錠装置
【課題】二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることのできる錠装置を提供する。
【解決手段】第一デッドボルト13、第二デッドボルトを進退自在に備えた第一錠箱、第二錠箱と、第一錠箱に設けられ手動回動力等によって回動され第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、ギア付駆動板59に従動し側面に係合ピン119を固定した出力ギア117と、第一錠箱にスライド自在に設けられ連結杆を介してのスライドによる直線運動で第二錠箱の第二デッドボルトを進退させるスライダ27と、スライダ27に形成され係合ピン119を挿入しこの係合ピン119を介してスライダ27をスライドさせる長穴125と、を具備し、長穴125は、第一デッドボルト13を進退駆動させるギア付駆動板59の回転を遅延させてスライダ27に伝達する遊び部127が係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されている。
【解決手段】第一デッドボルト13、第二デッドボルトを進退自在に備えた第一錠箱、第二錠箱と、第一錠箱に設けられ手動回動力等によって回動され第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、ギア付駆動板59に従動し側面に係合ピン119を固定した出力ギア117と、第一錠箱にスライド自在に設けられ連結杆を介してのスライドによる直線運動で第二錠箱の第二デッドボルトを進退させるスライダ27と、スライダ27に形成され係合ピン119を挿入しこの係合ピン119を介してスライダ27をスライドさせる長穴125と、を具備し、長穴125は、第一デッドボルト13を進退駆動させるギア付駆動板59の回転を遅延させてスライダ27に伝達する遊び部127が係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッドボルトを一つの扉の二箇所で進退させる錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠装置には、防犯性能を高めるために、一つの扉に二つの錠前を設ける、所謂ワンドア2ロックシステムが従来より採用されている。従来、このワンドア2ロックシステムは、屋外側に2シリンダー、屋内側に2サムターンを装着する、すなわちそれぞれが単独で機能する施錠装置を2つ設ける構成が一般的である。
【0003】
ところが、2ケ所の錠前を施錠するには、2つのサムターン又は2つのシリンダー錠を、それぞれに操作、すなわち2回操作しなければならず、煩雑である。そこで、かかる煩雑さを解消するために、一つのサムターン又はシリンダーで、2ケ所以上の錠前を施錠できる錠装置が案出されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
この錠装置によれば、ガードボルト、デッドボルトやカマデッドのそれぞれが一つのサムターン又はシリンダー錠で操作できるので、別途の補助錠となる施錠装置を設けずに、複数箇所でのロックを可能にすることができ、施錠信頼性を向上させることができるとともに、施解錠の操作性も高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−164806号公報
【特許文献2】特開2003−97116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の施錠装置は、サムターン、シリンダー錠或いはモーターからの操作力により施解錠を行う際、二つのデッドボルトが同時に動作するため、デッドボルト進退のための作動負荷が、一つのものに比べ二倍となった。この作動負荷は、近年、パッキンによる気密性を高めた扉では、デッドボルト側面とストライクの摺動負荷、或いは側圧とも言われる負荷が大きいためより顕著に増大する。このような作動負荷が大きいものでは、手動による操作性が悪くなるのはもとより、電動によるものではそれぞれのデッドボルト用にモーターを設けたり、出力の大きいモーターを組み込んだりしなければならなかった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることのできる錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠装置11は、扉21に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17と、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板59に従動し、側面に回動中心115に沿う方向で突出する係合ピン119を前記回動中心115から半径方向に変位させて固定した出力ギア117と、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆23を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルト17を進退させるスライダ27と、
前記スライダ27に形成され、前記係合ピン119を挿入し前記出力ギア117の回動により該係合ピン119を介して該スライダ27をスライドさせる長穴125と、
を具備し、
前記長穴125は、前記第一デッドボルト13を進退駆動させる前記ギア付駆動板59の回転を遅延させて前記スライダ27に伝達する遊び部127が前記係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されていることを特徴とする。
【0009】
この錠装置11では、手動回動力又はモーター回動力によってギア付駆動板59が例えば解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119がスライダ27の長穴125を移動する。このとき、係合ピン119は回転軌跡に沿う方向で形成された遊び部127を移動するので、スライダ27をスライドさせることがなく、第一デッドボルト13だけが後退する。つまり、初動時の作動負荷が、第一デッドボルト分のみとなる。ギア付駆動板59の回転角度が例えば第一デッドボルト13の後退終了間近、例えば70度程度まで回転されると、第一デッドボルト13は後退が完了近くなり、リリースバネ等の付勢力に助勢されて負荷が小さくなる。これと同時に、係合ピン119が遊び部127から脱し、出力ギア117は係合ピン119を介してスライダ27をスライドし始める。つまり、第二デッドボルト17を始動し始める。このときには第一デッドボルト13の作動負荷がほとんど生じなくなっているので、第二デッドボルト17の作動負荷のみの操作力となる。これにより、従来、同時に発生していた作動負荷が半減され、二つのデッドボルトが小さな作動負荷で動作されることになる。
【0010】
請求項2記載の錠装置11は、請求項1記載の錠装置11であって、
前記第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17が、互いに鉛直方向に離間配置され、前記連結杆23が各デッドボルト13,17間に渡って配置されて連動連結され、前記第二デッドボルト17における前記連結杆23の荷重による前記第二デッドボルト17の進退動作負荷増大をキャンセルする錘143が、前記第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられていることを特徴とする。
【0011】
この錠装置11では、前記第一デッドボルト13と第二デッドボルト17とが互いに鉛直方向に下方と上方とに離間配置されていることで、連結杆23を上昇させる方向の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷の増大となる。本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。
【0012】
請求項3記載の錠装置11は、扉21に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17と、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板59に従動し、側面に回動中心115に沿う方向で突出する係合ピン119を前記回動中心115から半径方向に変位させて固定した出力ギア117と、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆23を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルト17を進退させるスライダ27と、
前記スライダ27に形成され、前記係合ピン119を挿入し前記出力ギア117の回動により該係合ピン119を介して該スライダ27をスライドさせる長穴125と、
を具備し、
前記第二デッドボルト17における前記連結杆23の荷重による前記第二デッドボルト17の進退動作負荷増大をキャンセルする錘143が、前記第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この錠装置11では、手動回動力又はモーター回動力によってギア付駆動板59が例えば解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119がスライダ27の長穴125を移動する。そして、スライダ27のスライドにより連結杆23を介して第二デッドボルト17が後退となる。連結杆23の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷の増大となるが、本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷が削減され、これら二つのデッドボルトが離間した配置位置であっても小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の錠装置11は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記長穴125は、前記スライダ27のスライド方向に直交するロック部129を有し、前記ロック部129に位置する係合ピン119は、前記回動中心115に対し前記スライド方向の一端側に配置されることを特徴とする。
【0015】
この錠装置11では、第一デッドボルト13が進出した施錠状態となると、係合ピン119が長穴125のロック部129に係合し、例えば連結杆23を動作させてスライダ27をスライドしようとしても、長穴125のロック部129から印加される力が係合ピン119を回動中心115側に移動させる半径方向の力となり、出力ギア117が回動することによるスライダ27のスライドが阻止される。
【0016】
請求項5記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記ギア付駆動板59には、進退方向両端位置における前記第一デッドボルト13に係合して該第一デッドボルト13の飛び出し及び引っ込みを規制する扇状のボルトロック部65が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この錠装置11では、第一デッドボルト13が進出した施錠状態、及び第一デッドボルト13が後退した解錠状態で、ボルトロック部65が第一デッドボルト13に係合してその後退方向、進出方向の移動が規制される。デッドボルトを進退させる作動部材は、通常、シリンダー錠やサムターンの回動角度範囲である90度程度となる。この場合、作動部材を進出側45度、後退側45度の位置に振ることで第一デッドボルト13へのロックが可能となる。しかし、ギア付駆動板59の回動角度範囲が90度より大きい場合、作動部材が第一デッドボルト13から離脱し易くなる。本構成では、扇状のボルトロック部65を形成することで、第一デッドボルト13への係合が維持される。
【0018】
請求項6記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記ギア付駆動板59は、操作力が伝わるダルマギア33の手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比で前記ダルマギア33に従動することを特徴とする。
【0019】
この錠装置11では、例えば第二デッドボルト17の移動に要する回動角度範囲が90度の場合、第一デッドボルト13の移動に要する回動角度範囲が160度程度になる。これにより、第一デッドボルト13の始動に遅延させた第二デッドボルト17の始動、或いは第二デッドボルト17の始動に対し第一デッドボルト13の始動を遅延させ、すなわち二つのデッドボルトの進退動作に時間差をつくることが可能となる。
【0020】
請求項7記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記錠箱が、互いに離間配置された第一錠箱15と第二錠箱19とで構成され、該第一錠箱15に前記第一デッドボルト13が備えられ、前記第二錠箱19に前記第二デッドボルト17が備えられているとともに、前記連結杆23が各錠箱15,19間に渡って配置されて連動連結されていることを特徴とする。
【0021】
この錠装置11では、錠箱を2つに別体とされて扉21に配設することができ、これら錠箱15,19内に各デッドボルト13,17を進退させる機構が設けられ、それぞれを連結杆23で連動可能となる。そしてこの連結杆23が長尺な構成となり、すなわち質量が増しても、上記遊び部127や錘143によって、離間配置した二つのデッドボルトは小さな作動負荷で動作されることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る請求項1記載の錠装置によれば、二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることができる。作動負荷が小さくなるので、手動時の操作性を向上させることができる。また、出力の小さいモーターを選定することが可能となり、モーターを一つで構成することが可能となる。
【0023】
請求項2記載の錠装置によれば、第一デッドボルトと第二デッドボルトとが互いに鉛直方向に下方と上方とに離間配置した場合のこれらを連動連結する連結杆の質量によるスライド負荷増大を、第二デッドボルト駆動板に設けた錘の質量で相殺でき、操作負荷を軽減することができる。
【0024】
請求項3記載の錠装置によれば、第一デッドボルトと第二デッドボルトとを連動連結する連結杆を長尺としても、第二デッドボルト駆動板に設けた錘によって、連結杆の質量によるスライド負荷増大を相殺することができ、これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷を減少させることができ、これら離間した二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることが可能となり、操作負荷を軽減することができる。
【0025】
請求項4記載の錠装置によれば、連結杆から解錠方向の力が加えられても、出力ギアの係合ピンが、スライダのスライド方向に直交するロック部に配置されるので、連結杆を介し外力を錠箱に加えても出力ギアを回転させることができず、第一デッドボルトを後退させる不正解錠を阻止できる。
【0026】
請求項5記載の錠装置によれば、進退位置となった第一デッドボルトを、ギア付駆動板のボルトロック部に係合させてロックでき、防犯性を高めることができる。特に、90度の操作回転に対してそれ以上の回転範囲で回転するギア付駆動板を用いた場合に、ボルトロック部が設けられていることで、ギア付駆動板の振り切りによるデッドボルトからの離脱を確実に防止することができる。
【0027】
請求項6記載の錠装置によれば、ギア付駆動板を操作側のダルマギアよりも大きな回動角度範囲とすることで、ダルマギアの操作角度範囲内で一方のデッドボルトの進退動作を早めに完了させることができる。その結果、二つのデッドボルトを同時に作動させる負荷発生を回避した遅延作動、時間差動作を容易に実現できる。
【0028】
請求項7記載の錠装置によれば、錠箱を2つに別体とされて扉に配設することができ、これら錠箱内に各デッドボルトを進退させる機構が設けられ、それぞれを連結杆で連動可能となる。そしてこの連結杆が長尺な構成となり、すなわち質量が増しても、上記遊び部や錘によって、離間配置した二つのデッドボルトは小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る錠装置の外観斜視図である。
【図2】第一錠箱の施錠時における内部の側面図である。
【図3】図2示した第一錠箱における主要部材の分解側面図である。
【図4】第二錠箱の解錠時の側面図である。
【図5】施錠から解錠への動作説明図である。
【図6】第一錠箱の施錠時の側面図である。
【図7】第二錠箱の施錠時の側面図である。
【図8】第一錠箱の解錠途中の側面図である。
【図9】第一錠箱の解錠直前の側面図である。
【図10】第一錠箱の解錠時の側面図である。
【図11】解錠から施錠への動作説明図である。
【図12】第一錠箱のモーター駆動による解錠直前の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る錠装置の外観斜視図である。
本実施の形態に係る錠装置11は、第一デッドボルト13を進退自在に備える第一錠箱15と、第二デッドボルト17を進退自在に備える第二錠箱19が別体となって扉21に取り付けられる。第二錠箱19は、第一錠箱15からの駆動力が連結杆23を介して入力される。本実施の形態において、第一錠箱15及び第二錠箱19は扉21の開閉端側の木口25に上下の位置関係で互いに鉛直方向に離間して設けられている。連結杆23は、木口25に沿って扉21の内部に内蔵される。なお、本実施の形態では、第一錠箱15と第二錠箱19が別体である場合を例に説明するが、本発明に係る錠装置は、第一錠箱15と第二錠箱19が同一の錠箱内に収容された一体物であってもよい。但し、この場合においても第一デッドボルト13と第二デッドボルト17のそれぞれが設けられることに変わりはない。
【0031】
連結杆23は、下端が第一錠箱15の下部スライダ27に連結され、上端が第二錠箱19の上部スライダ29に連結される。第一錠箱15の側板にはシリンダー錠やサムターンの接続開口部31が設けられ、接続開口部31には内部施解錠機構への操作力の入力部となるダルマギア33が配置されている。第一錠箱15には電池ボックス35が付設される。電池ボックス35内に収納された電池は、第一錠箱15に収容されるモーターの電源となる。第一デッドボルト13、第二デッドボルト17にはカマデッド39が連動して設けられ、カマデッド39はボルト進出時にストライクの背面に係止してバール等によるこじ開けに高い抗力を発揮する。
【0032】
図2は第一錠箱15の施錠時における内部の側面図、図3は図2示した第一錠箱15における主要部材の分解側面図、図4は第二錠箱19の解錠時の側面図である。なお、図3において、実線の両端矢印は相互係合部位を表し、一点鎖線の両端部位同士は同一中心を表す。また、破線ギアは実線ギアの背面側に位置する。
錠装置11は、第一錠箱15に主要部材が収容される。第一錠箱15の下部にはダルマギア33が回動自在に支持され、中央のダルマ41には例えばシリンダー錠のテールピース43が係合されている。したがって、シリンダー錠のテールピース43が回動すればダルマギア33は回動される。本実施の形態において、テールピース43は90度の回動角度範囲で回動されるが、これに限定されるものではない。ダルマギア33には三角片45が形成され、頂角部には付勢杆47が連結される。付勢杆47にはリリースバネ49が外挿され、付勢杆47はリリースバネ49の圧縮反発力によってダルマギア33を解錠側又は施錠側のいずれか一方に付勢配置する。
【0033】
ダルマギア33の三角片45と反対側の外周にはダルマセグメントギア51が形成され、ダルマセグメントギア51は上下に摺動自在に設けられたラック53の下部歯55に噛合している。ラック53は、上部歯57がギア付駆動板59の駆動小歯車61に噛合する。つまり、ダルマギア33が回動されれば、ラック53を介してギア付駆動板59が回動されることになる。ギア付駆動板59の外周には駆動セグメントギア63が形成される。ギア付駆動板59は、操作力が伝わるダルマギア33の手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比でダルマギア33に従動する。
【0034】
また、ギア付駆動板59の駆動セグメントギア63と反対側には扇状のボルトロック部65が形成されている。第一デッドボルト13は、このギア付駆動板59の下側で、ガイド穴67をガイドピン69に係合して進退自在となる。第一デッドボルト13は、例えば図1に示す一対の平行板部71を有し、その内方に軸ピン73を介してカマデッド39を従動回転自在に連結している。第一デッドボルト13の後部には逆ハ字状に開口する進退係合凹部75が形成される。進退係合凹部75にはギア付駆動板59のボルトロック部65が挿入される。第一デッドボルト13は、進退係合凹部75に挿入したボルトロック部65がギア付駆動板59の回動によって所定の回動角度範囲で往復動(振られる)ことで進退動作される。
【0035】
また、ボルトロック部65は、第一デッドボルト13の進退方向両端位置における進退係合凹部75の前壁77又は後壁79に係合して、第一デッドボルト13の飛び出し及び引っ込みを規制する。
【0036】
デッドボルトを進退させる作動部材は、通常、シリンダー錠やサムターンの回動角度範囲である90度程度となる。この場合、作動部材を進出側45度、後退側45度の位置に振り分けることで第一デッドボルト13へのロックが可能となる。しかし、ギア付駆動板59の回動角度範囲が90度より十分に大きい場合、作動部材が第一デッドボルト13から離脱し易くなる。本構成では、扇状のボルトロック部65を形成することで、第一デッドボルト13への係合が維持される。
【0037】
これにより、ボルトロック部65を設けた錠装置11では、進退位置となった第一デッドボルト13を、ギア付駆動板59のボルトロック部65に係合させてロックでき、防犯性を高めることができる。特に、90度の操作回転に対してそれ以上の回転範囲で回転するギア付駆動板59を用いた場合に、ボルトロック部65が設けられていることで、ギア付駆動板59の振り切りによるデッドボルトからの離脱を確実に防止することができる。
【0038】
ギア付駆動板59の下層には同一回動中心で相対回動自在な凹部付ギア81が配置される。凹部付ギア81の側面には扇状の凸部収容凹部83が形成され、凸部収容凹部83にはギア付駆動板59のボルトロック部65に垂設される凸部85が挿入される。ギア付駆動板59は、モーター駆動される凹部付ギア81の一端壁87又は他端壁89にて凸部85が押圧されることで回動される。ギア付駆動板59は、手動回動力又はモーター回動力によって回動され、第一デッドボルト13を進退させる。
【0039】
凹部付ギア81の外周歯91にはセンサ93によって回動角度が検出される計数用フォロアギア95が噛合している。また、凹部付ギア81の外周歯91にはモーター駆動ギア97と一体となった背部小径歯99が噛合される。モーター駆動ギア97の外歯101にはウォームホイール103と一体となった小径歯105が噛合する。ウォームホイール103はホイール歯107が、モーター37の駆動軸109に固定されたウォーム111と噛合する。ウォーム111はねじり角が摩擦角である安息角より小さく、ウォームホイール103によっては逆駆動されない。つまり、ウォームホイール103は、ウォーム111によって空転が阻止される。
【0040】
モーター37は、不図示の制御部によって回動制御される。制御部はセンサ93からの検出信号により凹部付ギア81の回動角度を検出し、凸部収容凹部83の一端壁87又は他端壁89を凸部85に当接して、ギア付駆動板59を初期位置にリセット可能としている。これにより、施解錠の操作を手動やモーター駆動が混用された場合であっても、常にギア付駆動板59が初期位置に姿勢するよう制御がなされる。
【0041】
モーター駆動ギア97の背面には図2に示す同軸の筒軸97aが固定される。上記の背部小径歯99は、この筒軸97aの先端に設けられている。背部小径歯99とモーター駆動ギア97との間の筒軸には、中間ギア113が相対回転自在に支持されている。中間ギア113は、モーター駆動ギア97と中心が同一となるのみで関連作動はしない。中間ギア113は、ギア付駆動板59の駆動セグメントギア63と噛合するとともに、第一錠箱15に回動自在に支持された出力ギア117に噛合する。つまり、ギア付駆動板59からの回動力を出力ギア117に伝える。
【0042】
出力ギア117は、中間ギア113を介してギア付駆動板59に従動する。出力ギア117の側面には中心に沿う方向で突出する係合ピン119が固定され、係合ピン119は回動中心115から半径方向に変位している。
【0043】
第一錠箱15にはスライダである下部スライダ27がスライド自在に設けられ、下部スライダ27は連結杆23を介してスライドによる直線運動を第二錠箱19に伝達することで、第二錠箱19の第二デッドボルト17を進退させる。
【0044】
下部スライダ27には水平矩形板123が固定され、水平矩形板123には長穴125が形成される。長穴125は、係合ピン119を挿入し出力ギア117の回動により係合ピン119を介して下部スライダ27をスライドさせる。
【0045】
長穴125は、第一デッドボルト13を進退駆動させるギア付駆動板59の回転を遅延させて下部スライダ27に伝達する遊び部127が係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されている。つまり、遊び部127は、弧状となる。また、長穴125は、下部スライダ27のスライド方向に直交するロック部129を有する。ロック部129は、略への字状となった長穴125の右端側となる。ロック部129に位置する係合ピン119は、回動中心115に対しスライド方向の一端側に配置される位置関係で取り付けられている。
【0046】
図4に示すように、連結杆23によって連動される第二錠箱19は、第二デッドボルト17が、ガイド穴67をガイドピン69に係合して進退自在となる。第二デッドボルト17も第一デッドボルト13と同様に、一対の平行板部71を有し、その内方に軸ピン73を介してカマデッド39を従動回転自在に連結している。第二デッドボルト17の後部には略ハ字状に開口する進退係合凹部75が形成される。進退係合凹部75には、支軸121によって揺動する進退駆動杆133が挿入される。進退駆動杆133には駆動杆歯135が形成され、駆動杆歯135は第二デッドボルト駆動板137の第二駆動板セグメントギア139に噛合する。
【0047】
第二デッドボルト駆動板137は、揺動軸131を挟み第二駆動板セグメントギア139の反対側の腕部141が上部スライダ29に係合する。第二デッドボルト17は、進退係合凹部75に挿入した進退駆動杆133が第二デッドボルト駆動板137の回動によって所定の回動角度範囲で往復動(振られる)ことで進退動作される。進退駆動杆133は、第二デッドボルト17の進退方向両端位置における進退係合凹部75の前壁77又は後壁79に係合して、第二デッドボルト17の飛び出し及び引っ込みを規制する。
【0048】
第二錠箱19には、連結杆23の荷重による第二デッドボルト17の進出動作負荷増大をキャンセルする錘143が設けられている。この錘143は、本実施の形態では、第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられている。錘143は、揺動軸131を挟んで腕部141の反対側に固定される。これにより、連結杆23の質量をキャンセルする方向のモーメントを発生させている。
【0049】
第一錠箱15が下方、第二錠箱19が上方に設けられた場合、連結杆23を上昇させる方向の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷を増大させる。本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。すなわち、第一錠箱15が下方、第二錠箱19が上方に設けられた場合の連結杆23の質量によるスライド負荷増大を第二デッドボルト駆動板137に設けた錘143の質量で相殺でき、操作負荷を軽減することができる。
【0050】
なお、本実施の形態において、第二錠箱19にはラッチボルト145が設けられているが、ラッチボルト145は第一錠箱15に設けられても良い。
【0051】
次に、上記のように構成された錠装置11の作用を説明する。
図5は施錠から解錠への動作説明図、図6は第一錠箱15の施錠時の側面図、図7は第二錠箱19の施錠時の側面図、図8は第一錠箱15の解錠途中の側面図、図9は第一錠箱15の解錠直前の側面図、図10は第一錠箱15の解錠時の側面図である。
錠装置11は、施錠状態において、図5,図6に示すように、第一デッドボルト13が進出した状態で、下部スライダ27が上方へスライドされている。係合ピン119は、ロック部129に位置する。また、図7に示すように、上部スライダ29も上方へスライドされ、進出した第二デッドボルト17は、進退駆動杆133によって後退がロックされている。
【0052】
施錠状態の錠装置11では、係合ピン119が長穴125のロック部129に係合し、例えば連結杆23を動作させて下部スライダ27をスライドしようとしても、長穴125のロック部129から印加される力が係合ピン119を回動中心115側に移動させる半径方向の力となり、すなわち図6に示すように、係合ピン119の移動可能な長穴125が下部スライダ27の移動方向と直交する方向を長手方向とされて形成され、また、施錠時における係合ピン119の位置が回動中心115の真上ではなく下部スライダ27に対して離間する位置となって、長穴125の右端となる弧状の一端側(ロック部129)とされていることから、下部スライダ27のスライド方向の力が係合ピン119を長穴125に沿わせようとする従動とはならず、下部スライダ27の移動方向と略平行な係合ピン119と回動中心115とを結ぶ仮想線に沿う方向の力となり、下部スライダ27のスライドが阻止される。したがって、第二錠箱19や連結杆23から解錠方向の力が加えられても、係合ピン119が、下部スライダ27のロック部129に配置され、連結杆23を介し外力を第一錠箱15に加えても出力ギア117を回転させることができず、第一デッドボルト13を後退させる不正解錠が阻止される。
【0053】
錠装置11は、施錠状態において、図6に示すように、テールピース43が水平配置される。図8に示すように、テールピース43が反時計回りに回転され、ギア付駆動板59が解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。
【0054】
ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119が下部スライダ27の長穴125を移動する。このとき、図5に示したギア付駆動板59の70度程度までの回転範囲では、係合ピン119は回転軌跡に沿う方向で形成された遊び部127を移動するので、下部スライダ27をスライドさせることがなく、第一デッドボルト13だけが後退する。つまり、初動時の作動負荷が、第一デッドボルト分のみとなる。ギア付駆動板59の回転角度が70度程度まで回転されると、図9に示すように、第一デッドボルト13は後退が完了近くなり、リリースバネ49の付勢力に助勢されて負荷が小さくなる。
【0055】
これと同時に、ギア付駆動板59の回転角度が図5に示す70度を越えると、係合ピン119が遊び部127から脱し、出力ギア117は係合ピン119を介して下部スライダ27をスライドし始める。つまり、第二デッドボルト17を始動し始める。このときには第一デッドボルト13の作動負荷がほとんど生じなくなっているので、第二デッドボルト17の作動負荷のみの操作力となる。ギア付駆動板59が90度の回転角度に達すると、第一デッドボルト13は後退が終了する。図5に示すように、後のギア付駆動板59の70度から160度までの間で、第二デッドボルト17が後退されることとなる。これにより、従来、同時に発生していた作動負荷が半減され、二つのデッドボルトが小さな作動負荷で動作されることになる。
【0056】
テールピース43が90度まで回転されると、ギア付駆動板59は160度回転する。この状態で、第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17は後退が共に完了する。図10に示すように、第一デッドボルト13は、扇状のボルトロック部65が逆ハ字状の進退係合凹部75の後壁79にロックすることで進出が規制される。
【0057】
錠装置11では、第二デッドボルト17の移動に要する回動角度範囲が90度であり、第一デッドボルト13の移動に要する回動角度範囲が160度程度になる。これにより、第一デッドボルト13の始動に遅延させた第二デッドボルト17の始動が可能となる。ギア付駆動板59を操作側のダルマギア33よりも大きな回動角度範囲とすることで、ダルマギア33の操作角度範囲内で第一デッドボルト13の進退動作を早めに完了させることができる。その結果、二つのデッドボルトが同時に作動することによる負荷の発生を回避した遅延作動、すなわち二つのデッドボルトを時間差で動作させて負荷の軽減を行うことを容易に実現している。
【0058】
図11は解錠から施錠への動作説明図である。
錠装置11では、解錠から施錠への動作は、上記の施錠から解錠への動作と逆となる。図11の右方から左方への動作の流れとなる。テールピース43が90度位置から時計回りに回転されると、ギア付駆動板59が回転し、最初に第二デッドボルト17のみが進出される。テールピース43が45度程度回転される直前から第一デッドボルト13が進出を開始し、第一デッドボルト13が進出してからテールピース43が20度程度回転された時点で第二デッドボルト17の進出が完了する。その後、第一デッドボルト13のみが進出されることになる。したがって、施錠時においても、第一デッドボルト13、第二デッドボルト17が同時に進出することによる作動負荷の発生が回避されることになる。
【0059】
図12は第一錠箱15のモーター駆動による解錠直前の側面図である。
なお、錠装置11では、モーター37の駆動により、ギア付駆動板59が回動される。ギア付駆動板59の回動は、ウォームホイール103が回転されると、凹部付ギア81が回転され、凹部付ギア81の凸部収容凹部83が変位する。これにより、ギア付駆動板59は、凸部収容凹部83(図3参照)に配置されたギア付駆動板59の凸部85が、凹部付ギア81の一端壁87又は他端壁89に押圧されて回動される。モーター37による駆動は、ギア付駆動板59の初期位置への復帰、第一デッドボルト13、第二デッドボルト17の進退を可能としている。
【0060】
したがって、本実施の形態に係る錠装置11によれば、二つの第一デッドボルト、第二デッドボルトを小さな作動負荷で動作させることができる。作動負荷が小さくなるので、手動時の操作性を向上させることができる。また、出力の小さいモーター37を選定したり、モーター37を第一錠箱15用のみの一つにしたりできる。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、スライダ27に形成される長穴125に遊び部127を形成した構成とするとともに、第二デッドボルト駆動板137に錘143を設けた構成とした例について述べたが、長穴125に遊び部127を備えず、錘143を具備する構成としても良く、この構成によれば、錘143により、連結杆23の質量がスライド負荷の増大とならず、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側にこの錘143を設けることで、スライド負荷増大がキャンセルされることとなる。これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷が減少することとなり、これら鉛直方向に離間した二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
11…錠装置
13…第一デッドボルト
15…第一錠箱
17…第二デッドボルト
19…第二錠箱
21…扉
23…連結杆
27…下部スライダ(スライダ)
29…上部スライダ(スライダ)
33…ダルマギア
59…ギア付駆動板
65…ボルトロック部
115…回動中心
117…出力ギア
119…係合ピン
125…長穴
127…遊び部
129…ロック部
137…第二デッドボルト駆動板
143…錘
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッドボルトを一つの扉の二箇所で進退させる錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠装置には、防犯性能を高めるために、一つの扉に二つの錠前を設ける、所謂ワンドア2ロックシステムが従来より採用されている。従来、このワンドア2ロックシステムは、屋外側に2シリンダー、屋内側に2サムターンを装着する、すなわちそれぞれが単独で機能する施錠装置を2つ設ける構成が一般的である。
【0003】
ところが、2ケ所の錠前を施錠するには、2つのサムターン又は2つのシリンダー錠を、それぞれに操作、すなわち2回操作しなければならず、煩雑である。そこで、かかる煩雑さを解消するために、一つのサムターン又はシリンダーで、2ケ所以上の錠前を施錠できる錠装置が案出されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
この錠装置によれば、ガードボルト、デッドボルトやカマデッドのそれぞれが一つのサムターン又はシリンダー錠で操作できるので、別途の補助錠となる施錠装置を設けずに、複数箇所でのロックを可能にすることができ、施錠信頼性を向上させることができるとともに、施解錠の操作性も高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−164806号公報
【特許文献2】特開2003−97116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の施錠装置は、サムターン、シリンダー錠或いはモーターからの操作力により施解錠を行う際、二つのデッドボルトが同時に動作するため、デッドボルト進退のための作動負荷が、一つのものに比べ二倍となった。この作動負荷は、近年、パッキンによる気密性を高めた扉では、デッドボルト側面とストライクの摺動負荷、或いは側圧とも言われる負荷が大きいためより顕著に増大する。このような作動負荷が大きいものでは、手動による操作性が悪くなるのはもとより、電動によるものではそれぞれのデッドボルト用にモーターを設けたり、出力の大きいモーターを組み込んだりしなければならなかった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることのできる錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の錠装置11は、扉21に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17と、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板59に従動し、側面に回動中心115に沿う方向で突出する係合ピン119を前記回動中心115から半径方向に変位させて固定した出力ギア117と、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆23を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルト17を進退させるスライダ27と、
前記スライダ27に形成され、前記係合ピン119を挿入し前記出力ギア117の回動により該係合ピン119を介して該スライダ27をスライドさせる長穴125と、
を具備し、
前記長穴125は、前記第一デッドボルト13を進退駆動させる前記ギア付駆動板59の回転を遅延させて前記スライダ27に伝達する遊び部127が前記係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されていることを特徴とする。
【0009】
この錠装置11では、手動回動力又はモーター回動力によってギア付駆動板59が例えば解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119がスライダ27の長穴125を移動する。このとき、係合ピン119は回転軌跡に沿う方向で形成された遊び部127を移動するので、スライダ27をスライドさせることがなく、第一デッドボルト13だけが後退する。つまり、初動時の作動負荷が、第一デッドボルト分のみとなる。ギア付駆動板59の回転角度が例えば第一デッドボルト13の後退終了間近、例えば70度程度まで回転されると、第一デッドボルト13は後退が完了近くなり、リリースバネ等の付勢力に助勢されて負荷が小さくなる。これと同時に、係合ピン119が遊び部127から脱し、出力ギア117は係合ピン119を介してスライダ27をスライドし始める。つまり、第二デッドボルト17を始動し始める。このときには第一デッドボルト13の作動負荷がほとんど生じなくなっているので、第二デッドボルト17の作動負荷のみの操作力となる。これにより、従来、同時に発生していた作動負荷が半減され、二つのデッドボルトが小さな作動負荷で動作されることになる。
【0010】
請求項2記載の錠装置11は、請求項1記載の錠装置11であって、
前記第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17が、互いに鉛直方向に離間配置され、前記連結杆23が各デッドボルト13,17間に渡って配置されて連動連結され、前記第二デッドボルト17における前記連結杆23の荷重による前記第二デッドボルト17の進退動作負荷増大をキャンセルする錘143が、前記第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられていることを特徴とする。
【0011】
この錠装置11では、前記第一デッドボルト13と第二デッドボルト17とが互いに鉛直方向に下方と上方とに離間配置されていることで、連結杆23を上昇させる方向の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷の増大となる。本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。
【0012】
請求項3記載の錠装置11は、扉21に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17と、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルト13を進退させるギア付駆動板59と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板59に従動し、側面に回動中心115に沿う方向で突出する係合ピン119を前記回動中心115から半径方向に変位させて固定した出力ギア117と、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆23を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルト17を進退させるスライダ27と、
前記スライダ27に形成され、前記係合ピン119を挿入し前記出力ギア117の回動により該係合ピン119を介して該スライダ27をスライドさせる長穴125と、
を具備し、
前記第二デッドボルト17における前記連結杆23の荷重による前記第二デッドボルト17の進退動作負荷増大をキャンセルする錘143が、前記第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられていることを特徴とする。
【0013】
この錠装置11では、手動回動力又はモーター回動力によってギア付駆動板59が例えば解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119がスライダ27の長穴125を移動する。そして、スライダ27のスライドにより連結杆23を介して第二デッドボルト17が後退となる。連結杆23の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷の増大となるが、本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷が削減され、これら二つのデッドボルトが離間した配置位置であっても小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の錠装置11は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記長穴125は、前記スライダ27のスライド方向に直交するロック部129を有し、前記ロック部129に位置する係合ピン119は、前記回動中心115に対し前記スライド方向の一端側に配置されることを特徴とする。
【0015】
この錠装置11では、第一デッドボルト13が進出した施錠状態となると、係合ピン119が長穴125のロック部129に係合し、例えば連結杆23を動作させてスライダ27をスライドしようとしても、長穴125のロック部129から印加される力が係合ピン119を回動中心115側に移動させる半径方向の力となり、出力ギア117が回動することによるスライダ27のスライドが阻止される。
【0016】
請求項5記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記ギア付駆動板59には、進退方向両端位置における前記第一デッドボルト13に係合して該第一デッドボルト13の飛び出し及び引っ込みを規制する扇状のボルトロック部65が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この錠装置11では、第一デッドボルト13が進出した施錠状態、及び第一デッドボルト13が後退した解錠状態で、ボルトロック部65が第一デッドボルト13に係合してその後退方向、進出方向の移動が規制される。デッドボルトを進退させる作動部材は、通常、シリンダー錠やサムターンの回動角度範囲である90度程度となる。この場合、作動部材を進出側45度、後退側45度の位置に振ることで第一デッドボルト13へのロックが可能となる。しかし、ギア付駆動板59の回動角度範囲が90度より大きい場合、作動部材が第一デッドボルト13から離脱し易くなる。本構成では、扇状のボルトロック部65を形成することで、第一デッドボルト13への係合が維持される。
【0018】
請求項6記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記ギア付駆動板59は、操作力が伝わるダルマギア33の手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比で前記ダルマギア33に従動することを特徴とする。
【0019】
この錠装置11では、例えば第二デッドボルト17の移動に要する回動角度範囲が90度の場合、第一デッドボルト13の移動に要する回動角度範囲が160度程度になる。これにより、第一デッドボルト13の始動に遅延させた第二デッドボルト17の始動、或いは第二デッドボルト17の始動に対し第一デッドボルト13の始動を遅延させ、すなわち二つのデッドボルトの進退動作に時間差をつくることが可能となる。
【0020】
請求項7記載の錠装置11は、請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1つに記載の錠装置11であって、
前記錠箱が、互いに離間配置された第一錠箱15と第二錠箱19とで構成され、該第一錠箱15に前記第一デッドボルト13が備えられ、前記第二錠箱19に前記第二デッドボルト17が備えられているとともに、前記連結杆23が各錠箱15,19間に渡って配置されて連動連結されていることを特徴とする。
【0021】
この錠装置11では、錠箱を2つに別体とされて扉21に配設することができ、これら錠箱15,19内に各デッドボルト13,17を進退させる機構が設けられ、それぞれを連結杆23で連動可能となる。そしてこの連結杆23が長尺な構成となり、すなわち質量が増しても、上記遊び部127や錘143によって、離間配置した二つのデッドボルトは小さな作動負荷で動作されることになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る請求項1記載の錠装置によれば、二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることができる。作動負荷が小さくなるので、手動時の操作性を向上させることができる。また、出力の小さいモーターを選定することが可能となり、モーターを一つで構成することが可能となる。
【0023】
請求項2記載の錠装置によれば、第一デッドボルトと第二デッドボルトとが互いに鉛直方向に下方と上方とに離間配置した場合のこれらを連動連結する連結杆の質量によるスライド負荷増大を、第二デッドボルト駆動板に設けた錘の質量で相殺でき、操作負荷を軽減することができる。
【0024】
請求項3記載の錠装置によれば、第一デッドボルトと第二デッドボルトとを連動連結する連結杆を長尺としても、第二デッドボルト駆動板に設けた錘によって、連結杆の質量によるスライド負荷増大を相殺することができ、これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷を減少させることができ、これら離間した二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることが可能となり、操作負荷を軽減することができる。
【0025】
請求項4記載の錠装置によれば、連結杆から解錠方向の力が加えられても、出力ギアの係合ピンが、スライダのスライド方向に直交するロック部に配置されるので、連結杆を介し外力を錠箱に加えても出力ギアを回転させることができず、第一デッドボルトを後退させる不正解錠を阻止できる。
【0026】
請求項5記載の錠装置によれば、進退位置となった第一デッドボルトを、ギア付駆動板のボルトロック部に係合させてロックでき、防犯性を高めることができる。特に、90度の操作回転に対してそれ以上の回転範囲で回転するギア付駆動板を用いた場合に、ボルトロック部が設けられていることで、ギア付駆動板の振り切りによるデッドボルトからの離脱を確実に防止することができる。
【0027】
請求項6記載の錠装置によれば、ギア付駆動板を操作側のダルマギアよりも大きな回動角度範囲とすることで、ダルマギアの操作角度範囲内で一方のデッドボルトの進退動作を早めに完了させることができる。その結果、二つのデッドボルトを同時に作動させる負荷発生を回避した遅延作動、時間差動作を容易に実現できる。
【0028】
請求項7記載の錠装置によれば、錠箱を2つに別体とされて扉に配設することができ、これら錠箱内に各デッドボルトを進退させる機構が設けられ、それぞれを連結杆で連動可能となる。そしてこの連結杆が長尺な構成となり、すなわち質量が増しても、上記遊び部や錘によって、離間配置した二つのデッドボルトは小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る錠装置の外観斜視図である。
【図2】第一錠箱の施錠時における内部の側面図である。
【図3】図2示した第一錠箱における主要部材の分解側面図である。
【図4】第二錠箱の解錠時の側面図である。
【図5】施錠から解錠への動作説明図である。
【図6】第一錠箱の施錠時の側面図である。
【図7】第二錠箱の施錠時の側面図である。
【図8】第一錠箱の解錠途中の側面図である。
【図9】第一錠箱の解錠直前の側面図である。
【図10】第一錠箱の解錠時の側面図である。
【図11】解錠から施錠への動作説明図である。
【図12】第一錠箱のモーター駆動による解錠直前の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る錠装置の外観斜視図である。
本実施の形態に係る錠装置11は、第一デッドボルト13を進退自在に備える第一錠箱15と、第二デッドボルト17を進退自在に備える第二錠箱19が別体となって扉21に取り付けられる。第二錠箱19は、第一錠箱15からの駆動力が連結杆23を介して入力される。本実施の形態において、第一錠箱15及び第二錠箱19は扉21の開閉端側の木口25に上下の位置関係で互いに鉛直方向に離間して設けられている。連結杆23は、木口25に沿って扉21の内部に内蔵される。なお、本実施の形態では、第一錠箱15と第二錠箱19が別体である場合を例に説明するが、本発明に係る錠装置は、第一錠箱15と第二錠箱19が同一の錠箱内に収容された一体物であってもよい。但し、この場合においても第一デッドボルト13と第二デッドボルト17のそれぞれが設けられることに変わりはない。
【0031】
連結杆23は、下端が第一錠箱15の下部スライダ27に連結され、上端が第二錠箱19の上部スライダ29に連結される。第一錠箱15の側板にはシリンダー錠やサムターンの接続開口部31が設けられ、接続開口部31には内部施解錠機構への操作力の入力部となるダルマギア33が配置されている。第一錠箱15には電池ボックス35が付設される。電池ボックス35内に収納された電池は、第一錠箱15に収容されるモーターの電源となる。第一デッドボルト13、第二デッドボルト17にはカマデッド39が連動して設けられ、カマデッド39はボルト進出時にストライクの背面に係止してバール等によるこじ開けに高い抗力を発揮する。
【0032】
図2は第一錠箱15の施錠時における内部の側面図、図3は図2示した第一錠箱15における主要部材の分解側面図、図4は第二錠箱19の解錠時の側面図である。なお、図3において、実線の両端矢印は相互係合部位を表し、一点鎖線の両端部位同士は同一中心を表す。また、破線ギアは実線ギアの背面側に位置する。
錠装置11は、第一錠箱15に主要部材が収容される。第一錠箱15の下部にはダルマギア33が回動自在に支持され、中央のダルマ41には例えばシリンダー錠のテールピース43が係合されている。したがって、シリンダー錠のテールピース43が回動すればダルマギア33は回動される。本実施の形態において、テールピース43は90度の回動角度範囲で回動されるが、これに限定されるものではない。ダルマギア33には三角片45が形成され、頂角部には付勢杆47が連結される。付勢杆47にはリリースバネ49が外挿され、付勢杆47はリリースバネ49の圧縮反発力によってダルマギア33を解錠側又は施錠側のいずれか一方に付勢配置する。
【0033】
ダルマギア33の三角片45と反対側の外周にはダルマセグメントギア51が形成され、ダルマセグメントギア51は上下に摺動自在に設けられたラック53の下部歯55に噛合している。ラック53は、上部歯57がギア付駆動板59の駆動小歯車61に噛合する。つまり、ダルマギア33が回動されれば、ラック53を介してギア付駆動板59が回動されることになる。ギア付駆動板59の外周には駆動セグメントギア63が形成される。ギア付駆動板59は、操作力が伝わるダルマギア33の手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比でダルマギア33に従動する。
【0034】
また、ギア付駆動板59の駆動セグメントギア63と反対側には扇状のボルトロック部65が形成されている。第一デッドボルト13は、このギア付駆動板59の下側で、ガイド穴67をガイドピン69に係合して進退自在となる。第一デッドボルト13は、例えば図1に示す一対の平行板部71を有し、その内方に軸ピン73を介してカマデッド39を従動回転自在に連結している。第一デッドボルト13の後部には逆ハ字状に開口する進退係合凹部75が形成される。進退係合凹部75にはギア付駆動板59のボルトロック部65が挿入される。第一デッドボルト13は、進退係合凹部75に挿入したボルトロック部65がギア付駆動板59の回動によって所定の回動角度範囲で往復動(振られる)ことで進退動作される。
【0035】
また、ボルトロック部65は、第一デッドボルト13の進退方向両端位置における進退係合凹部75の前壁77又は後壁79に係合して、第一デッドボルト13の飛び出し及び引っ込みを規制する。
【0036】
デッドボルトを進退させる作動部材は、通常、シリンダー錠やサムターンの回動角度範囲である90度程度となる。この場合、作動部材を進出側45度、後退側45度の位置に振り分けることで第一デッドボルト13へのロックが可能となる。しかし、ギア付駆動板59の回動角度範囲が90度より十分に大きい場合、作動部材が第一デッドボルト13から離脱し易くなる。本構成では、扇状のボルトロック部65を形成することで、第一デッドボルト13への係合が維持される。
【0037】
これにより、ボルトロック部65を設けた錠装置11では、進退位置となった第一デッドボルト13を、ギア付駆動板59のボルトロック部65に係合させてロックでき、防犯性を高めることができる。特に、90度の操作回転に対してそれ以上の回転範囲で回転するギア付駆動板59を用いた場合に、ボルトロック部65が設けられていることで、ギア付駆動板59の振り切りによるデッドボルトからの離脱を確実に防止することができる。
【0038】
ギア付駆動板59の下層には同一回動中心で相対回動自在な凹部付ギア81が配置される。凹部付ギア81の側面には扇状の凸部収容凹部83が形成され、凸部収容凹部83にはギア付駆動板59のボルトロック部65に垂設される凸部85が挿入される。ギア付駆動板59は、モーター駆動される凹部付ギア81の一端壁87又は他端壁89にて凸部85が押圧されることで回動される。ギア付駆動板59は、手動回動力又はモーター回動力によって回動され、第一デッドボルト13を進退させる。
【0039】
凹部付ギア81の外周歯91にはセンサ93によって回動角度が検出される計数用フォロアギア95が噛合している。また、凹部付ギア81の外周歯91にはモーター駆動ギア97と一体となった背部小径歯99が噛合される。モーター駆動ギア97の外歯101にはウォームホイール103と一体となった小径歯105が噛合する。ウォームホイール103はホイール歯107が、モーター37の駆動軸109に固定されたウォーム111と噛合する。ウォーム111はねじり角が摩擦角である安息角より小さく、ウォームホイール103によっては逆駆動されない。つまり、ウォームホイール103は、ウォーム111によって空転が阻止される。
【0040】
モーター37は、不図示の制御部によって回動制御される。制御部はセンサ93からの検出信号により凹部付ギア81の回動角度を検出し、凸部収容凹部83の一端壁87又は他端壁89を凸部85に当接して、ギア付駆動板59を初期位置にリセット可能としている。これにより、施解錠の操作を手動やモーター駆動が混用された場合であっても、常にギア付駆動板59が初期位置に姿勢するよう制御がなされる。
【0041】
モーター駆動ギア97の背面には図2に示す同軸の筒軸97aが固定される。上記の背部小径歯99は、この筒軸97aの先端に設けられている。背部小径歯99とモーター駆動ギア97との間の筒軸には、中間ギア113が相対回転自在に支持されている。中間ギア113は、モーター駆動ギア97と中心が同一となるのみで関連作動はしない。中間ギア113は、ギア付駆動板59の駆動セグメントギア63と噛合するとともに、第一錠箱15に回動自在に支持された出力ギア117に噛合する。つまり、ギア付駆動板59からの回動力を出力ギア117に伝える。
【0042】
出力ギア117は、中間ギア113を介してギア付駆動板59に従動する。出力ギア117の側面には中心に沿う方向で突出する係合ピン119が固定され、係合ピン119は回動中心115から半径方向に変位している。
【0043】
第一錠箱15にはスライダである下部スライダ27がスライド自在に設けられ、下部スライダ27は連結杆23を介してスライドによる直線運動を第二錠箱19に伝達することで、第二錠箱19の第二デッドボルト17を進退させる。
【0044】
下部スライダ27には水平矩形板123が固定され、水平矩形板123には長穴125が形成される。長穴125は、係合ピン119を挿入し出力ギア117の回動により係合ピン119を介して下部スライダ27をスライドさせる。
【0045】
長穴125は、第一デッドボルト13を進退駆動させるギア付駆動板59の回転を遅延させて下部スライダ27に伝達する遊び部127が係合ピン119の回動軌跡に沿って形成されている。つまり、遊び部127は、弧状となる。また、長穴125は、下部スライダ27のスライド方向に直交するロック部129を有する。ロック部129は、略への字状となった長穴125の右端側となる。ロック部129に位置する係合ピン119は、回動中心115に対しスライド方向の一端側に配置される位置関係で取り付けられている。
【0046】
図4に示すように、連結杆23によって連動される第二錠箱19は、第二デッドボルト17が、ガイド穴67をガイドピン69に係合して進退自在となる。第二デッドボルト17も第一デッドボルト13と同様に、一対の平行板部71を有し、その内方に軸ピン73を介してカマデッド39を従動回転自在に連結している。第二デッドボルト17の後部には略ハ字状に開口する進退係合凹部75が形成される。進退係合凹部75には、支軸121によって揺動する進退駆動杆133が挿入される。進退駆動杆133には駆動杆歯135が形成され、駆動杆歯135は第二デッドボルト駆動板137の第二駆動板セグメントギア139に噛合する。
【0047】
第二デッドボルト駆動板137は、揺動軸131を挟み第二駆動板セグメントギア139の反対側の腕部141が上部スライダ29に係合する。第二デッドボルト17は、進退係合凹部75に挿入した進退駆動杆133が第二デッドボルト駆動板137の回動によって所定の回動角度範囲で往復動(振られる)ことで進退動作される。進退駆動杆133は、第二デッドボルト17の進退方向両端位置における進退係合凹部75の前壁77又は後壁79に係合して、第二デッドボルト17の飛び出し及び引っ込みを規制する。
【0048】
第二錠箱19には、連結杆23の荷重による第二デッドボルト17の進出動作負荷増大をキャンセルする錘143が設けられている。この錘143は、本実施の形態では、第二デッドボルト17を進退駆動する第二デッドボルト駆動板137に設けられている。錘143は、揺動軸131を挟んで腕部141の反対側に固定される。これにより、連結杆23の質量をキャンセルする方向のモーメントを発生させている。
【0049】
第一錠箱15が下方、第二錠箱19が上方に設けられた場合、連結杆23を上昇させる方向の作動には、連結杆23の質量がスライド負荷を増大させる。本構成では、連結杆23と同質量の錘143が、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側に設けられることで、スライド負荷増大がキャンセルされる。すなわち、第一錠箱15が下方、第二錠箱19が上方に設けられた場合の連結杆23の質量によるスライド負荷増大を第二デッドボルト駆動板137に設けた錘143の質量で相殺でき、操作負荷を軽減することができる。
【0050】
なお、本実施の形態において、第二錠箱19にはラッチボルト145が設けられているが、ラッチボルト145は第一錠箱15に設けられても良い。
【0051】
次に、上記のように構成された錠装置11の作用を説明する。
図5は施錠から解錠への動作説明図、図6は第一錠箱15の施錠時の側面図、図7は第二錠箱19の施錠時の側面図、図8は第一錠箱15の解錠途中の側面図、図9は第一錠箱15の解錠直前の側面図、図10は第一錠箱15の解錠時の側面図である。
錠装置11は、施錠状態において、図5,図6に示すように、第一デッドボルト13が進出した状態で、下部スライダ27が上方へスライドされている。係合ピン119は、ロック部129に位置する。また、図7に示すように、上部スライダ29も上方へスライドされ、進出した第二デッドボルト17は、進退駆動杆133によって後退がロックされている。
【0052】
施錠状態の錠装置11では、係合ピン119が長穴125のロック部129に係合し、例えば連結杆23を動作させて下部スライダ27をスライドしようとしても、長穴125のロック部129から印加される力が係合ピン119を回動中心115側に移動させる半径方向の力となり、すなわち図6に示すように、係合ピン119の移動可能な長穴125が下部スライダ27の移動方向と直交する方向を長手方向とされて形成され、また、施錠時における係合ピン119の位置が回動中心115の真上ではなく下部スライダ27に対して離間する位置となって、長穴125の右端となる弧状の一端側(ロック部129)とされていることから、下部スライダ27のスライド方向の力が係合ピン119を長穴125に沿わせようとする従動とはならず、下部スライダ27の移動方向と略平行な係合ピン119と回動中心115とを結ぶ仮想線に沿う方向の力となり、下部スライダ27のスライドが阻止される。したがって、第二錠箱19や連結杆23から解錠方向の力が加えられても、係合ピン119が、下部スライダ27のロック部129に配置され、連結杆23を介し外力を第一錠箱15に加えても出力ギア117を回転させることができず、第一デッドボルト13を後退させる不正解錠が阻止される。
【0053】
錠装置11は、施錠状態において、図6に示すように、テールピース43が水平配置される。図8に示すように、テールピース43が反時計回りに回転され、ギア付駆動板59が解錠方向に回転されると、ギア付駆動板59によって第一デッドボルト13が後退を開始する。
【0054】
ギア付駆動板59が回転されると、出力ギア117が回転され、出力ギア117の係合ピン119が下部スライダ27の長穴125を移動する。このとき、図5に示したギア付駆動板59の70度程度までの回転範囲では、係合ピン119は回転軌跡に沿う方向で形成された遊び部127を移動するので、下部スライダ27をスライドさせることがなく、第一デッドボルト13だけが後退する。つまり、初動時の作動負荷が、第一デッドボルト分のみとなる。ギア付駆動板59の回転角度が70度程度まで回転されると、図9に示すように、第一デッドボルト13は後退が完了近くなり、リリースバネ49の付勢力に助勢されて負荷が小さくなる。
【0055】
これと同時に、ギア付駆動板59の回転角度が図5に示す70度を越えると、係合ピン119が遊び部127から脱し、出力ギア117は係合ピン119を介して下部スライダ27をスライドし始める。つまり、第二デッドボルト17を始動し始める。このときには第一デッドボルト13の作動負荷がほとんど生じなくなっているので、第二デッドボルト17の作動負荷のみの操作力となる。ギア付駆動板59が90度の回転角度に達すると、第一デッドボルト13は後退が終了する。図5に示すように、後のギア付駆動板59の70度から160度までの間で、第二デッドボルト17が後退されることとなる。これにより、従来、同時に発生していた作動負荷が半減され、二つのデッドボルトが小さな作動負荷で動作されることになる。
【0056】
テールピース43が90度まで回転されると、ギア付駆動板59は160度回転する。この状態で、第一デッドボルト13及び第二デッドボルト17は後退が共に完了する。図10に示すように、第一デッドボルト13は、扇状のボルトロック部65が逆ハ字状の進退係合凹部75の後壁79にロックすることで進出が規制される。
【0057】
錠装置11では、第二デッドボルト17の移動に要する回動角度範囲が90度であり、第一デッドボルト13の移動に要する回動角度範囲が160度程度になる。これにより、第一デッドボルト13の始動に遅延させた第二デッドボルト17の始動が可能となる。ギア付駆動板59を操作側のダルマギア33よりも大きな回動角度範囲とすることで、ダルマギア33の操作角度範囲内で第一デッドボルト13の進退動作を早めに完了させることができる。その結果、二つのデッドボルトが同時に作動することによる負荷の発生を回避した遅延作動、すなわち二つのデッドボルトを時間差で動作させて負荷の軽減を行うことを容易に実現している。
【0058】
図11は解錠から施錠への動作説明図である。
錠装置11では、解錠から施錠への動作は、上記の施錠から解錠への動作と逆となる。図11の右方から左方への動作の流れとなる。テールピース43が90度位置から時計回りに回転されると、ギア付駆動板59が回転し、最初に第二デッドボルト17のみが進出される。テールピース43が45度程度回転される直前から第一デッドボルト13が進出を開始し、第一デッドボルト13が進出してからテールピース43が20度程度回転された時点で第二デッドボルト17の進出が完了する。その後、第一デッドボルト13のみが進出されることになる。したがって、施錠時においても、第一デッドボルト13、第二デッドボルト17が同時に進出することによる作動負荷の発生が回避されることになる。
【0059】
図12は第一錠箱15のモーター駆動による解錠直前の側面図である。
なお、錠装置11では、モーター37の駆動により、ギア付駆動板59が回動される。ギア付駆動板59の回動は、ウォームホイール103が回転されると、凹部付ギア81が回転され、凹部付ギア81の凸部収容凹部83が変位する。これにより、ギア付駆動板59は、凸部収容凹部83(図3参照)に配置されたギア付駆動板59の凸部85が、凹部付ギア81の一端壁87又は他端壁89に押圧されて回動される。モーター37による駆動は、ギア付駆動板59の初期位置への復帰、第一デッドボルト13、第二デッドボルト17の進退を可能としている。
【0060】
したがって、本実施の形態に係る錠装置11によれば、二つの第一デッドボルト、第二デッドボルトを小さな作動負荷で動作させることができる。作動負荷が小さくなるので、手動時の操作性を向上させることができる。また、出力の小さいモーター37を選定したり、モーター37を第一錠箱15用のみの一つにしたりできる。
【0061】
なお、上述した実施の形態では、スライダ27に形成される長穴125に遊び部127を形成した構成とするとともに、第二デッドボルト駆動板137に錘143を設けた構成とした例について述べたが、長穴125に遊び部127を備えず、錘143を具備する構成としても良く、この構成によれば、錘143により、連結杆23の質量がスライド負荷の増大とならず、第二デッドボルト駆動板137の操作モーメントを発生させる側にこの錘143を設けることで、スライド負荷増大がキャンセルされることとなる。これにより、従来、二つのデッドボルトを同時に作動することで発生していた作動負荷が減少することとなり、これら鉛直方向に離間した二つのデッドボルトを小さな作動負荷で動作させることが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
11…錠装置
13…第一デッドボルト
15…第一錠箱
17…第二デッドボルト
19…第二錠箱
21…扉
23…連結杆
27…下部スライダ(スライダ)
29…上部スライダ(スライダ)
33…ダルマギア
59…ギア付駆動板
65…ボルトロック部
115…回動中心
117…出力ギア
119…係合ピン
125…長穴
127…遊び部
129…ロック部
137…第二デッドボルト駆動板
143…錘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト及び第二デッドボルトと、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルトを進退させるギア付駆動板と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板に従動し、側面に回動中心に沿う方向で突出する係合ピンを前記回動中心から半径方向に変位させて固定した出力ギアと、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルトを進退させるスライダと、
前記スライダに形成され、前記係合ピンを挿入し前記出力ギアの回動により該係合ピンを介して該スライダをスライドさせる長穴と、
を具備し、
前記長穴は、前記第一デッドボルトを進退駆動させる前記ギア付駆動板の回転を遅延させて前記スライダに伝達する遊び部が前記係合ピンの回動軌跡に沿って形成されていることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠装置であって、
前記第一デッドボルト及び第二デッドボルトが、互いに鉛直方向に離間配置され、前記連結杆が各デッドボルト間に渡って配置されて連動連結され、前記第二デッドボルトにおける前記連結杆の荷重による前記第二デッドボルトの進退動作負荷増大をキャンセルする錘が、前記第二デッドボルトを進退駆動する第二デッドボルト駆動板に設けられていることを特徴とする錠装置。
【請求項3】
扉に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト及び第二デッドボルトと、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルトを進退させるギア付駆動板と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板に従動し、側面に回動中心に沿う方向で突出する係合ピンを前記回動中心から半径方向に変位させて固定した出力ギアと、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルトを進退させるスライダと、
前記スライダに形成され、前記係合ピンを挿入し前記出力ギアの回動により該係合ピンを介して該スライダをスライドさせる長穴と、
を具備し、
前記第二デッドボルトにおける前記連結杆の荷重による前記第二デッドボルトの進退動作負荷増大をキャンセルする錘が、前記第二デッドボルトを進退駆動する第二デッドボルト駆動板に設けられていることを特徴とする錠装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記長穴は、前記スライダのスライド方向に直交するロック部を有し、前記ロック部に位置する係合ピンは、前記回動中心に対し前記スライド方向の一端側に配置されることを特徴とする錠装置。
【請求項5】
請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記ギア付駆動板には、進退方向両端位置における前記第一デッドボルトに係合して該第一デッドボルトの飛び出し及び引っ込みを規制する扇状のボルトロック部が形成されていることを特徴とする錠装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記ギア付駆動板は、操作力が伝わるダルマギアの手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比で前記ダルマギアに従動することを特徴とする錠装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記錠箱が、互いに離間配置された第一錠箱と第二錠箱とで構成され、該第一錠箱に前記第一デッドボルトが備えられ、前記第二錠箱に前記第二デッドボルトが備えられているとともに、前記連結杆が各錠箱間に渡って配置されて連動連結されていることを特徴とする錠装置。
【請求項1】
扉に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト及び第二デッドボルトと、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルトを進退させるギア付駆動板と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板に従動し、側面に回動中心に沿う方向で突出する係合ピンを前記回動中心から半径方向に変位させて固定した出力ギアと、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルトを進退させるスライダと、
前記スライダに形成され、前記係合ピンを挿入し前記出力ギアの回動により該係合ピンを介して該スライダをスライドさせる長穴と、
を具備し、
前記長穴は、前記第一デッドボルトを進退駆動させる前記ギア付駆動板の回転を遅延させて前記スライダに伝達する遊び部が前記係合ピンの回動軌跡に沿って形成されていることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠装置であって、
前記第一デッドボルト及び第二デッドボルトが、互いに鉛直方向に離間配置され、前記連結杆が各デッドボルト間に渡って配置されて連動連結され、前記第二デッドボルトにおける前記連結杆の荷重による前記第二デッドボルトの進退動作負荷増大をキャンセルする錘が、前記第二デッドボルトを進退駆動する第二デッドボルト駆動板に設けられていることを特徴とする錠装置。
【請求項3】
扉に設けられる錠箱に、進退自在となって配設される第一デッドボルト及び第二デッドボルトと、
前記錠箱に設けられ、手動回動力又はモーター回動力によって回動され前記第一デッドボルトを進退させるギア付駆動板と、
前記錠箱に設けられ、前記ギア付駆動板に従動し、側面に回動中心に沿う方向で突出する係合ピンを前記回動中心から半径方向に変位させて固定した出力ギアと、
前記錠箱にスライド自在に設けられ、連結杆を介してスライドによる直線運動を伝達することで前記第二デッドボルトを進退させるスライダと、
前記スライダに形成され、前記係合ピンを挿入し前記出力ギアの回動により該係合ピンを介して該スライダをスライドさせる長穴と、
を具備し、
前記第二デッドボルトにおける前記連結杆の荷重による前記第二デッドボルトの進退動作負荷増大をキャンセルする錘が、前記第二デッドボルトを進退駆動する第二デッドボルト駆動板に設けられていることを特徴とする錠装置。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記長穴は、前記スライダのスライド方向に直交するロック部を有し、前記ロック部に位置する係合ピンは、前記回動中心に対し前記スライド方向の一端側に配置されることを特徴とする錠装置。
【請求項5】
請求項1,2,3,4のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記ギア付駆動板には、進退方向両端位置における前記第一デッドボルトに係合して該第一デッドボルトの飛び出し及び引っ込みを規制する扇状のボルトロック部が形成されていることを特徴とする錠装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4,5のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記ギア付駆動板は、操作力が伝わるダルマギアの手動回動角度範囲よりも大きい回動角度範囲で回動されるギア比で前記ダルマギアに従動することを特徴とする錠装置。
【請求項7】
請求項1,2,3,4,5,6のいずれか1つに記載の錠装置であって、
前記錠箱が、互いに離間配置された第一錠箱と第二錠箱とで構成され、該第一錠箱に前記第一デッドボルトが備えられ、前記第二錠箱に前記第二デッドボルトが備えられているとともに、前記連結杆が各錠箱間に渡って配置されて連動連結されていることを特徴とする錠装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−26224(P2012−26224A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168359(P2010−168359)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
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