説明

鎖状シリカ系微粒子群を含む水分散液の製造方法、および鎖状シリカ系微粒子群の水分散液並びにその有機溶媒分散液

【課題】 金属複合酸化物で被覆された鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法および前記シリカ系微粒子群を含有する水分散液並びにその有機溶媒分散液に関する。
【解決手段】少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液を製造する方法、該水分散液およびこれを溶媒置換して得られる有機溶媒分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属複合酸化物で被覆された鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法、および前記シリカ系微粒子群を含有する水分散液並びにその有機溶媒分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、歯科用充填材には、実際の天然歯と同程度の充分な強度や硬度、更には表面の滑らかさや噛み合わせによる摩耗に対する耐性が必要であるため、その原材料としてシリカ系微粒子が使用されている。また、この歯科用充填材には、天然歯との色調適合性や天然歯と同等の透明性を与えるための屈折率の適合性や治療した箇所と天然歯の歯組織との区別ができる程度のX線不透過性が要求されるため、他の原材料として酸化ジルコニウムが使用されている。
【0003】
このような歯科用充填材については、種々の公知文献に開示されており、例えば、(1)二酸化珪素と少なくとも他の金属酸化物(酸化ジルコニウム等)を凝集させ、その酸化物の結晶化温度未満の温度で熱処理することにより製造した、二酸化珪素と他の金属酸化物が独立した非晶質層を形成してなる歯科用充填材(特許文献1)や、(2) 約100nm未満の平均直径を有する非重金属酸化物粒子(シリカ粒子等)と、重金属酸化物または約100nm未満の平均直径を有する重金属酸化物粒子(酸化ジルコニウム粒子等)とを含む実質的にアモルファス状のクラスタを含む歯科用充填材(特許文献2)などがある。
【0004】
しかし、これらの方法から得られる歯科用充填材は、シリカゾルとジルコニウム塩水溶液とを混合して、これをスプレイドライヤーなどを用いて乾燥した後、焼成しているため、屈折率などの性状が異なるシリカ微粒子と酸化ジルコニウム成分(微粒子)とが混在するものであった。結果として、得られる歯科用充填材の屈折率などにおいてムラが生じる場合があった。さらに、これらの歯科用充填材では、粒子の細孔容積や粒子の強度を調整することができず、このために透明性を向上させることが難しくなり、更には重合性樹脂との密着性が不十分であるため、治療または修理した歯(義歯を含む)の治療箇所における強度や硬度が低下して、噛み合わせによる摩耗に対する耐性などが不十分となることがあった。
【0005】
そこで、本出願人は、シリカゾル、酸性珪酸液およびジルコニウム塩水溶液を混合して、これをスプレイドライヤーなどを用いて乾燥した後、焼成する歯科用充填材の製造方法(特許文献3)を開発し、これを出願している。これによると、酸性珪酸液に由来するシリカ成分と酸性ジルコニウム成分がよく混じり合った金属酸化物が得られるため、シリカゾルに由来するシリカ微粒子に近づいた性状(例えば、屈折率など)のものになっている。しかし、シリカ微粒子が混在することには変わりないので、上記のような問題点が完全に解消されるものではなかった。
【0006】
さらに、本発明者らは、従来の歯科用充填材に付随する上記のような問題を解決するため、ジルコニウムシリケート化合物からなる結晶性の無機酸化物微粒子を含む歯科用充填材を開発し、これを特許文献4に記載の発明として出願している。この歯科用充填材は、天然歯と同程度である強度や硬度、噛み合わせ摩耗に対する耐久性等において優れた特性を有しているが、その使用用途によっては、有機珪素化合物、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等の有機金属化合物によって前記無機酸化物微粒子の表面を処理(または改質)することが必要となる。しかし、前記無機酸化物微粒子は、結晶性の表面性状を備えているため、その表面を前記有機金属化合物でむらなく処理することは必ずしも容易ではなかった。
【0007】
本願発明者らは、これらの問題を解決することを目的として鋭意研究を重ねたところ、シリカ系微粒子の表面を金属複合酸化物で被覆してなる非晶質の無機酸化物微粒子が歯科用充填材として優れた特性を有していることを見い出し、本願と同日付けでこれを特許出願した。しかし、この発明を完成させるためには、前記無機酸化物微粒子、すなわち金属複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子群を含有する水分散液を安定的に製造する方法を開発する必要があった。
【0008】
【特許文献1】特開平7−196428号公報
【特許文献2】特表2003−512406号公報(国際公開WO01/030306)
【特許文献3】特開2003−146822号公報
【特許文献4】特願2006−086800号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような状況の下で、本願発明者らは、前記無機酸化物微粒子を含有する水分散液を安定的に製造する方法について鋭意研究を重ねたところ、以下に示す新規な方法を見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、金属複合酸化物で被覆された鎖状シリカ微粒子群を含有する水分散液を製造するための方法、および前記鎖状シリカ微粒子群を含有する水分散液並びに該分散液を溶媒置換して得られる前記鎖状シリカ微粒子群を含有する有機溶媒分散液を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法は、
シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、前記工程(a)で得られた水溶液と珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、および
(d)前記工程(c)で得られた水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する工程
を含むことを特徴としている。
【0011】
前記工程(a)において酸化ジルコニウム水和物は、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウムおよびアンモニウムオキシ炭酸ジルコニウムから選ばれた1種または2種以上のジルコン酸塩の水溶液にアンモニアまたはアンモニア水を撹拌下で添加して得られる中和反応物を洗浄したものであることが好ましい。
また、前記工程(a)においてアルカリ金属の水酸化物は、水酸化カリウムであることが好ましい。
【0012】
前記工程(a)においてアルカリ金属の水酸化物(MOH)の添加量は、前記酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(MOH/ZrO2・xH2O)で1/1〜10/1の範囲にあることが好ましい。
また、前記工程(a)において過酸化水素(H22)の添加量は、前記酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(H22/ZrO2・xH2O)で5/1〜30/1の範囲にあることが好ましい。
さらに、前記工程(a)で調製される水溶液は、ZrO2換算基準で0.3〜5重量%のジルコニウム成分を含むことが好ましい。
【0013】
前記工程(b)において使用されるシリカゾルは、SiO2換算基準で0.5〜5重量%のケイ素成分を含むことが好ましい。
また、前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液は、SiO2換算基準で0.5〜5重量%のケイ素成分を含むことが好ましい。
さらに、前記工程(b)において前記ジルコニウム成分を含む水溶液の添加量は、前記シリカゾルに対して、前記ジルコニウム成分をZrO2で表し、また前記シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiO2で表したとき、モル比(SiO2/ZrO2)で1/1〜5/1の範囲にあることが好ましい。
【0014】
前記工程(b)において珪酸液の水溶液の添加量は、同時に添加される前記ジルコニウム成分を含む水溶液に対し、前記珪酸液中に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、また前記ジルコニウム成分をZrO2で表したとき、モル比(ZrO2/SiO2)で1/16〜1/1の範囲にあることが好ましい。
また、前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液は、水ガラスを水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものであることが好ましい。
さらに、前記工程(b)において前記シリカゾルは、前記ジルコニウム成分を含む水溶液および前記珪酸液の水溶液を添加する前に、70〜95℃の温度に加熱しておくことが好ましい。
さらに、前記工程(b)における添加操作と前記工程(c)における脱アルカリ操作は、複数回、繰り返して行うことが好ましい。
【0015】
前記工程(c)における脱アルカリ操作は、前記水溶液のpHが7.0〜10.0の範囲になるように行うことが好ましい。
また、前記工程(d)における水熱処理は、オートクレーブ中で10〜100時間かけて行うことが好ましい。
さらに、前記鎖状シリカ系微粒子群は、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結させたような形状を有していることが好ましい。
【0016】
一方、本発明に係る水分散液は、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有することを特徴としている。
また、本発明に係る有機溶媒分散液は、前記水分散液を溶媒置換工程に供して得られるもので、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明方法によれば、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆された鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液を安定的に製造することができる。
この方法から得られる水分散液をスプレイドライヤーなどを用いて乾燥した後、必要に応じて焼成すると、前記複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結したような特異な形状を有する無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体や非晶質焼成粉体が得られる。
【0018】
このようにして得られた無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体や非晶質焼成粉体は、前記シリカ系微粒子が前記複合酸化物で被覆されているため、得られる非晶質乾燥粉体や非晶質焼成粉体の表面性状は殆ど同じであり、その屈折率などにおいてムラが生じることもない。さらに、前記無機酸化物微粒子群の非晶質乾燥粉体や非晶質焼成粉体は、機械的強度、耐摩耗性、屈折率適合性、X線不透過性などにおいて優れているので、歯科用充填材として好適に使用することができる。
【0019】
また、前記水分散液に含まれる前記鎖状シリカ系微粒子群は、耐摩耗性や屈折率適合性などにおいて優れた特質を備えているので、歯科用充填材以外の用途にも好適に使用することができる。すなわち、前記水分散液や前記有機溶媒分散液を含む塗料、例えばハードコート剤や反射防止剤を調製して、これをプラスチック基材や紙などに塗布すると、その表面の耐摩耗性や反射率などを大幅に改善させることができる。なお、これらの用途においては、前記水分散液を使用するより、前記有機溶媒分散液を使用することが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法、および前記シリカ系微粒子群を含有する水分散液並びにその有機溶媒分散液について具体的に説明する。
【0021】
[水分散液の製造方法]
本発明に係る鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法は、
シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、前記工程(a)で得られた水溶液と珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、および
(d)前記工程(c)で得られた水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する工程
を含むものである。
さらに、前記の各工程について詳述すれば、以下の通りである。
【0022】
工程(a)
本発明でいう前記酸化ジルコニウム水和物は、化学式ZrO2・xH2Oで表され、この中には水酸化ジルコニウム(Zr(OH)n)も含まれるものとする。
また、前記酸化ジルコニウム水和物は、酸または酸を含む水溶液には溶解するが、水またはアルカリを含む水溶液には殆ど溶解しないことが知られている。
そこで、この工程(a)においては、純水または蒸留水中に水酸化ジルコニウムを含む懸濁水溶液を調製し、これにカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物(すなわち、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)および過酸化水素を添加して攪拌することにより、前記酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた混合水溶液(以下、「混合水溶液-(1)」という)を調製する。ここで、前記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウムを使用することが好ましい。これは、水酸化カリウムを使用すると、水酸化ナトリウムに比べて前記の解膠が進みやすいためである。
【0023】
前記アルカリ金属水酸化物(M2O)は、前記前記懸濁水溶液中に含まれる酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(M2O/ZrO2・xH2O)が1/1〜10/1、好ましくは2/1〜5/1となるような割合で添加することが好ましい。ここで、前記モル比が1/1未満であると酸化ジルコニウム水和物の解膠が進まず、また該モル比が10/1を超えると、高い解膠性は得られるものの、過剰なアルカリ金属イオンが水溶液中に含まれることになり、これを後段の工程で除去(陽イオン交換樹脂を使用)する必要があるため、経済的ではない。
【0024】
前記過酸化水素(H22)は、前記懸濁水溶液中に含まれる酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(H22/ZrO2・xH2O)が5/1〜30/1、好ましくは10/1〜25/1となるような割合で添加することが好ましい。ここで、前記モル比が5/1未満であると、酸化ジルコニウム水和物の解膠が進まず、また該モル比が30/1を超えると、酸化ジルコニウム水和物の溶解が早くなって溶解に要する時間は短くなるものの、未反応の過酸化水素が系内に大量に残存することになるので、経済的に好ましくない。
さらに、前記過酸化水素は、18〜35重量%濃度の過酸化水素水として添加することが望ましい。
【0025】
なお、前記酸化ジルコニウム水和物は、ジルコニウム塩を水溶液中で加水分解あるいは該水溶液中にアルカリまたはアンモニアを添加して中和反応を起こさせる等、従来公知の方法で調製することができる。しかし、本発明においては、純水または蒸留水にオキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・xH2O)、オキシ硫酸ジルコニウム(ZrOSO4・xH2O)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO32・xH2O)、オキシ酢酸ジルコニウム(ZrO(C2322)、オキシ炭酸ジルコニウム(ZrOCO3・xH2O)およびアンモニウムオキシ炭酸ジルコニウム((NH42ZrO(CO32)から選ばれた1種または2種以上のジルコン酸塩を溶解させた水溶液にアンモニアまたはアンモニア水を撹拌下で添加して中和反応を起こさせることによって得られる中和反応物(酸化ジルコニウム水和物)を、純水または蒸留水で十分に洗浄したものを使用することが好ましい。また、前記ジルコン酸塩としては、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2・8H2O)を使用することが望ましい。なお、前記オキシ塩化ジルコニウム、前記オキシ硫酸ジルコニウム、前記オキシ硝酸ジルコニウム、前記オキシ酢酸ジルコニウムおよび前記オキシ炭酸ジルコニウムは、それぞれ塩酸ジルコニル、硫酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニルおよび炭酸ジルコニルと称されることもある。
【0026】
さらに、前記ジルコン酸塩の代わりに、炭酸ジルコニウム(ZrCO4・ZrO2・xH2O)、硫酸ジルコニウム(Zr(SO4)2・xH2O)、塩化ジルコニウム(ZrCl2、ZrCl3またはZrCl4)および硝酸ジルコニウム(Zr(NO34・xH2O)から選ばれた1種または2種以上のジルコン酸塩を使用することもできる。
前記水溶液中における前記ジルコン酸塩の含有量は、10〜20重量%、好ましくは13〜17重量%の範囲にあることが好ましい。
【0027】
前記アンモニア(NH3)またはアンモニア水(NH4OH)は、前記水溶液中に含まれるジルコン酸塩(ZrOXn)に対して、モル比(NH3/ZrOXnまたはNH4OH/ZrOXn)が13/7〜13/2、好ましくは13/5〜13/4となるような割合で添加することが好ましい。ここで、前記モル比が13/7未満であると、ジルコン酸塩の中和が十分でないため該ジルコン酸塩の一部がそのまま残り、また該モル比が13/2を超えると、アンモニアが過剰に添加されるためその残存アンモニアの洗浄に時間がかかることになるので、好ましくない。
さらに、前記アンモニア水は、5〜15重量%濃度のアンモニア水として添加することが望ましい。
【0028】
また、前記中和反応は、5〜20℃、好ましくは10〜15℃の温度で行うことが好ましい。ここで前記温度が20℃を超えると、ジルコン酸塩の中和により生成した酸化ジルコニウム水和物(例えば、水酸化ジルコニウム等)が経時的に変化していくため好ましくない。
【0029】
前記中和反応から得られる酸化ジルコニウム水和物は、濾過分離した後、純水または蒸留水で十分に洗浄して、前記中和反応における未反応物(ZrOXn等)や反応副生物(NH4X等)をできるだけ除去しておく必要がある。
このようにして得られる混合水溶液-(1)中に溶解して含まれるジルコニウム成分(酸化ジルコニウム水和物の解膠物)は、特にこれに制限されるものではないが、ZrO2換算基準で0.3〜5重量%の範囲にあることが望ましい。
【0030】
工程(b)
この工程(b)では、平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾル中に、該ゾルを撹拌しながら前記工程(a)で得られた混合水溶液-(1)と珪酸液の水溶液をそれぞれ添加する。
ここで、前記シリカゾルとしては、平均粒子径が2〜300nmのシリカ系微粒子を含むものであれば、市販のもの(例えば、触媒化成工業(株)製SI-30等)を使用することができる。ここで、平均粒子径が2nm未満であると、該粒子を用いた歯科用充填材の機械的強度、特に圧縮強度や曲げ強度が低下し、また平均粒子径が300nmを超えると、該粒子を含む歯科用充填材を用いて歯を修復した場合、その研磨面の滑沢性が十分でなくなるので、好ましくない。なお、ここでいう平均粒子径は、レーザー回折散乱法を用いて測定した結果を示すものである。
また、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子の濃度は、0.5〜5重量%の範囲にあることが好ましい。ここで、前記濃度が0.5重量%未満であると、経済的に前記無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また前記濃度が5重量%を超えると、前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液を添加した場合、その混合液が不安定となって粒子の凝集が起こってしまうため、鎖状の無機酸化物微粒子を得ることが難しくなるので、好ましくない。
【0031】
さらに、前記混合水溶液-(1)中に含まれるジルコニウム成分は、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子の濃度のほか、この工程で別途添加される珪酸液の性状や濃度などによっても異なるが、ZrO2換算基準で0.3〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の範囲となるように調整してから添加することが好ましい。ここで、前記含有量が0.3重量%未満であると、経済的に前記無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また該含有量が5重量%を超えると、前記混合水溶液の安定性が悪く、しかも該水溶液の粘度が増加してしまう傾向にあるので、好ましくない。
【0032】
一方、前記珪酸液の水溶液(以下、単に「珪酸液」という場合もある)としては、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩等の珪酸塩水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものが使用される。また、これらの珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム等のアルカリ金属珪酸塩、第4級アンモニウムシリケート等の有機塩基の珪酸塩などが挙げられる。
この珪酸液の水溶液の中でも、pHが2〜4、好ましくは2〜3の範囲にあり、珪素成分の含有量がSiO2換算基準で0.5〜5重量%、好ましくは3〜4重量%の範囲にあるものを使用することが好ましい。ここで、前記pHが2未満であると、その処理に要する陽イオン交換樹脂の量と処理時間が必要以上に多くなって経済的ではなくなり、また前記pHが4を超えると、脱アルカリの度合いが低いため、得られる珪酸液の安定性が悪くなるので好ましくない。さらに、前記含有量が0.5重量%未満であると、経済的に前記無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また前記含有量が5重量%を超えると、珪酸液の安定性が悪くなるので好ましくない。
このような性状を有する珪酸液の水溶液としては、水ガラス(珪酸ナトリウム)を水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものを使用することが好ましい。
【0033】
前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液は、該混合水溶液-(1)中に含まれるジルコニウム成分をZrO2で表し、さらに該珪酸液中に含まれる珪素成分をSiO2-(1)で表したとき、モル比(ZrO2/SiO2-(1))が1/16〜1/1、好ましくは1/8〜1/2となるようにそれぞれ調整して、前記シリカゾル中に共にゆっくりと添加することが好ましい。ここで、前記モル比が1/16未満であると、鎖状の無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また前記モル比が1/1を超えると、前記シリカゾル中に添加している間にその混合液が不安定となって粒子の凝集が起こってしまうので、好ましくない。
また、前記シリカゾル中へのこれらの添加量は、該シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子上への被覆度合いによっても異なるが、該シリカ系微粒子をSiO2-(2)で表したとき、重量比{(ZrO2/SiO2-(1))/SiO2-(2)}が7/100〜15/10、好ましくは5/10〜1/1の範囲にあることが好ましい。ここで、前記重量比が7/100未満であると、鎖状の無機酸化物微粒子を得ることが難しくなり、また前記重量比が15/10を超えると、前記シリカゾル中に添加している間にその混合液が不安定となって粒子の凝集が起こってしまうので、好ましくない。
【0034】
前記シリカゾルは、前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液を添加する前に、70〜95℃、好ましくは80〜90℃の温度に加熱しておくことが好ましい。ここで、前記温度が70℃未満では、前記ジルコニウム成分および前記珪酸液成分の加水分解反応が進まず、また前記温度が95℃を超えると、シリカゾル中の水分が蒸発し始めるので好ましくない。なお、前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液は、加熱してから使用してもよいが、室温の状態にあるものをそのまま使用することができる。
また、前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液の添加は、これらの水溶液中に含まれる前記成分の濃度やその添加量(総量)によっても異なるが、それぞれ4〜24時間かけてゆっくりと行うことが好ましい。
【0035】
このようにして、前記シリカゾル中に前記混合水溶液-(1)および前記珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加すると、この混合水溶液-(2)中で前記ジルコニウム成分と前記珪素成分の加水分解反応が起こって、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子の表面が、前記成分の部分加水分解物や加水分解物で被覆される。
強いアルカリ性を呈する前記混合水溶液-(1)の添加に伴い、前記混合水溶液-(2)中のpHは経時的に高まるので、該混合水溶液のpHが11、好ましくは10.5となった段階で、前記混合水溶液-(1)と前記珪酸液の添加を中止することが望ましい。ここで、前記pHが11を超えると、前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子がアルカリにより混合水溶液-(2)中に溶解し始めるので、好ましくない。
よって、pHが11になった段階で前記混合水溶液-(2)および前記珪酸液の添加が完了していない場合は、以下に述べる工程(c)に処して脱アルカリした後、この操作を再度または繰り返して行うことが好ましい。
【0036】
また、前記シリカ系微粒子の表面を、必要に応じてチタニウムやアルミニウムなどを含む複合酸化物で被覆する場合には、上記の成分に加えて、加水分解能を有するテトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等のチタニウム化合物水溶液やアルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物水溶液を適宜、添加することによって行うことができる。
【0037】
工程(c)
この工程(c)では、前記工程(b)で得られた混合水溶液-(2)を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする。
ここで使用される陽イオン交換樹脂としては、特に制限されるものではないが、三菱化学(株)製のSK1BH等の陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。
また、この工程では、前記混合水溶液-(2)を該混合水溶液のpHが7.0〜10.0、好ましくは8.5〜9.5となるように脱アルカリ処理することが好ましい。ここで、前記pHが7.0未満であると、混合液中の脱アルカリが進みすぎて、その混合液が不安定となって粒子の凝集などが起こり、また前記pHが10.0を超えると、前記混合水溶液-(1) および前記珪酸液を添加している間に前記シリカゾル中に含まれるシリカ系微粒子がアルカリによって溶け始めて前記混合水溶液-(2)中に溶解するので、好ましくない。
【0038】
この工程から得られる混合水溶液-(3)は、該混合水溶液中に前記混合水溶液-(2)および前記珪酸液をさらに添加する必要がある場合は、上記のように前記工程(b)に戻って再度、同工程における操作を行い、またその必要がない場合は、以下に述べる工程(d)に供される。なお、前記工程(b)と前記工程(c)の操作は、必要に応じて繰り返し行ってもよい。
【0039】
工程(d)
この工程(d)では、前記工程(c)で得られた混合水溶液-(3)を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する。
ここで、前記反応器としては、0.5〜16.5Mpaの圧力に耐える耐圧・耐熱容器であれば特に制限されるものではないが、ステンレススチール製のオートクレーブを用いることが好ましい。
【0040】
また、前記水熱処理は、100〜350℃、好ましくは150〜200℃の温度条件下で、10〜100時間、好ましくは20〜40時間かけて行うことが好ましい。ここで、前記水熱温度が100℃未満であると、前記混合水溶液中に含まれる前記ジルコニウム成分と前記珪素成分の加水分解反応から得られる部分加水分解物および/または加水分解物の縮合反応が充分に進まないため、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ微粒子群(鎖状無機酸化物微粒子群)を得ることが難しくなる。また、350℃以上の温度で水熱処理を行うためには16.5Mpa以上の圧力に耐える耐圧・耐熱容器が必要となり、さらにはエネルギー消費の面からも経済的でなくなる。
さらに、前記水熱時間が10時間未満であると、前記ジルコニウム成分と前記珪素成分の加水分解反応から得られる部分加水分解物および/または加水分解物の縮合反応が充分に進まないため、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ微粒子群(鎖状無機酸化物微粒子群)を得ることが難しくなる。また、前記水熱時間が100時間を超えても、前記複合酸化物で被覆されたシリカ微粒子群(鎖状無機酸化物微粒子群)を形成する上では余り影響しないので、これ以上の時間をかけることは得策でない。
【0041】
このようにして、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ微粒子群(鎖状無機酸化物微粒子群)を含む混合水溶液-(4)が得られる。すなわち、前記混合水溶液-(4)は、本発明に係る鎖状無機酸化物微粒子群を含有する水分散液であり、さらに詳述すれば、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液である。
【0042】
溶媒置換工程
前記工程(d)より得られる水分散液は、さらに必要に応じて該水分散液中に含まれる水を有機溶媒と溶媒置換して、鎖状無機酸化物微粒子群を含有する有機溶媒分散液とすることができる。
前記有機溶媒としては、その使用用途によっても異なるが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドルフルフリルアルコール、エチレングリール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類などを挙げることができる。また、これらの有機溶媒は、単独または2種以上を混合して用いることもできる。
【0043】
さらに、前記の溶媒置換を行う方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えばロータリーエバポレーターを使用する方法や、限外濾過膜を使用する方法などがある。これらの方法について、その事例を簡単に述べれば、以下の通りである。
a)ロータリエバポレーター法
前記水分散液を、ロータリーエバポレーターのフラスコ中に入れ、さらに有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン)をフラスコ中に入れる。次いで、ロータリーエバポレーターを駆動して、50〜90℃の温度条件下、−0.05〜−0.1MPaの減圧条件下で、前記フラスコを30〜120rpmの速度で回転させる。すると、前記水分散液中に含まれる水が蒸発してくるので、これを冷却して系外に排出する。
さらに、前記操作を必要時間、続けて行うことにより、前記水と有機溶媒とが溶媒置換された有機溶媒分散液が得られる。
【0044】
b)限外濾過膜法
前記水分散液と有機溶媒(例えば、メタノール)とを同量混合し、これを市販の限外濾過膜装置(旭化成ケミカルズ(株)製、マイクローザUF等)にかけて、濾過分離された濾水(水および有機溶媒を含む)を系外へ排出する。この操作を連続的に行い、前記混合液の液量が半分になった時点で、前記有機溶媒をさらに同量混合する。さらに、前記の操作を繰り返し行うことにより、前記水と有機溶媒とが溶媒置換された有機溶媒分散液が得られる。
【0045】
[鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液]
本発明に係る鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液は、
少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有するものである。
ここで、前記シリカ系微粒子を被覆している複合酸化物は、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物であり、その構造式の一部を示せば、以下の通りである。

| |
―O―Zr―O―Si―O― (I)
| |

また、本発明に係る分散液中に含まれる前記鎖状無機酸化物微粒子群は、概ね図1の電子顕微鏡写真に示すような形状を有している。
【0046】
[鎖状シリカ系微粒子群を含有する有機溶媒分散液]
本発明に係る鎖状シリカ系微粒子群を含有する有機溶媒分散液は、
少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有するものである。
この有機溶媒分散液は、分散媒として水の代わりに有機溶媒を使用している以外は、前記水分散液と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
[調製例1]
酸化ジルコニウム水和物の調製
オキシ塩化ジルコニウム250kg(ZrOCl2・8H2O、太陽鉱工(株)製)を温度15℃の純水4375kgに加えて攪拌し、オキシ塩化ジルコニウムを溶解させた。
さらに、このオキシ塩化ジルコニウム水溶液に、15重量%濃度のアンモニア水250 Lを攪拌下でゆっくりと添加して、15℃の温度条件下で前記オキシ塩化ジルコニウムの中和反応を行い、酸化ジルコニウム水和物の沈殿を含むスラリーを得た。このスラリーのpHは8.5であった。
次いで、このスラリーを濾過し、得られたケーキ状物質を純水で繰り返し洗浄して、前記中和反応での副生物や未反応物などを除去した。
その結果、酸化ジルコニウム水和物をZrO2換算基準で10重量%含み、残余物が水分であるケーキ状物質860kgを得た。
【0049】
[調製例2]
珪酸液の調製
市販の水ガラス10kg(旭硝子エスアイテック(株)製)を純水38kgで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、pHが3で、SiO2濃度が4重量%の珪酸液9kgを調製した。その後、この珪酸液10768gと純水14860gを混合し、2重量%の珪酸液25628gを調製した。
【0050】
水分散液の調製
[実施例1]
調製例1で調製された酸化ジルコニウム水和物を含むケーキ状物質5416gに純水45800gを加え、さらに攪拌しながら水酸化カリウム(関東化学(株)製)を85重量%含む水酸化カリウム1024gを添加してアルカリ性にした後、過酸化水素(林純薬工業(株)製)を35重量%含む過酸化水素水10248gを添加した。
さらに、この混合水溶液を攪拌しながら1時間、放置し、前記酸化ジルコニウム水和物を解膠して水溶液中に溶解させた。次いで、純水を冷凍して得られた氷水39991gを加えて、発熱反応によって温度が上昇した前記水溶液を30℃以下の温度に冷却した。これにより、ZrO2換算基準でジルコニウム成分を0.5重量%含み、pHが約11の混合水溶液102400g(以下、実施例調製液1Aという)を得た。
【0051】
平均粒子径12nmのシリカ微粒子を30重量%含むシリカゾル3336g(触媒化成工業(株)製 SI-30)に純水47900gを加えて十分に撹拌し、シリカ微粒子濃度2重量%のシリカゾル51236gを得た。
次に、前記シリカゾルを90℃に加熱し、これを撹拌しながら、これに調製例2で調製された珪酸液の水溶液12814gと前記実施例調製液1A51200gを10 時間かけてゆっくりと添加した。これにより、pHが約11の混合水溶液115250g(以下、実施例調製液1B-(1)という)を得た。
次いで、前記実施例調製液1B-(1)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液117250g(以下、実施例調製液1C-(1)という)を得た。
【0052】
さらに、前記実施例調製液1C-(1)を90℃に加熱し、これを撹拌しながら、これに調製例2で調製された珪酸液の水溶液12814gと前記実施例調製液1A51200gを 10 時間かけてゆっくりと添加した。これにより、pHが約11の混合水溶液181264g(以下、実施例調製液1B-(2)という)を得た。
次に、前記実施例調製液1B-(2)を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)で処理して脱アルカリした。これにより、pHが約9.5の混合水溶液182264g(以下、実施例調製液1C-(2)という)を得た。
【0053】
次いで、前記実施例調製液1C-(2)100200gをステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れ、165℃の温度で18時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群の固形分を含む混合水溶液 99750g(以下、実施例調製液1Dという)を得た。
【0054】
このようにして得られた前記実施例調製液1D中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮ったところ、図1に示す通りであった。
この結果、前記無機酸化物微粒子群は、前記複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状形状を有していることがわかった。
【0055】
さらに、前記無機酸化物微粒子群のサンプルをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定したところ、共に結晶性ピークは認められず、非晶質の無機酸化物微粒子群であることがわかった。これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析したところ、該被覆物質はジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物であることがわかった。
なお、比較を容易にするため、これらの測定結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2および比較例1]
実施例1で前記実施例調製液1C-(2)を調製した方法と同じ方法で、調製液2C-(2) 15000gを調製した。
次いで、前記調製液2C-(2)の中から4800gずつを取り出し、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ90℃、110℃、300℃の温度で18時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、それぞれ比較例調製液1D、実施例調製液2D-(1)および実施例調製液2D-(2)という)を得た。
【0057】
このようにして得られた比較例調製液1D、実施例調製液2D-(1)および実施例調製液2D-(2)の中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮った無機酸化物微粒子群の形状を観察した。さらに、前記比較例調製液1D、実施例調製液2D-(1)および実施例調製液2D-(2)の中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、実施例1の場合と同様に、これらをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定し、得られた無機酸化物微粒子群が非晶質であるかどうかを調べた。また、実施例1の場合と同様に、これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析して、該被覆物質中にジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物が存在するかどうかを調べた。その結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3および比較例2]
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液2A98kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液と前記調製液2Aを以下に示す割合にて、実施例1と同様な方法で、90℃に加熱されたシリカゾル13480g中に2回に分けて添加すると共に、脱アルカリ処理を行った。なお、下記のモル比は、前記珪酸液中に含まれる珪素成分をSiO2で表し、さらに前記水溶液中に含まれるジルコニウム成分をZrO2で表したときのものを示す。
【0059】
珪酸液(g) 調製液2A(g) モル比(SiO2/ZrO2
混合水溶液1 10784.0 43136.0 2/1
混合水溶液2 5055.0 20200.0 2/1
混合水溶液3 8087.5 32350.0 2/1
混合水溶液4 337.0 1348.0 2/1
【0060】
次いで、前記混合水溶液1〜4(すなわち、それぞれ比較例調製液2C-(1)、実施例調製液3C-(1)、実施例調製液3C-(2)および比較例調製液2C-(2)である。)から2000gずつを取り出し、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れ、それぞれ160℃の温度で16時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、それぞれ比較例調製液2D-(1)、実施例調製液3D-(1)、実施例調製液3D-(2)および比較例調製液2D-(2)という)を得た。
【0061】
このようにして得られた比較例調製液2D-(1)、実施例調製液3D-(1)、実施例調製液3D-(2)および比較例調製液2D-(2)の中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮った無機酸化物微粒子群の形状を観察した。さらに、前記比較例調製液2D-(1)、実施例調製液3D-(1)、実施例調製液3D-(2)および比較例調製液2D-(2)の中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、実施例1の場合と同様に、これらをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定し、得られた無機酸化物微粒子群が非晶質であるかどうかを調べた。また、実施例1の場合と同様に、これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析して、該被覆物質中にジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物が存在するかどうかを調べた。その結果を表1に示す。
【0062】
[実施例4および比較例3]
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液3A60.0kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液6740gと前記調製液3A26960gを、実施例1と同様な方法で、50℃および80℃に加熱されたシリカゾル13480g中に2回に分けて添加すると共に、脱アルカリ処理を行った。
次いで、得られた混合水溶液(すなわち、それぞれ比較例調製液3Cおよび実施例調製液4Cである。)を、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ160℃の温度で16時間、水熱処理を行った。これにより、表面被覆された無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、それぞれ比較例調製液3Dおよび実施例調製液4Dという)を得た。
【0063】
このようにして得られた比較例調製液3Dおよび実施例調製液4Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮った無機酸化物微粒子群の形状を観察した。さらに、前記比較例調製液3Dおよび実施例調製液4Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、実施例1の場合と同様に、これらをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定し、得られた無機酸化物微粒子群が非晶質であるかどうかを調べた。また、実施例1の場合と同様に、これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析して、該被覆物質中にジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物が存在するかどうかを調べた。その結果を表1に示す。
【0064】
[比較例4]
実施例1で前記実施例調製液1Aを調製した方法と同じ方法で、調製液4A28kgを調製した。
次に、調製例2で調製された珪酸液6740gと前記調製液4A26960gを、90℃に加熱されたシリカゾル13480g中に1回で添加し、脱アルカリ処理を行った。
次いで、得られた混合水溶液(すなわち、比較例調製液4Cである。)を、ステンレススチール製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業(株)製)の中に入れて、それぞれ160℃の温度で16時間、水熱処理を行った。これにより、無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合水溶液(以下、比較例調製液4Dという)を得た。
【0065】
このようにして得られた比較例調製液4Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮った無機酸化物微粒子群の形状を観察した。さらに、前記比較例調製液4Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、実施例1の場合と同様に、これらをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定し、得られた無機酸化物微粒子群が非晶質であるかどうかを調べた。また、実施例1の場合と同様に、これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析して、該被覆物質中にジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物が存在するかどうかを調べた。その結果を表1に示す。
【0066】
[比較例5]
平均粒子径17nmのシリカ微粒子をSiO2基準で10重量%含むシリカゾル(触媒化成工業(株)製、カタロイドS−20L)を蒸留水で希釈して、3重量%のシリカ微粒子を含むシリカゾル1867gを得た。これに、濃度3重量%のNaOH水溶液12gと、ジルコニウム成分をZrO2基準で4重量%含む炭酸ジルコニルアンモニウム水溶液407g(第一稀元素化学工業(株)製、ジルコゾールAC−7)を添加した後、15分間攪拌してこれらの混合スラリー液(以下、比較例調製液5Dという)2286gを調製した。
【0067】
このようにして得られた比較例調製液5Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、これを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて倍率25万倍の電子顕微鏡写真を撮った無機酸化物微粒子群の形状を観察した。さらに、前記比較例調製液5Dの中から無機酸化物微粒子群のサンプルを取り出し、実施例1の場合と同様に、これらをX線回折装置(RINT-1400、X線回折法)でX線回折ピークを測定し、得られた無機酸化物微粒子群が非晶質であるかどうかを調べた。また、実施例1の場合と同様に、これらのサンプルを電解放出型透過電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-TEM)を用いて、前記被覆物質(シリカ系微粒子間に延びた帯状物質を選択)の組成を測定・分析して、該被覆物質中にジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物が存在するかどうかを調べた。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
上記の表1において、○印は、その大部分がジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物になっており、△印は、その一部分が前記複合酸化物になっており、また×印は、その殆どが前記複合酸化物になっていないことを意味する。
【0070】
[実施例5]
実施例1で前記実施例調製液1Dを調製した方法と同じ方法で、調製液5D12kgを調製した。
次に、前記調製液5Dを限外濾過膜装置(旭化成ケミカルズ(株)製、マイクローザUF)にかけて、該調製液中に含まれる水をメタノール(有機溶媒)に溶媒置換した。その具体的な方法を述べれば、以下の通りである。
(1)前記調製液5D10kgとメタノール10kgとを混合し、この混合液を限外濾過膜装置にかけて、濾過分離された濾水(水およびメタノールを含む)を系外へ排出した。この操作を連続的に行い、前記混合液の量が約10kgになった時点で、該混合液にメタノール10kgを加えて、さらに同様な操作を行った。
(2)前記混合液中に含まれる水分濃度が0.5重量%になるまで、前記の操作を繰り返し行った。
これにより、無機酸化物微粒子群からなる固形分を含む混合メタノール液(以下、実施例調製液5Dという)を得た。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1で製造した実施例粉体1A-(1)の中から無機酸化物微粒子群のサンプルを電解放出型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製 FE-SEM)を用いて電子顕微鏡写真(倍率25万倍)を撮った結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ系微粒子の表面を、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液を製造する方法であって、
(a)酸化ジルコニウム水和物を含む水溶液に、アルカリ金属の水酸化物と過酸化水素を添加して攪拌することにより、該酸化ジルコニウム水和物を解膠して溶解させた水溶液を調製する工程、
(b)平均粒子径2〜300nmのシリカ系微粒子を水に分散させたシリカゾルに、前記工程(a)で得られた水溶液と珪酸液の水溶液を撹拌しながら添加する工程、
(c)前記工程(b)で得られた水溶液を陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリする工程、および
(d)前記工程(c)で得られた水溶液を反応容器中に入れて、100〜350℃の温度で水熱処理する工程
を含むことを特徴とする鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)において酸化ジルコニウム水和物が、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウムおよびアンモニウムオキシ炭酸ジルコニウムから選ばれた1種または2種以上のジルコン酸塩の水溶液にアンモニアまたはアンモニア水を撹拌下で添加して得られる中和反応物を洗浄したものであることを特徴とする請求項1に記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)においてアルカリ金属の水酸化物が、水酸化カリウムであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)においてアルカリ金属の水酸化物(MOH)の添加量が、前記酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(MOH/ZrO2・xH2O)で1/1〜10/1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)において過酸化水素(H22)の添加量が、前記酸化ジルコニウム水和物(ZrO2・xH2O)に対して、モル比(H22/ZrO2・xH2O)で5/1〜30/1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項6】
前記工程(a)で調製される水溶液が、ZrO2換算基準で0.3〜5.0重量%のジルコニウム成分を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項7】
前記工程(b)において使用されるシリカゾルが、SiO2換算基準で0.5〜5重量%のケイ素成分を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項8】
前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液が、SiO2換算基準で0.5〜5重量%のケイ素成分を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項9】
前記工程(b)において前記ジルコニウム成分を含む水溶液の添加量が、前記シリカゾルに対して、前記ジルコニウム成分をZrO2で表し、また前記シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiO2で表したとき、モル比(SiO2/ZrO2)で1/1〜5/1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項10】
前記工程(b)において珪酸液の水溶液の添加量が、同時に添加される前記ジルコニウム成分を含む水溶液に対し、前記珪酸液中に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、また前記ジルコニウム成分をZrO2で表したとき、モル比(ZrO2/SiO2)で1/16〜1/1の範囲にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項11】
前記工程(b)において添加される珪酸液の水溶液が、水ガラスを水で希釈した後、陽イオン交換樹脂で処理して脱アルカリしたものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項12】
前記工程(b)において、前記ジルコニウム成分を含む水溶液および前記珪酸液の水溶液を添加する前に、前記シリカゾルを70〜95℃の温度に加熱しておくことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項13】
前記工程(b)における添加操作と前記工程(c)における脱アルカリ操作を複数回、繰り返して行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項14】
前記工程(c)における脱アルカリ操作を、前記水溶液のpHが7.0〜10.0の範囲になるように行うことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項15】
前記工程(d)における水熱処理を、オートクレーブ中で10〜100時間かけて行うことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項16】
前記鎖状シリカ系微粒子群が、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結させたような形状を有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液の製造方法。
【請求項17】
少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する水分散液。
【請求項18】
前記請求項17に記載の水分散液を溶媒置換工程に供して得られる、少なくともジルコニウム、ケイ素および酸素からなる複合酸化物で被覆されたシリカ系微粒子を、該シリカ系微粒子の被覆物質または該被覆物質から延びた前記複合酸化物の帯状物質を介して複数個、連結してなる鎖状シリカ系微粒子群を含有する有機溶媒分散液。

【図1】
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【公開番号】特開2008−115060(P2008−115060A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302165(P2006−302165)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】