長尺経編物
【課題】 耳部の幅を広げることができ、かつ、加工しやすい、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を提供する。
【解決手段】 表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5と直接またはカットライン部4−bを介して間接的に連結されており、前記耳部2の表編地2−1と裏編地2−2とが、両編地の外端2aで編み合わされ連結されていることを特徴とする。
【解決手段】 表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5と直接またはカットライン部4−bを介して間接的に連結されており、前記耳部2の表編地2−1と裏編地2−2とが、両編地の外端2aで編み合わされ連結されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部を含む長尺経編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
編物は、一般的に精練―熱セット―染色または精練―熱セット―染色―熱セットといった工程にて加工を施されている。ここでの熱セットの目的は、染色中に発生する生地荒れや加工シワの防止、染めムラの防止、耳巻きの防止、加工収縮の防止の付与などにあり、生地荒れ、加工シワ、加工収縮の原因は主として編物の寸法安定性の悪さに起因している。
【0003】
また、衣服等は、織物や編物を形成した後、前身頃、後身頃、襟等の各部位を型紙に沿って裁断し縫製することによって製造されているが、前記裁断・縫製といった工程は手間がかかるため、これらの工程を省いて製造できる無縫製ニットと呼ばれるものの製造も以前より行われている。前記無縫製ニットとしては、丸編物や横編物を用いて得られるセーターなどのものの他、生産性に優れる方法として、経編物、特に長尺経編物を用い、この経編物から切り出すことによって得られるものが知られている。前記経編物を用い、衣服等の繊維製品を製造する場合は、その表編地と裏編地が目的とする衣服等の繊維製品の外形線に沿って連結され、この外形線に沿って衣服等の繊維製品が切り出されることになる(特許文献1)。
【0004】
ここで、前記のような表編地及び裏編地を有している長尺経編物を製造する場合、その耳部も、表編地及び裏編地を有するように形成されることが一般的である。これは、同一の編機にて、耳部を有する経編物以外の他の編物、例えば、耳部の必要がない編物を編んだりするなど、多品種、小ロットの環境下では、全ての針に糸をかけておき、耳部も表編地と裏編地を有するものを編んだ方が、生産性に優れると考えられているためである。
【0005】
また、経編物は、ピンテンターやクリップテンターを用いて熱セットされるときに、耳部にピンを刺したり、耳部をクリップで挟んだりするため、耳部に特に大きな力が加わり、耳裂けが発生することがある。このような事態を生じさせないためにも、前記のように耳部が表編地及び裏編地から形成され、当該耳部が編地2枚分の厚みを有するようにすることは、その強度を向上させると考えられていたからである。ここで、従来の長尺経編物では、耳部の表編地及び裏編地を編みこみ、両編地を一体化させた構成が多い(図6参照)。
【特許文献1】特開2001−181908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記構成の耳部を有する従来の経編物は、以下の問題を有していた。経編物の耳部は、織物に比べ柔かい、伸縮性が大きいなどの理由により、耳折れやテンターピンの耳外れやテンターピンの食い込みが発生しやすい。このような事態を防止するためには、耳部の幅を広くして、ピンテンターやクリップテンターでの加工をしやすくする必要がある。しかしながら、前記のように、耳部の表編地と裏編地とを全面で連結し一体化させる等などして両編地を一体的に重ね合わせた経編物の場合、耳部の幅を所定幅広げるためには、1枚の編地の耳部を形成する場合と比較して2倍の量の糸が必要となり、また、前記経編物の場合、耳部の幅を所定幅に広げるためには、編地本体部の幅を狭くする必要があり、衣服等の繊維製品部分として用いることが出来る幅が狭くなってしまっていた。
【0007】
したがって、本発明では、耳部の幅を2倍に広げることができ、かつ、加工しやすい、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0009】
本発明に係る長尺経編物は、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して間接的に連結されていることを特徴とする。また、本発明に係る長尺経編物は、前記構成を有する長尺経編物であって、前記耳部の表編地と裏編地とが、両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して連結されている。このため同一の耳幅を有する耳部を従来の半分の糸量で得ることができる。更に、本発明によれば、前記耳部の表編地と裏編地とが両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されているため、前記耳部の表編地または裏編地のうち、編地本体部と連結されていない方の編地を、両編地の外端を中心に外側に広げることができる。これにより、当該耳部の幅を、表編地及び裏編地をズレなく重ね合わせていた従来の経編物の耳部よりも、広くすることができる。これにより、耳部の幅を広げる必要があるときでも、衣服等の繊維製品部分として用いられる編地本体部の幅を狭くせずに、耳部の幅を広げることができる。逆に、前記編地本体部の幅を所定の幅に広げる必要があるときでも、耳部の幅を狭くせずに、編地本体部の幅を広げることができる。
【0011】
ここで、前記耳部の一方の編地の幅は、他方の編地の幅で形成することが好ましい。このような構成とすると、前記耳部の表編地または裏編地のうち、編地本体部と連結されていない一方の編地を外側に広げたとき、当該耳部の幅を表編地(裏編地)の幅の2倍にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の長尺経編物は、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介し連結されているため、耳幅が広く加工のしやすい、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態を示す長尺経編物1であり、表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物である。当該長尺経編物1は表編地2−1及び裏編地2−2から構成される耳部2を有し、耳部2の表編地2−1がカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されている(図2及び図4)。本実施の形態の長尺経編物1の編地本体部5では、前記繊維製品部3としてシャツが長手方向Xに連続して形成されている。すなわち、繊維製品部3としてのシャツが長手方向においてリピートされるパターンとなっている。なお、第1の実施の形態の耳部2は、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5とカットライン部4−bを介し連結されていればよい。
【0015】
ここで、前記筒状部とは、表編地5−1と裏編地5−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、以下で説明する繊維製品部3と捨て部6を指す。一方、前記編地本体部5とは、前記筒状部と同様に、表編地5−1と裏編地5−2から形成されるが、前記繊維製品部3と捨て部6の他、繊維製品部3同士の間に設けられたカットライン部4−aをも含んでいる。また、カットライン部は、前記編地本体部5の中に含まれるカットライン部4−aと、前記編地本体部5と前記耳部2との間に長手方向Xに沿って設けられる前記カットライン部4−bとがある。
【0016】
まず、本実施の形態の編地本体部5について、詳細に説明する。編地本体部5を編成するための糸の素材は、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリ乳酸、レーヨン、大豆タンパク繊維、アセテートなどの化学繊維、綿、麻、毛、絹などの天然繊維であってもよく、これらの繊維の混繊、混紡、交編したものであってもよい。また、糸は、顔料が練り込まれた原着糸や染料で染色された先染め糸を用いてもよい。さらに未着色の糸を用い編成後、染料を用い染色してもよい。また、本発明の編地本体部5は、経編であれば編組織等は任意の編組織のものを用いることができ、デンビー編、コード編、アトラス編などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに、無地調であっても、編組織によりストライブ柄や花柄など任意の柄を付与したものであってもよい。
【0017】
前記耳部2とカットライン部4−bを介して間接的に連結される編地本体部5は、前述の通り、表編地5−1と裏編地5−2から形成され、前記繊維製品部3と捨て部6の他、繊維製品部3同士の間に設けられたカットライン部4−aを有する。そして、前記編地本体部5の長手方向に沿った両端5aには、前記カットライン部4−bを介して前記耳部2が間接的に連結されている。前記編地本体部5には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部3が形成される。この繊維製品部3は、前記表編地5−1及び裏編地5−2が目的とする繊維製品の外形線3aに沿って連結されることで形成される。また、編地本体部5には、前記外形線3aで区切られた繊維製品部3同士の間に、カットライン部4−aが設けられている。ここで、繊維製品部3の袖部は、その外形線3aが前記カットライン部4−bに沿うように設けられている。すなわち、編地本体部5の両端5aと繊維製品部3の外形線3aとが部分的に重なっている。本実施の形態の長尺経編物1の編地本体部5では、前記繊維製品部3としてシャツが長手方向Xに連続して形成されている。すなわち、繊維製品部3としてのシャツが長手方向においてリピートされるパターンとなっている。前記繊維製品部3を形成する際は、前記表編地5−1及び裏編地5−2のカットライン部4―a及びカットライン部4−bに沿った箇所が連結される。ただし、カットライン部4−a,4−bに沿った箇所であっても、首部や袖口部、裾部などの首や腕、胴体を通すための出入り口部は連結されてはいない。
【0018】
次に、本実施の形態のカットライン部4−aおよび4−bについて説明する。カットライン部4―aは、編地本体部5の中に含まれるカットライン部であり、繊維製品部3同士の間(具体的には、一方の繊維製品部3の裾部と他方の繊維製品部3の首部の間)、繊維製品部3と捨て部6の間(具体的には、繊維製品部3と繊維製品部3の肩部周辺の捨て部6との間/繊維製品部3と繊維製品部3の袖口部周辺の捨て部6との間)、捨て部6同士の間(具体的には、繊維製品部3の肩部周辺の捨て部6と繊維製品部3の袖口部周辺の捨て部6との間)、繊維製品部3を構成するシャツの袖と脇の間等に設けられている。また、カットライン部4−bは、編地本体部5と耳部2の間、具体的には、繊維製品部3と耳部2の間、捨て部6と耳部2の間に設けられている。捨て部6は、繊維製品部3をカットライン部4―a及び4−bにてカットすることにより切り出した後は、不要となるが、この部分で、帽子や手袋などの小物を得ることができるように別途カットライン部等を設けてもよい。第1の実施の形態では、カットライン部4−a及び4−bをカットし切り出すことにより、シャツが得られる。また、本実施の形態では、シャツとシャツの間においても全幅方向にてカットライン部4−aを設けたが、必ずしも幅方向すべてにわたりカットライン部4―aを設ける必要はなく、繊維製品部3と繊維製品部3との間のみにカットライン部4―aを設ける構成としてもよい。
【0019】
次に、本実施の形態の耳部2について、詳細に説明する。長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端部分に形成される耳部2は、表編地2−1及び裏編地2−2からなる。前記耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2の編組織は、経編であれば、特に限定されるものではなく、編地本体部5の表編地5−1及び裏編地5−2と同一の編み組織であってもよい。あるいは、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2の編組織の密度を大きくしたり、編地本体部5とは異なった組織としたり、左右の耳部2について、それぞれを異なった組織で編成してもよい。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2に用いられる糸は、編地本体部5と同一の糸や強度の大きい糸を用いてもよい。
【0020】
好ましい耳部2の例としては、図4に示すように編成段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1はカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は直接的にもカットライン部4―bを介して間接的にも編地本体部5とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。このような構成とすることにより、編成した後、前記耳部2の表編地2−1または裏編地2−2のうち、編地本体部5と連結されていない方の編地(ここでは裏編地2−2)を、両編地の外端2aを中心に外側に広げることができ、編成後の当該耳部2の幅を、表編地2−1(または裏編地2−2)1枚分の幅の2倍とすることができる。
【0021】
このような耳部2の構成をもつ長尺経編物1を編むことにより、従来の耳部の表編地52−1と裏編地52−2とを全面で連結し一体化させる等などして両編地を一体的に重ね合わせた経編物51の場合(図6参照)と比較して、同一の糸量および手間で、耳部2の幅が2倍となる。耳部2の幅が広がることにより、ピンテンターによる熱セット時に生産性があがる。また、前記長尺経編物1は、編成時は編機により従来の長尺経編物と同一の編幅で、かつ、耳部2の幅を目的とする耳幅の半分の幅で編成することにより編成後、その耳部2の幅を広げることで、耳部2の幅を従来の長尺経編物の耳部と同一の幅を有ししつつ、長尺経編物1の編地本体部5の幅を従来の長尺経編物の編地本体部の幅よりも広い幅とすることができる。これにより、有効に使用できる編地本体部5の幅が大きくなり、有効幅の増加の観点からもコストの低下や生産性の向上が図れる。
【0022】
耳部2の幅は、1.0cm〜10cm程度が好ましい。1.0cm未満では、ピンテンター等のピンにうまくかからず、ピンはずれが発生したり、ピンが編地本体部5に食い込んでいく可能性がある。また、10cmを超えると捨てる部分(耳部2)が多くなるため、コスト的に好ましくない。
【0023】
より具体的に好ましくは、5cmの耳部2を長尺経編物1の両端部分にそれぞれ設ける場合には、編成時、2.5cmの耳幅にて耳部2を編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2を全面に一体的に連結させず、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2の長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aのみを連結させ、かつ、表編地2−1もしくは裏編地2−2のどちらか一方を編地本体部5とカットライン部4を介して(第2の実施の形態では直接)連結させれば、編成後、2.5cmの2倍の5cm幅の耳部2が得られ(編成時、耳幅2.5cmで編成された耳部2は、編成後、表編地2−1もしくは表編地2−2のいずれかを外側に広げることで、その耳幅が5cmとなる。)、また、編成時の長尺経編物1の幅が同一で、同一の耳幅(5cm)を有する従来の耳構造を有する長尺経編物と比べ、有効に使用できる編地本体部5の幅が5cm広がることになる。
【0024】
図4では耳部2の表編地2−1が、カットライン部4−bを介して編地本体部5と連結されていたが、耳部2の表編地2−1ではなく、耳部2の裏編地2−2と編地本体部5がカットライン部4−bを介して、連結されていてもよい(この場合は、耳部2の表編地2−1と編地本体部5とは直接的にもカットライン部4−bを介しても連結されてはいない。)。また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部5とがカットライン部4−bを介し連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部5とがカットライン部4−bを介し連結されたものであってもよい。
【0025】
また、他には図3に示すように編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。この場合も、編地本体部5と耳部2は、カットライン部4−bを介し間接的に連結されていればよい。
また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5とカットライン部4−bを介して間接的に連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0026】
また、図1の例では、切り出しによってシャツが得られるものであったが、パンツやジャケット、帽子等の他の繊維製品であってもよい。また、長手方向Xに一枚ずつシャツを形成したものであったが、幅方向に複数のシャツが得られるように編成したものであっても、またこれらの首部同士を向かい合わせて編成するなど繊維製品の向き等も特に限定されるものではない。また、切り出しによって衣服等の繊維製品を形成するための長尺経編物1の例を記載したが、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を精練、染色、熱セットを行った後、パンツ、シャツ、帽子など用途に応じ、それらの形状にマーキングし、カット、縫製をおこなうものに用いてもよい。
【0027】
図11及び図12は、本実施の形態の他の例の長尺経編物1であり、表編地35−1と裏編地35−2からなる筒状部を含む長尺経編物である。当該長尺経編物1は表編地2−1及び裏編地2−2から構成される耳部2を有し、耳部2の表編地2−1がカットライン部34−bを介し間接的に編地本体部35と連結されている。この耳部2は、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部35とカットライン部34−bを介し連結されていればよい。
【0028】
好ましい耳部2の例としては、編成段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1はカットライン部34−bを介し間接的に編地本体部35と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は直接的にもカットライン部34―bを介して間接的にも編地本体部35とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。
【0029】
前記耳部2とカットライン部34―bを介して連結される編地本体部35は、表編地35−1と裏編地35−2から形成され、前記繊維製品部33と捨て部36の他、繊維製品部33同士の間に前記繊維製品部33の外形線33a全周に沿って設けられたカットライン部34−aを有する。そして、前記編地本体部35の長手方向に沿った両端35aには、カットライン部34−bを介して前記耳部2が間接的に連結されている。前記編地本体部35には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部33が形成される。この繊維製品部33は、前記表編地35−1及び裏編地35−2が目的とする繊維製品の外形線に沿って連結されることで形成される。また、編地本体部35には、前記繊維製品部33の外形線33a全周に沿って、カットライン部34−aが設けられている。そして、編地本体部35には、前記カットライン部34−aの更に外側に、捨て部36が設けられ、この捨て部36の両端、すなわち、編地本体部35の両端35aが、前記耳部2とカットライン部34−bを介して間接的に連結されている。耳部2の編成を含めたその他については、前記実施の形態と同様である。
【0030】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、表編地15−1と裏編地15−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2と編地本体部15の間にはカットライン部が設けられておらず、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と直接連結されている(図7及び図8)。第1の実施の形態では、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみがカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されていたが、第2の実施の形態では、カットライン部を介さずに直接、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と連結されている。
【0031】
ここで、前記筒状部とは、表編地15−1と裏編地15−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、繊維製品部13と捨て部16を指す。一方、前記編地本体部15とは、前記筒状部と同様に、表編地15−1と裏編地15−2から形成されるが、前記繊維製品部13と捨て部16の他、繊維製品部13同士の間に繊維製品部13の外形線13aに沿って設けられたカットライン部14をも含んでいる。
【0032】
好ましい耳部2の例としては、図5に示すように編み段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の裏編地2−2は、直接、編地本体部15と連結されており、耳部2の表編地2−1の部分は、直接的にもカットライン部を介しても編地本体部15とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。なお、図5では、耳部2を構成する裏編地2−2と編地本体部15とが直接連結されていたが、耳部2を構成する表編地2−1と編地本体部15とが直接連結されたものであってもよい。
【0033】
また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部15とが直接連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部15とが直接連結されたものであってもよい。また、他の耳部2の構成として、編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と直接連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0034】
前記耳部2と直接連結される編地本体部15は、前述の通り、表編地15−1と裏編地15−2から形成され、前記繊維製品部13と捨て部16の他、繊維製品部13同士の間に設けられたカットライン部14を有する。そして、前記編地本体部15の長手方向に沿った両端15aには、前記耳部2が直接連結されている。前記編地本体部15には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部13が形成される。この繊維製品部13は、前記表編地15−1及び裏編地15−2が目的とする繊維製品の外形線に沿って連結されることで形成される。また、編地本体部15には、前記繊維製品部13の外形線13a全周に沿って、カットライン部14が設けられている。そして、編地本体部15には、前記カットライン部14の更に外側に、捨て部16が設けられ、この捨て部16の両端、すなわち、編地本体部15の両端15aが、前記耳部2と直接連結されている。
耳部2の編成を含めたその他については、第1の実施の形態と同様である。
【0035】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、表編地25−1と裏編地25−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部25と直接連結されている(図9及び図10)。ここで、編地本体部25は、その両端25aに沿って捨て部26と、カットライン部24とが交互に設けられ、これら捨て部16とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。
【0036】
ここで、前記筒状部とは、表編地25−1と裏編地25−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、繊維製品部23と捨て部26を指す。一方、前記編地本体部25とは、前記筒状部と同様に、表編地25−1と裏編地25−2から形成されるが、前記繊維製品部23と捨て部26の他、繊維製品部23同士の間に設けられたカットライン部24をも含んでいる。
【0037】
好ましい耳部2の例としては、図10に示すように編み段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1は、直接、編地本体部25と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は、編地本体部25とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。なお、図10では、耳部2を構成する表編地2−1と編地本体部25とが直接連結されていたが、耳部2を構成する裏編地2−2と編地本体部25とが直接連結されたものであってもよい。
【0038】
また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部25とが直接連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部25とが直接連結されたものであってもよい。また、他の耳部2の構成として、編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部25と直接連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0039】
前記耳部2と直接連結される編地本体部25は、前述の通り、表編地25−1と裏編地25−2から形成され、前記繊維製品部23と捨て部26の他、繊維製品部23同士の間に繊維製品部23の外形線23aに沿って設けられたカットライン部24を有する。そして、前記編地本体部25の長手方向Xに沿った両端25aには、前記耳部2が直接連結されている。前記編地本体部25には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部23が形成される。この繊維製品部23は、前記表編地25−1及び裏編地25−2が目的とする繊維製品の外形線23aに沿って連結されることで形成される。また、編地本体部25には、前記繊維製品部23の外形線23a全周に沿って、カットライン部24が設けられている。前記、捨て部26と、カットライン部24は、編地本体部25の両端25aに沿って、交互に設けられ、これら捨て部26とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。耳部2の編成を含めたその他の箇所については、第1、第2の実施の形態のそれぞれの構成と同様である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の長尺経編物について実施例により更に説明をおこなう。
(実施例1)
ポリウレタン繊維をナイロン繊維でカバリングした糸を用いて、編地本体部5の密度ウエール46本/2.54cm、コース33本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、カットライン部4−bを介し幅5cmの耳部2を有している(図1)。編地本体部5には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線3aの一部に沿ってカットライン部4−aを有する。この耳部2は、編成時には2.5cm幅に編み、耳部2の表編地2−1のみを編地本体部5とカットライン部4−bを介し連結させ、耳部2の裏編地2−2と編地本体部5を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物1の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合せ一枚状に連結させ幅5cmに形成させたものである(図4)。
【0041】
次に、上記長尺経編物1を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、160℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳外れやピンの編地本体部5への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0042】
次に、液流染色装置にて、酸性染料IRGALAN BLACK BGL(チバステシャリティーケミカルズ株式会社製)を用い、105℃にて30分間染色し、黒色に染めた。引続きピンテンターにて150℃で60秒間にて熱セットし、染色された表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物を得た。その後、カットライン4−aおよび4−bにてカットし、黒色のシャツを得た。
【0043】
最後のピンテンターでの乾熱セット時にも耳はずれも編地本体部5への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地をともに編地本体部と連結させて得られた編地と比べ、同じ幅の耳を製造した場合、耳部の糸量が約半分で製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳幅を左右2.5cmづつ狭くして編めるため、編地本体部も5cm広く使用することができた。
【0044】
(実施例2)
ポリエステル繊維を用い、編地本体部15の密度ウエール46本/2.54cm、コース40本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、幅2cmの耳部2が形成されている。(図7及び図8)また、編地本体部15には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線13aに沿ってカットライン部14を有する。この耳部2は、編成時には1cm幅に編み、耳部2の裏編地2−2のみを編地本体部15と直接連結し、耳部2の表編地2−1と編地本体部15を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物1の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合わせ一枚状に連結させ、裏編地2−2面側に幅2cmに形成させたものである(図5)。耳部2と編地本体部15の間にはカットライン部を有さない。次に、上記長尺経編物1を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、180℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳はずれも、編地本体部15への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0045】
次に、液流染色装置にて、分散染料SUMIKARON BLUE E−RPD(住化ケムテックス株式会社)を用い、130℃にて30分間染色し、青色に染めた。引続き、パディング法にて、帯電防止剤(ナイスポールFL(日華化学株式会社製))、柔軟剤(ソフテックスK−370(北広ケミカル株式会社製))を付与した。次に、引続きピンテンターにて150℃で60秒間にてセットし、染色された表編地15−1と裏編地15−2からなる筒状部を含む長尺経編物を得た。その後、カットライン部14にてカットし、青色のシャツを得た。
【0046】
最後のピンテンターでの乾熱セット時にも耳はずれも、また、編地本体部15への食い込みも発生せず生産性に優れていた。この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地をともに編地本体部に連結して得られた編地に比べ、同じ幅の耳を製造した場合、耳部の糸量を約半分にして製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳部の耳幅を左右1cmづつ狭くして編めるため、編地本体部も2cm有効に使用することができた。
【0047】
(実施例3)
カチオン可染ポリエステル繊維を用い、編地本体部25の密度ウエール46本/2.54cm、コース45本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、幅4cmの耳部2を有している(図9及び図10)。また、編地本体部25には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線23aに沿ってカットライン部24を有する。ここで、編地本体部25は、その両端25aに沿って捨て部26と、カットライン部24とが交互に設けられ、これら捨て部26とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。この耳部2は、編成時には2cm幅に編み、耳部2の表編地2−1のみを編地本体部25と直接連結させる。具体的には、耳部2を編地本体部25の捨て部26と直接連結させるとともに(図5参照、ただし、図5は第2の実施の形態において、耳部2の裏編地2−2と編地本体部15とを直接連結させた例である)、耳部2を編地本体部25のカットライン部24と連結させる(図4参照)。また、耳部2の裏編地2−2と編地本体部25を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物25の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合せ一枚状に連結させ、幅4cmの耳部2を形成させたものである。
【0048】
次に、上記長尺経編物を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、180℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳はずれも、編地本体部25への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0049】
次に、カットライン部4−aでカットしシャツを切り出した後、ドラム型染色機にて、カチオン染料Kayacryl ED Yellow 7GL−ED(日本化薬株式会社製)を用い、120℃にて30分間染色し、黄色に染めた。乾燥した後、スプレー法にて帯電防止剤(ナイスポールFL(日華化学株式会社製)、柔軟剤(ソフテックスK−370(北広ケミカル株式会社製)を付与した。
【0050】
この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地とも編地本体部と連結させて得られた編地と比べ、同じ幅の耳を製造した場合に、耳部の糸量が約半分で製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳部の耳幅を左右2cmずつ狭く編めるため、編地本体部も4cm広く使用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は図1のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図3】図3は第1の実施の形態または第3の実施の形態の耳部の断面図である。
【図4】図4は第1の実施の形態または第3の実施の形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は第2の実施の形態の耳部の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、耳部の表編地と裏編地を全面で一体化させた従来の長尺経編物の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は図7のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は図9のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図11】図11は本発明の第1の実施の形態の他の例の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図12】図12は図11のA−A’線に沿って表される断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・長尺経編物
2・・・耳部
2−1・耳部の表編地
2−2・耳部の裏編地
2a・・耳部の表編地及び裏編地の外端
3,13,23,33・・・繊維製品部
3a,13a,23a,33a・・繊維製品部の外形線
14,24・・・カットライン部
4−a,4−b・・・カットライン部
34−a,34−b・・・カットライン部
5,15,25,35・・・編地本体部
5−1,15−1,25−1,35−1・・・編地本体部の表編地
5−2,15−2,25−2,35−2・・・編地本体部の裏編地
5a,15a,25a,35a・・編地本体部の両端
6,16,26,36・・・捨て部
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部を含む長尺経編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
編物は、一般的に精練―熱セット―染色または精練―熱セット―染色―熱セットといった工程にて加工を施されている。ここでの熱セットの目的は、染色中に発生する生地荒れや加工シワの防止、染めムラの防止、耳巻きの防止、加工収縮の防止の付与などにあり、生地荒れ、加工シワ、加工収縮の原因は主として編物の寸法安定性の悪さに起因している。
【0003】
また、衣服等は、織物や編物を形成した後、前身頃、後身頃、襟等の各部位を型紙に沿って裁断し縫製することによって製造されているが、前記裁断・縫製といった工程は手間がかかるため、これらの工程を省いて製造できる無縫製ニットと呼ばれるものの製造も以前より行われている。前記無縫製ニットとしては、丸編物や横編物を用いて得られるセーターなどのものの他、生産性に優れる方法として、経編物、特に長尺経編物を用い、この経編物から切り出すことによって得られるものが知られている。前記経編物を用い、衣服等の繊維製品を製造する場合は、その表編地と裏編地が目的とする衣服等の繊維製品の外形線に沿って連結され、この外形線に沿って衣服等の繊維製品が切り出されることになる(特許文献1)。
【0004】
ここで、前記のような表編地及び裏編地を有している長尺経編物を製造する場合、その耳部も、表編地及び裏編地を有するように形成されることが一般的である。これは、同一の編機にて、耳部を有する経編物以外の他の編物、例えば、耳部の必要がない編物を編んだりするなど、多品種、小ロットの環境下では、全ての針に糸をかけておき、耳部も表編地と裏編地を有するものを編んだ方が、生産性に優れると考えられているためである。
【0005】
また、経編物は、ピンテンターやクリップテンターを用いて熱セットされるときに、耳部にピンを刺したり、耳部をクリップで挟んだりするため、耳部に特に大きな力が加わり、耳裂けが発生することがある。このような事態を生じさせないためにも、前記のように耳部が表編地及び裏編地から形成され、当該耳部が編地2枚分の厚みを有するようにすることは、その強度を向上させると考えられていたからである。ここで、従来の長尺経編物では、耳部の表編地及び裏編地を編みこみ、両編地を一体化させた構成が多い(図6参照)。
【特許文献1】特開2001−181908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記構成の耳部を有する従来の経編物は、以下の問題を有していた。経編物の耳部は、織物に比べ柔かい、伸縮性が大きいなどの理由により、耳折れやテンターピンの耳外れやテンターピンの食い込みが発生しやすい。このような事態を防止するためには、耳部の幅を広くして、ピンテンターやクリップテンターでの加工をしやすくする必要がある。しかしながら、前記のように、耳部の表編地と裏編地とを全面で連結し一体化させる等などして両編地を一体的に重ね合わせた経編物の場合、耳部の幅を所定幅広げるためには、1枚の編地の耳部を形成する場合と比較して2倍の量の糸が必要となり、また、前記経編物の場合、耳部の幅を所定幅に広げるためには、編地本体部の幅を狭くする必要があり、衣服等の繊維製品部分として用いることが出来る幅が狭くなってしまっていた。
【0007】
したがって、本発明では、耳部の幅を2倍に広げることができ、かつ、加工しやすい、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0009】
本発明に係る長尺経編物は、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して間接的に連結されていることを特徴とする。また、本発明に係る長尺経編物は、前記構成を有する長尺経編物であって、前記耳部の表編地と裏編地とが、両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して連結されている。このため同一の耳幅を有する耳部を従来の半分の糸量で得ることができる。更に、本発明によれば、前記耳部の表編地と裏編地とが両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されているため、前記耳部の表編地または裏編地のうち、編地本体部と連結されていない方の編地を、両編地の外端を中心に外側に広げることができる。これにより、当該耳部の幅を、表編地及び裏編地をズレなく重ね合わせていた従来の経編物の耳部よりも、広くすることができる。これにより、耳部の幅を広げる必要があるときでも、衣服等の繊維製品部分として用いられる編地本体部の幅を狭くせずに、耳部の幅を広げることができる。逆に、前記編地本体部の幅を所定の幅に広げる必要があるときでも、耳部の幅を狭くせずに、編地本体部の幅を広げることができる。
【0011】
ここで、前記耳部の一方の編地の幅は、他方の編地の幅で形成することが好ましい。このような構成とすると、前記耳部の表編地または裏編地のうち、編地本体部と連結されていない一方の編地を外側に広げたとき、当該耳部の幅を表編地(裏編地)の幅の2倍にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の長尺経編物は、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介し連結されているため、耳幅が広く加工のしやすい、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態を示す長尺経編物1であり、表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物である。当該長尺経編物1は表編地2−1及び裏編地2−2から構成される耳部2を有し、耳部2の表編地2−1がカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されている(図2及び図4)。本実施の形態の長尺経編物1の編地本体部5では、前記繊維製品部3としてシャツが長手方向Xに連続して形成されている。すなわち、繊維製品部3としてのシャツが長手方向においてリピートされるパターンとなっている。なお、第1の実施の形態の耳部2は、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5とカットライン部4−bを介し連結されていればよい。
【0015】
ここで、前記筒状部とは、表編地5−1と裏編地5−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、以下で説明する繊維製品部3と捨て部6を指す。一方、前記編地本体部5とは、前記筒状部と同様に、表編地5−1と裏編地5−2から形成されるが、前記繊維製品部3と捨て部6の他、繊維製品部3同士の間に設けられたカットライン部4−aをも含んでいる。また、カットライン部は、前記編地本体部5の中に含まれるカットライン部4−aと、前記編地本体部5と前記耳部2との間に長手方向Xに沿って設けられる前記カットライン部4−bとがある。
【0016】
まず、本実施の形態の編地本体部5について、詳細に説明する。編地本体部5を編成するための糸の素材は、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリ乳酸、レーヨン、大豆タンパク繊維、アセテートなどの化学繊維、綿、麻、毛、絹などの天然繊維であってもよく、これらの繊維の混繊、混紡、交編したものであってもよい。また、糸は、顔料が練り込まれた原着糸や染料で染色された先染め糸を用いてもよい。さらに未着色の糸を用い編成後、染料を用い染色してもよい。また、本発明の編地本体部5は、経編であれば編組織等は任意の編組織のものを用いることができ、デンビー編、コード編、アトラス編などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに、無地調であっても、編組織によりストライブ柄や花柄など任意の柄を付与したものであってもよい。
【0017】
前記耳部2とカットライン部4−bを介して間接的に連結される編地本体部5は、前述の通り、表編地5−1と裏編地5−2から形成され、前記繊維製品部3と捨て部6の他、繊維製品部3同士の間に設けられたカットライン部4−aを有する。そして、前記編地本体部5の長手方向に沿った両端5aには、前記カットライン部4−bを介して前記耳部2が間接的に連結されている。前記編地本体部5には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部3が形成される。この繊維製品部3は、前記表編地5−1及び裏編地5−2が目的とする繊維製品の外形線3aに沿って連結されることで形成される。また、編地本体部5には、前記外形線3aで区切られた繊維製品部3同士の間に、カットライン部4−aが設けられている。ここで、繊維製品部3の袖部は、その外形線3aが前記カットライン部4−bに沿うように設けられている。すなわち、編地本体部5の両端5aと繊維製品部3の外形線3aとが部分的に重なっている。本実施の形態の長尺経編物1の編地本体部5では、前記繊維製品部3としてシャツが長手方向Xに連続して形成されている。すなわち、繊維製品部3としてのシャツが長手方向においてリピートされるパターンとなっている。前記繊維製品部3を形成する際は、前記表編地5−1及び裏編地5−2のカットライン部4―a及びカットライン部4−bに沿った箇所が連結される。ただし、カットライン部4−a,4−bに沿った箇所であっても、首部や袖口部、裾部などの首や腕、胴体を通すための出入り口部は連結されてはいない。
【0018】
次に、本実施の形態のカットライン部4−aおよび4−bについて説明する。カットライン部4―aは、編地本体部5の中に含まれるカットライン部であり、繊維製品部3同士の間(具体的には、一方の繊維製品部3の裾部と他方の繊維製品部3の首部の間)、繊維製品部3と捨て部6の間(具体的には、繊維製品部3と繊維製品部3の肩部周辺の捨て部6との間/繊維製品部3と繊維製品部3の袖口部周辺の捨て部6との間)、捨て部6同士の間(具体的には、繊維製品部3の肩部周辺の捨て部6と繊維製品部3の袖口部周辺の捨て部6との間)、繊維製品部3を構成するシャツの袖と脇の間等に設けられている。また、カットライン部4−bは、編地本体部5と耳部2の間、具体的には、繊維製品部3と耳部2の間、捨て部6と耳部2の間に設けられている。捨て部6は、繊維製品部3をカットライン部4―a及び4−bにてカットすることにより切り出した後は、不要となるが、この部分で、帽子や手袋などの小物を得ることができるように別途カットライン部等を設けてもよい。第1の実施の形態では、カットライン部4−a及び4−bをカットし切り出すことにより、シャツが得られる。また、本実施の形態では、シャツとシャツの間においても全幅方向にてカットライン部4−aを設けたが、必ずしも幅方向すべてにわたりカットライン部4―aを設ける必要はなく、繊維製品部3と繊維製品部3との間のみにカットライン部4―aを設ける構成としてもよい。
【0019】
次に、本実施の形態の耳部2について、詳細に説明する。長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端部分に形成される耳部2は、表編地2−1及び裏編地2−2からなる。前記耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2の編組織は、経編であれば、特に限定されるものではなく、編地本体部5の表編地5−1及び裏編地5−2と同一の編み組織であってもよい。あるいは、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2の編組織の密度を大きくしたり、編地本体部5とは異なった組織としたり、左右の耳部2について、それぞれを異なった組織で編成してもよい。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2に用いられる糸は、編地本体部5と同一の糸や強度の大きい糸を用いてもよい。
【0020】
好ましい耳部2の例としては、図4に示すように編成段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1はカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は直接的にもカットライン部4―bを介して間接的にも編地本体部5とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。このような構成とすることにより、編成した後、前記耳部2の表編地2−1または裏編地2−2のうち、編地本体部5と連結されていない方の編地(ここでは裏編地2−2)を、両編地の外端2aを中心に外側に広げることができ、編成後の当該耳部2の幅を、表編地2−1(または裏編地2−2)1枚分の幅の2倍とすることができる。
【0021】
このような耳部2の構成をもつ長尺経編物1を編むことにより、従来の耳部の表編地52−1と裏編地52−2とを全面で連結し一体化させる等などして両編地を一体的に重ね合わせた経編物51の場合(図6参照)と比較して、同一の糸量および手間で、耳部2の幅が2倍となる。耳部2の幅が広がることにより、ピンテンターによる熱セット時に生産性があがる。また、前記長尺経編物1は、編成時は編機により従来の長尺経編物と同一の編幅で、かつ、耳部2の幅を目的とする耳幅の半分の幅で編成することにより編成後、その耳部2の幅を広げることで、耳部2の幅を従来の長尺経編物の耳部と同一の幅を有ししつつ、長尺経編物1の編地本体部5の幅を従来の長尺経編物の編地本体部の幅よりも広い幅とすることができる。これにより、有効に使用できる編地本体部5の幅が大きくなり、有効幅の増加の観点からもコストの低下や生産性の向上が図れる。
【0022】
耳部2の幅は、1.0cm〜10cm程度が好ましい。1.0cm未満では、ピンテンター等のピンにうまくかからず、ピンはずれが発生したり、ピンが編地本体部5に食い込んでいく可能性がある。また、10cmを超えると捨てる部分(耳部2)が多くなるため、コスト的に好ましくない。
【0023】
より具体的に好ましくは、5cmの耳部2を長尺経編物1の両端部分にそれぞれ設ける場合には、編成時、2.5cmの耳幅にて耳部2を編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2を全面に一体的に連結させず、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2の長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aのみを連結させ、かつ、表編地2−1もしくは裏編地2−2のどちらか一方を編地本体部5とカットライン部4を介して(第2の実施の形態では直接)連結させれば、編成後、2.5cmの2倍の5cm幅の耳部2が得られ(編成時、耳幅2.5cmで編成された耳部2は、編成後、表編地2−1もしくは表編地2−2のいずれかを外側に広げることで、その耳幅が5cmとなる。)、また、編成時の長尺経編物1の幅が同一で、同一の耳幅(5cm)を有する従来の耳構造を有する長尺経編物と比べ、有効に使用できる編地本体部5の幅が5cm広がることになる。
【0024】
図4では耳部2の表編地2−1が、カットライン部4−bを介して編地本体部5と連結されていたが、耳部2の表編地2−1ではなく、耳部2の裏編地2−2と編地本体部5がカットライン部4−bを介して、連結されていてもよい(この場合は、耳部2の表編地2−1と編地本体部5とは直接的にもカットライン部4−bを介しても連結されてはいない。)。また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部5とがカットライン部4−bを介し連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部5とがカットライン部4−bを介し連結されたものであってもよい。
【0025】
また、他には図3に示すように編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。この場合も、編地本体部5と耳部2は、カットライン部4−bを介し間接的に連結されていればよい。
また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部5とカットライン部4−bを介して間接的に連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0026】
また、図1の例では、切り出しによってシャツが得られるものであったが、パンツやジャケット、帽子等の他の繊維製品であってもよい。また、長手方向Xに一枚ずつシャツを形成したものであったが、幅方向に複数のシャツが得られるように編成したものであっても、またこれらの首部同士を向かい合わせて編成するなど繊維製品の向き等も特に限定されるものではない。また、切り出しによって衣服等の繊維製品を形成するための長尺経編物1の例を記載したが、表編地と裏編地からなる筒状部を含む長尺経編物を精練、染色、熱セットを行った後、パンツ、シャツ、帽子など用途に応じ、それらの形状にマーキングし、カット、縫製をおこなうものに用いてもよい。
【0027】
図11及び図12は、本実施の形態の他の例の長尺経編物1であり、表編地35−1と裏編地35−2からなる筒状部を含む長尺経編物である。当該長尺経編物1は表編地2−1及び裏編地2−2から構成される耳部2を有し、耳部2の表編地2−1がカットライン部34−bを介し間接的に編地本体部35と連結されている。この耳部2は、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部35とカットライン部34−bを介し連結されていればよい。
【0028】
好ましい耳部2の例としては、編成段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1はカットライン部34−bを介し間接的に編地本体部35と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は直接的にもカットライン部34―bを介して間接的にも編地本体部35とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。
【0029】
前記耳部2とカットライン部34―bを介して連結される編地本体部35は、表編地35−1と裏編地35−2から形成され、前記繊維製品部33と捨て部36の他、繊維製品部33同士の間に前記繊維製品部33の外形線33a全周に沿って設けられたカットライン部34−aを有する。そして、前記編地本体部35の長手方向に沿った両端35aには、カットライン部34−bを介して前記耳部2が間接的に連結されている。前記編地本体部35には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部33が形成される。この繊維製品部33は、前記表編地35−1及び裏編地35−2が目的とする繊維製品の外形線に沿って連結されることで形成される。また、編地本体部35には、前記繊維製品部33の外形線33a全周に沿って、カットライン部34−aが設けられている。そして、編地本体部35には、前記カットライン部34−aの更に外側に、捨て部36が設けられ、この捨て部36の両端、すなわち、編地本体部35の両端35aが、前記耳部2とカットライン部34−bを介して間接的に連結されている。耳部2の編成を含めたその他については、前記実施の形態と同様である。
【0030】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、表編地15−1と裏編地15−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2と編地本体部15の間にはカットライン部が設けられておらず、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と直接連結されている(図7及び図8)。第1の実施の形態では、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみがカットライン部4−bを介し間接的に編地本体部5と連結されていたが、第2の実施の形態では、カットライン部を介さずに直接、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と連結されている。
【0031】
ここで、前記筒状部とは、表編地15−1と裏編地15−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、繊維製品部13と捨て部16を指す。一方、前記編地本体部15とは、前記筒状部と同様に、表編地15−1と裏編地15−2から形成されるが、前記繊維製品部13と捨て部16の他、繊維製品部13同士の間に繊維製品部13の外形線13aに沿って設けられたカットライン部14をも含んでいる。
【0032】
好ましい耳部2の例としては、図5に示すように編み段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の裏編地2−2は、直接、編地本体部15と連結されており、耳部2の表編地2−1の部分は、直接的にもカットライン部を介しても編地本体部15とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。なお、図5では、耳部2を構成する裏編地2−2と編地本体部15とが直接連結されていたが、耳部2を構成する表編地2−1と編地本体部15とが直接連結されたものであってもよい。
【0033】
また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部15とが直接連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部15とが直接連結されたものであってもよい。また、他の耳部2の構成として、編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部15と直接連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0034】
前記耳部2と直接連結される編地本体部15は、前述の通り、表編地15−1と裏編地15−2から形成され、前記繊維製品部13と捨て部16の他、繊維製品部13同士の間に設けられたカットライン部14を有する。そして、前記編地本体部15の長手方向に沿った両端15aには、前記耳部2が直接連結されている。前記編地本体部15には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部13が形成される。この繊維製品部13は、前記表編地15−1及び裏編地15−2が目的とする繊維製品の外形線に沿って連結されることで形成される。また、編地本体部15には、前記繊維製品部13の外形線13a全周に沿って、カットライン部14が設けられている。そして、編地本体部15には、前記カットライン部14の更に外側に、捨て部16が設けられ、この捨て部16の両端、すなわち、編地本体部15の両端15aが、前記耳部2と直接連結されている。
耳部2の編成を含めたその他については、第1の実施の形態と同様である。
【0035】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、表編地25−1と裏編地25−2からなる筒状部を含む長尺経編物1であって、耳部2を構成する表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部25と直接連結されている(図9及び図10)。ここで、編地本体部25は、その両端25aに沿って捨て部26と、カットライン部24とが交互に設けられ、これら捨て部16とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。
【0036】
ここで、前記筒状部とは、表編地25−1と裏編地25−2から形成され、内部が空洞となっている部分であり、繊維製品部23と捨て部26を指す。一方、前記編地本体部25とは、前記筒状部と同様に、表編地25−1と裏編地25−2から形成されるが、前記繊維製品部23と捨て部26の他、繊維製品部23同士の間に設けられたカットライン部24をも含んでいる。
【0037】
好ましい耳部2の例としては、図10に示すように編み段階では表編地2−1と裏編地2−2を編んでおり、耳部2の表編地2−1は、直接、編地本体部25と連結されており、耳部2の裏編地2−2の部分は、編地本体部25とは連結されておらず、かつ、編成時の耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が長尺経編物1の長手方向Xに沿った両端(外端)2aで編み合わされ一枚状になった状態で連結されているものがよい。なお、図10では、耳部2を構成する表編地2−1と編地本体部25とが直接連結されていたが、耳部2を構成する裏編地2−2と編地本体部25とが直接連結されたものであってもよい。
【0038】
また、長尺経編物1の左右の耳部2において、一方の耳部2が自らを構成する表編地2−1と編地本体部25とが直接連結されており、もう一方の耳部2が自らを構成する裏編地2−2と編地本体部25とが直接連結されたものであってもよい。また、他の耳部2の構成として、編みの段階で耳部2の裏編地2−2や表編地2−1の一方を編まないものなどをあげることができる。また、耳部2の表編地2−1及び裏編地2−2を編み、表編地2−1または裏編地2−2のいずれか一方のみが編地本体部25と直接連結されており、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2が連結されていないものであってもよい。
【0039】
前記耳部2と直接連結される編地本体部25は、前述の通り、表編地25−1と裏編地25−2から形成され、前記繊維製品部23と捨て部26の他、繊維製品部23同士の間に繊維製品部23の外形線23aに沿って設けられたカットライン部24を有する。そして、前記編地本体部25の長手方向Xに沿った両端25aには、前記耳部2が直接連結されている。前記編地本体部25には、切り出しによって衣服等の繊維製品となる繊維製品部23が形成される。この繊維製品部23は、前記表編地25−1及び裏編地25−2が目的とする繊維製品の外形線23aに沿って連結されることで形成される。また、編地本体部25には、前記繊維製品部23の外形線23a全周に沿って、カットライン部24が設けられている。前記、捨て部26と、カットライン部24は、編地本体部25の両端25aに沿って、交互に設けられ、これら捨て部26とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。耳部2の編成を含めたその他の箇所については、第1、第2の実施の形態のそれぞれの構成と同様である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の長尺経編物について実施例により更に説明をおこなう。
(実施例1)
ポリウレタン繊維をナイロン繊維でカバリングした糸を用いて、編地本体部5の密度ウエール46本/2.54cm、コース33本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、カットライン部4−bを介し幅5cmの耳部2を有している(図1)。編地本体部5には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線3aの一部に沿ってカットライン部4−aを有する。この耳部2は、編成時には2.5cm幅に編み、耳部2の表編地2−1のみを編地本体部5とカットライン部4−bを介し連結させ、耳部2の裏編地2−2と編地本体部5を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物1の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合せ一枚状に連結させ幅5cmに形成させたものである(図4)。
【0041】
次に、上記長尺経編物1を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、160℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳外れやピンの編地本体部5への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0042】
次に、液流染色装置にて、酸性染料IRGALAN BLACK BGL(チバステシャリティーケミカルズ株式会社製)を用い、105℃にて30分間染色し、黒色に染めた。引続きピンテンターにて150℃で60秒間にて熱セットし、染色された表編地5−1と裏編地5−2からなる筒状部を含む長尺経編物を得た。その後、カットライン4−aおよび4−bにてカットし、黒色のシャツを得た。
【0043】
最後のピンテンターでの乾熱セット時にも耳はずれも編地本体部5への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地をともに編地本体部と連結させて得られた編地と比べ、同じ幅の耳を製造した場合、耳部の糸量が約半分で製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳幅を左右2.5cmづつ狭くして編めるため、編地本体部も5cm広く使用することができた。
【0044】
(実施例2)
ポリエステル繊維を用い、編地本体部15の密度ウエール46本/2.54cm、コース40本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、幅2cmの耳部2が形成されている。(図7及び図8)また、編地本体部15には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線13aに沿ってカットライン部14を有する。この耳部2は、編成時には1cm幅に編み、耳部2の裏編地2−2のみを編地本体部15と直接連結し、耳部2の表編地2−1と編地本体部15を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物1の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合わせ一枚状に連結させ、裏編地2−2面側に幅2cmに形成させたものである(図5)。耳部2と編地本体部15の間にはカットライン部を有さない。次に、上記長尺経編物1を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、180℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳はずれも、編地本体部15への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0045】
次に、液流染色装置にて、分散染料SUMIKARON BLUE E−RPD(住化ケムテックス株式会社)を用い、130℃にて30分間染色し、青色に染めた。引続き、パディング法にて、帯電防止剤(ナイスポールFL(日華化学株式会社製))、柔軟剤(ソフテックスK−370(北広ケミカル株式会社製))を付与した。次に、引続きピンテンターにて150℃で60秒間にてセットし、染色された表編地15−1と裏編地15−2からなる筒状部を含む長尺経編物を得た。その後、カットライン部14にてカットし、青色のシャツを得た。
【0046】
最後のピンテンターでの乾熱セット時にも耳はずれも、また、編地本体部15への食い込みも発生せず生産性に優れていた。この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地をともに編地本体部に連結して得られた編地に比べ、同じ幅の耳を製造した場合、耳部の糸量を約半分にして製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳部の耳幅を左右1cmづつ狭くして編めるため、編地本体部も2cm有効に使用することができた。
【0047】
(実施例3)
カチオン可染ポリエステル繊維を用い、編地本体部25の密度ウエール46本/2.54cm、コース45本/2.54cmの筒状部を含む長尺経編物1であり、長尺経編物1両端部分には、幅4cmの耳部2を有している(図9及び図10)。また、編地本体部25には、繊維製品部3としてシャツが形成されており、その外形線23aに沿ってカットライン部24を有する。ここで、編地本体部25は、その両端25aに沿って捨て部26と、カットライン部24とが交互に設けられ、これら捨て部26とカットライン部24とが、前記耳部2と直接連結されることになる。この耳部2は、編成時には2cm幅に編み、耳部2の表編地2−1のみを編地本体部25と直接連結させる。具体的には、耳部2を編地本体部25の捨て部26と直接連結させるとともに(図5参照、ただし、図5は第2の実施の形態において、耳部2の裏編地2−2と編地本体部15とを直接連結させた例である)、耳部2を編地本体部25のカットライン部24と連結させる(図4参照)。また、耳部2の裏編地2−2と編地本体部25を連結させずに編成し、耳部2の表編地2−1と裏編地2−2は長尺経編物25の長手方向Xに沿った左右の両端2aのみで編み合せ一枚状に連結させ、幅4cmの耳部2を形成させたものである。
【0048】
次に、上記長尺経編物を80℃にて2分間、苛性ソーダ、界面活性剤、キレート剤を含んだ精練液を用いて、プレウエット処理、水洗をおこなった。長尺経編物1を乾燥せずに引続き、ピンテンターを用い、180℃で30秒間、乾熱セットをおこなった。ピンテンターでの乾熱セット時には耳はずれも、編地本体部25への食い込みも発生せず、生産性に優れていた。
【0049】
次に、カットライン部4−aでカットしシャツを切り出した後、ドラム型染色機にて、カチオン染料Kayacryl ED Yellow 7GL−ED(日本化薬株式会社製)を用い、120℃にて30分間染色し、黄色に染めた。乾燥した後、スプレー法にて帯電防止剤(ナイスポールFL(日華化学株式会社製)、柔軟剤(ソフテックスK−370(北広ケミカル株式会社製)を付与した。
【0050】
この長尺経編物は、耳部の表編地と裏編地とも編地本体部と連結させて得られた編地と比べ、同じ幅の耳を製造した場合に、耳部の糸量が約半分で製造することができた。また、同じ幅で長尺経編物を編成し、同じ幅の耳部を有するものに比べ、編成時の耳部の耳幅を左右2cmずつ狭く編めるため、編地本体部も4cm広く使用することができた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は図1のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図3】図3は第1の実施の形態または第3の実施の形態の耳部の断面図である。
【図4】図4は第1の実施の形態または第3の実施の形態の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は第2の実施の形態の耳部の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、耳部の表編地と裏編地を全面で一体化させた従来の長尺経編物の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図8】図8は図7のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図10】図10は図9のA−A’線に沿って表される断面図である。
【図11】図11は本発明の第1の実施の形態の他の例の長尺経編物の構成を模式的に示す平面図である。
【図12】図12は図11のA−A’線に沿って表される断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・長尺経編物
2・・・耳部
2−1・耳部の表編地
2−2・耳部の裏編地
2a・・耳部の表編地及び裏編地の外端
3,13,23,33・・・繊維製品部
3a,13a,23a,33a・・繊維製品部の外形線
14,24・・・カットライン部
4−a,4−b・・・カットライン部
34−a,34−b・・・カットライン部
5,15,25,35・・・編地本体部
5−1,15−1,25−1,35−1・・・編地本体部の表編地
5−2,15−2,25−2,35−2・・・編地本体部の裏編地
5a,15a,25a,35a・・編地本体部の両端
6,16,26,36・・・捨て部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表編地と裏編地とからなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して間接的に連結されていることを特徴とする長尺経編物。
【請求項2】
前記耳部を構成する表編地と裏編地とが、両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されていることを特徴とする請求項1記載の長尺経編物。
【請求項1】
表編地と裏編地とからなる筒状部を含む長尺経編物であって、耳部を構成する表編地または裏編地のいずれか一方のみが編地本体部と直接またはカットライン部を介して間接的に連結されていることを特徴とする長尺経編物。
【請求項2】
前記耳部を構成する表編地と裏編地とが、両編地の外端で編み合わされ一枚状になった状態で連結されていることを特徴とする請求項1記載の長尺経編物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−248433(P2008−248433A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90983(P2007−90983)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(396021645)吉田産業株式会社 (11)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】
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