説明

鍵盤楽器

【課題】大屋根の落下を防止できる鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】連結蝶番30は、側板22の上面および内側面にボルトBで取り付けられる第1ブラケット31と、大屋根後10bにボルトBで取り付けられる第2ブラケット32と大屋根後10bと、大屋根後10bの低音側の端面に対向する立壁34とで構成されるので、第2ブラケット32との結合が解除され、支持棒で支持される大屋根後10bがその自重により低音側に移動した場合であっても、大屋根後10bの移動が立壁34によって堰き止められ、大屋根後10bの落下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鍵盤楽器に関し、特に、大屋根の落下を防止できる鍵盤楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤楽器として、特許文献1には、大屋根2が2つの蝶番3を介してピアノ本体である側板1に開閉可能に取り付けられる従来のグランドピアノが記載されている。かかる蝶番3は、大屋根2にねじNで固定される平板状の第1回動片31と、側板1にねじNで固定される断面形状が逆L形の第2回動片32と、第1回動片31及び第2回動片32を回動可能に連結するヒンジピン33とで構成される。そして、蝶番3を介して回動した大屋根2が大屋根突揚棒4で支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000―194355(段落「0008」,「0009」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1記載のグランドピアノを含めた従来の鍵盤楽器では、一般的に大屋根2が温度や湿度の影響を受けやすい木材で形成されているので、温度や湿度によりねじNが螺着されるねじ穴の大きさが変化してねじNの緩みが発生し、ねじNが脱落する場合があった。また、大屋根の開閉が繰り返されることにより、ねじNの緩みが発生し、ねじNが脱落する場合があった。
【0005】
従って、第1回動片31を大屋根2に固定するねじNの1つが脱落した状態で大屋根突揚棒4によって大屋根2が支持されると、何等かの振動、たとえば弱い地震による振動がグランドピアノに加わった場合、第1回動片31を大屋根2に固定する他のねじNも脱落して蝶番3が大屋根2から外れ、大屋根2が落下してしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、大屋根の落下を防止できる鍵盤楽器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の鍵盤楽器は、開口が形成される楽器本体と、その楽器本体の開口を覆う板状の大屋根と、その大屋根および前記楽器本体に連結され前記大屋根を前記楽器本体に対して回動可能に連結する蝶番と、その蝶番を介して回動する前記大屋根の高音側の端部を支持する支持棒と備えるものであって、前記蝶番は、前記楽器本体に結合される第1ブラケットと、その第1ブラケットに回動軸を介して回動可能に連結され前記大屋根の裏面に結合される第2ブラケットと、その第2ブラケットから立設し前記大屋根の低音側の端面と対向する立壁とを備えている。
【0008】
請求項2記載の鍵盤楽器は、請求項1記載の鍵盤楽器において、前記大屋根の低音側の端面に凹設される凹部と、その凹部に内包され前記立壁から前記凹部に向かって突設されるピンと備えている。
【0009】
請求項3記載の鍵盤楽器は、請求項1又は2に記載の鍵盤楽器において、前記ピンの外周面と前記凹部の内周面との間に隙間が形成されている。
【0010】
請求項4記載の鍵盤楽器は、請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤楽器において、前記立壁は前記大屋根の低音側の端面に当接している。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の鍵盤楽器によれば、楽器本体の開口を覆う板状の大屋根は、蝶番を介して楽器本体に対して回動可能に連結され、回動された大屋根の高音側の端部が支持棒により支持される。
【0012】
ここで、蝶番は、楽器本体に結合される第1ブラケットと、その第1ブラケットに回動軸を介して回動可能に連結され大屋根の裏面に結合される第2ブラケットと、その第2ブラケットから立設する立壁とで構成され、その第2ブラケットから立設する立壁が大屋根の低音側の端面と対向する。よって、大屋根の高音側の端部が支持棒により支持されている場合に、大屋根と第2ブラケットとの結合が解除されたとしても、支持棒で支持される大屋根がその自重により低音側に移動することが立壁によって堰き止められる。これにより、大屋根の低音側の端面が第2ブラケットの立壁に当接しかかる立壁で支持されるので、大屋根の落下を防止できるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の鍵盤楽器によれば、請求項1記載の鍵盤楽器の奏する効果に加え、大屋根の低音側の端面に凹設される凹部に、立壁から凹部に向かって突設されるピンが収容される。よって、大屋根と第2ブラケットとの結合が解除され、大屋根と当接する支持棒の先端を支点として大屋根の重心側が沈み込むことにより大屋根の重心側と反対側で浮き上がるのを、大屋根の凹部と第1ブラケットのピンとが係合することにより防止できる。従って、大屋根の落下を防止できるという効果がある。
【0014】
請求項3記載の鍵盤楽器によれば、請求項1又は2に記載の鍵盤楽器の奏する効果に加え、鍵盤楽器において、ピンの外周面と凹部の内周面との間に隙間が形成されるので、第2ブラケットと大屋根とが結合している状態では、ピンと凹部とが係合しない。よって、第2ブラケットと大屋根とが結合している状態では、大屋根の荷重がピンに作用しないので、ピン固定ねじの緩みが起こらず、ピンが脱落することが無い。従って、大屋根の落下防止が確実にできるという効果がある。
【0015】
請求項4記載の鍵盤楽器によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤楽器の奏する効果に加え、大屋根の高音側の端部が支持棒により支持される場合に、大屋根はその裏面に結合される第2ブラケットだけでなく、低音側の端面に当接する立壁によっても支持される。よって、大屋根の低音側が第2ブラケットのみで支持される場合に比べて、第2ブラケットと大屋根との結合が解除されることを抑制できる。従って、蝶番によって大屋根の低音側を楽器本体に対して確実に支持できるので、大屋根の落下を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態における電子ピアノの正面図であり、(b)は、図1(a)のIb方向から視た電子ピアノの側面図である。
【図2】(a)は、図1(a)のIIa方向から視た大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大側面図であり、(b)は、図2(a)のIIb―IIb線における大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大断面図である。
【図3】(a)は連結蝶番の斜視図であり、(b)は図3(a)のIIIb方向から視た連結蝶番の側面図であり、図3(c)は図3(a)のIIIc方向から視た連結蝶番の側面図であり、図3(d)は図3(b)のIIId方向から視た連結蝶番の側面図である。
【図4】(a)は、大屋根後と第2ブラケットとを連結するボルトが全て外れ、ピンにより大屋根後の浮き上がりが防止される状態を示す連結蝶番の断面図であり、(b)は、ピンにより浮き上がりが防止された大屋根後が第2ブラケットにより支持される状態を示す連結蝶番の断面図である。
【図5】(a)本発明の第2実施形態における大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の分解斜視図であり、(b)は、大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大側面図である。
【図6】(a)本発明の第3実施形態における大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の分解斜視図であり、(b)は、大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大側面図である。
【図7】(a)本発明の第4実施形態における大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の分解斜視図であり、(b)は、大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大側面図である。
【図8】(a)本発明の第5実施形態における大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の分解斜視図であり、(b)は、大屋根後及び側板に結合される連結蝶番の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態における電子ピアノ1の正面図であり、図1(b)は、図1の矢印Ib方向から視た電子ピアノ1の側面図である。また、図1(a)及び図1(b)は、大屋根10を開放した状態を図示しており、図1(a)のAで示す部分が、拡大図示されている。
【0018】
図1を参照して、電子ピアノ1の全体構成について説明する。図1(a)及び図1(b)に示すように、電子ピアノ1は、グランドピアノ(弦を水平に張ったピアノ)タイプの電子ピアノであり、水平方向に延設される底板21の周縁を側板22で取り囲むことにより形成されるピアノ本体20と、そのピアノ本体20に対して回動可能に連結される大屋根10と、その大屋根10をピアノ本体20に対して回動(開放)可能に連結する連結蝶番30と、その連結蝶番30によって回動された大屋根10を開放状態でピアノ本体20に支持する支持棒40とで構成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、ピアノ本体20は、鍵盤23(図1(a)参照)が設けられる前側部分と、上方に開口する箱型に構成されると共に内部に鍵盤23の押鍵情報を検出する検出装置(図示せず)及びその検出結果に応じて演奏音を生成する演奏音生成装置(図示せず)等が収容される中央部分と、上方に開口すると共に大屋根10により開閉される後側部分とで構成されている。また。このピアノ本体20は、ピアノ本体20の前側部分の上面に鍵盤23を覆う蓋部(図示せず)が出し入れ可能に配設され、このピアノ本体20の中央部分および後側部分の上面に大屋根10が配設される。
【0020】
図1(b)に示すように、大屋根10は、矩形状の大屋根前10aと、高音側(図1(b)紙面手前側)が切り欠かれた長円状の大屋根後10bとで構成され、その大屋根後10b及び大屋根前10aとが大屋根蝶番10cで回動可能に連結される。大屋根蝶番10cにより、大屋根前10aが大屋根後10bに対して回動するように構成される。大屋根後10bは高音側(図1(b)紙面手前側)が切り欠かれた長円状に形成されるので、大屋根後10bの重心は低音側に位置している。
【0021】
連結蝶番30は、大屋根10の長手方向(図1(b)左右方向)で前側(図1(b)左側)と後側(図1(b)右側)とにそれぞれ1つずつ配設され、かかる2つの連結蝶番30が大屋根後10bの低音側部分(大屋根後10bの図1(a)右側部分)と側板22とに結合される。
【0022】
支持棒40は、側板22に対して回動可能に取り付けられる棒状の部材であって、その基端が側板22に回動可能な状態で取り付けられると共にその先端が大屋根後10bの裏面に設けられる受け部材12に当接する。なお、受け部材12は、大屋根後10bの高音側(図1(a)右側)に2カ所設けられ、大屋根後10bの傾斜角度が変更できるように構成されている。
【0023】
大屋根10を開放状態にする手順としては、閉じられた状態の大屋根10から、まず、大屋根蝶番10cによって大屋根前10aを大屋根後10b側(図1(b)右側)に回動させ、大屋根前10aを大屋根後10bに支持させる。次に、大屋根前10aを支持した状態の大屋根後10bを連結蝶番30によって、低音側(図1(b)紙面奥側)に回動させる。そして、低音側に回動させた大屋根後10bを手で支えながら、支持棒40の先端を受け部材12に当接させることにより、大屋根10がピアノ本体20に支持され、大屋根10の開放状態が維持される。なお、連結蝶番30については、図2及び図3を参照して後に詳しく説明する。
【0024】
次に、図2及び図3を参照して、連結蝶番30について説明する。図2(a)は、図1(a)のIIa方向から視た大屋根後10b及び側板22に結合される連結蝶番30の拡大側面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb―IIb線における大屋根後10b及び側板22に結合される連結蝶番30の拡大断面図である。図2において大屋根10及び側板22の図示が一部省略されている。また、図3(a)は連結蝶番30の斜視図であり、図3(b)は図3(a)のIIIb方向から視た連結蝶番30の側面図であり、図3(c)は図3(a)のIIIc方向から視た連結蝶番30の側面図であり、図3(d)は図3(b)のIIId方向から視た連結蝶番30の側面図である。
【0025】
図2(a)及び図2(b)に示すように、連結蝶番30は、大屋根後10bを側板22に対して回動(開放)可能に連結するものであって、金属で形成されている。連結蝶番30は、側板22の上面および内側面にボルトBで取り付けられる第1ブラケット31と、大屋根後10bにボルトBで取り付けられる第2ブラケット32と、第1ブラケット31及び第2ブラケット32を回動可能に連結する軸状部材である回動軸33とで構成される。
【0026】
図3(a)から図3(d)に示すように、第1ブラケット31は、回動軸33の軸心方向から視て上下を反転させたL字型に形成される板状の部材であって、平板状の上面部分と、その上面部分から下側に(図3(b)下側)垂直に折れ曲がる平板状の側面部分とで構成される。ボルトBが締結されるねじ穴31bが第1ブラケット31の上面部分に2つ(図示せず)、側面部分に3つ穿設される。かかる第1ブラケット31の上面部分には、回動軸33側(図3(b)左側)の端部が筒状に曲げ加工され、複数の円筒状の筒部31aが間隔を空けて形成される。かかる複数の円筒状の筒部31aには回動軸33が挿通される。
【0027】
図2(a)に示すように、側板22の上面には第1ブラケット31の板厚寸法より深く幅寸法より長い寸法で凹設される溝22aが形成される。かかる溝22aに第1ブラケット31の上面部分が配置され、側面部分を側板22の内側面(図2(b)右側の面)に当接させた後、かかる第1ブラケット31の各ねじ穴31bに挿通させたボルトBが螺合されることにより、第1ブラケット31の上面部分と側面部分とがそれぞれ側板22の上面と内側面とに結合される。図2(b)に示すように、大屋根後10bには、その裏面に連結蝶番30を結合するボルトBが螺合されるねじ穴10eが穿設され、大屋根後10bの低音側の端面には、後述するピン35が内包される凹部10dが穿設される。
【0028】
図3(c)及び図3(d)に示すように、第2ブラケット32は、回動軸33の軸心方向(図3(c)及び図3(d)左右方向)の長さが第1ブラケット31より長尺に形成される板状の部材であり、ボルトBが螺合されるねじ穴32bが5つ穿設される。第2ブラケット32の回動軸33側(図3(d)下側)の端部が筒状に曲げ加工され、複数の円筒状の筒部32aが間隔を空けて形成される。かかる第2ブラケット32の複数の筒部32aと上述した第1ブラケット31の複数の筒部31aとが同軸上に交互に隣接して配設され、筒部32a及び筒部32aの貫通孔に回動軸33が挿入されることにより、第1ブラケット31と第2ブラケット32とが回動可能に連結される。
【0029】
図3(a)から図3(d)に示すように、第2ブラケット32の回動軸33側の端部が突出形成されており、その突出形成される部分に立壁34が形成される。図2(b)に示すように、立壁34は、かかる第2ブラケット32の回動軸33側(図2(b)下側)の端部から第2ブラケット32の表面(図2(b)上側の面)に対して垂直に立設される板状の部材である。かかる立壁34の立設長さは、大屋根後10bの低音側端部の板厚より若干短く設定され、立壁34が大屋根後10bの表面より突出しないように形成されている。
【0030】
立壁34は、大屋根後10bの低音側の端面に対向すると共に、大屋根後10bの低音側の端面に当接している。よって、大屋根後10bが支持棒40(図1参照)により支持されている場合に、大屋根後10bはその裏面に結合される第2ブラケット32だけでなく、大屋根後10bの低音側の端面に当接する立壁34によっても支持される。従って、大屋根後10bの低音側が第2ブラケット32のみで支持される場合に比べて、第2ブラケット32と大屋根後10bとを結合するボルトB(図3(b)参照)がねじ穴10eから抜け落ちることを抑制できる。これにより、連結蝶番30を介して側板22に大屋根後10bの低音側(図4(a)及び図4(b)左側)が確実に支持されるので、大屋根後10bの落下を防止できる。
【0031】
図3(a)及び図3(b)に示すように、立壁34には、ピン35が高音側(図2(b)右側)に向かって突設される。ピン35は、ねじ溝が内周面に形成される六角形の筒状の高ナット35bと、立壁34に穿設されたねじ穴(図示せず)に挿通され高ナット35bのネジ溝に螺合されるボルト35aとにより構成される。高ナット35bは、ねじ溝にボルト35aが螺合されることによりワッシャ35cを介して立壁34に固定される。
【0032】
また、図2(b)に示すように、ピン35(高ナット35b)の軸心方向における長さは、大屋根後10bの凹部10dの深さよりも短く形成されており、ピン35の軸心と直交する方向の上下方向及び左右方向(図2(b)上下方向及び紙面手前から奥方向)の長さは、大屋根後10bの凹部10dの上下方向及び左右方向の長さよりも短くなるように、形成されている。
【0033】
よって、ピン35の外周面と凹部10dの内周面との間には隙間が形成されている。従って、大屋根10が支持棒40で側板22に支持されている場合には、ピン35と凹部10dとが係合せず(非接触)、ピン35に大屋根後10bの自重が作用しないように構成されている。これにより、ピン35の摩耗や劣化を防止でき、ピン35の耐久性を向上できる。結果として、大屋根後10bの落下(大屋根後10bで支持される大屋根前10aを含めた大屋根10全体の落下、以下同じ)を防止できる。かかるピン35(立壁34)は、第2ブラケット32の回動軸33の軸心方向における一端に形成されている。よって、ピン35(立壁34)は、一台の電子ピアノ1に2本形成され、それぞれ支持棒40(図1参照)の先端が当接する受け部材12(図1(b)参照)の前後に配設される。従って、支持棒40(図1参照)の先端を支点として、大屋根後10bが重心側(図4(a)紙面奥側)へ揺動した場合であっても、支点の前後でその動きを規制できるので、大屋根後10bの揺動を確実に抑制できる。
【0034】
図3(a)から図3(d)に示すように、回動軸33の端部には曲げ部33aが形成される。かかる曲げ部33aは回動軸33の他端部を回動軸33の軸心方向と直交する方向に折り曲げた部分であり、立壁34と反対側の端部に形成される。よって、立壁34にボルト35aを取り付ける場合に、曲げ部33aが邪魔にならない。従って、かかるボルト35aの取り付け作業を簡易化できる。
【0035】
図4を参照して、連結蝶番30の第2ブラケット32に締結されるボルトBが全て外れた場合に、大屋根後10bの落下が立壁34及びピン35で規制される様子について説明する。図4(a)は、2ブラケット32のねじ穴32bに締結されるボルトB(図2(b)参照)が全て外れ、ピン35により大屋根後10bの浮き上がりが防止される状態を示す連結蝶番30の断面図であり、図4(b)は、ピン35により大屋根後10bの浮き上がりが防止された大屋根後10bが第2ブラケット32により支持される状態を示す連結蝶番30の断面図である。なお、図4(a)及び図4(b)は、図2(b)に相当する断面図である。
【0036】
大屋根後10bが閉じられた状態で、ねじ穴32bに螺合されるボルトB(図2(b)参照)が大屋根後10b(第2ブラケット32)から抜け落ちたとしても、大屋根後10bの荷重はピアノ本体20(図1(b)参照)に均一に付加されるので、地震等の外的付加が無い限り、大屋根後10bはピアノ本体20に安定的に支持されている。
【0037】
しかしながら、図4(a)に示すように、ボルトBが全て抜け落ちた大屋根後10bをユーザが開放しようとすると、大屋根後10bは、高音側(図4(a)右側)の端部で支持棒40(図1参照)により支持されており、その重心が支持棒40より後側(図4(a)紙面奥側)の低音側に位置している(図1(b)参照)ので、大屋根後10bは支持棒40(図1参照)の先端を支点として重心側(図4(a)紙面奥側)に揺動する。
【0038】
支持棒40(図1参照)の先端を支点として重心側へ揺動した大屋根後10bは、第2ブラケット32のピン35が大屋根後10bの凹部10dに係合(衝突)すると共に立壁34が大屋根後10bの低音側の端面に係合(衝突)することにより、重心側への揺動が規制される。よって、大屋根後10bと当接する支持棒40(図1参照)の先端を支点として大屋根後10bの重心側が沈み込むことにより大屋根後10bの重心側と反対側(図4(a)紙面手前側)で浮き上がることを防止でき、大屋根後10bの落下を防止できる。
【0039】
図4(b)に示すように、重心側と反対側への浮き上がりが防止された大屋根後10bはその自重により低音側(図4(b)左側)に移動し、その移動が立壁34によって堰き止められ、第2ブラケット32のピン35が大屋根後10bの凹部10dに係合(当接)する。従って、大屋根後10bは第2ブラケット32によってピアノ本体20(図1(b)参照)に安定的に支持されるので、第2ブラケット32大屋根後10bの落下を防止できる。
【0040】
また、図4(b)に示すように、大屋根後10bが支持棒40で支持されている場合に、ねじ穴32bに螺合されるボルトB(図2(b)参照)が大屋根後10b(第2ブラケット32)から抜け落ちて外れると、大屋根後10bと第2ブラケット32との結合が解除される。大屋根後10bと第2ブラケット32との結合が解除されると、支持棒40で支持される大屋根後10bは、その自重により低音側(図4(b)左側)に移動する。さらに、大屋根後10bは、高音側(図4(b)右側)の端部で支持棒40(図1参照)により支持されており、その重心が支持棒40より後側(図4(b)紙面奥側)の低音側に位置している(図1(b)参照)ので、大屋根後10bは支持棒40(図1参照)の先端を支点として重心側(図4(b)紙面奥側)へ揺動し、大屋根後10bの重心側が沈み込もうとする一方、大屋根後10bの重心側と反対側(図4(b)紙面手前側)が浮き上がろうとする。
【0041】
このように、大屋根後10bと第2ブラケット32との結合が解除され、支持棒40で支持される大屋根後10bがその自重により低音側(図4(b)左側)に移動した場合であっても、立壁34が大屋根後10bの低音側の端面に対向するので、大屋根後10bの移動が立壁34によって堰き止められ、大屋根後10bの落下を防止できる。
【0042】
また、大屋根後10bと第2ブラケット32との結合が解除され、大屋根後10bが重心側(図4(a)紙面奥側)へ揺動した場合であっても、大屋根後10bの低音側の端面に凹設される凹部10dに、立壁34から凹部10dに向かって突設されるピン35が収容されるので、第2ブラケット32のピン35が大屋根後10bの凹部10dに係合(当接)し、大屋根後10bの重心側の沈み込みを抑制できる。よって、大屋根後10bの重心側と反対側(図4(b)紙面手前側)の浮き上がりを抑制でき、支持棒40による大屋根後10bの支持を継続することができるので、大屋根後10bの落下を防止できる。
【0043】
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態における連結蝶番130について説明する。図5(a)は、本発明の第2実施形態における大屋根後110b及び側板122に結合される連結蝶番130の分解斜視図であり、図5(b)は、大屋根後110b及び側板122に結合される連結蝶番130の拡大側面図である。なお、上記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
第1実施形態における連結蝶番30では、立壁34が第2ブラケット132の低音側の端部の一部から立設されていたのに対して、第2実施形態における連結蝶番130では、第2ブラケット132の上面に金属製の平板状の係合板136が接合され、その係合板136の低音側の端部全体から立壁134が立設されている。
【0045】
大屋根後110bの裏面には、係合板136の外形と一致した係合溝110fが凹設されると共にボルトBが螺合されるねじ穴110eが穿設され、大屋根後110bの低音側の端面にはボルト135aが螺合されるオニメナット110dが螺着される。係合板136が大屋根後110bの係合溝110fに嵌合することにより、第2ブラケット132の上面が大屋根後110bの裏面と当接すると共に大屋根後110bの低音側の端面が立壁134と当接する。かかる状態でボルトBにより第2ブラケット132と大屋根後110bとが結合される。さらに、ボルト135aにより、立壁134と大屋根後110bとが結合される。
【0046】
よって、ボルトBが第2ブラケット132から全て抜け落ちた場合であっても、大屋根後110bの低音側の端面が立壁134と当接するので、大屋根後110bの低音側の端面を立壁134で支持できると共に、係合溝110fに係合板136が嵌合するので、係合板136が係合溝110fに引っかかる。従って、大屋根後110bの低音側(図5(b)左側)への移動を防止できるので、大屋根後110bの落下を防止できる。
【0047】
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態における連結蝶番230について説明する。図6(a)は、本発明の第3実施形態における大屋根後210b及び側板122に結合される連結蝶番230の分解斜視図であり、図6(b)は、大屋根後210b及び側板122に結合される連結蝶番230の拡大側面図である。なお、上記した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
第3実施形態における連結蝶番230では、図6(a)に示すように、第2ブラケット232の高音側の端部全体から立壁234が立設されている。大屋根後110bの裏面には、立壁234の外形より大きい挿入溝210gが凹設され、ボルトBが螺合されるねじ穴210eが穿設される。立壁234が挿入溝210gに挿入されると、立壁234の高音側の端面と挿入溝210gの低音側内周面とが当接すると共に大屋根後210bの裏面と第2ブラケット232の表面が当接する。第2ブラケット232と大屋根後210bとは、ねじ穴210eに螺合されるボルトBにより、結合される。
【0049】
よって、図6(b)に示すように、立壁234の高音側の端面と挿入溝210gの低音側内周面とが当接するので、大屋根後210bは、ボルトBより高音側(図6(b)右側)で立壁234によって支持される。従って、ボルトBに作用する大屋根後210bの自重を低減させることができるので、ボルトBの緩みを防止でき、ボルトBが第2ブラケット232及び大屋根後210bから抜け落ちることを防止できる。これにより、第2ブラケット232及び大屋根後210bの結合状態を確実に維持できるので、大屋根後210bの落下を防止できる。
【0050】
次に、図7を参照して、本発明の第4実施形態における連結蝶番330について説明する。図7(a)は、本発明の第4実施形態における大屋根後310b及び側板122に結合される連結蝶番330の分解斜視図であり、図7(b)は、大屋根後310b及び側板122に結合される連結蝶番330の拡大側面図である。なお、上記した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
第4実施形態における連結蝶番330では、第2ブラケット332の上面に金属製の平板状の係合板336が接合され、その係合板336の低音側の端部全体から立壁334が立設されている。立壁334には、ボルト335aが挿通される挿通穴(図示せず)が穿設される。また、大屋根後310bの低音側の端面にボルト335aが挿通される挿通穴310dとその挿通穴310dに連続しボルト335aが螺合される螺合穴310hが穿設される。
【0052】
大屋根後310bの裏面に係合板336及び立壁334の外形より少し大きいL字型の係合溝310gが凹設され、ボルトBが螺合されるボルトBのねじ穴310eが穿設される。係合板336及び立壁334が係合溝310gに挿入されると、大屋根後310bの裏面と第2ブラケット332の表面とが当接し、ボルトBにより大屋根後310bと第2ブラケット332とが結合される。さらに、挿通穴310dから挿通されたボルト335aが大屋根後310bの螺合穴310hに螺合され、立壁334の挿通穴を通過して大屋根後310bに締結される。
【0053】
よって、ボルトBが第2ブラケット332から全て抜け落ちた場合であっても係合板336と立壁334とが係合溝310gに引っかかる。従って、大屋根後310bの低音側(図7(b)左側)への移動を防止できるので、大屋根後310bの落下を防止できる。
【0054】
次に、図8を参照して、本発明の第5実施形態における連結蝶番430について説明する。図8(a)は、本発明の第5実施形態における大屋根後410b及び側板122に結合される連結蝶番430の分解斜視図であり、図8(b)は、大屋根後410b及び側板122に結合される連結蝶番430の拡大側面図である。なお、上記した各実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0055】
第5実施形態における連結蝶番430では、第2ブラケット432の上面に金属製の平板状の係合板436が接合され、その係合板436の低音側の端部全体から立壁434が立設されると共に、高音側の端部全体から係合壁437が立設されている。立壁434および係合壁437には、ボルト435aが挿通される挿通穴435bが形成され、係合壁437にはナット435cが溶接されている。
【0056】
大屋根後410bの裏面に係合板436、立壁434及び係合壁437の外形より少し大きいコ字型の係合溝410gが凹設され、ボルトBが挿通されるねじ穴410eが穿設される。また、大屋根後410bの低音側の端面にボルトBが螺合される挿通穴410dが穿設される。係合板436、立壁434及び係合壁437が係合溝410gに挿入されると、大屋根後410bの裏面と第2ブラケット432の表面とが当接し、ボルトBによって大屋根後410bと第2ブラケット432とが結合される。さらに、挿通穴410dから挿入されたボルト435aが立壁434と係合壁437とに挿通されナット435cに螺合される。
【0057】
ボルトBが第2ブラケット432から全て抜け落ちた場合であっても、係合板436と係合壁437とが係合溝410gに引っかかる。よって、大屋根後410bの低音側(図7(b)左側)への移動を防止できるので、大屋根後410bの落下を防止できる。加えて、ボルト435aは、金属で形成された立壁434と係合壁437とに挿通され係合壁437に溶接されたナット435cに螺合されるので、大屋根後10bの木ヤセによりボルト435aが緩まない。よって、第4実施形態の大屋根後310bの木材部分にボルト335aが螺合される場合に比べて、ボルト435aが第2ブラケット432及び大屋根後410bから抜け落ちることを防止できる。従って、大屋根後410bの落下を防止できる。
【0058】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
例えば、本実施形態である連結蝶番30においては、立壁34及び立壁34から突設されるピン35が第2ブラケット32の一端に形成されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2ブラケット32の両端にそれぞれ形成されていてもよい。かかる場合は、立壁34及びピン35が一端にのみ形成される場合に比べて、大屋根後10bの落下を確実に防止できる。
【0060】
また、本実施形態である連結蝶番30においては、大屋根後10bが2つの連結蝶番30を介して側板22に対して回動可能な状態で連結されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、大屋根後10bが2つ以上の連結蝶番30を介して側板22に結合されてもよい。また大屋根10を一枚板で構成し、かかる一枚板の大屋根10に2つ以上の連結蝶番30を結合してもよい。
【0061】
さらに、本実施形態である連結蝶番30においては、第1ブラケット31及び第2ブラケット32をボルトBにより、それぞれ大屋根後10b又は側板22に結合したが、必ずしもこれに限られるものではなく、接着剤等により結合してもよい。この場合は、大屋根後10b又は側板22に凹部10dの加工を施す必要がないので、加工コストを低減できる。
【0062】
加えて、第1ブラケット31は側面視L字型に形成されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、平板状に形成して側板22の上面のみに固定してもよい。
【0063】
また、第2ブラケット32は、回動軸33の軸心方向における長さが第1ブラケット31より長尺に形成されるが、必ずしもこれに限られるものではなく、第2ブラケット32及び第1ブラケット31の回動軸33の軸心方向における長さを同一に形成してもよい。かかる場合は、連結蝶番30の小型化を図れるので、材料費の削減により低コストで連結蝶番30を形成できる。
【0064】
本実施形態である連結蝶番30の立壁34は、大屋根後10bの低音側の端面に当接しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、大屋根後10bの低音側の端面との間に隙間が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 電子ピアノ(鍵盤装置)
20 ピアノ本体
22,122 側板(ピアノ本体)
10 大屋根
10a 大屋根前
10b,110b,210b,310b,410b 大屋根後
10d 凹部
30,130,230,330,430 連結蝶番(蝶番)
31 第1ブラケット
32,132 回動軸
33,133,233,333,433 第2ブラケット
34,134,234,334,434 立壁
35 ピン
40 支持棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が形成される楽器本体と、その楽器本体の開口を覆う板状の大屋根と、その大屋根および前記楽器本体に連結され前記大屋根を前記楽器本体に対して回動可能に連結する蝶番と、その蝶番を介して回動する前記大屋根の高音側の端部を支持する支持棒と備えた鍵盤楽器において、
前記蝶番は、
前記楽器本体に結合される第1ブラケットと、
その第1ブラケットに回動軸を介して回動可能に連結され前記大屋根の裏面に結合される第2ブラケットと、
その第2ブラケットから立設し前記大屋根の低音側の端面と対向する立壁とを備えることを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記大屋根の低音側の端面に凹設される凹部と
その凹部に内包され前記立壁から前記凹部に向かって突設されるピンと備えることを特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記ピンの外周面と前記凹部の内周面との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記立壁は前記大屋根の低音側の端面に当接することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤楽器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−266609(P2010−266609A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116783(P2009−116783)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)