説明

鍵盤装置

【課題】組立工数が削減されるとともに軽量化される鍵盤装置を提供する。
【解決手段】第1,第2の白鍵ユニット1,2、黒鍵ユニット3は、それぞれの共通基端部1c,2c,3cが積層された状態でフレーム4の鍵ユニット取付部4cに取付固定される。最上位位置に積層される黒鍵3の共通基端部3cには、その上面の、共通基端部3cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上に、1本のリブ3gが形成され、このリブ3gは、共通基端部3cの厚みt1以上の高さhを有する。共通基端部3cには、一対のL字形の係合片3eが、鍵の長手方向後方部から下向きに突出形成され、係合片3eの先端に形成された突起3fが、鍵ユニット取付部4cに形成されたスリット孔4gの縁部に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の鍵が、それらの共通基端部においてフレームに取付固定される鍵盤装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器の鍵盤装置において、部品加工上の都合により、隣接しない飛び飛びの鍵本体部を共通基端部に結合して合成樹脂で一体成形し、一体成形された鍵ユニットを、共通基端部において複数個積層して鍵フレームの鍵支承部に取付固定するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
上記従来技術の鍵ユニット取付構造にあっては、白鍵ユニットが2つ、黒鍵ユニットが1つの計3つの共通基端部を積層して鍵フレームへ固着するようにしているが、上述した共通基端部は、鍵並び方向(鍵配列方向)に水平に延びる薄肉で細長い平板状体に形成されているため、垂直上下方向からの外力による断面2次モーメントが小さい。
一般的に鍵には押鍵後に鍵をストップさせる鍵ストッパ(後述する図1(b)の1e等)があり、強押鍵時に該ストッパがフレーム(同図4e)に当たって、ここを支点として鍵には鍵後端を持ち上げるような力が働く。これによって共通基端部が鍵ユニット取付部(同図4c)から離れるような力が働く。その結果、共通基端部が撓んだり、ビリついたりする。
これを防止するため、共通基端部を鍵ユニット取付部に固定するのに、ネジで1オクターブ当たり4〜6本の密度で締結する必要があった。その結果、鍵盤装置の組立てに時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3082696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、鍵ユニットを共通基端部においてフレームに取付固定する鍵盤装置において、組立工数が削減される鍵盤装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載の発明においては、複数の鍵ユニットのそれぞれの共通基端部が積層された状態でフレームに取付固定される鍵盤装置において、前記複数の鍵ユニットのそれぞれの共通基端部の内、最上位位置に積層される共通基端部には、当該上面に当該共通基端部の厚み以上の高さを有する1又は複数のリブが鍵配列方向に形成されているものである。
従って、最上位位置に積層される共通基端部は、1又は複数のリブにより断面2次モーメントが大きくなる。その結果、共通基端部の剛性が向上しその強度が確保されるから、共通基端部をフレームに固定するために、ネジよりも簡単に固定できる軽量の固定部材を用いたり、ネジを用いるとしてもその本数を少なくしたりすることができる。
なお、フレームは、ケース体(鍵盤電子楽器のケース体や鍵盤装置の単体製品のケース体)の内部に収容されるものであったり、このフレーム自体が、ケース体の一部(例えば、下ケース体)を構成したり、ケース体の全部であったりしてもよい。従って、フレームはケース体を含む。
【0007】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、該1又は複数の取付孔と前記1又は複数のリブとは、鍵配列方向に交互に形成され、前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結されるものである。
従って、最上位位置に積層される共通基端部は、1又は複数のリブにより断面2次モーメントが増すとともに、リブを避けて1又は複数の取付孔が確保され、ネジによりフレームへの取付強度が確保される。また、ネジによる締結箇所を削減できる。
【0008】
請求項3に記載の発明においては、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、該1又は複数の取付孔は、前記1又は複数のリブと鍵配列方向に並行して形成され、前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結されるものである。
従って、最上位位置に積層される共通基端部は、リブにより断面2次モーメントが大きくなるとともに、ネジによりフレームへの取付強度が確保される。
鍵配列方向に共通基端部の両端まで最大限にリブを形成した場合でも、リブを避けてネジの取付孔を確保することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の鍵盤装置において、前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、前記1又は複数のリブは、前記各取付孔から所定の距離を超える範囲に形成され、前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結される
ものである。
従って、各取付孔から所定の距離以内の範囲、すなわち、ネジによる締結箇所の周辺には、リブが形成されていないことにより、リブを形成するのに必要とする樹脂材料を節約できる。ネジによる締結箇所の周辺は、もともと撓まないので、この領域にリブがなくてもその影響は少ない。また、ネジによる締結箇所の周辺にリブないため、リブが締結作業の邪魔にならない。
【0010】
請求項5に記載の発明においては、請求項1から4までのいずれか1項に記載の鍵盤装置において、前記1又は複数のリブは、当該リブの鍵配列方向の両端部が、前記最上位位置に積層される共通基端部の上面に対し90度未満の傾斜角を有するものである。
従って、リブの鍵配列方向の各端部の根元部に応力が集中しないことから、リブの耐久性が増す。
【発明の効果】
【0011】
上述した本願発明によれば、最上位位置に積層される共通基端部に1又は複数のリブが形成されることにより、鍵をフレームに固定するための固定部材を簡単なものにすることができる。従って、鍵盤装置の組立工数が削減されるという効果がある。その結果、耐久性のある鍵盤装置をローコストで製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概要構成図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す概要構成図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を示す概要構成図である。
【図4】本発明の第4の実施形態を示す概要構成図である。
【図5】本発明の第5の実施形態を示す概要構成図である。
【図6】本発明の第5の実施形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す概要構成図である。図1(a)は平面図、図1(b)は右側面図である。
第1の白鍵ユニット1、第2の白鍵ユニット2、黒鍵ユニット3は、それぞれの共通基端部1c,2c,3cが積層された状態でフレーム4の鍵ユニット取付部4cに取付固定される。黒鍵ユニット3は、細線でハッチングを施して図示している。
【0014】
複数の鍵は、図示の例では、1オクターブを単位として、第1の白鍵ユニット1、第2の白鍵ユニット2、黒鍵ユニット3で構成される。
第1の白鍵ユニット1は、音高C,E,G,Bの各鍵本体部1aが、鍵支点部1bを介して共通基端部(キーレール)1cに結合されている。
第2の白鍵ユニット2は、音高D,F,Aの各鍵本体部2aが、鍵支点部2bを介して共通基端部(キーレール)2cに結合されている。
黒鍵ユニット3は、音高C#,D#,F#,G#,A#の各鍵本体部3aが、鍵支点部3bを介して共通基端部(キーレール)3cに結合されている。
共通基端部1c,2c,3cは、この順に積層して組み合わされる。
【0015】
図示の鍵支点部1b,2b,3bは、薄肉平板状の水平ヒンジ支点であって、共通基端部2cと同じ高さ位置にある。これは一例に過ぎず、従来、鍵支点部として様々な構造が採用されている。
各鍵本体部1a,2a,3aには、ストッパ片1e,2e,3dが垂直下方向に突設されている。このうち、黒鍵ユニット3のストッパ片3dは、折れ曲がり形状であり、その最下位置がストッパ片1e,2eと一致する。
フレーム4において、4aはその上面に図示しない鍵スイッチ回路基板が取り付けられる回路基板載置部、4bは段差部、4cは鍵ユニット取付部、4dは前方段差部、4eは基底部、4fは前板部、4gはスリット孔である。
【0016】
演奏者が、鍵本体部、例えば、鍵本体部1aの先端部(演奏者の手許側)を、図示の外力Tで、深く押下したとき、ストッパ片1eが、フレーム4、図示の例では、その基底部4eの上面に当接することにより、押鍵操作の下限位置が規制される。基底部4eの上面には、通常、図示しないフェルト等のストッパ部材が設けられる。
鍵本体部1aが基底部4eに当接する点を図示のP点とすると、このP点を支点として、鍵支点部1b及び共通基端部1cに力Uが加わる。この力Uは、共通基端部1cを持ち上げてフレーム4から離そうとする上向きの力である。
【0017】
また、鍵盤装置が質量体(ハンマー)を備える場合は、上述したストッパ片1e,2e,3dに代えて、図示しない力伝達部を設ける。各鍵本体部1a,2a,3aは、対応する各質量体を回動させたり、対応する各質量体から反力を受けたりする。
この場合も、図示しない力伝達部が質量体に当接する点を支点として共通基端部1cを持ち上げてフレーム4から離そうとする上向きの力が加わる。
【0018】
一方、背景技術において引用した特許文献1の図5には、各鍵本体部の後端部下面に「突起22a」が設けられていた。図1の各鍵本体部1a,2a,3aの下面領域においても、その各鍵支点部1b,2b,3bに近い部分に、突起aaが形成されている。この突起aaは、通常の押鍵操作の状態では、間隙を有してフレーム4の上面、図示の例では、鍵ユニット取付部4cの上面と対向している。
【0019】
一方、演奏者が、各鍵本体部1a,2a,3aの鍵長手方向中央部を押鍵したり、幼児が鍵本体部1a,2a,3aの上に乗ったりする場合がある。
鍵本体部1aについて説明すると、鍵本体部1aが図示の外力Cで押下され、鍵本体部1aがP点で基底部4eに当接する。次に、上述した突起aaが鍵ユニット取付部4cの上面のQ点に当接することにより、鍵、特に、鍵支点部1bが保護される。しかし、外力Cが大きいと、鍵本体部1aがP−Q間において弓なりに撓む。このとき、Q点を支点として、共通基端部1cに上向きの力Uが加わる。
そこで、上述した各場合において、力Uにより共通基端部1cが変形しないようにするため、共通基端部1cの剛性を向上させ、その強度を確保しておく必要がある。
【0020】
この実施形態は、従来の鍵盤装置と比較すると、黒鍵ユニット3の共通基端部3cの構造と、取付部材としてネジを用いないようにした点が相違する。第1,第2の白鍵ユニット1,2及びフレーム4の構造は、基本的には変わらない。
上述した共通基端部の内、最上位位置に積層される黒鍵3の共通基端部3cには、その上面に、1又は複数のリブ3gが鍵配列方向に形成されることにより、共通基端部3cが補強される。このリブ3gは、共通基端部3cの厚みt1以上の高さhを有する。
【0021】
一般に、同じ断面積の剛体であっても、外力の加わる方向の長さが長いほど、断面2次モーメントが大きくなるので、撓みにくくなる。リブ3gの厚みt2自体が薄くても、外力Uの加わる方向の長さが、図示の例ではt1から(t1+h)になることにより、断面2次モーメントが大きくなる。従って、共通基端部1cの剛性が向上し、その強度が確保される。
【0022】
図示の例では、共通基端部3cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上に、1本のリブ3gが、共通基端部3cの全長にわたって形成されている。リブ3gは、その厚みt2が共通基端部3cの厚みt1に等しく、その高さhが共通基端部3cの幅(鍵の長手方向の幅)wとほぼ同じである。鍵盤装置の組立て後の状態において、リブ3gの最上部は、黒鍵本体部3aの最上部よりもs(≧0)だけ低くされているので、図示しない操作パネル等が上部を覆うときにリブ3gが障害とならない。
【0023】
図示の例では、リブ3gを鍵配列方向に長く形成するために、共通基端部1c,2c,3cに取付孔を設けていない。
その代わり、鍵配列方向の端部近傍(図示の例では、音高C#,音高A#の鍵本体部3aの鍵配列方向の位置)において、鍵ユニット取付部4cには1対のスリット孔4gが形成され、共通基端部3cには一対のL字形の係合片3eが鍵の長手方向後方部から下向きに突出形成されている。
このL字形の係合片3eを、上述したスリット孔4gに挿入すると、係合片3eの先端に形成された突起3fがスリット孔4gから突出し、スリット孔4gの縁部に係合する。
その結果、最上位位置に積層された共通基端部3cが鍵ユニット取付部4cに取付固定されることにより、共通基端部1c,2cが共通基端部3cに押さえ付けられて、共通基端部1c,2c,3cが鍵ユニット取付部4cに取付固定される。
【0024】
図2は、本発明の第2の実施形態を示す概要構成図である。図2(a)は平面図、図2(b)は右側面図である。
第1の白鍵ユニット11、第2の白鍵ユニット12、黒鍵ユニット13は、それぞれの共通基端部11c,12c,13cが積層された状態でフレーム14の鍵ユニット取付部14cに取付固定される。
フレーム14において、14aはその上面に図示しない鍵スイッチ回路基板が取り付けられる回路基板載置部、14bは段差部、14cは鍵ユニット取付部、14dは前方段差部、14eは基底部、14fは前板部である。鍵ユニット取付部14cには、2個のネジ孔14gが形成されている。
【0025】
この実施形態は、従来の鍵盤装置と比較して、黒鍵ユニット3の共通基端部13cの構造が相違する。第1,第2の白鍵ユニット1,2及びフレーム4の構造は、基本的には変わらないが、固定部材としてのネジ5の本数が削減されることにより取付孔やネジ孔の位置が相違する。
最上位位置に積層される黒鍵ユニット13の共通基端部13cは、その上面に、共通基端部13cの厚み以上の高さを有する1又は複数のリブ13f,13g,13hと、1又は複数(図示の例では2個)の取付孔13dとが、鍵配列方向に延びる直線上に交互に形成されている。
図示の例では、リブ13f,13g,13hが、各取付孔13d(その外周)から所定の距離d0を超える範囲に形成される。言い換えれば、各取付孔13dから所定の距離d0を隔てて、各取付孔13dに隣接するリブ13f,13g,13hが形成されている。この距離d0は、ネジ5の頭部がリブ13f,13gの間、リブ13g,13hの間に入ることができるように、ネジ5の頭部がこれに隣接するリブ13f,13g,13hに接する距離以上である必要がある。
【0026】
図示の例では、複数のリブ13f,13g,13hが、共通基端部13cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上に、共通基端部13cの全長にわたって形成されている。これらのリブ13f,13g,13hは、その厚みが共通基端部13cの厚みに等しく、その高さが共通基端部13cの幅とほぼ等しい。鍵盤装置の組立て後の状態において、リブ13f,13g,13hの最上部は、黒鍵本体部13aの最上部よりも低い。
図1に示したリブ3gと比較すると、1本のリブ3gが鍵配列方向に分割形成され、分割形成されたリブの間、図示の例では、リブ13f,13gの間と、13g,13hの間とに取付孔13dが形成されている。
【0027】
なお、リブ13f,13g,13hのそれぞれを、鍵配列方向に並行して形成された2本のリブに置き換えてもよい。
また、リブ13f,リブ13hがなく、リブ13gの両端部のそれぞれに1個の取付孔13dがあってもよい。また、リブ13gがなく、リブ13fとリブ13hの間に、1個の取付孔13dがあってもよい。
【0028】
共通基端部11c,12cには、共通基端部13cの取付孔13dに対応する位置に取付孔11d,12dが形成される。
共通基端部11c,12c,13cは、この順に積層して組み合わされ、積層された状態で、それぞれの取付孔13d,12d,11dにネジ5が挿入され、鍵ユニット取付部14cのネジ孔14gに締結されることによりフレーム14に固定される。
なお、鍵ユニット取付部14cのネジ孔14gも単なる取付孔とし、図示しないナットを用い、ネジ5とナットとで、これらを締結してもよい。
【0029】
図3は、本発明の第3の実施形態を示す概要構成図である。図3(a)は平面図、図3(b)は右側面図である。
第1の白鍵ユニット21、第2の白鍵ユニット22、黒鍵ユニット23は、それぞれの共通基端部21c,22c,23cが積層された状態でフレーム24の鍵ユニット取付部24cに取付固定される。
【0030】
この実施形態は、図2を参照して説明した第2の実施形態と比較して、最上位位置に積層された共通基端部23cに形成された取付孔23dとリブ23fの配置が相違する。
最上位位置に積層される共通基端部23cには、共通基端部23cの厚み以上の高さを有する1本のリブ23fと1又は複数の取付孔23dとが形成され、この1又は複数の取付孔23dは、前記1本のリブ23fと鍵配列方向に並行して形成されている。
【0031】
図示の例では、共通基端部23cの鍵長手方向の幅を拡げている。第1,第2の白鍵ユニット21,22及び鍵ユニット取付部24cについても、鍵長手方向の幅を拡げている。
図示の例では、リブ23fが、共通基端部23cの鍵配列方向の全長にわたって、演奏者の手許側(鍵本体部23a側)に片寄せて形成され、その厚みは、共通基端部23cの厚みに等しい。あるいは、リブ23fは、鍵長手方向の奥側に片寄せて形成されてもよい。リブ23fの高さは、共通基端部23cの幅とほぼ等しい。鍵盤装置の組立て後の状態において、リブ23fの最上部は、黒鍵本体部23aの最上部よりも低い。
図示の例では、2個の取付孔23dは、共通基端部23cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上に形成され、鍵配列方向の位置は、共通基端部23cの両端に近い、音高D,Aの鍵本体部22aに対応する位置である。
【0032】
共通基端部21c,22cには、共通基端部23cの取付孔23dに対応する位置に2個の取付孔21d,22dが形成される。
共通基端部21c,22c,23cは、積層された状態で、それぞれの取付孔23d,22d,21dにネジ5が挿入されて鍵ユニット取付部24cのネジ孔24gに締結される。
上述した説明では、共通基端部21c,22c,23cの幅、鍵ユニット取付部24cの幅を、第1,第2の実施形態の場合よりも拡げている。しかし、もともと幅に余裕があれば、これらの幅を拡げなくてもよい。
【0033】
図4は、本発明の第4の実施形態を示す概要構成図である。図4(a)は平面図、図4(b)は右側面図である。
第1の白鍵ユニット21、第2の白鍵ユニット22、黒鍵ユニット33は、それぞれの共通基端部21c,22c,33cが積層された状態でフレーム24の鍵ユニット取付部24cに取付固定される。
【0034】
この実施形態は、図3を参照して説明した第3の実施形態と比較して、最上位位置に積層された共通基端部33cに形成されたリブを2本のリブ33f,33gとしたものである。
最上位位置に積層された黒鍵ユニット33の共通基端部33cには、2本のリブ33f,33gとともに、1又は複数の取付孔33dが鍵配列方向に並行して形成される。このリブ33f,33gは、共通基端部33cの厚み以上の高さを有する。
【0035】
図示の例では、リブ33f,33gは、共通基端部33cの鍵配列方向の全長にわたって、演奏者の手許側(鍵本体部33a側)及び奥側に寄せて形成される。リブ33f、33gは、その厚みが共通基端部33cの厚みに等しく、その高さが、共通基端部33cの幅とほぼ等しい。鍵盤装置の組立て後の状態において、リブ33f、33gの最上部は、黒鍵本体部33aの最上部よりも低い。
図示の例では、2個の取付孔33dは、共通基端部33cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上の、図2,図3と同様の位置に形成されている。
【0036】
上述した説明では、共通基端部21c,22c、33c、及び、鍵ユニット取付部24cの幅を、図1,図2に示した第1,第2の実施形態の場合よりも拡げている。しかし、これらの幅に余裕があれば、拡げなくてもよい。
なお、共通基端部31cの鍵配列方向の両端領域に余裕がある場合、リブ33fとリブ33gの各端部を、それぞれ、鍵の長手方向に形成されるリブで連結し、リブの全体を箱型に形成すれば、共通基端部31cの剛性がさらに向上する。
【0037】
図5は、本発明の第5の実施形態を示す概要構成図である。図5(a)は平面図、図5(b)は右側面図である。
第1の白鍵ユニット41、第2の白鍵ユニット42、黒鍵ユニット43は、それぞれの共通基端部41c,42c,43cが積層された状態でフレーム44の鍵ユニット取付部44cに取付固定される。
【0038】
この実施形態は、図2を参照して説明した第2の実施形態と比較して、最上位位置に積層された共通基端部43cに形成されるリブ43fと取付孔43dの位置が相違する。また、フレーム44がフレーム14と相違するとともに、各鍵本体部41a,4a,43aに突起aaがない。
共通基端部43cには、その上面の鍵長手方向の一部分において、共通基端部43cの厚み以上の高さを有する1又は複数のリブ43fが鍵配列方向に形成されるとともに、1又は複数の取付孔43dが形成されている。
1又は複数のリブ43fは、各取付孔43d(その外周)から所定の距離d1を超える範囲に形成されている。
【0039】
図示の例では、共通基端部43cの鍵長手方向の幅を拡げるとともに、共通基端部43cの肉厚を厚くしているので、もともと共通基端部43cの剛性が大きい。従って、リブ43fの鍵配列方向の長さが、共通基端部43cの鍵配列方向の全長より短くても、このネジ5による締結箇所の周辺は、ネジ5の締結により剛性が確保されている。
【0040】
図示の例では、リブ43fが形成されている範囲は、鍵支点部の幅(鍵支点部の鍵配列方向の幅は、白鍵、黒鍵の全てで同じである)でいえば、音高D#の鍵支点部43bの中央から音高G#の鍵支点部43bの中央までの5鍵分の幅に相当するが、3鍵分の幅以上であればよい。
一方、取付孔43dが形成されている位置は、鍵配列方向の両端部近傍の領域であり、音高Cの鍵支点部41bと音高C#の鍵支点部43bとの境界、及び、音高A#の鍵支点部43bと音高Bの鍵支点部41bとの境界に対応する位置である。
従って、取付孔43d(その外周)、言い換えれば、ネジ5で締結される領域と、リブ43fとの距離d1は、鍵支点部の幅でいえば、2.5鍵分である。
【0041】
図示の例では、リブ43fの厚みは、共通基端部43cの厚みよりも薄く、リブ43fの高さは、共通基端部43cの幅とほぼ等しい。鍵盤装置の組立て後の状態において、リブ43fの最上部は、黒鍵本体部43aの最上部よりも低い。
図示の例では、1本のリブ43fと取付孔43dとが、共通基端部43cの幅(鍵長手方向の幅)の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線上に形成されている。これに代えて、1本のリブ43fを、図4のリブ33f,33gと同様に、鍵配列方向に並行して形成された2本のリブに置き換えて、第1のリブを鍵長手方向の手許側(鍵本体部43a側)に、第2のリブを鍵長手方向の奥側に片寄せて形成してもよい。
【0042】
フレーム44において、44aはその上面に図示しない鍵スイッチ回路基板が取り付けられる回路基板載置部、44bは段差部、44cは鍵ユニット取付部、44dはネジ孔である。
第2の実施形態(図2)のフレーム14とは異なり、前方段差部、基底部、前板部が形成されていない。しかし、鍵本体部41a,42a,43aが押下されたとき、ストッパ片41e,42e,43eが図示しないストッパ部材に当接して、押鍵操作の下限位置を規制するようにする。一方、鍵盤装置が質量体(ハンマー)を備える場合は、上述したストッパ片41e,42e,43eに代えて、図示しない力伝達部を設ける。
【0043】
図示の例では、共通基端部41c,42cの鍵長手方向の幅、及び、鍵ユニット取付部44cの鍵長手方向の幅についても、共通基端部43cと同様に、幅を拡げている。また、共通基端部41c,42cの肉厚を厚くし、鍵支点部41b,42b,43bは、共通基端部43cと同じ高さ位置になるようにしている。リブ43fの最上部は、黒鍵本体部43aの最上部よりも低くなるようにしている。
フレーム44の段差部44bは、第2の実施形態のフレーム14の段差部14bに比べて段差を小さくすることにより、第1,第2の白鍵本体部41a,42a、及び、黒鍵本体部43aのそれぞれの下面と、回路基板載置部44aの上面との間隔が、従来技術や他の実施形態と同じになるように設計されている。
【0044】
上述したフレーム44に代えて、図2のフレーム14と同様の構造を用いてもよいが、フレーム44の段差部44bは、段差部14bに比べて段差を小さくする。
また、図示の各鍵本体部41a,4a,43aの下面領域において、その各鍵支点部41b,42b,43bに近い部分に、図2の突起aaを形成し、一方、フレーム44の側に、この突起aaと間隙を有して対向する当接支持部を設けてもよい。図1に示した大きな外力Cを受けたときに、突起aaが上述した当接支持部に当接し、これを押圧することにより、外力Cを受け止める。
【0045】
共通基端部41c,42cには、共通基端部43cの取付孔43dに対応する位置に取付孔41d,42dが形成され、複数の鍵ユニットの共通基端部41c,42c,43cは、積層された状態で、それぞれの取付孔43d,42d,41dにネジ5が挿入されて鍵ユニット取付部44cのネジ孔44dに締結される。
上述した説明では、共通基端部41c,42c,43cの幅、及び、鍵ユニット取付部44cの幅を拡げるとともに、共通基端部41c,42c,43cの肉厚を厚くしている。しかし、もともと共通基端部41c,42c,43cの剛性に余裕がある場合は、幅を拡げたり肉厚を厚くしたりしなくてもよい。
【0046】
図6は、図5を参照して説明した本発明の第5の実施形態の変形例を示す断面図である。
図6(a)は、図5において一点鎖線(共通基端部43cの鍵長手方向の幅の中心を通る、鍵配列方向に延びる直線)で示す切断面において、矢視Aの方向を見たときの断面図である。
図6(b)、図6(c)は、第5の実施形態の第1,第2の変形例を、図6(a)と同じ切断面において見た断面図である。
【0047】
図6(a)に示すように、リブ43fが矩形である場合、リブ43fの両端部が共通基端部43cから垂直に立ち上がる。リブ43fの両端部が垂直に立ち上がっていると、演奏により外力が加わったとき、リブ43fの根元部43gに応力が集中する。また、微少ではあるが、共通基端部43cの変形が、根元部43gにおいて急に変化する。そのため、リブ43fや共通基端部43cが、根元部43gの近傍において、樹脂の塑性変形や、ひび割れを起こすおそれがある。
【0048】
そこで、図6(b)に示すように、最上位位置に積層された共通基端部53cの上面に形成されたリブ53f(左の根元部53gから右の根元部53gまで)は、各取付孔53d(その外周)から所定の距離d2を超える範囲に形成され、かつ、リブ53fの鍵配列方向の両端部が、共通基端部53cの上面に対し90度未満の傾斜角を有するようにする。
例えば、リブ53fの鍵配列方向の両端部が、最上位位置に積層された共通基端部53cの上面に対し90度未満の角度、図示の例では45度で直線的に傾斜しているようにする。その結果、リブ53fは、全体として山型形状となり、根元部53gへの応力集中を避け、根元部53gから離れた共通基端部53cの領域から徐々に変形させることができるから、リブ53f及び共通基端部53cの耐久性が向上する。
【0049】
さらに、図6(c)に示すように、最上位位置に積層された共通基端部63cの上面に形成されたリブ63f(左の根元部63gから右の根元部63gまで)は、各取付孔63d(その外周)から所定の距離d3を超える範囲に形成されるとともに、その鍵配列方向の両端部の根元部63gの角を丸める、すなわち、R(アール)を取ることにより、傾斜角が90度未満の角度から徐々に増加するようにしてもよい。
また、リブ63fの根元部63gの角部分に加えて、リブ63fの上端部63hの角部分を丸めてもよい。
【0050】
上述した所定の距離d1,d2,d3は、それぞれ、共通基端部43c,53c,63c、リブ43f,53f,63fの、形状、厚み、鍵長手方向の幅等、及び、余裕度を考慮して設計される。かつ、所定の距離d1,d2,d3は、ネジ5の頭部がリブにぶつからないでネジ5を締結できるように、ネジ5の頭部がこれに隣接するリブ43f,53f,63fに接する距離以上である必要がある。図2における所定の距離d0についても同様である。
また、図6(a)で例示すると、リブ43fの長さDaの、ネジ5の2つの取付孔43dの間隔(各取付孔43dの中心軸の間隔)Dbに対する比Da/Dbは、1/3≦Da/Db<1とすることが好適である。
【0051】
上述した説明では、図5を参照して説明した第5の実施形態の変形例としてリブ53f,63fを説明した。しかし、図1〜図4を参照して説明した他の実施形態においても、最上位位置に積層された共通基端部の上面に形成されたリブは、その鍵配列方向の両端部が、この共通基端部の上面に対し90度未満の傾斜角を有するようにしたり、さらには、その根元部の角部分を丸めたりしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,11,21,41…第1の白鍵ユニット、
2,12,22,42…第2の白鍵ユニット、
3,13,23,33,43,53,63…黒鍵ユニット、
1a,2a,3a,11a,12a,13a,21a,22a,23a,33a,41a,42a,43a…鍵本体部、
1b,2b,3b,21b,22b,23b,33b,41b,42b,43b…鍵支点部、
1c,2c,3c,11c,12c,13c,21c,22c,23c,33c,41c,42c,43c,53c,63c…共通基端部、
11d,12d,13d,21d,22d,23d,33d,41d,42d,43d,53d,63d…取付孔、
1e,2e,3d,11e,12e,13e,21e,22e,23e,33e,41e,42e,43e…ストッパ片、
3e…係合片、3f…突起、
3g,13f,13g,13h,23f,33f,33g,43f,53f,63f…リブ、
43g,53g,63g…根元部、63h…上端部、aa…突起、
4,14,24,44…フレーム、
4a,14a,24a,44a…回路基板載置部、4b,14b,24b,44b…段差部、4c,14c,24c,44c…鍵ユニット取付部、4d,14d,24d…前方段差部、4e,14e,24e…基底部、4f,14f,24f…前板部、4g…スリット孔、14g,24g,44d…ネジ孔、
5…ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鍵ユニットのそれぞれの共通基端部が積層された状態でフレームに取付固定される鍵盤装置において、
前記複数の鍵ユニットのそれぞれの共通基端部の内、最上位位置に積層される共通基端部には、当該上面に当該共通基端部の厚み以上の高さを有する1又は複数のリブが鍵配列方向に形成されている、
ことを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、
該1又は複数の取付孔と前記1又は複数のリブとは、鍵配列方向に交互に形成され、
前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、
前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、
該1又は複数の取付孔は、前記1又は複数のリブと鍵配列方向に並行して形成され、
前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、
前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記最上位位置に積層される共通基端部には、1又は複数の取付孔が形成され、
前記1又は複数のリブは、前記各取付孔から所定の距離を超える範囲に形成され、
前記最上位位置に積層されない共通基端部には、前記最上位位置に積層される共通基端部の前記取付孔に対応する位置に取付孔が形成され、
前記複数の鍵ユニットの共通基端部は、積層された状態で、それぞれの前記取付孔にネジが挿入されて前記フレームに締結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記1又は複数のリブは、当該リブの鍵配列方向の両端部が、前記最上位位置に積層される共通基端部の上面に対し90度未満の傾斜角を有する、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の鍵盤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−22297(P2011−22297A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166352(P2009−166352)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】