説明

長尺フィルムの連続加熱装置

【課題】塵等を含んだ汚染空気が炉内に流入することを防止でき、長尺フィルムの搬送に支障を来たさない長尺フィルムの連続加熱装置を提供する。
【解決手段】送風機3、ヒータ2、HEPAフィルター等のエアーフィルター4を有する給気手段を経由して炉1内に供給される熱風が循環し、一部の熱風が排気手段を経由して炉外へ排気され、炉本体の開口部9から搬入搬出される長尺フィルム7に対し炉内において連続加熱処理を行い、かつ熱風の循環量が排気手段を経由せずに炉外へ排気され上記給気手段の入気口側に戻される戻り系の風量と、上記給気手段の入気口側に新たに導入される入気系の風量との合計量にて構成される連続加熱装置において、上記炉内と炉外との圧力差を検出する微差圧計13を炉本体に設け、微差圧計で検出された圧力差に基づき排気手段により排気する風量を入気系の風量より少なく微調整して炉内を微正圧に維持することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に連続搬入される長尺フィルムに対し炉内の処理室において連続的に加熱処理を行う長尺フィルムの連続加熱装置に係り、特に、塵等を含んだ汚染空気が炉内の処理室に流入することを防止でき、しかも、長尺フィルムの搬送に支障を来たさない連続加熱装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド系、ポリエステル系等の長尺フィルムは、フレキシブル性を有し、容易に加工できることから、電子部品、光学部品、包装材料等の産業分野において広く用いられており、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法等の真空成膜法を適用して、長尺フィルム上に金属やその酸化物、窒化物、炭化物、有機物等の膜を形成する技術が古くから開発されている。また、近年、エレクトロニクス分野においては、利用される様々な材料で高密度化、高精細化が進み、高品質な材料が求められている。そして、長尺フィルムの種類にもよるが、長尺フィルム中には若干の水分や有機溶媒が含まれており、真空蒸着法、スパッタリング法等上述した真空成膜法を用いて金属やその酸化物等の膜を長尺フィルム上に成膜した場合、長尺フィルム中に含まれる水分や有機溶媒が長尺フィルム表面に拡散、脱離して膜質に悪影響を及ぼすことがあるため、金属やその酸化物等を成膜する前に長尺フィルムを加熱処理して有機溶媒等を除去する必要があった。また、金属やその酸化物等が成膜された後に長尺フィルムを加熱処理して金属等の結晶性を改善することもなされていた。
【0003】
ところで、長尺フィルムの連続加熱処理に使用される従来の装置として、長尺フィルムを水平に搬送させる特許文献1に記載の装置が知られており、この装置におけるフィルムの処理能力を高めた連続加熱装置として、図1に示す構造のものが開発されている。
【0004】
以下、図1を用いてこの種の連続加熱装置について説明する。
【0005】
まず、この連続加熱装置は、内部に処理室を有する炉1本体と、炉1本体に設けられ上記処理室に長尺フィルム7を連続的に搬入しかつ搬出させるための開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9と、上記炉1内に熱風を供給しかつ循環させる給気手段と、炉1内において揮発成分(例えば長尺フィルムから除かれた溶媒成分)等が飽和することを防止するため炉1外へ熱風の一部を排気させる排気手段を備えている。
【0006】
また、上記炉1内に熱風を供給しかつ循環させるための配管(すなわち上記給気手段)は、熱を発生させるためのヒータ2と、この熱を炉1内に送るための送風機(ブロアー)3と、炉1内における清浄度を保つためのHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Airfilter)等のエアーフィルター4とを有しており、上記給気手段の入気口側には炉1外のフレッシュエアーを取り込むための入気系の配管が連設され、更に、上記給気手段の入気口側には排気手段を経由せずに炉1外へ排気されかつ循環用に供される熱風を取り込むための戻り系の配管が連設されている。尚、図1中、符号5は入気系の配管に付設されてフレッシュエアーの取り込み量を調整するダンパーを示し、符号6は戻り系の配管に付設されて循環用に供される熱風量を調整するダンパーを示している。また、熱風の一部を炉1外へ排気させるための配管(すなわち上記排気手段)は、熱風を炉1外へ排気させる排気ファン14と、排気させる熱風の排気量を調整するダンパー10とを有している。
【0007】
そして、この連続加熱装置においては、上記炉1内の上部パンチングプレート12と下部パンチングプレート11とで区画された処理空間内に給気手段のエアーフィルター4を介して清浄化された熱風が循環供給され、処理空間内に搬入された長尺フィルム7が供給された熱風で加熱処理されるように構成されている。
【0008】
近年、電子機器は、極めて薄く柔軟性のあるフレキシブルフィルムを用いた配線フィルムが多くなってきており、フレキシブルフィルムに対応させた連続加熱処理においては、フレキシブルフィルムが熱により容易に変形してしまうことから、通常、低いテンション(張力)を加えてフレキシブルフィルム(長尺フィルム)を搬送させている。
【0009】
ところで、上記給気手段により炉1内へ供給される熱風の循環量は、フレッシュエアーの取り込み量(入気系の風量)と戻り系の熱風量(戻り系の風量)により決まる(すなわち、入気系の風量と戻り系の風量の合計量で決まる)が、上記排気手段による熱風の排気量が多くなるにつれて炉1内の圧力が炉1外の圧力より低くなって炉1内が負圧になり、炉1内が負圧になるに伴い長尺フィルム7の開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9から塵等を含んだ汚染空気が処理空間内に流入し、この汚染空気により長尺フィルム7に塵等が付着してしまうことがあった。
【0010】
そして、フレキシブルフィルム(長尺フィルム)に塵等が付着し、あるいは、加工された配線フィルムの金属配線回路上に塵等が付着することは、配線ショートの原因となるため品質上の問題となっていた。
【0011】
このような問題を回避するため、図1に示す連続加熱装置を用いて長尺フィルムの連続加熱を行なう場合には、上記排気手段のダンパー10を絞って排気風量を少なくし、入気風量より僅かに少ない排気風量となった条件で上記ダンパー10を固定(すなわち、排気風量を一定値に固定)し、長尺フィルムの連続加熱を行なう方法が採られている。
【0012】
しかし、上記ダンパー10を絞って排気風量を固定させる方法を採ったとしても、長尺フィルムの連続加熱処理を継続して行なった場合、炉1外の圧力(例えば、連続加熱装置が設置された室内の圧力)が経時的に変動してしまうことがあり、いつのまにか炉1内の圧力が炉1外の圧力に対して負圧状態になり、炉1外(連続加熱装置が設置された室内)の塵等を含んだ汚染空気が上記開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9から流入してしまう問題が存在した。
【0013】
この場合、上記ダンパー10を絞って排気風量を大幅に下げ、入気風量を大きくする方法が考えられるが、上記開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9を介して炉1内から炉1外(室内)へ流れ出る風量が多くなってしまい、その風量に起因して、開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9の近傍を搬送される長尺フィルムがバタバタと揺れ動いてしまい、フィルムへ強いテンション(張力)を加えないと安定したフィルム搬送が困難となる別の問題が存在した。
【0014】
そして、加熱されている状態の長尺フィルムに対し強いテンション(張力)を加えた場合、長尺フィルムが容易に伸びてフィルム内部に応力が残ってしまい、最終製品にしたときにフィルムが反るという新たな問題を発生させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−18970号公報
【特許文献2】特開2008−185388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、塵等を含んだ汚染空気が炉内の処理室に流入することを防止でき、しかも、長尺フィルムの搬送に支障を来たさない連続加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、請求項1に係る発明は、
送風機とヒータおよびエアーフィルターを有する給気手段を経由して炉内に供給される熱風が循環し、一部の熱風が排気手段を経由して炉内から炉外へ排気されると共に、炉本体のフィルム搬入口から炉内に搬入されフィルム搬出口から炉外へ搬出される長尺フィルムに対し炉内の処理室において熱風による連続加熱処理を行い、かつ、上記熱風の循環量が、上記排気手段を経由せずに炉内から炉外へ排気されて上記給気手段の入気口側に戻される戻り系の風量と、炉外から上記給気手段の入気口側に新たに導入される入気系の風量との合計量にて構成される長尺フィルムの連続加熱装置において、
上記炉内と炉外との圧力差を検出する微差圧計を炉本体に設け、微差圧計で検出された圧力差に基づき上記排気手段により排気する風量を入気系の風量より少なく微調整して、炉内を微正圧に維持することを特徴とする。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る長尺フィルムの連続加熱装置において、
上記排気手段が、回転速度可変モータで駆動する排気ファンと上記モータの回転速度を制御するインバーター制御装置とで構成されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る長尺フィルムの連続加熱装置において、
炉内の上記処理室が、炉内の上方側に設けられた上部パンチングプレートと炉内の下方側に設けられた下部パンチングプレートとで区画された処理空間を有し、上記上部パンチングプレートを介して処理空間内に熱風が導入されかつ上記下部パンチングプレートを介して処理空間内の熱風が炉外へ排気されると共に、処理空間内の上部パンチングプレートと下部パンチングプレートの各近傍にそれぞれ一列に配置された複数の上部ローラ群と下部ローラ群を交互に経由させて上記長尺フィルムが処理空間内を搬送されるようになっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る長尺フィルムの連続加熱装置によれば、
炉内と炉外との圧力差を検出する微差圧計を炉本体に設け、微差圧計で検出された圧力差に基づき上記排気手段により排気する風量を入気系の風量より少なく微調整して炉内を微正圧に維持している。
【0020】
従って、炉内が微正圧に維持されているため、炉外(例えば連続加熱装置が設置された室内)の塵等を含んだ汚染空気がフィルム搬入口や搬出口を構成する開口部から炉内に流入してしまうことがなく、かつ、上記微正圧に起因して炉外へ極少量流れ出る風により上記開口部近傍を搬送される長尺フィルムがバタバタと揺れ動いてしまうこともないため、フィルムへ強いテンション(張力)を加えることなく安定したフィルムの搬送が可能となり、更に、フィルムに強いテンション(張力)を加える必要がないことからフィルム内部に応力が残ることもないため、最終製品にしたときにフィルムが反ってしまうといった問題も解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】処理能力を高めた従来例に係る長尺フィルムの連続加熱装置の説明図。
【図2】本発明に係る長尺フィルムの連続加熱装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
この実施の形態に係る長尺フィルムの連続加熱装置は、図2に示すように、内部に処理室を有する炉1本体と、炉1本体に設けられ上記処理室に長尺フィルム7を連続的に搬入しかつ搬出させるための開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9と、上記炉1内に熱風を供給しかつ循環させるための給気手段と、炉1内において揮発成分(例えば、加熱処理により長尺フィルムから除かれた有機溶媒成分)等が飽和することを防止するため炉1外へ熱風の一部を排気させる排気手段と、炉1本体に設けられ上記炉1内と炉1外(例えば、この装置が設置された室内)との圧力差を検出する微差圧計13とを備えている。
【0024】
まず、上記炉1内に熱風を供給しかつ循環させるための図示外の配管(すなわち上記給気手段)は、熱を発生させるためのヒータ2と、この熱を炉1内に送るための送風機(ブロアー)3と、炉1内における清浄度を保つためのHEPAフィルター等のエアーフィルター4とを有しており、上記給気手段の入気口側には炉1外のフレッシュエアーを取り込むための入気系の配管が連設され、更に、上記給気手段の入気口側には排気手段を経由せずに炉1外へ排気されかつ循環用に供される熱風を取り込むための戻り系の配管が連設されている。
【0025】
また、熱風の一部を炉1外へ排気させる図示外の配管(すなわち上記排気手段)は、回転速度可変モータにより駆動されかつ熱風を炉1外へ排気させるための排気ファン14と、上記モータの回転速度を制御するためのインバーター制御装置15とで構成され、上述した微差圧計13で検出された炉1内と炉1外との圧力差信号がインバーター制御装置15に入力され、この圧力差信号に基づきインバーター制御装置15が作動して上記モータの回転速度を制御し、これにより排気ファン14の排気風量が入気系の風量より少なくなるように微調整されて、炉1内を微正圧に維持するように構成されている。尚、上述の微差圧計13として、例えば、特許文献2に記載された微差圧計が挙げられる。
【0026】
また、炉1内の上記処理室は、炉内の上方側に設けられた上部パンチングプレート12と炉内の下方側に設けられた下部パンチングプレート11とで区画された処理空間を有しており、上記上部パンチングプレート12を介して処理空間内に熱風が均一に導入されると共に、上記下部パンチングプレート11を介して処理空間内の熱風が炉外へ均一に排気されるようになっている。
【0027】
更に、処理空間内の上部パンチングプレート12と下部パンチングプレート11の各近傍には、図2に示すように複数の上部ローラ8群と下部ローラ8群がそれぞれ一列に配置され、かつ、上記開口部(フィルム搬入口)9から処理空間内に搬入された長尺フィルム7が上部ローラ8群と下部ローラ8群を交互に経由して上記開口部(フィルム搬出口)9から処理空間外へ搬出されるように構成されており、上記給気手段のエアーフィルター4を介し処理空間内に供給される清浄化された熱風により長尺フィルム7の連続加熱処理が行われるようになっている。
【0028】
この場合、この実施の形態に係る連続加熱装置においては、上部ローラ8群と下部ローラ8群を交互に経由して長尺フィルム7が処理空間内を蛇行搬送されるように構成されているため、長尺フィルムが処理空間内を水平に搬送される特許文献1に記載の装置と比較してフィルムの処理能力が高められる利点を有している。
【0029】
尚、炉1内における清浄度を保つための上記エアーフィルター4としては、広く利用されている従来のフィルターから目的の清浄度に応じて適宜選択され、例えば、ULPAフィルター(Ultra Low Penetoration Airfilter)、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Airfilter)、MEPA(Medium Efficiency Particulate Airfilter)、および、特殊フィルター(高温雰囲気中で使用可能なULPA・HEPAフィルターや、プレフィルター・HEPA・中性能フィルター等)等が挙げられる。
【0030】
また、図2中、符号5は入気系の配管に付設されてフレッシュエアーの取り込み量を調整するダンパー、符号6は戻り系の配管に付設されて循環用に供される熱風量を調整するダンパーを示しており、この実施の形態に係る装置を用いて長尺フィルム7の連続加熱を行う場合には、各ダンパー5、6を絞り込んで上記取り込み量(すなわち、入気系の風量)と循環用に供される熱風量(すなわち、戻り系の風量)が固定されている。
【0031】
そして、この実施の形態に係る連続加熱装置によれば、上記炉1内と炉1外との圧力差を検出する微差圧計13が設けられており、この微差圧計13で検出された炉1内と炉1外との圧力差信号がインバーター制御装置15に入力され、この圧力差信号に基づきインバーター制御装置15が作動して排気ファン14の排気風量を入気系の風量(固定値)より少なくなるように微調整し、これにより炉1内を微正圧に維持している。
【0032】
従って、炉1外の塵等を含んだ汚染空気がフィルム搬入口や搬出口を構成する開口部9から炉1内に流入してしまうことがなく、かつ、上記微正圧に起因して炉1外へ極少量流れ出る風により上記開口部9近傍を搬送される長尺フィルム7がバタバタと揺れ動いてしまうこともないため、フィルム7へ強いテンション(張力)を加えることなく安定したフィルム7の搬送が可能となり、更に、フィルム7に強いテンション(張力)を加える必要がないことからフィルム7内部に応力が残ることもないため、最終製品にしたときにフィルム7が反ってしまうといった問題も解消される利点を有している。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0034】
この実施例に係る長尺フィルムの連続加熱装置は、図2に示すように、内部に処理室を有する炉1本体と、炉1本体に設けられ上記処理室に長尺フィルム7を連続的に搬入しかつ搬出させるための開口部(フィルム搬入口とフィルム搬出口)9と、炉1内に200℃の熱風を供給しかつ循環させるための給気手段と、炉1内において揮発成分等が飽和することを防止するため炉1外へ熱風の一部を排気させる排気手段と、炉1本体の壁に設置され上記炉1内と炉1外(例えば、実施例に係る装置が設置された室内)との圧力差を検出する微差圧計13とを備えている。
【0035】
まず、上記炉1内に200℃の熱風を供給しかつ循環させるための図示外の配管(すなわち上記給気手段)は、熱を発生させる30kWのヒータ2と、200℃の熱風を炉1内に送る11kWの送風機(ブロアー)3と、炉1内における清浄度を保つためのHEPAフィルター等のエアーフィルター4とを有しており、上記給気手段の入気口側には炉1外のフレッシュエアーを取り込む(炉1内において揮発成分等が飽和することを防止できる)ための入気系の配管が連設され、更に、上記給気手段の入気口側には排気手段を経由せずに炉1外へ排気されかつ循環用に供される熱風を取り込むための戻り系の配管が連設されている。
【0036】
また、熱風の一部を炉1外へ排気させる図示外の配管(すなわち上記排気手段)は、回転速度可変モータにより駆動されかつ熱風を炉1外へ排気させるための排気ファン14と、上記モータの回転速度を制御するためのインバーター制御装置15とで構成され、上述した微差圧計13で検出された炉1内と炉1外との圧力差信号がインバーター制御装置15に入力されるようになっている。そして、この圧力差信号に基づきインバーター制御装置15が作動して上記モータの回転速度を制御し、これにより排気ファン14の排気風量が以下に示す入気系の風量(4m3/min)より少なくなるように微調整(4m3/min−α)されて、炉1内を微正圧(炉1内の圧力が炉1外に較べて例えば10Pa高い)に維持するように構成されている。尚、この実施例では、上記微差圧計13として「山本電気工業(株)社製のデジタル微差圧計 EMD−8」が適用されている。
【0037】
また、炉1内の上記処理室は、炉内の上方側に設けられた上部パンチングプレート12と炉内の下方側に設けられた下部パンチングプレート11とで区画された処理空間を有しており、上記上部パンチングプレート12を介して処理空間内に熱風が均一に導入されると共に、上記下部パンチングプレート11を介して処理空間内の熱風が炉外へ均一に排気されるようになっている。
【0038】
更に、処理空間内の上部パンチングプレート12と下部パンチングプレート11の各近傍には、図2に示すように複数の上部ローラ8群と下部ローラ8群がそれぞれ一列に配置され、かつ、上記開口部(フィルム搬入口)9から処理空間内に搬入された長尺フィルム7が上部ローラ8群と下部ローラ8群を交互に経由して上記開口部(フィルム搬出口)9から処理空間外へ搬出されるように構成されており、上記給気手段のHEPAフィルター等のエアーフィルター4を介し処理空間内に供給される清浄化された熱風により長尺フィルム7の連続加熱処理が行われるようになっている。
【0039】
尚、図2中、符号5は入気系の配管に付設されてフレッシュエアーの取り込み量を調整するダンパー、符号6は戻り系の配管に付設されて循環用に供される熱風量を調整するダンパーを示しており、実施例に係る装置を用いて長尺フィルム7の連続加熱を行う場合、各ダンパー5、6を絞り込んで上記取り込み量(すなわち、入気系の風量)を4m3/min(熱風循環量の20%に相当する)に固定すると共に、循環用に供される熱風量(すなわち、戻り系の風量)を16m3/min(熱風循環量の80%に相当する)に固定し、これにより熱風の循環量が20m3/minに設定されている。
【0040】
そして、この実施例に係る連続加熱装置によれば、上記炉1内と炉1外との圧力差を検出する微差圧計13が設けられており、この微差圧計13で検出された炉1内と炉1外との圧力差信号がインバーター制御装置15に入力され、この圧力差信号に基づきインバーター制御装置15が作動して排気ファン14の排気風量を入気系の風量(4m3/min)より少なくなるように微調整(4m3/min−α)し、これにより炉1内を微正圧(炉1内の圧力が炉1外の圧力より10Pa高い)に維持している。
【0041】
従って、炉1外の塵等を含んだ汚染空気がフィルム搬入口や搬出口を構成する開口部9から炉1内に流入してしまうことがなく、かつ、上記微正圧(炉1内の圧力が炉1外の圧力より10Pa高い)に起因して炉1外へ極少量流れ出る風により上記開口部9近傍を搬送される長尺フィルム7がバタバタと揺れ動いてしまうこともないため、フィルム7へ強いテンション(張力)を加えることなく安定したフィルム7の搬送が可能となり、更に、フィルム7に強いテンション(張力)を加える必要がないことからフィルム7内部に応力が残ることもないため、最終製品にしたときにフィルム7が反ってしまうといった問題も解消される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る連続加熱装置によれば、塵等を含んだ汚染空気がフィルム搬入口や搬出口を構成する開口部から炉内に流入してしまうことがなく、かつ、上記開口部近傍を搬送される長尺フィルムがバタバタと揺れ動いてしまうこともないためフィルムへ強いテンション(張力)を加えることなく安定したフィルムの搬送が可能となる。従って、樹脂フィルム、エンプラフィルム等の熱処理に利用される産業上の利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0043】
1 炉
2 ヒータ
3 送風機(ブロアー)
4 エアーフィルター
5 入気系のダンパー
6 戻りのダンパー
7 長尺フィルム
8 ローラ群
9 開口部
10 排気系のダンパー
11 下部パンチングプレート
12 上部パンチングプレート
13 微差圧計
14 排気ファン
15 インバーター制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機とヒータおよびエアーフィルターを有する給気手段を経由して炉内に供給される熱風が循環し、一部の熱風が排気手段を経由して炉内から炉外へ排気されると共に、炉本体のフィルム搬入口から炉内に搬入されフィルム搬出口から炉外へ搬出される長尺フィルムに対し炉内の処理室において熱風による連続加熱処理を行い、かつ、上記熱風の循環量が、上記排気手段を経由せずに炉内から炉外へ排気されて上記給気手段の入気口側に戻される戻り系の風量と、炉外から上記給気手段の入気口側に新たに導入される入気系の風量との合計量にて構成される長尺フィルムの連続加熱装置において、
上記炉内と炉外との圧力差を検出する微差圧計を炉本体に設け、微差圧計で検出された圧力差に基づき上記排気手段により排気する風量を入気系の風量より少なく微調整して、炉内を微正圧に維持することを特徴とする長尺フィルムの連続加熱装置。
【請求項2】
上記排気手段が、回転速度可変モータで駆動する排気ファンと上記モータの回転速度を制御するインバーター制御装置とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の長尺フィルムの連続加熱装置。
【請求項3】
炉内の上記処理室が、炉内の上方側に設けられた上部パンチングプレートと炉内の下方側に設けられた下部パンチングプレートとで区画された処理空間を有し、上記上部パンチングプレートを介して処理空間内に熱風が導入されかつ上記下部パンチングプレートを介して処理空間内の熱風が炉外へ排気されると共に、処理空間内の上部パンチングプレートと下部パンチングプレートの各近傍にそれぞれ一列に配置された複数の上部ローラ群と下部ローラ群を交互に経由させて上記長尺フィルムが処理空間内を搬送されるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の長尺フィルムの連続加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−240370(P2012−240370A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114880(P2011−114880)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】