説明

鏡面の周辺部で視野を拡大させたバックミラー。

【課題】現在用いられているバックミラーは視野が限られているため後側方に死角を生じ、後方から近づいてくる車が死角内に入ると見えなくなる。右左折、車線変更、合流時に起る事故を防ぐには、視野を拡大して死角をなくすことが必要である。
【解決手段】現在実用されているルームミラー、ドアミラー周辺部鏡面の外向き曲率を連続的に緩やかに凸に変化させて、水平方向には真横方向まで、垂直方向には上下とも20度程度まで視野を広げる。後方から接近する車輌の像は鏡面の中ほどから外側方向へ移動しつつ巾を減じるが高さは増加し続ける。追い越し車輌が真横までくると反射像は実像と重なる。こうして死角のないバックミラーが実現し、実像が目に入るまで後続車輌の接近を連続的に監視することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バックミラーの死角をなくし事故防止に役立てる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在自動車などに用いられているバックミラーは単一曲面で作られているため、像の歪は少ないが視野が限定されている。
【0003】
このため車室内のルームミラーと室外のドアミラーを併用しても横から後の方向に大きい死角が生じ、見えなくなった車輌の接近を意識しなかったため起した事故の例は極めて多い。
【0004】
死角を減少させるためバックミラーを増設することも可能であるが、多数のミラーに視線を走らせるには時間を要し、必ずしも安全性を高めることにならない。
【0005】
このため現用バックミラーの視野を拡大することにより死角を減少させることが望まれる。
【0006】
しかし現用バックミラーの機能を削ることはできない。このため視野拡大はミラー周辺部で実現することが必要となる。
【0007】
これまでの特許公開公報には、鏡面の曲率を変化させて視野を拡大したバックミラーに関するものは見当らない。ただ、三方向に視野を持つ一体化したサイドミラー:特許文献1、広い視野を持つサイドミラー:特許文献2、平面鏡および凸面鏡を一つの枠内に保持した室内用バックミラー:特許文献3、後方と後輪付近に視野の切り替え可能なサイドミラー:特許文献4などが見られた。
【特許文献1】特開 2004-2397959 アウターバックミラー〔三方向バックミラー〕
【特許文献2】特開 特表2002-540010 広い視角を有しかつ鏡像に歪の少ない自動車用バックミラー
【特許文献3】特開 平09-202182 自動車用バックミラー
【特許文献4】特開 平06-191349 死角解消バックミラー
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
後方から真横方向まで連続的にミラーの視野を拡大し、追い越していく車や合流する車を連続的に監視できるようにする。
【0009】
上下方向にもミラーの視野を広げることにより、後輪付近の障害物や後方上下方向から接近する車輌を認知できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来のバックミラー周辺部鏡面の垂直水平面内の外方向曲率を、連続的に緩やかに凸に変化させて視野を広げる。
【発明の効果】
【0011】
これまで後側方の死角に入って見えなかった接近車輌を、視野を真横方向まで拡大することによりバックミラーのみで視認可能とする。
【0012】
したがって後方から接近する車輌は横に並ぶまですべて連続的に監視できる。これが最も重要な点である。
【0013】
周辺部の曲率増加域から目に入る像は一方向に圧縮され変形する。しかし像の変形はバックミラーの連続監視機能を損なう因子とはならない。
【0014】
車の走行にしたがって背後風景の変形像はバックミラー側端から次第に中心方向に移動しつつ高さを減じ、正規視野域内に入れば巾を増して正常像となって次第に小さくなっていく。
【0015】
後方から追いついてくる車の像は、大きさを増しつつ中心部から外側に移動し、曲率変化域に入ると像の幅が減少して変形するが高さは増加を続け側端部に近づく。
【0016】
このように背後風景および後方より接近する車の像の移動方向および縮小・拡大方向が逆になるため、車両の接近を容易に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ルームミラーについては、鏡面両側縁部の水平面内曲率、下縁部の垂直面内曲率を連続的に緩やかに凸に変化させる。
【0018】
ルームミラーの水平面上の視野を左右とも真横方向まで広げる。こうすればルームミラーだけで後から接近する車両の動静を連続的に認識することが可能となる。
【0019】
ルームミラー下方への視野拡大は、後部席の状況を認知できる範囲内とする。例えば後部座席に座っている人が眠っているかどうかを、ミラーの方向を変えたり振り向いたりせずに認知できるようにする。
【0020】
運転者と後部座席にいる人が視線を合わせる機会を抑制するには、下方向への曲率変化を不連続とする、あるいは下縁部の反射率を下げるなどの方法を取ることができる。しかし互いに圧縮変形像を見るだけなので表情までは認識し難く、気にする必要性は少ない。
【0021】
ドアミラーについては、後方から真横方向まで視野を広げる。追い越し車輌が横に並んだとき車の反射像と実像とが一緒に眼に入り、方向的にも時間的にも隙間のない認識ができる。
【0022】
ドアミラー鏡面の外側方向曲率変化は、像が極端に歪まないようできるだけ緩やかにする。曲率の増加を鏡面の外側端付近に限定する必要はない。
【0023】
曲率変化特性は視野内の像の変化が最適になるよう調整、選択する。
【0024】
ドアミラーの視野は内側には拡大しない。
【0025】
ドアミラーの上下方向への視野拡大は共に20度程度程度必要である。上方拡大視野では坂を登って合流する場合に上部後方の車両を視認することができる。下方拡大視野では坂を下って合流する場合に下部後方の車両を視認することができる。
【0026】
下方向は後輪接地部分より少し前まで見えればよい。これにより左折、右折時の後部ドア付近の擦過事故を防止することが可能となる。
【0027】
ミラーの正規鏡面領域と曲率増加域で、反射光の色を少し変えておくと障害物認識を意識的に注意深く行うことを助ける。
【0028】
ドアミラーの視野拡大には、ミラーホルダーカバーとの整合を図る必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】視野を拡大した左ドアミラー正面図(A)およびX-X'線における断面図(B)
【符号の説明】
【0030】
1 左ドアミラー正規鏡面領域
2 左ドアミラー水平曲率増加域
3 左ドアミラー上方垂直曲率増加域
4 左ドアミラー下方垂直曲率増加域
5 ミラーホルダー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部鏡面の外方向曲率を連続的に緩やかに凸に変化させて視野を広げたバックミラー。

【図1】
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【公開番号】特開2006−88954(P2006−88954A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278852(P2004−278852)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(500112526)
【Fターム(参考)】