説明

閉鎖された空間において発生した火災の防止又は消火方法及び火災の防止又は消火装置

【課題】閉鎖された空間内負圧に維持しつつ、不活性ガスを当該空間内に急速に導入することができる火災防止又は消化方法及び装置を提供する。
【解決手段】閉鎖された空間(10)、特に研究室領域における火災の防止又は消火方法及び装置は、常に負圧に設定される前記空間(10)内の区画内雰囲気に調整された新鮮な空気が供給エアとして供給される一方、調整された排気が前記区画内雰囲気から排出され、火災発生のさいに、通常条件下で気体である消火剤を前記供給エアとして前記区画内雰囲気に供給する。また、前記空間(10)内を負圧の状態に維持しつつ、圧力を下げるために、前記空間(10)に気体消火剤が急激に導入されたさいに、前記供給エアとして前記区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量を、区画内雰囲気から排出される排気の流量以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖された空間(10)内、特に研究室領域における火災を防止又は消火する不活化方法であって、前記閉鎖された空間(10)における区画内雰囲気に調整された新鮮な空気が供給エアとして供給される一方、調整された排気が前記区画内雰囲気から排出され、通常の状態のもとでは気体である消火剤を前記供給エアとして前記区画内雰囲気に供給する方法であって、火災が発生した場合や火災を防止する場合に、通常の状態では気体である消火剤を供給エアとして前記区画内雰囲気に送り込むことで、火災を消火又は防止するための不活化方法に関する。
【0002】
また、本発明は、前記閉鎖された空間において発生した火災を消火するための装置であって、前記閉鎖された空間において火災が生じた場合に前記気体消火剤を閉鎖された空間の区画内雰囲気に迅速に導入するための少なくとも1つの機構を備えている装置に関する。
【背景技術】
【0003】
火災が発生した場合に、又は火災を防止する場合に、閉鎖された空間の区画内雰囲気に通常条件下では気体である消火剤を供給することは、消防の技術の分野において公知である。例えば、閉鎖された空間における消火システム(方法および装置)が、特許文献1に記載されている。この従来のシステムにおいては、火災検出信号に基づき、通常の条件のもとでは気体である酸素置換消火剤(以下では、単に「不活性ガス」と称される)を、閉鎖された空間の区画内雰囲気に急速に(可能な限り短い時間枠内で)導入している。このように、不活性ガスを導入することによって、区画内雰囲気の酸素含有量を、所定の「不活化レベル」まで低下させることができる。この不活化レベルは、空間内に保管されている物品又は物質の可燃性を、もはや点火が不可能な点にまで予め低下させる、又はすでに発生した火災を鎮静するような低い酸素含有量に相当するレベルである。
【0004】
閉鎖された空間を不活性ガスで充填させることによる消火効果は、酸素置換の原理に基づいている。一般的に知られている通り、「通常」の大気は、21体積%の酸素、78体積%のチッ素、及び1体積%の他のガスで構成されている。消火方法又は火災防止方法として、対象となる領域に不活性ガスを導入すると、当該領域の区画内雰囲気の酸素の割合が低下する。そして、区画内雰囲気の酸素の割合が、いわゆる「再点火防止レベル」を下回って低下すると、消火又は火災防止効果が得られることが知られている。再点火防止レベルは、対象となる領域に保管された物品又は物質がもはや点火及び/又は燃焼できなくなるような低い酸素濃度に相当する不活化レベルをいう。したがって、再点火防止レベルは、通常は実験的に決定されるが、保護対象の領域の火災荷重に依存する。再点火防止レベルに対応する酸素の割合は、通常は12体積%〜15体積%の範囲である。ただし、例えば、揮発性溶剤など、可燃性が高い物質の場合、再点火防止レベルに対応する酸素の割合が、12体積%未満になることもある。
【0005】
Verband der Sachversicherer(VdS:「損害保険会社組合」)によって近年発行されたガイドラインによれば、閉鎖された空間(「保護領域」)に気体消火剤で急激に充填された場合、保護領域の酸素濃度は、気体消火剤の導入開始から最初の60秒以内に再点火防止レベルに低下している必要がある。これにより、保護領域を火災鎮静段階において完全に消火することが可能な不活性ガス技術による効果的な火災の鎮静が可能になる。
【0006】
これらの要件を満たすために、特に研究室空間、生産領域の空間、又は倉庫などの大容積の領域空間において、必要な場合に可能な限り迅速に、すなわちVdSガイドラインによって規定された60秒間以内に、閉鎖された空間における区画内雰囲気に充分な量の不活性ガスを導入する必要がある。
【0007】
このためには、不活性ガスによる消火方法において使用される酸素置換ガスをガスボトルに圧縮して保管することが有効である。また、これに代えて、又はこれに加え、例えば、いわゆる「チッ素発生器」等の酸素置換ガスを生成するための装置を用意することが考えられる。しかしながら、この場合、上記の装置によって生成される単位時間当たりのガスの量を、保護領域の容積に応じて調整しなければならない。これは、チッ素発生器以外に不活性ガス源を設けることができない場合に特に当てはまる。必要な場合に、供給可能な不活性ガスが、例えば、相応の出口ノズルを有する配管系によって、可能な限り迅速に対象の空間に導かれる。
【0008】
安全かつ効果的な火災の鎮静を実現するために、少なくとも気体消火剤の急激な導入の開始のさいに、酸素置換ガスを閉鎖された空間に可能な限り迅速に導入する必要があるという不活性ガス消火方法の要件ゆえに、空間を囲む外壁の少なくとも一部が損傷することがないように、閉鎖された空間に圧力の逃げを構造的に設ける必要がある。そのような圧力の逃げは、通常は、圧力軽減フラップを設置することによって実現される。圧力軽減フラップの機能は、空間内の内圧が、例えば気体消火剤の突然の導入に起因して比較的急激に上昇する場合でも、閉鎖された空間の外壁を損傷から保護することにある。多くの場合、圧力軽減フラップは、経験から予め定められた超過圧力にて自動的に開くように設計される。圧力軽減フラップが開くことで、閉鎖された空間の外壁に開口が生じ、当該開口を通って、空間内に蓄積した過剰な圧力を逃がすことができる。圧力軽減フラップを、過剰な圧力が放出された後、すなわち圧力が軽減された後に、再び自動的に閉じることが知られている。この圧力軽減フラップの自動開放および自動閉鎖を技術的に実現するために、ばね荷重式ピンを備える機構を使用することが知られている。
【0009】
上記の機械式による圧力低下方法には以下の欠点がある。すなわち、圧力を下げるために必要な空間を、閉鎖された空間の構造的な完成に先立って、初期の計画段階において予測しなければならない。さらには、設置すべき圧力軽減フラップの寸法も、初期の計画段階において決定しなければならない。特に、圧力軽減フラップによってもたらされる空気穴又はガス開口の有効面積を、予め見積る必要がある。
【0010】
従来の方法では、閉鎖された空間内に理論上生じ得る高い圧力を仮定して、使用すべき圧力軽減フラップを設計し、寸法を決定する場合が多い。この場合、信頼性を確保するために、上記の理論上の値に対し、想定外の圧力負荷を許容し得る大きい安全マージンを必要とすることが多い。また、このため必要以上に余分に大きい圧力軽減フラップを設置するとなり、コスト面で好ましくない。
【0011】
さらに、従来の不活性ガスによる消火システムがすでに備えられている閉鎖された空間において、改築が許容される程度が限られている場合や、改築が許容されない場合も多い。例えば、構造上の変更が空間の容積拡大を伴い、これにより構造的な措置を要する場合、義務的な安全関連の要件を可能にするために、追加の圧力軽減フラップを設ける必要が生じる場合もある。
【0012】
圧力を緩和するための公知の方法は、従来の不活性ガス消火システム及び従来の圧力緩和機構がすでに設けられている領域の場合において、区画内雰囲気に不活性ガスが導入される前に予め設定された圧力比を、不活性ガスが導入された場合に維持することができないか又は維持できても多大な構造的犠牲を伴うこととなる。この要件は、例えば、区画内の圧力が周囲の圧力と比べて常に低い研究室領域の場合に考慮される。(健康上の危険を引き起こす可能性がある粒子、物質、ウイルス、などを逃がすことがないように、領域内の圧力が低く設定される)。このように常に負圧に設定することにより得られる火災の防止措置は、必要に応じて外向きに開く従来からの機械式の圧力軽減フラップが圧力を下げるために使用された場合、機能しなくなってします。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】文献DE 198 11 851 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の問題に鑑み、本発明は、常に負圧に設定される閉鎖された空間(特に、研究室領域)における不活性化の原理にもとづく消火システム及び消火方法に関し、上記領域の大きさ及び空間の容積に関係なく、可能な限り広い領域に不活性ガスを導入する際に圧力を逃がす構成としている。本発明の上記の方法によって圧力を逃がすことにより、上記領域を不活性ガスで充填しつつ、区画内雰囲気に含まれる健康に害を及ぼす危険性のある粒子、物質、ウイルス等が実質的に外部に逃げることがないように、不活性ガスを急速に導入するさいにも空間内に設定された負圧を維持することを特徴としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の装置は、上記の課題を解決するために、負圧生成機構と制御ユニットとを有する圧力緩和機構を備え、前記制御ユニットが、前記閉鎖された空間における区画内雰囲気の圧力(本明細書において、「区画内圧力」とも称される)が、所定の最大圧力値を超えないように前記負圧生成機構を制御する構成としている。
【0016】
本明細書において、「負圧生成機構」は、原則として、閉鎖された空間の内部の圧力を、この空間の区画内雰囲気から空気又はガスを例えば積極的に排出することによって下げるように設計された任意のシステム又は機構とする。本明細書において上記の課題の解決手段として、空気又はガス(気体の)を区画内雰囲気から取り除くことが必須である。上記の構成は、例えば、排気管を通して閉鎖された空間における区画領域から空気又はガスを除去又は排出することによって実現することができる。しかしながら、圧力緩和の目的で区画内雰囲気から除去されるべき空気又はガスを、区画領域から排出するのではなく、例えば、圧縮機によって圧縮し、圧縮された空気又はガスを例えば圧力貯蔵リザーバに一時的に保存することによって、空気又はガスを圧縮された状態で空間内に留める構成としてもよい。この場合、圧力貯蔵リザーバは、空間の内部に設置してもよいが、空間の外部に設置してもよい。
【0017】
本発明に係る方法は、上記の課題を解決するために、少なくとも消火剤を区画内雰囲気に急速に導入する工程と、当該工程の実行中に、前記区画内雰囲気の現在の瞬間圧力を測定する工程と、前記測定工程で測定された測定圧力値を所定の最大圧力値と比較する工程とを含んでいる。
【0018】
さらに、前記測定圧力値と所定の最大圧力値との比較結果に基づいて、測定された瞬間圧力値が所定の最大圧力値を超えないように、負圧が閉鎖された空間に生成される。
【0019】
本発明の上記解決手段は、下記の明確な利点がある。すなわち、本発明における圧力緩和は、実際の意味での圧力緩和ではなく、気体消火剤が空間の内部に導入される際の圧力上昇を補償する理論的な圧力補償をいう。これにより、気体消火剤が導入される前の閉鎖された空間の区画内雰囲気に設定された区画内圧力が維持できる。これは、可能な限り短い時間(特に、区画内への気体消火剤の導入開始後の最初の60秒以内)で再点火防止レベルにする必要がある場合にも有効である。
【0020】
本発明の装置は、制御ユニットによる制御の下、負圧生成機構を有する圧力緩和機構を用いている。このため、消火剤の導入の時点における閉鎖された空間内の区画内雰囲気の過剰な圧力を継続的に補償することができる利点がある。
【0021】
特に、前記負圧生成機構を設えることで、原則として、閉鎖された空間における負圧の生成を実現することができる。ここで、負圧の大きさは、消火剤の導入によって生じる過剰な瞬間圧力に基づいて調節される。このようにして、消火剤の導入によって閉鎖された空間に生じる過剰な圧力を、常に充分に補償することができる。
【0022】
負圧生成機構によって生成される負圧は、好ましくは、気体消火剤の急激な導入によって保護領域に生じる過剰な圧力を少なくとも部分的に補償するように選択される。
【0023】
本明細書において、「負圧を生じさせる」又は「負圧の生成」は、原則として、或る量の空気又はガスΔVを閉鎖された空間の区画内雰囲気から積極的に排出し、その結果として、空間内部の空気又はガスの圧力pが、Δpという値で等温圧力変化を記載する下記式により変化することをいう。
【0024】
Δp=−K・ΔV/V(Kは、区画内空気の体積弾性率)
本発明によれば、制御ユニットによる制御の下、負圧生成機構を作動させることができる。前記制御ユニットは、負圧生成機構を、区画内雰囲気の圧力が予め定められた最大圧力値を超えないように制御されることが好ましい。
【0025】
したがって、本発明の解決手段によれば、不活化の原理にもとづく消火システムを、通常の外気の気圧に比べて低い圧力(負圧)の雰囲気を有している閉鎖された空間(例えば、研究室領域)において、使用することが可能である。したがって、本発明の解決手段によれば、例えば火災の消火の目的のために気体消火剤が区画内雰囲気に導入される場合でも、保護領域に意図的に設定される負圧を維持することができる。区画内雰囲気において維持されるべき圧力のしきい値として使用される最大圧力値を、所望の値に予め定めることができることが、特に好ましい。
【0026】
本圧力緩和機構は、気体消火剤の導入時に生じる空間内の圧力の変化を、空間の容積とは無関係に適宜補償することができる。これにより、本発明の解決手段によれば、閉鎖された空間の空間的設計に関係なく圧力の補償又は圧力の低下を実現することができる。したがって、本発明の解決手段によれば、通常の大気圧が、所望の圧力軽減のための基準値となるのではなく、不活性ガスが充填される前の空間の内部に設定される(負の)圧力が、圧力低下の基準値となる。
【0027】
本発明に係る方法は、上述の装置による火災の防止又は消火を技術的に実現する。本発明に係る方法は、上述の本発明に係る装置と同様の利点を有する。
【0028】
具体的には、本発明の方法は、閉鎖された空間における火災を未然に防止する方法及び/又は閉鎖された空間において発生した火災を効果的かつきわめて確実かつ容易に消火する方法に関し、圧力の低下を圧力補償によって実現するものである。この圧力補償により、消火剤が区画内雰囲気に導入されるときに生じる圧力の変化を充分に補償し、空間の外壁の損傷を効果的に防止することができる。
【0029】
これは、具体的には、排気を保護領域の(気体の)区画内雰囲気から常に(すなわち、消火剤の導入時にも)積極的に排出することで実現される。このようにして、外気の通常の気圧に比べて低い区画内圧力を、空間において常に(すなわち、消火剤の供給時にも)維持することができる。これは、新鮮な空気及び/又は消火剤として単位時間当たりに区画内雰囲気に供給されるガスの総量を、原則として、排気として単位時間当たりに(気体の)区画内雰囲気から排出又は除去される量以下であるように保障することによって行われる。
【0030】
本発明の好ましい方法が請求項2〜20に記載されており、本発明の装置の好ましい構成が請求項22〜25に記載されている。
【0031】
本発明の不活化方法は、区画内雰囲気から排気の調整された排出又は除去を提供するという事実を、原理的には、広く応用することができる。本明細書において使用されるとき、「区画内雰囲気」は、閉鎖された空間の気体の空間体積を言うものとする。したがって、「区画内雰囲気から排気を排出する」は、気体の空間体積から排気の少なくとも一部を除去することと理解すべきである。
【0032】
上述のように、前記空間から排気を排出又は除去する方法としては、種々の方法としては種々の方法が考えられる。例えば、排気の少なくとも一部を、排気システムによって前記空間から積極的に吸い出してもよい。この場合、排気は、前記区画内雰囲気から排出(すなわち、除去)されるだけでなく、空間の外に排出される。排気システムが、不活性ガスの供給時に生じる区画内の圧力上昇を補償するために、排気を調整して抽出する構成においては、当該排気システムは、火災の消火の場合に比較的大量の不活性ガスが可能な限り最短時間で空間に供給されることを考慮し、対応する量の排気を短い時間枠内で吸い出し、抽出できるように設計する必要がある。そのような大きな吸引量を有する排気システムは、実現不可能である場合が多く、実現可能であっても多大な経済的支出を伴うことが多い。
【0033】
そこで、本発明の解決手段としては、負圧生成機構を、排気システムとは別に、不活性ガスの供給時に必要な圧力補償するように設けることが好ましい。
【0034】
すなわち、本発明の機能を意図的に分離し、負圧生成機構を、排気システムとは別個に設け、区画内雰囲気の圧力(単純に「区画内圧力」とも称される)を予め定められる最大圧力値を超えないように制御し、これによって、閉鎖された空間に設定された低い圧力を、たとえ不活性ガスの導入開始時に最短の時間枠にて比較的大量の酸素置換ガスが区画内雰囲気に供給される場合でも、効果的に維持することができる。
【0035】
また、上記の構成において、前記負圧生成機構として、区画内雰囲気から除去される排気ガス又はすでに排出された排気ガスの少なくとも一部を凝縮させ、すなわち圧縮するように設計された圧縮機を、前記負圧生成機構として用いることが好ましい。この場合、圧縮機は、前記空間内に配置することが可能であり、当該圧縮機によって圧縮された排気を必ずしも空間から除去する必要はない。また、前記圧縮機が、気体の空間雰囲気から除去されるべき排気の体積を小さくし、これにより、不活性ガスの充填による過剰な圧力を補償する構成としてもよい。
【0036】
上記の構成は、前記圧縮機を閉鎖された空間の内部に配置することができるため、構造の大型化を招くことなく圧力の補償を実現することができるという利点がある。上記の圧縮機を空間内に設ける構成は、排気配管系を別途装着又は後付けすることが不可能な場合や、可能であっても多大な労苦を伴う構成に特に有益である。
【0037】
圧縮機は、原理的には、圧縮機の吸引量が新鮮な空気及び/又は消火剤として区画内雰囲気に供給される供給エアの総流量以上であることを保証するための充分に大きい流量を有していなければならない。したがって、例えば、圧縮機として、その設計ゆえに連続動作が保証されており、大きな体積流量を特徴としているターボ圧縮機を使用することが考えられる。
【0038】
上述の負圧生成機構として圧縮機を用いた構成に代え、又は当該構成に加え、区画内雰囲気から排出されるべき排気を排気配管系によって空間の内部から除去する構成も可能であることが言うまでもない。
【0039】
上記の負圧生成機構として圧縮機を用いた構成を用いた構成において、前記区画内雰囲気から除去/排出された排気を圧縮機によって圧縮し、圧縮された状態で、当該排気を高圧貯蔵リザーバに一時的に溜める構成とすることが好ましい。この場合、前記圧縮機と同様に、高圧貯蔵リザーバは、必要に応じて空間の内部又は外部に配置することができる。上記の高圧貯蔵リザーバを空間の内部に配置する構成は、構造の大型化を招くことなる本発明の解決手段を実現できるという利点を有する。特に、排気管を閉鎖された空間の外壁を貫くように別途設ける必要がない点で好ましい。
【0040】
前記閉鎖された空間が研究室領域である場合、その区画内雰囲気は、健康上の危険を引き起こす可能姓がある材料、粒子又は物質(例えば、ウイルス類)を含む可能性がある。このため、上記の有害である可能性がある材料、粒子、物質等が外部へ放出されることを防止するために、前記圧縮機によって圧縮されて必要に応じて高圧貯蔵リザーバに一時的に溜められる排気は、適切に処理(特に、フィルタ処理及び/又は殺菌処理)されるまで外気に放出しないことが好ましい。
【0041】
しかしながら、本発明の負圧生成機構は上記の構成に限定されず、原理的には、別の解決手段によって実現することもできる。例えば、閉鎖された空間内のガスの量を少なくするための機構として、ファンによって動作する機構を用いることが考えられる。また、負圧生成機構が吸引機構及び当該吸引機構に接続された吸引配管系を備える構成としてもよい。この場合、前記制御ユニットは、前記吸引機構が吸引配管系を介して閉鎖された空間から吸い出す単位時間当たりのガス又は空気の量を設定する構成とすることが好ましい。この構成において、前記吸引機構としてファンを用い、又は当該吸引機構にファンを備え、前記ファンの回転速度及び/又は回転方向を、負圧生成機構の制御ユニットによって調節できるようにすることが特に好ましい。
【0042】
上記の構成によれば、前記負圧生成機構を容易にかつ効果的に実現することができる。これにより、前記制御ユニットは、負圧生成機構による保護領域の圧力を高精度に補償することができる。しかしながら、気体消火剤の導入開始時に生じる急激な圧力上昇も補償できるように、吸引機構を単位時間当たりに充分な量の排気を区画内雰囲気から排出できるように構成することが好ましい。
【0043】
吸引機構の後者の実施の形態において、回転速度だけでなく回転方向も制御ユニットによって制御することができるファンを設けることで、吸引機構をブロア機構としても使用することが可能になる。ブロア機構は、例えば閉鎖された空間の積極的な換気を可能にするように設計された装置である。そのようなブロア機構を設けることは、例えば火災の消火後に空間内に依然として存在する煙を抽出する必要がある場合や、(いかなる理由でも)新鮮な空気を空間に導入する必要がある場合に、特に有利になりうる。
【0044】
また、本発明の圧力を低下又は補償する構成は、供給エアとして供給される新鮮な空気、排出される排気、及び火災の場合または火災を防止する場合に供給エアとして供給される消火剤のそれぞれの流量をさらに測定する工程を含み、供給エアとして区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量と、区画内雰囲気から排出される排気の流量との間の差を予め定める値に維持できるように前記各流量を調整することが好ましい。閉鎖された空間が、気体/エアロゾルを漏らさない外壁を有する場合、新鮮な空気及び/又は不活性ガスの形態の供給エアが追加されても閉鎖された空間に設定された区画内圧力が(必要に応じた特定の範囲の制御によって)維持できるように保証するため、上記の流量の差を示す所定値はゼロであることが好ましい。しかしながら、供給エアの流量と排気の流量との差を所望の値に設定できるように、区画内圧力を、調整された方法で意図的に変化させる(上昇又は下降させる)構成としてもよい。
【0045】
上述の調整に代え、又は上述の調整に加えて、空間内の圧力(区画内圧力)と外気の気圧との差を、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに算出する工程と、当該算出結果を予め定める値と比較し、この比較結果に基づいて、供給エアとして区画内雰囲気に導入される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量と、区画内雰囲気から排出される排気の流量とを調節することが好ましい。上記の構成によれば、特に火災鎮静段階の開始において単位時間当たりに大量の不活性ガスが最短時間内に供給エアとして区画内雰囲気に導入される場合でも、閉鎖された空間における圧力を用意にかつ効果的に補償することができる。
【0046】
上記の構成において、さらに制御ユニットが上記の比較及びその後の調整を制御する構成とすることが好ましい。したがって、制御ユニットは、空間への空気供給システム、空間に接続された不活性ガス源、空間からの排気システム、及び負圧生成機構を、以下のように制御する構成とすることが好ましい。
【0047】
・区画内圧力と外気の気圧との差が所定の値に一致するとき、供給エアとして区画内雰囲気に導入される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量を、当該区画内雰囲気から排出される排気の流量と等しくし、さらに/又は
・区画内圧力と外気の気圧との差が前記所定値未満であるとき、供給エアとして区画内雰囲気に導入される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量を、区画内雰囲気から排出される排気の流量よりも少なくする。
【0048】
ここで注目すべきは、空間内の気圧と外気の気圧と差を、空間内の圧力(区画内圧力)および外気の気圧を測定することによって割り出すことができることである。
【0049】
圧力測定機構の一例として、外気圧、すなわち外気の気圧を基準圧力として用いるマノメータがあげられる。しかしながら、バロメータ、すなわち真空を基準として使用する圧力測定手段を、用いてもよいことは言うまでもない。圧力測定機構としては、いわゆる「直接測定装置」を用いることができる。この直接測定装置は、例えば圧力によって加えられる力を機械式、容量式、誘導式、圧電抵抗式又はひずみゲージ式で対応する信号へと中継し変換することによって定められる圧力によって加えられる力を用いている。しかしながら、本発明の圧力測定機構は、上記の直接測定装置に限定されず、粒子数密度、熱伝導等を測定することによって閉鎖された空間の区画内雰囲気の圧力を導出する「間接的測定装置」を用いてもよいことは言うまでもない。
【0050】
また、上記の圧力測定機構に加え又は圧力測定機構に代えて、空間の雰囲気の圧力を数学的に算出する測定機構を用いてもよい。そのような圧力の算出は、好ましくは、閉鎖された空間の体積及び閉鎖された空間に導入される消火剤の量を考慮しなければならない。しかしながら、上記の実施の形態に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0051】
前述の通り、本発明の方法は、火災が検出された後、可能な限り短い時間で酸素置換ガス(不活性ガス)を区画内雰囲気に供給することによって、空間を不活化レベルにするものである。可能な限り迅速に火災を検出して火災鎮静プロセスに入れるように、区画内雰囲気における少なくとも1つの火災の特徴の存在について、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに測定する。そして、当該特徴の検出に基づいて火災が検出されると、供給エアとして消火剤を区画内雰囲気に供給すると共に、新鮮な空気の供給を停止することが好ましい。上記の構成によれば、閉鎖された空間毎に、再点火防止レベルを比較的迅速に設定することが可能になる。上記の構成において、火災の発生が検知されると、新鮮な空気の供給を完全に停止するのではなく、供給量を減らす構成としてもよいことは言うまでもない。これは、例えばひどい煙を生じさせるくすぶった火災が発生しており、これを鎮静する必要がある場合に有益である。
【0052】
上記のように、本発明に係る火災を防止する装置又は火災の消火装置は、閉鎖された空間の区画内雰囲気の少なくとも1つの火災の特徴を検出するための機構をさらに備えることが好ましい。本発明に係るシステムは、制御ユニットの制御の下、作動させることができる消火剤供給機構をさらに備えることが好ましい。また、前記制御ユニットは、消火剤供給機構を制御し、火災発生のさいに、準備された消火剤を、閉鎖された空間の区画内雰囲気へ直接、すなわち可能な限り短い時間で導入することが好ましい。
【0053】
本明細書において使用されるとき、「火災の特徴」は、例えば周囲温度、区画内の空気の固体、液体、又は気体の成分(煙粒子、粒子状物質、又はガスの蓄積)、又は周囲への放熱など、初期の火災の近傍において測定可能な変化を免れない物理的な変数として理解されるべきである。
【0054】
少なくとも1つの火災の特徴を検出するための機構は、例えば、区画内雰囲気の好ましくは複数の位置から配管又は流路の系を介して代表的な試料を積極的に吸い出す吸引式のシステムとして設計してもよい。上記の代表的な試料を、火災の特徴を検出するための検出器を備えている測定チャンバに送ることができる。また、火災の特徴のセンサを、例えば閉鎖された空間の内部に設置してもよいことは言うまでもない。
【0055】
上記の構成において、制御ユニットに制御される消火剤供給機構は、一端が不活性ガス源(すなわち、気体消火剤を供給する機構)に接続され、他端がガス出口ノズルによって閉鎖された空間の内部に接続された供給配管系を備えていることが好ましい。上記ガス出口ノズルは、閉鎖された空間の内部に分散配置されていることが好ましい。前記消火剤供給機構は、調整バルブ又は他の同様の機構を適切に作動させることによって、制御することができる。
【0056】
しかしながら、消火剤供給機構が閉鎖された空間の内部領域を閉鎖された空間の外部に配置された不活性ガス源に接続する供給配管系を備えることは、当然ながら必須ではない。例えば、上記の構成に代えて、前記不活性ガス源が、例えば前記閉鎖された空間に配置された少なくとも1つの高圧パイプを備える構成としてもよい。
【0057】
上記の構成によれば、供給される消火剤の少なくとも一部を、閉鎖された空間に配置された少なくとも1つの高圧パイプに高圧のもとで貯蔵することができる。この場合、少なくとも1つの高圧パイプが、消火剤供給機構に割り当てられ、制御ユニットによって動作させることができる出口バルブを備えることが好ましい。
【0058】
消火剤を貯蔵する構成として、上記形式の高圧パイプを、例えば閉鎖された空間の吊り下げ天井又は空間の天井の下方に配置してもよい。この場合、前記高圧パイプは、20〜30barの間の範囲の圧力に合わせて設計することが好ましい。当然ながら、他の圧力の値も考えることができる。
【0059】
必要に応じて閉鎖された空間を可能な限り最も迅速に気体消火剤で充填させることできるように、複数の制御可能な出口バルブを前記少なくとも1つの高圧パイプに配置することが特に好ましい。
【0060】
しかしながら、用意される消火剤の少なくとも一部が、少なくとも1つの高圧パイプに高圧のもとで貯蔵される最後に述べた実施の形態に代え、又はそのような実施の形態に加えて、不活性ガス源が、少なくとも1つの高圧シリンダを備え、好ましくは高圧シリンダのバッテリを備えることも考えられる。これらの高圧シリンダを、閉鎖された空間の外部に配置することができる。この場合、少なくとも1つの高圧シリンダ又は高圧シリンダのバッテリを閉鎖された空間の内部と接続する関連の供給配管系が、消火剤供給機構のために設けられる。
【0061】
上記の構成の高圧シリンダとして、例えば、200〜300barの間の圧力範囲に設計された市販の高圧シリンダを用いてもよい。本発明の消火剤を供給又は貯蔵する構成は、上記の構成に限定されず別の機構を用いてもよいことは言うまでもない。空間内での燃焼又は火災の広がりを効果的に防止するためには、火災の発生の際に、供給する消火剤を閉鎖された空間へ迅速に(可能な限り最短時間で)導入する必要がある。
【0062】
気体消火剤としては、例えばアルゴン、チッ素、二酸化炭素、又はこれらの混合物(すなわち、いわゆるイナージェン(Inergen)又はアルゴナイト(Argonite))などの不活性ガスを用いることができる。また、本発明の解決手段を、化学消火剤で実現することも可能である。
【0063】
不活性ガスの消火効果は、雰囲気内の酸素を置換することによって実現できる。これは、雰囲気内の酸素の割合が、燃焼に必要な特定の限界を下回って低下したときに生じるいわゆる「窒息効果」とも称される。火災は、通常は、雰囲気内の酸素の割合が、13.8体積%に低下した場合に相当する再点火防止レベルで消火される。これを達成するために、空気の量のわずか約3分の1を置換すればよく、これは、34体積%という消火ガス濃度に相当する。酸素の割合がかなり低くても点火可能な発火剤は、高い消火ガスの濃度を必要とする。このような発火剤の例としては、アセチレン、一酸化炭素、水素が挙げられる。
【0064】
しかしながら、前述の通り、例えばHFC−227ea又はNOVEC(登録商標)1230等の化学消火剤も、気体消火剤として使用することができる。ISO規格のHFC−227eaによって特定される公知の消火剤は、主として物理的な手段(冷却)により、しかしながら少量の化学的攻撃によっても、燃焼プロセスにおける熱を燃焼又は火災から奪い、火災の消火をもたらす。この消火剤は、高速な消火効果を実現する。消火剤の使用量は、消火対象の領域が必要な消火剤の濃度を実現および維持できる限り特に限定されるものではない。しかしながら、高温条件下、重大な健康上の危険を生じかねない分解生成物が、消火プロセスにて生じる可能性がある。
【0065】
そこで、消火剤として、きわめて環境に優しい化学消火剤であり、およそ5日以内で大気中に消えてしまう化学消火剤NOVEC(登録商標)1230を用いることが好ましい。この化学消火剤は、オゾン層にも、温室効果にも、悪い影響を及ぼさないという利点がある。
【0066】
しかしながら、本発明の解決手段は、閉鎖された空間において発生した火災を、気体消火剤を急速に導入することによって抑制する場合にのみ適用されるものではない。本発明の解決手段は、閉鎖された空間において火災は発生していないが、火災発生の危険性がある場合にも適用することができる。この場合、閉鎖された空間内の圧力を効果的に緩和又は補償することができる。上記の不活化による火災の防止する措置としては、不活性ガス又は不活性ガス混合物を気体「消火剤」として供給する必要がある。すなわち、前記不活性ガス又は不活性ガス混合物を、閉鎖された空間に保管された物品の可燃性をもはや点火が不可能なレベルまで、区画内雰囲気の酸素含有量を、事前に下げることができる量、閉鎖された空間へ供給される。通常の燃焼挙動を呈する物品の場合、約12体積%の酸素濃度で、点火不可能なレベルとなる。不活性ガス又は不活性ガス混合物の供給は、制御ユニットの制御の下動作する前記消火剤供給機構によって実現することができる。
【0067】
本発明の解決手段を、火災の防止措置として効果的に機能するように、本装置は、閉鎖された空間の区画内雰囲気の酸素含有量を測定するための酸素測定機構をさらに備えることが好ましい。閉鎖された空間の区画内雰囲気の酸素含有量に従って、制御ユニットが相応の制御信号を消火剤供給機構に送る。前記制御信号は、追加の不活性ガスを閉鎖された空間の区画内雰囲気に供給する必要があるか否か、又は区画内雰囲気が臨界酸素含有量の値にすでに達したため、不活性ガスの供給を停止させることができるか否かを知らせる。
【0068】
本明細書において、「臨界酸素含有量の値」とは、閉鎖された空間に保管された物品の可燃性が、それら物品の点火がもはや不可能となるレベル又は可能であっても多大な困難を伴わないレベルにまですでに低下させた酸素含有量の値をいう。
【0069】
本発明の解決手段が火災防止措置として使用される場合、火災防止のために区画内雰囲気に供給される不活性ガス又は不活性ガス混合物の流量を、初期には区画内雰囲気を基本不活化レベルに設定し維持できる量に調節し、火災が発生した場合、区画内雰囲気に供給される不活性ガス又は不活性ガス混合物の流量を、区画内雰囲気を完全不活化レベルに設定し維持できる量に調節することが好ましい。
【0070】
本明細書において使用されるとき、「基本不活化レベル」は、通常の外気の酸素含有量と比べて低いが、人間又は動物にいかなる危険ももたらすことがなく、人間又は動物が依然としていかなる問題もなく保護領域へと進入することができる酸素含有量を言う。基本不活化レベルの例としては、15体積%、16体積%又は17体積%に相当する保護領域の酸素含有量が考えられる。
【0071】
一方、「完全不活化レベル」とは、基本不活化レベルの酸素含有量よりのさらに低い不活性レベルであって、大部分の物質の可燃性がもはや点火不可能なレベルまで低下された酸素含有量のレベルを言う。対象の保護空間内の火災荷重に応じて、完全不活化レベルにおける酸素濃度は、通常11重量%〜12重量%となる。したがって、完全不活化レベルは、再点火防止レベルに相当するレベルと言えるが、再点火防止レベルよりも低い酸素濃度に相当するレベルであってもよいことは言うまでもない。
【0072】
最後に、本発明に係る方法は、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに、前記区画内の空気の品質を算出し、当該区画内空気の品質に基づいて、供給エアとして区画内雰囲気に供給される新鮮な空気の流量を調節することが好ましい。この場合、例えば区画内の空気の雰囲気のCO含有量を測定することによって、前記区画内の空気の品質を間接的に割り出してもよい。
【0073】
特に、本発明の解決手段が、例えば研究室領域など、区画内雰囲気が健康に対して害を及ぼす可能性がある物質、粒子等を含む可能性がある領域で使用される場合、区画内雰囲気から抽出された排気に、外部雰囲気への放出に先立って、前処理を行うことが好ましい。この前処理として、必要に応じてフィルタ処理又は殺菌処理を行うことが好ましい。この場合、区画内雰囲気から抽出された排気の少なくとも一部を、処理後に新鮮な空気として再び区画内雰囲気に戻すことが好ましい。
【0074】
以下で、添付の図面を参照して、本発明の装置の好ましい実施の形態をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る装置の概略構成を示している。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る装置の概略構成を示している。
【図3】本発明による解決手段によって閉鎖された空間において実現できる圧力の補償又は圧力の緩和を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、閉鎖された空間10において発生した火災を消火するための本発明の第1の実施の形態に係る装置を示している。本装置は、通常の条件のもとでは気体である消火剤を供給するための不活性ガス源11を備えている。図示の実施の形態においては、空間10の外部に設けられており、不活性ガス源11が、供給すべき消火剤(例えば、チッ素)を高圧条件下で貯蔵するガス・シリンダ・バッテリ11aを備えている。
【0077】
高圧シリンダ11aは、消火剤供給機構17を介して空間10に接続されている。消火剤供給機構17は、供給配管系17aと、空間10内に配置されたガス出口ノズルシステム17bとを備えている。消火剤供給機構17は、火災の際(又は必要な場合)に、高圧シリンダ11aに貯蔵された消火剤を閉鎖された空間10に可能な限り素早く供給できるように設計されている。特に、例えば区画内雰囲気を火災の消火に必要とされる充分な不活化レベルにすることができるように、消火ノズル17bを介して気体消化剤を空間10の区画内雰囲気に最短時間で放出することができる。
【0078】
消火剤供給機構17は、区画内雰囲気へ高圧シリンダ11aに貯蔵された消火剤を調整した状態で供給できるように制御可能に設けられたバルブV1をさらに備えている。火災の際(又は必要な場合)、バルブV1は全開又は半開とることによって高圧シリンダ11aを空間10に接続し当該空間10を気体消火剤で充填させる。
【0079】
図1に示す本実施の形態に係る装置は、圧力緩和機構12をさらに備えている。この圧力緩和機構12は、負圧生成機構13及び制御ユニット14で構成されている。
【0080】
図1に概略的に示した本システムでは、負圧生成機構13が、吸引機構13aと、当該吸引機構13aに接続された吸引配管系13bとを備えている。吸引配管系13bは、吸い込み開口13cによって閉鎖された空間10の内部に接続されている。これにより、吸引機構13aによって空間10の内部から空気又はガスを吸い出し又は抽出し、排気として例えば外部に放出することができる。
【0081】
負圧生成機構13を制御する制御ユニット14は、吸引機構13a及び負圧生成機構13に配置された操作可能な調節バルブV2に接続されている。したがって、同図に示す構成では、制御ユニット14が、消火剤供給機構17のみならず、吸引機構13aも制御している。
【0082】
詳しくは、制御ユニット14は、負圧生成機構13の吸引機構13aを、閉鎖された空間10の区画内雰囲気の圧力pに基づいて、区画内雰囲気の圧力pが所定の最大圧力値pmaxを超えないように制御するように設計されている。この構成を実現する手段として、図1の構成では、閉鎖された空間10内の区画内雰囲気のガスの物理的な圧力を測定する圧力測定機構15を備えている。圧力測定機構15は、現在の区画内雰囲気の瞬間圧力pを、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに測定し、測定値を制御ユニット14に供給するように構成されている。この瞬間圧力pに基づいて、制御ユニット14は、負圧生成機構13(すなわち、図1の構成では、負圧生成機構13が備える吸引機構13a及び/又は調節バルブV2)を動作させる。制御ユニット14は、閉鎖された空間10の区画内雰囲気の瞬間圧力pを、所定の最大圧力値pmaxと比較する。そして、圧力pが所定の最大圧力値pmaxを超える場合、制御ユニット14は、対応する制御信号を、例えば負圧生成機構13の吸引機構13aへ送る。
【0083】
図1の構成では、吸引機構13aとしてファンが用いられているものとする。所定の最大圧力値pmaxを超えると、制御ユニット14の制御の下、吸引機構13aに制御信号が送られ、この制御信号に基づいて、ファン13aの回転速度及び回転方向が調節されることが好ましい。これにより、原理的には、吸引機構13aに接続された吸引配管系13bを通って単位時間当たりに閉鎖された空間10の区画内雰囲気から充分な量のガス又は空気を排出することができる。これにより、たとえ気体消火剤が急速に導入されても、空間10の区画内雰囲気の瞬間圧力pが最大圧力値pmaxを超えないことを保障することができる。
【0084】
本実施の形態は、現在の圧力値Pxを測定する構成に限定されず、例えば導入される消火剤の量を計算または推定してもよい。この場合、供給される消火ガスを調整し区画内雰囲気へ供給できるように、制御ユニット14の制御の下、消火剤供給機構17を動作させることが好ましい。前述の通り、空間10に導入される消火ガスの量は、該当調節バルブV1の動作を開始させる制御ユニットによって調整することができる。
【0085】
図1の消火システムは、閉鎖された空間10の区画内雰囲気の少なくとも1つの火災の特徴を検出するための火災検出システム16をさらに備えている。この火災検出システム16は、区画内雰囲気から代表的な空気又はガスの試料を抽出し、少なくとも1つの火災の特徴を検出する検出器(図1には明示的には示さず)に送る吸引システムとして構成されることが好ましい。
【0086】
また、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに、火災検出システム16から制御ユニット14に送信される信号が、必要に応じてさらなる処理又は評価を行った後、消火剤供給機構17及び/又は調節バルブV1を適切に制御するために用いることが好ましい。具体的には、火災検出装置16によって火災が検出されたさいに、当該火災検出装置16からの信号に基づいて、制御ユニット14が消火剤供給機構17に対応する信号を送ることが好ましい。
【0087】
上述の通り、図1の構成では、制御ユニット14は、吸引機構13aとしてのファンを制御し、区画内雰囲気から抽出されるガス又は空気を吸引配管系13bを介して外部に排出するように構成されている。さらに、制御ユニット14は、ファン13aの回転方向も調節できる構成とすることができる。この場合、所定量の空気またはガスを、必要に応じて、負圧生成機構13によって閉鎖された空間10の雰囲気に導入することもできる。この構成は、空間10を外部の雰囲気に比べて特定の超過圧力の対象としなければならない場合に特に好適である。したがって、図1の構成において、制御ユニット14は、負圧生成機構13を、閉鎖された空間10の区画内雰囲気の瞬間圧力pに基づいて、区画内雰囲気の圧力が所定の最小圧力値pminより低下しないようにすることがないように制御可能に設計されている。
【0088】
上記の構成を実現するために、制御ユニット14は、閉鎖された空間10の測定または推定又は計算による瞬間圧力pを、一方では最大圧力値pmaxと比較し、他方では最小圧力値pminと比較する。そして、瞬間圧力pが、最大圧力値pmaxよりも大きい場合、又は最小圧力値pminよりも小さい場合、負圧生成機構13が適切に動作する。すなわち、負圧生成機構13は、空間10の区画内雰囲気の瞬間圧力pが、最大圧力値pmaxを超えず、かつ最小圧力値pminを下回らないように作動するように構成されている。
【0089】
万一、負圧生成機構13の故障又は不具合が生じた場合でも、基本的に閉鎖された空間10の区画内雰囲気の圧力pが、所定の最大圧力値pmaxを超えないこと、及び/又は所定の最小圧力値pminを下回らないことを保証できるように、圧力緩和機構12は、さらなる安全措置として、少なくとも1つの(機械式の)圧力軽減フラップ18をさらに備えることが好ましい。この圧力軽減フラップ18の機能は、公知の従来技術と略等しい。また、閉鎖された空間10からの圧力の放出を可能にするために、圧力軽減フラップ18は、所定の第1の圧力値Pを超える場合に自動的に開くように設計することが好ましい。
【0090】
また、圧力軽減フラップ18を備える構成では、圧力pが所定の第1の圧力値Pよりも低下した後、再び自動的に閉じるように圧力軽減フラップ18を設計することが好ましい。所定の第1の圧力値Pは、この値を超えたときに圧力軽減フラップ18が自動的に開くように制御するための閾値である。上記所定の第1の圧力値Pは、制御ユニット14が負圧生成機構13を作動させるための閾値として使用する所定の最大圧力値pmax以上であることが好ましい。
【0091】
上記の圧力の緩和機構の信頼性を高めるため、少なくとも1つの好ましくは機械的に機能する圧力軽減フラップ18をさらに備えている上記システムの構成において、圧力軽減フラップ18が、所定の第2の圧力値pを下回って低下したときに自動的に開き、当該第2の圧力値pを再び超えたときに再び閉じる構成とすることがさらに好ましい。したがって、上記第2の圧力値pは、負圧生成機構13の動作のための下限閾値である最小圧力値pminと等しいか、それ以下である必要がある。
【0092】
図2は、本発明の他の実施の形態に係る装置の概略構図を示す図である。図2の構成は、図1の構成と基本的に同様の構成であるが、図2のシステムでは、吸引機構が負圧生成機構13として機能するものではない点で異なっている。すなわち、図2の構成では、空間10の内部に設けられた圧縮機19が負圧生成機構13として使用され、必要に応じて周囲の気体雰囲気から排出すべき排気の少なくとも一部分の体積を圧縮する機能を有している。
【0093】
図2のシステムは、圧縮機19に接続された高圧貯蔵リザーバ20をさらに備えている。圧縮された排気を圧縮機19で溜めることができる。高圧貯蔵リザーバ20は、三方向バルブV2、V3を介して外部に接続される配管系13b、21に接続されている。これにより、圧縮機19によって圧縮された排気及び/又は高圧貯蔵リザーバ20に溜められた圧縮済みの排気を、配管系13b、21を介して、空間10の内部から排出することができる。
【0094】
図2の装置は、供給エアファン22で構成される空気供給システムをさらに備えており、供給配管系17aおよび出口ノズルシステム17bを介して新鮮な空気を区画内雰囲気に供給することができる。さらに、抽出ファン23を有する排気システムが設けられている。抽出ファン23は、吸気系13b及び吸引開口13cを介して空間10の内部に接続されており、調整された排気を外部に取り出すことができる構成としている。供給エアファン22及び抽出ファン23は、制御ユニット14の制御の下、作動する。
【0095】
上記の構成によれば、閉鎖された空間10の空気をシステム的に交換し、空間内の内部の空気と外部の空気又は新鮮な空気とを入れ替えることができる。例えば、混み合った部屋では、空気を交換し、酸素を部屋内に導入すると共に二酸化炭素及び凝縮物を外部へ排出するために必要である。しかしながら、人が入らないか、短時間しか人が入らない貯蔵室においても、例えば、貯蔵品が放出する有害な元素を取り除くために、頻繁に空気の交換を行う必要がある。現代の建築方法によって、建物又は空間の外壁が気密に設計されている場合、区画内雰囲気と外気との間で、無調整で行われる空気の交換によって、制御されずに好ましくない物質の交換が行われることはない。上記の気密性の高い空間で、必要な空気の交換を実現するために、換気システムを用いることができる。
【0096】
換気システムは、生活空間又は作業空間へ新鮮な空気を供給する一方で、「使用済み」または汚れた排気を取り除くように機能する。用途に応じて、制御された給気を有するシステム(給気システム)、制御された排気を有するシステム(排気システム)、または給気/排気の組み合わせシステムとすることができる。
【0097】
図2の構成では、不活性ガス源としてガス・シリンダ・バッテリ11aを用いている。このガス・シリンダ・バッテリ11aは、三方向バルブV1を介して供給配管系17aに接続されている。吸気配管系13bも、同様に、分岐配管13d及び三方向バルブV4を介して供給配管系17aに接続されている。分岐配管13d、バルブV2、V4、抽出ファン23、及び配管系13bによって循環系が構成されるように、制御ユニット14は、バルブV2及びV4が適切に作動するように制御する。
【0098】
図2に明示されていないが、区画内雰囲気に供給される総流量を測定して、測定値を制御ユニット14へ送るために、流量センサを供給配管系17aに設けてもよい。単位時間当たりに区画内雰囲気に供給される総流量は、新鮮な空気の流量及び不活性ガス又は消火剤の流量となる。
【0099】
さらに、排気システムによって空間内から単位時間当たりに抽出される排気の量を測定し、当該測定値を制御ユニット14へ送るために、上記流量センサ(図2には明示されていない)は、配管系13b又は21にも設けることが好ましい。本発明によれば、制御ユニット14は、測定された供給エアの流量を測定された排気の流量と比較し、供給エアの流量が常に排気の流量以下となるように、給気/排気システムを制御している。これにより、通常の外気の圧力と比べて低い雰囲気圧力を、空間10に設定及び/又は維持することができる。
【0100】
図1を参照して説明した前述の実施の形態と同様に、制御ユニット14は、必要に応じてバルブV1を作動させるように制御し、不活性ガス源11aと供給配管系17aとの間で流体を供給し、不活性ガス源11aからの不活性ガス(気体消火剤)を整流された状態で区画内雰囲気に供給できる構成としている。火災が発生した場合、区画内雰囲気の酸素含有量を少なくとも再点火防止レベルまで可能な限り迅速に下げる必要がある。このため、火災の特徴が検出されると、供給エアとしての新鮮な空気の供給が中断され、不活性ガス源11aからの消火剤のみが区画内雰囲気に供給される。これにより、通常の状態と比べて供給エアの流量が大幅に増加するため、圧力の等化または補償する機構を備えていなければ、空間内部の圧力は上昇することとなる。
【0101】
上記の空間内部の圧力の上昇を防止する措置として、図2の構成では、区画内雰囲気から排出される排気の少なくとも一部の体積を圧縮し、圧縮された排気を高圧貯蔵リザーバ20に一時的に溜めるための負圧生成機構13を用いている。区画内雰囲気から排出されるべき排気の残りの部分は、排気システムによって外部に抽出される。
【0102】
上記の負圧生成機構13を備えた構成によれば、空間10に不活性ガスを急速に導入する場合であって、排気システムそのものには区画内雰囲気から充分な流量の排気を抽出できるように設計されていない場合、排気の流量を少なくとも供給エアの流量に等しくなるように設定することができる。
【0103】
本発明の解決手段によって実現される圧力軽減または圧力補償の上述の機能を、図3のフローチャートを参照し説明する。
【0104】
空間10の内部の圧力の低下または補償は、気体消火剤が不活性ガス11aから保護領域に導入されると直ちに開始される(ステップS1)。次に、空間10内の区画内の圧力pが、圧力測定機構15によって測定され、測定された圧力値が、制御ユニット14に送られる(ステップS2)。その後、制御ユニット14は、測定された圧力の値pが、所定の又はメモリに保存された最大限界値pmaxに達したか否かを判断する(ステップS3)。S3でNOの場合、空間10内の瞬間圧力pを測定するフローチャートのS2に戻る。
【0105】
一方、ステップS3において、測定された圧力の値pが所定の限界値pmaxに達した(YES)と判断される場合、制御ユニット14は、負圧生成機構13に適切な制御信号を送信する(ステップS4)。負圧生成機構13が、区画の圧力pが所定の限界値pmaxを下回る値を再びとるまで必要とされる限りにおいて、閉鎖された空間10の区画内雰囲気から排気を排出する(ステップS5〜S7)。
【0106】
前述の通り、負圧生成機構13は、(気体を含む)区画内雰囲気から排気を抽出し、これを整流された状態で空間の容積から排出する吸引機構13aを備える排気システムとして構成してもよい。また、負圧生成機構13は、圧力補償の目的のために空間10の雰囲気から排出すべき排気を圧縮して、圧力の低下させる手段として圧縮機19を備える構成としてもよい。
【0107】
図1及び図2には示していないが、区画内雰囲気および空間の体積から抽出される排気を、供給エアとして区画内雰囲気に再び供給する前または排気として外部に排出する前に適切に浄化または処理するために、排気配管系13bにフィルタ処理機構を設ける必要がある場合も考えられる。
【0108】
本発明の解決手段は、火災の場合に閉鎖された空間10に消火ガスを急速に導入することによって火災を鎮静するための手段を提供するだけの消火システムに限定されるものではない。本発明の解決手段は、例えば、特許文献1に記載されているようないわゆる2段階不活化システムに適用することもできる。
【0109】
この場合、消火剤として利用される不活性ガス又は不活性ガス混合物は、いわゆる窒息効果によって火災を防止又は消火する構成とすることが好ましい。
【0110】
本装置は、閉鎖された空間10の区画内雰囲気の酸素含有量を測定するための酸素測定機構19をさらに備えることが好ましい。酸素測定機構19は、少なくとも1つの火災の特徴を検出するための機構16と同様に、好ましくは吸引システムとして設計される。火災の特徴を検出するための機構16の実現および酸素測定機構19の実現においては、吸引式で動作する1つの同じシステムを利用し、火災の特徴センサに追加して、酸素センサまたは検出器を閉鎖された空間10の区画内雰囲気の酸素含有量を測定すべくシステムの検出チャンバに配置することが考えられる。
【0111】
本発明の解決手段が、1段または多段の不活化システムにおいて使用される場合、不活性ガス源は、ガス・シリンダ・バッテリ11aに加えて不活性ガス発生システム11b’、11b’’を備えることが好ましい(図1を参照)。不活性ガス発生システム11b’、11b’’は、外気圧縮機11b’’及び当該外気圧縮機11b’’に接続された不活性ガス発生器11b’を備えている。したがって、制御ユニット14を、適切な制御信号によって外気圧縮機11b’’の空気供給速度を制御するように設計すべきである。これにより、制御ユニット14は、単位時間当たりに不活性ガスシステム11b’、11b’’によって供給される不活性ガスの量を設定することができる。
【0112】
不活性ガスシステム11b’、11b’’によって供給される調整された不活性ガスが、供給配管系17aを介して監視対象の空間10に供給される。複数の保護領域を供給配管系17aに接続してもよいことは言うまでもない。具体的には、不活性ガスシステム11b’、11b’’からの不活性ガスが、空間10の内部の適切な位置に配置された出口ノズル17bによって供給される。
【0113】
本発明の解決手段は、さらにチッ素である不活性ガスが、大気から部分的に抽出されることが好ましい。不活性ガス発生器又はチッ素発生器11b’が、例えば、従来の膜又はPSA技術に従って機能し、例えばチッ素が90体積%〜95体積%であるチッ素豊富な空気を生成する。そして、チッ素豊富な空気は、供給配管系17aを介して空間10に供給される不活性ガスとして機能する。不活性ガスの生成から生じる酸素豊富な空気は、さらなる配管系を通って外部に排出される。
【0114】
ここで、空間10に導入される不活性ガスの量が、空間10に所定の不活化レベルを設定及び/又は維持するために適した値をとるように、制御ユニット14が、入力される不活化信号に基づいて不活性ガスシステム11b’、11b’’を制御する構成としてもよい。制御ユニット14において、所望の不活化レベルを、例えば、キースイッチ又はパスワード保護された制御パネル(明示的には図示されていない)によって選択することができる。また、不活化レベルを、所定の一連の事象基づいて選択する構成としてもよいことは言うまでもない。
【0115】
本発明の解決手段は、図面に例として示した実施の形態に限られない。代わりに、添付の特許請求の範囲に記載されるとおりの上述の特徴の変更も、考えることができる。
【0116】
特に、不活性ガス源11として閉鎖された空間10の外部のガス・シリンダ・バッテリを使用するのではなく、閉鎖された空間10の内部に高圧パイプを設ける構成としてもよい。この場合、供給される消火剤の少なくとも一部を、前記高圧パイプに高圧のもとで貯蔵すべきである。高圧パイプは、制御ユニット14の制御の下、作動させることができ、消火剤供給機構17に配置される少なくとも1つの出口バルブをさらに備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 閉鎖された空間
11 不活性ガス源
13 負圧生成機構
14 制御ユニット
16 火災検出装置
17 消化剤供給機構
19 圧縮機
20 高圧貯蔵リザーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖された空間(10)内、特に研究室領域における火災を防止又は消火するための不活化方法であって、前記閉鎖された空間(10)における区画内雰囲気に調整された新鮮な空気を供給エアとして供給する一方、調整された排気を前記区画内雰囲気から排出し、通常条件下では気体である消火剤を前記供給エアとして前記区画内雰囲気に供給する方法において、
新鮮な空気及び/又は消火剤として前記区画内雰囲気に供給される供給エアの総流量が、前記区画内雰囲気から排出される排気の流量以下とする工程と、前記空間(10)を通常の大気圧と比べて低い区画内圧力(px)に設定及び/又は維持する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
特に消火剤が供給エアとして供給される場合に、区画内雰囲気から排出されるべき排気またはすでに排出された排気の少なくとも一部を、圧縮機(19)によって圧縮する工程を含み、前記圧縮機(19)の吸入量が、供給エアとして区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量以上にすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
区画内雰囲気から排出されて前記圧縮機(19)によって圧縮された排気が、高圧貯蔵リザーバ(20)に一時的に溜める工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧縮機(19)によって圧縮された排気の少なくとも一部を、処理、特にフィルタ処理および殺菌処理した後に、外部に放出することを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
供給エアとして供給される新鮮な空気、排出される排気、及び火災が発生した場合又は火災を防止する場合に供給エアとして供給される消火剤のそれぞれの流量をさらに測定する工程を含み、
供給エアとして区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量と、区画内雰囲気から排出される排気の流量との間の差を予め定める値に維持できるように前記各流量を調整することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
空間(10)が、気体/エアロゾルを漏らさない外壁を有する場合、前記予め定める値がゼロであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
空間の区画内の圧力と外気の気圧との差を、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときにさらに測定し、所定の値と比較する工程と、
供給エアとして前記区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量と、区画内雰囲気から排出される排気の流量とを、前記工程における比較結果に基づいて調整することを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
区画内圧力(px)と外気の気圧との差が、前記所定の値に一致するとき、供給エアとして前記区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量を、区画内雰囲気から排出される排気の流量と等しくすることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
区画内圧力(px)と外気の気圧と差が前記所定の値未満であるとき、供給エアとして前記区画内雰囲気に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量を、前記区画内雰囲気から排出される排気の流量よりも少なくすることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
区画内圧力(px)と外気の気圧との差を、前記空間内の圧力(px)および外気の気圧を測定することによって算出することを特徴とする請求項7ないし9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに、少なくとも1つの火災の特徴を検出し、当該火災の特徴が検出される対象となる前記区画内雰囲気において、前記火災の特徴が検出された場合に、前記消火剤を供給エアとして前記区画内雰囲気に供給することを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記火災の特徴が検出された場合に、前記供給エアとして通常供給される新鮮な空気の供給を中断することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記火災の特徴が検出された場合に、前記区画内雰囲気に供給される消火剤の流量を、前記区画内雰囲気に通常供給される新鮮な空気の流量よりも多くすることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
火災防止のために、前記区画内雰囲気に新鮮な空気および消火剤の両方を供給エアとして供給することを特徴とする請求項1ないし13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに前記区画内雰囲気の消火剤濃度を算出する工程と、火災を防止する場合、前記区画内雰囲気を、予め定める消火剤濃度に設定及び/又は維持できるように、前記区画内雰囲気に供給される消火剤の流量を、前記算出された消火剤濃度に基づいて調整する工程とを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記消火剤は、不活性ガスまたは不活性ガス混合物であり酸素含有量を測定し、当該酸素含有量に基づいて、前記区画内雰囲気の消火剤濃度を間接的に算出する工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
火災を防止する場合には、前記区画内雰囲気を、前記空間(10)における再点火防止レベルよりも高いベース不活化レベルに設定し維持できるように、前記区画内雰囲気に供給される不活性ガスまたは不活性ガス混合物の流量を調整する工程と、
火災が発生した場合には、前記区画内雰囲気を、前記空間(10)における前記再点火防止レベルよりも低い完全不活化レベルに設定し維持するように、前記区画内雰囲気に供給される不活性ガスまたは不活性ガス混合物の流量を調整する工程と、を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
区画内空気の品質を、連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに算出し、前記供給エアとして区画内雰囲気に供給される新鮮な空気の流量を、前記算出された区画内空気の品質に基づいて調整する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
区画内雰囲気のCO含有量を測定し、当該測定結果に基づいて、前記区間内空気の品質を間接的に算出する工程をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記区画内雰囲気から排出された排気の少なくとも一部を、所定の処理を施した、新鮮な空気として再び前記区画内雰囲気に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
通常の条件のもとでは気体である供給される消火剤を、特に閉鎖された空間(10)において火災が発生した場合に前記閉鎖された空間の区画内雰囲気に前記気体消火剤を迅速に導入する少なくとも1つの機構(11)を備え、請求項1ないし20の何れか1項に記載の方法を実現するための装置であって、
負圧生成機構(13)と制御ユニット(14)とを有する圧力軽減機構(12)をさらに備えており、前記制御ユニット(14)が、前記閉鎖された空間(10)の区画内雰囲気の圧力(px)に基づいて、区画内雰囲気の圧力(px)が予め定める最大圧力値(pmax)を超えないように前記負圧生成機構(13)を制御するように設計されていることを特徴とする装置。
【請求項22】
前記制御ユニット(14)は、前記閉鎖された空間(10)の区画内雰囲気内の圧力(px)に基づいて、前記区画内雰囲気の圧力(px)が、予め定める最小圧力値(pmin)より低下しないように前記負圧生成機構(13)を制御することを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記区画内雰囲気のガスの物理的な圧力を測定する圧力測定機構(15)をさらに備え、
前記圧力測定機構(15)は、区画内の瞬間圧力(px)を連続的に、所定の時期がきたときに、及び又は予め定める事象が生じたときに測定し、測定した値を前記制御ユニット(14)に送り、
前記制御ユニット(14)は、前記瞬間圧力(px)に基づいて、前記負圧生成機構(13)を動作させるように制御する請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記負圧生成機構(13)は、前記区画内雰囲気から排出される排気の少なくとも一部を圧縮する圧縮機(19)と、当該圧縮機(19)によって圧縮された排気を一時的に貯蔵するための高圧貯蔵リザーバ(20)とを備えている請求項21ないし23の何れか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記制御ユニット(14)は、前記圧縮機(19)を、前記圧縮機(19)の吸入量が供給エアとして前記区画内雰囲気内に供給される新鮮な空気及び/又は消火剤の総流量以上となるように制御する請求項24に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534543(P2010−534543A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518647(P2010−518647)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059914
【国際公開番号】WO2009/016168
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506215250)アムロナ・アーゲー (16)
【Fターム(参考)】