長尺繊維ロープの製造法および長尺繊維ロープ
【課題】局部的な径の増加を与えずに無限大までの長尺な編組繊維ロープを、しかも編索機に特別な追加設備を要さずに容易かつ安価に製造できる方法とロープを提供する。
【解決手段】n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下所要長さごとに、他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1の繊維量の断面を有する所望長さの編組ロープを得る。
【解決手段】n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下所要長さごとに、他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1の繊維量の断面を有する所望長さの編組ロープを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺繊維ロープの製造法および長尺繊維ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維ロープはスチールロープに比べて軽量で、柔軟性に富むなどの利点があることから船舶、漁業、海洋施設などの分野、命綱、自動車牽引用、荷掛け用、鉱山のリフト用などに汎用されている。
かかる繊維ロープとしては、ワイヤロープと同じような一方向撚りタイプのほか、編組(組紐)タイプのものが知られている。後者はキンクが起こらず型崩れしないこと、柔軟で取り扱いが容易であること、荷重をかけても回転せず、ねじれないこと、ストランドスの捻り戻しがないため耐摩耗性が3つ打ちロープと変わらないことなどの利点がある。
【0003】
ところで、前記編組タイプの繊維ロープには8つ打ち、12打ち、24打ちなどがあるが、いずれも原糸を撚合したヤーンを複数本撚合したストランドを2本一組として組んだ構造となっており、製造にあたっては、編索機あるいは製綱機において、ストランドを巻収したボビンをキャリヤに配し、これを特殊な軌跡を描かせて移動させつつボビンから繰り出したストランドをボイスに2本1組として導き、組成していた。
【0004】
ボビンにおけるストランドの巻収量は物理的に限界があり、ロープ径が太いほど(ストランド径が太いほど)巻収量は少なくなる。たとえば、直径が100mmの超太径ロープでは、約200mが1回の編組工程で生産できる限界である。
このため、長いロープが必要な場合には、完成した編組ロープの端部をUターン状に曲げ、これの先端部分を曲げ始端の空洞に挿入するなどしてアイスプライスISを設け、このアイスプライスISを接続金具で繋ぐか、あるいは、2本のロープBR1,BR2のそれぞれの端部の編組をばらしてストランド同士を交合状に差し込み、スプライスSSを形成する方法が取られていた。
【0005】
しかし、このような継ぎ方法では、接続部分の径が本体ロープの径に比べて著しく大きくなり、重量変化も大きい。このため、ロープをたとえば沖合い係留ロープや巨大構造物を海上輸する曳き綱として使用し、船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたり、あるいはロープをシーブ類を経由してドラムに巻くときに、ロープ移動がスムーズに行かなくなったり、擦れが増したりし、その結果、ダメージが集中してロープの強度や耐疲労性が低下したりする問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、局部的な径の増加を与えずに無限大までの長尺な編組繊維ロープを、しかも編索機に特別な追加設備を要さずに容易かつ安価に製造できる方法を提供することにある。
また本発明の目的とするところは、長尺でしかも径の変化が少ない繊維ロープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の繊維ロープの製造法は、n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下所要長さごとに、他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1相当の繊維量断面を有する所望長さの編組ロープを得ることを特徴としている。
【0008】
また本発明の長尺繊維ロープは、n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドを組成した編組ロープであって、該編組ロープが、ストランド数n+1の繋ぎ断面部分またはストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記ストランド数n+1の繋ぎ断面部分または繊維量部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるときには、編組ロープを構成すべき8本以上偶数本の所望の1本の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部を繋いで編組を進める工程を、全部のストランドについて順次行い、局部的にn+1本の繊維量部を有する編組ロープを製作するので、無限長の長さのロープを自在に生産でき、たとえばロープ径が100mmを超える編組ロープであっても、400mあるいはそれ以上の長大ロープを容易に製造することができる。
【0010】
また、得られた編組ロープは、径の増加がたとえば12打ちであれば13/12と微小な部分が局部的に生ずるだけで、外観の形状変化がほとんどないので、船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたりし、あるいはロープをドラムに巻いたり、シーブなどを経由させたときに、ロープ移動がスムーズになり、擦れによるダメージの集中を防止できる。しかも、接続部の強度低下がないので、性能も問題がない。
また、編組機への特別な機構や装置の付加や改造も要さないので、安価に実施できるなどのすぐれた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好適には、各繋ぎ部が3ロープリード以上間隔をあけている。
これによれば、繋ぎ部分の間隔があいているので、外観の変化および強度変化を少なくすることができ、また、繋ぎ操作の間隔にゆとりをもてるので、作業性をよくすることができる。
繋ぎ方法としては、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分をラップするように添えて結束する方法か、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部をスプライスする方法である。
前者は簡単であり、時間を取らずに実施できるので生産性をよくすることができる。後者はしっかりとした繋ぎを行え、特にストランドそのものが編組構造からなっている太径のもの、たとえばストランド径が25mm以上でロープ径が100mm以上の編組ロープである場合に有効であり、400mあるいはそれ以上の長大ロープを作ることができる。
【0012】
繋ぎ方法がラップ添え繋ぎである場合、ラップ量はロープリードの2倍〜7倍である。
これによれば、繋ぎ作業が容易であり、しかも繋ぎ部分の強度や伸び特性を通常の編組部分とほぼ同等にすることができる。
【実施例1】
【0013】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明すると、図面は本発明を12打ち編組ロープとその製造法に適用した例を示している。
図2ないし図4は本発明によるロープの所要部分を示しており、1はロープ全体を指し、12本のストランドのうち6本をS撚りとし、他の6本をZ撚りとし、そうした2種類のストランドをある中心線の周りに一定の規則に従って右旋回、左旋回させながら組み込んで、撚り方向が同じ同士2本ずつ1組のストランドが6組編まれた組紐としている。
前記ロープの材質は限定がなく、ナイロン、ポリエステル、テトロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなど汎用の合成繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、全芳香族ポリエステル繊維などの高強度低伸度繊維などから選択される。
【0014】
こうした構成は汎用の12打ちロープと同様であるが、本発明においては、図3ないし図5のように、任意の打ち終りストランド3の尻部30(長手方向端末)に、後続する別のストランド3´の先端部31がラップして添え繋ぎされ、この12+1(n+1)の繋ぎ部2を他のストランドとそのまま編組しており、かかる繋ぎ部2は、別に位置では、図3と図5のように、前記ストランドと異なる任意の打ち終りストランド5の尻部50(長手方向端末)に、後続する別のストランド5´の先端部51がラップして設けられている。
すなわち、図6と7のように、各ストランドに対してその端末部と後続するストランドの先端部について施されており、それによって、図2のような径のほとんど変化がない所望の長さの編組繊維ロープとなっている。
【0015】
前記繋ぎ部2は、粘着テープあるいは糸、細紐などの結束条体4によって数箇所固縛される。繋ぎ部2の長さは、ロープリードの2〜5倍程度が好適である。下限を規定した理由は、繋ぎ部21があまり短いと、編組中あるいはロープになって使用されたときに滑って分離する恐れがあるため、少なくともロープリードの2倍が必要だからであり、上限を規定したのは、繋ぎ操作を製綱機(クローサー)上で行う作業性と繋ぎ部の強度や伸びを考慮すると、ロープリードの5倍程度で足りるからである。
【0016】
前記繋ぎ部2は、各ストランドの編組尻部に対してそれぞれ施されるが、繋ぎを同じ長さ位置で行った場合には、節のようにロープ径がかなり太くなり、しかも、製綱機(クローサー)上で同時に多数本のストランドに対して繋ぎ作業を行うことは、大人数を必要とすることになる。したがって、繋ぎは、各ストランド長さ方向で位置をずらせて行うことが好ましい。
図6はこれを模式的に示しており、順序はランダムでもかまわないが、あるストランドの繋ぎから次のストランドの繋ぎまでの繋ぎ間隔は前記した理由から5ロープリード分以上であることが好ましい。
【0017】
前記本発明ロープの製造法を説明すると、装置としては図6と図7のような12打ち製綱機を用いる。こうした製綱機それ自体は公知である。
100は製紐機本体、101は製紐機中心上方に配置されたボイス、102はキャプスタン機構、103はテンションローラ、104は巻取りローラである。製紐機本体本体100は、ボックス状の機台1001と、該機台上に固定された軌条板1002と、軌条板1002を貫いて伸びる回転軸114に固定された6個のホーンディスク103a〜103fと、各ホーンディスクあたり2個ずつのボビンキャリャ105を備えている。
【0018】
ホーンディスク103a〜103fは平面円形をなし、外面が隣接する同志接する外径を有するとともに、外周には等間隔で切欠きが形成されている。ホーンディスクはそれぞれ中心に穴を有し、軌条板1002の穴から突出する回転軸114の上半部に嵌合固定され、したがってホーンディスク103a〜103fは前記軌条板1002と適度な間隔をおいて対向している。回転軸114は機台1001内に伸び、下部の歯車が機台1内に配された駆動歯車に噛み合い、そして、駆動歯車は伝導手段を介して図示しないモータから出力が伝達され、これらにより各ホーンディスク103a〜103fが方向反対に同期回転されるようになっている。
【0019】
軌条板1002は金属板または合成樹脂成形板からなつており、図8のように表面に数条で1組となったクローバー類似形状の環状溝機構が表面に凹設されている。
ボビンキャリャ105は、図7のように枠状に構成され、所要位置には複数のガイドローラが取り付けられ、またベース部の中心には芯軸が突設され、この芯軸にボビン107が回転自在にはめられ、ボビン107に巻収されたストランドはガイドローラを介して誘導台から斜め上方に導かれ、前記ボイス101において編組されるようになっている。
なお、図示しないが、前記ボビンキャリャ5のベース部の下部中心に結合されるガイド機構を備え、また、ホーンディスク103a〜103fの自転によりボビンキャリャ105を環状溝機構に沿う軌跡を描かせるべくホーンディスク103a〜103fの自転により水平方向の推力を伝達されるサドルを備えている。
各ホーンディスク103a〜103fのボビンキャリャはこの例では2個ずつ180度対称位置となるように配置され、搭載されているボビンに、Z撚りのストランドとS撚りのストランドが巻収される。
【0020】
モータを駆動して駆動歯車を回転すると、回転軸114に固定されている各ホーンディスク103a〜103fは、図8に示すように、隣接するもの同士反対方向に自転する。各サドルおよびこれと相対回転可能なボビンキャリヤ105は、ホーンディスク103a〜103fの自転に伴い、環状溝にそって時計方向と反時計方向に回る2つの移動軌跡を描くように移動し、ボビンキャリャ105はホーンディスクの回転運動により駆動され、かつホーンディスクの回転運動とは相対的に反対方向に回転運動されるので、各ボビンキャリヤ105に装着されているボビン107はストランドの繰出しによりベース部上で回転し、ストランドは図12のように2本ずつ平行状に導かれ、装置中心のボイス101により組成されて12打ち編組ロープとなる。
【0021】
こうした方法は本発明も同じであるが、本発明は、1ロットの編組が終りに近くなり、ボビンに巻収されている先行ストランドがほとんど繰り出されて編組され、次のロットのストランドを満杯に巻いたボビン107を交換してボビンキャリャに付け替えたときに、図11のように、当該ボビン107から後行ストランド3´をキャリヤ上方に引き出し、図11のように、後行ストランドの先端部31を編組ロープの後端から垂れている打ち終りストランド3の尻部30にラップさせ、そのラップしあった部分を数箇所、結束部材4により固縛して繋ぎ部2を形成する。この部分は従って12打ちであれば13本のストランドがラップ長さ分だけ存することになる。
この状態が図8と図11であり、前記繋ぎ部2の好適な長さは、前記した理由からロープリードの2〜5倍程度とする。そしてこの状態で前記したメカニズムと動作によりボイス101で編組を継続する。
【0022】
ボビンへの1ロット分のストランド巻収量は、通常の場合、測長して各ボビンで同等となるようにしているが、本発明では、各ボビンへのストランドの巻収量を、意図的に3ロープリード以上、好適には5ロープリード分以上変えるものである。これにより、前記のように添え繋ぎを終えて編組が再開されたときに、編組ロープの端部から次に短い長さのストランド尻部が現われることになる。そこで、このストランド尻部に、次のロットのボビンからストランドをキャリヤ上部に引き出し、当該ストランドの先端部を、前記打ち終りストランドの尻部にラップさせ、そのラップした部分を数箇所、結束部材により固縛して繋ぎ部2を形成し、その状態で編組を行えばよく、規則的にストランド尻部が現れるので、繋ぎを容易に行える。
【0023】
以下各ストランドに順次前記繋ぎ部2を形成し、編組を行うことで所望の長尺な編組ロープを得ることができる。
図6と図7は前記繋ぎ部の形成を模式的に示しており、右側が編組ロープから下る打ち終りストランドであり、これらを上から順にRS1〜RS12とする。左側が交換されたボビンから繰り出される後続ストランドであり、これらをNS1〜NS12とする。この例ではRS1〜RS12はRS1が最短の長さ、RS12が最長の長さとされ、NS1〜NS12も同様にされる。
【0024】
従って,1ロットの編組の終期には、編組ロープの末端部に、RS1〜RS12が順次現われるので、これに対応してNS1〜NS12を順次添え繋ぎすることで、局部的に13本のストランドで編組された部分のある編組ロープとなる。図7は図6の繋ぎ部2を模式的に断面にしたものである。
なお、添え繋ぎの順序は図6と図7に限定されるものではないが、添え繋ぐストランドの撚り方向は先行と後行のストランドで一致(S撚り同士あるいはZ撚り同士)させることが好ましい。
添え繋ぎは、先行ストランドの終端を検出するセンサーを装備させ、これからの信号で製綱機の運転を一時停止させ、後行ストランドの先端部を先行ストランドの尻部に導き、工具を使用して手作業あるいは自動的に添え繋ぎを行い、停止解除信号で運転を再開するようにしてもよい。
【0025】
本発明は、12本のストランドを順次異なる位置で繋いでいくことから局部的に12/13の径の増加があるだけであり、しかもそれがロープ長手方向で分散して存する。したがって径の変化が少なく、目視してもほとんど通常のロープとわからない。このため、得られたロープを船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたり、あるいはロープをドラムに巻いたり、シーブなどを経由させたときに、ロープ移動がスムーズになるとともに擦れによるダメージの集中を防止できる。しかも、繋ぎ部の強度は繋ぎ部のない部分と同等になるので、性能も問題がない。また、繋ぎはロープの製造中に行われるので、無限大の長さのロープを得ることができ、製造途中でのロープ長さの変更も容易である。
【実施例2】
【0026】
図13ないし図15は、本発明の第2実施例を示している。
この実施例も、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下、所要長さごとに他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1の断面を有する所望長さの編組ロープを得る点は第1実施例と同じである。
すなわち、図13のように、編組ロープ1から延出する打ち終りストランド3の尻部30に対して次ロットのストランド先端部31を繋いで編組を行い、順次他の打ち終りストランド3の尻部30に次ロットのストランド先端部31を繋ぎ、各ストランドの繋ぎを長手方向で間隔をおいて行うことは第1実施例と同じである。
【0027】
しかし、第2実施例においては、ストランドが、第1実施例のような撚り合せ構造でなく、編組ロープ状ストランドである点、すなわち実施例1におけるロープに相当する12打ち構造(8つ打ち以上であってよい)などである点で異なっている。
【0028】
そして、繋ぎ方法ないし繋ぎ部が、ストランドの尻と先端をラップさせ、平行状に引きそろえて固縛する添え繋ぎでなく、編組ロープ状ストランドを構成する編組ストランド同士を編み込むように差し込んでスプライスする点で異なっている。図中2´はスプライス繋ぎ部、3は先行編組ストランド、3´は後行編組ストランドである。
前記スプライス繋ぎ部2´は、第1実施例と同様な工程で行うものであり、説明は援用する。スプライス繋ぎ部2´は、各編組ストランドごとに、それぞれ3ロープリード以上間隔をあけて行うことが好ましく、スプライス長さは、ロープリードの2〜6倍とすることが好ましい。この限定理由は、2倍以下では繋ぎ部が滑ってしまう危険がある方であり、6倍以上では、製綱機上での作業に手間取り、ロープの生産性が低下するからである。
かかる第2実施例においても、ロープ1の繋ぎ部2´は、ストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記繋ぎ断面部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられる。
【0029】
この第2実施例は、太径、たとえば100mm以上の径を持つ編組ロープの場合において好適である。すなわち、こうしたロープは、ストランドとして編組ロープ状ストランドが用いられるが、ストランド径が26〜7mmであるためボビンに巻収され得る長さが短く、したがって、約200mの長さが従来限界であったが、本発明によれば、400mあるいはそれ以上の希望する長さのロープを製造可能となる。
また、編組ロープ状ストランドであるため、第1実施例のように、ストランドの尻部と先端部をラップさせて繋ぐと、繋ぎ部の径が大きくなるが、スプライス繋ぎとすれば、ストランドが交差状に差し込まれるので相対的に径の変化が少なくなる利点がある。
【0030】
本発明ロープの具体例を示す。
テトロン繊維を使用して、それぞれ径が3.3mmのS撚りストランド6本と、Z撚りストランド6本を作り、それらを縦型製綱機に掛けて、リード70mmで編組し、径12mmの12打ち繊維ロープを製造した。
このときに、後行ストランドの先端部をキャリアから引き出し、打ち終わりストランドの尻部とラップさせ、その部分を数箇所、粘着テープで固縛し、製綱機を運転して編組を持続し、上記繋ぎ操作を5リードごとに各ストランドに対して順次行い、全長500mのロープを得た。このロープを目視した結果、繋ぎ部分の見分けが付かなかった。またロープを手でグリップして移動させても、径の変化がほとんど感じられなかった。
【0031】
繋ぎ部の適正長さを検討するため、ラップ長さをリードの約2倍(165mm=2P)、約3倍(210mm=3P)、約4倍(280mm=4P)および約5倍(350mm=5P)にとったロープを製作した。それらを本発明1〜4とする。
得られた各ロープから3mの供試体を切り出し、径、切断荷重と伸びを測定した結果を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1において、径、リードは初期荷重時の値であり、径は繋ぎ部の値である。「ブランク」とは、繋ぎ部以外の部分を意味する。
表1から明らかなように、繋ぎ部の強度はそれ以外のロープ部分とほぼ同等であるが、中ではラップを3P、4Pとした本発明2と3が最もよく、伸びについても、ラップを3P、4Pとした本発明2と3が最もよい結果を示している。繋ぎの作業性の見地からも本発明2と3が好適である。
【0034】
本発明は基本的には8つ打ち以上の編組ロープに適用可能であるが、好適には目が詰まった編組ロープたとえば12打ちのほか、16打ち、24打ちなどに適用でき、各々において非常に長尺なロープを自在に製造することができる。なお、製綱機は実施例では縦型であるが横型でもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)(b)は従来ロープの側面図である。
【図2】本発明長尺繊維ロープの第1実施例の部分的平面図である。
【図3】図2の部分的拡大図である。
【図4】図3の繋ぎ部分X−Xから先を分解した状態の平面図である。
【図5】(a)は図3のX−X線に沿う拡大断面図、(b)は図3のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図6】本発明の繋ぎ原理を模式的に示す平面図である。
【図7】(a)ないし(l)は、図6の繋ぎを行ったロープの繋ぎ部の模式的断面図である。
【図8】本発明によるロープ製造工程と装置例を示す部分的側面図である。
【図9】本発明によるロープ製造工程と装置例を示す平面図である。
【図10】(a)はボビンキャリヤとボビンの配置を示す平面図、(b)はボビンキャリヤの動きを示す説明図である。
【図11】繋ぎ状態の側面図である。
【図12】編組状態の斜視図である。
【図13】本発明の第2実施例の繋ぎ状態の側面図である。
【図14】繋ぎ部分から先を分解した状態の平面図である。
【図15】繋ぎ部分の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本発明ロープ
2、2´ 繋ぎ部
3、4、RS1〜RS12 打ち終りストランド
3´、4´、NS1〜NS12 後続ストランド
4 結束部材
【技術分野】
【0001】
本発明は長尺繊維ロープの製造法および長尺繊維ロープに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維ロープはスチールロープに比べて軽量で、柔軟性に富むなどの利点があることから船舶、漁業、海洋施設などの分野、命綱、自動車牽引用、荷掛け用、鉱山のリフト用などに汎用されている。
かかる繊維ロープとしては、ワイヤロープと同じような一方向撚りタイプのほか、編組(組紐)タイプのものが知られている。後者はキンクが起こらず型崩れしないこと、柔軟で取り扱いが容易であること、荷重をかけても回転せず、ねじれないこと、ストランドスの捻り戻しがないため耐摩耗性が3つ打ちロープと変わらないことなどの利点がある。
【0003】
ところで、前記編組タイプの繊維ロープには8つ打ち、12打ち、24打ちなどがあるが、いずれも原糸を撚合したヤーンを複数本撚合したストランドを2本一組として組んだ構造となっており、製造にあたっては、編索機あるいは製綱機において、ストランドを巻収したボビンをキャリヤに配し、これを特殊な軌跡を描かせて移動させつつボビンから繰り出したストランドをボイスに2本1組として導き、組成していた。
【0004】
ボビンにおけるストランドの巻収量は物理的に限界があり、ロープ径が太いほど(ストランド径が太いほど)巻収量は少なくなる。たとえば、直径が100mmの超太径ロープでは、約200mが1回の編組工程で生産できる限界である。
このため、長いロープが必要な場合には、完成した編組ロープの端部をUターン状に曲げ、これの先端部分を曲げ始端の空洞に挿入するなどしてアイスプライスISを設け、このアイスプライスISを接続金具で繋ぐか、あるいは、2本のロープBR1,BR2のそれぞれの端部の編組をばらしてストランド同士を交合状に差し込み、スプライスSSを形成する方法が取られていた。
【0005】
しかし、このような継ぎ方法では、接続部分の径が本体ロープの径に比べて著しく大きくなり、重量変化も大きい。このため、ロープをたとえば沖合い係留ロープや巨大構造物を海上輸する曳き綱として使用し、船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたり、あるいはロープをシーブ類を経由してドラムに巻くときに、ロープ移動がスムーズに行かなくなったり、擦れが増したりし、その結果、ダメージが集中してロープの強度や耐疲労性が低下したりする問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、局部的な径の増加を与えずに無限大までの長尺な編組繊維ロープを、しかも編索機に特別な追加設備を要さずに容易かつ安価に製造できる方法を提供することにある。
また本発明の目的とするところは、長尺でしかも径の変化が少ない繊維ロープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の繊維ロープの製造法は、n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下所要長さごとに、他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1相当の繊維量断面を有する所望長さの編組ロープを得ることを特徴としている。
【0008】
また本発明の長尺繊維ロープは、n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドを組成した編組ロープであって、該編組ロープが、ストランド数n+1の繋ぎ断面部分またはストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記ストランド数n+1の繋ぎ断面部分または繊維量部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるときには、編組ロープを構成すべき8本以上偶数本の所望の1本の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部を繋いで編組を進める工程を、全部のストランドについて順次行い、局部的にn+1本の繊維量部を有する編組ロープを製作するので、無限長の長さのロープを自在に生産でき、たとえばロープ径が100mmを超える編組ロープであっても、400mあるいはそれ以上の長大ロープを容易に製造することができる。
【0010】
また、得られた編組ロープは、径の増加がたとえば12打ちであれば13/12と微小な部分が局部的に生ずるだけで、外観の形状変化がほとんどないので、船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたりし、あるいはロープをドラムに巻いたり、シーブなどを経由させたときに、ロープ移動がスムーズになり、擦れによるダメージの集中を防止できる。しかも、接続部の強度低下がないので、性能も問題がない。
また、編組機への特別な機構や装置の付加や改造も要さないので、安価に実施できるなどのすぐれた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
好適には、各繋ぎ部が3ロープリード以上間隔をあけている。
これによれば、繋ぎ部分の間隔があいているので、外観の変化および強度変化を少なくすることができ、また、繋ぎ操作の間隔にゆとりをもてるので、作業性をよくすることができる。
繋ぎ方法としては、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分をラップするように添えて結束する方法か、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部をスプライスする方法である。
前者は簡単であり、時間を取らずに実施できるので生産性をよくすることができる。後者はしっかりとした繋ぎを行え、特にストランドそのものが編組構造からなっている太径のもの、たとえばストランド径が25mm以上でロープ径が100mm以上の編組ロープである場合に有効であり、400mあるいはそれ以上の長大ロープを作ることができる。
【0012】
繋ぎ方法がラップ添え繋ぎである場合、ラップ量はロープリードの2倍〜7倍である。
これによれば、繋ぎ作業が容易であり、しかも繋ぎ部分の強度や伸び特性を通常の編組部分とほぼ同等にすることができる。
【実施例1】
【0013】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明すると、図面は本発明を12打ち編組ロープとその製造法に適用した例を示している。
図2ないし図4は本発明によるロープの所要部分を示しており、1はロープ全体を指し、12本のストランドのうち6本をS撚りとし、他の6本をZ撚りとし、そうした2種類のストランドをある中心線の周りに一定の規則に従って右旋回、左旋回させながら組み込んで、撚り方向が同じ同士2本ずつ1組のストランドが6組編まれた組紐としている。
前記ロープの材質は限定がなく、ナイロン、ポリエステル、テトロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなど汎用の合成繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、全芳香族ポリエステル繊維などの高強度低伸度繊維などから選択される。
【0014】
こうした構成は汎用の12打ちロープと同様であるが、本発明においては、図3ないし図5のように、任意の打ち終りストランド3の尻部30(長手方向端末)に、後続する別のストランド3´の先端部31がラップして添え繋ぎされ、この12+1(n+1)の繋ぎ部2を他のストランドとそのまま編組しており、かかる繋ぎ部2は、別に位置では、図3と図5のように、前記ストランドと異なる任意の打ち終りストランド5の尻部50(長手方向端末)に、後続する別のストランド5´の先端部51がラップして設けられている。
すなわち、図6と7のように、各ストランドに対してその端末部と後続するストランドの先端部について施されており、それによって、図2のような径のほとんど変化がない所望の長さの編組繊維ロープとなっている。
【0015】
前記繋ぎ部2は、粘着テープあるいは糸、細紐などの結束条体4によって数箇所固縛される。繋ぎ部2の長さは、ロープリードの2〜5倍程度が好適である。下限を規定した理由は、繋ぎ部21があまり短いと、編組中あるいはロープになって使用されたときに滑って分離する恐れがあるため、少なくともロープリードの2倍が必要だからであり、上限を規定したのは、繋ぎ操作を製綱機(クローサー)上で行う作業性と繋ぎ部の強度や伸びを考慮すると、ロープリードの5倍程度で足りるからである。
【0016】
前記繋ぎ部2は、各ストランドの編組尻部に対してそれぞれ施されるが、繋ぎを同じ長さ位置で行った場合には、節のようにロープ径がかなり太くなり、しかも、製綱機(クローサー)上で同時に多数本のストランドに対して繋ぎ作業を行うことは、大人数を必要とすることになる。したがって、繋ぎは、各ストランド長さ方向で位置をずらせて行うことが好ましい。
図6はこれを模式的に示しており、順序はランダムでもかまわないが、あるストランドの繋ぎから次のストランドの繋ぎまでの繋ぎ間隔は前記した理由から5ロープリード分以上であることが好ましい。
【0017】
前記本発明ロープの製造法を説明すると、装置としては図6と図7のような12打ち製綱機を用いる。こうした製綱機それ自体は公知である。
100は製紐機本体、101は製紐機中心上方に配置されたボイス、102はキャプスタン機構、103はテンションローラ、104は巻取りローラである。製紐機本体本体100は、ボックス状の機台1001と、該機台上に固定された軌条板1002と、軌条板1002を貫いて伸びる回転軸114に固定された6個のホーンディスク103a〜103fと、各ホーンディスクあたり2個ずつのボビンキャリャ105を備えている。
【0018】
ホーンディスク103a〜103fは平面円形をなし、外面が隣接する同志接する外径を有するとともに、外周には等間隔で切欠きが形成されている。ホーンディスクはそれぞれ中心に穴を有し、軌条板1002の穴から突出する回転軸114の上半部に嵌合固定され、したがってホーンディスク103a〜103fは前記軌条板1002と適度な間隔をおいて対向している。回転軸114は機台1001内に伸び、下部の歯車が機台1内に配された駆動歯車に噛み合い、そして、駆動歯車は伝導手段を介して図示しないモータから出力が伝達され、これらにより各ホーンディスク103a〜103fが方向反対に同期回転されるようになっている。
【0019】
軌条板1002は金属板または合成樹脂成形板からなつており、図8のように表面に数条で1組となったクローバー類似形状の環状溝機構が表面に凹設されている。
ボビンキャリャ105は、図7のように枠状に構成され、所要位置には複数のガイドローラが取り付けられ、またベース部の中心には芯軸が突設され、この芯軸にボビン107が回転自在にはめられ、ボビン107に巻収されたストランドはガイドローラを介して誘導台から斜め上方に導かれ、前記ボイス101において編組されるようになっている。
なお、図示しないが、前記ボビンキャリャ5のベース部の下部中心に結合されるガイド機構を備え、また、ホーンディスク103a〜103fの自転によりボビンキャリャ105を環状溝機構に沿う軌跡を描かせるべくホーンディスク103a〜103fの自転により水平方向の推力を伝達されるサドルを備えている。
各ホーンディスク103a〜103fのボビンキャリャはこの例では2個ずつ180度対称位置となるように配置され、搭載されているボビンに、Z撚りのストランドとS撚りのストランドが巻収される。
【0020】
モータを駆動して駆動歯車を回転すると、回転軸114に固定されている各ホーンディスク103a〜103fは、図8に示すように、隣接するもの同士反対方向に自転する。各サドルおよびこれと相対回転可能なボビンキャリヤ105は、ホーンディスク103a〜103fの自転に伴い、環状溝にそって時計方向と反時計方向に回る2つの移動軌跡を描くように移動し、ボビンキャリャ105はホーンディスクの回転運動により駆動され、かつホーンディスクの回転運動とは相対的に反対方向に回転運動されるので、各ボビンキャリヤ105に装着されているボビン107はストランドの繰出しによりベース部上で回転し、ストランドは図12のように2本ずつ平行状に導かれ、装置中心のボイス101により組成されて12打ち編組ロープとなる。
【0021】
こうした方法は本発明も同じであるが、本発明は、1ロットの編組が終りに近くなり、ボビンに巻収されている先行ストランドがほとんど繰り出されて編組され、次のロットのストランドを満杯に巻いたボビン107を交換してボビンキャリャに付け替えたときに、図11のように、当該ボビン107から後行ストランド3´をキャリヤ上方に引き出し、図11のように、後行ストランドの先端部31を編組ロープの後端から垂れている打ち終りストランド3の尻部30にラップさせ、そのラップしあった部分を数箇所、結束部材4により固縛して繋ぎ部2を形成する。この部分は従って12打ちであれば13本のストランドがラップ長さ分だけ存することになる。
この状態が図8と図11であり、前記繋ぎ部2の好適な長さは、前記した理由からロープリードの2〜5倍程度とする。そしてこの状態で前記したメカニズムと動作によりボイス101で編組を継続する。
【0022】
ボビンへの1ロット分のストランド巻収量は、通常の場合、測長して各ボビンで同等となるようにしているが、本発明では、各ボビンへのストランドの巻収量を、意図的に3ロープリード以上、好適には5ロープリード分以上変えるものである。これにより、前記のように添え繋ぎを終えて編組が再開されたときに、編組ロープの端部から次に短い長さのストランド尻部が現われることになる。そこで、このストランド尻部に、次のロットのボビンからストランドをキャリヤ上部に引き出し、当該ストランドの先端部を、前記打ち終りストランドの尻部にラップさせ、そのラップした部分を数箇所、結束部材により固縛して繋ぎ部2を形成し、その状態で編組を行えばよく、規則的にストランド尻部が現れるので、繋ぎを容易に行える。
【0023】
以下各ストランドに順次前記繋ぎ部2を形成し、編組を行うことで所望の長尺な編組ロープを得ることができる。
図6と図7は前記繋ぎ部の形成を模式的に示しており、右側が編組ロープから下る打ち終りストランドであり、これらを上から順にRS1〜RS12とする。左側が交換されたボビンから繰り出される後続ストランドであり、これらをNS1〜NS12とする。この例ではRS1〜RS12はRS1が最短の長さ、RS12が最長の長さとされ、NS1〜NS12も同様にされる。
【0024】
従って,1ロットの編組の終期には、編組ロープの末端部に、RS1〜RS12が順次現われるので、これに対応してNS1〜NS12を順次添え繋ぎすることで、局部的に13本のストランドで編組された部分のある編組ロープとなる。図7は図6の繋ぎ部2を模式的に断面にしたものである。
なお、添え繋ぎの順序は図6と図7に限定されるものではないが、添え繋ぐストランドの撚り方向は先行と後行のストランドで一致(S撚り同士あるいはZ撚り同士)させることが好ましい。
添え繋ぎは、先行ストランドの終端を検出するセンサーを装備させ、これからの信号で製綱機の運転を一時停止させ、後行ストランドの先端部を先行ストランドの尻部に導き、工具を使用して手作業あるいは自動的に添え繋ぎを行い、停止解除信号で運転を再開するようにしてもよい。
【0025】
本発明は、12本のストランドを順次異なる位置で繋いでいくことから局部的に12/13の径の増加があるだけであり、しかもそれがロープ長手方向で分散して存する。したがって径の変化が少なく、目視してもほとんど通常のロープとわからない。このため、得られたロープを船舶のボアを通してロープを繰り出したり引き上げたり、あるいはロープをドラムに巻いたり、シーブなどを経由させたときに、ロープ移動がスムーズになるとともに擦れによるダメージの集中を防止できる。しかも、繋ぎ部の強度は繋ぎ部のない部分と同等になるので、性能も問題がない。また、繋ぎはロープの製造中に行われるので、無限大の長さのロープを得ることができ、製造途中でのロープ長さの変更も容易である。
【実施例2】
【0026】
図13ないし図15は、本発明の第2実施例を示している。
この実施例も、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下、所要長さごとに他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1の断面を有する所望長さの編組ロープを得る点は第1実施例と同じである。
すなわち、図13のように、編組ロープ1から延出する打ち終りストランド3の尻部30に対して次ロットのストランド先端部31を繋いで編組を行い、順次他の打ち終りストランド3の尻部30に次ロットのストランド先端部31を繋ぎ、各ストランドの繋ぎを長手方向で間隔をおいて行うことは第1実施例と同じである。
【0027】
しかし、第2実施例においては、ストランドが、第1実施例のような撚り合せ構造でなく、編組ロープ状ストランドである点、すなわち実施例1におけるロープに相当する12打ち構造(8つ打ち以上であってよい)などである点で異なっている。
【0028】
そして、繋ぎ方法ないし繋ぎ部が、ストランドの尻と先端をラップさせ、平行状に引きそろえて固縛する添え繋ぎでなく、編組ロープ状ストランドを構成する編組ストランド同士を編み込むように差し込んでスプライスする点で異なっている。図中2´はスプライス繋ぎ部、3は先行編組ストランド、3´は後行編組ストランドである。
前記スプライス繋ぎ部2´は、第1実施例と同様な工程で行うものであり、説明は援用する。スプライス繋ぎ部2´は、各編組ストランドごとに、それぞれ3ロープリード以上間隔をあけて行うことが好ましく、スプライス長さは、ロープリードの2〜6倍とすることが好ましい。この限定理由は、2倍以下では繋ぎ部が滑ってしまう危険がある方であり、6倍以上では、製綱機上での作業に手間取り、ロープの生産性が低下するからである。
かかる第2実施例においても、ロープ1の繋ぎ部2´は、ストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記繋ぎ断面部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられる。
【0029】
この第2実施例は、太径、たとえば100mm以上の径を持つ編組ロープの場合において好適である。すなわち、こうしたロープは、ストランドとして編組ロープ状ストランドが用いられるが、ストランド径が26〜7mmであるためボビンに巻収され得る長さが短く、したがって、約200mの長さが従来限界であったが、本発明によれば、400mあるいはそれ以上の希望する長さのロープを製造可能となる。
また、編組ロープ状ストランドであるため、第1実施例のように、ストランドの尻部と先端部をラップさせて繋ぐと、繋ぎ部の径が大きくなるが、スプライス繋ぎとすれば、ストランドが交差状に差し込まれるので相対的に径の変化が少なくなる利点がある。
【0030】
本発明ロープの具体例を示す。
テトロン繊維を使用して、それぞれ径が3.3mmのS撚りストランド6本と、Z撚りストランド6本を作り、それらを縦型製綱機に掛けて、リード70mmで編組し、径12mmの12打ち繊維ロープを製造した。
このときに、後行ストランドの先端部をキャリアから引き出し、打ち終わりストランドの尻部とラップさせ、その部分を数箇所、粘着テープで固縛し、製綱機を運転して編組を持続し、上記繋ぎ操作を5リードごとに各ストランドに対して順次行い、全長500mのロープを得た。このロープを目視した結果、繋ぎ部分の見分けが付かなかった。またロープを手でグリップして移動させても、径の変化がほとんど感じられなかった。
【0031】
繋ぎ部の適正長さを検討するため、ラップ長さをリードの約2倍(165mm=2P)、約3倍(210mm=3P)、約4倍(280mm=4P)および約5倍(350mm=5P)にとったロープを製作した。それらを本発明1〜4とする。
得られた各ロープから3mの供試体を切り出し、径、切断荷重と伸びを測定した結果を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1において、径、リードは初期荷重時の値であり、径は繋ぎ部の値である。「ブランク」とは、繋ぎ部以外の部分を意味する。
表1から明らかなように、繋ぎ部の強度はそれ以外のロープ部分とほぼ同等であるが、中ではラップを3P、4Pとした本発明2と3が最もよく、伸びについても、ラップを3P、4Pとした本発明2と3が最もよい結果を示している。繋ぎの作業性の見地からも本発明2と3が好適である。
【0034】
本発明は基本的には8つ打ち以上の編組ロープに適用可能であるが、好適には目が詰まった編組ロープたとえば12打ちのほか、16打ち、24打ちなどに適用でき、各々において非常に長尺なロープを自在に製造することができる。なお、製綱機は実施例では縦型であるが横型でもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)(b)は従来ロープの側面図である。
【図2】本発明長尺繊維ロープの第1実施例の部分的平面図である。
【図3】図2の部分的拡大図である。
【図4】図3の繋ぎ部分X−Xから先を分解した状態の平面図である。
【図5】(a)は図3のX−X線に沿う拡大断面図、(b)は図3のY−Y線に沿う拡大断面図である。
【図6】本発明の繋ぎ原理を模式的に示す平面図である。
【図7】(a)ないし(l)は、図6の繋ぎを行ったロープの繋ぎ部の模式的断面図である。
【図8】本発明によるロープ製造工程と装置例を示す部分的側面図である。
【図9】本発明によるロープ製造工程と装置例を示す平面図である。
【図10】(a)はボビンキャリヤとボビンの配置を示す平面図、(b)はボビンキャリヤの動きを示す説明図である。
【図11】繋ぎ状態の側面図である。
【図12】編組状態の斜視図である。
【図13】本発明の第2実施例の繋ぎ状態の側面図である。
【図14】繋ぎ部分から先を分解した状態の平面図である。
【図15】繋ぎ部分の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本発明ロープ
2、2´ 繋ぎ部
3、4、RS1〜RS12 打ち終りストランド
3´、4´、NS1〜NS12 後続ストランド
4 結束部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下、所要長さごとに他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1相当の繊維量断面を有する所望長さの編組ロープを得ることを特徴とする長尺繊維ロープの製造法。
【請求項2】
繋ぎ方法が、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分をラップするように添えて結束する方法である請求項1に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項3】
それぞれの繋ぎを、3ロープリード以上間隔をあけて行う請求項1または2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項4】
繋ぎ部のラップ量がロープリードの2倍〜7倍である請求項2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項5】
ストランドが編組構造である場合を含む請求項1または2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項6】
繋ぎ方法が、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部をスプライスする方法である請求項5に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項7】
n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドを組成した編組ロープであって、該編組ロープが、ストランド数n+1の繋ぎ断面部分またはストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記ストランド数n+1の繋ぎ断面部分または繊維量部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられていることを特徴する長尺繊維ロープ。
【請求項8】
各繋ぎ部の位相のずれ間隔が3ロープリード以上である請求項7に記載の長尺繊維ロープ。
【請求項1】
n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドをそれぞれボビンキャリヤから引き出し、ボイスを通して組成して編組ロープを得る方法において、ボイス入り口の編組ロープ端にある任意の打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を継続し、以下、所要長さごとに他の打ち終わりストランドに次ロットのストランドの先端部分を繋ぎ、この繋ぎ部を前記ボイスに導いて編組を行う工程を繰り返し、局部的にn+1相当の繊維量断面を有する所望長さの編組ロープを得ることを特徴とする長尺繊維ロープの製造法。
【請求項2】
繋ぎ方法が、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部分をラップするように添えて結束する方法である請求項1に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項3】
それぞれの繋ぎを、3ロープリード以上間隔をあけて行う請求項1または2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項4】
繋ぎ部のラップ量がロープリードの2倍〜7倍である請求項2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項5】
ストランドが編組構造である場合を含む請求項1または2に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項6】
繋ぎ方法が、打ち終りストランドの尻部に次ロットのストランドの先端部をスプライスする方法である請求項5に記載の長尺繊維ロープの製造法。
【請求項7】
n本(但しnは8本以上の偶数本)の繊維ストランドを組成した編組ロープであって、該編組ロープが、ストランド数n+1の繋ぎ断面部分またはストランド数n+1の繊維量部分を局部的に有し、かつ前記ストランド数n+1の繋ぎ断面部分または繊維量部分が、それぞれ異なるストランドにしかも位相をずらせて設けられていることを特徴する長尺繊維ロープ。
【請求項8】
各繋ぎ部の位相のずれ間隔が3ロープリード以上である請求項7に記載の長尺繊維ロープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−119933(P2007−119933A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310285(P2005−310285)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000220468)東京製綱繊維ロープ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000220468)東京製綱繊維ロープ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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