閉断面構造部品の製造方法及び装置
【課題】成形工程や金型数の削減による製造コスト低減を図りつつ、底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を寸法精度良く製造可能とすることを目的とする。
【解決手段】平板状の加工材Bを底面部B1が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法である。上記加工材Bの少なくとも底面部B1位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部10を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部B4を形成する第1成形工程と、上記加工材Bの底面部B1位置をパッド4とパンチ3で挟み込んだ状態で、上記パンチ3をダイ5の間に押し込むことで、パッド4とパンチ3とで上記第1の面外変形部10を押し潰すと共に屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、を備える。
【解決手段】平板状の加工材Bを底面部B1が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法である。上記加工材Bの少なくとも底面部B1位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部10を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部B4を形成する第1成形工程と、上記加工材Bの底面部B1位置をパッド4とパンチ3で挟み込んだ状態で、上記パンチ3をダイ5の間に押し込むことで、パッド4とパンチ3とで上記第1の面外変形部10を押し潰すと共に屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の加工材(ブランク)を底面部が長手方向に沿って湾曲する曲がり形状で且つ閉断面構造のプレス部品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電、建築などの分野において、従来、閉断面部品のプレス部品を製造するためには、部品断面方向両端面にそれぞれフランジを有する、対をなす各断面略コの字形状の2部品を別々に成形した後、それぞれの部品をフランジ部でスポット溶接やレーザ等の連続溶接によって接合して、製品としての閉断面部品としていた。
このような閉断面構造のプレス部品の製造に対し、低コストでの製造、軽量化、衝突特性、剛性性能向上などを達成するため、1枚のブランク材からプレス成形によって多角形断面を有する閉断面部品を成形する工法が提案されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、平板状の素材の中央部をパッドによって支持し、素材の端部を平面視したとき曲率を有し且つ側面視したとき側壁面の下方にフランジ面を有する形状にプレスする方法が開示されている。そして、特許文献1には、プレス成形体の側壁面に凸形状に張り出した凸状ビードを付与し、且つその直下のフランジ面に凹状ビードを付与することによって、曲げ前後の素材端部の線長差をほぼ完全になくし、成形部のしわ発生を抑制することが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、平板状の素材板から、長手方向に湾曲している湾曲部、湾曲部から長手方向に延長する拡張部、および湾曲部および拡張部の側方を延長するフランジを有する成形品を得るためのプレス成形装置が開示されている。このプレス成形装置は、湾曲部のフランジを構成する素材板の縁部を圧締めするための押圧部を有し、その拡張部成形型および拡張部成形型の押圧部を、湾曲部のフランジ面に発生する残留応力を相殺する方向に移動させるための駆動手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−115674号公報
【特許文献2】特開2008−200688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、曲面を有するプレス部品に成形した場合に、ブランクフランジ該当部線長(D1)と成形後の該当部線長(D2)を比較すると、成形前後の線長差発生を表現する式:D1−D2の値が正の場合、すなわち成形前の方が成形後の線長よりも長い場合には、しわや座屈が発生しやすい。そして、この線長差を無くすために、特許文献1では側壁部に凸形状の張出し凸ビードを付与すると共に、その直下のフランジ面に凹形状に窪ませた凹ビードを付与する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、金型の構造上、部品の側壁部およびそれに連続するフランジ部に対する凹凸形状の付与しかできない。このため、特許文献1の技術は、平面視したときに曲率を有した部品(すなわち側面視したときは直線形状のプレス部品)にしか適用できない。また、1枚のブランク材から成形された閉断面部品にも適用できないという課題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、平面視したときに曲率を有した部品について、プレス成形中に部品長手方向に圧縮荷重を付与させながら成形することで、フランジ面に発生する残留応力を低減させ、寸法精度を向上させる工法である。この特許文献2に記載の技術についても、平面視したときに曲率を有した部品(すなわち側面視したときは直線形状のプレス部品)にしか適用できないという課題がある。
【0009】
このように、従来技術にあっては、プレス加工品の少なくとも底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面部品を、容易にプレス成形することができなかった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、成形工程や金型数の削減による製造コスト低減を図りつつ、底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を寸法精度良く製造可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する第1成形工程と、
上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で、上記パンチをダイの間に押し込むことで、パッドとパンチとで上記第1の面外変形部を押し潰すと共に上記屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記第1成形工程で、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成し、
上記第2成形工程で、パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする。
【0012】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 上記第1成形工程終了後であって第2成形工程で上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対してバルクヘッドを設置することを特徴とする。
次に、請求項4に記載した発明は、平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する上型及び下型を備えたプレス用金型と、
上記加工材の底面部を挟持して上記第1の面外変形部を押し潰すためのパッド及びパンチと、上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で上記パンチを押し込むことで上記屈曲部を曲げ成形するダイと、を備えることを特徴とする。
【0013】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載した構成に対し、平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記上型及び下型は、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成可能に構成され、
更に、上記パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする。
次に、請求項6に記載した発明は、請求項4又は請求項5に記載した構成に対し、パッド及びパンチで上記加工材の底面部を挟持して上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対しバルクヘッドを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1や請求項4に係る発明によれば、予め底面部に対し第1の面外変形部を長手方向に沿って複数形成して長手方向の線長を稼いでおいてから、パンチ底に曲面形状を有するパンチで、底面部が湾曲した曲がり形状にプレス成形する。これによって、底面部における曲がりによる長手方向の伸びを上記第1の面外変形部が押し潰されることで稼ぎつつ底面部の形状を目的の曲面形状に加工することが出来る。
この結果、成形工程や金型数の削減による製造コストの低減を図りつつ、底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造部品を寸法精度良く製造可能となる。
【0015】
また請求項2や請求項5に係る発明では、更に側壁部にも予め第2の面外変形部を設け、側壁部による伸びをその第2の面外変形部が押し潰されることで稼ぐことで、より閉断面構造のプレス部品における目的の曲面形状に加工することが可能となる。
また請求項3や請求項6に係る発明のように、閉断面に成形する前にバルクヘッドを設置することで、簡易に閉断面構造のプレス部品内にバルクヘッドを設置可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係るプレス成形で成形後の閉断面構造のプレス部品を示す図であって、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る第1成形工程で使用する金型及びプレス成形を説明する図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る第2成形工程で使用する金型及び曲げプレス成形を説明する図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る第2成形工程で使用する金型の側面図を示す図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る加工材の成形を示す図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る変形例を示す図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係るプレス成形を説明する図である。
【図8】バルクヘッドの構造例を示す斜視図である。
【図9】差し込み片の曲げを示す模式図である。
【図10】本発明に基づく第2実施形態に係る変形例を示す図である。
【図11】比較例の成形を説明する図である。
【図12】比較例の成形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
まず第1実施形態について説明する。
平板状の加工材B(ブランクとも呼ぶ。)としては、例えば金属単板や該金属単板を目標の成形品形状に対応したブランク形状にせん断加工や切断加工を施した後の金属板を用いることができる。また金属単板は、熱延鋼板、冷延鋼板、あるいはこれらの鋼板に表面処理(電気亜鉛系めっき、溶融亜鉛系めっき、アルミ系めっき等)を施した鋼板をはじめ、SUS、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属類から構成される単板でもよい。溶融亜鉛系めっき鋼板の場合、合金化処理を施してもよく、さらにこれらのめっき鋼板には、めっき後さらに表面処理(有機皮膜処理等)を施してもよい。なお、金属単板として、鋼板を用いる場合、軟質鋼板を用いることは勿論、硬質鋼板(高張力鋼板、超高張力鋼板)を用いることができるが、本発明を採用するプレス成形は、高張力鋼板や超高張力鋼板の成形に好適である。
【0018】
また、本発明によるプレス成形は、上記平板状の加工材Bを用いて成形し、成形後の成形品断面形状(閉断面形状)が、例えば、4角形、6角形、8角形等の多角形の断面形状(これらに近似した略多角形形状を含む)や、断面に丸みを有する円形、楕円形(これらに近似した略円形形状、略楕円形状を含む)のように閉じた断面形状を有しているものである。ただし、成形後のプレス部品は、成形によって、長手方向に沿って下側に湾曲した曲がり形状の閉断面構造となる。
【0019】
また、本発明における閉断面構造は、最終的に端部を接合するための接合端部B3(本明細書中、溶接端部とも称する。)を有する。その接合端部B3は、レーザ溶接やアーク溶接等の溶接のみに限らず、リベット接合、ボルト接合、接着剤などによる接合により適宜接合することが可能である。以下の例では、溶接によって接合する場合で例示する。
以下の説明では、平板状の加工材Bを本実施形態で成形した後の閉断面構造のプレス部品として、図1に示すように、断面形状が略4角形とする場合で例示する。但し、図1(a)のように、長手方向に沿って湾曲した形状とする。
【0020】
(装置構成)
製造装置は、上述のように、平板状の加工材Bを、該加工材Bの幅方向中央部側に形成される底面部B1と、その底面部B1の幅方向両側に位置する左右の側壁部B2と、その左右の側壁部B2にそれぞれ連続する一対の溶接端部B3(フランジ部)とを備えた閉断面構造に成形すると共に、上記側壁部B2を、長手方向に沿って下側に凸の湾曲した曲がり形状にプレス成形する(図1参照)。
【0021】
その製造装置は、第1成形工程のためのプレス用の金型と、第2成形工程のための曲げ成形用の金型とを備える。
上記プレス用の金型は、模式図である図2に示すように、平板状の加工材Bを間に挟んでプレス成形する下型1及び上型2からなる。
下型1の上面は、上側に開放したプレス成形面を構成する。すなわち、そのプレス成形面は、凹部が上向きの断面略コの字状となっていて、幅方向略中央部が底面部成形部1aであり、その底面部成形部1aの左右部分が側壁成形部1bとなっている。その側壁成形部1bの外側にフランジからなる溶接端部成形用の立上り面1cがある。
【0022】
上記底面部成形部1aには、図2(c)のように、側面視において、長手方向に沿ってうねり状の凹凸形状が複数形成されている。各凹形状及び凸形状は、それぞれ側面視で円弧形状となっており、隣り合う凹形状と凸形状とは、曲率が急峻するところがないように滑らかな曲面で接続されている。この凹形状や凸形状が第1の面外変形部10を形成するプレス成形面の部分となる。
【0023】
この各凹形状や凸形状は、それぞれ幅方向に延び、さらに側壁成形部1b位置にも連続して形成されている。この側壁成形部1bに形成されている各凹形状や凸形状は、第2の面外変形部11を形成するプレス成形面の部分となる。この側壁成形部1bに形成されている各凹形状や凸形状は、幅方向に向かうほど、長手方向の幅が小さくなるように設定されている。
【0024】
また、底面部成形部1aと側壁成形部1bとの境界部に急峻部を形成して、その上記境界部位置に屈曲部B4が形成されるようにしている。
また、底面部成形部1aに対して側壁成形部1bが傾斜するように形成されている。
また、上型2は、上記下型1のプレス成形面内に差し込まれる形状となっていて、下面及び幅方向の左右端面がプレス成形面となっている。そして、上型2の下面からなるプレス成形面は、対向する上記下型1の上面(プレス成形面)に倣った形状となっている。すなわち、幅方向中央部に凹状の底面部成形部が形成され、その左右両側に側壁成形部が形成されている。
【0025】
そして、下型1と上型2との間に加工材Bを介挿した状態で、下型1に向けて上型2を差し込むことで、加工材Bのプレス成形が行われる。
また、曲げ成形用の金型は、模式図である図3に示すように、パンチ3、パッド4、一対のダイ5を備える。
上記パンチ3の押込部分の断面形状、つまり下端部の断面形状は、下端面3aが閉断面構造に成形後の上記底面部B1と同一形状となっている。すなわち、上記下端面3aは、図4に示すように、長手方向に沿って下側に凸のなだらかな曲面形状となっている。また上記パンチ3の押込部分の側面形状は、平坦な形状となっている。
【0026】
また、パッド4は、パンチ3と上下で対向配置しており、その上面4aは、上記パンチ3の下端面に倣った形状となっている。
また一対のダイ5は、上記底面部B1の幅に応じた間隔を開けて対向する。その一対のダイ5は、上記パンチ3を押し込むことで、左右の側壁部B2が近づく方向に屈曲部B4を支点として当該側壁部B2を曲げるように曲げ成形する。その一対のダイ5の長手方向の形状は、上記成形後の部品の形状に倣った形状となっている。
【0027】
(製造方法)
次に、上記製造装置を使用した閉断面構造部品の製造方法について説明する。
本実施形態では、平板状の金属板からなる加工材Bを、2工程のプレス成形で上記目的の閉断面構造のプレス部品にプレス成形する。その後、溶接組立工程を行う。
ここで、自動車のフロントピラーR/Fの製造を前提として本実施形態の工程を説明する。その部品製造工程は、次の(1)成形工程、(2)溶接組立工程の2工程を備える。
【0028】
(1)成形工程
成形工程は、第1成形工程と第2成形工程に分けられる。
(1−1)第1成形工程
平板状の加工材B(ブランク)の底面部B1と側壁部B2となる位置に第1及び第2の面外変形部10,11となる凹凸形状を形成すると共に、屈曲部B4を形成する工程である。
すなわち、図2のように、下型1と上型2との間に平板状の加工材Bを介挿した状態で(図2(a))、下型1に向けて上型2を差し込むことで、プレス成形が行われる(図2(b))。
このとき、図5(a)に示すように、底面部B1と側壁部B2との境界部に屈曲部B4が形成されると共に、底面部B1に対し左右の側壁部B2が斜め上方に持ち上がった形状に成形される。
【0029】
また、底面部成形部1a及び側壁成形部1bの凹凸形状が加工材Bに転写されて、底面部B1位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部10が上記長手方向に沿って複数形成される(図5(a))。同時に左右両側に位置する左右の側壁部B2位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部11が上記長手方向に沿って複数形成される。
【0030】
ここで、加工材Bの幅方向に沿って、各第1の面外変形部10とその両側に位置する第2の面外変形部11とは、それぞれ連続していることが好ましい。また本実施形態の各第1の面外変形部10は、それぞれ幅方向に延在している。すなわち、隣り合う第1の面外変形部10の境界は幅方向に延びている。
ここで、上記長手方向に沿って複数形成される第1の面外変形部10の数は、多いほど長手方向に均一に伸びるように潰すことが出来る。したがって、下側への湾曲の程度にもよるが、例えば第1の面外変形部10の数を6個以上とすることが好ましい。
【0031】
また、長手方向に並ぶ複数の第2の面外変形部11は、側壁部B2での長手方向に沿った線長が、底面部B1から離れるほど小さくなるように、第2の面外変形部11の形状や数を予め設定しておく。
すなわち、成形後の形状は部品最終形状の各断面長になるように、絞り・張出し成形を行う。また、側面視上下方向の曲面形成時における上下面線長差を小さく若しくはゼロとするために、上記第1及び第2の面外変形部10,11を成形する。
【0032】
(1−2)第2成形工程
続いて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながら、パンチ3を一対のダイ5間に押し込む。この時の荷重は一定であっても、可変であっても良い。
このとき、図3の(a)→(b)のように、パッド4−パンチ3間に荷重を付与することで、図5(b)に示すように、第1の面外変形部10が押し潰されながら、底面部B1は、パンチ3の成形面に倣った形状、つまり下側に凸となる長手方向に沿って湾曲した形状に成形される。
さらに、図3の(b)→(c)のように、パンチ3をダイ5間に押し込むことで、側壁部B2の第2の面外変形部11が押し潰されながら、当該側壁部B2が縦壁となって起立し、図5(c)に示すように、閉断面化する。
【0033】
(2)溶接組立工程
閉断面化されたプレス成形部品の側面視上面の突合部については、レーザ溶接やアーク溶接等の連続溶接により接合する。
(作用その他)
パンチ底に曲面形状を付与、すなわち成形後のプレス部品を側面視で曲がり形状とするために、第1成形工程として、図5(a)に示すように、張出し成形によって、うねり状の凹凸形状などからなる第1及び第2の面外変形部10,11をプレス成形にて付与する。
【0034】
次いで、第2成形工程では図3に示す最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した成形品を成形する。第2成形工程においては、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながらダイ5に押し込む。このとき、ダイ5側面とパンチ3側面の間でパネル側面部の凹凸形状部からなる第2の面外変形部11が押し潰されながら、側壁部B2が縦壁として起立して閉断面化する(図5(b)(c))。
【0035】
パンチ3が下死点に達した時、部品側面視の上側はパンチ3に設けたスリット(不図示)内でもう一方の端面と突き合わされて閉断面化する(図3(c))。
閉断面化が進行する際、側面視上面はパンチ3に巻き付くように形状変化するが、パンチ3の支持部にはスリット(不図示)を設け、加工材がパンチ3の支持体に干渉しないようになっている。さらにパンチ3からの成形部品の抜き取りはパンチ3の長手方向端面にある門状構造のロック(不図示)を外して、パンチ3を長手方向へ抜き取る。
【0036】
ここで、図6に示すように、加工材Bに対し、予め一対の接合面B5を形成しておいても良い。本実施形態のプレス成形を採用することで、プレス成形後の閉断面構造において、精度良く一対の接合面B5を対向配置することが可能となる。
以上のように、本発明に基づく成形の工法にあっては、曲がり形状のプレス部品を1枚のブランク材から精度良く製造することが可能となる。この結果、金型数削減や、組立て工程の不要による製造工程簡略化の効果による大幅なコストダウンと、フランジレス化による軽量化が可能となる。
【0037】
すなわち、第1成形工程で、予め底面部B1に対し第1の面外変形部10を長手方向に沿って複数形成して長手方向の線長を稼いでおいてから、パンチ底に曲面形状を有するパンチ3で、底面部B1が湾曲した曲がり形状にプレス成形する。このとき、底面部B1における曲がりによる長手方向の伸びを上記第1の面外変形部10が押し潰されることで稼ぎつつ、底面部B1の形状を目的の曲面形状に加工することが出来る。この結果、成形工程や金型数の削減による製造コストダウンを図りつつ、底面部B1に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を寸法精度良く成形可能となる。
【0038】
更に、側壁部B2にも予め第2の面外変形部11を設け、側壁部B2による伸びも上記第2の面外変形部11が押し潰されることで稼ぐことによって、より閉断面構造のプレス部品における目的の曲がり形状に加工することが可能となる。
ここで、上記第1の面外変形部10の形状、及び第1の面外変形部10の境界部分の形状は、長手方向及び幅方向に沿って曲率が急峻する部分が無いように成形しておくことが好ましい。第2の面外変形部11についても同様である。
【0039】
また、上記実施形態では、上記第1の面外変形部10を、長手方向に沿って波打つような形状、つまり凹形状と凸形状とが連続して繰り返す形状に形成する場合で説明したが、第1の面外変形部10はこれに限定されない。例えば、上記第1の面外変形部10を、凹形状だけや凸形状だけで形成しても良い。ただし、上述のように底面部B1に対する第1の面外変形部10の境界部分は、長手方向及び幅方向に沿って曲率が急峻する部分が無いように曲面形状に成形しておくことが好ましい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と同様な構成などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、図7に示すように、上記第1実施形態と同様である。ただし、第1成形工程による成形後に、バルクヘッド16を設置する点が異なる。
すなわち、上記第1成形工程と第2成形工程との間に、バルクヘッド設置工程を設けた。
【0041】
次に、本実施形態の工程について説明する。
(第1成形工程)
第1成形工程は、上記第1実施形態と同様である。ただし、図7(a)に示すように、第1の面外変形部10を形成する位置よりも長手方向外側位置に、スリット状のバルクヘッド設置用穴15を開口しておく。
そして、第2成形工程を実施する前に、次に説明するバルクヘッド設置工程を実施する。なお、バルクヘッド設置の処理を、第2成形工程の中で実施するようにしても良い。この場合、第2成形工程による屈曲部B4の曲げ成形前までに、バルクヘッド設置の処理を実施すればよい。
【0042】
(バルクヘッド設置工程)
ここで、上記加工材Bに対する加工とは別に、図8に示すようなバルクヘッド16を別のブランク材を加工して用意しておく。バルクヘッド16は、図8に示すように、バルクヘッド本体と差し込み片16dとから構成する。バルクヘッド本体は、上記底面部B1に下端を当接して上方に立設する立上り部16aと、その立上り部16aの側面に連続して立上り部16aの面と交差する横方向に張り出す左右の側片部16b、16cとからなる。左右の側片部16b、16cは、上記側壁部B2に当接可能となっている。このように、バルクヘッド本体は、上面視で略コの字形状となっている。また上記立上り部16aの下端部から後方に延びる底部板を備える。その底部板の幅方向両端部で下方に折り曲げられた差し込み片16dが、下方に向けて突出している。本実施形態のバルクヘッド16は、上述のような構成としており、一枚の金属板から加工できる。
【0043】
そして、バルクヘッド設置用の金型セットに上記第1成形工程で成形済みの加工材Bを取り付けて、上記加工材Bのバルクヘッド設置用穴15に対し、差し込み片16dを上側から差し込んでバルクヘッド16を底面部B1に取り付ける(図7(c))。このとき、バルクヘッド設置用のパッドとパンチで挟み込む位置よりも長手方向外側に上記バルクヘッド設置用穴15が位置するように構成する。なお、図7に示す金型構成では、第2成形工程でバルクヘッド16の設置処理を実施する場合を例示している。
【0044】
差し込み片16dをバルクヘッド設置用穴15に差し込むことで、バルクヘッド16の取付け位置が位置決めされると共に、バルクヘッド本体は、底面部B1に対し自立して立った状態になっている。
この状態から、バルクヘッド設置用のパンチを下降させ、底面部B1の下面から下方に突き出ている差し込み片16dを当該底面部B1側に90度曲げることで、かしめを実施する。これによって、バルクヘッド16を設置する。その後、ロボット等で次工程である第2成形工程の金型セットヘ移動させる。
【0045】
ここで、上記バルクヘッド設置用のダイのダイ面の一部として、図9に示すような、上記上側から下降してくる差し込み片16dの下端に下側から当接する傾斜面17を備える。そして。その傾斜面17に差し込み片16dの下端が当接すると、上記傾斜面17によって差し込み片16dが内側に折り曲げられることで、上記のように底面部B1側に90度曲げられる。
【0046】
(第2成形工程)
第2成形工程は、上記第1実施形態と同じである。
すなわち、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながらダイ5に押し込む。そして、パッド4−パンチ3間で底面部B1に形成した第1の面外変形部10を押し潰すと共に、ダイ5側面とパンチ3側面の間でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)が押し潰されながら側壁部B2を起立させて、閉断面化させる。このとき、バルクヘッド16の側片部16b、16cが側壁部B2に当接することで、当該側片部16b、16cがパンチ3側面の一部を兼ねる。
なお、上記パンチ3は、バルクヘッド16位置はくり抜いた形状となっていることで、上記バルクヘッド本体への荷重が掛かることを防止している。
ここで、上述したように、上記差し込み片16dの折曲げ加工は、第2成形工程での加工の際に同時に実施しても良い。
【0047】
(溶接組立工程)
第1実施形態と同様に、閉断面化された成形部品の側面視上面の突合部について、レーザ溶接やアーク溶接、スポット溶接等の連続溶接によって接合する。
また、本実施形態では、設置したバルクヘッド16の折り曲げた差し込み片16dを、閉断面化した成形部品であるプレス成型品に対し溶接や接着剤などによって接合しても良いし、かしめた状態のままでも良い。
ここで、図10に示すように、加工材Bに対し、予め一対の接合面B5を形成しておいても良い。本実施形態のプレス成形を採用することで、プレス成形後の閉断面構造において、精度良く一対の接合面B5を対向配置することが可能となる。
【0048】
(作用その他)
第1実施形態で説明した作用効果に加え、本実施形態では次の作用効果が発生する。
すなわち、第1実施形態と同様に、曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を1枚のブランク材から製造することが可能となる。この結果、金型数削減、組立工程の不要による製造工程簡略化の効果による大幅なコストダウンとフランジレス化による軽量化が可能となる。
また、上記のようにして、第2成形工程における屈曲部を折り曲げ成形を実施する前にバルクヘッド16を設置する。これによって、上記プレス部品本体に対し、後からバルクヘッド16を取り付けるための開口部を形成しなくてもバルクヘッド16を取り付けることが可能となる。この結果、プレス部品本体の性能を損ねることがなく、製造工程数を削減することができコスト低減が可能となる。
【実施例1】
【0049】
次に、上記第1実施形態に基づく実施例について説明する。
「適用材(鋼種、成分、寸法等)」
成形後の対象形状:4角閉断面形状部品(フロントピラーアッパーR/Fモデル)で断面は、40mmH X30mmW L=300mmとする。ただし、実施形態で説明したように、下側に湾曲した曲がり形状の閉断面構造のプレス部品とする。
先ず共通の条件について説明する。
「使用鋼板」
引張強度980MPa(合金化溶融亜鉛めっき(両面))材で、板厚1.2mm、めっき付着量(片面)45g/m2とする。
「溶接工法」
溶接組立工程での溶接は、YAGレーザ溶接とした。
溶接条件は
溶接速度:1500mm/min
YAGレーザ出力:3.5kW
フォーカス直径:2mm
とした。
以上を共通の条件として、以下3例について、閉断面構造部品の製造を実施した。
【0050】
(第1実施例)
この第1実施例は、上記図2〜図5に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジ(接合端部B3)を設けた。
【0051】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパー(長手方向に沿った湾曲)を付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0052】
(第2実施例)
この第2実施例は、図6に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、加工材Bの底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた部分にさらに部品幅方向にフランジを設けた。
【0053】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。
このとき側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、フランジ部を突き合わせ、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、フランジ部をスポット溶接により接合した。
【0054】
(比較例1)
この比較例1は、図11に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、第1実施例及び第2実施例とは異なり、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)を設けず、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0055】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込みながらダイ5に押し込み側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0056】
「評価」
長手方向に沿って湾曲した曲げ形状を有する閉断面構造をプレス成形で加工するとき、本実施形態を採用した第1及び第2実施例では、一対の溶接端部を精度良く付き合わせることが出来た。これに対し、比較例1にあっては、一対の溶接端部の突合せが大きく乱れているため、別途、一対の溶接端部の突合せ面を整形する工程が必要になった。
このように、本実施形態を採用することで、比較例に比べ、工程数と金型数を削減することが可能となる。
また、本実施形態に基づく実施例を採用すると、成形後の外観形状はいずれの実施例でも破断・しわが発生することなく成形することができた。これに対し、比較例1では、しわが発生した。
【実施例2】
【0057】
次に、第2実施形態に基づく実施例について説明する。
適用材や溶接などの条件は、上記実施例1と同じ条件として、以下3例について、閉断面構造部品の製造を実施した。
(第3実施例)
この第3実施例は、図7に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0058】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に形成した差し込み片16dを底面部B1に開口したバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。続いて、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0059】
次に、第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0060】
(第4実施例)
この第4実施例は、図10に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた部分にさらに部品幅方向にフランジを設けた。
【0061】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に設けてある差し込み片16dを底面部B1に開口されたバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。続いて、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0062】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、フランジ部を突き合わせ、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、フランジ部をスポット溶接により接合した。
【0063】
(比較例2)
この比較例2は、図12に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、第3実施例及び第4実施例とは異なり、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)を設けず、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0064】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に設けてある差し込み片16dを底面部B1に開口されたバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。ついで、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0065】
第2成形工程で最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込みながらダイ5に押し込み側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0066】
「評価」
長手方向に沿って湾曲した曲げ形状を有する閉断面構造をプレス成形で加工するとき、本実施形態を採用した第3及び第4実施例にあっては、一対の溶接端部を精度良く付き合わせることが可能となった。これに対し、比較例2にあっては、一対の溶接端部の突合せが大きく乱れているため、別途、一対の溶接端部の突合せ面を整形する工程が必要になった。
このように、本実施形態を採用することで、比較例に比べ、工程数と金型数を削減することが可能となる。
また、本実施形態に基づき実施例を採用すると、成形後の外観形状はいずれの実施例でも破断・しわが発生することなく成形することができた。
これに対し、比較例2では、しわが発生した。
【符号の説明】
【0067】
1 下型
1a 底面部成形部
1b 側壁成形部
1c 立上り面
2 上型
3 パンチ
3a 下端面
4 パッド
4a 上面
5 ダイ
5a ダイ側面
10 第1の面外変形部
11 第2の面外変形部
15 バルクヘッド設置用穴
16 バルクヘッド
16a 立上り部
16b、16c 側片部
16d 差し込み片
17 傾斜面
B 加工材
B1 底面部
B2 側壁部
B3 接合端部(溶接端部)
B4 屈曲部
B5 接合面
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状の加工材(ブランク)を底面部が長手方向に沿って湾曲する曲がり形状で且つ閉断面構造のプレス部品を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、家電、建築などの分野において、従来、閉断面部品のプレス部品を製造するためには、部品断面方向両端面にそれぞれフランジを有する、対をなす各断面略コの字形状の2部品を別々に成形した後、それぞれの部品をフランジ部でスポット溶接やレーザ等の連続溶接によって接合して、製品としての閉断面部品としていた。
このような閉断面構造のプレス部品の製造に対し、低コストでの製造、軽量化、衝突特性、剛性性能向上などを達成するため、1枚のブランク材からプレス成形によって多角形断面を有する閉断面部品を成形する工法が提案されている。
【0003】
ここで、特許文献1には、平板状の素材の中央部をパッドによって支持し、素材の端部を平面視したとき曲率を有し且つ側面視したとき側壁面の下方にフランジ面を有する形状にプレスする方法が開示されている。そして、特許文献1には、プレス成形体の側壁面に凸形状に張り出した凸状ビードを付与し、且つその直下のフランジ面に凹状ビードを付与することによって、曲げ前後の素材端部の線長差をほぼ完全になくし、成形部のしわ発生を抑制することが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、平板状の素材板から、長手方向に湾曲している湾曲部、湾曲部から長手方向に延長する拡張部、および湾曲部および拡張部の側方を延長するフランジを有する成形品を得るためのプレス成形装置が開示されている。このプレス成形装置は、湾曲部のフランジを構成する素材板の縁部を圧締めするための押圧部を有し、その拡張部成形型および拡張部成形型の押圧部を、湾曲部のフランジ面に発生する残留応力を相殺する方向に移動させるための駆動手段を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−115674号公報
【特許文献2】特開2008−200688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、曲面を有するプレス部品に成形した場合に、ブランクフランジ該当部線長(D1)と成形後の該当部線長(D2)を比較すると、成形前後の線長差発生を表現する式:D1−D2の値が正の場合、すなわち成形前の方が成形後の線長よりも長い場合には、しわや座屈が発生しやすい。そして、この線長差を無くすために、特許文献1では側壁部に凸形状の張出し凸ビードを付与すると共に、その直下のフランジ面に凹形状に窪ませた凹ビードを付与する技術が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、金型の構造上、部品の側壁部およびそれに連続するフランジ部に対する凹凸形状の付与しかできない。このため、特許文献1の技術は、平面視したときに曲率を有した部品(すなわち側面視したときは直線形状のプレス部品)にしか適用できない。また、1枚のブランク材から成形された閉断面部品にも適用できないという課題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術は、平面視したときに曲率を有した部品について、プレス成形中に部品長手方向に圧縮荷重を付与させながら成形することで、フランジ面に発生する残留応力を低減させ、寸法精度を向上させる工法である。この特許文献2に記載の技術についても、平面視したときに曲率を有した部品(すなわち側面視したときは直線形状のプレス部品)にしか適用できないという課題がある。
【0009】
このように、従来技術にあっては、プレス加工品の少なくとも底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面部品を、容易にプレス成形することができなかった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、成形工程や金型数の削減による製造コスト低減を図りつつ、底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を寸法精度良く製造可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する第1成形工程と、
上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で、上記パンチをダイの間に押し込むことで、パッドとパンチとで上記第1の面外変形部を押し潰すと共に上記屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記第1成形工程で、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成し、
上記第2成形工程で、パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする。
【0012】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、 上記第1成形工程終了後であって第2成形工程で上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対してバルクヘッドを設置することを特徴とする。
次に、請求項4に記載した発明は、平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する上型及び下型を備えたプレス用金型と、
上記加工材の底面部を挟持して上記第1の面外変形部を押し潰すためのパッド及びパンチと、上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で上記パンチを押し込むことで上記屈曲部を曲げ成形するダイと、を備えることを特徴とする。
【0013】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載した構成に対し、平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記上型及び下型は、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成可能に構成され、
更に、上記パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする。
次に、請求項6に記載した発明は、請求項4又は請求項5に記載した構成に対し、パッド及びパンチで上記加工材の底面部を挟持して上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対しバルクヘッドを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1や請求項4に係る発明によれば、予め底面部に対し第1の面外変形部を長手方向に沿って複数形成して長手方向の線長を稼いでおいてから、パンチ底に曲面形状を有するパンチで、底面部が湾曲した曲がり形状にプレス成形する。これによって、底面部における曲がりによる長手方向の伸びを上記第1の面外変形部が押し潰されることで稼ぎつつ底面部の形状を目的の曲面形状に加工することが出来る。
この結果、成形工程や金型数の削減による製造コストの低減を図りつつ、底面部に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造部品を寸法精度良く製造可能となる。
【0015】
また請求項2や請求項5に係る発明では、更に側壁部にも予め第2の面外変形部を設け、側壁部による伸びをその第2の面外変形部が押し潰されることで稼ぐことで、より閉断面構造のプレス部品における目的の曲面形状に加工することが可能となる。
また請求項3や請求項6に係る発明のように、閉断面に成形する前にバルクヘッドを設置することで、簡易に閉断面構造のプレス部品内にバルクヘッドを設置可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係るプレス成形で成形後の閉断面構造のプレス部品を示す図であって、(a)は側面図、(b)は斜視図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る第1成形工程で使用する金型及びプレス成形を説明する図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る第2成形工程で使用する金型及び曲げプレス成形を説明する図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る第2成形工程で使用する金型の側面図を示す図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る加工材の成形を示す図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る変形例を示す図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係るプレス成形を説明する図である。
【図8】バルクヘッドの構造例を示す斜視図である。
【図9】差し込み片の曲げを示す模式図である。
【図10】本発明に基づく第2実施形態に係る変形例を示す図である。
【図11】比較例の成形を説明する図である。
【図12】比較例の成形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
まず第1実施形態について説明する。
平板状の加工材B(ブランクとも呼ぶ。)としては、例えば金属単板や該金属単板を目標の成形品形状に対応したブランク形状にせん断加工や切断加工を施した後の金属板を用いることができる。また金属単板は、熱延鋼板、冷延鋼板、あるいはこれらの鋼板に表面処理(電気亜鉛系めっき、溶融亜鉛系めっき、アルミ系めっき等)を施した鋼板をはじめ、SUS、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属類から構成される単板でもよい。溶融亜鉛系めっき鋼板の場合、合金化処理を施してもよく、さらにこれらのめっき鋼板には、めっき後さらに表面処理(有機皮膜処理等)を施してもよい。なお、金属単板として、鋼板を用いる場合、軟質鋼板を用いることは勿論、硬質鋼板(高張力鋼板、超高張力鋼板)を用いることができるが、本発明を採用するプレス成形は、高張力鋼板や超高張力鋼板の成形に好適である。
【0018】
また、本発明によるプレス成形は、上記平板状の加工材Bを用いて成形し、成形後の成形品断面形状(閉断面形状)が、例えば、4角形、6角形、8角形等の多角形の断面形状(これらに近似した略多角形形状を含む)や、断面に丸みを有する円形、楕円形(これらに近似した略円形形状、略楕円形状を含む)のように閉じた断面形状を有しているものである。ただし、成形後のプレス部品は、成形によって、長手方向に沿って下側に湾曲した曲がり形状の閉断面構造となる。
【0019】
また、本発明における閉断面構造は、最終的に端部を接合するための接合端部B3(本明細書中、溶接端部とも称する。)を有する。その接合端部B3は、レーザ溶接やアーク溶接等の溶接のみに限らず、リベット接合、ボルト接合、接着剤などによる接合により適宜接合することが可能である。以下の例では、溶接によって接合する場合で例示する。
以下の説明では、平板状の加工材Bを本実施形態で成形した後の閉断面構造のプレス部品として、図1に示すように、断面形状が略4角形とする場合で例示する。但し、図1(a)のように、長手方向に沿って湾曲した形状とする。
【0020】
(装置構成)
製造装置は、上述のように、平板状の加工材Bを、該加工材Bの幅方向中央部側に形成される底面部B1と、その底面部B1の幅方向両側に位置する左右の側壁部B2と、その左右の側壁部B2にそれぞれ連続する一対の溶接端部B3(フランジ部)とを備えた閉断面構造に成形すると共に、上記側壁部B2を、長手方向に沿って下側に凸の湾曲した曲がり形状にプレス成形する(図1参照)。
【0021】
その製造装置は、第1成形工程のためのプレス用の金型と、第2成形工程のための曲げ成形用の金型とを備える。
上記プレス用の金型は、模式図である図2に示すように、平板状の加工材Bを間に挟んでプレス成形する下型1及び上型2からなる。
下型1の上面は、上側に開放したプレス成形面を構成する。すなわち、そのプレス成形面は、凹部が上向きの断面略コの字状となっていて、幅方向略中央部が底面部成形部1aであり、その底面部成形部1aの左右部分が側壁成形部1bとなっている。その側壁成形部1bの外側にフランジからなる溶接端部成形用の立上り面1cがある。
【0022】
上記底面部成形部1aには、図2(c)のように、側面視において、長手方向に沿ってうねり状の凹凸形状が複数形成されている。各凹形状及び凸形状は、それぞれ側面視で円弧形状となっており、隣り合う凹形状と凸形状とは、曲率が急峻するところがないように滑らかな曲面で接続されている。この凹形状や凸形状が第1の面外変形部10を形成するプレス成形面の部分となる。
【0023】
この各凹形状や凸形状は、それぞれ幅方向に延び、さらに側壁成形部1b位置にも連続して形成されている。この側壁成形部1bに形成されている各凹形状や凸形状は、第2の面外変形部11を形成するプレス成形面の部分となる。この側壁成形部1bに形成されている各凹形状や凸形状は、幅方向に向かうほど、長手方向の幅が小さくなるように設定されている。
【0024】
また、底面部成形部1aと側壁成形部1bとの境界部に急峻部を形成して、その上記境界部位置に屈曲部B4が形成されるようにしている。
また、底面部成形部1aに対して側壁成形部1bが傾斜するように形成されている。
また、上型2は、上記下型1のプレス成形面内に差し込まれる形状となっていて、下面及び幅方向の左右端面がプレス成形面となっている。そして、上型2の下面からなるプレス成形面は、対向する上記下型1の上面(プレス成形面)に倣った形状となっている。すなわち、幅方向中央部に凹状の底面部成形部が形成され、その左右両側に側壁成形部が形成されている。
【0025】
そして、下型1と上型2との間に加工材Bを介挿した状態で、下型1に向けて上型2を差し込むことで、加工材Bのプレス成形が行われる。
また、曲げ成形用の金型は、模式図である図3に示すように、パンチ3、パッド4、一対のダイ5を備える。
上記パンチ3の押込部分の断面形状、つまり下端部の断面形状は、下端面3aが閉断面構造に成形後の上記底面部B1と同一形状となっている。すなわち、上記下端面3aは、図4に示すように、長手方向に沿って下側に凸のなだらかな曲面形状となっている。また上記パンチ3の押込部分の側面形状は、平坦な形状となっている。
【0026】
また、パッド4は、パンチ3と上下で対向配置しており、その上面4aは、上記パンチ3の下端面に倣った形状となっている。
また一対のダイ5は、上記底面部B1の幅に応じた間隔を開けて対向する。その一対のダイ5は、上記パンチ3を押し込むことで、左右の側壁部B2が近づく方向に屈曲部B4を支点として当該側壁部B2を曲げるように曲げ成形する。その一対のダイ5の長手方向の形状は、上記成形後の部品の形状に倣った形状となっている。
【0027】
(製造方法)
次に、上記製造装置を使用した閉断面構造部品の製造方法について説明する。
本実施形態では、平板状の金属板からなる加工材Bを、2工程のプレス成形で上記目的の閉断面構造のプレス部品にプレス成形する。その後、溶接組立工程を行う。
ここで、自動車のフロントピラーR/Fの製造を前提として本実施形態の工程を説明する。その部品製造工程は、次の(1)成形工程、(2)溶接組立工程の2工程を備える。
【0028】
(1)成形工程
成形工程は、第1成形工程と第2成形工程に分けられる。
(1−1)第1成形工程
平板状の加工材B(ブランク)の底面部B1と側壁部B2となる位置に第1及び第2の面外変形部10,11となる凹凸形状を形成すると共に、屈曲部B4を形成する工程である。
すなわち、図2のように、下型1と上型2との間に平板状の加工材Bを介挿した状態で(図2(a))、下型1に向けて上型2を差し込むことで、プレス成形が行われる(図2(b))。
このとき、図5(a)に示すように、底面部B1と側壁部B2との境界部に屈曲部B4が形成されると共に、底面部B1に対し左右の側壁部B2が斜め上方に持ち上がった形状に成形される。
【0029】
また、底面部成形部1a及び側壁成形部1bの凹凸形状が加工材Bに転写されて、底面部B1位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部10が上記長手方向に沿って複数形成される(図5(a))。同時に左右両側に位置する左右の側壁部B2位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部11が上記長手方向に沿って複数形成される。
【0030】
ここで、加工材Bの幅方向に沿って、各第1の面外変形部10とその両側に位置する第2の面外変形部11とは、それぞれ連続していることが好ましい。また本実施形態の各第1の面外変形部10は、それぞれ幅方向に延在している。すなわち、隣り合う第1の面外変形部10の境界は幅方向に延びている。
ここで、上記長手方向に沿って複数形成される第1の面外変形部10の数は、多いほど長手方向に均一に伸びるように潰すことが出来る。したがって、下側への湾曲の程度にもよるが、例えば第1の面外変形部10の数を6個以上とすることが好ましい。
【0031】
また、長手方向に並ぶ複数の第2の面外変形部11は、側壁部B2での長手方向に沿った線長が、底面部B1から離れるほど小さくなるように、第2の面外変形部11の形状や数を予め設定しておく。
すなわち、成形後の形状は部品最終形状の各断面長になるように、絞り・張出し成形を行う。また、側面視上下方向の曲面形成時における上下面線長差を小さく若しくはゼロとするために、上記第1及び第2の面外変形部10,11を成形する。
【0032】
(1−2)第2成形工程
続いて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながら、パンチ3を一対のダイ5間に押し込む。この時の荷重は一定であっても、可変であっても良い。
このとき、図3の(a)→(b)のように、パッド4−パンチ3間に荷重を付与することで、図5(b)に示すように、第1の面外変形部10が押し潰されながら、底面部B1は、パンチ3の成形面に倣った形状、つまり下側に凸となる長手方向に沿って湾曲した形状に成形される。
さらに、図3の(b)→(c)のように、パンチ3をダイ5間に押し込むことで、側壁部B2の第2の面外変形部11が押し潰されながら、当該側壁部B2が縦壁となって起立し、図5(c)に示すように、閉断面化する。
【0033】
(2)溶接組立工程
閉断面化されたプレス成形部品の側面視上面の突合部については、レーザ溶接やアーク溶接等の連続溶接により接合する。
(作用その他)
パンチ底に曲面形状を付与、すなわち成形後のプレス部品を側面視で曲がり形状とするために、第1成形工程として、図5(a)に示すように、張出し成形によって、うねり状の凹凸形状などからなる第1及び第2の面外変形部10,11をプレス成形にて付与する。
【0034】
次いで、第2成形工程では図3に示す最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した成形品を成形する。第2成形工程においては、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながらダイ5に押し込む。このとき、ダイ5側面とパンチ3側面の間でパネル側面部の凹凸形状部からなる第2の面外変形部11が押し潰されながら、側壁部B2が縦壁として起立して閉断面化する(図5(b)(c))。
【0035】
パンチ3が下死点に達した時、部品側面視の上側はパンチ3に設けたスリット(不図示)内でもう一方の端面と突き合わされて閉断面化する(図3(c))。
閉断面化が進行する際、側面視上面はパンチ3に巻き付くように形状変化するが、パンチ3の支持部にはスリット(不図示)を設け、加工材がパンチ3の支持体に干渉しないようになっている。さらにパンチ3からの成形部品の抜き取りはパンチ3の長手方向端面にある門状構造のロック(不図示)を外して、パンチ3を長手方向へ抜き取る。
【0036】
ここで、図6に示すように、加工材Bに対し、予め一対の接合面B5を形成しておいても良い。本実施形態のプレス成形を採用することで、プレス成形後の閉断面構造において、精度良く一対の接合面B5を対向配置することが可能となる。
以上のように、本発明に基づく成形の工法にあっては、曲がり形状のプレス部品を1枚のブランク材から精度良く製造することが可能となる。この結果、金型数削減や、組立て工程の不要による製造工程簡略化の効果による大幅なコストダウンと、フランジレス化による軽量化が可能となる。
【0037】
すなわち、第1成形工程で、予め底面部B1に対し第1の面外変形部10を長手方向に沿って複数形成して長手方向の線長を稼いでおいてから、パンチ底に曲面形状を有するパンチ3で、底面部B1が湾曲した曲がり形状にプレス成形する。このとき、底面部B1における曲がりによる長手方向の伸びを上記第1の面外変形部10が押し潰されることで稼ぎつつ、底面部B1の形状を目的の曲面形状に加工することが出来る。この結果、成形工程や金型数の削減による製造コストダウンを図りつつ、底面部B1に曲面を有する曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を寸法精度良く成形可能となる。
【0038】
更に、側壁部B2にも予め第2の面外変形部11を設け、側壁部B2による伸びも上記第2の面外変形部11が押し潰されることで稼ぐことによって、より閉断面構造のプレス部品における目的の曲がり形状に加工することが可能となる。
ここで、上記第1の面外変形部10の形状、及び第1の面外変形部10の境界部分の形状は、長手方向及び幅方向に沿って曲率が急峻する部分が無いように成形しておくことが好ましい。第2の面外変形部11についても同様である。
【0039】
また、上記実施形態では、上記第1の面外変形部10を、長手方向に沿って波打つような形状、つまり凹形状と凸形状とが連続して繰り返す形状に形成する場合で説明したが、第1の面外変形部10はこれに限定されない。例えば、上記第1の面外変形部10を、凹形状だけや凸形状だけで形成しても良い。ただし、上述のように底面部B1に対する第1の面外変形部10の境界部分は、長手方向及び幅方向に沿って曲率が急峻する部分が無いように曲面形状に成形しておくことが好ましい。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、上記第1実施形態と同様な構成などについては同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本構成は、図7に示すように、上記第1実施形態と同様である。ただし、第1成形工程による成形後に、バルクヘッド16を設置する点が異なる。
すなわち、上記第1成形工程と第2成形工程との間に、バルクヘッド設置工程を設けた。
【0041】
次に、本実施形態の工程について説明する。
(第1成形工程)
第1成形工程は、上記第1実施形態と同様である。ただし、図7(a)に示すように、第1の面外変形部10を形成する位置よりも長手方向外側位置に、スリット状のバルクヘッド設置用穴15を開口しておく。
そして、第2成形工程を実施する前に、次に説明するバルクヘッド設置工程を実施する。なお、バルクヘッド設置の処理を、第2成形工程の中で実施するようにしても良い。この場合、第2成形工程による屈曲部B4の曲げ成形前までに、バルクヘッド設置の処理を実施すればよい。
【0042】
(バルクヘッド設置工程)
ここで、上記加工材Bに対する加工とは別に、図8に示すようなバルクヘッド16を別のブランク材を加工して用意しておく。バルクヘッド16は、図8に示すように、バルクヘッド本体と差し込み片16dとから構成する。バルクヘッド本体は、上記底面部B1に下端を当接して上方に立設する立上り部16aと、その立上り部16aの側面に連続して立上り部16aの面と交差する横方向に張り出す左右の側片部16b、16cとからなる。左右の側片部16b、16cは、上記側壁部B2に当接可能となっている。このように、バルクヘッド本体は、上面視で略コの字形状となっている。また上記立上り部16aの下端部から後方に延びる底部板を備える。その底部板の幅方向両端部で下方に折り曲げられた差し込み片16dが、下方に向けて突出している。本実施形態のバルクヘッド16は、上述のような構成としており、一枚の金属板から加工できる。
【0043】
そして、バルクヘッド設置用の金型セットに上記第1成形工程で成形済みの加工材Bを取り付けて、上記加工材Bのバルクヘッド設置用穴15に対し、差し込み片16dを上側から差し込んでバルクヘッド16を底面部B1に取り付ける(図7(c))。このとき、バルクヘッド設置用のパッドとパンチで挟み込む位置よりも長手方向外側に上記バルクヘッド設置用穴15が位置するように構成する。なお、図7に示す金型構成では、第2成形工程でバルクヘッド16の設置処理を実施する場合を例示している。
【0044】
差し込み片16dをバルクヘッド設置用穴15に差し込むことで、バルクヘッド16の取付け位置が位置決めされると共に、バルクヘッド本体は、底面部B1に対し自立して立った状態になっている。
この状態から、バルクヘッド設置用のパンチを下降させ、底面部B1の下面から下方に突き出ている差し込み片16dを当該底面部B1側に90度曲げることで、かしめを実施する。これによって、バルクヘッド16を設置する。その後、ロボット等で次工程である第2成形工程の金型セットヘ移動させる。
【0045】
ここで、上記バルクヘッド設置用のダイのダイ面の一部として、図9に示すような、上記上側から下降してくる差し込み片16dの下端に下側から当接する傾斜面17を備える。そして。その傾斜面17に差し込み片16dの下端が当接すると、上記傾斜面17によって差し込み片16dが内側に折り曲げられることで、上記のように底面部B1側に90度曲げられる。
【0046】
(第2成形工程)
第2成形工程は、上記第1実施形態と同じである。
すなわち、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で挟み込み、パッド4−パンチ3間に荷重を付与しながらダイ5に押し込む。そして、パッド4−パンチ3間で底面部B1に形成した第1の面外変形部10を押し潰すと共に、ダイ5側面とパンチ3側面の間でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)が押し潰されながら側壁部B2を起立させて、閉断面化させる。このとき、バルクヘッド16の側片部16b、16cが側壁部B2に当接することで、当該側片部16b、16cがパンチ3側面の一部を兼ねる。
なお、上記パンチ3は、バルクヘッド16位置はくり抜いた形状となっていることで、上記バルクヘッド本体への荷重が掛かることを防止している。
ここで、上述したように、上記差し込み片16dの折曲げ加工は、第2成形工程での加工の際に同時に実施しても良い。
【0047】
(溶接組立工程)
第1実施形態と同様に、閉断面化された成形部品の側面視上面の突合部について、レーザ溶接やアーク溶接、スポット溶接等の連続溶接によって接合する。
また、本実施形態では、設置したバルクヘッド16の折り曲げた差し込み片16dを、閉断面化した成形部品であるプレス成型品に対し溶接や接着剤などによって接合しても良いし、かしめた状態のままでも良い。
ここで、図10に示すように、加工材Bに対し、予め一対の接合面B5を形成しておいても良い。本実施形態のプレス成形を採用することで、プレス成形後の閉断面構造において、精度良く一対の接合面B5を対向配置することが可能となる。
【0048】
(作用その他)
第1実施形態で説明した作用効果に加え、本実施形態では次の作用効果が発生する。
すなわち、第1実施形態と同様に、曲がり形状の閉断面構造のプレス部品を1枚のブランク材から製造することが可能となる。この結果、金型数削減、組立工程の不要による製造工程簡略化の効果による大幅なコストダウンとフランジレス化による軽量化が可能となる。
また、上記のようにして、第2成形工程における屈曲部を折り曲げ成形を実施する前にバルクヘッド16を設置する。これによって、上記プレス部品本体に対し、後からバルクヘッド16を取り付けるための開口部を形成しなくてもバルクヘッド16を取り付けることが可能となる。この結果、プレス部品本体の性能を損ねることがなく、製造工程数を削減することができコスト低減が可能となる。
【実施例1】
【0049】
次に、上記第1実施形態に基づく実施例について説明する。
「適用材(鋼種、成分、寸法等)」
成形後の対象形状:4角閉断面形状部品(フロントピラーアッパーR/Fモデル)で断面は、40mmH X30mmW L=300mmとする。ただし、実施形態で説明したように、下側に湾曲した曲がり形状の閉断面構造のプレス部品とする。
先ず共通の条件について説明する。
「使用鋼板」
引張強度980MPa(合金化溶融亜鉛めっき(両面))材で、板厚1.2mm、めっき付着量(片面)45g/m2とする。
「溶接工法」
溶接組立工程での溶接は、YAGレーザ溶接とした。
溶接条件は
溶接速度:1500mm/min
YAGレーザ出力:3.5kW
フォーカス直径:2mm
とした。
以上を共通の条件として、以下3例について、閉断面構造部品の製造を実施した。
【0050】
(第1実施例)
この第1実施例は、上記図2〜図5に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジ(接合端部B3)を設けた。
【0051】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパー(長手方向に沿った湾曲)を付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0052】
(第2実施例)
この第2実施例は、図6に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、加工材Bの底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた部分にさらに部品幅方向にフランジを設けた。
【0053】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。
このとき側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、フランジ部を突き合わせ、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、フランジ部をスポット溶接により接合した。
【0054】
(比較例1)
この比較例1は、図11に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、第1実施例及び第2実施例とは異なり、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)を設けず、部品端面は第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0055】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形したパネル底面部B1をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込みながらダイ5に押し込み側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0056】
「評価」
長手方向に沿って湾曲した曲げ形状を有する閉断面構造をプレス成形で加工するとき、本実施形態を採用した第1及び第2実施例では、一対の溶接端部を精度良く付き合わせることが出来た。これに対し、比較例1にあっては、一対の溶接端部の突合せが大きく乱れているため、別途、一対の溶接端部の突合せ面を整形する工程が必要になった。
このように、本実施形態を採用することで、比較例に比べ、工程数と金型数を削減することが可能となる。
また、本実施形態に基づく実施例を採用すると、成形後の外観形状はいずれの実施例でも破断・しわが発生することなく成形することができた。これに対し、比較例1では、しわが発生した。
【実施例2】
【0057】
次に、第2実施形態に基づく実施例について説明する。
適用材や溶接などの条件は、上記実施例1と同じ条件として、以下3例について、閉断面構造部品の製造を実施した。
(第3実施例)
この第3実施例は、図7に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0058】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に形成した差し込み片16dを底面部B1に開口したバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。続いて、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0059】
次に、第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0060】
(第4実施例)
この第4実施例は、図10に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)をプレス成形にて付与した。このとき、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた部分にさらに部品幅方向にフランジを設けた。
【0061】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に設けてある差し込み片16dを底面部B1に開口されたバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。続いて、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0062】
第2成形工程で、最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1のうねり状の凹凸面(第1の面外変形部10)をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込み、うねり状の凹凸面を潰しキャンパーを付けた。さらにパッド4−パンチ3間に50トンの荷重を付与し続けながらダイ5に押し込み、ダイ5側面とパンチ3側面の接触面でパネル側面部の凹凸形状部(第2の面外変形部11)を押し潰しながら側壁部B2を起立させた。側壁起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、フランジ部を突き合わせ、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、フランジ部をスポット溶接により接合した。
【0063】
(比較例2)
この比較例2は、図12に示すプレス成形を採用したものである。
第1成形工程で、第3実施例及び第4実施例とは異なり、底面部B1位置および側壁部B2位置に張出し成形によるうねり状の凹凸形状(第1及び第2の面外変形部10、11)を設けず、部品端面には第2成形工程で側面視上面となる鋼板両端に鉛直方向のフランジを設けた。
【0064】
バルクヘッド設置工程で、ダイ5内の一定位置にセットしてある金型セットヘ、成形済みのバルクヘッド16と前の第1成形工程で成形された部品とをセットし、バルクヘッド設置用穴とバルクヘッド16の位置合わせを行い、バルクヘッド16に設けてある差し込み片16dを底面部B1に開口されたバルクヘッド設置用穴に差し込んだ。ついで、パンチ3を下降させ、底面部B1から下方に突き出ているバルクヘッド16の差し込み片16dを底面部B1側へ90度折り曲げてバルクヘッド16を設置した。
【0065】
第2成形工程で最終形状の曲面を有するパンチ3およびダイ5にて、第1成形工程で成形した底面部B1をパッド4とパンチ3で50トンの荷重を付与して挟み込みながらダイ5に押し込み側壁部B2を起立させた。側壁部B2の起立時に側面視上面となる部位はパンチ3に設けたスリットを通過して、閉断面化が完了した。パンチ3からの抜き出しは、パンチ3側面に取り外し機構を設け、部品長手方向へ抜き出した。その後、レーザ溶接により接合した。
【0066】
「評価」
長手方向に沿って湾曲した曲げ形状を有する閉断面構造をプレス成形で加工するとき、本実施形態を採用した第3及び第4実施例にあっては、一対の溶接端部を精度良く付き合わせることが可能となった。これに対し、比較例2にあっては、一対の溶接端部の突合せが大きく乱れているため、別途、一対の溶接端部の突合せ面を整形する工程が必要になった。
このように、本実施形態を採用することで、比較例に比べ、工程数と金型数を削減することが可能となる。
また、本実施形態に基づき実施例を採用すると、成形後の外観形状はいずれの実施例でも破断・しわが発生することなく成形することができた。
これに対し、比較例2では、しわが発生した。
【符号の説明】
【0067】
1 下型
1a 底面部成形部
1b 側壁成形部
1c 立上り面
2 上型
3 パンチ
3a 下端面
4 パッド
4a 上面
5 ダイ
5a ダイ側面
10 第1の面外変形部
11 第2の面外変形部
15 バルクヘッド設置用穴
16 バルクヘッド
16a 立上り部
16b、16c 側片部
16d 差し込み片
17 傾斜面
B 加工材
B1 底面部
B2 側壁部
B3 接合端部(溶接端部)
B4 屈曲部
B5 接合面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する第1成形工程と、
上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で、上記パンチをダイの間に押し込むことで、パッドとパンチとで上記第1の面外変形部を押し潰すと共に上記屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、
を備えることを特徴とする閉断面構造部品の製造方法。
【請求項2】
平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記第1成形工程で、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成し、
上記第2成形工程で、パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする請求項1に記載した閉断面構造部品の製造方法。
【請求項3】
上記第1成形工程終了後であって第2成形工程で上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対してバルクヘッドを設置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した閉断面構造部品の製造方法。
【請求項4】
平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する上型及び下型を備えたプレス用金型と、
上記加工材の底面部を挟持して上記第1の面外変形部を押し潰すためのパッド及びパンチと、上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で上記パンチを押し込むことで上記屈曲部を曲げ成形するダイと、を備えることを特徴とする閉断面構造部品の製造装置。
【請求項5】
平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記上型及び下型は、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成可能に構成され、
更に、上記パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする請求項4に記載した閉断面構造部品の製造装置。
【請求項6】
パッド及びパンチで上記加工材の底面部を挟持して上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対しバルクヘッドを設置することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した閉断面構造部品の製造装置。
【請求項1】
平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する第1成形工程と、
上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で、上記パンチをダイの間に押し込むことで、パッドとパンチとで上記第1の面外変形部を押し潰すと共に上記屈曲部を曲げ成形する第2成形工程と、
を備えることを特徴とする閉断面構造部品の製造方法。
【請求項2】
平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する方法であって、
上記第1成形工程で、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成し、
上記第2成形工程で、パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする請求項1に記載した閉断面構造部品の製造方法。
【請求項3】
上記第1成形工程終了後であって第2成形工程で上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対してバルクヘッドを設置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した閉断面構造部品の製造方法。
【請求項4】
平板状の加工材を底面部が長手方向に沿って湾曲した閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記加工材の少なくとも底面部位置に対し、それぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第1の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、屈曲部を形成する上型及び下型を備えたプレス用金型と、
上記加工材の底面部を挟持して上記第1の面外変形部を押し潰すためのパッド及びパンチと、上記加工材の底面部位置をパッドとパンチで挟み込んだ状態で上記パンチを押し込むことで上記屈曲部を曲げ成形するダイと、を備えることを特徴とする閉断面構造部品の製造装置。
【請求項5】
平板状の加工材を、上記底面部と、その底面部の左右両側に位置する左右の側壁部と、その左右の側壁部にそれぞれ連続する一対の接合端部とを備えた閉断面構造に成形して閉断面構造部品を製造する装置であって、
上記上型及び下型は、上記第1の面外変形部と一緒に、上記側壁部位置に対しそれぞれが凹形状若しくは凸形状からなる第2の面外変形部を上記長手方向に沿って複数形成すると共に、底面部と側壁部の境界部位置に屈曲部を形成可能に構成され、
更に、上記パンチ側面とダイ側面とで上記第2の面外変形部を押し潰すことを特徴とする請求項4に記載した閉断面構造部品の製造装置。
【請求項6】
パッド及びパンチで上記加工材の底面部を挟持して上記屈曲部を曲げ成形する前に、上記加工材の底面部に対しバルクヘッドを設置することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した閉断面構造部品の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−152765(P2012−152765A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12063(P2011−12063)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
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