説明

長尺管ワークの内面塗装用支持装置

【課題】 塗装ブース内での長尺管ワークの載せ替え作業を不要にする。
【解決手段】 ガイドレール3とワーク回転駆動用モータを備えた旋回テーブル装置1を塗装ブース5に設置する。走行キャスタ9付きの支持架台7の上に駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aを平行に設け、駆動ローラ10,10aへ回転駆動力を伝える動力伝達機構を備えた台車装置6を形成する。所要外径のリング状治具14を装着した長尺管ワーク13を、台車装置6の駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上に載置した状態で塗装ブース5へ搬入し、旋回テーブル装置1のガイドレール3上へ乗り入れさせた台車装置6の動力伝達機構を、ワーク回転駆動用モータの出力側に連結して、駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11a上に載置した長尺管ワーク13を回転させながら、塗装ガン32にて塗装させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンシャフト等の長尺管ワークの内面塗装を行う際に該長尺管ワークを支持するために用いる長尺管ワークの内面塗装用支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジェットエンジンのシャフトは、数mの長さ寸法を有する長尺管となっている。又、上記ジェットエンジンシャフトは、その内面に、耐熱塗装等の塗装を行う必要がある。
【0003】
ところで、上記ジェットエンジンシャフトのような長尺管ワークの内面の塗装を行うための手法としては、図5(イ)(ロ)に示す如く、支持台a上に横向きに載置して支持させた長尺管ワーク(鋼管)bに対し、作業者(図示せず)が、その内側の軸心位置(内面中心)にほぼ見当付けて長尺(長柄)の塗装ガンcを挿入し、該塗装ガンcを上記長尺管ワークbの長手方向へ移動させながら塗装を行うことが従来行われてきている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
又、塗装ガンからの塗料の噴霧が均一に出ない場合に起こるムラや、塗装ガンを長尺管ワークの軸心に位置させながら軸方向へ動かすことが難しいことに起因して生じる塗装ムラ等を減らすために、長尺管ワークを支持ローラ付きの台車に載せて、作業者が内部の塗装面の状態を見て、ムラ等のチェックを行いながら、上記台車に設けてある支持ローラ上にて長尺管ワークを適宜手で回転させながら繰り返し塗装を行うことも考えられている。
【0005】
なお、上記特許文献1では、鋼管等の管材の紛体塗装を行うための装置において、塗装ブース内で塗装対象となる管材としての鋼管を支持するための装置として、塗装ブースの床上に、移動台を駆動ローラを介して鋼管の長手方向に移動可能に設け、且つ上記移動台上に、鋼管の両端を支持するための4台の回転支持ローラを設けると共に、該各回転支持ローラを、鋼管の長さ及び直径に応じてローラ間隔を左右及び前後に可変させる機構を備え、更に、上記4台の回転支持ローラのうちの1台の回転支持ローラに、移動台上に設けた駆動モータを接続してなる構成を有する支持装置を用いることが提案されている。かかる支持装置によれば、上記4台の回転支持ローラ上に鋼管を横向きに支持した状態にて、駆動モータに接続してある1台の回転支持ローラを回転駆動することにより、上記鋼管を回転させることができるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−253537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記図5(イ)(ロ)に示した手法、あるいは、長尺管ワークを支持ローラ付きの台車に載せて、作業者が手作業で内面の塗装状況を見ながら支持ローラ上にて長尺管ワークを適宜回転させながら塗装作業を行う手法では、いずれも作業者の熟練した技術が必要になると共に、品質向上は作業者の技能に依存することとなり、量産化や品質の安定化には限界が生じるというのが実状である。
【0008】
なお、上記特許文献1に示された如き支持装置を用いるようにすれば、塗装ブース内にて、移動台上に設けた4台の回転支持ローラ上で鋼管を横向きに支持しながら回転させることができるが、上記移動台は塗装ブース内に設置されているものであるため、塗装対象ワークとなる鋼管は、別途搬送用の台車等を用いて塗装ブース内へ搬入してから、上記移動台上の各回転支持ローラの上へ載せ替える必要がある。又、塗装作業後には、各回転支持ローラ上に支持されている鋼管を、搬送用の台車等に載せ替えてから塗装ブースより搬出する必要がある。
【0009】
しかし、たとえば、ジェットエンジンシャフトは数百キログラムもの重量を有する重量物となることがあり、このような大重量のワークを塗装ブース内で搬送用の台車と、上記特許文献1に示された如き支持装置における各回転支持ローラとの間で載せ替えるためには、ホイスト等の載せ替え作業用の機器が必要とされるが、通常、塗装ブースは空調関係を調整するためにコンパクトな造りとすることが望まれるため、実際上は、上記のような載せ替え作業用の機器を塗装ブース内に設置することは難しい。すなわち、上記ホイスト等の載せ替え作業用の機器を塗装ブース内に設置するためには、該塗装ブースを大きなものとする必要があり、このように塗装ブースを大きくする場合は、空調能力を高める必要が生じてしまう。
【0010】
しかも、特許文献1に示された如き支持装置では、ワークとなる鋼管に対して長手方向の一方の端部から塗装ガンを該鋼管の全長に亘り挿入しなければならないため、塗装可能な鋼管(ワーク)の長さ寸法が、塗装ガンの長さ寸法とほぼ同一の長さ寸法に制限されてしまう。
【0011】
そこで、本発明は、塗装ブース内における長尺管ワークの載せ替え作業を不要にでき、しかも、塗装ガンの長さ寸法のほぼ2倍の全長を有する長尺管ワークの内面塗装作業を行うことができる長尺管ワークの内面塗装用支持装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ガイドレールとワーク回転駆動用モータを備え且つ塗装ブース内に設置した旋回テーブル装置と、脚部を有して走行できるようにしてある支持架台の上面側の左右位置に駆動ローラと従動ローラを平行に設置すると共に、上記支持架台の所要個所に、上記旋回テーブル装置のワーク回転駆動用モータの出力側に離脱可能に連結して該モータの回転駆動力を上記駆動モータへ伝えるための動力伝達機構を設けてなる台車装置と、上記旋回テーブルのガイドレール上に乗入れた上記台車装置を、旋回テーブル装置上に位置決めを行うと共に解除可能に位置固定するための台車固定装置と、上記駆動ローラと従動ローラの間隔よりも大きな外径を有し且つ内径部分を長尺管ワークの長手方向の両端部の外周に取り付けた状態で上記台車装置の駆動ローラと従動ローラの上に載置するためのリング状治具とを備えてなる構成とする。
【0013】
又、上記構成において、台車固定装置を、台車装置の前後方向中間部における幅方向中央部が、旋回テーブル装置の旋回中心の真上に位置する配置として該旋回テーブル装置上にて上記台車装置の位置を固定できるものとした構成とする。
【0014】
更に、上記各構成において、台車固定装置を、旋回テーブル装置上にガイドレールを挟んで設けたトグルストッパーとアングル材とからなる構成として、該トグルストッパーとアングル材との間に台車装置の脚部材を挟むことで、該台車装置の位置決め及び位置固定を行うことができるものとした構成とする。
【0015】
更に又、上記各構成において、旋回テーブル装置に設けたワーク回転駆動用モータに、該モータの出力軸を台車装置の動力伝達機構の入力部分に設けたフレキシブルシャフトに離脱可能に連結させるための手動クラッチを設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の長尺管ワークの内面塗装用支持装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ガイドレールとワーク回転駆動用モータを備え且つ塗装ブース内に設置した旋回テーブル装置と、脚部を有して走行できるようにしてある支持架台の上面側の左右位置に駆動ローラと従動ローラを平行に設置すると共に、上記支持架台の所要個所に、上記旋回テーブル装置のワーク回転駆動用モータの出力側に離脱可能に連結して該モータの回転駆動力を上記駆動モータへ伝えるための動力伝達機構を設けてなる台車装置と、上記旋回テーブルのガイドレール上に乗入れた上記台車装置を、旋回テーブル装置上に位置決めを行うと共に解除可能に位置固定するための台車固定装置と、上記駆動ローラと従動ローラの間隔よりも大きな外径を有し且つ内径部分を長尺管ワークの長手方向の両端部の外周に取り付けた状態で上記台車装置の駆動ローラと従動ローラの上に載置するためのリング状治具とを備えてなる構成としてあるので、長尺管ワークは、その長手方向両端部の外周に取り付けたリング状治具を介して台車装置の駆動ローラと従動ローラ上に載置した状態で塗装ブースに対する搬入と搬出を行うことができる。又、塗装ブースでは、台車装置の動力伝達機構を、上記旋回テーブル装置のワーク回転駆動用モータの出力側に連結することで、該モータの回転駆動力を上記駆動ローラへ伝えて回転させることができるため、台車装置の駆動ローラと従動ローラ上に載置した状態のまま長尺管ワークを回転させて、その内面塗装作業を行うことが可能になる。したがって、塗装ブース内における長尺管ワークの載せ替え作業を不要にできて、上記塗装ブース内にワーク載せ替え作業のためのホイスト等の機器を設ける必要がなくなることから、塗装ブースをコンパクトにすることができて、該塗装ブースの空調能力も最低限に抑えることが可能になる。
(2)上記長尺管ワークを回転させるためのワーク回転駆動用モータは、塗装ブースに設置した旋回テーブル装置に装備させてあるため、台車装置はモータを装備しない構成とすることができる。このため、台車装置をシンプルな構成とすることができて、重量を軽くすることができる。又、該台車装置の製造コストを抑えることができるため、多品種の長尺管ワークに合わせて多くの台車装置を用意することで、製品運搬用台車としての機能を発揮させることが可能になる。
(3)台車装置に載置した長尺管ワークを防爆しようとしてある塗装ブースへ搬入、搬出する際にも、防爆コネクタの着脱作業を必要としないため、長尺管ワークの塗装ブースへの搬入、搬出作業の作業性を良好なものとすることができる。
(4)長尺管ワークの塗装を行う際には、駆動ローラ及び従動ローラの上にて該長尺管ワークを回転させながら、その内面を塗装ガンで複数回塗装を行うようにすれば、ガンチップが多少劣化しても、塗料の付着を平均化させることができて、塗装ムラを低減させることが可能になる。又、塗装ガンの位置が、長尺管ワークの軸心位置から多少ずれたとしても、塗装ムラを低減させることが可能になる。
(5)上記旋回テーブル装置により、台車装置と一緒に長尺管ワークを旋回させることができるようにしてあるため、塗装ガンを、長尺管ワークの一方の端部から挿入して、該一方の端部から長手方向の中央部までの内面塗装を行った後、旋回テーブルの旋回により長尺管ワークを180度反転させ、しかる後、塗装ガンを、該長尺管ワークの長手方向の他方の端部から挿入して、該他方の端部から長手方向の中央部までの内面を塗装を行うことで、長尺管ワークの長手方向の全長に亘り内面塗装を実施できる。よって、塗装ガンの長さ寸法のほぼ2倍の長さ寸法を有する長尺管ワークの内面塗装を実施することが可能になる。
(6)台車固定装置を、台車装置の前後方向中間部における幅方向中央部が、旋回テーブル装置の旋回中心の真上に位置する配置として該旋回テーブル装置上にて上記台車装置の位置を固定できるものとした構成とすることにより、上記(5)に示したように旋回テーブル装置の旋回によって長尺管ワークの向きを180度反転させても、該長尺管ワークの反転後の軸心位置を、反転前の軸心位置に一致させることが可能になる。
(7)台車固定装置を、旋回テーブル装置上にガイドレールを挟んで設けたトグルストッパーとアングル材とからなる構成として、該トグルストッパーとアングル材との間に台車装置の脚部材を挟むことで、該台車装置の位置決め及び位置固定を行うことができるものとした構成とすることにより、台車固定装置を容易に実現することができる。
(8)旋回テーブル装置に設けたワーク回転駆動用モータに、該モータの出力軸を台車装置の動力伝達機構の入力部分に設けたフレキシブルシャフトに離脱可能に連結させるための手動クラッチを設けるようにした構成とすることにより、上記ワーク回転駆動用モータに対する上記台車装置の動力伝達機構の連結と離脱を容易に実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図4(イ)(ロ)は本発明の長尺管ワークの内面塗装用支持装置の実施の一形態を示すもので、旋回駆動可能なテーブルフレーム2の上側に、前後方向に延びる左右1対のガイドレール3と、ワーク回転駆動用モータ4を設けてなる旋回テーブル装置1を、塗装ブース5内の所要個所に設置する。又、前後方向に延び且つ4角部に走行キャスタ9付きの脚部材8を具備した支持架台7の上面における左右位置に、駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aを平行に設け、更に、上記旋回テーブル装置1に設置してあるワーク回転駆動用モータ4の出力側に着脱可能に連結して該モータ4の回転駆動力を上記駆動ローラ10,10aへ伝達するための動力伝達機構12を備えてなる台車装置6を構成する。更に、長尺管ワーク13の長手方向両端部の外周に装着するためのリング状治具14を備えて、上記旋回テーブル装置1と、台車装置6と、リング状治具14とから長尺管ワーク13の内面塗装用支持装置を構成する。これにより、長手方向両端部の外周に上記リング状治具14を装着した状態の長尺管ワーク13を、上記台車装置6における駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上側に上記リング状治具14を介して載置することで、該長尺管ワーク13を、台車装置6とともに走行キャスタ9を介して任意の個所へ移動させることができるようにしてある。更に、上記台車装置6の各走行キャスタ9を、上記旋回テーブル装置1の左右のガイドレール3上へ乗り入れさせた状態にて、該旋回テーブル装置1に設けてある上記ワーク回転駆動用モータ4の出力側に、上記台車装置6に設けてある動力伝達機構12を連結することで、該ワーク回転駆動用モータ4の回転駆動力を上記動力伝達機構12を介して上記台車装置6の駆動ローラ10,10aへ伝えて、該駆動ローラ10,10aを回転駆動させることができるようにし、この駆動ローラ10,10aの回転により、該駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11a上に載置した上記リング状治具14を装着してなる上記長尺管ワーク13を回転させることができるようにしてある。
【0019】
詳述すると、上記旋回テーブル装置1は、図2(イ)(ロ)に示す如く、塗装ブース5の基礎面5aに上方へ突出させて固定したセンターシャフト15に、テーブルフレーム2を、上記センターシャフト15を中心に回転可能に取り付け、且つ図示しない旋回用モータ、たとえば、テーブルフレーム2上に設けた図示しない旋回用モータにより、上記テーブルフレーム2を、上記センターシャフト15の周りで旋回駆動できるようにしてある。上記テーブルフレーム2の4角部の下面側には、旋回用キャスタ16をそれぞれ設けて、該テーブルフレーム2に作用する荷重は、各旋回用キャスタ16を介して塗装ブース5の基礎面5aへ伝えて支持させることができるようにしてある。
【0020】
上記テーブルフレーム2の上面には、左右両端縁部に沿って前後方向に延びる溝形状としたガイドレール3が設けてある。更に、上記左右のガイドレール3上に走行キャスタ9を介して乗入れさせる台車装置6の位置決めを行うと共に固定するための台車固定装置17として、たとえば、上記左右のガイドレール3のうちの一方のガイドレール(図2(ロ)では図上下側のガイドレール)3の内側近傍位置にて上記台車装置6の前後の脚部材8の間隔に応じた間隔を隔てた前後2個所に、所要の高さ寸法を有するアングル材18を、該ガイドレール3側に向けて開いた姿勢で設置すると共に、上記ガイドレール3を挟んで上記各アングル材18と対峙する上記ガイドレール3の外側近傍位置に、トグルストッパー19を設ける。これにより、上記各ガイドレール3上に走行キャスタ9を介して上記台車装置6を乗入れさせて、図4(イ)に示す如く、上記一方のガイドレール3上にて、上記台車装置6の前後の脚部材8が、上記前後の各アングル材18と、対応するトグルストッパー19との間に配置された状態のときに、上記前後の各トグルストッパー19を操作して該各トグルストッパー19により上記台車装置6の前後の各脚部材8を、図4(ロ)に示すようにそれぞれ内側へ押すことで、該各脚部材8の内側面部に横向きに設けてある台車固定用キャスタ20を、上記前後の各アングル材18に押し付けて位置固定できるようにしてある。したがって、上記台車固定用キャスタ20と上記アングル材18を介して上記旋回テーブル装置1上における上記台車装置6の相対位置の位置決めを行う同時に該台車装置6を固定できるようにしてある。なお、上記のようにして旋回テーブル装置1に対して上記台車装置6の相対位置を固定するときには、該台車装置6の幅方向中央部が、上記旋回テーブル装置1の旋回中心の真上を通る位置に配置されるようにしてあるものとする。
【0021】
更に、図2(イ)(ロ)に示す如く、上記テーブルフレーム2の前後方向の一端部(図では左端部)における左右のガイドレール3の間には、上方へ所要寸法突出する取付部材21を設けて、該取付部材21の上端部に、前後方向の他端側へ向けてワーク回転駆動用モータ4が設置してある。更に、上記ワーク回転駆動用モータ4には、その出力軸4aを、前後方向へ移動させるための手動クラッチ22を取り付けてなる構成としてある。これにより、ガイドレール3上に乗入れさせた上記台車装置6を旋回テーブル装置1上の所定位置に上記台車固定装置17を用いて固定した状態にて、上記手動クラッチ22により上記ワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aを前後方向の他端側へ移動させることで、該出力軸4aを、後述する台車装置6のフレキシブルシャフト23に連結させることができるようにしてあると共に、上記手動クラッチ22により上記ワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aを前後方向の一端側へ移動させることで、該出力軸4aを、上記台車装置6のフレキシブルシャフト23より離脱させることができるようにしてある。
【0022】
上記台車装置6は、図3(イ)に示す如く、上記旋回テーブル装置1のガイドレール3上に乗入れた状態で、上記旋回テーブル装置1に設けてあるワーク回転駆動用モータ4よりもやや高い位置に上記支持架台7を配置できるように、各脚部材8の長さ寸法が設定してある。
【0023】
更に、図3(イ)(ロ)に示す如く、上記支持架台7の上面における左右の一側縁部(図3(ロ)では図上下側縁部)には、前後方向の一端部に、前後方向に所要寸法延びる駆動ローラ10を回転自在に設置すると共に、上記支持架台7の上面における前後方向の他端部と、他端寄りの所要個所との2個所に、外周に溝を有し且つ該溝部分における外径が上記駆動ローラ10の外径と同径となるようにした溝付きの駆動ローラ10aをそれぞれ回転自在に設置し、更に、前後方向に隣接する各駆動ローラ10と10a及び10aと10aの回転軸同士を、動力伝達軸24,25とカップリング26を介してそれぞれ連結した構成としてある。
【0024】
更に又、上記動力伝達機構12として、上記支持架台7の前後方向一端部における左右幅方向の中央部の下側には、台車装置6を旋回テーブル装置1のガイドレール3上に乗入れさせた状態で、該旋回テーブル装置1に設けてあるワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aと対応する高さ位置に、フレキシブルシャフト23を配置すると共に、該フレキシブルシャフト23の前後方向の他端側に一体に連結してある回転軸27を、軸受28を介して上記支持架台7の下面側に取り付ける。更に、該回転軸27に取り付けたチェーンスプロケット29と、上記動力伝達軸24における前後方向の対応する個所に取り付けてある図示しないチェーンスプロケットに、チェーン30を無端状に掛け回してなる構成としてある。これにより、上記フレキシブルシャフト23に、上記旋回テーブル装置1に設けてあるワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aを連結した状態では、該モータ4の回転駆動力を、フレキシブルシャフト23、回転軸27、チェーンスプロケット29とチェーン30を介して上記動力伝達軸24上に設けてあるチェーンスプロケットへ伝達することで、上記動力伝達軸24と動力伝達軸25とカップリング26を介して連結してある上記各駆動ローラ10,10aを一体に回転駆動できるようにしてある。
【0025】
又、上記支持架台7の上面における左右の他側縁部(図3(ロ)では上側縁部)における前後方向の一端部には、上記前後方向に所要寸法延びる駆動ローラ10と同様の形状としてある従動ローラ11が、又、他端部と、他端寄りの所要個所には、上記溝付きの駆動ローラ10aと同様の形状の従動ローラ11aが、それぞれ回転自在に設置してある。
【0026】
上記リング状治具14は、上記台車装置6に左右に並べて設けた駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの間隔よりも所要寸法大きな外径寸法を有すると共に、内面塗装対象となる長尺管ワーク13の長手方向両端部における治具取付個所となる所要個所の外径に応じた内径寸法を有するリング形状としてある。これにより、上記長尺管ワーク13における長手方向一端側と他端側の治具取付個所の径寸法が異なっていても、その外周に外径寸法が同一となるリング状治具14を同心状に取り付けて、該リング状治具14を介して上記台車装置6の駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上に載置させることで、上記長尺管ワーク13を、その軸心方向を上記各ローラ10,10a,11,11aの軸心と平行に、すなわち、上記台車装置6上にて水平に支持することができるようにしてある。更には、径寸法の異なる長尺管ワーク13であっても、その外周に、外径寸法が同一のリング状治具14をそれぞれ取り付けて、該外径寸法が同一のリング状治具14を介して上記台車装置6の駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上側に載置させることにより、台車装置6上における上記径寸法の異なる長尺管ワーク13の相対的な軸心位置を、常に一定の位置とすることができるようにしてある。
【0027】
なお、塗装ブース5内における上記旋回テーブル装置1と隣接する位置には、図1に示す如く、旋回テーブル装置1のガイドレール3上に台車装置6を乗入れさせた状態とするときに、該台車装置6の駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上側にリング状治具14を介して載置された長尺管ワーク13の軸心位置と対応する高さ位置に、長尺のスプレーノズルを備えた塗装ガン32を配置すると共に、該塗装ガン32を軸心方向に沿って上記旋回テーブル装置1の旋回中心の真上を通過するように水平方向に移動させることができるようにした塗装装置31が設置してあるものとする。
【0028】
以上の構成としてある長尺管ワークの内面塗装用支持装置を使用する場合は、先ず、内面塗装を行うべき長尺管ワーク13の長手方向の両端部付近となる2個所の外周に、上記リング状治具14を取り付ける。
【0029】
次に、旋回テーブル装置1より分離させた状態としてある台車装置6を、塗装ブース5の外へ引き出した状態にて、該台車装置6の駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの上側に、上記長尺管ワーク13を、その長手方向両端部に取り付けてあるリング状治具14を介して載置することで、台車装置6上に長尺管ワーク13を支持させる。この際、上記長尺管ワーク13の長手方向両端部に取り付けてある2つのリング状治具14のうちの一方のリング状治具14を、上記台車装置6の前後方向の他端部と他端寄り位置に2組設けてある溝付きの駆動ローラ10aと従動ローラ11aの組のうちの一方の組の駆動ローラ10a及び従動ローラ11aの溝に嵌合させるようにして載置することにより、上記台車装置6上における上記長尺管ワーク13の軸方向への移動を拘束できるようにしてある。
【0030】
次いで、上記長尺管ワーク13を載置した状態の台車装置6を、各脚部材8に設けてある走行キャスタ9を介し走行させることによって塗装ブース5へ移動させた後、該塗装ブース5に設けてある上記旋回テーブル装置1のガイドレール3上へ乗入れさせる。
【0031】
上記のようにして旋回テーブル装置1のガイドレール3上へ台車装置6を乗入れさせた後は、前後2個所のトグルストッパー19の操作により、上記台車装置6における対応する脚部材8に設けてある台車固定用キャスタ20を、旋回テーブル装置1側に設けてあるアングル材18に押し当てて、旋回テーブル装置1上における上記台車装置6の位置を固定する。その後、手動クラッチ22を操作して、旋回テーブル装置1に設けてあるワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aを、台車装置6に設けてあるフレキシブルシャフト23に連結させる。
【0032】
その後は、上記旋回テーブル装置1により、上記台車装置6と一緒に長尺管ワーク13を所要角度旋回させて、該長尺管ワーク13の長手方向の一方の端部を、上記塗装装置31の方向へ向けると共に、長尺管ワーク13の軸心方向が、上記塗装装置31の塗装ガン32の軸心方向と一直線上に並ぶように配置させる。
【0033】
この状態で、上記ワーク回転駆動用モータ4を運転すると、上記したように該モータ4の出力軸4aより出力される回転駆動力が、上記フレキシブルシャフト23を具備してなる台車装置6側の動力伝達機構12を介して駆動ローラ10,10aへ伝えられ、該駆動ローラ10,10aが回転駆動されることに伴って、上記長尺管ワーク13が回転させられるようになる。この際、上記ワーク回転駆動用モータ4の回転数を適宜調整して、上記長尺管ワーク13が、たとえば、該長尺管ワーク13の内径や、上記塗装ガン32の移動速度、塗装条件等に応じた所要の回転数で回転されるようにした状態にて、上記塗装装置31の塗装ガン32を、上記長尺管ワーク13の長手方向の一方の端部より挿入して、該長尺管ワーク13の内面の塗装を行うようにする。
【0034】
上記塗装の際には、長尺管ワーク13を回転させながら、上記塗装ガン32を、該長尺管ワーク13の長手方向の一方の端部から、長手方向の中間部における上記旋回テーブル装置1の旋回中心の上方となる位置までの間を複数回往復させて塗装を行うようにすればよい。
【0035】
上記のようにして、上記長尺管ワーク13の長手方向の一方の端部から、長手方向の中間部における上記旋回テーブル装置1の旋回中心の上方となる位置までの内面塗装が終了した後は、上記塗装ガン32を、長尺管ワーク13より一旦抜き出した後、上記旋回テーブル装置1により上記台車装置6と一緒に長尺管ワーク13を180度旋回させて、該長尺管ワーク13の長手方向の他方の端部を、上記塗装装置31の方向へ向けると共に、長尺管ワーク13の軸心方向が、上記塗装装置31の塗装ガン32の軸心方向と一直線上に並ぶように配置させてから、上記と同様にして、長尺管ワーク13を回転させながら、上記塗装ガン32を、該長尺管ワーク13の長手方向の他方の端部から、長手方向の中間部における上記旋回テーブル装置1の旋回中心の上方となる位置までの間を複数回往復させて、該部分の内面塗装を行うようにする。
【0036】
上記長尺管ワーク13の長手方向の全長に亘り内面塗装が終了した後は、上記手動クラッチ22を操作して、ワーク回転駆動用モータ4の出力軸4aを台車装置6側のフレキシブルシャフト23より離脱させた後、トグルストッパー19の操作により上記旋回テーブル装置1上における台車装置6の固定を解除し、しかる後、上記台車装置6の走行キャスタ9の走行により、上記内面塗装終了後の長尺管ワーク13を、該台車装置6と一緒に塗装ブース5より搬出するようにする。
【0037】
このように、本発明の長尺管ワークの内面塗装用支持装置によれば、内面塗装の対象物である長尺管ワーク13は、台車装置6に載置した状態で塗装ブース5に対する搬入と搬出を行うことができると共に、塗装ブース5内では、台車装置6に載置した状態のまま回転させながらの内面塗装作業を行うことができる。したがって、上記長尺管ワーク13の載せ替え作業は塗装ブース5の外部で行うことができることから、塗装ブース5内における長尺管ワーク13の載せ替え作業を不要にできる。したがって、上記塗装ブース5内に、長尺管ワーク13の載せ替え作業のためのホイスト等の機器を設ける必要がないため、塗装ブース5をコンパクトにすることができて、該塗装ブース5の空調能力も最低限に抑えることが可能になる。
【0038】
又、上記長尺管ワーク13を塗装時に回転させるためのワーク回転駆動用モータ4は、塗装ブース5に設置してある旋回テーブル装置1に装備するようにしてあって、台車装置6は何らモータを装備しない構成としてあるため、該台車装置6をシンプルな構成とすることができて、上記長尺管ワーク13の移動に用いる該台車装置6の重量を軽くすることができる。又、該台車装置6の製造コストを抑えることができるため、多品種の長尺管ワーク13に合わせて多くの台車装置6を用意することで、製品運搬用台車としての機能を果たすものとすることができる。
【0039】
更に、一般に、塗装ブース5は防爆仕様にする必要があるため、長尺管ワーク13を搬送する台車にモータが装備されている場合には、該台車を塗装ブース5へ出し入れするたびに、その都度、防爆のコネクタを着脱しなければならず、長尺管ワーク13の塗装ブース5への搬入、搬出作業の作業性が悪いものとなるが、上記本発明で用いる台車装置6にはモータが装備されていないため、上記のような防爆コネクタの着脱作業は不要であり、よって、長尺管ワーク13の塗装ブース5への搬入、搬出作業の作業性を良好なものとすることができる。
【0040】
上記長尺管ワーク13の塗装を行う際には、駆動ローラ10,10a及び従動ローラ11,11aの上にて該長尺管ワーク13を回転させながら、その内面を塗装ガン32で複数回塗装を行うようにしてあるので、ガンチップが多少劣化しても、塗料の付着を平均化させることができて、塗装ムラを低減させることが可能になる。又、塗装ガン32の位置が、長尺管ワーク13の軸心位置から多少ずれても、塗装ムラを低減させることが可能になる。
【0041】
更に、上記旋回テーブル装置1により、台車装置6と一緒に上記長尺管ワーク13を旋回させることで、該長尺管ワーク13の塗装ガン32に対する向きを容易に反転できるため、塗装ガン32を、長尺管ワーク13の一方の端部から挿入して、該一方の端部から長手方向の中央部までの内面塗装を行った後、長尺管ワーク13を反転させ、しかる後、塗装ガン32を、該長尺管ワーク13の長手方向の他方の端部から挿入して、該他方の端部から長手方向の中央部までの内面を塗装を行うことで、長尺管ワーク13の長手方向の全長に亘り内面塗装を実施できることから、塗装ガン32の長さ寸法のほぼ2倍の長さ寸法を有する長尺管ワーク13の内面塗装を実施することが可能になる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、台車装置6の前後方向における駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの配置は、長尺管ワーク13の長さ寸法や、長尺管ワーク13におけるリング状治具14の取付間隔等に応じて適宜変更してもよい。
【0043】
駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの太さや、駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの間隔は、長尺管ワーク13に取り付けるリング状治具14の外径寸法に応じて変更してもよい。台車装置6の左右方向における駆動ローラ10,10aと従動ローラ11,11aの配置を逆にしてもよい。
【0044】
台車装置6に設ける動力伝達機構は、旋回テーブル装置1側に設けてあるワーク回転駆動用モータ4の出力側に着脱自在に連結でき、且つ該モータ4の回転駆動力を駆動ローラ10,10aへ伝えて該駆動ローラ10,10aを回転駆動できるようにしてあれば、図示した以外の形式の動力伝達機構を採用してもよい。
【0045】
台車固定装置17は、旋回テーブル装置1に設けたガイドレール3に走行キャスタ9よって乗入れさせた台車装置6を、上記旋回テーブル装置1上にて位置決めを行うと共に解除可能に位置固定できるようにしてあれば、旋回テーブル装置1に設けたアングル材18及びトグルストッパー19と、台車装置6の脚部材8に設けた台車固定用キャスタ20を備えてなる構成以外のいかなる形式の台車固定装置を採用してもよい。
【0046】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の長尺管ワークの内面塗装用支持装置の実施の一形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の装置における旋回テーブル装置を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は概略平面図である。
【図3】図1の装置における台車装置を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は概略平面図である。
【図4】図1の装置における旋回テーブル装置に設けた台車固定装置を拡大して示すもので、(イ)は台車装置の固定を行っていない状態を、(ロ)は台車固定装置を固定した状態をそれぞれ示す平面図である。
【図5】長尺管ワークの内面を塗装するために従来実施されている手法の概要を示すもので、(イ)は正面図、(ロ)はその側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 旋回テーブル装置
3 ガイドレール
4 ワーク回転駆動用モータ
4a 出力軸
5 塗装ブース
6 台車装置
7 支持架台
8 脚部材(脚部)
9 走行キャスタ
10,10a 駆動ローラ
11,11a 従動ローラ
12 動力伝達機構
13 長尺管ワーク
14 リング状治具
17 台車固定装置
18 アングル材
19 トグルストッパー
22 手動クラッチ
23 フレキシブルシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドレールとワーク回転駆動用モータを備え且つ塗装ブース内に設置した旋回テーブル装置と、脚部を有して走行できるようにしてある支持架台の上面側の左右位置に駆動ローラと従動ローラを平行に設置すると共に、上記支持架台の所要個所に、上記旋回テーブル装置のワーク回転駆動用モータの出力側に離脱可能に連結して該モータの回転駆動力を上記駆動モータへ伝えるための動力伝達機構を設けてなる台車装置と、上記旋回テーブルのガイドレール上に乗入れた上記台車装置を、旋回テーブル装置上に位置決めを行うと共に解除可能に位置固定するための台車固定装置と、上記駆動ローラと従動ローラの間隔よりも大きな外径を有し且つ内径部分を長尺管ワークの長手方向の両端部の外周に取り付けた状態で上記台車装置の駆動ローラと従動ローラの上に載置するためのリング状治具とを備えてなる構成を有することを特徴とする長尺管ワークの内面塗装用支持装置。
【請求項2】
台車固定装置を、台車装置の前後方向中間部における幅方向中央部が、旋回テーブル装置の旋回中心の真上に位置する配置として該旋回テーブル装置上にて上記台車装置の位置を固定できるものとした請求項1記載の長尺管ワークの内面塗装用支持装置。
【請求項3】
台車固定装置を、旋回テーブル装置上にガイドレールを挟んで設けたトグルストッパーとアングル材とからなる構成として、該トグルストッパーとアングル材との間に台車装置の脚部材を挟むことで、該台車装置の位置決め及び位置固定を行うことができるものとした請求項1又は2記載の長尺管ワークの内面塗装用支持装置。
【請求項4】
旋回テーブル装置に設けたワーク回転駆動用モータに、該モータの出力軸を台車装置の動力伝達機構の入力部分に設けたフレキシブルシャフトに離脱可能に連結させるための手動クラッチを設けるようにした請求項1、2又は3記載の長尺管ワークの内面塗装用支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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