説明

閃光装置内蔵カメラ

【課題】 閃光装置やカメラ本体に光ファイバ通過用の孔を設けず、また光ファイバをヒンジに通すこともなしに発光量制御を可能とする。
【解決手段】 発光部を保持する閃光装置ケース20Bと、ケースをカメラ本体12に回動可能に支持するヒンジ部材30と、カメラ本体内に設けられる光電変換素子とを有し、発光部からの光の一部をケース20Bからカメラ本体12内に導いて光電変換し、その光電変換出力に基づいて発光量制御するカメラにおいて、ケース内には、ヒンジ部材近傍に配置される導光部材52と、発光部からの光を導光部材52に導く光ファイバ51とが設けられる。導光部材52は、光ファイバ51から入射した光をヒンジ部材側に反射する反射部52cと、反射部52cでの反射光を射出する光射出面52dとを有し、光射出面52dから射出した光をヒンジ部材30を通してカメラ本体内に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は閃光装置を内蔵するカメラ、特に発光部からの光を直接(被写体を介さずに)検知して調光等に利用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
閃光装置を内蔵するデジタルスチルカメラにおいて、内蔵閃光装置の発光部からの光を光ファイバによってカメラ本体内に導き、その光電変換出力を発光量制御(調光)に利用するものがある。例えば特許文献1のカメラは、回動式にポップアップする閃光装置を内蔵し、その閃光装置のケースとカメラ本体のカバーにそれぞれ孔をあけ、それらの孔を介して光ファイバを閃光装置から本体内に引き込んでいる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−122911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバは可撓性があるとはいえ、電気配線などと比較して曲げに対する制約がはるかに大きく、閃光装置の回動時に光ファイバに急激な曲げが加わらないようにする必要がある。この問題に対し、特許文献1では閃光装置の光ファイバ通過用の孔を大きくすることで対処しているが、孔を大きくすると、ポップアップ時に孔が露出するのを防ぐために必然的に回動角を小さくせざるを得ず、発光部を高い位置に至らしめることができない。また閃光装置やカメラ本体に孔をあけることは、防塵・防滴の観点からも好ましくない。
【0005】
一方、閃光装置を回動可能に支持するヒンジを中空状とし、そのヒンジ孔を通して光ファイバをカメラ本体に引き込むようにすれば、閃光装置に大きな孔を開ける必要はなくなる。しかし、この場合は光ファイバを発光部からヒンジ部まで伸ばし、そこから方向を変えてカメラ本体に挿入する必要があるから、閃光装置内の狭いスペースでは光ファイバを急激に曲げなければならず、採用し難い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光部を保持する閃光装置ケースと、ケースをカメラ本体に回動可能に支持するヒンジ部材と、カメラ本体内に設けられる光電変換素子とを有し、発光部からの光の一部をケースからカメラ本体内に導いて光電変換素子により光電変換し、その光電変換出力に基づいて発光量制御する閃光装置内蔵カメラに適用される。
ケース内には、ヒンジ部材近傍に配置される導光部材と、発光部からの光を導光部材に導く光ファイバとが設けられ、導光部材は、光ファイバから入射した光をヒンジ部材側に反射する反射部と、反射部での反射光を射出する光射出面とを有し、光射出面から射出した光をヒンジ部材を通してカメラ本体内に導くよう構成する。
特に請求項2〜5の発明では、ヒンジ部材が光入射面を有する導光性材料から構成され、導光部材の光射出面から射出された光を、ヒンジ部材が光入射面から導入してカメラ本体内に導く。
請求項3の発明では、光入射面から入射した光が、ヒンジ部材、およびカメラ本体内に配置された他の光ファイバを通って光電変換素子の受光面に入射する。
請求項4の発明では、ヒンジ部材が、カメラ本体内に配置される光ファイバの一端が接続される接続部を一体に有している。
請求項5の発明では、導光部材の光射出面および前記ヒンジ部材の光入射面が、ケースの回動中心において互いに対向配置されている。
請求項6,7の発明では、光電変換素子は、その受光面が導光部材の光入射面と対向するようにヒンジ部材に固着される。
請求項7の発明では、ヒンジ部材には、ケースの回動中心と略同軸で貫通孔が形成され、この貫通孔内で導光部材の光射出面と光電変換素子の受光面とが対向する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ファイバから入射した光をヒンジ部材側に反射する反射部と、反射部での反射光を射出する光射出面とを有する導光部材を閃光装置ケース内に設け、導光部材の光射出面から射出した光をヒンジ部材を通してカメラ本体内に導くようにしたので、閃光装置ケースやカメラ本体に光ファイバ通過用の孔を敢えて設ける必要はなく、また光ファイバをヒンジに通す必要もない。したがって、光ファイバの急激な曲げが回避されるとともに、光ファイバを設けたことによる閃光装置の回動角制限も回避され、発光部をより高い位置に至らしめることが可能となる。さらに防塵・防滴性能も損なうことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図6により本発明の一実施の形態を説明する。
図1〜図3は本実施形態におけるデジタルスチルカメラの内蔵閃光装置付近を示している。内蔵閃光装置20は、上下のケース20A,20Bによって外観が構成され、発光部を保持する発光保持部21と左右一対の腕部22,23とで略コ字状を呈する。これらの発光保持部21および腕部22,23は、カメラ本体の上面に膨出したいわゆるペンタ部11を囲むように設けられる。発光部は、発光管としてのキセノン管やリフレクタ、トリガコイル(いずれも不図示)などから構成され、発光保持部21に形成された発光窓にはプロテクタ24が嵌め込まれている。発光部からの照明光は、プロテクタ24を透過して被写体に照射される。
【0009】
一対の腕部22,23は、ペンタ部11の両側壁(カメラ上カバー12にて構成される)にヒンジを介してそれぞれ回動可能に支持され、腕部22,23の回動により、発光保持部21は図2の格納位置と図3の使用位置との間で移動する。格納位置では、発光保持部21の発光窓がカメラ前カバー13と対向し、使用位置では、発光保持部21がペンタ部11の上方に大きく突出して発光窓が被写体と正対する。図の30は、一方の腕部23をペンタ部11に支持するヒンジを示すが、その詳細構造は後述する。
【0010】
次に、閃光装置20の発光量検知について説明する。
カメラは、閃光発光時に発光部からの発光量を直接検知して発光制御(調光)を行う。そのため、上記プロテクタ24には光ファイバ51の一端が挿通固定され、光ファイバ51の他端は、光ファイバソケット52の発光保持部52aに挿通固定されている。光ファイバ51の中途部分は、閃光装置20の上下ケース20A,20Bに固定されることでその動きが規制される。発光部が発光すると、プロテクタ24を通る光の一部が、光ファイバ51を介して保持部52aから光ファイバソケット52に入射する。
ここで、光ファイバ51は適度に湾曲させることができるので、引き回しや取付けが容易であり、また光ファイバソケット52の形状や配置の自由度も高まる。
【0011】
図4,図5は光ファイバソケット52とヒンジ30とを示す拡大図である。光ファイバソケット52は、例えばアクリル等の透明部材、つまり導光性を持つ部材で構成され、腕部23内において下ケース20Bに位置決め固定される。光ファイバ51から保持部52aを介して入射した光は、光ファイバソケット52の導光部52bを通り、その先端斜面(反射面)52cでほぼ直角に反射され、光射出面52dからヒンジ30の方向に射出される。
【0012】
ヒンジ30は、光ファイバソケット52と同様に全体がアクリル等の透明部材(導光性の部材)から成り、ペンタ部11を覆っている上カバー12の側壁に設けた孔に嵌合固定されるとともに、ケース20Bに設けた孔を介して腕部23を回動可能に支持する。図6の拡大図からよく分かるように、ヒンジ30は中空とされるが、その中心部分には腕部23内に突出する円柱部31が形成されている。円柱部31の中心軸は腕部23の回動軸と一致しており、その先端面31aは上記光ファイバソケット52の射出面52dと僅かな間隔をあけて対向している。したがって、光ファイバソケット52の射出面52dから射出された光は、先端面(光入射面)31aから円柱部31に入射する。
【0013】
なお、ヒンジ30を中空状としたのは、腕部23内の電気部品とカメラ本体内の電気部品とを電気的に接続する必要があるからである。図示はしていないが、発光部を構成するキセノン管に電圧をかけるためのリード線や、キセノン管に放電させるためのトリガコイルに電圧をかけるためのリード線、更には閃光装置20の回動角(格納位置か使用位置か)を検出するスイッチの信号伝達用リード線などがヒンジ孔に通される。
【0014】
ヒンジ30にはまた、上カバー12内に位置する箇所に光ファイバ保持部32が一体に設けられている。保持部32には、光ファイバ53の一端が挿通固定され、光ファイバ53の他端面は、ペンタ部11内に設けられた光電変換素子60(図1)の受光面に対向配置される。そして、上記光入射面31aから円柱部31に入射した光は、円柱部31を通って上カバー12側に導かれ、保持部32に近接して設けた反射面33でほぼ直角に反射された後、保持部32から光ファイバ53に入射し、光ファイバ53を通って光電変換素子60の受光面に導かれる。光電変換素子60は、その受光量に応じた電気信号を出力し、電気信号は不図示のリード線を介して取り出される。不図示の発光制御用ICは、その電気信号に基づいて発光量制御(調光)を行う。
【0015】
ここで、ヒンジ部30の反射面33の方向を変えることで、ペンタ部内において光を任意の方向に導くことができるので、光電変換素子60を図示以外の位置に置くことも可能である。またペンタ部内(カメラ本体内)においても光ファイバ53を用いているので、光電変換変換素子60の配置の自由度が更に高まる。ただし、カメラ本体内での光ファイバの使用は本発明の必須要件ではない。
【0016】
以上のように本実施形態では、内蔵閃光装置20の一方の腕部23内に導光性を有する光ファイバソケット52を設けるとともに、ヒンジ30にも導光性を持たせ、光ファイバ51を伝わる発光部からの光を光ファイバソケット52およびヒンジ30を介して上カバー12内(カメラ本体内)に導くようにしたので、光ファイバ51の引き回しは閃光装置20内で完結するとともに、光ファイバ53の引き回しはカメラ本体内で完結する。つまり光ファイバをヒンジ30に通す必要がなく、光ファイバ51の急激な曲げが回避されるとともに、閃光装置20の回動が光ファイバ51,53の曲げに何ら影響を及ぼすこともない。さらに、ケース20Bやカメラ上カバー12にヒンジ孔以外の孔(光ファイバ通過用の孔)を設ける必要もないので、光ファイバを設けたことによる腕部の回動角制限も回避される。よって発光部をより高い位置に至らしめることが可能となり、照明光のケラレを抑制できる。さらに、光ファイバ通過用の孔を設けないことで、防塵・防滴性能も向上する。
【0017】
因みに、上記以外の方法として、光電変換素子を腕部内に配置し、発光部からの光を光ファイバで光電変換素子に導き、その光電変換出力をリード線でカメラ本体内に導くことが考えられる。リード線は、光ファイバと異なり曲げに対する制約が殆どないため、中空状のヒンジ部を通してカメラ本体内に引き込むことが可能である。これによっても上述と同様の作用効果を得ることができるが、腕部内に光電変換素子を配置するとなると、その配置スペースを確保するために腕部の大型化が余儀なくされる。加えて、この場合はリード線の引き回しが長くなり、電気信号に対するノイズの重畳が無視できなくなるため、リード線をシールド線で被覆するなどのシールド対策が不可欠となる。
【0018】
一方、図に示した実施形態によれば、腕部23には比較的小型の光ファイバソケット52を追加するだけで済むので、腕部23の大型化を回避できる。またリード線を長く引き回す必要もないので電気信号へのノイズの重畳が最小限に抑えられ、シールド対策は必要ないか小規模なもので済む。特に光電変換素子を発光制御用ICと同一の基板に実装すれば、リード線は不要となり、シールド対策も不要となる。
【0019】
さらに本実施形態では、光ファイバソケット52の光射出面52dと、ヒンジ30の光入射面31aとがいずれも腕部23の回動中心に位置しているので、腕部23の回動角に拘わらず両面52d,31aは常に対向関係を維持し、いずれの角度で発光がなされても発光量検知を正確に行える。
【0020】
なお、本実施形態のように光ファイバソケットやヒンジを導光部材として用いた場合は、光ファイバのみで導光を図る場合と比べて光のロスが多く、光電変換変換素子への入射光量は少なくなる。しかし、これは光のロス分を考慮に入れて発光制御プログラムを組むことで解決でき、発光量制御に悪影響を及ぼすことはない。
【0021】
図7,図8は他の実施形態を示し、図1と同様の構成要素には同一の符号を付してある。
本実施形態は、光電変換素子をヒンジに固着した点が先の実施形態と異なる。光電変換素子160は、ヒンジ130の中心に形成された貫通孔HLを介して上カバー12側からヒンジ130に固着され、その受光面160aが孔HL内に位置している。一方、腕部23側からは、光ファイバソケット152の導光部152bが貫通孔HLに挿通され、その先端の光射出面152dが光電変換素子160の受光面160aと対向している。上述と同様の経路で光ファイバソケット152に入射した光は、反射面152cで反射された後、光射出面152dから射出され、光電変換素子160の受光面160aに受光される。光電変換素子160の光電変換出力は、リード線70にて取り出され、上述したように発光量制御に寄与する。
【0022】
本実施形態によれば、先の実施形態と同様の作用効果が得られるとともに、カメラ本体内に光ファイバを這い回す必要がなくなる。なお、ヒンジ130を導光性の材料で構成する必要はない。
【0023】
以上では、ペンタ部に沿って設けられる略コ字状の内蔵閃光装置について説明したが、回動式の内蔵閃光装置であれば、その形状や配置位置は問わない。また閃光装置の形状に応じて光ファイバソケットやヒンジの形状も変更可能である。さらに、発光部からの光を直接検出するタイプのものであれば、デジタルスチルカメラでも銀塩カメラでもよく、また一眼レフカメラでもレンズシャッタカメラでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係るカメラの内蔵閃光装置部分を示す上面図。
【図2】閃光装置の側面断面図であり、格納状態を示す。
【図3】図2と同様の図であり、使用状態を示す。
【図4】光ファイバソケットとヒンジとを示す斜視図。
【図5】図1のヒンジ部近傍を示す拡大図。
【図6】ヒンジの構造を説明する斜視図。
【図7】他の実施形態におけるカメラの内蔵閃光装置部分を示す上面図。
【図8】図7のヒンジ部近傍を示す拡大図。
【符号の説明】
【0025】
11 ペンタ部
12 カメラ上カバー
13 カメラ前カバー
20 内蔵閃光装置
20A,20B 上,下ケース
21 発光保持部
22,23 腕部
24 プロテクタ
30,130 ヒンジ
31 円柱部
31a 光入射面
32 光ファイバ保持部
33 反射面
51,53 光ファイバ
52,152 光ファイバソケット
52a 光ファイバ保持部
52b 導光部
52c 反射面
52d 光射出面
60,160 光電変換素子
70 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を保持する閃光装置ケースと、該ケースをカメラ本体に回動可能に支持するヒンジ部材と、カメラ本体内に設けられる光電変換素子とを有し、前記発光部からの光の一部を前記ケースからカメラ本体内に導いて前記光電変換素子により光電変換し、その光電変換出力に基づいて発光量制御する閃光装置内蔵カメラにおいて、
前記ケース内には、前記ヒンジ部材近傍に配置される導光部材と、前記発光部からの光を前記導光部材に導く光ファイバとが設けられ、前記導光部材は、前記光ファイバから入射した光を前記ヒンジ部材側に反射する反射部と、該反射部での反射光を射出する光射出面とを有し、該光射出面から射出した光を前記ヒンジ部材を通してカメラ本体内に導くよう構成したことを特徴とする閃光装置内蔵カメラ。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、光入射面を有する導光性材料から構成され、前記導光部材の前記光射出面から射出された光を、前記光入射面から導入してカメラ本体内に導くことを特徴とする請求項1に記載の閃光装置内蔵カメラ。
【請求項3】
前記光入射面から入射した光が、前記ヒンジ部材、および前記カメラ本体内に配置された他の光ファイバを通って前記光電変換素子の受光面に入射するよう構成したことを特徴とする請求項2に記載の閃光装置内蔵カメラ。
【請求項4】
前記ヒンジ部材は、前記カメラ本体内に配置される光ファイバの一端が接続される接続部を一体に有していることを特徴とする請求項3に記載の閃光装置内蔵カメラ。
【請求項5】
前記導光部材の光射出面および前記ヒンジ部材の光入射面は、前記ケースの回動中心において互いに対向配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の閃光装置内蔵カメラ。
【請求項6】
前記光電変換素子は、その受光面が前記導光部材の光入射面と対向するように前記ヒンジ部材に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の閃光装置内蔵カメラ。
【請求項7】
前記ヒンジ部材には、前記ケースの回動中心と略同軸で貫通孔が形成され、該貫通孔内で前記導光部材の光射出面と前記光電変換素子の受光面とが対向するよう構成したことを特徴とする請求項6に記載の閃光装置内蔵カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−53209(P2006−53209A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233083(P2004−233083)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】