説明

長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話

【課題】携帯電話の進歩に伴い電気を多く消費するようになったこと、また、携帯電話使用者の半数を占める女性からの鏡設置の要望から、太陽電池と鏡を設けた携帯電話を提供することを目的とする。
【解決手段】太陽電池1を設けた携帯電話18において、前記太陽電池1の反射防止膜8等の表面に長波長光反射膜17としてアルミニウム蒸着層15を真空蒸着等によって設ける。好ましくは、反射防止膜8への蒸着に代え、透明板16を前記太陽電池1に加えて設け、前記透明板16に前記長波長光反射膜17としてアルミニウム蒸着層15を設けて前記太陽電池1に設ける。更に好ましくは、該長波長光反射膜17は、少なくとも前記太陽電池1が機能する短波長域の光13を透過させ、前記短波長域の光13よりも長い長波長域の光14を反射させる性能を持つように調整して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートホンなどの携帯電話の発展が目覚しい。携帯電話の歴史を紐解くと、第二次世界大戦中にアメリカ軍が使用したトランシーバーにたどり着く。携帯電話開発当初のネックは、電波ノイズ、バッテリー持続時間、重さ、大型、通信速度などの諸問題であり、それらが解決されるまで多くの時間を必要とした。日本においては1979年に世界で初めて実用化され、アメリカもその後1981年に実用化された。携帯電話本体に液晶ディスプレイが搭載され、通信方式がデジタル化された。1990年代後半になるとインターネット通信が出来るようになり、小さくても高性能のリチウムイオン電池も出てきたためと、通信速度の向上があり、高度に進化した画像処理も出来るようになるなど利便性が急速に増してきたことで爆発的な発展に至った。今日ではパソコン機能もあるスマートホンが売り出され、世界全体でも普及率は5割を遥かに超えるまでになっている。現在のスマートホンは、小さなボディに非常に多くの機能を持たせているために大変高機能ではある反面電力を多く必要とする。また、携帯電話であるので充電電池に充電をして稼動させるが、インターネットにつなぎっぱなしにする場合などは特に電池は大容量のものでなければならなくなってきている。従来型のリチウムイオン電池はとても優秀な充電電池ではあるが、それでもスマートホンでの様々な機能を充分に引き出すには電池の容量が充分とは言えなくなってきている。そのため、燃料電池、空気リチウムイオン電池、バイオ電池など様々な電池が開発中であるが、一般的には普及に至ってはおらず、まだ年数がかかりそうである。一方、太陽電池の場合は、長い歴史があり、発電量も次第に多くなってきている。そこで、携帯電話に太陽電池を設置して常時充電電池に充電することが最良の形態であると考えられる。更に、携帯電話を使用する人々の半数は女性が占めていることから、携帯電話に鏡も組み込んで欲しいという要望が多々ある。しかし、前述のように小さな携帯電話に太陽電池と鏡の両方を同時に組み込むのは無理がある。ただし、これが可能となれば需要も多く更に携帯電話が活躍する場が多くなることから、太陽電池と鏡を組み込んだ携帯電話が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−229946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の太陽電池は、その表面の太陽光受光面に反射防止膜を設け太陽電池に入った光が再び外に逃げないよう発電効率を上げる工夫がなされている。そのため、反射防止膜の表面は平坦ではなく小さなぎざぎざ状になっている。このため、前記反射防止膜表面は鏡としての機能はなく、太陽電池と鏡の両方を小さな太陽電池に組み込むことは無理であり、更にこれらを一体化することも難しい。本発明においては、携帯電話に太陽電池と鏡を組み込むことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、請求項1の発明は、太陽電池を設けた携帯電話において、前記太陽電池の表面に長波長光反射膜を設置手段によって設けたことを最も主要な特徴とする長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話において、前記設置手段が、前記太陽電池の保護膜又は透明電極板に、銀、アルミニウム、ニッケル、白金、ロジウムからなる群の中から選択される一の金属または該金属を含む合金または該金属の酸化物を、真空蒸着、メッキ、イオンプレーティング、スパッター、CVD、レーザーアブレーション、塗布からなる群の中から選択される一により設けたものであることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話において、前記設置手段が、前記太陽電池に透明板を加えて設け、前記透明板に銀、アルミニウム、ニッケル、白金、ロジウムからなる群の中から選択される一の金属または該金属を含む合金または該金属の酸化物を、真空蒸着、メッキ、イオンプレーティング、スパッター、CVD、レーザーアブレーション、塗布からなる群の中から選択される一により設けたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかの一に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話において、前記長波長光反射膜は、前記太陽電池が機能する短波長域の光を透過させ、前記短波長域の光よりも長い長波長域の光を反射させる性能を持つように調整して設けたことを特徴とした長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。
【発明の効果】
【0009】
殆どの太陽電池は、太陽光の短波長域の光しか吸収せず、それ以外の長波長域の太陽光は無駄に捨てていた。本発明の長波長光反射膜を携帯電話表面に設けると、携帯電話として使用出来るのはもちろんのこと、常時持ち歩ける鏡として使用出来るうえ、発電して携帯電話の充電式電池を充電して電池切れを防止するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例の太陽電池部分の説明図である。(実施例1)
【図2】本発明の一実施例の太陽電池部分の説明図である。(実施例2)
【図3】本発明の一実施例の説明図である。(実施例3)
【図4】本発明の一実施例の説明図である。(実施例4)
【図5】本発明の一実施例の説明図である。(実施例5)
【図6】従来の太陽電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話は、太陽電池表面に設けた長波長光反射膜により、短波長光は透過させて発電をするが、それ以上の長波長光は反射して鏡として利用するという目的を、簡便にしかも安価に最小の部品点数により実現した。
【実施例】
【0012】
図1〜図5は、それぞれ本発明の一実施例である。また、図6は、従来の太陽電池の模式図である。まず、図6において、従来の太陽電池の仕組みを説明する。1は太陽電池、2は太陽光、3はP型シリコン、4はN型シリコン、5はPN接合層、6は透明電極、7は太陽光受光面、8は反射防止膜、9は電子、10は正孔、11は負荷、12は裏面電極、13は短波長域の光、14は長波長域の光である。太陽電池1の発電の仕組みは、シリコン半導体であるP型シリコン3とN型シリコン4の接合面であるPN接合層5に太陽光2があたると、マイナスの電子9とプラスの正孔10の対が生まれる。そして、マイナスの電子9はN型シリコン4へ、プラスの正孔10はP型シリコン3へ引かれるが、半導体であることからこの流れは一方通行になっているため、一度引かれると元には戻らない。このようにしてN型シリコン4にはマイナスの電気が集まり、P型シリコン3にはプラスの電気が集まるため、透明電極6と裏面電極12との間に電球などの負荷11を配置して電線でつなぐと電気が流れる。この時、最初に太陽光2を受ける太陽光受光面7の反射防止膜8は、太陽電池1表面で太陽光2が反射されてしまわないよう吸収して太陽電池1の効率を上げるように作用する。しかしながら、太陽光2の中でも短波長域の光13は吸収して発電に寄与するが、長波長域の光14は反射防止膜8で吸収はするものの光電効果は発揮されず発電できないまま太陽電池1内で消滅していた。
【0013】
図1は、本発明の一実施例の太陽電池1部分の説明図で、実施例1である。図1の中で、1〜14は図6と同様である。15はアルミニウム蒸着層、17は長波長光反射膜、22は保護膜である。反射防止膜8には色々なパターンがあるが平滑面のものと逆に表面に凹凸を設けたものに大別される。図1の本実施例では、図6の太陽電池1の表面が平滑な反射防止膜8を有している場合の例を示している。真空中で金属を高温加熱すると、金属を蒸発させることが出来る。これは真空蒸着と呼ばれ、蒸着する膜の厚みを調整すると、非常に薄い金属膜を形成することが出来、光の波長を制御する半透明の膜も出来る。これは実施例1〜5の要の技術となっており、長波長光反射膜17を実現出来る。そこで、アルミニウムを真空中で高温加熱し、その金属蒸気を太陽電池1の透明電極6の非電極面又は反射防止膜8に当てると長波長光反射膜17としてアルミニウム蒸着層15を形成して設ける。なお、前記アルミニウム蒸着層15の厚さは、少なくとも前記太陽電池1が機能する短波長域の光13を透過させ、前記短波長域の光13よりも長い長波長域の光14を反射させる性能を持つように調整して設ける。しかし、前記反射防止膜8が平坦でない場合には、前記金属蒸気を太陽電池1の透明電極6の非電極面に当てて長波長光反射膜17としてアルミニウム蒸着層15を形成するのが良い。本実施例においては、図1にあるように従来の太陽電池1の表面の反射防止膜8に直接、アルミニウム蒸着層15を設けたうえで、保護膜22を設けてある。本実施例の太陽電池1を太陽光2に当てると、太陽光2のうち赤外線、遠赤外線、赤色などの長波長域の光14はアルミニウム蒸着層15で殆どが反射してしまう。しかし、残りの短波長域の光13はアルミニウム蒸着層15が薄いために回折してアルミニウム蒸着層15を素通りして太陽電池1の反射防止膜8、透明電極6、N型シリコン4、PN接合層5まで到達して、光電効果の結果、電子9と正孔10を生成して発電を行う。前記アルミニウム蒸着層15の厚さを薄くするにつれて太陽電池1への光透過量も増えてくる。この場合において、ハーフミラーの状態となり、当たった光のうちある一定の短波長域の光13は透過するものの残りの長波長域の光14は鏡と同じく反射する。前記アルミニウム蒸着層15の厚さをどれくらいにするかの判断は、使用する太陽電池1がどれくらいの波長までの光を有効に吸収して発電出来るかで決めるのが良い。本実施例は太陽電池1で発電をしながら鏡と同様に使用することが出来る。なお、長波長光反射膜17で長波長域の光14を反射させるが、見た目が赤くならないのは、反射波長域の光14は赤外線、遠赤外線などの光で目に見えないうえ、空間を満たす他の可視光の方が圧倒的に多いためである。゛本実施例は前述のように、本発明の一実施例の太陽電池部分の説明図であるが、最終的には本実施例を携帯電話に設置して実施することになる。
【0014】
図2は、本発明の一実施例の太陽電池部分の説明図で、実施例2である。図2において、1〜15は図1と同様である。16は透明板である。図1は反射防止膜8に直接、アルミニウム蒸着層15を設けたうえで、保護膜22を設けたものであるが、本実施例においては、長波長光反射膜17として、透明板16を加えて、前記透明板16に真空蒸着でアルミニウム蒸着層15を設けたものである。この場合においては、前記透明板16のアルミニウム蒸着層15の面を下にし、前記透明板16の非蒸着面を上にて太陽電池1に設ける。このように配置すると、図1の保護膜22は前記透明板16が保護膜22の働きを兼ねるため必要なくなるという利点がある。
【0015】
図3は、本発明の一実施例の説明図で、実施例3である。図3において、1、8は図1、図2と同様である。18は携帯電話、19は操作面、20は表示面、21は蝶番、22は保護膜である。本実施例においては、図1または図2の実施例を携帯電話18に組み込んだものである。携帯電話18表面の太陽電池1の反射防止膜8の表面に図1の実施例であるアルミニウム蒸着層15を設け、保護膜22を設けたものである。なお、図2の実施例のように透明板16に真空蒸着でアルミニウム蒸着層15を設けたものを前記携帯電話18に設置したものでも良い。また、長波長光反射膜17を設けた太陽電池1を携帯電話18のどこの部位に設置するかは、携帯電話機メーカーの携帯電話18の仕様にもよるが支障がない限りどこでも設置可能である。更に、これは、本実施例を携帯電話18に取り付けなくとも本実施例に取付具とリード線を付けることで、単独の発電機兼鏡となる。
【0016】
図4は、本発明の一実施例の説明図で、実施例4である。図4において、1、15、17〜22は図3と同様である。2は太陽光、12は裏面電極、25はケーブル、26は取付具、27は充電口、28は蓋、29はプラグである。本実施例は、図4にある実施例から携帯電話を着脱可能としたもので、極力、携帯電話の機種、メーカーを問わず利用出来る。図2の実施例の長波長光反射膜17としてアルミニウム蒸着膜15を設けた透明板16を設けた太陽電池1に取付具26とケーブル25とプラグ29を設け前記プラグ29を充電口27に差し込んだ実施例を示したものである。なお、ここでは簡単のため太陽電池の構造図示については既に図2において前述しているので省略する。本実施例のように設置すると、どこのメーカーでも、また、どの機種の携帯電話1にも本実施例を用いて長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話を構築できる。
【0017】
図5は、本発明の一実施例で、実施例5である。図5において1、2、12、15、17、25、26、29は図4と同様である。14は長波長域の光、24は充電式電池利用機器である。本実施例は、図4の実施例から携帯電話18を取り外して、充電式電池利用機器24にケーブル25とプラグ29で繋いで電力を供給して充電するとともに鏡としても使用出来る。充電式電池利用機器24としてはパソコン、電卓、懐中電灯、ゲーム機、携帯オーディオ機器などでいくらでも用途を広げることが出来る。他に充電式電池利用機器24以外にも電池としても使用出来るのはもちろんのことである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話は、携帯電話兼鏡兼発電機という機能を持つので発電をしながら会話やメール、インターネットなどを楽しむことが出来るほか、前記長波長光反射膜を設けた太陽電池を携帯電話から単独で取り外してデジカメ、ゲーム機などの充電電池利用機器にも適用出来る。
【符号の説明】
【0019】
1 太陽電池
2 太陽光
3 P型シリコン
4 N型シリコン
5 PN接合層
6 透明電極
7 太陽光受光面
8 反射防止膜
9 電子
10 正孔
11 負荷
12 裏面電極
13 短波長域の光
14 長波長域の光
15 アルミニウム蒸着層
16 透明板
17 長波長光反射膜
18 携帯電話
19 操作面
20 表示面
21 蝶番
22 保護膜
23 充電式電池
24 充電式電池利用機器
25 ケーブル
26 取付具
27 充電口
28 蓋
29 プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を設けた携帯電話において、前記太陽電池の表面に長波長光反射膜を設置手段によって設けたことを特徴とする長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。
【請求項2】
前記設置手段が、前記太陽電池の保護膜又は透明電極に、銀、アルミニウム、ニッケル、白金、ロジウムからなる群の中から選択される一の金属または該金属を含む合金または該金属の酸化物を、真空蒸着、メッキ、イオンプレーティング、スパッター、CVD、レーザーアブレーション、塗布からなる群の中から選択される一により設けたものであることを特徴とした請求項1に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。
【請求項3】
前記設置手段が、前記長波長光反射膜を設けた太陽電池に透明板を加え、前記透明板に、銀、アルミニウム、ニッケル、白金、ロジウムからなる群の中から選択される一の金属または該金属を含む合金または該金属の酸化物を、真空蒸着、メッキ、イオンプレーティング、スパッター、CVD、レーザーアブレーション、塗布からなる群の中から選択される一により設けたものであることを特徴とした請求項1に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。
【請求項4】
前記長波長光反射膜は、少なくとも前記太陽電池が機能する短波長域の光を透過させ、前記短波長域の光よりも長い長波長域の光を反射させる性能を持つように調整して設けたことを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれかの一に記載の長波長光反射膜を設けた太陽電池付き携帯電話。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90306(P2013−90306A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232342(P2011−232342)
【出願日】平成23年10月23日(2011.10.23)
【出願人】(390008095)
【Fターム(参考)】