説明

長尺体用リール

【課題】被巻回物である長尺状体に応じた適正な巻回用の曲率半径を維持しつつ、コンパクトに被巻回物をドラムに巻回することができる長尺体用リールの提供を図る。
【解決手段】支持体と、支持体に回動可能に支持されたドラム11とを備える。ドラム11は主巻回部17と副巻回部18とを備える。被巻回物41は、主巻回部17に巻回されると共に、巻き始め又は巻き終わりの端部寄り部分が副巻回部18に巻回される。副巻回部18は、その基端側が主巻回部17に導通するものであると共に、径の最も大きな最大径部23を備える。最大径部23は主巻回部17の径よりも大きく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、長尺体用リール、特に電源コード、さらに詳しくは車両充電用のバッテリーコードを巻回するのに適する長尺体用リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺体用リール、特に電源コードの長尺体用リールとして、先行技術文献に示すものが知られている。
【0003】
特許文献1は、アダプタコードのリールを開示する。このリールは、ACアダプタが装着されるアダプタ装着部と、アダプタ装着部の周囲に配設され、コードが巻回されるリール部とが一体に形成されている。ACアダプタ付コードは、アダプタ装着部に側方からACアダプタを装着した後、リール部にコードを巻回すると共にEMC対策用のフェライトコアを係止するようにして、アダプタコードリールに収容される。 このACアダプタは比較的小電圧のものを想定しているため、コードの径も小さく、EMC対策用のフェライトコアも比較的小さい。そのため、EMC対策用のフェライトコアを係止するに際しても、コードを自由に曲げることができるものであり、リールの設計において、コードの曲率半径を考慮する必要は実質的にない。
【0004】
特許文献2は、いわゆる電工ドラムと呼ばれる電源コード用のリールであり、ドラムの外周に電源コードを巻回すると共に、ドラム端面に他のコードに対する電気接続部を有する。このドラムは、ドラムの両端面にフランジを有するもので、両フランジによって挟まれたドラムの外周面が巻回部となり、この巻回部に電源コードが巻回される。この種の電工ドラムにあっては、リールの設計において、コードの曲率半径を考慮してドラムの外周面の径を決定しているが、その形状は、全周に渡って均一な径を有する円筒形にしているに止まり、それ以上の特別な形状、構造を有するものではない。
【0005】
特許文献3は、電気自動車充電用コードセットを開示するもので、このセットは、一対の端子部を有し漏電時に一対の端子部間を遮断する遮断装置が収納された筐体と、建物の壁面に設置されるアウトレットに接続されるプラグが一端に設けられ他端が遮断装置の一方の端子部に接続される第1のコードと、電気自動車のインレットに接続されるコネクタが一端に設けられ他端が遮断装置の他方の端子部に接続される第2のコードとを備えるものである。この筐体には、第2のコードを出し入れ自在に収納する収納部と、地面に安定して置くためのスタンドと、持ち運び用の把手とが設けられ、収納部は、筐体に回転自在に取り付けられるとともに回転軸に直交する面内における外周面に第2のコードが巻かれるドラムを備えるものであるが、その形状は、通常の長尺体用リールと同様であり、それ以上の特別な形状、構造を具体的に開示するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−165216号公報
【特許文献2】特開2010−73600号公報
【特許文献3】特開2010−52861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術背景のもと、本願発明者が車両充電用のバッテリーコードを巻回するのに適する長尺体用リールの開発に取り組んだ際、最も困難な解決課題は、長尺体用リールのコンパクト化と、コード巻回時の曲率半径の維持との両立であった。電源コードにあっては、コードの直径の約10倍の曲率半径をもって、コードを巻回することが望ましいとされる。これ以上小さくなると、断線のおそれが生じたりするためである。そのため、コードが巻回されるコードリールのドラムの外周面は、コードの直径の約10倍の半径を有する円筒形に設計される。ところが、車両充電用のバッテリーコードにあっては、一端にコネクタを備え、他端に差し込みプラグと機能付加部材を備える。このコネクタは、車両充電用のバッテリーに接続されるものであるが、単なる差し込みプラグのような接点の差し込みによる嵌合だけではなく、別途抜け止め用の係止部を備えた20cm程度の全長を有する大型のものである。また差し込みプラグ側の機能付加部材についても、20cm程度の大型のものが用いられている。このように両端に大きな部材を有するコードを、適正な巻回用の曲率半径を維持しつつ、コンパクトに巻回しようとすると、従来の単なる円筒形状のドラムによる巻回部では、無理が生じることが判明した。
【0008】
上記の事情に鑑み、本願発明は、被巻回物である長尺状体に応じた適正な巻回用の曲率半径を維持しつつ、コンパクトに被巻回物をドラムに巻回することができる長尺体用リールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、支持体と、前記支持体に回動可能に支持されたドラムとを備え、前記ドラムに長尺状の被巻回物を巻回するようにした長尺体用リールにおいて、前記ドラムは主巻回部と副巻回部とを備え、前記被巻回物は、前記主巻回部に巻回されると共に、前記主巻回部への巻き始め又は巻き終わりの端部寄り部分が副巻回部に巻回されるものであり、前記副巻回部は、その基端側が前記主巻回部に導通するものであると共に、前記副巻回部で径の最も大きな最大径部を備え、前記最大径部は前記主巻回部の径よりも大きいことを特徴とする長尺体用リールを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、主巻回部と副巻回部を備え、副巻回部は、その基端側が前記主巻回部に導通するものであると共に、前記副巻回部で径の最も大きな最大径部を備え、前記最大径部は前記主巻回部の径よりも大きいことによって、被巻回物がその先端にコネクタなどの大きなものを有する場合でもあって、被巻回物である長尺状体に応じた適正な巻回用の曲率半径を維持しつつ、コンパクトに被巻回物をドラムに巻回することができる長尺体用リールを提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態に係るコードリールのドラムを前上方から見た斜視図である。
【図2】同ドラムを前左方から見た斜視図である。
【図3】同ドラムを後左方から見た斜視図である。
【図4】同コードリールの使用状態の説明図図ある。
【図5】同コードリールの構造の説明図図ある。
【図6】(A)は同コードリールのドラムの主巻回部及び副巻回部の径の変化を示すグラフであり、(B)は同コードリールのドラムの後面フランジから前面フランジまでの距離の変化を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係るコードリールのドラムを前上方から見た斜視図である。
【図8】同ドラムを前左方から見た斜視図である。
【図9】同ドラムを後左方から見た斜視図である。
【図10】(A)は同コードリールのドラムの主巻回部及び副巻回部の径の変化を示すグラフであり、(B)は同コードリールのドラムの後面フランジから前面フランジ及び境界壁までの距離の変化を示すグラフである。
【図11】同コードリールのドラムと第1の実施の形態に係るコネクタの正面図である。
【図12】同コードリールのドラムと第2の実施の形態に係るコネクタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明するが、まず図1〜図6を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0013】
(コードリール10の使用方法の概要)
この実施の形態に係る長尺体用リールは、図1〜図6に示すように、電源コード41を巻回するためのコードリール10である(なお、図1〜図3では電源コード41は、一部分のみを図示して他の大部分の図示を省略した)。この電源コードは、種々の電源コードを用いることができるが、この例では図4に示すように、電気自動車やハイブリッドカー等の車両充電用のバッテリーコードを用いたものであり、基端側にプラグ46を備え、先端側にコネクタ42を備えている。また、先端寄りには漏電防止やノイズ防止、充電中表示等の通電を行なう電源コードに安全性や使い勝手向上等の種々の機能を付加するための機能付加部材45が介在している。コネクタ42は、車両の充電用端子62に接続される接続端子43を先端に有すると共に、接続に際して、不用意に外れることを防止するために、係止部44を備える。この係止部44は、充電用端子62側に設けられた被係止部(図示せず)に係止することで、その接続が外れることを防止している。充電に際しては、コードリール10から電源コード41を繰り出して、プラグ46を設置電源端子63に接続し、接続端子43を充電用端子62に接続する。充電が終わると、コードリール10に電源コード41を巻き取って、車両61に積み込むか、設置電源端子63付近に置いておく。この巻取りに際しては、最初に基端側のコネクタ42をコードリール10にセットし、ドラム11に電源コード41を巻取り、先端のプラグ46まで巻き取るものである。
【0014】
(支持体51について)
このコードリール10は、図5に示すように、支持体51と、支持体51に回動可能に支持されたドラム11とを備える。支持体51は、電工ドラムで多用されている金属パイプ製の簡単な脚でもよいが、この例では、防水性や外観を考慮して、ドラム11を全体を収納し得るケースを採用している。このケースは、ケース本体52と、ケース本体52にヒンジによって開閉可能に取り付けられた蓋体53とを備える。ケース本体52と蓋体53とは、それぞれに設けられた止め金具とを係止することによって、閉蓋状態で止めることができる。ドラム11は、ケース本体52に設けられた中心軸25に回動可能に支持されている。
【0015】
(ドラム11について)
ドラム11は、図1〜図3及び図5に示すように、円筒形のドラム本体12を備え、その中心軸25において、中心軸25によって回動可能に支持されている。このドラム11の軸方向の両端面には、それぞれフランジが設けられている。具体的には、ドラム11の後面には後面フランジ16が設けられ、前面には前面フランジ13が設けられている。この例では、ケース本体52に近い側を後面とし、遠い側(蓋体53側)を前面とするが、これは便宜上の呼び名に過ぎず、絶対的な位置を特定するものではない。前面フランジ13及び後面フランジ16は、ドラム11の径方向において、ドラム本体12の径外側に伸ばされたものであり、ドラム本体12の外表面に巻回される電源コード41が、ドラム11の軸方向に外れてしまわず、適正な幅で巻回されるように、電源コード41を規制するものである。なお、本例では、ドラム11は自由回転状態で中心軸25に支持されているが、ゼンマイや電動機などの回転駆動具を備えたものとして実施し、ドラム11を強制的に回転させたり停止させたりすることもできる。
【0016】
(主巻回部17と副巻回部18の概要)
このドラム11は、主巻回部17と副巻回部18とを備える。主巻回部17は、電源コード41の大部分(少なくとも半分以上)を巻回するものであり、副巻回部18は、主巻回部17への巻き始め又は巻き終わりの電源コード41の端部寄り部分を巻回するものである。この例では、コネクタ42を備えた電源コード41の先端側が、副巻回部18に巻回されるものである。詳しくは、副巻回部18は、ドラム本体12の端面の外側にセットされ、副巻回部18がドラム11への巻き始めとなる。そして、副巻回部18から伸びるコネクタ42がドラム11の端面にセットされ、これから伸びる電源コード41が副巻回部18に巻回され、さらに主巻回部17へ導入され、主巻回部17にて複数周巻回される。電源コード41の基端側の機能付加部材45及びプラグ46が巻き終わりとなるが、機能付加部材45とプラグ46は必ずしもドラム本体12に巻き付けられてしまう必要はない。
【0017】
この主巻回部17と副巻回部18とのドラム軸方向の領域は、前面フランジ13及び後面フランジ16によって規定される。後面フランジ16は、主巻回部17の後面側を規定するものであり、従来の電工ドラムと同様、略円盤形状をなした通常のフランジとして実施されるが、断続的に設けるなど、巻回される電源コード41がドラム本体12の軸方向にずれて外れないようにするためのものであればよく、その形状は適宜変更して実施することができる。この主巻回部17の底部(すなわち、電源コード41が直接巻回される部分)はドラム本体12の外周面であり、このドラム本体12の外周面は、一定の径を有する円筒形状(場合によっては多角形筒状)のものとして実施される。図6(A)に主巻回部17と副巻回部18との径(即ち、ドラム本体12の回転の軸芯からの距離、以下同じ)の変化を示す。なお、ドラム本体12の外周面は実質的に円筒形や多角筒形であればよく、例えば、軽量化のために円筒の一部を切り欠いておくなどしてもよい。この点は、後述の副巻回部18の底部についても同様である。
【0018】
(前面フランジ13の詳細)
前面フランジ13は、1周以上を周回する周回フランジとなっているもので、この例では約1.5周している。以下、1周目を内周壁14と呼び、1周を越える部分を外周壁15と呼ぶ。内周壁14は、主巻回部17の前面側を規定するものであり、前述の後面フランジ16と内周壁14との間の領域が主巻回部17となる。そして、内周壁14と外周壁15との間の領域が副巻回部18となる。この主巻回部17の幅(ドラムの軸方向長さ)は、副巻回部18の幅と等しいかそれよりも大きい。具体的には、副巻回部18には、電源コード41の1本分程度の幅があればよいが、主巻回部17には、数本分の幅をとることが望ましく、主巻回部17には、電源コード41が幅方向に複数周巻回されると共に、ドラムの半径方向にも数段に重ねて巻回される。
【0019】
図6(B)に後面フランジ16から前面フランジ13までの距離の変化を示す。このグラフにて実線で示したように、前面フランジ13は内周壁15から外周壁16までを一連の螺旋状の壁面としてもよく、2点鎖線で示したように、内周壁15から外周壁16の導通部分で、後面フランジ16から距離を変化させたものであってもよく、いずれにしても主巻回部17と副巻回部18とが導通するものであればよい。
【0020】
この副巻回部18は、基端側が主巻回部17に導通し、先端側が出し入れ口24となる。出し入れ口24は前面フランジ13の外部に解放された開口部分であり、ドラム11の端面にセットされたコネクタ42から伸びる電源コード41は、先端の出し入れ口24から副巻回部18に導入され、副巻回部18内を約半周巻回された後、その基端から主巻回部17内に入って、主巻回部17内を複数周巻回される。この副巻回部18において、電源コード41が直接巻回される底部を副底部20と呼ぶ。この副底部20は、その基端側から先端側にかけて、基端側領域21、最大径部23、先端側領域22を備える。最大径部23は副巻回部18の基端側と先端側との間に配置されており、副底部20中、最大の径を有すると共に、主巻回部17の底部を規定するドラム本体12の外周径よりも大きい。基端側領域21は、副巻回部18の基端から最大径部23に向けて径が漸次大きくなる部分であり、先端側領域22は、最大径部23から先端側の出し入れ口24に向けて径が漸次小さくなる部分である(図6(A)参照)。このように、副巻回部18が、基端側領域21、最大径部23、先端側領域22を備える結果、次の効果を発揮する。
【0021】
(副巻回部18の作用)
コネクタ42をドラム11に配置するに際して、電源コード41を痛めないための最も好ましい方向は、ドラム本体12の接線方向にコネクタ42を配置することである。これによって、電源コード41は最も自然な形でドラム本体12に巻回される。ところが、コネクタ42の長さが大きい場合、接線方向にコネクタ42を配置すると、ドラム11の外周からコネクタ42がはみ出してしまい、最悪の場合には、ドラム11を回転させるとコネクタ42が他のものにぶつかってしまうという事態も予想される。これを防止するために、コネクタ42をフランジを含むドラム11の外周の内側か、若しくは同外周から僅かに出る程度に止めようとするとすると、コネクタ42を接線方向からドラム11の中心の方に傾けて配置する必要が生じる。ところが、コネクタ42を中心に向けて傾ければ傾けるだけ、ドラム本体12に巻回される電源コード41の曲率半径は小さくなり、小さくなればなるほど電源コード41への負担が大きくなってしまう。
【0022】
これに対して、本発明では、副底部20が最大径部23を有するため、ドラム本体12に直接巻回する場合に比して、電源コード41の曲率半径を大きくすることができ、電源コード41への負担を軽減することができる。この最大径部23は、副底部20のうちで最も大きな径を備え、また、主巻回部17の径(すなわち、ドラム本体12の外周面の径)よりも大きく設定されているため、副巻回部18に巻回される電源コード41の曲率半径は、主巻回部17に巻回される電源コード41の曲率半径と同等以上に設定することが可能になる。
【0023】
なお、基端側領域21と先端側領域22は、必ずしも連続した底部を構成する必要はなく、隙間が空いているものであってもよい。さらに言えば、内周壁14と外周壁15との間には、1つ又は2以上の最大径部23のみを有するものであってもよく、その他の部分では単なる空間としておいても、電源コード41をドラム本体12以上の曲率半径で巻回できればよい。
【0024】
(出し入れ口24)
出し入れ口24について改めて説明すると、出し入れ口24は電源コード41をドラム11の端面から導き出入れるための開口である。コネクタ42から伸びる電源コード41は、出し入れ口24を経て副巻回部18に導き入れられる。この出し入れ口24は、前面フランジ13の内周壁14と外周壁15との間が、周方向に解放されていればよいが、さらに径外方向にも開放されていることにより、電源コード41を、出し入れ口24の径外側から通過させて副底部20に配置できる。また、この例では、外周壁15の底部からの高さも、出し入れ口24付近では低くしている。従って、コネクタ42をドラム11の端面にセットした後、径外側から内周壁14と外周壁15の間に挿入することができ、極めて簡単に副巻回部18に電源コード41を導き入れることができる。特に、図から明らかなように、コネクタ42に対する保持部31と出し入れ口24との間の長さを、コネクタ42の長さと略等しくしておくことで、コネクタ42を保持部31にセットした状態で、その基端から出ていく電源コード41が出し入れ口24の副底部20に乗る状態になり、電源コード41が極めてスムーズに副巻回部18に導き入れられる。なお、この出し入れ口24における副底部20の径は、ドラム本体12の径と略等しく設定しているが、これよりも短くてもよく、逆に長くしてもよい。
【0025】
また、この例では、出し入れ口24を設けるために、前面フランジ13を、1周以上周回する、周回フランジとして実施したが、前面フランジ13を周回フランジとせずに、単なる円盤状のものとして、この円盤を切り欠くことによって出し入れ口24を形成してもよい。言い換えると、前面フランジ13を360度に満たない1周未満のものとして実施し、この360度に満たない空隙部分を出し入れ口24として実施することもできる。そして、この前面フランジ13の外側(ドラム11の軸方向の外側)に、副巻回部18を形成するための最大径部23(又は最大径部23を含む副底部20)を設けるようにしてもよい。
【0026】
(コネクタ42と保持部31)
電源コード41の先端のコネクタ42は、前述のように、車両61に対する差し込み時に外れ止めとなる係止部44を備えている。この電源コード41をドラム11の端面にセットするために、同端面には、保持部31が設けられている(図1では、この保持部31を取り外した状態で描いている)。この保持部31は、電源コード41の先端が挿入される受容部32を備え、この挿入によって、コネクタ42はドラム11の端面の定位置にセットされ、このセットされた状態で、コネクタ42の基端側の電源コード41が自然と導入される位置に前記の副巻回部18を位置させることが望ましい。具体的には受容部32は全体が略円筒形状の凹部であり、その下方にはコネクタ42の下方突起(図示せず)の形状に合致する凹溝34が設けられている。
さらに、保持部31には係止部44と係合する被係止部33を設けておき、コネクタ42の先端を受容部32に挿入する同時に、係止部44が被係止部33に係合するようにしておくことが望ましい。この例では、上記の凹溝34に合致する方向でコネクタ42を受容部32に嵌入させると、自然と、係止部44と被係止部33との位置が合致して、両者は係合状態になる。
この動作は、車両61の充電用端子62にコネクタ42を装着する動作と同じようにできるようにしておくことが操作者にとって最も楽であるため、車両61の充電用端子62と実質的に同じ形状としておくことが望ましい。
【0027】
さらに、この保持部31をドラム11に回動可能に設けることも好ましい。この回動は、ドラム11の端面に沿って動くようにしてもよく、或いは、保持部31の基端を中心に、その先端(受容部32の開口端側)がドラム11の端面に接近離反するように(同端面から浮き上がったり、沿った状態になるように)回動させてもよい。この回動は、自由状態で単に動くようにしてもよいが、バネなどの弾性部材によって、自然にセット位置に戻るようにしてもよい。逆に、常時は、セット位置から浮き上がるように、弾性体で付勢しておき、受容部32にコネクタ42の先端を挿入した後、操作者が、コネクタ42を副巻回部18に導き入れるようにしてもよい。また、操作者がコネクタ42を装着しやすい位置に、ドラム11が停止しているように、ストッパを設けておくことも望ましい。
【0028】
(ドラム11の回転)
上記のようにコネクタ42を装着した後、ドラム11を回転させて電源コード41を巻き取る。この回転は、ドラム本体12にハンドルを設けて回転させるものでもよく、回転電動機やゼンマイなどの駆動手段で回転させるようにしてもよい。電源コード41の他端には、機能付加部材45及びプラグ46が設けられている。この機能付加部材45及びプラグ46は、ドラム本体12に巻き取ることなく、その手前で回転を停止してもよく、さらに回転を続けてもよい。回転を続ける場合、機能付加部材45及びプラグ46を前面フランジ13と後面フランジ16との間に巻き取ってもよいが、出し入れ口24と同じような出し入れ部を後面フランジ16にも設けて、ドラム11の端面に機能付加部材45及び/又はプラグ46を配置してもよい。なお、巻回した電源コード41を繰り出す時には、上記と逆に行なえばよい。
上記の例では、コネクタ42を巻き始めとしたが、機能付加部材45及び/又はプラグ46を巻き始めとして実施することもできる。
【0029】
(第2の実施の形態)
次に他の実施の形態について説明する。先の例では、ドラム11の端面にコネクタ42を配置したが、この例では、ドラム11の一方の端面に設けられた後面フランジ16と、ドラム11の他方の端面に設けられた前面フランジ26との間に、コネクタ42を配置する。そして、副巻回部18も後面フランジ16と前面フランジ26との間に配置する。言い換えると、後面フランジ16と前面フランジ26との間に境界壁27を設けて、境界壁27によって主巻回部17と副巻回部18とを区画する。ここで、前面フランジ26は後面フランジ16と同様、円盤状等の一般的なフランジを採用できる。そして、副巻回部18における副底部20は、先の例と同様に、最大径部23を備えたものとする(図10(A)参照)。前面フランジ26と境界壁27は、後面フランジ16と同様、ドラム本体12の外周面よりも径外側に伸ばされた板状体として実施することができ、場合によっては、断続的に設けることも可能であることは先の例の通りである。また、境界壁27を設けずに、副底部20(或いは副底部20を含む最大径部23)を設けるだけであってもよい。なお、保持部31も後面フランジ16と前面フランジ26との間に設ければよいが省略して実施することもできる。先の第1の実施の形態では、前面フランジ13は1周以上周回するものとしていたが、この例では、前面フランジ26と境界壁27とは独立したものとして実施している(図10(B)参照)。
【0030】
また、上記の第1の実施の形態についての記載は、原則として第2の実施の形態に適用できるものであり、例えば、この第2の実施の形態にあっても、コネクタ42を巻き始めとしてもよく、機能付加部材45及び/プラグ46を巻き始めとしてもよい。巻き始めについては、この第2の実施の形態の前面フランジ26と境界壁27とを採用し、巻き終わりについては、第1の実施の形態の前面フランジ13を採用するようにしてもよい。
【0031】
(コネクタの形態)
コネクタ42については、図11に示すように、接続端子43を先端に有する先端部48と、先端部48の基端側に設けられた把持部47とを備えたものとし、把持部47と先端部48とに角度を持たせることが望ましい。具体的には、把持部47の軸方向と先端部48の軸方向との角度xを90度以上180度未満とすることが望ましく、より望ましくは110度以上160度未満として実施する。これによって、コネクタ42をドラム本体12の外周になるべく沿った位置にセットすることができる。
さらに望ましくは、図12に示すように、把持部47の基端からの電源コード41の導出部49の軸方向と、先端部48の軸方向とに角度を持たせるようにする。この角度yは90度以上180度未満とすることが望ましく、より望ましくはドラム本体125度以上170度未満とする。これらの角度は、把持部47、先端部48の長さによっても変化するが、いずれの場合にあっても、ドラム本体12を取り囲むように、把持部47、先端部48及び電源コード41を配置するようにする。これによって、電源コード41をより無理なく配置でき、コードリール11のコンパクト化に貢献することができる。
【0032】
以上、第1、第2の実施の形態では電源用コードを被巻回物としたが、被巻回物としては、これに限るものではなく、通信用コードでもよく、ホース等の電気通信関係以外の長尺体を巻回するリールとして実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 コードリール
11 ドラム
12 ドラム本体
13 前面フランジ
14 内周壁
15 外周壁
16 後面フランジ
17 主巻回部
18 副巻回部
20 副底部
21 基端側領域
22 先端側領域
23 最大径部
24 出し入れ口
25 中心軸
26 前面フランジ
27 境界壁
41 電源コード
42 コネクタ
45 機能付加部材
46 プラグ
51 支持体
61 車両
62 充電用端子
63 設置電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体に回動可能に支持されたドラムとを備え、前記ドラムに長尺状の被巻回物を巻回するようにした長尺体用リールにおいて、
前記ドラムは主巻回部と副巻回部とを備え、
前記被巻回物は、前記主巻回部に巻回されると共に、前記主巻回部への巻き始め又は巻き終わりの端部寄り部分が副巻回部に巻回されるものであり、
前記副巻回部は、その基端側が前記主巻回部に導通するものであると共に、前記副巻回部で径の最も大きな最大径部を備え、前記最大径部は前記主巻回部の径よりも大きいことを特徴とする長尺体用リール。
【請求項2】
前記被巻回物は、車両充電用のバッテリーコードであり、前記バッテリーコードは、一端側には車両に対する差し込みコネクタを備え、他端側には設置電源に対する差し込みプラグ及び機能付加部材を備え、
前記ドラムは、前記コネクタと前記差し込みプラグと前記機能付加部材のうち少なくもと1つを着脱可能に保持する保持部を、前記副巻回部の前方に備え、
前記コネクタと前記差し込みプラグと前記機能付加部材のうち少なくもと1つを、巻き始めとして前記保持部に保持させて、前記バッテリーコードを前記副巻回部から前記主巻回部へと巻き付けるようにしたことを特徴とする請求項1記載の長尺対用リール。
【請求項3】
前記ドラムは、その軸方向の両端側にフランジを備え、
前記フランジは、前記ドラムの外周面よりも径外側に伸ばされたものであり、
前記両端側のフランジのうち、少なくとも何れか一方には、前記被巻回物をドラムの端面に導き出す出し入れ口が設けられ、
前記被巻回物は、前記主巻回部に巻回されると共に、前記主巻回部への巻き始め又は巻き終わりの端部が前記出し入れ口を経て前記ドラムの端面に配置され得るものであり、
前記両側のフランジのうち、少なくとも何れか一方は、周回フランジであり、
前記周回フランジは、前記ドラムを1周以上周回するフランジ壁により構成され、
前記周回フランジが1周以上周回する部分においては、前記ドラムの軸方向に間隔を隔てて内外2つのフランジ壁が設けられ、前記2つのフランジ壁に挟まれた部分が前記副巻回部となり、
前記副巻回部は、基端側が前記主巻回部に導通し、先端側が前記出し入れ口となるものであり、
前記最大径部は、前記副巻回部の前記基端側と先端側との間に配置されており、前記副巻回部の底部の径は、前記基端側から前記最大径部に向けて漸次大きくなり、前記最大径部から前記先端側に向けて漸次小さくなることを特徴とする請求項1又は2記載の長尺体用リール。
【請求項4】
前記差し込みコネクタは前記車両に対する差し込み時に外れ止めとなる係止部を備えており、
前記保持部は、前記ドラムに回動可能に設けられており、
さらに、前記保持部は、前記コネクタの先端が挿入される受容部と、前記係止部に係止される被係止部を備え、
前記コネクタの先端が前記受容部に挿入された状態で、前記係止部と前記被係止部とが係止状態となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の長尺体用リール。
【請求項5】
前記ドラムは、その軸方向の両端側にフランジを備え、
前記両端側のフランジの間に、前記主巻回部と前記副巻回部とを区画する境界壁が設けられ、
前記フランジ及び前記境界壁は、ドラムの外周面よりも径外側に伸ばされたものであり、前記被巻回物の前記端部寄り部分が前記両側のフランジの間に配置されるものであることを特徴とする請求項1又は2記載の長尺体用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−18554(P2013−18554A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150516(P2011−150516)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(392005469)モリテックスチール株式会社 (12)
【Fターム(参考)】