説明

録音装置、制御方法及びプログラム

【課題】携帯型録音装置10において、録音初期時の録音ボタン14の操作音や携帯型録音装置10を所定場所に置く時の置き音が録音されるのを防止しつつ、小さい音の録音を確保し、録音の頭切れも回避する。
【解決手段】タッチスイッチ19は、圧電素子等の非変位式ユーザ操作部材から構成され、操作音を発生しないものとして、携帯型録音装置10に配備される。ユーザは、録音ボタン14を押して、録音待機状態にしてから(S26)、タッチスイッチ19にタッチする(S33)。そして、タッチを維持したまま、録音待機状態から録音開始状態へ移行させるために録音ボタン14を押す(S35)。タッチスイッチ19のタッチ期間では、録音開始指示があっても、録音開始が保留さる。その後、ユーザがタッチスイッチ19から指を離すと(S36)、録音が開始する(S38)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作音が録音されるのを有効に抑制する機能を装備する録音装置、制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイスレコーダ等の録音装置では、録音ボタン等の操作部とマイクロホンとは接近して配置されている。ユーザが録音ボタンを操作するのに伴い、録音が開始されるが、録音ボタンの操作音が、マイクロホンに集音されて、録音されてしまう。また、録音開始してから、録音装置を机等の所定の置き場所に置く時の置き音も録音されてしまう。
【0003】
特許文献1は、録音待機状態において、所定起動レベルの音声を入力すると、すなわち有音であると、録音を自動的に開始し、また、入力される音声が所定レベル以下になると、すなわち無音であると、録音を自動的に停止する録音装置について言及する(特許文献1の段落0002)。該録音装置では、該所定レベルを録音ボタンの操作音より少し高いレベルに設定しておけば、操作音は録音せずに済む。
【0004】
特許文献2は、録音ボタンのクリック音が録音されてしまうことを防止した録音装置を開示する(特許文献2の段落0007)。該録音装置は、録音ボタンが操作されると、直ちに録音を開始せずに、クリック音が十分に減衰するのを待ってから、録音を開始するようにしている(特許文献2の図6(A),(F),(G))。
【特許文献1】特開平9−17059号公報
【特許文献2】特開平10−91197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の録音装置では、録音ボタンの操作音が録音されることを防止することができるものの、ノイズではない録音すべき音も、所定レベル未満である場合には、無音と判断されて、録音されなくなってしまう。
【0006】
特許文献2の録音装置では、ユーザが録音指示を出して、一定時間が経過してから、録音が開始されるので、録音に頭切れが生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、録音操作部材の操作音や置き音等の不要な音を録音されないようにしつつ、録音すべき音については操作音程度の小さなものも適格に録音できるようにし、かつ頭切れを防止することができる録音装置、制御方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、録音操作部材の他に、非変位式ユーザ操作部材を利用する。ユーザは非変位式ユーザ操作部材に対して該非変位式ユーザ操作部材を指でタッチ操作することによりユーザ指示を出すものである。非変位式ユーザ操作部材は、それが非変位式であるので、操作音を生じさせない。本発明では、ユーザは、非変位式ユーザ操作部材にタッチしつつ、録音操作部材を操作し、その後、非変位式ユーザ操作部材から指を離すと、録音装置は録音を開始するようにされる。
【0009】
本発明の録音装置は次のものを備えている。
録音操作部材が操作されたことを検出する録音操作手段、
非変位式ユーザ操作部材がユーザによりタッチされているか否かを検出するタッチ検出手段、
前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の前記録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する録音開始保留手段、及び
前記録音開始保留手段が録音開始を保留している場合に、前記非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になるのに伴い、保留を解除して録音を開始する保留解除手段。
【0010】
本発明の制御方法は、録音操作部材及び非変位式ユーザ操作部材を備える録音装置の制御方法であって、次のものをステップを備えている。
前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の前記録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する録音開始保留ステップ、及び
前記録音開始保留ステップにおいて録音開始を保留している場合に、前記非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になるのに伴い、保留を解除して録音を開始する保留解除ステップ。
【0011】
本発明のプログラムは、本発明の前述の録音装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザは、非変位式ユーザ操作部材にタッチしている期間に、録音操作部材を操作し、その後、非変位式ユーザ操作部材から指を離すと、録音が開始されるので、録音操作部材の操作音や録音装置の置き音等が録音されることを防止することができる。また、所定レベルを設定して、該所定レベル以下の音は、録音しないというものではないので、録音開始後は操作音程度の小さな音も録音することができる。さらに、ユーザが非変位式ユーザ操作部材から指を離ししだい、録音が開始されるので、録音の頭切れを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は携帯型録音装置10をその正面から見た図である。該携帯型録音装置10は、内蔵のフラッシュメモリを装備するとともに、SDカードを着脱自在にしている。ユーザは、内蔵メモリ及びSDカードのどちらかを選択して、それに録音ファイルを例えばWMA形式で格納することができる。内蔵メモリ及びSDカードには、録音ファイルの他に、WMAやMP3の楽曲ファイルを格納することができ、ユーザは、携帯型録音装置10をDAP(デジタルオーディオプレーヤ;Digital Audio Player)として使用して、録音ファイルだけでなく、CD等からクリップした楽曲ファイルについてそれを適宜再生することができるようになっている。
【0014】
携帯型録音装置10は、上側面に中央マイクロホン11、及び上端部の左右側面に左右のマイクロホン12l,12rをそれぞれ有している。携帯型録音装置10の正面は、ほぼ上半部及びほぼ下半部がそれぞれ表示器13及び操作部となっている。表示器13は各種情報を表示する。下半部の操作部には録音ボタン14、再生/停止ボタン15、音量アップボタン16u及び音量ダウンボタン16d等が含まれる。
【0015】
録音ボタン14は、ユーザが録音待機及び録音開始を指示する際に押されるものである。再生/停止ボタン15は、ユーザがそれを押すごとに再生と再生停止とが交互に切替えられる。音量アップボタン16u及び音量ダウンボタン16dは、ユーザがそれを押すごとに、図示しないヘッドホンからの再生音の音量が所定量ずつ増大及び減少するようになっている。
【0016】
タッチスイッチ19は、例えば圧電素子や光素子から構成され、携帯型録音装置10の左の側面に配備される。タッチスイッチ19が圧電素子から構成される場合には、ユーザが該圧電素子に指でタッチすると、その圧力が感知される。この場合、タッチスイッチ19は圧力に基づきユーザがそれにタッチしているか否かを検出する。タッチスイッチ19が光素子から構成される場合には、該光素子は、発光部と光検出部とを含み、ユーザがタッチスイッチ19を指でタッチすると、発光部から光検出部への光経路が遮断されて、光検出部は発光部からの光の入射を検知できなくなる。この場合、タッチスイッチ19は、発光部から光検出部への光の入射の有無に基づきユーザがタッチしているか否かを検出する。
【0017】
図2は録音開始時のユーザ操作及びそれに対する携帯型録音装置10の処理についてのフローチャートである。S26では、ユーザは録音ボタン14を押し、携帯型録音装置10を録音待機状態にする。携帯型録音装置10は、ユーザが録音ボタン14に対する2回の操作について、1回目の押し操作は録音待機指示、2回目の押し操作は録音開始指示と判断して、対応の処理を実施する。S26における録音ボタン14の押し操作は1回目のものであり、録音は、まだ開始せず、その時の操作音は当然に録音されない。
【0018】
S26の後、S27へ進む場合と、S33へ進む場合とがある。ユーザがタッチスイッチ19に触れない(タッチしない)場合には、S27へ進み、タッチスイッチ19に触れる(タッチする)場合には、S33へ進む。S27へ進む場合について先に説明する。
【0019】
S27では、ユーザはタッチスイッチ19を触れないで、S28では、ユーザは録音ボタン14に対して2回目の押し操作を行って、携帯型録音装置10を録音開始状態にする。これに伴い、携帯型録音装置10は直ちにS29において録音開始する。S26→S27→S28→S29の流れは、従来の録音処理であり、この場合、録音ボタン14の操作音が録音されてしまう。
【0020】
S33では、ユーザはタッチスイッチ19に触れる.これに伴い、S34では、携帯型録音装置10は録音ゲインを設定レベルから減衰させる。携帯型録音装置10が録音ゲインの減衰させる具体的な仕方は図3及び図4において後述する。録音ゲインの減衰は、所定レベルへの減衰であってもよいし、録音ゲイン=0の消音であってよい。
【0021】
S35では、ユーザは、録音ボタン14を押して、携帯型録音装置10を録音開始状態にする。ユーザがタッチスイッチ19に触れ続けている間は、録音開始されないので、又はS34において録音ゲインを適度に減衰しているので、S35における録音ボタン14の押し操作時の操作音は録音内容に含まれることはない。S35の後、進み先がS36とS42との2つに分かれる。S35の後、ユーザがタッチスイッチ19から指を離す場合には、S36へ進み、離さずに、ずっと触れ続けている場合には、S42へ進む。S36へ進む場合を先に説明する。
【0022】
S36では、ユーザはタッチスイッチ19から指を離す。S37では、携帯型録音装置10は録音ゲインを設定レベル、すなわちS34より前のレベルへ戻す。S38では、携帯型録音装置10は録音を開始する。タッチスイッチ19には操作音がないので、S36の後、直ちにS38における録音開始が実施されても、操作音が録音されることはない。
【0023】
S42では、ユーザはタッチスイッチ19から指を離さないので、S43では、録音開始しないか、又は一定時間がそのまま経過した時に録音を解除する。ここで録音解除とは、S26より前の状態としての録音待機指示待ち状態へ戻ることを言う。
【0024】
図3は携帯型録音装置10における録音ゲイン減衰の回路図である。図3では、左マイクロホン12l用の左音声用減衰部65l及び右マイクロホン12r用の右音声用減衰部65rを示し、中央マイクロホン11用の音声用減衰部についてはその図示を省略しているが、中央マイクロホン11用の音声用減衰部の構成は左右の音声用減衰部65r,65lと同一である。増幅部50は、タッチスイッチ19の出力を増幅して、左右の音声用減衰部65l,65rへの共通の制御信号を生成する。タッチスイッチ19は、ユーザがそれに触れている期間は、オンを維持し、触れていない期間は、オフになる。
【0025】
増幅部50において、+側端子51及び−側端子52の対は、タッチスイッチ19のオン、オフに応じて相互に接続状態及び非接続状態になる。+側端子51は、抵抗53、PNPトランジスタ54及び抵抗55を介してアースへ接続されている。−側端子52は、コンデンサ56及び抵抗57の並列回路を介してアースへ接続されているとともに、演算増幅器58の正相側入力端子へ接続されている。抵抗53とPNPトランジスタ54との交点に+の所定電圧を印加させている。演算増幅器58の出力側は、逆相側入力端子へ接続されているとともに、抵抗59を介してNPNトランジスタ60のベースへ接続されている。
【0026】
NPNトランジスタ60のエミッタは、アースへ接続されているとともに、抵抗61を介してベースへ接続されている。NPNトランジスタ60のコレクタは、抵抗62を介してPNPトランジスタ54のエミッタへ接続されているとともに、抵抗63を介してPNPトランジスタ54のベースへ接続されている。NPNトランジスタ60のコレクタ電圧は増幅部50の出力として出力される。
【0027】
PNPトランジスタ54は抵抗64を介してベースをエミッタへ接続されている。PNPトランジスタ54のエミッタには所定の+の電圧が印加されている。
【0028】
タッチスイッチ19がオンとなっている期間では、演算増幅器58の出力電圧のレベルが上昇し、NPNトランジスタ60がオンになり、これに伴い、PNPトランジスタ54がオンになる。結果、PNPトランジスタ54から左右の音声用減衰部65l,65rへの制御電圧は高レベルとなる。タッチスイッチ19がオフとなっている期間では、演算増幅器58の出力電圧のレベルが下降し、NPNトランジスタ60がオフになり、これに伴い、PNPトランジスタ54がオフになる。結果、PNPトランジスタ54から左右の音声用減衰部65l,65rへの制御電圧は低レベルとなる。
【0029】
左右の音声用減衰部65l,65rは構成が同一であるので、左音声用減衰部65rについてのみ説明する。左マイクロホン12lからのオーディオ信号は、コンデンサ66、抵抗67、コンデンサ71及び抵抗72を介して演算増幅器73の逆相側入力端子へ供給される。NPNトランジスタ69は、そのベースへ抵抗70を介してPNPトランジスタ54からの制御電圧を供給されるとともに、コレクタにおいてアースされ、エミッタにおいて抵抗68を介して抵抗67とコンデンサ71との中間へ接続されている。演算増幅器73は、その正相側入力端子をアースへ接続されている。演算増幅器73の出力端子は、抵抗74を介して正相側入力端子へ接続されているとともに、コンデンサ75を介して左オーディオアンプ76lへ接続されている。
【0030】
左音声用減衰部65lがPNPトランジスタ54から高レベルの制御電圧を入力されている期間、すなわちユーザがタッチスイッチ19にタッチしている期間では、NPNトランジスタ69がオンになり、左マイクロホン12lからのオーディオ信号は、抵抗67,68の減衰器により減衰されて、抵抗74の逆相側入力端子へ供給されるので、左音声用減衰部65lにおける録音ゲインは下降する。これに対して、左音声用減衰部65lがPNPトランジスタ54から低レベルの制御電圧を入力されている期間、すなわちユーザがタッチスイッチ19にタッチしていない期間では、NPNトランジスタ69がオフになり、左マイクロホン12lからのオーディオ信号は、抵抗67,68の減衰器により減衰されることなく、抵抗74の逆相側入力端子へ供給されるので、左音声用減衰部65lにおける録音ゲインは上昇する。なお、抵抗67,68の減衰器における減衰量は抵抗68が小さいほど増大する。
【0031】
図4はマイコン79を介在させて左右の音声用減衰部65l,65rの録音ゲインを制御する制御回路のブロック図である。図4において、図3のブロックと同一のブロックは、図3の対応ブロックと同一の符号で指示して、説明は省略し、相違点について述べる。図4の制御回路では、図3のPNPトランジスタ54に代えて、マイコン79が設けられる。増幅部50のNPNトランジスタ60(図3)のコレクタはマイコン79の入力端子INへ接続されている。マイコン79の出力端子OUTは、左右の音声用減衰部65l,65rの抵抗70(図3)へ接続されている。
【0032】
ユーザがタッチスイッチ19にタッチしている期間では、増幅部50のNPNトランジスタ60(図3)はオンであり、マイコン79の入力端子INは低レベルの電圧となっている。これに対して、ユーザがタッチスイッチ19にタッチしていない期間では、NPNトランジスタ60はオフであり、マイコン79の入力端子INは高レベルの電圧となっている。マイコン79は、入力端子INの電圧が低レベル及び高レベルとなっている場合に、出力端子OUTにそれぞれ高レベル及び低レベルの制御電圧を生成する。結果、ユーザがタッチスイッチ19にタッチしている期間では、左右の音声用減衰部65l,65rのNPNトランジスタ69(図3)がオンになって、左右の音声用減衰部65l,65rにおける録音ゲインが下降し、また、ユーザがタッチスイッチ19にタッチしていない期間では、左右の音声用減衰部65l,65rのNPNトランジスタ69がオフになって、左右の音声用減衰部65l,65rにおける録音ゲインが上昇する。
【0033】
図5は録音装置80のブロック図である。録音装置80の具体例は携帯型録音装置10である。録音装置80は携帯式でなくてもよい。録音装置80は少なくとも1つのマイクロホンを備えていればよい。マイクロホンは、典型的には内蔵式のものであるが、外付けにしてもよい。後述の録音操作部材及び非変位式ユーザ操作部材は、録音装置80の本体又は外付けのマイクロホンに配備することができる。録音装置80は録音操作検出手段81、タッチ検出手段82、録音開始保留手段83及び保留解除手段84を備える。録音装置80は、さらに、状態戻し手段90及び録音ゲイン制御手段91を備えることもできる。
【0034】
録音操作検出手段81は、録音操作部材が操作されたことを検出する。タッチ検出手段82は、非変位式ユーザ操作部材がユーザによりタッチされているか否かを検出する。録音開始保留手段83は、非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する。保留解除手段84は、録音開始保留手段83が録音開始を保留している場合に、非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になるのに伴い、保留を解除し、録音レベルを元に戻して、録音を開始する。
【0035】
録音操作部材及び非変位式ユーザ操作部材の具体例はそれぞれ図1の録音ボタン14及びタッチスイッチ19である。非変位式ユーザ操作部材は、変位がないので、操作音を発生しない。ユーザは、非変位式ユーザ操作部材へのタッチを維持しつつ、録音操作部材を操作し、かつ机等の所定の置き場所に録音装置80を置く。そして、その後、録音開始すべきと判断した時に、非変位式ユーザ操作部材から指を離す。こうして、録音が開始される。ユーザが非変位式ユーザ操作部材へのタッチを止める時は、録音操作部材の操作音や録音装置80の置き音が消えた後であるので、操作音や置き音が録音されてしまうことはない。また、非変位式ユーザ操作部材から指を離ししだい、録音が開始されるので、音切れが回避される。
【0036】
典型的には、録音操作部材に対するユーザ操作は1回目が録音待機指示、2回目が録音開始指示に設定されている。録音開始保留手段83は、録音待機指示による録音待機状態になっている期間であってかつユーザが非変位式ユーザ操作部材をタッチしている期間における録音開始指示に対して録音開始を保留するようになっている。録音操作部材に対するユーザ操作について1回目を録音待機指示、2回目を録音開始指示に設定することにより、ユーザが誤操作して録音開始させてしまうのを防止することができる。
【0037】
状態戻し手段90は、録音開始保留手段が録音開始を保留している場合に、非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間が所定時間を超えたときには、録音待機状態前の録音待機指示待ち状態に戻す。この具体例は、図2のS27→S28→S29である。ユーザは、非変位式ユーザ操作部材をタッチしてから、このまま録音開始するのは好ましくないと判断することがある。この場合、非変位式ユーザ操作部材へのタッチを止めると、録音開始されてしまうが、所定時間を越えてタッチを維持することにより録音開始を中止することができる。
【0038】
好ましくは録音装置80は録音ゲイン制御手段91を備える。録音ゲイン制御手段91は、非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間では、録音ゲインを所定レベル以下に保持する。録音ゲイン制御手段91の具体例は、図3及び図4の左右の音声用減衰部65l,65rである。好ましくは、録音ゲイン制御手段91は、非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の開始時及び終了時にそれぞれ録音ゲインを漸減及び漸増させる。なお、録音ゲインの漸減及び漸増は、録音オーディオ再生時のオーディオのフェードアウト及びフェードインに対応する。
【0039】
録音装置80のユーザは、録音開始後の録音期間の途中又は終了時に、録音したくないノイズ音(例:録音終了ボタンの操作音)があるノイズ期間に遭遇することがある。その場合、ユーザは非変位式ユーザ操作部材に適宜タッチすることにより、録音開始後におけるノイズ期間の音を減衰又は消音した録音を行うことができる。
【0040】
図6は録音装置制御方法100のフローチャートである。録音装置制御方法100は、図5の録音装置80に適用されるものである。
【0041】
S101では、非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する。S102では、非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になったか否かを判定し、判定が正になりしだい、S103へ進む。S103では、保留を解除して録音を開始する。
【0042】
S101の処理は録音装置80の録音開始保留手段83の機能に対応している。S102,S103の処理は録音装置80の保留解除手段84の機能に対応している。したがって、録音開始保留手段83及び保留解除手段84の機能について述べた具体的態様はS101及びS102,S103の処理についての具体的態様としても適用可能である。録音装置制御方法100では、また、録音装置80の状態戻し手段90及び録音ゲイン制御手段91の機能に対応する処理を実行するステップを適宜、追加可能である。
【0043】
本発明を適用したプログラムは、コンピュータを録音装置80の各手段として機能させる。本発明を適用した別のプログラムは、録音装置制御方法100の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0044】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、当業者の自明の範囲内で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を自明の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】携帯型録音装置をその正面から見た図である。
【図2】録音開始時のユーザ操作及びそれに対する携帯型録音装置の処理についてのフローチャートである。
【図3】携帯型録音装置における録音ゲイン減衰の回路図である。
【図4】マイコンを介在させて音声用減衰部の録音ゲインを制御する制御回路のブロック図である。
【図5】録音装置のブロック図である。
【図6】録音装置制御方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
80:録音装置、81:録音操作検出手段、82:タッチ検出手段、83:録音開始保留手段、84:保留解除手段、90:状態戻し手段、91:録音ゲイン制御手段、100:録音装置制御方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
録音操作部材が操作されたことを検出する録音操作手段、
非変位式ユーザ操作部材がユーザによりタッチされているか否かを検出するタッチ検出手段、
前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の前記録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する録音開始保留手段、及び
前記録音開始保留手段が録音開始を保留している場合に、前記非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になるのに伴い、保留を解除して録音を開始する保留解除手段、
を備えることを特徴とする録音装置。
【請求項2】
録音操作部材に対するユーザ操作は1回目が録音待機指示、2回目が録音開始指示に設定されており、
前記録音開始保留手段は、録音待機指示による録音待機状態になっている期間であってかつユーザが非変位式ユーザ操作部材をタッチしている期間における録音開始指示に対して録音開始を保留するようになっていることを特徴とする請求項1記載の録音装置。
【請求項3】
前記録音開始保留手段が録音開始を保留している場合に前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間が所定時間を超えたときには、録音待機状態前の録音待機指示待ち状態に戻す状態戻し手段、
を備えることを特徴とする請求項2記載の録音装置。
【請求項4】
前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間では、録音ゲインを所定レベル以下に保持する録音ゲイン制御手段、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の録音装置。
【請求項5】
前記録音ゲイン制御手段は、前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の開始時及び終了時にそれぞれ録音ゲインを漸減及び漸増させることを特徴とする請求項4記載の録音装置。
【請求項6】
録音操作部材及び非変位式ユーザ操作部材を備える録音装置の制御方法であって、
前記非変位式ユーザ操作部材がタッチ状態にある期間の前記録音操作部材へのユーザ操作に対して録音開始を保留する録音開始保留ステップ、及び
前記録音開始保留ステップにおいて録音開始を保留している場合に、前記非変位式ユーザ操作部材が非タッチ状態になるのに伴い、保留を解除して録音を開始する保留解除ステップ、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の録音装置の各手段としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−295236(P2009−295236A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148446(P2008−148446)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】