説明

錠装置のスライド変換機構

【課題】従来よりハンドルの操作角度を大きくすることなく、錠装置を小型化可能な錠装置のスライド変換機構を提供する。
【解決手段】本発明のスライド変換機構は、リンク支持支柱34の中心軸J3とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第1軸間距離を、ハンドル17の回動軸J1とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第2軸間距離より短くしたので、それら中心軸J2と中心軸J3との間の第1軸間直線L1と基準線K1とがなす第1角度θ1が、回動軸J1と中心軸J2との間の第2軸間直線と基準線K1とがなす第2角度θ2より大きくなる。このように、本発明に係るスライド変換機構によれば、ハンドル17の操作角度が中継リンク36で増幅されるので、従来よりハンドル17の操作角度を大きくすることなく、錠装置を小型化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの回動を直動ロッドの直動に変換するための錠装置のスライド変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の種のスライド変換機構の一例として図12に示したグレモン錠のスライド変換機構は、直動ロッド1と一体に直動するスライダ1Aと、ハンドル2と一体に回動する回動リンク2Aとを有し、回動リンク2Aの先端部がスライダ1Aの凹部1Bに係合した構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−102851号公報(段落[0002],[0003],[0020],第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来のスライド変換機構では、スライダ1Aのストローク量はハンドル2の操作角度と回動リンク2Aの回動半径とから決まるので、錠装置を小型化しかつ直動ロッドの十分なストローク量を確保するためには、ハンドル2の操作角度を大きくする必要があった。しかしながら、ハンドル2の操作角度を大きくすると操作が困難になると共に見栄えが悪くなる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来よりハンドルの操作角度を大きくすることなく、錠装置を小型化可能な錠装置のスライド変換機構の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る錠装置のスライド変換機構は、扉に設けたハンドルの回動操作により直動ロッドが直動して扉を施解錠する錠装置に備えられ、ハンドルの回動を直動ロッドの直動に変換するためのスライド変換機構において、直動ロッドと一体に直動するスライダと、ハンドルと一体に回動し、スライダの直動方向に沿って延びた円弧軌跡上を移動するリンク基端連結部を有した回動入力部材と、基端部がリンク基端連結部に回動可能に連結され、スライダに向かって延びた中継リンクと、中継リンクの長手方向に延びた長孔と、ハンドルの回動軸とスライダの直動方向とに共に直交した基準線上に固定して設けられ、中継リンクの長孔内に係合し、中継リンクを直動可能かつ回動可能に支持したリンク支持支柱と、スライダに設けられ、そのスライダの直動方向の両方向で中継リンクの先端部に当接可能なリンク先端当接部とを備え、リンク支持支柱の中心軸とリンク基端連結部の中心軸との間の第1軸間距離を、ハンドルの回動軸とリンク基端連結部の中心軸との間の第2軸間距離より短くしたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の錠装置のスライド変換機構において、回動入力部材の回動によりリンク基端連結部の中心軸が基準線上に位置した際に、リンク基端連結部の中心軸とハンドルの回動軸との間にリンク支持支柱の中心軸が配置されるようにしたところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の錠装置のスライド変換機構において、錠装置は、直動ロッドが上下方向に直動するグレモン錠であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の錠装置のスライド変換機構において、リンク先端当接部は、中継リンクの先端部を間に挟んでスライダの直動方向で対向した1対の当接対向壁で構成され、それら当接対向壁の対向部分には、スライダの直動方向と直交した平坦面が備えられ、中継リンクの先端部には、中継リンクが可動範囲の両端部に位置したときに両当接対向壁の平坦面と平行になる1対の先端平面が備えられたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
[請求項1の発明]
請求項1の構成によれば、ハンドルを回動操作すると、ハンドルと一体に回動入力部材が回動して、その回動入力部材に備えたリンク基端連結部がスライダの直動方向に沿った円弧軌跡上を移動する。すると、リンク基端連結部に連結された中継リンクが長孔とリンク支持支柱の係合により直動しながら、リンク支持支柱を支点にして回動する。そして、中継リンクの先端部がスライダのリンク先端当接部を押圧して、スライダ及び直動ロッドを直動させる。このようにして、ハンドルの回動が直動ロッドの直動に変換される。ここで、本発明では、リンク支持支柱の中心軸とリンク基端連結部の中心軸との間の第1軸間距離を、ハンドルの回動軸とリンク基端連結部の中心軸との間の第2軸間距離より短くしたので、リンク支持支柱の中心軸とリンク基端連結部の中心軸との間を結ぶ第1軸間直線と基準線とがなす第1角度が、ハンドルの回動軸とリンク基端連結部の中心軸との間の第2軸間直線と基準線とがなす第2角度より大きくなる。このように、本発明に係る錠装置のスライド変換機構によれば、ハンドルの操作角度が中継リンクで増幅されるので、従来よりハンドルの操作角度を大きくすることなく、錠装置を小型化することができる。
【0010】
[請求項2及び3の発明]
回動入力部材の回動によりリンク基端連結部の中心軸が基準線上に位置した際に、ハンドルの回動軸とリンク支持支柱の中心軸との間にリンク基端連結部の中心軸が配置されるように構成してもよいし、請求項2の発明のように、リンク基端連結部の中心軸とハンドルの回動軸との間にリンク支持支柱の中心軸が配置されるように構成してもよい。請求項2の構成によれば、回動入力部材と中継リンクとがリンク基端連結部で折り返されるように重なり、コンパクト化が図られる。また、請求項2の構成を、直動ロッドが上下方向に直動するグレモン錠に備えることで、そのグレモン錠を小型化することができる(請求項3の発明)。
【0011】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、中継リンクが可動範囲の両端部に位置すると、中継リンクの先端部に備えた先端平面が、スライダに備えた当接対向壁の平坦面と平行になって面当接し、スライダを安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1に示したガラス扉10(本発明に係る「扉」に相当する)は、ガラス板11を扉構成枠12に嵌め込んでなり、その扉構成枠12の一方の側辺が扉支持枠13にヒンジ14にて連結され、扉構成枠12の他方の側辺にグレモン錠20を備えている。
【0013】
図2には、扉構成枠12のうちグレモン錠20を備えた部位の断面が示されている。同図に示すように、扉構成枠12は角筒構造をなし、その扉構成枠12の室外面から扉支持枠13に向けて室外突壁12Cが延設されている。これに対し、扉支持枠13の室内面からは扉構成枠12に向けて室内突壁13Aが延設されている。そして、ガラス扉10を閉じると、室外突壁12Cが扉支持枠13の室外面に隣接又は当接し、室内突壁13Aが扉構成枠12の室内面に隣接又は当接する。また、扉構成枠12のうち扉支持枠13側を向いた端面には、室内寄り位置に直動ロッド16を収容するためのロッド収容溝12Bが形成されている。
【0014】
図3に示すように、グレモン錠20は、ハンドル支持ユニット18とスライド変換機構ユニット30とを組み付けてなる。そして、図2に示すように、扉構成枠12の角筒部分のうち室内に面した室内壁12Aの表側にハンドル支持ユニット18が取り付けられ、裏側にスライド変換機構ユニット30が取り付けられている。ハンドル支持ユニット18は、上下方向に延びた直方体形状をなし(図3参照)、室内突壁13Aとの干渉を回避するために、室内壁12Aのうち扉支持枠13から離れた側に配置して取り付けられている(図2参照)。なお、図4〜図8においては、ハンドル支持ユニット18は省略されている。
【0015】
ハンドル支持ユニット18のうち上下方向の中央には、ハンドル17が回動可能に軸支されている。図4に示すように、ハンドル17は、全体として断面四角形の部材をL字形に屈曲させた構造をなし、ハンドル17の一端部には、ハンドル支持ユニット18の外面と平行な四角形の方形端面17Aが備えられている。その方形端面17Aのうち扉支持枠13寄りの一角部からエンボス17Bが突出し、そのエンボス17Bの先端から角柱シャフト17Sが突出している。また、エンボス17Bの外周面からは、回動規制突部17Cが突出している。さらに、角柱シャフト17Sの中間部分には、Eリング溝17Mが形成されている。そして、ハンドル支持ユニット18(図3参照)に備えた貫通孔(図示せず)にエンボス17B及び角柱シャフト17Sを挿入し、ハンドル支持ユニット18の裏面側に突き出した角柱シャフト17SのEリング溝17MにEリング18E(図3参照)を係止することで、ハンドル支持ユニット18にハンドル17が抜け止めされて、回動可能に軸支されている。
【0016】
また、ハンドル支持ユニット18内には、回動規制突部17Cと当接可能な図示しない1対のストッパが備えられ、これにより、ハンドル17が、鉛直下方に垂下した施錠位置(図5参照)と、水平方向に延びた解錠位置(図8参照)との間の略90度の可動ストローク内でのみ回動するように規制されている。また、ハンドル支持ユニット18の上端部には、操作摘18Aが上下動可能に備えられている。この操作摘18Aを可動ストロークの一端側に位置させると、ハンドル17が回動可能になり、操作摘18Aを可動ストロークの他端側に位置させると、ハンドル17が施錠位置に固定される。
【0017】
ハンドル支持ユニット18の上下の両端部には、ボルトを挿通可能な1対の螺子挿通孔(図示せず)が貫通形成されている。これに対応して、扉構成枠12の室内壁12Aには、1対の螺子挿通孔(図示せず)が貫通形成され、さらにそれら1対の螺子挿通孔の間に角柱シャフト17Sを挿通可能な軸挿通孔(図示せず)が貫通形成されている。また、図3に示すように、次に詳説するスライド変換機構ユニット30には、上記した1対の螺子挿通孔に対応して、1対の雌螺子孔31D,31Dが形成されている。なお、ハンドル支持ユニット18のうち上下の両端部には、軸挿通孔及びそこに通したボルトを覆い隠すためのカバー18C,18Cが備えられている。
【0018】
スライド変換機構ユニット30は、本発明に係る「錠装置のスライド変換機構」をユニット化したものであって、図3に示すように、固定ベース30Aに複数の可動部品を組み付けてなる。以下、スライド変換機構ユニット30において、扉支持枠13に近い側(図2の左側)を前側と言い、扉支持枠13から離れた側(図2の右側)を後側ということとする。
【0019】
固定ベース30Aは、ベースプレート31とベース筐体32とを組み付けてなる。図4に示すように、ベースプレート31は、縦長の帯板構造をなし、両端部に円筒突部31C,31Cを備えている。また、ベースプレート31には、上下方向に沿って案内溝31Aが形成され、その案内溝31Aの両端部の近傍には、前記した雌螺子孔31D,31Dが形成されている。さらに、ベースプレート31の上下方向における中間部の後ろ寄り位置には、角柱シャフト17Sを挿通するための挿通窓31Bが形成されている。
【0020】
一方、ベース筐体32は、ベースプレート31に対向した縦長の主板壁32Aを備えている。また、主板壁32Aの上下の両端部をベースプレート31に向けてクランク形状に屈曲させることで、主板壁32Aの両端部からベースプレート31に向かって起立した1対の端部壁32B,32Bと、それら端部壁32B,32Bの先端から上方と下方とに起立した1対の当接片32C,32Cとを備えている。そして、この当接片32C,32Cに形成した丸孔32W,32Wに円筒突部31C,31Cを挿入して拡開変形させることでベースプレート31とベース筐体32とが固定されている。また、端部壁32B,32Bの前側縁部からは、上方と下方とに向けて当接位置決片32D,32Dが直角曲げされている。そして、扉構成枠12のうち前記したロッド収容溝12Bの奥面に形成された図示しないユニット挿入孔に前側からスライド変換機構ユニット30を挿入し、そのユニット挿入孔の上下の縁部に前側から当接位置決片32D,32Dを当接させた状態に保持して、ハンドル支持ユニット18及びスライド変換機構ユニット30に通したボルトを雌螺子孔31D,31Dに締め付けることで、グレモン錠20がガラス扉10に固定されている。
【0021】
主板壁32Aのうちベースプレート31の案内溝31Aとの対向部分には、1対の案内溝32X,32Xが上下方向に並べて形成されている。また、主板壁32Aの上下方向における中間部分には、案内溝32Xより後側に支柱支持孔32Yが形成されている。なお、主板壁32Aのうち後側の縁部からは、ベースプレート31に向けて1対の後面壁32E,32Eが直角曲げされ、これら後面壁32E,32Eが主板壁32Aを補強している。
【0022】
図3に示すように、ベースプレート31とベース筐体32との間には、スライダ33が直動可能に収容されている。図4に示すように、スライダ33は、全体として縦長の直方体形状をなし、スライダ33のうちベースプレート31側における1対の後側角部には、係合突部33A,33Aが設けられている。これら係合突部33A,33Aは、スライダ33のうちベースプレート31側の側面と後面とから突出した角形突部であって、ベースプレート31における案内溝31A内に係合している。同様に、スライダ33のうちベース筐体32側における1対の後側角部には、係合突部33B,33Bが設けられ、これら係合突部33B,33Bは、ベース筐体32の各案内溝32X,32Xに係合している。これにより、スライダ33が上下方向に直動可能に保持されている。
【0023】
スライダ33の前面には、1対のロッド固定ピン33P,33Pが着脱可能に取り付けられている。また、これらロッド固定ピン33P,33Pは、図2に示すように、ロッド収容溝12Bの奥面から突出している。そして、ロッド収容溝12B内に設けた直動ロッド16の下端部に、これらロッド固定ピン33P,33Pが貫通して、直動ロッド16とスライダ33とが一体になっている。この直動ロッド16はスライダ33から上方に延び、スライダ33と共に上下動する。また、扉構成枠12のうちグレモン錠20を取り付けた部分より上方には、図示しないスリットが形成され、このスリットに扉支持枠13に備えた係止片15(図1参照)が進退するようになっている。そして、その係止片15を上下方向に貫通した係止孔に直動ロッド16が進退することにより、ガラス扉10をロックした状態と、そのロックを解除した状態とに切り替えることができる。
【0024】
図5に示すように、スライダ33のうち上下方向の中央には、リンク受容孔33Cが前後方向に貫通している。そして、スライダ33のうちリンク受容孔33Cを挟んで上下方向で対向した部分が、本発明に係る当接対向壁33X,33Xになっている。
【0025】
図4に示すように、ベース筐体32の支柱支持孔32Yには、リンク支持支柱34が取り付けられている。リンク支持支柱34は円柱形状をなし、その軸方向の中間部から側方にフランジ34Fが張り出している。そして、リンク支持支柱34の一端部が支柱支持孔32Y内に圧入されて、他端部がベースプレート31側に向かって突出している。
【0026】
固定ベース30A(図3参照)内に突入したハンドル17の角柱シャフト17Sには、回動入力部材35が取り付けられている。図4に示すように、回動入力部材35は、円柱部35Aの中心に角孔35Dを貫通形成して備えると共に、円柱部35Aの外周面から回動片35Bを張り出した構造になっている。また、回動片35Bからは、ベース筐体32の主板壁32Aに向けてリンク基端連結ピン35C(本発明の「リンク基端連結部」に相当する)が突出している。そして、角孔35Dに角柱シャフト17Sが嵌合しており、ハンドル17を回動すると、リンク基端連結ピン35Cが、スライダ33の直動方向(即ち、上下方向)に沿った円弧軌跡E1(図9(A)参照)上を移動する。
【0027】
図5に示すように、リンク基端連結ピン35Cは、中継リンク36の基端部に備えたピン孔36Aに挿入されている。中継リンク36は、回動片35Bから前方に向かって延びている。また、中継リンク36における長手方向の中間部には、長孔36Bが形成され、この長孔36Bにリンク支持支柱34が係合している。そして、中継リンク36の先端部36Dがスライダ33におけるリンク受容孔33C内に受容されている。これにより、ハンドル17の操作により回動入力部材35を回動すると、これに連動して中継リンク36が回動する。
【0028】
図5に示した符号K1は、ハンドル17の回動軸J1とスライダ33の直動方向とに共に直交した基準線である。ここで、リンク支持支柱34の中心軸J3は、基準線K1上において、ハンドル17の回動軸J1よりスライダ33から離れた位置に配置されている。そして、図9(B)に示すようにリンク支持支柱34の中心軸J3が基準線K1上に位置した際に、リンク支持支柱34の中心軸J3が、ハンドル17の回動軸J1(図9における回動入力部材35の回動軸と同じ)と、リンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間に配置されるように構成されている。そして、図9(A)及び図9(C)に強調して示したように、リンク支持支柱34の中心軸J3とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第1軸間距離(図9(A)及び図9(C)のL1の長さ)が、ハンドル17の回動軸J1とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第2軸間距離(図9(A)及び図9(C)のL2の長さ)より短くなっている。これにより、リンク支持支柱34の中心軸J3とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間を結ぶ第1軸間直線L1と基準線K1とがなす第1角度θ1は、ハンドル17の回動軸J1とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第2軸間直線L2と基準線K1とがなす第2角度θ2より大きくなる。即ち、図9(A)〜図9(C)に示した動作のように、ハンドル17の操作角度が中継リンク36で増幅される。なお、回動入力部材35及び中継リンク36の回動領域は、基準線K1に対して対称になっている。
【0029】
中継リンク36は、長孔36Bに対して基端側(ピン孔36A側)より先端側が長くなっている。そして、先端寄り位置に幅狭のネック部36Cを備えている。また、中継リンク36の先端部36Dには、図5に示すように、中継リンク36が可動範囲の上端部に位置したときに上側の当接対向壁33Xの平坦面33Yと平行になる先端平面36Xと、図8に示すように中継リンク36が可動範囲の下端部に位置したときに下側の当接対向壁33Xの平坦面33Yと平行になる先端平面36Xとが対称に配置して備えられている。さらに、先端部36Dの側面には、各先端平面36X、36Xの後端部に連続した円弧面36Y,36Yが備えられている。
【0030】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、上記構成からなる本実施形態の動作を説明する。ガラス扉10を閉じて図5に示すようにハンドル17を施錠位置にすると、直動ロッド16が扉支持枠13の係止片15(図1参照)に係合して、ガラス扉10が閉じた状態にロックされる。このとき、中継リンク36の一方の先端平面36Xが、スライダ33における上側の当接対向壁33Xの平坦面33Yに面当接して、直動ロッド16が位置決めされる。
【0031】
この状態からハンドル17を図5の時計回り方向に回動させると、図6から図7の変化に示すように、中継リンク36の他方の先端平面36Xが、スライダ33における下側の当接対向壁33Xの平坦面33Yに摺接しながら中継リンク36がスライダ33を押し下げ、回動入力部材35と中継リンク36とが共に水平方向に延びた状態(図7参照)を経て、図8に示すようにハンドル17が水平方向を向いた解錠位置に至る。この状態になると、直動ロッド16と扉支持枠13の係止片15との係合が解除され、ガラス扉10を開くことが可能になる。また、このとき、中継リンク36の他方の先端平面36Xが、スライダ33における下側の当接対向壁33Xの平坦面33Yに面当接して、直動ロッド16が位置決めされる。そして、ハンドル17を解錠位置から施錠位置に回動した場合は、上記動作に逆行した動作になる。このようにして、ハンドル17の回動がスライダ33の直動に変換される。
【0032】
ここで、本実施形態のスライド変換機構ユニット30では、上述の如く、リンク支持支柱34の中心軸J3とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第1軸間距離を、ハンドル17の回動軸J1とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間の第2軸間距離より短くしたことにより、ハンドル17の操作角度が中継リンク36で増幅される。これにより、従来よりハンドル17の操作角度を大きくすることなく、グレモン錠20を小型化することができる。また、リンク基端連結ピン35Cの中心軸J2とハンドル17の回動軸J1との間にリンク支持支柱34の中心軸J3が配置されるように構成したことで、回動入力部材35と中継リンク36とがリンク基端連結ピン35Cで折り返されるように重なり、コンパクト化が図られる。しかも、中継リンク36が可動範囲の両端部に位置すると、中継リンク36の先端部に備えた先端平面36X,36Xが、スライダ33に備えた当接対向壁33Xの平坦面33Yと面当接するので、スライダ33を施錠位置と解錠位置とに安定させることができる。
【0033】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0034】
(1)前記実施形態では、リンク支持支柱34の中心軸J3が、ハンドル17の回動軸J1とリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2との間に配置されていたが(図5参照)、図10に示すように、リンク支持支柱34の中心軸J3とハンドル17の回動軸J1との間にリンク基端連結ピン35Cの中心軸J2を配置した構成にしてもよい。
【0035】
(2)前記実施形態では、スライダ33に備えた当接対向壁33X,33Xによって中継リンク36の先端部36Dを上下方向から挟んでいたが、図11に示すように中継リンク36の先端部に長孔36Eを設け、スライダ33に固定したピン33Dをこの長孔36Eに係合してもよい。
【0036】
(3)前記実施形態では、本発明に係るスライド変換機構を備えたグレモン錠20を例示したが、本発明に係るスライド変換機構は、ハンドルの回動操作により直動ロッドが直動して施解錠が行われる錠装置であれば、グレモン錠以外の錠装置に設けてもてもよい。
【0037】
(4)前記実施形態では、本発明に係るスライド変換機構を備えた錠装置は、回動式のガラス扉10に限定されるものではなく、ガラスを有しない扉、水平方向又は上下方向にスライドする扉に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係るグレモン錠を備えたガラス扉の正面図
【図2】ガラス扉における枠部の断面図
【図3】本発明の錠装置のスライド変換機構を備えたグレモン錠の斜視図
【図4】そのグレモン錠の分解斜視図
【図5】施錠状態のグレモン錠の側断面図
【図6】施錠状態からハンドルを回動した際のグレモン錠の側断面図
【図7】施錠状態からハンドルを回動した際のグレモン錠の側断面図
【図8】解錠状態のグレモン錠の側断面図
【図9】中継リンクと回動入力部材の側面図
【図10】変形例(1)の中継リンクと回動入力部材の側面図
【図11】変形例(2)の中継リンクと回動入力部材の側面図
【図12】従来のグレモン錠の側面図
【符号の説明】
【0039】
10 ガラス扉
12 枠部
13 扉支持枠
16 直動ロッド
17 ハンドル
20 グレモン錠
30 スライド変換機構ユニット
33 スライダ
33X 当接対向壁
33Y 平坦面
34 リンク支持支柱
35 回動入力部材
35C リンク基端連結ピン
35D 角孔
36 中継リンク
36A ピン孔
36B 長孔
36D 先端部
36X 先端平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けたハンドルの回動操作により直動ロッドが直動して前記扉を施解錠する錠装置に備えられ、前記ハンドルの回動を前記直動ロッドの直動に変換するためのスライド変換機構において、
前記直動ロッドと一体に直動するスライダと、
前記ハンドルと一体に回動し、前記スライダの直動方向に沿って延びた円弧軌跡上を移動するリンク基端連結部を有した回動入力部材と、
基端部が前記リンク基端連結部に回動可能に連結され、前記スライダに向かって延びた中継リンクと、
前記中継リンクの長手方向に延びた長孔と、
前記ハンドルの回動軸と前記スライダの直動方向とに共に直交した基準線上に固定して設けられ、前記中継リンクの前記長孔内に係合し、前記中継リンクを直動可能かつ回動可能に支持したリンク支持支柱と、
前記スライダに設けられ、そのスライダの直動方向の両方向で前記中継リンクの先端部に当接可能なリンク先端当接部とを備え、
前記リンク支持支柱の中心軸と前記リンク基端連結部の中心軸との間の第1軸間距離を、前記ハンドルの回動軸と前記リンク基端連結部の中心軸との間の第2軸間距離より短くしたことを特徴とする錠装置のスライド変換機構。
【請求項2】
前記回動入力部材の回動により前記リンク基端連結部の中心軸が前記基準線上に位置した際に、前記リンク基端連結部の中心軸と前記ハンドルの回動軸との間に前記リンク支持支柱の中心軸が配置されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の錠装置のスライド変換機構。
【請求項3】
前記錠装置は、前記直動ロッドが上下方向に直動するグレモン錠であることを特徴とする請求項2に記載の錠装置のスライド変換機構。
【請求項4】
前記リンク先端当接部は、前記中継リンクの先端部を間に挟んで前記スライダの直動方向で対向した1対の当接対向壁で構成され、それら当接対向壁の対向部分には、前記スライダの直動方向と直交した平坦面が備えられ、
前記中継リンクの先端部には、前記中継リンクが可動範囲の両端部に位置したときに前記両当接対向壁の前記平坦面と平行になる1対の先端平面が備えられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の錠装置のスライド変換機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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