製剤は、薬剤とともに、1種類以上の許容され得る担体または希釈剤を含み、したがって、任意に他の治療用成分を含む。担体または希釈剤は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに対して有害でないという意味で「許容され得る」ものでなければならない。製剤は、単位投薬形態で簡便にもたらされ得、製薬の分野でよく知られた任意の方法によって調製され得る。すべての方法は、1種類以上の補助成分を構成する担体または希釈剤と薬剤を会合させる工程を含む。一般に、製剤は、薬剤を担体と均一に密接に会合させ、次いで、必要であれば、生成物を、その単位投薬量に分割することにより調製される。
【0060】
当業者は、本発明の方法に従って被験体に投与される本発明の組成物の種々の成分の量は、上記の因子に依存することを認識している。
【0061】
本発明の組成物は、錠剤、サシェ、スラリー、食品配合物、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムまたはロゼンジとして製剤化され得る。シロップ製剤は、一般的に、フレーバーまたは着色剤を含む液体担体、例えば、エタノール、グリセリンまたは水中の化合物または塩の懸濁液もしくは溶液からなる。組成物が錠剤の形態である場合、固体製剤を調製するために通常使用される1種類以上の医薬用担体が使用され得る。かかる担体の例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトースおよびスクロースが挙げられる。組成物がカプセルの形態である場合、通常のカプセル化の使用、例えば、硬質ゼラチンカプセル殻における前述の担体の使用が一般的に好適である。組成物が軟質ゼラチン殻カプセルの形態である場合、分散液または懸濁液を調製するために通常使用される医薬用担体、例えば、水性ガム、セルロース、シリケートまたは油が考慮され得、軟質ゼラチンカプセル殻内に混合される。
【0062】
脂肪族アミンポリマー、錠剤および組成物は、反復投薬単位または単回投薬単位として投与され得る。本明細書で用いる場合、投薬単位は、当該技術分野で認識された手順によって調製される錠剤、サシェ、スラリー、食品配合物、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラート、チューインガムなどであり得る。好ましくは、投薬単位は、錠剤、カプセル、サシェ、スラリー、懸濁液または食品配合物であり、より好ましくは、投薬単位は、錠剤、スラリー、懸濁液または食品配合物であり、最も好ましくは、投薬単位は、錠剤またはサシェである。典型的には、所望の用量の脂肪族アミンポリマーが、多数の錠剤またはカプセル、または単一用量のサシェ、スラリー、食品配合物、懸濁液またはシロップとして投与される。
【0063】
一例では、投薬単位は、無水物基準で800mgまたは400mgいずれかのセベラマーを含有する卵形のフィルムコートされた圧縮錠剤である。不活性成分は、塩化ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、Ceolus(登録商標)、ヒプロメロース(hypromellose)、およびジアセチル化モノグリセリドである。また別の態様では、投薬単位は、無水物基準で403mgのセベラマーを含有する硬質ゼラチンカプセルである。不活性成分は、塩化ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、Ceolus(登録商標)、ヒプロメロース、およびジアセチル化モノグリセリドである。
【0064】
本発明の脂肪族アミンポリマー、錠剤および組成物は、好ましくは、食事とともに投与される。
【0065】
本発明の方法は、高リン酸塩血症の患者の処置を含む。腎機能不全、副甲状腺機能低下症、偽副甲状腺機能低下症、急性未処置末端肥大症、リン酸塩の過剰投薬、ならびに横紋筋融解症および悪性腫瘍の処置中に起こる急性組織崩壊を有する患者において、一般的に、血清リン酸塩の上昇が存在する。
【0066】
本明細書において用いる場合、被験体は哺乳動物であり、好ましくはヒトであるが、また、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)または実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)などの獣医学的処置を必要とする動物であり得る。
【0067】
化合物の治療有効量は、処置される特定の状態に結果をもたらすか、影響を与える量である。本明細書において用いる場合、リン酸塩バインダーの治療有効量は、投与する患者の血清リン酸塩レベルを減少させるのに有効な量を意味する。
【0068】
リン酸塩バインダーの典型的な投薬量は、約5ミリグラム/日〜約10グラム/日、好ましくは約50ミリグラム/日〜約9グラム/日、より好ましくは約1グラム/日〜約8グラム/日、さらにより好ましくは約2グラム〜約7グラム、最も好ましくは約4グラム/日〜約6グラム/日の範囲である。本発明のリン酸塩バインダーは、食事とともに1日あたり少なくとも4回、食事とともに1日あたり少なくとも3回、食事とともに1日あたり少なくとも2回、食事とともに1日あたり少なくとも1回投与され得る(その全内容が参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第60/623,985号を参照)。
【実施例】
【0069】
実施例1
炭酸セベラマー単独を含有する製剤と比べた脂肪族アミン炭酸塩および1価アニオン製剤の混合物のより良好な適合性および崩壊時間
用語「物理的混合塩」は、セベラマーHClおよび炭酸セベラマーAPI(2種類の化合物)の乾燥ブレンドをいう。全塩化物は、4〜6%の範囲を目標とする。
【0070】
用いる炭酸セベラマーに対する塩酸セベラマーの比に基づき、塩酸セベラマーおよび炭酸セベラマーの最終混合物の%LODを計算した。目的の%乾燥減量(LOD)に対する混合物のぬれ性については、塩酸セベラマーAPI、炭酸セベラマーAPIおよびCeolus(登録商標)を、Diosna (高せん断ぬれ性付与(wetting)装置/造粒装置)に直接添加した。435 rpmで回転するインペラーを用いてブレンドを3分間混合した。次いで、スプレーボトルを用いて精製水をブレンドに添加し、20分間混合時間でDiosna Granulatorにおいて目的のLODを達成した。ブレンドを435 rpm のインペラー速度でさらに3分間混合した。ブレンドをDiosnaボウルから二重プラスチックバッグに移し、次いで、これを、しっかりと密閉し、プラスチック容器に保存した。湿性ブレンドを24時間平衡化させた。
【0071】
24時間後、必要量の湿性物質および潤滑剤を計量した。600ミクロンスクリーンを取り付けたコミル(co-mill)を用い、インペラーを2500 rpmで回転させて、湿性物質をスクリーニングした。湿性ブレンドの一部を適切な潤滑剤とともにバッグ内でブレンドし、600ミクロンスクリーンに通し、湿性セベラマーの第2の一部を600ミクロンスクリーンに通した。湿性ブレンドおよび潤滑剤を、次いで、V-ブレンダーにおいて115回転ブレンドした。
【0072】
粉末ブレンドを、目的の重量および硬度に合うように調整した回転式打錠プレス(Jenn-Chiang Machinery Co. Ltd.、(JCMCO))を用いて錠剤に圧縮した。プレスは、市販の工作機械器具設備と同じ表面積(0.405'×0.748")を有するBプレス工作機械器具設備の1ステーションに設置した。異なる圧縮パラメータを用いて錠剤を圧縮した。平均適合性 (打錠プレスで用いた主圧縮力に対する錠剤硬度の比)を、これらの条件から決定した。錠剤を脱塵した。このプロセスは、一般的に0.5〜1.5kgスケールで行なった。
【0073】
錠剤の崩壊試験を、酵素なしで1.2 pHを有する(0.1N HCl)擬似胃液USP中で行なった。崩壊装置および従った手順の詳細を以下に記載する。
【0074】
崩壊試験装置(USP27/NF22):
装置は、バスケット-ラックアセンブリ、1000-mlビーカー、液を35℃〜39℃に加熱するための恒温設備(arrangement)、および1分あたり29〜32サイクルの一定の頻度率で浸漬液中にバスケットを上昇および下降させるためのデバイスから構成された。
【0075】
バスケット-ラックアセンブリは、6個の透明な開放末端チューブから構成された。チューブを、プレートの中心から等距離であり、互いに等間隔の6個の穴を有する2つのプラスチックプレートによって垂直な位置に保持した。下側プレートの下側表面に、1.8〜2.2 mmのメッシュ孔および0.63±0.03 mmのワイヤ直径を有するプレーンな正方形の織り(plain square weave)のステンレス鋼ワイヤ織布を取り付けた。また、崩壊試験中、錠剤が出てくるのを回避するため、10メッシュスクリーンをバスケットの上面に置いた。その軸上の一点を用いてバスケット-ラックアセンブリがデバイスの上昇および下降を一次停止するための適当な手段を設けた。
【0076】
試験手順:
酵素なしで1.2 pHを有する(0.1N HCl)擬似胃液USP(900ml)を1000 mlビーカーに入れ、崩壊装置の水浴を用いて37℃に加熱した。2種類の錠剤を、それぞれ、バスケット-ラックアセンブリの別々のチューブに入れて試験し、錠剤が内部から出てくるのを回避するために10メッシュスクリーンを上部に配置した。デバイスの下降および上昇のスイッチを入れ、錠剤を、破断時間(すなわち、錠剤のコーティングが最初に破断し、ポリマーが流出し始めるときの時間)および崩壊時間 (すなわち、錠剤が完全に崩壊し、バスケット-ラックアセンブリのチューブから出てくるときの時間)について観察した。
【0077】
塩酸セベラマーおよび炭酸セベラマーActive Pharmaceutical Ingredient (API)を含有する物理的混合塩の製剤を評価した。データは、物理的混合塩製剤は、炭酸セベラマーAPIのみを含有する製剤と比べて、良好な適合性および崩壊時間を有することを示した (表1参照)。物理的混合塩アプローチを用いて製造された錠剤の崩壊時間は、炭酸セベラマーAPIのみを含有する製剤と比べて、有意により速かった。

【0078】
上記の結果は、物理的混合塩製剤が所望の適合性を提供し得、炭酸セベラマーのみを含有する製剤と比べ、崩壊時間が長時間にわたってより安定なままである
ことを示す。
【0079】
実施例2
炭酸セベラマーに対するセベラマーHClの種々の比率の適合性、放出(ejection)力および崩壊時間に対する効果。
Renagel(登録商標)製剤 (活性API 800mg、目標LOD 8%、コロイド状二酸化ケイ素0.375%およびステアリン酸0.4%)に使用されている賦形剤を用い、炭酸セベラマーに対する塩酸セベラマーの比1:1、1:3、1:6および1:9を評価した(表2参照)。すべての実験は、実施例1で上記のようにして行なった。

【0080】
上記の試験に基づき、崩壊時間は、評価した炭酸塩に対する塩化物の比すべてで、薬学的に許容され得る範囲内に維持されることがわかる。
【0081】
実施例3
物理的混合塩と化学的混合塩との比較
すべての実験は、実施例1で上記のようにして行なった。表3からわかるように、化学的混合塩でもまた、薬学的に許容され得る崩壊時間であった。
【0082】
化学的混合塩は、塩酸セベラマーを、炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムの水溶液に添加することにより調製した。

【0083】
実施例4
塩化ナトリウムありおよび塩化ナトリウムなしの炭酸セベラマーの比較
すべての実験は、実施例1で上記のようにして行なった。表4からわかるように、崩壊時間は、塩化ナトリウムなしの炭酸セベラマーの場合で、はるかに多く増大した。

【0084】
上記の試験から、炭酸セベラマーへの塩化ナトリウムの添加により、崩壊時間の増加が有意に減少することが決定された。
【0085】
実施例5
崩壊挙動および適合性に対する粒径排除(cut)の効果
LOD 6.5% (「そのままの」API湿分)、Ceolus(登録商標) KG 802 25%、二ベヘン酸グリセリル1.2%、コロイド状二酸化ケイ素(CSD)なし、(API: 20%炭酸塩)の製剤を用い、異なる粒径を、適合性および崩壊時間に対する効果に関して比較した。すべての実験は、実施例1のようにして行なった。圧縮条件は、予備圧縮力:15kN、圧縮力:45kNおよび速度:20rpmであった。結果は表5においてわかる。

【0086】
上記の結果は、増大した粒径を有する製剤は、粒径がより小さい製剤と比べて長時間、より安定な崩壊時間が維持されることを示す。
【0087】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
37℃で30分以下および60℃で少なくとも1のpHで少なくとも10週間の崩壊時間を維持する脂肪族アミンポリマーの炭酸塩を含む錠剤。
【請求項2】
脂肪族アミンポリマーが、




(式中、
yは0、1以上の整数である;
R、R1、R2およびR3は、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基である;ならびに
X-は炭酸基である)
からなる群より選択される1つ以上の反復単位を含む、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
脂肪族アミンポリマーが架橋されている、請求項2記載の錠剤。
【請求項4】
脂肪族アミンポリマーがポリアリルアミンである、請求項3記載の錠剤。
【請求項5】
セベラマーの炭酸塩を含み、37℃で30分以下および60℃で少なくとも1のpHで少なくとも10週間の崩壊時間を維持する、錠剤。
【請求項6】
脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む錠剤であって、一価アニオンが炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、錠剤。
【請求項7】
脂肪族アミンポリマーが、




(式中、
yは0、1以上の整数である;
R、R1、R2およびR3は、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基である;ならびに
X-は炭酸基である)
からなる群より選択される1つ以上の反復単位を含む、請求項6記載の錠剤。
【請求項8】
脂肪族アミンポリマーが架橋されている、請求項7記載の錠剤。
【請求項9】
脂肪族アミンポリマーがポリアリルアミンである、請求項8記載の錠剤。
【請求項10】
セベラマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む錠剤であって、一価アニオンが炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、錠剤。
【請求項11】
一価アニオン源がセベラマーの一価アニオン塩である、請求項10記載の錠剤。
【請求項12】
一価アニオン源がセベラマーのハロゲン化物塩である、請求項11記載の錠剤。
【請求項13】
一価アニオン源が塩化セベラマーである、請求項12記載の錠剤。
【請求項14】
一価アニオン源が炭酸塩であり、炭酸塩が、一価アニオンをさらにを含む混合塩である、請求項10記載の錠剤。
【請求項15】
一価アニオンがハロゲン化物である、請求項14記載の錠剤。
【請求項16】
ハロゲン化物が塩化物である、請求項15記載の錠剤。
【請求項17】
一価アニオン源が、一価アニオンの金属塩または一価アニオンの酸である、請求項10記載の錠剤。
【請求項18】
一価アニオンがハロゲン化物である、請求項17記載の錠剤。
【請求項19】
ハロゲン化物が塩化物である、請求項18記載の錠剤。
【請求項20】
一価アニオン源が塩化ナトリウムまたは塩酸である、請求項19記載の錠剤。
【請求項21】
一価アニオンが、炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の0.1重量%〜10重量%を構成する、請求項10記載の錠剤。
【請求項22】
セルロース誘導体をさらにを含む、請求項10記載の錠剤。
【請求項23】
セルロース誘導体が微晶質セルロースである、請求項22記載の錠剤。
【請求項24】
脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む組成物であって、一価アニオンが、炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、組成物。
【請求項25】
脂肪族アミンポリマーが、




(式中、
yは0、1以上の整数である;
R、R1、R2およびR3は、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基である;ならびに
X-は炭酸基である)
からなる群より選択される1つ以上の反復単位を含む、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
脂肪族アミンポリマーが架橋されている、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
脂肪族アミンポリマーがポリアリルアミンである、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
セベラマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む組成物であって、一価アニオンが炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、組成物。
【請求項29】
一価アニオン源がセベラマーの一価アニオン塩である、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
セベラマーの一価アニオン塩がセベラマーのハロゲン化物塩である、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
炭酸セベラマーおよび塩化セベラマーを含む、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
一価アニオン源が、一価アニオンの金属塩または一価アニオンの酸である、請求項28記載の組成物。
【請求項33】
一価アニオンがハロゲン化物である、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
セベラマーの炭酸塩および塩化ナトリウム粉末を含む、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
塩化ナトリウム溶液でコートされたセベラマーの炭酸塩を含む、請求項33記載の組成物。
【請求項36】
セベラマーの炭酸塩および塩酸を含む、請求項33記載の組成物。
【請求項37】
一価アニオン源が、混合された炭酸塩およびセベラマーの一価アニオン塩である、請求項28記載の組成物。
【請求項38】
一価アニオンがハロゲン化物である、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
混合された炭酸塩およびセベラマーの塩化物塩を含む、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
薬学的に許容され得る担体または希釈剤および脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む医薬組成物であって、一価アニオンが、炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、医薬組成物。
【請求項41】
薬学的に許容され得る担体または希釈剤およびセベラマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む医薬組成物であって、一価アニオンが、炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、医薬組成物。
【請求項42】
一価アニオン源が塩化物源であり、塩化物が炭酸塩および塩化物源を合わせた重量の0.05重量%〜10重量%を構成する、請求項41記載の医薬組成物。
【請求項43】
炭酸セベラマー粒子を含む錠剤であって、該粒子の少なくとも95容量%が少なくとも45ミクロンの直径を有する、錠剤。
【請求項44】
セルロース誘導体をさらにを含む、請求項43記載の錠剤。
【請求項45】
脂肪族アミンポリマーの炭酸塩を含む錠剤の治療有効量を患者に投与することを含む、その必要がある患者からリン酸塩を除去する方法であって、該錠剤が、37℃で30分以下および60℃で少なくとも1のpHで少なくとも10週間の崩壊時間を維持する、方法。
【請求項46】
薬学的に許容され得る担体または希釈剤、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩および一価アニオン源を含む医薬組成物を患者に投与することを含む、患者からリン酸塩を除去する方法であって、一価アニオンが、炭酸塩および一価アニオン源を合わせた重量の少なくとも0.05重量%を構成する、方法。
【請求項47】
医薬組成物が、薬学的に許容され得る担体または希釈剤、セベラマーの炭酸塩および塩化物源を含み、塩化物が、炭酸塩および塩化物源を合わせた重量の0.1%〜10重量%を構成する、請求項46記載の方法。
【請求項48】
脂肪族アミンポリマーの炭酸塩、重炭酸塩、乳酸塩または酢酸塩を含み、37℃で30分以下および60℃で少なくとも1のpHで少なくとも10週間の崩壊時間を維持する錠剤。



【公表番号】特表2008−518950(P2008−518950A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539273(P2007−539273)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/039366
【国際公開番号】WO2006/050315
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(591042816)ジェンザイム コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】