鍵盤楽器の蓋体開閉構造
【課題】簡単かつコンパクトな構成で、蓋体の開閉操作が行い易くなる鍵盤楽器の蓋体開閉構造を提供する。
【解決手段】ケース10の側壁部6とそれに対向する蓋体20の端部とを連結する連結機構30は、その一端31aが側壁部6に設けた第1軸支部33に軸支されて、他端31bが蓋体20の端部に設けた第2軸支部35に軸支されて長尺板状の連結具31と、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが本体部2の前後方向へスライド移動する構成したスライド機構40とを備え、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かってスライド移動する。
【解決手段】ケース10の側壁部6とそれに対向する蓋体20の端部とを連結する連結機構30は、その一端31aが側壁部6に設けた第1軸支部33に軸支されて、他端31bが蓋体20の端部に設けた第2軸支部35に軸支されて長尺板状の連結具31と、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが本体部2の前後方向へスライド移動する構成したスライド機構40とを備え、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かってスライド移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に設置した鍵盤の上面側を開閉する蓋体と、ケースに対して蓋体を移動可能に連結してなる連結機構とを備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子オルガンや電子ピアノをはじめとする各種の鍵盤楽器には、ケース内に設置した鍵盤の上面側を開閉するための鍵盤蓋(蓋体)を備えたものがある。このような鍵盤蓋を開閉する開閉機構の従来技術として、例えば、特許文献1に示す開閉機構がある。特許文献1に記載の開閉機構は、楽器本体と鍵盤蓋の後端部付近とをリンク部材によってそれぞれ回動自在に連結し、鍵盤蓋のそのリンク部材を軸支する位置から所定距離離れた位置にガイド当接部を設け、鍵盤蓋の開閉時にそのガイド当接部を楽器本体内に固設されたガイド部材の少なくとも2つの異なる湾曲面からなる第1,第2のガイド部に常に接触させながら移動させるように構成したものである。この開閉機構によれば、鍵盤蓋と楽器本体の天板の前端との隙間を最小限にでき、鍵盤蓋の後部を楽器本体内に収納するために必要な回動スペースも少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−38106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鍵盤蓋の開閉構造では、楽器本体内に蓋体の後端部を収納するためのスペースを確保する必要がある。そのため、楽器本体の小型化の妨げになるおそれがあった。また、楽器本体内に蓋体を収容するように構成したことで、蓋体と本体部との間に設けた連結機構の部品点数の増加、構造の煩雑化などにつながるおそれがあった。
【0005】
これに対して、鍵盤蓋の開閉構造の他の構成例として、一枚板状の鍵盤蓋の後端部が楽器本体に対して回動自在に取り付けられた構成のものがある。この回動式の鍵盤蓋は、一枚の板状の部材なので比較的安価に製造できるうえ、開蓋時に楽器本体上に立設されるので、楽器本体内に蓋体を収納するためのスペースを確保する必要がない。
【0006】
しかしながら、この鍵盤蓋の開閉構造では、一枚板状の鍵盤蓋がその後端部を支点として先端側が上下方向に回動するようになっている。そのため、蓋体の開閉時に重心の移動量が大きいことで、蓋体の開閉操作が行い難くかったり、蓋体の姿勢が急激に変化することで、蓋体の後端部と楽器本体との間に手などを挟んだりするおそれがあった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単かつコンパクトな構成で、蓋体の開閉時の重心移動を少なく抑えることができ、蓋体の開閉操作が行い易く、かつ、開蓋時の鍵盤楽器の外観を良好にすることができる鍵盤楽器の蓋体開閉構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、ケース(10)と、該ケース(10)内に設置された複数の鍵(5a,5b)からなる鍵盤(5)とを有する本体部(2)と、前記ケース(10)に対して前記鍵盤(5)の上方を閉じる閉位置と該鍵盤(5)の上方を開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられた板状の蓋体(20)と、前記ケース(10)における前記鍵盤(5)の側部に配置した側壁部(6)と、それに対向する前記蓋体(20)における前記鍵(5a,5b)の配列方向の端部(20d)とを連結してなる連結機構(30)と、を備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造であって、前記連結機構(30)は、一端(31a)が前記側壁部(6)に設けた第1軸支部(33)に軸支されており、他端(31b)が前記蓋体(20)の前記端部(20d)に設けた第2軸支部(35)に軸支されてなる長尺状の連結具(31)と、前記蓋体(20)が前記閉位置と前記開位置との間を移動する際に、該蓋体(20)の後端部(20a)が前記本体部(2)の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構(40,40−2)と、を備え、前記蓋体(20)が前記閉位置から前記開位置へ移動する際に、該蓋体(20)の後端部(20a)が前記鍵(5a,5b)の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成したことを特徴とする。また、この場合、前記第1軸支部(33)は、前記蓋体(20)における前記鍵(5a,5b)の配列方向の端部(20d)において、前記鍵盤(5)側を向く内面(20c)に設けられているとよい。
【0009】
本発明にかかる鍵盤楽器の蓋体開閉構造によれば、一端が側壁部に設けた第1軸支部に軸支されており、他端が蓋体の端部に設けた第2軸支部に軸支されてなる長尺状の連結具と、蓋体が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体の後端部が本体部の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構と、を備え、蓋体が閉位置から開位置へ移動する際に、該蓋体の後端部が鍵の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成した。これにより、鍵盤楽器の本体部と蓋体とを連結する連結機構の部品点数を少なく抑えた簡単な機構としながらも、開閉時の蓋体の重心移動を少なく抑えることができるので、開閉時に蓋体の姿勢が急激に変化することを防止でき、蓋体の開閉操作が行い易くなる。
【0010】
またこの場合、前記第1軸支部(33)は、前記第2軸支部(35)よりも前記本体部(2)の前側に近い位置に配置されているとよい。この構成によれば、連結機構のコンパクト化を図りながら、閉位置と開位置との間での蓋体の移動をよりスムーズに行わせることができるようになる。
【0011】
また、この鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記側壁部(6)は、前記ケース(10)における前記鍵盤(5)の両側それぞれに設けた一対の側壁部(6,6)であり、前記連結機構(30,30)は、前記一対の側壁部(6,6)それぞれと前記蓋体(20)における前記鍵(5a,b)の配列方向の両側の端部(20d,20d)それぞれとの間を連結してなる一対の前記連結具(31,31)を備え、前記スライド機構(40)は、前記一対の側壁部(6,6)の上端面(6a,6a)に離間可能な状態で当接する前記蓋体(20)の前記後端部(20a)が、該一対の側壁部(6,6)の上端面(6a,6a)に摺接する構成であってよい。
【0012】
この構成によれば、側壁部の上端面と蓋体の後端部とでスライド機構を構成したことで、スライド機構による蓋体のスムーズな開閉動作を可能としながらも、スライド機構の専用部品を要しないことで開閉機構の部品点数を少なく抑えることができ、鍵盤楽器の構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記蓋体(20)が前記開位置にある状態で、前記連結具(31)に当接してその移動を停止させるストッパ部(37)を備え、前記開位置における前記蓋体(20)は、その後端部(20a)が前端部(20b)よりも前記本体部(2)の前側に位置するように傾斜した状態で、該本体部(2)の上面に立設されるようにするとよい。
【0014】
この構成によれば、蓋体が開位置にある状態で、ストッパ部が連結具に当接してその移動を停止させることで、蓋体を開位置で確実に停止させることができ、蓋体の開閉動作が安定する。また、開位置で蓋体の後端部と側壁部の上端面とが離間しないように規制することができる。これにより、蓋体が開位置で後方に倒れることを防止できる。また、蓋体の後端部と側壁部の上端面との間に指などを挟む可能性を低減することができる。
【0015】
またこの場合、蓋体は、その開位置で、後端部が前端部よりも本体部の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部の上面に立設されるので、蓋体を開位置で安定的に停止させておくことが可能となる。したがって、開位置の蓋体が不用意に閉位置の方へ移動して閉じてしまうことをより確実に防止できる。
【0016】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記スライド機構(40−2)は、前記側壁部(6)と前記蓋体(20)とのいずれか一方に設けた前記本体部(2)の前後方向に延びる凹部(43a)と、前記側壁部(6)と前記蓋体(20)とのいずれか他方に設けた凸部(45a)とを備え、前記凹部(43a)に対して前記凸部(45a)が摺動可能な状態で嵌合した機構であってよい。
【0017】
この構成によれば、凹部に凸部が嵌合していることで、側壁部に対する蓋体のスライド移動において、凹部と凸部が互いに離間することなくスライドする。したがって、蓋体が移動する際に側壁部の上端面と蓋体の後端部との間隔が変化せずに済む。これにより、蓋体のよりスムーズな開閉動作を実現できる。また、蓋体を開閉する際に側壁部の上端面と蓋体の後端部との間に指などを挟むことを防止できる。さらに、側壁部と蓋体とを連結している連結具にねじれやゆがみが生じることを防止できる。
【0018】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、連結具(31)と本体部(2)との間に、蓋体(20)を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる弾性部材(60)を取り付けてもよい。この構成によれば、蓋体を開位置へ移動させるために必要な力が小さくて済むので、蓋体を開け易くなる。また、鍵盤楽器の開閉動作において蓋体が急激に移動することを防止できるので、蓋体の開閉動作を安定させることができるようになる。また、万一、蓋体と本体部との間に指などを挟んでしまった場合でも、挟まれる力を軽減することができるので、安全性が向上する。
【0019】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、第1軸支部(33)と第2軸支部(35)の少なくともいずれか、又はスライド機構(40−2)の凹部(43a)と凸部(45a)との間には、本体部(2)又は蓋体(20)と連結具(31)との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部(32,46,47)が設けられているとよい。
【0020】
この構成によれば、本体部又は蓋体と連結具との相対的な回動に対する抵抗力によって、蓋体の開閉動作がゆっくりとしたものとなるので、蓋体と楽器本体との間に指などを挟むことをより効果的に防止できるようになる。また、蓋体の開閉動作において、蓋体が急激に移動することを防止できるので、蓋体の開閉動作を安定させることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる鍵盤楽器の蓋体開閉構造によれば、簡単かつコンパクトな構成で、蓋体の開閉時の重心移動を少なく抑えることで、蓋体の開閉操作を行い易くでき、かつ、開蓋時の鍵盤楽器の外観を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器の全体構成例を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図3】蓋体が閉位置と開位置との間で移動する際の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器の全体構成例を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、(a)は、本体部の一方の側部を示す部分拡大斜視図、(b)は、(a)のX部分を示す部分拡大図である。
【図6】蓋体が閉位置から開位置へ移動する際の動作を説明するための図である。
【図7】スライド機構に設けた摩擦部の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる蓋体開閉構造を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図10】第4実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器における本体部の一方の側部を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1及び図2は、本発明の第1実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1の全体構成例を示す斜視図である。また、図2は、第1実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器1の側断面図である。なお、図2(a)は、後述する蓋体20が開位置にある状態を示しており、(b)は、蓋体20が閉位置にある状態を示している。本実施形態の鍵盤楽器1は、ケース10と、該ケース10内に設置された鍵盤5とを有する本体部2と、該本体部2のケース10に取り付けられた蓋体(鍵盤蓋)20とを備えている。なお、以下の説明では、横方向又は幅方向というときは、鍵盤5の各鍵5a,5bが配列された左右方向を示し、前又は後というときは、鍵盤5の手前側(演奏者側)又は奥側を示すものとする。
【0024】
鍵盤5は、横方向に沿って配列された複数の黒鍵5aと白鍵5bとを有している。鍵盤5を収容しているケース10は、鍵盤5の左右両側それぞれを覆う一対の側板(側壁部)6,6と、鍵盤5の前側を覆う前板7と、後側を覆う後板8と、底側を覆う底板9とで囲まれており、全体が横長の略直方体状に形成されている。ケース10の上面側は、鍵盤5の上面が露出する開口になっている。そして、蓋体20は、ケース10に対して該開口を完全に閉じる閉位置と、該開口を完全に開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられている。この蓋体20は、一対の側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で開口を塞ぐ一枚板状の部材であり、その外形は、ケース10の外形に沿う横長の長方形状になっている。蓋体20の内面(下面)20cにおける前端近傍には、前板7の上方で鍵盤5の前面を覆う蓋前(蓋前板)21が取り付けられている。なお、上記では、側板6,6は、その側面視の形状が方形状であって、上端面6a,6aが本体部2の後方から前方に向かって略水平(すなわち、鍵盤5の演奏面及び鍵5a,5bの長手方向と略平行)な形状である場合を示したが、これ以外にも、詳細な図示は省略するが、側板6,6は、その側面視の形状が略台形状であって、その上端面6a,6aが本体部2の後方から前方に向かって下降するように傾斜する傾斜平面状に形成されていてもよい。
【0025】
また、鍵盤5の両側部を覆う一対の側板6,6それぞれと、それらに対向する蓋体20の左右両側の端部20d,20dそれぞれとの間には、本体部2に対して蓋体20を移動可能に連結してなる連結機構30が設けられている。本実施形態の鍵盤楽器1では、連結機構30,30は、一対の側板6,6それぞれと蓋体20における鍵5a,5bの配列方向両側の端部20d,20dそれぞれとの間に取り付けた一対の連結具31,31を有している。一対の連結具31,31は、互いが左右対称な形状及び取付構造を有している。なお、ここでいう蓋体20の端部20dとは、蓋体20の幅方向における両側の端面とその近傍の内面20cや外面を含む部分(各図において点線で囲んだ部分及びその近傍)を示すものである。
【0026】
図2に示すように、連結具31は、長尺板状の部材であり、その長手方向の一方の端部31aが側板6の内側面6cに設けた第1軸支部33に軸支されており、他方の端部31bが蓋体20の端部20dにおいて、該蓋体20の鍵盤5側を向く内面20cに設けられた第2軸支部35に軸支されている。第1軸支部33は、側板6の内側面6cに対して、連結具31の一方の端部31aを本体部2の幅方向を軸方向とする回転軸周りで回転自在に支持(リンク支持)している。また、第2軸支部35は、蓋体20の内面20cに対して、連結具31の他方の端部31bを蓋体20の幅方向を軸方向とする回転軸周りで回転自在に支持(リンク支持)している。具体的には、第1軸支部33は、側板6の内側面6cに固定したトルク発生型の軸受32で連結具31の端部31aを軸支している。トルク発生型の軸受32については、後述する。また、第2軸支部35は、蓋体20の内面20cにネジで固定した取付板34に設けた支持片34aで連結具31の端部31bを軸支している。
【0027】
連結具31は、その長手方向が第1軸支部33から第2軸支部35に向かって延びる細板状で、第1軸支部33と第2軸支部35との中間の部分が平面内で略「く」字型に屈曲する屈曲部31cになっている。この連結具31は、その面を側板6の内側面6cと平行にして、屈曲部31cの内側を上方に向けた状態で取り付けられている。また、第1軸支部33は、第2軸支部35よりも下側かつ前側(本体部2の下側かつ前側)に配置されている。
【0028】
また、第1軸支部33に設置したトルク発生型の軸受32は、その詳細な図示及び構造の説明は省略するが、例えば、内部に作動油が充填された筒状のハウジングと、該ハウジング内に回転自在に嵌合する回転部材とを備えて構成され、作動油の油圧による摺動抵抗によって回転部材の回転に対する制動力が作用するように構成された回転ダンパ機構(オイルダンパ機構)を用いることができる。このような回転ダンパ機構からなるトルク発生型の軸受32として、例えば、特開2001‐349364号公報や特開2008−185215号公報などに開示された構造の軸受を用いることが可能である。なお、上記のトルク発生型の軸受32は、本体部2又は蓋体20と連結具31との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部として機能する部品である。
【0029】
軸受32は、上記のオイルダンパ機構に代えて、軸回りに設置した複数の樹脂部品の摺動により摩擦力を発生する回転ダンパ機構(回転摩擦機構)であってもよい。そして、この回転摩擦機構は、一方への回転においてのみ大きな摩擦力を発生し、なおかつ、回転速度が大きければ大きい程、大きな摩擦力を発生するダンパ機構(これを「ワンウェイクラッチ機構」)ともいう。)を用いてよい。そして、このようなダンパ機構を用いる場合は、蓋体20を開位置から閉位置へ向けて移動させる方向で大きな摩擦力を発生するように設置すれば、閉位置へ移動する蓋体20の動きがゆっくりとしたものになるので、蓋体20を閉じる際に蓋体20と側板6の上端面6aとの間に指などを挟むおそれを低減できる。
【0030】
また、本実施形態の蓋体開閉構造は、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6a(本体部2の上面)に沿ってスライド移動するように構成したスライド機構40を備えている。スライド機構40は、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとで構成されており、側板6の上端面6aに離間可能な状態で当接している蓋体20の後端部20aが、側板6の上端面6aに対して前後方向に摺接する構成である。ここで、側板6の上端面6aは、白鍵5b及び黒鍵5aの長手方向及び鍵盤5の演奏面(上面)と略平行に本体部2の前後方向へ延びている。したがって、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、上記のスライド機構40によって、該蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かって(鍵盤5の演奏面と略平行に)移動するようになっている。なお、ここでいう鍵盤5の演奏面とは、演奏者が指で触れる鍵5a、5bの上面側を含む概略の水平面を指すものであって、鍵盤5の態様によっては鍵5a,5bの上面が本体部2の前後方向で若干傾斜している場合もあるが、そのような場合においても鍵盤5の上面側を含む概略の水平面を指すものとする。
【0031】
また、蓋体20が開位置にある状態で、連結具31の移動を停止させるためのストッパ部37が設けられている。ストッパ部37は、側板6の内側面6cに立設した棒状の係止具(ピン)37aを備えている。係止具37aは、側板6の内側面6cからその軸方向が横方向(水平方向)に突設している。そして、蓋体20が完全に開いた開位置で係止具37aが連結具31の屈曲部31cに当接することで、第1軸支部33を中心とする連結具31の回動がその位置で規制されるようになっている。
【0032】
また、蓋体20の内面20cには、譜面受け51が取り付けられている。譜面受け51は、細板状の部材からなり、蓋体20の後端部20aの内面20cにおいて、幅方向の中央に取り付けられている。譜面受け51は、蓋体20側の端辺が蓋体20の内面20cに対して軸部51aで回動自在に支持されている。軸部51aは、本体部2の横方向(幅方向)に延びる軸を中心に譜面受け51を回動自在に支持している。これにより、譜面受け51は、軸部51aを中心にその面が蓋体20の内面20cに沿うように畳まれた閉位置と、その面が蓋体20の内面20cに対して略直交するように開かれた開位置との間で回動自在になっている。
【0033】
一方、本体部2のケース10内における鍵盤5の後側には、板状のパネル部材55が設置されている。また、パネル部材55の後端とケース10の後板8の上端との間には、これらの隙間を塞ぐための隠し板56が取り付けられている。パネル部材55は、鍵盤5の後側の上面を覆うパネル面55bを有している。パネル面55bは、本体部2の前後方向で若干湾曲しながら傾斜する傾斜湾曲面状であり、蓋体20の内面20cに取り付けた譜面受け51に対応する部分に配置されている。そして、後述するように、蓋体20が鍵盤5の上面側を閉じる閉位置へ移動する際、譜面受け51の先端部51bがパネル面55bに当接することで、譜面受け51が自動的に折り畳まれるようになっている。
【0034】
また、図1に示すように、パネル部材55は、その幅方向の両端部が側板6,6の内側面6c,6cに固定されている。そして、図5(b)に示すように、パネル部材55の幅方向の両端部(図5(b)では一方のみ図示)には、側板6の内側面6cとの間に連結具31を挿通させるための切込部55cが形成されている。これにより、連結具31は、切込部55cを介してパネル部材55の下側から上方に突出し、その先の端部31bが蓋体20の内面20cに連結されている。
【0035】
図3は、蓋体20が閉位置と開位置との間で移動する際の動作を説明するための図である。なお、図3では、連結具31及びストッパ部37など蓋体20の開閉動作に関連する主要な部品のみを図示している。以下、図3及び先の図2を用いて、上記構成の蓋体開閉構造による蓋体20の開閉動作について説明する。まず、図2(b)に示す状態で、蓋体20がケース10における鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置にある。この状態では、蓋体20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の上端面6a,6aに載置されている。この状態から蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、図3(a),(b),(c)の順で蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が前側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、図3(d)及び図2(a)に示すように、連結具31がストッパ部37の係止具37aに当接する位置で、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置となる。この開位置では、本体部2の上面に立設された蓋体20は、その後端部20aが前端部20bよりも若干前側に位置しており、その内面20cが下から上に向かって若干後方に傾斜した状態となっている。
【0036】
一方、図2(a)及び図3(d)に示す開位置にある蓋体20の前端部20bを手前側に引くと、蓋体20が閉位置に向かって移動する。この場合は、上記とは逆に、図3(c),(b),(a)の順で蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が閉じられてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が後側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って前方から後方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが下方に回動する。そして、最終的には、図2(b)に示すように、蓋体20の端部20d、20dの内面20cが、側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で、蓋体20が鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置となる。
【0037】
なお、図3(a)に示す状態から図2(b)に示す状態へ移行する間に、蓋体20の自重によって連結機構30に作用する負荷が大きくなる。そのため、上記の範囲で軸受32に発生する摩擦力が大きくなるように設定することが望ましい。このような設定の軸受32としては、前述の樹脂部材の摺動で摩擦力を発生する回転摩擦機構を用いるか、前述のワンウェイクラッチ機構を用いるとよい。
【0038】
本実施形態の蓋体開閉構造は、その一方の端部31aが側板6に設けた第1軸支部33に軸支されており他方の端部31bが蓋体20の内面20cに設けた第2軸支部35に軸支されてなる長尺板状の連結具31と、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが本体部2の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構40とを備えている。そして、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、該蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するようになっている。これにより、鍵盤楽器1の本体部2と蓋体20とを連結する連結機構30の部品点数を少なく抑えた簡単な機構としながらも、開閉時の蓋体20の重心移動を少なく抑えることができるので、開閉時に蓋体20の姿勢が急激に変化することを防止でき、蓋体20の開閉操作が行い易くなる。
【0039】
また、本実施形態の連結機構30では、第1軸支部33は、第2軸支部35よりも本体部2の前側に近い位置に配置されている。この構成によって、連結機構30のコンパクト化を図りながら、閉位置と開位置との間での蓋体20の移動をよりスムーズに行わせることができる。
【0040】
また、本実施形態の蓋体開閉構造では、ケース10における鍵盤5の両側それぞれに設けた一対の側板6,6を備え、連結機構30は、当該一対の側板6,6それぞれと蓋体20の両方の端部20d,20dそれぞれとの間を連結してなる一対の連結具31,31であり、スライド機構40は、一対の側板6,6の上端面6a,6aに離間可能な状態で当接する蓋体20の後端部20a,20aが、該一対の側板6,6の上端面6a,6aに摺接する構成である。
【0041】
このように、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとでスライド機構40を構成したことで、スライド機構40による蓋体20のスムーズな開閉動作を可能としながらも、スライド機構40の専用部品を要しないことで、連結機構30の部品点数を少なく抑えることができ、鍵盤楽器1の構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態の蓋体開閉構造では、蓋体20が開位置にある状態で、連結具31に当接してその移動を停止させるストッパ部37(係止具37a)を備えている。そして、開位置における蓋体20は、その後端部20aが前端部20bよりも本体部2の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部2の上面に立設されている。
【0043】
このように、蓋体20が開位置にある状態で、ストッパ部37の係止具37aが連結具31に当接してその移動を停止させることで、蓋体20を開位置で確実に停止させることができ、蓋体20の開閉動作が安定する。また、開位置で蓋体20の後端部20aと側板6の上端面6aとが離間しないように規制することができる。これにより、蓋体20が開位置で後方に倒れることを防止できる。また、蓋体20の後端部20aと側板6の上端面6aとの間に指などを挟んだりすることを防止できる。
【0044】
またこの場合、蓋体20は、その開位置で、後端部20aが前端部20bよりも本体部2の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部2の上面に立設されるので、蓋体20を開位置で安定的に停止させておくことが可能となる。したがって、開位置の蓋体20が不用意に閉位置の方へ移動して閉じてしまうことをより確実に防止できる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
【0046】
図4は、本発明の第2実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1−2の全体構成例を示す斜視図である。また、図5は、第2実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、(a)は、本体部2の一方の側部を示す部分拡大斜視図、(b)は、(a)のX部分を示す部分拡大図である。
【0047】
本実施形態の蓋体開閉構造では、第1実施形態の蓋体開閉構造が備えていた側板6の上端面6aに蓋体20の後端部20aが摺接する構成のスライド機構40に代えて、図5(b)に示すように、側板6側に設けた直線状のガイド溝(凹部)43aを有するガイド部材43と、蓋体20側に設けたスライド突起(凸部)45aを有するスライド部材45とを備え、ガイド溝43aにスライド突起45aが摺動可能な状態で嵌合してなるスライド機構40−2を備えている。
【0048】
ガイド部材43とスライド部材45は、いずれも表面が滑らかな合成樹脂製の成型品などからなる。そして、ガイド部材43は、側板6の内側面6cに取り付けた略矩形状の部材である。ガイド溝43aは、断面が略コ字型の溝部であり、その長手方向が鍵5a,5bの長手方向に沿って略水平に本体部2の前後方向に延びている。一方、スライド部材45は、蓋体20に固定した取付板34に対して回動自在に取り付けられており、蓋体20の開閉動作に伴い本体部2の前後方向に移動するようになっている。スライド突起45aは、ガイド溝43a内にスライド自在に嵌合する断面が略コ字型の突起である。ガイド溝43aは、蓋体20が閉位置から開位置まで移動する際の全域でスライド突起45aを嵌合させる長さ寸法を有している。
【0049】
図6は、本実施形態の蓋体開閉構造において、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際の動作を説明するための図である。なお、同図では、閉位置から開位置へ移動する際の蓋体20の軌跡を連続的に図示している。まず、同図の閉位置(A)にある蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、蓋体20が回動して鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が前側かつ上側に向かって回動すると共に、図5(b)に示すスライド機構40−2のスライド突起45aがガイド溝43aに沿って本体部2の後側から前側に向かって水平にスライド移動することで、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、連結具31がストッパ部37の係止具37aに当接する位置で、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置(B)となる。この閉位置(B)では、第1実施形態と同様、蓋体20の後端部20aが前端部20bよりも若干前側に位置しており、蓋体20の内面20cが下から上に向かって後方に若干傾斜した状態になっている。
【0050】
一方、図6の開位置(B)にある蓋体20の前端部20bを手前側に引くと、蓋体20が閉位置(A)に向かって移動して、ケース10における鍵盤5の上方が閉じられてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が後側かつ下側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って前方から後方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが下方に回動する。そして、最終的に、蓋体20の内面20cの両端部20d,20dが側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で、蓋体20が鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置(A)となる。
【0051】
このように、本実施形態の蓋体開閉構造では、図5などに示すように、側板6に設置したガイド溝(凹部)43aを有するガイド部材43と、蓋体20に設置したスライド突起(凸部)45aを有するスライド部材45とで構成したスライド機構40−2を備えている。このスライド機構40−2は、ガイド溝43aにスライド突起45aが嵌合していることで、これらが互いに離間することなくスライド移動する構成である。これにより、蓋体20のよりスムーズな開閉動作を実現できる。また、蓋体20が閉位置と開位置との間で移動する際に、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとの間隔が常に一定に保たれるので、それらの間に指などを挟むことを効果的に防止できる。さらに、側板6と蓋体20とを連結している連結具31にねじれやゆがみが生じることも防止できる。
【0052】
図7は、スライド機構40−2に抵抗力発生部を設けた場合の構成例を示す図である。本実施形態のスライド機構40−2には、蓋体20の移動に対する抵抗力を発生するための抵抗力発生部として、図7(a)に示すように、ガイド部材43のガイド溝43aの内面に形成した摩擦面46a,46bを設けることができる。摩擦面46a、46bは、ガイド部材43の前後両端部43c,43d及びその近傍におけるガイド溝43aの内面に設けられており、ガイド溝43aの表面に粗加工を施した面である。この摩擦面46a、46bを設けた部分では、それ以外の部分と比較してスライド突起45aの摺動抵抗が大きくなるように設定されている。
【0053】
また、抵抗力発生部の他の構成例として、図7(b)に示すように、ガイド溝43aの内面をスライド方向に沿って若干傾斜させてなる傾斜面47a,47bを設けることができる。傾斜面47a、47bは、ガイド溝43aの上下内面間の幅寸法をガイド部材43の両端部43c,43dに近付くにつれて次第に狭小化させた面である。この傾斜面47a、47bを設けた部分では、それ以外の部分と比較して、スライド突起45aが通過するガイド溝43aの幅寸法が小さくなっていることで、スライド突起45aの摺動抵抗が大きくなるように設定されている。
【0054】
これら摩擦面46a,46b又は傾斜面47a、47bは、蓋体20の閉位置に対応するガイド部材43の後端部43dに設けた摩擦面46a又は傾斜面47aと、蓋体20の開位置に対応するガイド部材43の前端部43cに設けた摩擦面46b又は傾斜面47bとの少なくともいずれか、あるいはこれらの両方を備えるとよい。その場合、蓋体20の閉位置と開位置との中間に対応する箇所には、摩擦面46又は傾斜面47を設けないようにする。これにより、蓋体20の開閉時にその重さで操作者に大きな負荷が掛かる開位置及び閉位置とそれらの近傍のみで、蓋体20の移動に対する抵抗力が発生するように構成できる。
【0055】
本実施形態のスライド機構40−2が備える摩擦面46又は傾斜面47からなる抵抗力発生部によれば、蓋体20の開閉時に操作者に大きな負荷が掛かる開位置及び閉位置とそれらの近傍で、蓋体20の移動に対する抵抗力を発生させることができるので、蓋体20の操作者にかかる負荷を効果的に低減することができる。したがって、蓋体20の開閉動作をより少ない力でスムーズに行えるようになる。また、蓋体20と本体部2との隙間に指などを挟むことをさらに効果的に防止できると共に、万一、指などを挟んだ場合でも、挟まれる力を軽減できるようになる。なお、上記のスライド機構40−2に設けた摩擦面46又は傾斜面47からなる抵抗発生部を備える場合は、トルク発生型の軸受32は、その設置を省略することも可能である。
【0056】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器1−3の側断面図である。本実施形態の蓋体開閉構造では、連結具31と本体部2との間に、蓋体20を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じるコイルバネ(弾性部材)60を取り付けている。コイルバネ60は、その一方の端部60aが連結具31に取り付けられており、他方の端部60bが側板6の内側面6cに取り付けられている。これにより、コイルバネ60は、本体部2と連結具31との間に張設されている。具体的には、連結具31の第1軸支部33側の端部31aは、屈曲部31cを頂点とする略二等辺三角形状の底辺として形成されており、その底辺の一方の角部に第1軸支部33が配置されており、他方の角部にコイルバネ60の端部60aが取り付けられている。また、コイルバネ60の連結具31側の端部60aは、本体部2側の端部60bよりも本体部2の前側の位置に固定されている。これにより、コイルバネ60の引張力で蓋体20を開位置へ移動する方向に連結具31が付勢されるようになっている。
【0057】
本実施形態の蓋体開閉構造では、蓋体20が閉位置から開位置に移動する際と、開位置から閉位置に移動する際との両方において、コイルバネ60の引張力で蓋体20が開位置に向かう方向へ連結具31が付勢される。これにより、トルク発生型の軸受32による作用と相まって、本体部2と連結具31との間及び蓋体20と連結具31との間の相対的な回動に対する抵抗力が生じることで、蓋体20の開閉動作がゆっくりとしたものになる。したがって、蓋体20と本体部2との間に指などを挟むことをより効果的に防止できるようになる。また、万一、蓋体20と本体部2との間に指などを挟んだ場合でも、挟まれる力を軽減できるようになる。さらに、蓋体20の開閉動作において、蓋体20が急激に移動することを防止できるので、蓋体20の開閉動作をより安定させることができる。
【0058】
なお、コイルバネ60の連結具31に対する取付位置は、連結具31における第1軸支部33及び第2軸支部35以外の位置で、かつ、蓋体20を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる位置あれば、上記以外の位置であってもよい。
【0059】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9及び図10は、本発明の第4実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1−4を示す図で、図9は、鍵盤楽器1−4の側断面図、図10は、鍵盤楽器1−4における本体部2の一方の側部を示す部分拡大斜視図である。本実施形態の蓋体開閉構造では、第1実施形態の蓋体開閉構造が備えていた蓋体20の内面20cに取り付けた取付板34に代えて、蓋体20における幅方向の端面20eに取り付けた他の取付板38を備えており、この取付板38を介して連結具31の端部31bが蓋体20に対して軸支されている。すなわち、本実施形態の第2軸支部35は、蓋体20の幅方向の端面20eに固定した取付板38に設けた支持片(蓋板20の端面20eに取り付けた部分を除く蓋板20の内面20c側への突出片)38aで連結具31の端部31bを軸支している。
【0060】
また、第1実施形態では、蓋体20が閉位置にある状態で、蓋体20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の上端面6a,6aに載置されるように構成していたのに対して、本実施形態では、蓋体20が閉位置にある状態で、蓋板20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の内側面6c,6cに取り付けた蓋止板39,39の上端面39a,39aに載置されるように構成している。なお、図9及び図10では、一方の側板6及び蓋止板39のみを図示している。
【0061】
図10に示すように、取付板38は、細片状の板状部材であって、その根元側がネジ(図示せず)で蓋板20における幅方向の端面20eに固定されて、その先端側が蓋板20の内面20c側に突出して連結具31を軸支するための支持片38aを形成している。なお、図10に示すものでは、蓋板20の端面20eに取付板38用の凹部を形成し、この凹部内に取付板38を固定している。これにより、取付板38が蓋板20の端面20eから突出しないようにしている。これ以外にも、図示は省略するが、蓋板20の端面20eと側板6との間に若干の隙間を設けて、この隙間に取付板38を配置することも可能である。なお、上記支持片38aの形状及び軸支構造は、第1実施形態の支持片34aと同様である。
【0062】
一方、側板6の内側面6cに取り付けた蓋止板39は、例えば側板6と同等の厚みを有する板状の部材であって、その上端面39aが平面状になっている。そして、上端面39aが側板6の上端面6aに対して蓋板20の厚み寸法分だけ低い位置で鍵5a,5bの長手方向に沿って延伸するように取り付けられている。蓋止板39は、複数のネジ(図示せず)で側板6の内側面6cに固定されている。また、側板6の内側面6cと蓋止板39との間には、連結具31及び取付板38の支持片38aを収容するための収容部39bが形成されている。収容部39bは、側板6の内側面6cと蓋止板39に設けた窪みとの間に形成された矩形状の開口からなる。この収容部39bは、蓋止板39の下側から上側へ連結具31を挿通させていると共に、蓋体20が閉位置にある状態で取付板38の支持片38aを収容するようになっている。なお、本実施形態の蓋体開閉構造では、上記の側板6と蓋止板39とで本発明にかかる側壁部が構成されており、本発明における「側壁部の上端面」は、蓋止板39の上端面39aがこれに該当する。
【0063】
上記構成の蓋体開閉構造では、図9(b)に示す状態で、蓋体20がケース10における鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置にある。この状態では、蓋体20の端部20dの内面20cが蓋止板39の上端面39aに載置されており、蓋板20の外面(上面)20gが側板6の上端面6aと同一高さで連続した面となっている。
【0064】
この状態から蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35側が前側に向かうように回動すると、蓋体20の後端部20aが蓋止板39の上端面39a(詳細には、上端面39aの後側の一部)に沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、図9(a)に示すように、連結具31の中間部がストッパ部37の係止具37aに当接し、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置となる。
【0065】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、蓋体開閉構造を適用した鍵盤楽器1として、卓上型の鍵盤楽器を示したが、本発明にかかる蓋体開閉構造は、卓上型の鍵盤楽器以外にも、脚部を備えた自立型(大型)の鍵盤楽器などに適用することも可能である。
【0066】
また、上記の各実施形態では、蓋板20の幅方向の端部20dに設けた第2軸支部35は、蓋板20の内面20cにおける後端部20a側、あるいは、蓋板20の端面20eにおける後端部20a側に配置されている場合を示したが、第2軸支部35は、蓋板20の幅方向(鍵5a,5bの配列方向)の端部20dに設けてさえいれば、上記実施形態に示す以外の場所に配置することも可能である。例えば、蓋板20の内面20cにおける後端部20aと前端部20bの中間位置や、蓋板20の端面20eにおける後端部20aと前端部20bの中間位置などに設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ケースの両側の側板6,6と蓋体20の幅方向の両側の端部20d,20dそれぞれとの間に連結機構30、30を設けた場合を示したが、本発明にかかる連結機構は、蓋体のスライド移動が可能であれば、蓋体における幅方向の一方の端部に対応するものだけを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・鍵盤楽器、2・・・本体部、5・・・ 鍵盤、6・・・ 側板(側壁部)、6a・・・上端面、6c・・・内側面、10・・・ケース、20・・・蓋体、20a・・・後端部、20b・・・前端部、20c・・・内面(鍵盤5側の面)、20d・・・端部(鍵の配列方向の端部)、20e・・・端面、20g・・・外面、30・・・連結機構、31・・・連結具、33・・・第1軸支部、35・・・第2軸支部、37・・・ストッパ部、40・・・スライド機構、43・・・ガイド部材、43a・・・ガイド溝(凹部)、45・・・スライド部材、45a・・・スライド突起(凸部)、46(46a,46b)・・・摩擦面(抵抗力発生部)、47(47a,47b)・・・傾斜面(抵抗力発生部)、60・・・コイルバネ(弾性部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に設置した鍵盤の上面側を開閉する蓋体と、ケースに対して蓋体を移動可能に連結してなる連結機構とを備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子オルガンや電子ピアノをはじめとする各種の鍵盤楽器には、ケース内に設置した鍵盤の上面側を開閉するための鍵盤蓋(蓋体)を備えたものがある。このような鍵盤蓋を開閉する開閉機構の従来技術として、例えば、特許文献1に示す開閉機構がある。特許文献1に記載の開閉機構は、楽器本体と鍵盤蓋の後端部付近とをリンク部材によってそれぞれ回動自在に連結し、鍵盤蓋のそのリンク部材を軸支する位置から所定距離離れた位置にガイド当接部を設け、鍵盤蓋の開閉時にそのガイド当接部を楽器本体内に固設されたガイド部材の少なくとも2つの異なる湾曲面からなる第1,第2のガイド部に常に接触させながら移動させるように構成したものである。この開閉機構によれば、鍵盤蓋と楽器本体の天板の前端との隙間を最小限にでき、鍵盤蓋の後部を楽器本体内に収納するために必要な回動スペースも少なくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−38106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鍵盤蓋の開閉構造では、楽器本体内に蓋体の後端部を収納するためのスペースを確保する必要がある。そのため、楽器本体の小型化の妨げになるおそれがあった。また、楽器本体内に蓋体を収容するように構成したことで、蓋体と本体部との間に設けた連結機構の部品点数の増加、構造の煩雑化などにつながるおそれがあった。
【0005】
これに対して、鍵盤蓋の開閉構造の他の構成例として、一枚板状の鍵盤蓋の後端部が楽器本体に対して回動自在に取り付けられた構成のものがある。この回動式の鍵盤蓋は、一枚の板状の部材なので比較的安価に製造できるうえ、開蓋時に楽器本体上に立設されるので、楽器本体内に蓋体を収納するためのスペースを確保する必要がない。
【0006】
しかしながら、この鍵盤蓋の開閉構造では、一枚板状の鍵盤蓋がその後端部を支点として先端側が上下方向に回動するようになっている。そのため、蓋体の開閉時に重心の移動量が大きいことで、蓋体の開閉操作が行い難くかったり、蓋体の姿勢が急激に変化することで、蓋体の後端部と楽器本体との間に手などを挟んだりするおそれがあった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単かつコンパクトな構成で、蓋体の開閉時の重心移動を少なく抑えることができ、蓋体の開閉操作が行い易く、かつ、開蓋時の鍵盤楽器の外観を良好にすることができる鍵盤楽器の蓋体開閉構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、ケース(10)と、該ケース(10)内に設置された複数の鍵(5a,5b)からなる鍵盤(5)とを有する本体部(2)と、前記ケース(10)に対して前記鍵盤(5)の上方を閉じる閉位置と該鍵盤(5)の上方を開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられた板状の蓋体(20)と、前記ケース(10)における前記鍵盤(5)の側部に配置した側壁部(6)と、それに対向する前記蓋体(20)における前記鍵(5a,5b)の配列方向の端部(20d)とを連結してなる連結機構(30)と、を備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造であって、前記連結機構(30)は、一端(31a)が前記側壁部(6)に設けた第1軸支部(33)に軸支されており、他端(31b)が前記蓋体(20)の前記端部(20d)に設けた第2軸支部(35)に軸支されてなる長尺状の連結具(31)と、前記蓋体(20)が前記閉位置と前記開位置との間を移動する際に、該蓋体(20)の後端部(20a)が前記本体部(2)の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構(40,40−2)と、を備え、前記蓋体(20)が前記閉位置から前記開位置へ移動する際に、該蓋体(20)の後端部(20a)が前記鍵(5a,5b)の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成したことを特徴とする。また、この場合、前記第1軸支部(33)は、前記蓋体(20)における前記鍵(5a,5b)の配列方向の端部(20d)において、前記鍵盤(5)側を向く内面(20c)に設けられているとよい。
【0009】
本発明にかかる鍵盤楽器の蓋体開閉構造によれば、一端が側壁部に設けた第1軸支部に軸支されており、他端が蓋体の端部に設けた第2軸支部に軸支されてなる長尺状の連結具と、蓋体が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体の後端部が本体部の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構と、を備え、蓋体が閉位置から開位置へ移動する際に、該蓋体の後端部が鍵の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成した。これにより、鍵盤楽器の本体部と蓋体とを連結する連結機構の部品点数を少なく抑えた簡単な機構としながらも、開閉時の蓋体の重心移動を少なく抑えることができるので、開閉時に蓋体の姿勢が急激に変化することを防止でき、蓋体の開閉操作が行い易くなる。
【0010】
またこの場合、前記第1軸支部(33)は、前記第2軸支部(35)よりも前記本体部(2)の前側に近い位置に配置されているとよい。この構成によれば、連結機構のコンパクト化を図りながら、閉位置と開位置との間での蓋体の移動をよりスムーズに行わせることができるようになる。
【0011】
また、この鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記側壁部(6)は、前記ケース(10)における前記鍵盤(5)の両側それぞれに設けた一対の側壁部(6,6)であり、前記連結機構(30,30)は、前記一対の側壁部(6,6)それぞれと前記蓋体(20)における前記鍵(5a,b)の配列方向の両側の端部(20d,20d)それぞれとの間を連結してなる一対の前記連結具(31,31)を備え、前記スライド機構(40)は、前記一対の側壁部(6,6)の上端面(6a,6a)に離間可能な状態で当接する前記蓋体(20)の前記後端部(20a)が、該一対の側壁部(6,6)の上端面(6a,6a)に摺接する構成であってよい。
【0012】
この構成によれば、側壁部の上端面と蓋体の後端部とでスライド機構を構成したことで、スライド機構による蓋体のスムーズな開閉動作を可能としながらも、スライド機構の専用部品を要しないことで開閉機構の部品点数を少なく抑えることができ、鍵盤楽器の構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記蓋体(20)が前記開位置にある状態で、前記連結具(31)に当接してその移動を停止させるストッパ部(37)を備え、前記開位置における前記蓋体(20)は、その後端部(20a)が前端部(20b)よりも前記本体部(2)の前側に位置するように傾斜した状態で、該本体部(2)の上面に立設されるようにするとよい。
【0014】
この構成によれば、蓋体が開位置にある状態で、ストッパ部が連結具に当接してその移動を停止させることで、蓋体を開位置で確実に停止させることができ、蓋体の開閉動作が安定する。また、開位置で蓋体の後端部と側壁部の上端面とが離間しないように規制することができる。これにより、蓋体が開位置で後方に倒れることを防止できる。また、蓋体の後端部と側壁部の上端面との間に指などを挟む可能性を低減することができる。
【0015】
またこの場合、蓋体は、その開位置で、後端部が前端部よりも本体部の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部の上面に立設されるので、蓋体を開位置で安定的に停止させておくことが可能となる。したがって、開位置の蓋体が不用意に閉位置の方へ移動して閉じてしまうことをより確実に防止できる。
【0016】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、前記スライド機構(40−2)は、前記側壁部(6)と前記蓋体(20)とのいずれか一方に設けた前記本体部(2)の前後方向に延びる凹部(43a)と、前記側壁部(6)と前記蓋体(20)とのいずれか他方に設けた凸部(45a)とを備え、前記凹部(43a)に対して前記凸部(45a)が摺動可能な状態で嵌合した機構であってよい。
【0017】
この構成によれば、凹部に凸部が嵌合していることで、側壁部に対する蓋体のスライド移動において、凹部と凸部が互いに離間することなくスライドする。したがって、蓋体が移動する際に側壁部の上端面と蓋体の後端部との間隔が変化せずに済む。これにより、蓋体のよりスムーズな開閉動作を実現できる。また、蓋体を開閉する際に側壁部の上端面と蓋体の後端部との間に指などを挟むことを防止できる。さらに、側壁部と蓋体とを連結している連結具にねじれやゆがみが生じることを防止できる。
【0018】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、連結具(31)と本体部(2)との間に、蓋体(20)を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる弾性部材(60)を取り付けてもよい。この構成によれば、蓋体を開位置へ移動させるために必要な力が小さくて済むので、蓋体を開け易くなる。また、鍵盤楽器の開閉動作において蓋体が急激に移動することを防止できるので、蓋体の開閉動作を安定させることができるようになる。また、万一、蓋体と本体部との間に指などを挟んでしまった場合でも、挟まれる力を軽減することができるので、安全性が向上する。
【0019】
また、上記の鍵盤楽器の蓋体開閉構造では、第1軸支部(33)と第2軸支部(35)の少なくともいずれか、又はスライド機構(40−2)の凹部(43a)と凸部(45a)との間には、本体部(2)又は蓋体(20)と連結具(31)との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部(32,46,47)が設けられているとよい。
【0020】
この構成によれば、本体部又は蓋体と連結具との相対的な回動に対する抵抗力によって、蓋体の開閉動作がゆっくりとしたものとなるので、蓋体と楽器本体との間に指などを挟むことをより効果的に防止できるようになる。また、蓋体の開閉動作において、蓋体が急激に移動することを防止できるので、蓋体の開閉動作を安定させることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる鍵盤楽器の蓋体開閉構造によれば、簡単かつコンパクトな構成で、蓋体の開閉時の重心移動を少なく抑えることで、蓋体の開閉操作を行い易くでき、かつ、開蓋時の鍵盤楽器の外観を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器の全体構成例を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図3】蓋体が閉位置と開位置との間で移動する際の動作を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器の全体構成例を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、(a)は、本体部の一方の側部を示す部分拡大斜視図、(b)は、(a)のX部分を示す部分拡大図である。
【図6】蓋体が閉位置から開位置へ移動する際の動作を説明するための図である。
【図7】スライド機構に設けた摩擦部の構成例を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる蓋体開閉構造を示す図で、鍵盤楽器の側断面図である。
【図10】第4実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器における本体部の一方の側部を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1及び図2は、本発明の第1実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1の全体構成例を示す斜視図である。また、図2は、第1実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器1の側断面図である。なお、図2(a)は、後述する蓋体20が開位置にある状態を示しており、(b)は、蓋体20が閉位置にある状態を示している。本実施形態の鍵盤楽器1は、ケース10と、該ケース10内に設置された鍵盤5とを有する本体部2と、該本体部2のケース10に取り付けられた蓋体(鍵盤蓋)20とを備えている。なお、以下の説明では、横方向又は幅方向というときは、鍵盤5の各鍵5a,5bが配列された左右方向を示し、前又は後というときは、鍵盤5の手前側(演奏者側)又は奥側を示すものとする。
【0024】
鍵盤5は、横方向に沿って配列された複数の黒鍵5aと白鍵5bとを有している。鍵盤5を収容しているケース10は、鍵盤5の左右両側それぞれを覆う一対の側板(側壁部)6,6と、鍵盤5の前側を覆う前板7と、後側を覆う後板8と、底側を覆う底板9とで囲まれており、全体が横長の略直方体状に形成されている。ケース10の上面側は、鍵盤5の上面が露出する開口になっている。そして、蓋体20は、ケース10に対して該開口を完全に閉じる閉位置と、該開口を完全に開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられている。この蓋体20は、一対の側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で開口を塞ぐ一枚板状の部材であり、その外形は、ケース10の外形に沿う横長の長方形状になっている。蓋体20の内面(下面)20cにおける前端近傍には、前板7の上方で鍵盤5の前面を覆う蓋前(蓋前板)21が取り付けられている。なお、上記では、側板6,6は、その側面視の形状が方形状であって、上端面6a,6aが本体部2の後方から前方に向かって略水平(すなわち、鍵盤5の演奏面及び鍵5a,5bの長手方向と略平行)な形状である場合を示したが、これ以外にも、詳細な図示は省略するが、側板6,6は、その側面視の形状が略台形状であって、その上端面6a,6aが本体部2の後方から前方に向かって下降するように傾斜する傾斜平面状に形成されていてもよい。
【0025】
また、鍵盤5の両側部を覆う一対の側板6,6それぞれと、それらに対向する蓋体20の左右両側の端部20d,20dそれぞれとの間には、本体部2に対して蓋体20を移動可能に連結してなる連結機構30が設けられている。本実施形態の鍵盤楽器1では、連結機構30,30は、一対の側板6,6それぞれと蓋体20における鍵5a,5bの配列方向両側の端部20d,20dそれぞれとの間に取り付けた一対の連結具31,31を有している。一対の連結具31,31は、互いが左右対称な形状及び取付構造を有している。なお、ここでいう蓋体20の端部20dとは、蓋体20の幅方向における両側の端面とその近傍の内面20cや外面を含む部分(各図において点線で囲んだ部分及びその近傍)を示すものである。
【0026】
図2に示すように、連結具31は、長尺板状の部材であり、その長手方向の一方の端部31aが側板6の内側面6cに設けた第1軸支部33に軸支されており、他方の端部31bが蓋体20の端部20dにおいて、該蓋体20の鍵盤5側を向く内面20cに設けられた第2軸支部35に軸支されている。第1軸支部33は、側板6の内側面6cに対して、連結具31の一方の端部31aを本体部2の幅方向を軸方向とする回転軸周りで回転自在に支持(リンク支持)している。また、第2軸支部35は、蓋体20の内面20cに対して、連結具31の他方の端部31bを蓋体20の幅方向を軸方向とする回転軸周りで回転自在に支持(リンク支持)している。具体的には、第1軸支部33は、側板6の内側面6cに固定したトルク発生型の軸受32で連結具31の端部31aを軸支している。トルク発生型の軸受32については、後述する。また、第2軸支部35は、蓋体20の内面20cにネジで固定した取付板34に設けた支持片34aで連結具31の端部31bを軸支している。
【0027】
連結具31は、その長手方向が第1軸支部33から第2軸支部35に向かって延びる細板状で、第1軸支部33と第2軸支部35との中間の部分が平面内で略「く」字型に屈曲する屈曲部31cになっている。この連結具31は、その面を側板6の内側面6cと平行にして、屈曲部31cの内側を上方に向けた状態で取り付けられている。また、第1軸支部33は、第2軸支部35よりも下側かつ前側(本体部2の下側かつ前側)に配置されている。
【0028】
また、第1軸支部33に設置したトルク発生型の軸受32は、その詳細な図示及び構造の説明は省略するが、例えば、内部に作動油が充填された筒状のハウジングと、該ハウジング内に回転自在に嵌合する回転部材とを備えて構成され、作動油の油圧による摺動抵抗によって回転部材の回転に対する制動力が作用するように構成された回転ダンパ機構(オイルダンパ機構)を用いることができる。このような回転ダンパ機構からなるトルク発生型の軸受32として、例えば、特開2001‐349364号公報や特開2008−185215号公報などに開示された構造の軸受を用いることが可能である。なお、上記のトルク発生型の軸受32は、本体部2又は蓋体20と連結具31との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部として機能する部品である。
【0029】
軸受32は、上記のオイルダンパ機構に代えて、軸回りに設置した複数の樹脂部品の摺動により摩擦力を発生する回転ダンパ機構(回転摩擦機構)であってもよい。そして、この回転摩擦機構は、一方への回転においてのみ大きな摩擦力を発生し、なおかつ、回転速度が大きければ大きい程、大きな摩擦力を発生するダンパ機構(これを「ワンウェイクラッチ機構」)ともいう。)を用いてよい。そして、このようなダンパ機構を用いる場合は、蓋体20を開位置から閉位置へ向けて移動させる方向で大きな摩擦力を発生するように設置すれば、閉位置へ移動する蓋体20の動きがゆっくりとしたものになるので、蓋体20を閉じる際に蓋体20と側板6の上端面6aとの間に指などを挟むおそれを低減できる。
【0030】
また、本実施形態の蓋体開閉構造は、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6a(本体部2の上面)に沿ってスライド移動するように構成したスライド機構40を備えている。スライド機構40は、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとで構成されており、側板6の上端面6aに離間可能な状態で当接している蓋体20の後端部20aが、側板6の上端面6aに対して前後方向に摺接する構成である。ここで、側板6の上端面6aは、白鍵5b及び黒鍵5aの長手方向及び鍵盤5の演奏面(上面)と略平行に本体部2の前後方向へ延びている。したがって、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、上記のスライド機構40によって、該蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かって(鍵盤5の演奏面と略平行に)移動するようになっている。なお、ここでいう鍵盤5の演奏面とは、演奏者が指で触れる鍵5a、5bの上面側を含む概略の水平面を指すものであって、鍵盤5の態様によっては鍵5a,5bの上面が本体部2の前後方向で若干傾斜している場合もあるが、そのような場合においても鍵盤5の上面側を含む概略の水平面を指すものとする。
【0031】
また、蓋体20が開位置にある状態で、連結具31の移動を停止させるためのストッパ部37が設けられている。ストッパ部37は、側板6の内側面6cに立設した棒状の係止具(ピン)37aを備えている。係止具37aは、側板6の内側面6cからその軸方向が横方向(水平方向)に突設している。そして、蓋体20が完全に開いた開位置で係止具37aが連結具31の屈曲部31cに当接することで、第1軸支部33を中心とする連結具31の回動がその位置で規制されるようになっている。
【0032】
また、蓋体20の内面20cには、譜面受け51が取り付けられている。譜面受け51は、細板状の部材からなり、蓋体20の後端部20aの内面20cにおいて、幅方向の中央に取り付けられている。譜面受け51は、蓋体20側の端辺が蓋体20の内面20cに対して軸部51aで回動自在に支持されている。軸部51aは、本体部2の横方向(幅方向)に延びる軸を中心に譜面受け51を回動自在に支持している。これにより、譜面受け51は、軸部51aを中心にその面が蓋体20の内面20cに沿うように畳まれた閉位置と、その面が蓋体20の内面20cに対して略直交するように開かれた開位置との間で回動自在になっている。
【0033】
一方、本体部2のケース10内における鍵盤5の後側には、板状のパネル部材55が設置されている。また、パネル部材55の後端とケース10の後板8の上端との間には、これらの隙間を塞ぐための隠し板56が取り付けられている。パネル部材55は、鍵盤5の後側の上面を覆うパネル面55bを有している。パネル面55bは、本体部2の前後方向で若干湾曲しながら傾斜する傾斜湾曲面状であり、蓋体20の内面20cに取り付けた譜面受け51に対応する部分に配置されている。そして、後述するように、蓋体20が鍵盤5の上面側を閉じる閉位置へ移動する際、譜面受け51の先端部51bがパネル面55bに当接することで、譜面受け51が自動的に折り畳まれるようになっている。
【0034】
また、図1に示すように、パネル部材55は、その幅方向の両端部が側板6,6の内側面6c,6cに固定されている。そして、図5(b)に示すように、パネル部材55の幅方向の両端部(図5(b)では一方のみ図示)には、側板6の内側面6cとの間に連結具31を挿通させるための切込部55cが形成されている。これにより、連結具31は、切込部55cを介してパネル部材55の下側から上方に突出し、その先の端部31bが蓋体20の内面20cに連結されている。
【0035】
図3は、蓋体20が閉位置と開位置との間で移動する際の動作を説明するための図である。なお、図3では、連結具31及びストッパ部37など蓋体20の開閉動作に関連する主要な部品のみを図示している。以下、図3及び先の図2を用いて、上記構成の蓋体開閉構造による蓋体20の開閉動作について説明する。まず、図2(b)に示す状態で、蓋体20がケース10における鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置にある。この状態では、蓋体20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の上端面6a,6aに載置されている。この状態から蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、図3(a),(b),(c)の順で蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が前側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、図3(d)及び図2(a)に示すように、連結具31がストッパ部37の係止具37aに当接する位置で、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置となる。この開位置では、本体部2の上面に立設された蓋体20は、その後端部20aが前端部20bよりも若干前側に位置しており、その内面20cが下から上に向かって若干後方に傾斜した状態となっている。
【0036】
一方、図2(a)及び図3(d)に示す開位置にある蓋体20の前端部20bを手前側に引くと、蓋体20が閉位置に向かって移動する。この場合は、上記とは逆に、図3(c),(b),(a)の順で蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が閉じられてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が後側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って前方から後方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが下方に回動する。そして、最終的には、図2(b)に示すように、蓋体20の端部20d、20dの内面20cが、側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で、蓋体20が鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置となる。
【0037】
なお、図3(a)に示す状態から図2(b)に示す状態へ移行する間に、蓋体20の自重によって連結機構30に作用する負荷が大きくなる。そのため、上記の範囲で軸受32に発生する摩擦力が大きくなるように設定することが望ましい。このような設定の軸受32としては、前述の樹脂部材の摺動で摩擦力を発生する回転摩擦機構を用いるか、前述のワンウェイクラッチ機構を用いるとよい。
【0038】
本実施形態の蓋体開閉構造は、その一方の端部31aが側板6に設けた第1軸支部33に軸支されており他方の端部31bが蓋体20の内面20cに設けた第2軸支部35に軸支されてなる長尺板状の連結具31と、蓋体20が閉位置と開位置との間を移動する際に、該蓋体20の後端部20aが本体部2の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構40とを備えている。そして、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際に、該蓋体20の後端部20aが鍵5a,5bの長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するようになっている。これにより、鍵盤楽器1の本体部2と蓋体20とを連結する連結機構30の部品点数を少なく抑えた簡単な機構としながらも、開閉時の蓋体20の重心移動を少なく抑えることができるので、開閉時に蓋体20の姿勢が急激に変化することを防止でき、蓋体20の開閉操作が行い易くなる。
【0039】
また、本実施形態の連結機構30では、第1軸支部33は、第2軸支部35よりも本体部2の前側に近い位置に配置されている。この構成によって、連結機構30のコンパクト化を図りながら、閉位置と開位置との間での蓋体20の移動をよりスムーズに行わせることができる。
【0040】
また、本実施形態の蓋体開閉構造では、ケース10における鍵盤5の両側それぞれに設けた一対の側板6,6を備え、連結機構30は、当該一対の側板6,6それぞれと蓋体20の両方の端部20d,20dそれぞれとの間を連結してなる一対の連結具31,31であり、スライド機構40は、一対の側板6,6の上端面6a,6aに離間可能な状態で当接する蓋体20の後端部20a,20aが、該一対の側板6,6の上端面6a,6aに摺接する構成である。
【0041】
このように、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとでスライド機構40を構成したことで、スライド機構40による蓋体20のスムーズな開閉動作を可能としながらも、スライド機構40の専用部品を要しないことで、連結機構30の部品点数を少なく抑えることができ、鍵盤楽器1の構成の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態の蓋体開閉構造では、蓋体20が開位置にある状態で、連結具31に当接してその移動を停止させるストッパ部37(係止具37a)を備えている。そして、開位置における蓋体20は、その後端部20aが前端部20bよりも本体部2の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部2の上面に立設されている。
【0043】
このように、蓋体20が開位置にある状態で、ストッパ部37の係止具37aが連結具31に当接してその移動を停止させることで、蓋体20を開位置で確実に停止させることができ、蓋体20の開閉動作が安定する。また、開位置で蓋体20の後端部20aと側板6の上端面6aとが離間しないように規制することができる。これにより、蓋体20が開位置で後方に倒れることを防止できる。また、蓋体20の後端部20aと側板6の上端面6aとの間に指などを挟んだりすることを防止できる。
【0044】
またこの場合、蓋体20は、その開位置で、後端部20aが前端部20bよりも本体部2の前側に位置するように傾斜した状態で該本体部2の上面に立設されるので、蓋体20を開位置で安定的に停止させておくことが可能となる。したがって、開位置の蓋体20が不用意に閉位置の方へ移動して閉じてしまうことをより確実に防止できる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
【0046】
図4は、本発明の第2実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1−2の全体構成例を示す斜視図である。また、図5は、第2実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、(a)は、本体部2の一方の側部を示す部分拡大斜視図、(b)は、(a)のX部分を示す部分拡大図である。
【0047】
本実施形態の蓋体開閉構造では、第1実施形態の蓋体開閉構造が備えていた側板6の上端面6aに蓋体20の後端部20aが摺接する構成のスライド機構40に代えて、図5(b)に示すように、側板6側に設けた直線状のガイド溝(凹部)43aを有するガイド部材43と、蓋体20側に設けたスライド突起(凸部)45aを有するスライド部材45とを備え、ガイド溝43aにスライド突起45aが摺動可能な状態で嵌合してなるスライド機構40−2を備えている。
【0048】
ガイド部材43とスライド部材45は、いずれも表面が滑らかな合成樹脂製の成型品などからなる。そして、ガイド部材43は、側板6の内側面6cに取り付けた略矩形状の部材である。ガイド溝43aは、断面が略コ字型の溝部であり、その長手方向が鍵5a,5bの長手方向に沿って略水平に本体部2の前後方向に延びている。一方、スライド部材45は、蓋体20に固定した取付板34に対して回動自在に取り付けられており、蓋体20の開閉動作に伴い本体部2の前後方向に移動するようになっている。スライド突起45aは、ガイド溝43a内にスライド自在に嵌合する断面が略コ字型の突起である。ガイド溝43aは、蓋体20が閉位置から開位置まで移動する際の全域でスライド突起45aを嵌合させる長さ寸法を有している。
【0049】
図6は、本実施形態の蓋体開閉構造において、蓋体20が閉位置から開位置へ移動する際の動作を説明するための図である。なお、同図では、閉位置から開位置へ移動する際の蓋体20の軌跡を連続的に図示している。まず、同図の閉位置(A)にある蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、蓋体20が回動して鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が前側かつ上側に向かって回動すると共に、図5(b)に示すスライド機構40−2のスライド突起45aがガイド溝43aに沿って本体部2の後側から前側に向かって水平にスライド移動することで、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、連結具31がストッパ部37の係止具37aに当接する位置で、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置(B)となる。この閉位置(B)では、第1実施形態と同様、蓋体20の後端部20aが前端部20bよりも若干前側に位置しており、蓋体20の内面20cが下から上に向かって後方に若干傾斜した状態になっている。
【0050】
一方、図6の開位置(B)にある蓋体20の前端部20bを手前側に引くと、蓋体20が閉位置(A)に向かって移動して、ケース10における鍵盤5の上方が閉じられてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35が後側かつ下側に向かって回動すると共に、蓋体20の後端部20aが側板6の上端面6aに沿って前方から後方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが下方に回動する。そして、最終的に、蓋体20の内面20cの両端部20d,20dが側板6,6の上端面6a,6aに載置された状態で、蓋体20が鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置(A)となる。
【0051】
このように、本実施形態の蓋体開閉構造では、図5などに示すように、側板6に設置したガイド溝(凹部)43aを有するガイド部材43と、蓋体20に設置したスライド突起(凸部)45aを有するスライド部材45とで構成したスライド機構40−2を備えている。このスライド機構40−2は、ガイド溝43aにスライド突起45aが嵌合していることで、これらが互いに離間することなくスライド移動する構成である。これにより、蓋体20のよりスムーズな開閉動作を実現できる。また、蓋体20が閉位置と開位置との間で移動する際に、側板6の上端面6aと蓋体20の後端部20aとの間隔が常に一定に保たれるので、それらの間に指などを挟むことを効果的に防止できる。さらに、側板6と蓋体20とを連結している連結具31にねじれやゆがみが生じることも防止できる。
【0052】
図7は、スライド機構40−2に抵抗力発生部を設けた場合の構成例を示す図である。本実施形態のスライド機構40−2には、蓋体20の移動に対する抵抗力を発生するための抵抗力発生部として、図7(a)に示すように、ガイド部材43のガイド溝43aの内面に形成した摩擦面46a,46bを設けることができる。摩擦面46a、46bは、ガイド部材43の前後両端部43c,43d及びその近傍におけるガイド溝43aの内面に設けられており、ガイド溝43aの表面に粗加工を施した面である。この摩擦面46a、46bを設けた部分では、それ以外の部分と比較してスライド突起45aの摺動抵抗が大きくなるように設定されている。
【0053】
また、抵抗力発生部の他の構成例として、図7(b)に示すように、ガイド溝43aの内面をスライド方向に沿って若干傾斜させてなる傾斜面47a,47bを設けることができる。傾斜面47a、47bは、ガイド溝43aの上下内面間の幅寸法をガイド部材43の両端部43c,43dに近付くにつれて次第に狭小化させた面である。この傾斜面47a、47bを設けた部分では、それ以外の部分と比較して、スライド突起45aが通過するガイド溝43aの幅寸法が小さくなっていることで、スライド突起45aの摺動抵抗が大きくなるように設定されている。
【0054】
これら摩擦面46a,46b又は傾斜面47a、47bは、蓋体20の閉位置に対応するガイド部材43の後端部43dに設けた摩擦面46a又は傾斜面47aと、蓋体20の開位置に対応するガイド部材43の前端部43cに設けた摩擦面46b又は傾斜面47bとの少なくともいずれか、あるいはこれらの両方を備えるとよい。その場合、蓋体20の閉位置と開位置との中間に対応する箇所には、摩擦面46又は傾斜面47を設けないようにする。これにより、蓋体20の開閉時にその重さで操作者に大きな負荷が掛かる開位置及び閉位置とそれらの近傍のみで、蓋体20の移動に対する抵抗力が発生するように構成できる。
【0055】
本実施形態のスライド機構40−2が備える摩擦面46又は傾斜面47からなる抵抗力発生部によれば、蓋体20の開閉時に操作者に大きな負荷が掛かる開位置及び閉位置とそれらの近傍で、蓋体20の移動に対する抵抗力を発生させることができるので、蓋体20の操作者にかかる負荷を効果的に低減することができる。したがって、蓋体20の開閉動作をより少ない力でスムーズに行えるようになる。また、蓋体20と本体部2との隙間に指などを挟むことをさらに効果的に防止できると共に、万一、指などを挟んだ場合でも、挟まれる力を軽減できるようになる。なお、上記のスライド機構40−2に設けた摩擦面46又は傾斜面47からなる抵抗発生部を備える場合は、トルク発生型の軸受32は、その設置を省略することも可能である。
【0056】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態にかかる蓋体開閉構造の詳細構成を示す図で、鍵盤楽器1−3の側断面図である。本実施形態の蓋体開閉構造では、連結具31と本体部2との間に、蓋体20を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じるコイルバネ(弾性部材)60を取り付けている。コイルバネ60は、その一方の端部60aが連結具31に取り付けられており、他方の端部60bが側板6の内側面6cに取り付けられている。これにより、コイルバネ60は、本体部2と連結具31との間に張設されている。具体的には、連結具31の第1軸支部33側の端部31aは、屈曲部31cを頂点とする略二等辺三角形状の底辺として形成されており、その底辺の一方の角部に第1軸支部33が配置されており、他方の角部にコイルバネ60の端部60aが取り付けられている。また、コイルバネ60の連結具31側の端部60aは、本体部2側の端部60bよりも本体部2の前側の位置に固定されている。これにより、コイルバネ60の引張力で蓋体20を開位置へ移動する方向に連結具31が付勢されるようになっている。
【0057】
本実施形態の蓋体開閉構造では、蓋体20が閉位置から開位置に移動する際と、開位置から閉位置に移動する際との両方において、コイルバネ60の引張力で蓋体20が開位置に向かう方向へ連結具31が付勢される。これにより、トルク発生型の軸受32による作用と相まって、本体部2と連結具31との間及び蓋体20と連結具31との間の相対的な回動に対する抵抗力が生じることで、蓋体20の開閉動作がゆっくりとしたものになる。したがって、蓋体20と本体部2との間に指などを挟むことをより効果的に防止できるようになる。また、万一、蓋体20と本体部2との間に指などを挟んだ場合でも、挟まれる力を軽減できるようになる。さらに、蓋体20の開閉動作において、蓋体20が急激に移動することを防止できるので、蓋体20の開閉動作をより安定させることができる。
【0058】
なお、コイルバネ60の連結具31に対する取付位置は、連結具31における第1軸支部33及び第2軸支部35以外の位置で、かつ、蓋体20を開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる位置あれば、上記以外の位置であってもよい。
【0059】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9及び図10は、本発明の第4実施形態にかかる蓋体開閉構造を備えた鍵盤楽器1−4を示す図で、図9は、鍵盤楽器1−4の側断面図、図10は、鍵盤楽器1−4における本体部2の一方の側部を示す部分拡大斜視図である。本実施形態の蓋体開閉構造では、第1実施形態の蓋体開閉構造が備えていた蓋体20の内面20cに取り付けた取付板34に代えて、蓋体20における幅方向の端面20eに取り付けた他の取付板38を備えており、この取付板38を介して連結具31の端部31bが蓋体20に対して軸支されている。すなわち、本実施形態の第2軸支部35は、蓋体20の幅方向の端面20eに固定した取付板38に設けた支持片(蓋板20の端面20eに取り付けた部分を除く蓋板20の内面20c側への突出片)38aで連結具31の端部31bを軸支している。
【0060】
また、第1実施形態では、蓋体20が閉位置にある状態で、蓋体20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の上端面6a,6aに載置されるように構成していたのに対して、本実施形態では、蓋体20が閉位置にある状態で、蓋板20の両端部20d,20dの内面20cが側板6,6の内側面6c,6cに取り付けた蓋止板39,39の上端面39a,39aに載置されるように構成している。なお、図9及び図10では、一方の側板6及び蓋止板39のみを図示している。
【0061】
図10に示すように、取付板38は、細片状の板状部材であって、その根元側がネジ(図示せず)で蓋板20における幅方向の端面20eに固定されて、その先端側が蓋板20の内面20c側に突出して連結具31を軸支するための支持片38aを形成している。なお、図10に示すものでは、蓋板20の端面20eに取付板38用の凹部を形成し、この凹部内に取付板38を固定している。これにより、取付板38が蓋板20の端面20eから突出しないようにしている。これ以外にも、図示は省略するが、蓋板20の端面20eと側板6との間に若干の隙間を設けて、この隙間に取付板38を配置することも可能である。なお、上記支持片38aの形状及び軸支構造は、第1実施形態の支持片34aと同様である。
【0062】
一方、側板6の内側面6cに取り付けた蓋止板39は、例えば側板6と同等の厚みを有する板状の部材であって、その上端面39aが平面状になっている。そして、上端面39aが側板6の上端面6aに対して蓋板20の厚み寸法分だけ低い位置で鍵5a,5bの長手方向に沿って延伸するように取り付けられている。蓋止板39は、複数のネジ(図示せず)で側板6の内側面6cに固定されている。また、側板6の内側面6cと蓋止板39との間には、連結具31及び取付板38の支持片38aを収容するための収容部39bが形成されている。収容部39bは、側板6の内側面6cと蓋止板39に設けた窪みとの間に形成された矩形状の開口からなる。この収容部39bは、蓋止板39の下側から上側へ連結具31を挿通させていると共に、蓋体20が閉位置にある状態で取付板38の支持片38aを収容するようになっている。なお、本実施形態の蓋体開閉構造では、上記の側板6と蓋止板39とで本発明にかかる側壁部が構成されており、本発明における「側壁部の上端面」は、蓋止板39の上端面39aがこれに該当する。
【0063】
上記構成の蓋体開閉構造では、図9(b)に示す状態で、蓋体20がケース10における鍵盤5の上方を完全に閉じた閉位置にある。この状態では、蓋体20の端部20dの内面20cが蓋止板39の上端面39aに載置されており、蓋板20の外面(上面)20gが側板6の上端面6aと同一高さで連続した面となっている。
【0064】
この状態から蓋体20の前端部20bを上方に持ち上げると、蓋体20が回動して、ケース10における鍵盤5の上方が開かれてゆく。このとき、第1軸支部33を支点に連結具31の第2軸支部35側が前側に向かうように回動すると、蓋体20の後端部20aが蓋止板39の上端面39a(詳細には、上端面39aの後側の一部)に沿って後方から前方へスライド移動する。これにより、蓋体20は、第2軸支部35を支点に前端部20bが上方に回動する。そして、最終的には、図9(a)に示すように、連結具31の中間部がストッパ部37の係止具37aに当接し、連結具31及び蓋体20の動作が停止する。この位置で、蓋体20が完全に開かれた開位置となる。
【0065】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、蓋体開閉構造を適用した鍵盤楽器1として、卓上型の鍵盤楽器を示したが、本発明にかかる蓋体開閉構造は、卓上型の鍵盤楽器以外にも、脚部を備えた自立型(大型)の鍵盤楽器などに適用することも可能である。
【0066】
また、上記の各実施形態では、蓋板20の幅方向の端部20dに設けた第2軸支部35は、蓋板20の内面20cにおける後端部20a側、あるいは、蓋板20の端面20eにおける後端部20a側に配置されている場合を示したが、第2軸支部35は、蓋板20の幅方向(鍵5a,5bの配列方向)の端部20dに設けてさえいれば、上記実施形態に示す以外の場所に配置することも可能である。例えば、蓋板20の内面20cにおける後端部20aと前端部20bの中間位置や、蓋板20の端面20eにおける後端部20aと前端部20bの中間位置などに設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ケースの両側の側板6,6と蓋体20の幅方向の両側の端部20d,20dそれぞれとの間に連結機構30、30を設けた場合を示したが、本発明にかかる連結機構は、蓋体のスライド移動が可能であれば、蓋体における幅方向の一方の端部に対応するものだけを設けることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・鍵盤楽器、2・・・本体部、5・・・ 鍵盤、6・・・ 側板(側壁部)、6a・・・上端面、6c・・・内側面、10・・・ケース、20・・・蓋体、20a・・・後端部、20b・・・前端部、20c・・・内面(鍵盤5側の面)、20d・・・端部(鍵の配列方向の端部)、20e・・・端面、20g・・・外面、30・・・連結機構、31・・・連結具、33・・・第1軸支部、35・・・第2軸支部、37・・・ストッパ部、40・・・スライド機構、43・・・ガイド部材、43a・・・ガイド溝(凹部)、45・・・スライド部材、45a・・・スライド突起(凸部)、46(46a,46b)・・・摩擦面(抵抗力発生部)、47(47a,47b)・・・傾斜面(抵抗力発生部)、60・・・コイルバネ(弾性部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、該ケース内に設置された複数の鍵からなる鍵盤とを有する本体部と、
前記ケースに対して前記鍵盤の上方を閉じる閉位置と該鍵盤の上方を開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられた板状の蓋体と、
前記ケースにおける前記鍵盤の側部に配置した側壁部と、それに対向する前記蓋体における前記鍵の配列方向の端部とを連結してなる連結機構と、を備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造であって、
前記連結機構は、
一端が前記側壁部に設けた第1軸支部に軸支されており、他端が前記蓋体の前記端部に設けた第2軸支部に軸支されてなる長尺状の連結具と、
前記蓋体が前記閉位置と前記開位置との間を移動する際に、該蓋体の後端部が、前記本体部の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構と、を備え、
前記蓋体が前記閉位置から前記開位置へ移動する際に、該蓋体の後端部が前記鍵の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成した
ことを特徴する鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項2】
前記第2軸支部は、前記蓋体の前記端部における前記鍵盤側を向く内面に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項3】
前記第1軸支部は、前記第2軸支部よりも前記本体部の前側に近い位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項4】
前記側壁部は、前記ケースにおける前記鍵盤の両側それぞれに設けた一対の側壁部であり、
前記連結機構は、前記一対の側壁部それぞれと前記蓋体における前記鍵の配列方向の両側の端部それぞれとの間を連結してなる一対の前記連結具を備え、
前記スライド機構は、前記一対の側壁部の上端面に離間可能な状態で当接する前記蓋体の前記後端部が、該一対の側壁部の上端面に摺接する構成である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項5】
前記蓋体が前記開位置にある状態で、前記連結具に当接してその移動を停止させるストッパ部を備え、
前記開位置における前記蓋体は、その後端部が前端部よりも前記本体部の前側に位置するように傾斜した状態で、該本体部の上面に立設される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項6】
前記スライド機構は、前記側壁部と前記蓋体とのいずれか一方に設けた前記本体部の前後方向に延びる凹部と、前記側壁部と前記蓋体とのいずれか他方に設けた凸部とを備え、前記凹部に対して前記凸部が摺動可能な状態で嵌合した機構である
ことを特徴する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項7】
前記連結具と前記本体部との間に、前記蓋体を前記開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる弾性部材を取り付けた
ことを特徴する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項8】
前記第1軸支部と前記第2軸支部の少なくともいずれか、又は前記スライド機構の前記凹部と前記凸部との間には、前記本体部又は前記蓋体と前記連結具との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部が設けられている
ことを特徴する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項1】
ケースと、該ケース内に設置された複数の鍵からなる鍵盤とを有する本体部と、
前記ケースに対して前記鍵盤の上方を閉じる閉位置と該鍵盤の上方を開く開位置との間で移動可能となるように取り付けられた板状の蓋体と、
前記ケースにおける前記鍵盤の側部に配置した側壁部と、それに対向する前記蓋体における前記鍵の配列方向の端部とを連結してなる連結機構と、を備えた鍵盤楽器の蓋体開閉構造であって、
前記連結機構は、
一端が前記側壁部に設けた第1軸支部に軸支されており、他端が前記蓋体の前記端部に設けた第2軸支部に軸支されてなる長尺状の連結具と、
前記蓋体が前記閉位置と前記開位置との間を移動する際に、該蓋体の後端部が、前記本体部の前後方向へスライド移動するように構成したスライド機構と、を備え、
前記蓋体が前記閉位置から前記開位置へ移動する際に、該蓋体の後端部が前記鍵の長手方向を後側から前側に向かってスライド移動するように構成した
ことを特徴する鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項2】
前記第2軸支部は、前記蓋体の前記端部における前記鍵盤側を向く内面に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項3】
前記第1軸支部は、前記第2軸支部よりも前記本体部の前側に近い位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項4】
前記側壁部は、前記ケースにおける前記鍵盤の両側それぞれに設けた一対の側壁部であり、
前記連結機構は、前記一対の側壁部それぞれと前記蓋体における前記鍵の配列方向の両側の端部それぞれとの間を連結してなる一対の前記連結具を備え、
前記スライド機構は、前記一対の側壁部の上端面に離間可能な状態で当接する前記蓋体の前記後端部が、該一対の側壁部の上端面に摺接する構成である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項5】
前記蓋体が前記開位置にある状態で、前記連結具に当接してその移動を停止させるストッパ部を備え、
前記開位置における前記蓋体は、その後端部が前端部よりも前記本体部の前側に位置するように傾斜した状態で、該本体部の上面に立設される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項6】
前記スライド機構は、前記側壁部と前記蓋体とのいずれか一方に設けた前記本体部の前後方向に延びる凹部と、前記側壁部と前記蓋体とのいずれか他方に設けた凸部とを備え、前記凹部に対して前記凸部が摺動可能な状態で嵌合した機構である
ことを特徴する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項7】
前記連結具と前記本体部との間に、前記蓋体を前記開位置へ移動する方向に付勢するような付勢力を生じる弾性部材を取り付けた
ことを特徴する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【請求項8】
前記第1軸支部と前記第2軸支部の少なくともいずれか、又は前記スライド機構の前記凹部と前記凸部との間には、前記本体部又は前記蓋体と前記連結具との相対的な回動に対する抵抗力を発生する抵抗力発生部が設けられている
ことを特徴する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の鍵盤楽器の蓋体開閉構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−19969(P2013−19969A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151236(P2011−151236)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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