説明

鍛造成形プレストランスファー装置

【課題】クランプ時に可動把持爪に生ずる偏荷重が空圧押圧手段に直接伝達されるのを回避すると共に、把持爪の段取り替え作業を容易化して作業時間の短縮を図る。
【解決手段】固定移送竿2と可動移送竿4の対向する内側には、複数の把持爪12a,14aを一定間隔で対向させて取着した一対の把持爪ユニット7,9が段付き肩部及びノックピンを介して着脱可能に取付けられ、可動移送竿4の内側に取付けられる把持爪ユニット9は、可動把持爪14aを僅かな範囲で進退移動可能に保持する複数のホルダ10と、ホルダ10が一定間隔で取着され可動移送竿4の内側に着脱可能に取付けられる長尺ベース6とを備え、可動移送竿4の外側には、可動把持爪14aと対応する位置に可動把持爪14a後端に当接した状態で押圧付勢するピストンロッド22aを備えたエアシリンダ20が取り付けられ、クランプ時における可動把持爪14aの押圧力を一定に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造成形プレスの対象となる成形素材を複数のプレス金型間に間欠移送する鍛造成形プレストランスファー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、複数のプレス金型で成形加工される多数の素材を他の工程(組立工程など)に連続移送する自動搬送方式の一つとして間欠移送を行う3次元トランスファー装置が採用されている。
【0003】
この種のトランスファー装置としては、例えば、固定金型の上面に間欠送りで自動供給される帯状の板材に対し上方の可動金型を下降させて打ち抜き成形された成形素材を取り出し、他の工程に移送するピックアンドプレース動作を行う装置が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されるピックアンドプレース装置は、基台上に回転及び上下動自在に旋回軸が設けてあり、該旋回軸の上端部に水平方向に進退自在のアームを設け、前記アームの先端には下向きの吸引チャックを設けた構成となっている。
前記ピックアンドプレース装置は、成形素材が打抜き成形されると可動金型を上昇させた後、旋回軸を回転且つアームを前進させて前記チャックを前記成形素材の直上に位置させる。
【0005】
次いで、旋回軸を下降させて前記チャックにより成形素材を吸着固定すると、旋回軸を上昇し水平旋回させて前記固定金型近傍に配置された搬送装置上に位置決め停止されている対象ワークに対向させた状態で旋回軸を下降させる。
然る後、旋回軸の下降動作により前記成形素材が前記対象ワークに組み込まれると、前記チャックからワークの吸着を解除させたのち前記旋回軸を上昇し、初期位置に戻ることで一連のピックアンドプレース動作が完了するようになっている。
【0006】
すなわち、前述したピックアンドプレース動作は、吸引チャックをアームにより固定金型上の成形素材の直上に前進移動する動作、旋回軸により吸引チャックを成形素材に対して下降する動作、吸引チャックにより前記成形素材を吸着する動作、旋回軸により吸着した成形素材を上昇する動作、旋回軸の回転により前記吸引チャックを上昇位置から搬送装置上の対象ワーク直上に移送する動作、旋回軸により前記対象ワーク上に対し成形素材を下降す動作、及び前記成形素材を前記対象ワーク上に移載したのち吸引チャックを開放する一連の動作を間欠的に行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−204763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されるピックアンドプレース装置は、打ち抜き成形された単一の成形素材を搬送装置で送られてくる対象ワークに1個ずつ間欠移送して組み込むもので、1つの金型に対し1台のピックアンドプレース装置が対応している。
このため、多数の成形素材を多数の金型に同時に移送するには、一定間間隔で列設した成型工程の異なる多数の金型間を搬送装置で繋ぎ、前記搬送装置上に各金型で成型された成形素材をピックアンドプレース装置により同時に移載して、次の工程を行う金型に順次搬送する移送方式が採られる。
【0009】
ところが、前記移送方式の場合は、1つの金型に対し1台のピックアンドプレース装置が対応しているため、複数台の金型を配置した場合は移送装置自体が大がかりな構造となるだけでなく、ここで使用されているピックアンドプレース装置は、1台の装置で単一の成形素材を1つの金型から近傍の移送装置に間欠移送により移載しており、移載するために金型と移送装置間で旋回軸を中心とするアームの回転動作、アームの前進後退動作、及びチャック動作を行う構成となっていることから、搬送効率が低下する問題を有している。
【0010】
この種の問題を解決する移送装置として、多数の成形素材を工程の異なる複数の金型で同時に成型を行うべく、搬送方向に一定間隔毎で配置された複数の金型間で成形素材を同時に間欠移送するトランスファー装置が提案されている。
前記トランスファー装置は、搬送方向両側に配置した一対の対向する移送竿の内側に複数の金型間の間隔(ピッチ)に合わせて一対の対向する把持爪を複数組取付けたもので、前記一対の移送竿を駆動源の作用によりクランプ、リフト、アドバンス動作を繰り返し行いつつ、前記成形素材を次の工程である金型間で順次間欠移送するものである。
【0011】
この場合、前記一対の移送竿は、クランプ動作を固定した固定移送竿と、クランプ位置の基準とすべく固定移送竿に対しクランプ動作を行う可動移送竿から構成されており、可動移送竿の内側に装着される可動把持爪は、対向する内側面に取着されたホルダ内にクランプ方向(成形素材を把持する方向)に僅かな範囲で移動可能に保持されており、可動移送竿の外側に配置される空圧シリンダのピストンロッドに直接締結されている。而して、前記可動把持爪は、可動移送竿の外側に配置される空圧シリンダ内の空圧力によりクランプ方向に押出した状態で付勢されており、クランプ時におけるクランプ圧力(把持力)を一定に保持している。
【0012】
ところが、前記可動把持爪は、前記空圧シリンダのピストンロッド先端に直接締結した構造となっているため、チャック時における部品間の摺動抵抗や、チャックミスによるひねり作用等の偏荷重が生じた際に前記シリンダの内部損傷が生じるだけでなく、これによる関連部品の段取り替え時には、全工程の把持爪を1つずつ交換する作業が必要となるために多くの時間を要し、生産効率の低下を招く要因となっていた。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、クランプ時に可動把持爪に生ずる偏荷重が空圧押圧手段に直接伝達されるのを回避すると共に、把持爪の段取り替え作業を容易化して作業時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る鍛造成形プレストランスファー装置は、鍛造プレス成形加工を行う複数の金型に成形素材を間欠移送すべく、搬送方向両側に固定移送竿と該固定移送竿に対しクランプ動作を行う可動移送竿とを配設し、該固定移送竿と可動移送竿とからなる一対の移送竿の対向する内側に複数の把持爪を一定間隔で配置した鍛造成形プレストランスファー装置において、
前記両移送竿の対向する内側には、前記複数の把持爪を一定間隔で対向するように取着した一対の把持爪ユニットが位置決め手段を介して着脱可能に取付けられ、少なくとも、前記可動移送竿の内側に取付けられる把持爪ユニットは、可動把持爪を僅かな範囲で進退移動可能に保持する複数のホルダと、該ホルダを一定間隔で取着し前記可動移送竿の内側に着脱可能に取付けられる長尺ベースとを備えて成り、前記可動移送竿の外側には、前記把持爪ユニットの可動把持爪と夫々対応する位置に前記可動把持爪の後端に当接した状態で押圧付勢する作動部を備えた空圧押圧手段が設けられて、クランプ時における可動把持爪の押圧力を一定に保持することを特徴とする。
【0015】
かかる発明によれば、前記複数の可動把持爪が把持爪ユニットの内側に一定間隔で取着されたホルダに僅かな範囲で進退移動可能に保持されており、前記把持爪ユニットを可動移送竿の内側に取付けた際に、可動把持爪の後端に対し前記可動移送竿に取着された空圧押圧手段が対応するように切離されて配置される構成となっているので、クランプ時に可動把持爪に生ずる偏荷重が空圧押圧手段の作動部に直接伝達されるのを回避することができる。この結果、クランプ時に可動把持爪に生ずる偏荷重の影響で空圧押圧手段が内部破損を生じたりすることが防止される。
【0016】
また、可動移送竿の内側に取付けられる把持爪ユニットは、前記可動移送竿の内側に位置決め手段を介して着脱可能に取付けられるようになっているので、把持爪ユニット単位で交換することができるため複数の可動把持爪の段取り替え作業が容易化され、作業時間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、空圧押圧手段は、エアシリンダと前記可動把持爪の後端を圧縮空気圧で常時押圧付勢する作動部となるピストンロッドから構成され、成形素材のクランプ時に生ずる反力を一定圧で保持することを特徴とする。
かかる構成によれば、可動把持爪の後端がピストンロッド(作動部)により圧縮空気圧で常時押圧付勢されており、空気は圧縮性を有する流体であるからバネ方式に比しクランプ力を一定に保持することができるので、成形素材のミスフィードを低減することができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記把持爪ユニットの位置決め手段は、前記可動移送竿の内側に取付けられる前記長尺ベースの取付け面上端縁にあって、前記可動移送竿の内側上端縁部に掛止可能に突設した段付き肩部と、長手方向の位置決めを行うノックピンとから構成されることを特徴とする。
かかる構成によれば、前記把持爪ユニットは、可動移送竿の内側に取付ける際に前記長尺ベースの段付き肩部を前記可動移送竿の内側上端縁部に掛止して縦方向の位置決めを行うと共に、ノックピンにより長手方向の位置決めを行うことができるので、段取り時における再組み付け時に正確に位置決めすることができ、且つ容易に把持爪ユニットを取付けることができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記エアシリンダ内のピストンロッドに対し後端側にロッドを延出し、前記エアシリンダの後端に前記ロッド後端の移動量を検出する検出器を配置したことを特徴とする。
かかる構成によれば、成形素材を把持する際に可動把持爪の移動量を検出することで把持姿勢が変化したミスチャックの確認を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明によれば、把持爪ユニットの内側には一定間隔で取着された複数のホルダ内に複数の可動把持爪が僅かな範囲で進退移動可能に保持され、前記把持爪ユニットを可動移送竿の内側に取付けた際に可動移送竿の外側に取着された空圧押圧手段の作動部が前記可動把持爪の後端に対し当接した状態で押圧付勢する対応するように配置される構成となっている。これによりクランプ時に可動把持爪に生ずる偏荷重が空圧押圧手段の作動部に直接伝達されるのを回避することができる。
また、可動移送竿の内側に取付けられる把持爪ユニットは、前記可動移送竿の内側に位置決め手段を介して着脱可能に取付けられるようになっている。従って、段取り替え時には、把持爪ユニット単位で交換することができるため複数の可動把持爪の交換作業が容易化され、作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る鍛造成形プレストランスファー装置の一部断面を示す平面図である。
【図2】金型の初工程における固定移送竿に配置した把持爪に対向配置された可動把持爪の拡大平面断面図である。
【図3】金型の初工程における固定移送竿に配置した把持爪に対向配置された可動把持爪の拡大縦断面図である。
【図4】空圧押圧手段に対応して把持爪ユニットに取付けられるホルダと該ホルダに進退移動可能に保持される可動把持爪の分解組立斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る鍛造成形プレストランスファー装置の一部断面を示す平面図、図2は金型の初工程における固定移送竿に配置した把持爪に対向配置された可動把持爪の拡大平面断面図、図3は金型の初工程における固定移送竿に配置した把持爪に対向配置された可動把持爪の拡大縦断面図である。
【0024】
図1において、1は鍛造成形プレストランスファー装置を示しており、該鍛造成形プレストランスファー装置1(以下トランスファー装置と称する)は、例えば1200トンの鍛造プレス機械により4工程の鍛造プレス成形加工を同時に行う図示しない複数の工程の異なる金型に対し成形素材(以下ワークと称する)W1,W2,W3,W4を図中右側の搬送方向に向けて初工程から順次図中左方向へ間欠移送するものである。
【0025】
搬送方向の両側には、後述する複数の把持爪を一定間隔で対向するように取着した一対の把持爪ユニット7,9を保持するための固定移送竿2と可動移送竿4が対向して配置されている。
本実施形態では、鍛造成形プレスで成形される成形素材は精密鍛造品なので、正確に金型内部に装着する必要があり各金型に対する移送時の位置決め精度が要求される。
【0026】
従って、本実施形態で使用されるトランスファー装置の前記固定移送竿2は、筒状角型断面を呈する所定長さの成形部材であって搬送方向の一方側に配置され、クランプ動作(左右方向の動作)の一方を固定することでクランプ位置の基準としている。
また前記可動移送竿4は、コ字型断面を呈する所定長さの成形部材であって搬送方向の他方側に配置され、クランプ動作(左右方向の動作)の一方を移動可能に構成しており、作業者側から見て手前側(図中の下方)に配置されている。また、成形部材のクランプ位置は後述するスペーサにより微調整が行われるようになっている。
【0027】
前記固定移送竿2の内側には、把持爪ユニット7が着脱可能に取付けられており、把持爪ユニット7の内側面(搬送方向の中心側)には前記複数の金型間隔の間隔Lに対応するよう複数のホルダ8を一定間隔で取着した板状の長尺ベース5が着脱可能に取付けられている。
また前記長尺ベース5は、図1〜図3に示すように前記固定移送竿2の内側上端縁部に掛止すべく、取付け面上端縁に突設した段付き肩部5aと、長手方向の位置決めを行うノックピン(不図示)とから構成されている。
【0028】
前記把持爪ユニット7には、一定間隔で複数のホルダ8が取着されており、前記各ホルダ8には、それぞれ形状の異なる固定側の把持爪12a,12b,12c,12dが保持されている。
而して、前記各把持爪12a,12b,12c,12dは、前記ホルダ8に形成された嵌合溝8a内にスペーサ28を介して挿嵌保持されるアダプタ13と、該アダプタ13の先端から突設した舌片13a上に高さ調整用のスペーサ30を介して取付けられ先端にV型の把持溝が形成されたジョー15とから構成されている。
【0029】
一方、前記可動移送竿4の内側には、把持爪ユニット9が着脱可能に取付けられており、把持爪ユニット9の内側には前記複数の金型間隔に対応するように複数のホルダ8を一定間隔で取着した板状の長尺ベース6が着脱可能に取付けられている。
前記長尺ベース6は、図1〜図3に示すように取付け面上端縁部に掛止すべく、取付け面上端縁に突設した段付き肩部6aと、長手方向の位置決めを行うノックピン(不図示)とから構成されている。
【0030】
従って、前記長尺ベース6を前記可動移送竿4の内側に取付ける際は、段付き肩部6aを前記可動移送竿4の内側上端縁部に掛止することで高さ方向が位置決めされ、この状態で図示しないノックピンにより長手方向が位置決めされる。
前記把持爪ユニット9には、一定間隔で複数のホルダ10が取着されており、前記各ホルダ10には、それぞれ形状の異なる可動把持爪14a,14b,14c,14dが搬送方向の中心に向けて移動可能に保持されている。
【0031】
前記各可動把持爪14a,14b,14c,14dは、前記ホルダ10に形成された嵌合溝10a内に僅かな範囲で進退移動可能に保持されるアダプタ17と、該アダプタ17の先端から突設した舌片17a上に高さ調整用のスペーサ32を介して取付けられ先端の把持部が平坦な把持面で形成されたジョー19とから構成されている。
【0032】
この場合、前記各ホルダ10は、後端面の中央から突出したボス10cが前記長尺ベース6に一定間隔で形成された複数の嵌合孔6bに嵌合し、この状態で前記各ホルダ10は複数のボルト42(図4参照)を介して前記長尺ベース6の内側面に取付けられている。
前記各ホルダ10には、後端面のボス10cに形成される大径段付き孔10dと嵌合溝10aの後部壁面側に挿通する小径孔10bが同一軸線上に連通するように形成されており、前記大径段付き孔10dには、後端側から挿通した軸部材16後端のフランジ16aが挿嵌されると共に前記小径孔10bには前記軸部材16先端側の小径軸部が挿通保持されている。
【0033】
これにより、大径段付き孔10d及び小径孔10bに進退移動可能に挿通保持された軸部材16は、後端のフランジ16aが大径段付き孔10dの段付き部に当接することで前方(把持方向)への移動が規制されている。
前記軸部材16は、小径軸部が挿通した状態で小径孔10bに保持されており、先端に形成される段付き嵌合部16bは、前記アダプタ17後端面の段付き嵌合穴に嵌合可能となっており、該段付き嵌合穴に段付き嵌合部16bを嵌合した状態で後方から挿通したボルト40を介して前記アダプタ17に締結されている。
【0034】
また、コ字型断面を呈する可動移送竿4の開口側が外側を向く底面には、空圧押圧手段であるエアシリンダ20の作動部となるピストンロッド22aを挿通すべく複数の金型の間隔に合せて一定間隔で形成された挿通孔4aに対応するように、夫々複数のエアシリンダ20が取付けられている。
前記ピストンロッド22aは、エアシリンダ20に供給される圧縮空気圧により前方に突出状態で付勢されており、前記挿通孔4aを挿通したピストンロッド22aの先端は、ホルダ10内で進退移動可能に保持されている軸部材16の後端面に当接している。
【0035】
これにより、前記可動把持爪14aは、前方に突出している軸部材16の当接により常時前方に押圧付勢されており、空気はバネ方式に比し圧縮性を有する流体であるからクランプ時に可動把持爪14aがdmm後退移動した場合でもクランプ力を一定に保持することができるので、ワークのミスフィードを低減することができる(図3参照)。
また、上記エアシリンダ20内のピストンロッド22aに対し後端側にロッド22bが延出しており、前記エアシリンダ20の後端には前記ロッド22bの後端を検出する例えば近接スイッチ等の検出器24が配置されている。
【0036】
これにより、前記ワークW1,W2,W3,W4を把持する際に前記可動把持爪14a,14b,14c,14dの移動量を検出器24で検出することで、把持姿勢が変化したミスチャックの確認を自動的に行うことができる。
【0037】
次に、前記可動把持爪の組立手順につき図4を参照して説明する。
図4は、空圧押圧手段に対応して把持爪ユニット9に取付けられるホルダ10と該ホルダ10に進退移動可能に保持される可動把持爪14aの分解組立斜視図である。尚、ここでは、固定側の把持爪の組立手順については、可動把持爪と略同一組立手順となるので説明を省略する。
図4において、可動把持爪14aは、金型の初工程における可動把持爪を示しており、前記可動把持爪14aは、アダプタ17の先端から突設した舌片17aの先端上面にスペーサ32を介してジョー19が取付けられている。
【0038】
先ず、前記ジョー19の後端下面に形成される段付き部をアダプタ17の舌片17a上面に取付けるに際し、前記段付き部の下面とアダプタ17の舌片17a上面の間に高さ方向調整用のスペーサ32を挟み、前記ジョー19後端の2つの切欠溝19aを挿通した2本のボルト41により前記前記ジョー19をアダプタ17の舌片17a上面に取付ける。
【0039】
次に、前記ジョー19を取付けたアダプタ17の後端部両側面が、ホルダ10の嵌合溝10a内に前方から挿嵌保持されると、軸部材16を前記ホルダ10の後端面から大径段付き孔10d、小径孔10bに軸部材16を挿通し、前記嵌合溝10aの底面から突出した前記軸部材16の先端を前記アダプタ17後端面の段付き嵌合部16bに嵌合し、後端から前記軸部材16を挿通したボルト40をアダプタ17後端部に取着する。
これにより、軸部材16が取着された前記可動把持爪14aは、小径孔10bに挿通保持された軸部材16により保持された状態にあり、軸部材16後端のフランジ16aが大径段付き孔10dの段付き部に当接する範囲で小径孔10bに進退移動自在に保持される。
【0040】
次いで、前記ホルダ10を複数(4本)のボルト42によりて前記把持爪ユニット9の長尺ベース6の内側面に取付けると、図2、図3に示すように前記可動移送竿4の挿通孔4aから内方(搬送中心側)に突出したピストンロッド22aの先端が軸部材16の後端面に当接する。これにより前記軸部材16は、前記ピストンロッド22aの押圧力によりフランジ16aが大径段付き孔10dと小径孔10bで形成される段付き部に当接するまで前方(把持方向)へ移動する。
【0041】
このようにして、前記可動把持爪14aは圧縮空気圧により突出したピストンロッド22aにより押圧付勢された状態でホルダ10に保持され、このホルダ10が一定間隔で長尺ベース6の内側面に取付けられると可動側の把持爪ユニット9の組立てが完了する。
【0042】
以上、述べたように、初工程の金型でプレス成形されるワークW1は、円柱状のもので固定側の把持爪12aに取付けられたジョー15のV型把持溝と、可動把持爪14aに取付けられたジョー19の平坦な把持面による3点当りで把持されるようになっている。
【0043】
初工程以降の金型でプレス成形されるワークW2,W3,W4は、金型によるプレス工程が進むにつれて上端にギア部が形成された縦長のドライブピニオン成形されて行き、この場合は、前記ワークの両側を把持する把持爪12b,12c,12dのジョー15把持部と夫々対向する後述の可動把持爪14b,14c,14dのジョー19把持部はワークに対し4点当りで把持されようになっている。
【0044】
かかる実施形態によれば、複数の把持爪12a,12b,12c,12dを一定間隔で保持し、固定移送竿2に着脱可能に取付けられた把持爪ユニット7と、複数の可動把持爪14a,14b,14c,14dを一定間隔で保持し、可動移送竿4に着脱可能に取付けられた把持爪ユニット9とが搬送方向両側に対向配置している。
【0045】
而して、前記複数の可動把持爪14a,14b,14c,14dは、ホルダ10内に僅かな範囲で進退移動可能に保持され、前記把持爪ユニット9を可動移送竿4の内側に取付けた際に可動移送竿4の外側に取着されたエアシリンダ20のピストンロッド22aが、前記可動把持爪14aの後端に対し当接した状態で押圧付勢する対応するように配置される構成となっている。
【0046】
これによりクランプ時に可動把持爪14a,14b,14c,14dに生ずる偏荷重が空圧押圧手段の作動部に直接伝達されるのを回避することができる。
また、前記可動移送竿4の内側に取付けられる把持爪ユニット9は、前記可動移送竿4の内側に段付き肩部6aを介して着脱可能に取付けられるようになっている。これにより、可動把持爪14a,14b,14c,14dの段取り替え時には、把持爪ユニット単位で交換することができるので、前記複数の可動把持爪の交換作業が容易化され、作業時間を短縮することができる。
なお、可動把持爪の後端を押圧付勢する空圧押圧手段としては、エアシリンダ20以外にもエアダンパーやエアークッションまたは空気ばねなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
鍛造成形プレストランスファー装置は、間欠移送の対象物として鍛造成形プレス金型により成形される鍛造成形素材を対象として述べてきたが、前記成形素材は鍛造品に限らず板金から工程の異なる金型で順次打ち抜いた偏平状なものや工程別に絞り成形される成型品、または同時に射出成型された樹脂製品等も搬送の対象とすることができ、各種部品を自動的に本体に組み込む自動組立機械の移送装置にも適する。
【符号の説明】
【0048】
1 鍛造成形プレストランスファー装置
2 固定移送竿
4 可動移送竿
5,6 長尺ベース
6a 段付き肩部(位置決め手段)
7,9 把持爪ユニット
8,10 ホルダ
12a,12b,12c,12d 固定側の把持爪
14a,14b,14c,14d 可動把持爪
20 エアシリンダ(空圧押圧手段)
22a ピストンロッド(作動部)
22b 後端側ロッド
24 検出器
W1,W2,W3,W4 ワーク(成形素材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍛造プレス成形加工を行う複数の金型に成形素材を間欠移送すべく、搬送方向両側に固定移送竿と該固定移送竿に対しクランプ動作を行う可動移送竿とを配設し、該固定移送竿と可動移送竿とからなる一対の移送竿の対向する内側に複数の把持爪を一定間隔で配置した鍛造成形プレストランスファー装置において、
前記両移送竿の対向する内側には、前記複数の把持爪を一定間隔で対向するように取着した一対の把持爪ユニットが位置決め手段を介して着脱可能に取付けられ、
少なくとも、前記可動移送竿の内側に取付けられる把持爪ユニットは、可動把持爪を僅かな範囲で進退移動可能に保持する複数のホルダと、該ホルダを一定間隔で取着し前記可動移送竿の内側に着脱可能に取付けられる長尺ベースとを備えて成り、
前記可動移送竿の外側には、前記把持爪ユニットの可動把持爪と夫々対応する位置に前記可動把持爪の後端に当接した状態で押圧付勢する作動部を備えた空圧押圧手段が設けられて、クランプ時における可動把持爪の押圧力を一定に保持することを特徴とする鍛造成形プレストランスファー装置。
【請求項2】
前記空圧押圧手段は、エアシリンダと前記可動把持爪の後端を圧縮空気圧で常時押圧付勢する作動部となるピストンロッドから構成され、成形素材のクランプ時に生ずる反力を一定圧で保持することを特徴とする請求項1に記載の鍛造成形プレストランスファー装置。
【請求項3】
前記把持爪ユニットの位置決め手段は、前記可動移送竿の内側に取付けられる前記長尺ベースの取付け面上端縁にあって、前記可動移送竿の内側上端縁部に掛止可能に突設した段付き肩部と、長手方向の位置決めを行うノックピンとから構成されることを特徴とする請求項1に記載の鍛造成形プレストランスファー装置。
【請求項4】
前記エアシリンダ内のピストンロッドに対し後端側にロッドを延出し、前記エアシリンダの後端に前記ロッド後端の移動量を検出する検出器を配置したことを特徴とする請求項2に記載の鍛造成形プレストランスファー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130944(P2012−130944A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285643(P2010−285643)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】