説明

開口枠

【課題】鉛直方向の精度が悪い躯体枠に対しても、簡単に鉛直度を出して施工することができるとともに、施工時の環境負荷の小さい開口枠を提供する。
【解決手段】建造物の躯体枠Wに取り付けられる開口枠1において、開口枠1の縦方向部材2、3を、躯体枠Wに、調整機構によって鉛直度を出した状態で取り付ける。調整機構を、固定用部材と位置決め部材とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口枠に関し、特に、建造物の開口を補強する枠部材(以下、「躯体枠」という。)に取り付けられる開口枠の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の開口を補強する躯体枠は、鉛直方向の精度を出しにくいため、躯体枠に、別途形成した開口枠を取り付けるようにしている。
【0003】
この開口枠は、例えば、図6に示すように、縦枠部材41、上枠部材42及び方立部材43から開口枠40を構成するようにし、引戸を壁面の戸袋内に収納する場合には、縦枠部材41、上枠部材42及び方立部材43と、戸袋用縦枠部材44、戸袋用下枠部材45及び戸袋補強用横桟部材46とを組み合わせて構成するようにしている。
そして、図6に示す例では、縦枠部材41、上枠部材42及び戸袋用縦枠部材44は、予め建造物に設置されている躯体枠W(ここで、躯体枠Wは、横方向躯体枠部材Wxと縦方向躯体枠部材Wy、Wyとを略H状に連結して構成されている。)に、通常、鉄筋等からなる固定用アンカAを介して、溶接によって取り付けるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建造物に設置されている躯体枠Wは、鉛直方向の精度が悪く、開口枠40の縦枠部材41及び戸袋用縦枠部材44、さらには、方立部材43は、その取付に際して、鉛直度を出して施工する必要があるため、施工に手数を要するという問題があった。
また、躯体枠Wに対する取付を、溶接によって行うようにしているため、環境負荷が大きいだけでなく、作業に熟練が要求されるという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記従来の開口枠に関する問題点に鑑み、鉛直方向の精度が悪い躯体枠に対しても、簡単に鉛直度を出して施工することができるとともに、施工時の環境負荷の小さい開口枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の開口枠は、建造物の躯体枠に取り付けられる開口枠において、前記開口枠の縦方向部材を、前記躯体枠に、調整機構によって鉛直度を出した状態で取り付けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記調整機構を、前記躯体枠に取り付けた固定用部材と、該固定用部材に対して、前記開口枠の縦方向部材の位置決めを行う位置決め部材とから構成することができる。
【0008】
さらにこの場合において、前記開口枠の縦方向部材として、開口端部に配設する縦枠部材を対象とすることができる。
【0009】
また、前記開口枠の縦方向部材として、戸袋の開口側端部に配設する方立部材を対象とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の開口枠によれば、開口枠の縦方向部材を、前記躯体枠に、調整機構によって鉛直度を出した状態で取り付けることにより、予め建造物に設置されている躯体枠の精度に左右されることなく、簡単に鉛直度を出して開口枠を取り付けることができ、これにより、施工時間を大幅に短縮することができるとともに、施工に溶接機を使用しないため、施工時の環境負荷を小さくすることができる。
【0011】
また、前記調整機構を、前記躯体枠に取り付けた固定用部材と、該固定用部材に対して、前記開口枠の縦方向部材の位置決めを行う位置決め部材とから構成することにより、縦方向部材の位置決めを簡易に行うことができる。
【0012】
また、前記開口枠の縦方向部材として、開口端部に配設する縦枠部材を対象とすることにより、開口枠に引戸を配設する場合に、引戸の取り付けの基準となる縦枠部材を、躯体枠の縦方向躯体枠部材の精度に左右されることなく、鉛直度を出すことができ、引戸の開閉操作に支障をきたすことをなくすことができる。
【0013】
また、前記開口枠の縦方向部材として、戸袋の開口側端部に配設する方立部材を対象とすることにより、開口枠に引戸を配設し、その引戸を戸袋内に収納する場合に、引戸と方立とが干渉することをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の開口枠の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図4に、本発明の開口枠の第1実施例を示す。
この開口枠1は、従来例と同様、建造物の躯体枠Wに取り付けられるもので、通常、居室と廊下とを仕切る引戸Dを取り付けるために、より具体的には、引戸枠として利用される。
そして、この実施例においては、開口枠1の縦方向部材として、開口端部に配設する縦枠部材2及び戸袋の開口側端部に配設する方立部材3を、躯体枠Wに、調整機構6によって鉛直度を出した状態で取り付けるようにしている。
【0016】
ここで、開口枠1の縦方向部材としては、本実施例に示すように、開口端部に配設する縦枠部材2及び戸袋の開口側端部に配設する方立部材3があるのが一般的であるが、引戸Dを戸袋内に収納することのないタイプの開口枠の場合には方立部材3を配設しないこともある。ただし、本発明は、方立部材3を配設しない場合を排除するものでない。
【0017】
調整機構6は、開口枠1の縦枠部材2に対応する固定用部材21及び開口枠1の方立部材3に対応する固定用部材31と、固定用部材21、31に対して、開口枠1の縦方向部材の位置決めを行う位置決め部材60とから構成される。
ここで、開口枠1の縦枠部材2に対応する固定用部材21は、躯体枠Wの縦方向躯体枠部材Wyに取り付けられる。
また、開口枠1の方立部材3に対応する固定用部材31は、躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wx及び戸袋用下枠部材5に取り付けられる。
この場合、固定用部材21、31は、躯体枠Wの縦方向躯体枠部材Wyや躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wx及び戸袋用下枠部材5に対して、ネジ等の締結部材で固定するほか、溶接によって固定するようにしても構わない。
【0018】
位置決め部材60は、その構成を特に限定されるものではなく、開口枠1の縦方向部材としての縦枠部材2及び方立部材3の鉛直度を出すことができる部材であればよく、本実施例においては、固定用部材21、31に形成した雌ネジ穴6bと、雌ネジ穴6bに螺合するネジ6aとから構成するようにしている。
【0019】
この場合、固定用部材21、31は、縦枠部材2及び方立部材3と同様に、ほぼ床面から躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wxの高さ位置に至るまでの長さを有する長尺部材を使用するほか、位置決め部材60を配設する箇所のみに固定するようにしても構わない。
【0020】
次に、開口枠1の縦方向部材としての縦枠部材2の具体的な取付構造について説明する。
【0021】
躯体枠Wは、縦方向躯体枠部材Wy、Wyと横方向躯体枠部材Wxとが略H状に連結され、建造物に設置されるものであるが、見込方向N(躯体枠Wを含む面Mに対して略直交する方向)に、縦方向躯体枠部材Wyが傾斜して(具体的には、図3に示すように、鉛直線Pに対して角度α傾斜して)施工される場合がある。
そして、この場合、縦方向躯体枠部材Wyに直接取り付けられる固定用部材21の面Kも、同様に、鉛直線Pに対して角度α傾斜して取り付けられることとなる。
【0022】
このように、鉛直線Pに対して角度α傾斜して取り付けられた固定用部材21に形成した雌ネジ穴6bに対して、縦枠部材2に形成したネジ取付孔20aを介して、ネジ6aを螺合する。
この場合、図3に示す方向に縦方向躯体枠部材Wyが傾斜している場合には、上側のネジ6aよりも下側のネジ6aのねじ込み量を大きくして、縦枠部材2の見込方向Nと直交する面Tの鉛直度を出して取り付けるようにする。
【0023】
その後、ネジ等の締結部材B1を、縦枠部材2に形成した長孔形状のネジ取付孔20bを介して、固定用部材21に固定することによって、縦枠部材2を鉛直度を出した状態で固定することができる。
【0024】
なお、縦枠部材2は、一体ものであっても構わないが、本実施例においては、図2に示すように、居室側と廊下側とに分けた分割体20、20で構成し、それぞれ個別に、固定用部材21に取り付けるようにするとともに、分割体20、20同士を締結部材B2によって連結、固定し、接合部にカバーCを配設するようにしている。
このように、縦枠部材2を分割体20、20で構成することによって、部材毎の重量を軽くすることができ、作業性を向上することができる。
【0025】
これによって、躯体枠Wの縦方向躯体枠部材Wyが傾斜して施工されていても、開口枠1の縦枠部材2を、鉛直度を出した状態で取り付けることができる。
【0026】
次に、開口枠1の縦方向部材としての方立部材3の具体的な取付構造について説明する。
【0027】
まず、鉛直度を出した状態で取り付けた縦枠部材2の上端に合わせて、開口枠1の上枠部材4を、躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wxに適宜手段(例えば、ネジ等の締結部材)を用いて取り付ける。
【0028】
このとき、躯体枠Wの縦方向躯体枠部材Wyが図3に示すように傾斜して施工されていると、図4(a)に示すように、躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wxの中心K1に対して、開口枠1の上枠部材4の中心D1が寸法dだけずれて取り付けられることとなる。
【0029】
一方、戸袋用下枠部材5は、その中心D2が、上枠部材4の中心D1と同一鉛直面内に位置するように取り付けられる。
このため、躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wxと戸袋用下枠部材5とに掛け渡すようにネジ等の締結部材B3によって取り付けられる方立部材3の固定用部材31は、縦枠部材2の固定用部材21と同様に傾斜した状態で固定されることとなる。
この場合、方立部材3の固定用部材31は、居室側と廊下側とにそれぞれ配設され、これに対応して、方立部材3も、居室側と廊下側とに分けた分割体30、30で構成し、それぞれ個別に、固定用部材31に取り付けるようにする。
【0030】
そして、方立部材3は、その下端の適所をネジ等の締結部材B4によって、固定用部材31及び戸袋用下枠部材5に固定するとともに、その上端部の適所を調整機構6を構成する位置決め部材60によって、固定用部材31に鉛直度を出した状態で取り付けるようにする。
【0031】
位置決め部材60は、上述のとおり、本実施例においては、固定用部材31に形成した雌ネジ穴6bと、雌ネジ穴6bに螺合するネジ6aとから構成し、図4(a)に示すように、躯体枠Wの横方向躯体枠部材Wxの中心K1に対して、開口枠1の上枠部材4の中心D1が寸法dだけずれて取り付けられている場合には、左側のネジ6aよりも右側のネジ6aのねじ込み量を大きくして、方立部材3の鉛直度を出すようにする。
【0032】
これによって、躯体枠Wの縦方向躯体枠部材Wyが傾斜して施工されていても、開口枠1の方立部材3を、鉛直度を出した状態で取り付けることができる。
【実施例2】
【0033】
図5に、本発明の開口枠の第2実施例を示す。
この開口枠1は、調整機構6を構成する位置決め部材60を、固定用部材21に形成した雌ネジ穴6bと、雌ネジ穴6bに螺合するネジ6cと、ネジ6cを固定用部材21から所望の長さLだけ突出した状態で固定するロックナット6dとから構成し、縦枠部材2(分割体20)を固定用部材21に取り付ける前に、ネジ6cの突出長さLを縦枠部材2が鉛直になるように調整し、縦枠部材2の内表面をネジ6cに当接させた状態で、縦枠部材2を締結部材B1によって固定用部材21に固定するようにしたものである。
【0034】
これによって、縦枠部材2の露出する面にネジ取付孔20aを形成する必要がなくなり、意匠的に優れた開口枠1を提供することができる。
【0035】
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、上記第1実施例と同様である。
【0036】
以上、本発明の開口枠について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の開口枠は、予め建造物に設置されている躯体枠の精度に左右されることなく、簡単に鉛直度を出して開口枠を取り付けることができることから、躯体枠の鉛直方向の精度が低い建築物等に対して好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の開口枠の第1実施例を示す正面図である。
【図2】図1のX1−X1断面図である。
【図3】図2のZ−Z断面図である。
【図4】(a)は図1のY−Y断面図、(b)は図1のX2−X2断面図である。
【図5】本発明の開口枠の第2実施例を示す、図1のX1−X1断面図に対応する部分断面図である。
【図6】従来の開口枠を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 開口枠
2 縦枠部材(縦方向部材)
21 固定用部材
3 方立部材(縦方向部材)
31 固定用部材
4 上枠部材
5 戸袋用下枠部材
6 調整機構
60 位置決め部材
W 躯体枠
Wx 横方向躯体枠部材
Wy 縦方向躯体枠部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の躯体枠に取り付けられる開口枠において、前記開口枠の縦方向部材を、前記躯体枠に、調整機構によって鉛直度を出した状態で取り付けたことを特徴とする開口枠。
【請求項2】
前記調整機構を、前記躯体枠に取り付けた固定用部材と、該固定用部材に対して、前記開口枠の縦方向部材の位置決めを行う位置決め部材とから構成したことを特徴とする請求項1記載の開口枠。
【請求項3】
前記開口枠の縦方向部材が、開口端部に配設する縦枠部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の開口枠。
【請求項4】
前記開口枠の縦方向部材が、戸袋の開口側端部に配設する方立部材であることを特徴とする請求項1又は2記載の開口枠。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate