説明

開口構造

【課題】壁体によって区分される二つの開口部を、簡易な構造でありながらも、容易に選択的に開放または閉塞し得る開口構造を提供する。
【解決手段】開口構造は、壁体17の両側に第1開口部21と第2開口部22とを設け、これら第1開口部及び第2開口部の一方を閉塞させたときには他方を開放させる構造とされるとともに、一側部31に取手31aを有した一枚のスライド扉30を前記壁体の背面17aに沿わせるように設け、かつ、前記第1開口部及び前記第2開口部のうちのいずれか一方を前記スライド扉が閉塞した状態で、このスライド扉の前記取手を含む一側部が前記壁体とこれらの厚さ方向で重合する構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住居等の建物内に設けられる開口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物内の開口部に、引戸等のスライド扉を設け、該開口部を開閉する構造とされた開口構造が提案されている。
例えば、下記特許文献1では、複数枚の戸板部材を連動させて開口部を閉塞または開放させる構造とされた引戸が提案されている。また、下記特許文献2では、外側レールに走行自在に配置された外側引戸と、内側レールに走行自在に配置された内側左引戸及び内側右引戸とを備えた三枚建て引戸が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−71964号公報
【特許文献2】特開2003−278463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物内空間の区画の多様化や趣向に応じて、例えば、玄関スペースを家人用と来客用とに壁体によって区分したり、収納空間や水廻り空間と居室空間とを壁体によって区分したりしたいという要望があった。また、壁体の両側に形成されるそれぞれの開口部を選択的に容易に開放または閉塞させ、その一方を出入口乃至は通路として選択的に使用したい場合があった。このような場合において、上記のような複数枚の戸板部材等からなる引戸では、少なくとも3枚の戸板部材が必要となり、また、それぞれの開口部を容易に選択的に開放または閉塞させることは困難なものであった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、壁体によって区分される二つの開口部を、簡易な構造でありながらも、容易に選択的に開放または閉塞し得る開口構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る開口構造は、壁体の両側に第1開口部と第2開口部とを設け、これら第1開口部及び第2開口部の一方を閉塞させたときには他方を開放させる構造とされるとともに、一側部に取手を有した一枚のスライド扉を前記壁体の背面に沿わせるように設け、かつ、前記第1開口部及び前記第2開口部のうちのいずれか一方を前記スライド扉が閉塞した状態で、このスライド扉の前記取手を含む一側部が前記壁体とこれらの厚さ方向で重合する構造とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記スライド扉を、上吊り構造としてもよい。
また、本発明においては、前記第1開口部及び前記第2開口部を、それぞれ略天井に至るように形成し、前記スライド扉を、上端部が天井に近接した位置となるように支持される構造としてもよい。
また、本発明においては、前記スライド扉の取手を、当該スライド扉の表面から凹むような形状とされた凹状取手としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る開口構造は、上述のような構成としたことで、壁体によって区分される二つの開口部を簡易な構造で、容易に選択的に開放または閉塞させて、いずれかの開口部を選択的に出入口乃至は通路として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示す一部破断概略横断面図である。
【図2】(a)は、図1(a)におけるX1−X1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図1(b)におけるX2−X2線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図3】(a)は、は、図1(a)におけるY1−Y1線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図1(b)におけるZ1部に対応させた概略拡大横断面図、(c)は、(a)におけるZ2部に対応させた概略拡大縦断面図、(d)は、(a)におけるZ3部に対応させた概略拡大縦断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、いずれも図2(b)におけるZ4部に対応させた一部切欠概略拡大正面図である。
【図5】(a)、(b)は、いずれも本発明の他の実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示す一部破断概略横断面図である。
【図6】(a)は、図5(a)におけるX3−X3線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図5(b)におけるX4−X4線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図7】(a)は、図5(b)におけるY2矢視に対応させた一部破断概略側面図、(b)、(c)は、いずれも同玄関構造が備える移動抑制部の一変形例を模式的に示し、図5(b)におけるZ5部に対応させた概略拡大横断面図である。
【図8】(a)、(b)は、いずれも本発明の更に他の実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示す一部破断概略横断面図である。
【図9】(a)は、図8(a)におけるX5−X5線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図、(b)は、図8(b)におけるX6−X6線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図10】(a)、(b)は、いずれも本発明の更に他の実施形態に係る開口構造の一例を模式的に示す一部破断概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の各実施形態では、屋外側から玄関に対面した状態において、手前側を前方、手前側の面を前面とし、その逆側をそれぞれ後方、背面(後面)として説明する。
さらに、各図では、外壁や内壁、各壁体、各扉等を模式的に示しており、後記する各空間、スペース等を区画するものであればどのような構造のものでもよい。
【0011】
図1〜図4は、第1実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係る開口構造は、図1に示すように、住居等の建物2の外壁3によって区画された建物内空間に適用された玄関構造1の一部として組み込んで適用した例を示している。
建物2の外壁3には、屋外と建物内空間とを連通させる玄関開口4が設けられており、この玄関開口4には、この玄関開口4を開閉する玄関扉5が設けられている。図例では、玄関扉5は、一側部が開口枠に蝶番等の連結部材で連結支持された開き戸を示している。なお、玄関扉5は、開き戸に限られず引戸等としてもよい。
【0012】
玄関扉5の後方側(建物内空間側)には、玄関スペース(第1玄関スペース(共通玄関スペース))を形成する第1玄関土間部13が設けられている。この第1玄関土間部13の手前側は、玄関扉5を設けた外壁3で区画されており、その左右両側は、それぞれ壁(図例では、外壁3、内壁7)によって区画されている。
この第1玄関土間部13の後方側には、図1、図2及び図3(a)に示すように、この第1玄関土間部13から段上がり状に形成された玄関フロアー部14と、この第1玄関土間部13に連なるように形成された第2玄関土間部15とが設けられている。図例では、第1玄関土間部13の右後方側に玄関フロアー部14を設け、左後方側に第2玄関土間部15を設けた例を示している。つまり、図1に示すように、平面視して略方形状で左右に長い第1玄関土間部13の左右一方側の略半分の部位を後方側に延設するようにして第2玄関土間部15を設け、これら各玄関土間部13,15によって平面視して略L字状の一連の玄関土間部を形成している。
【0013】
また、第1玄関土間部13と居室空間側との境界部には、この第1玄関土間部13の左右両側を区画する外壁3及び内壁7と、天井8と、玄関フロアー部14及び第2玄関土間部15とによって開口部20が区画形成されている。つまり、この開口部20は、左右両側が外壁3及び内壁7によって区画され、上側が天井8によって区画され、下側が玄関フロアー部14及び第2玄関土間部15によって区画されている。
また、この開口部20は、略中央に設けられた壁体17によって左右に仕切られており、この壁体17によって、その両側に、第1開口部としての来客用開口部21と、第2開口部としての家人用開口部22とを形成している。つまり、来客用開口部21と家人用開口部22とは、壁体17を挟んで横並びに設けられている。
また、本実施形態では、開口部20の外壁3側には、壁体17と左右で横並びとなるように第2壁体19が設けられている。
【0014】
壁体17は、玄関フロアー部14から天井8に至るまでの高さに形成されており、本実施形態では、家人用開口部22側の端面が、第2玄関土間部15から段上がり状に形成された玄関フロアー部14の立ち上り面と略同一平面状となるように設けられている。
第2壁体19は、玄関土間部13,15から天井8に至るまでの高さに形成されている。
このような壁体17及び第2壁体19を設けることで、開口部20の開口幅が異なる施工箇所に施工する場合にも、これらの幅寸法を適宜、開口幅に合わせて調整することで、後記するスライド扉30を、共通の扉幅とされたものを施工することができる。
なお、来客用開口部21側にも第2壁体19と同様の壁体を設けるようにしてもよい。
【0015】
来客用開口部21は、その左右両側が壁体17及び内壁7によってそれぞれ区画され、上側が天井8によって区画され、下側が玄関フロアー部14によって区画されている。
家人用開口部22は、その左右両側が壁体17及び第2壁体19によってそれぞれ区画され、上側が天井8によって区画され、下側が第2玄関土間部15によって区画されている。
つまり、これら来客用開口部21及び家人用開口部22は、それぞれ略天井8に至るように形成されており、本実施形態では、各開口部21,22の天面が天井面と略同一平面状となるように形成されている。なお、天井面や各壁面、各壁の端面等に開口枠等を付設するようにして設け、この開口枠の下面や内側面等を、各開口部の天面や内側面として把握するようにしてもよい。
【0016】
来客用開口部21の後方側の空間は、玄関フロアー部14を床部とする玄関ホールや廊下、リビングなどの居室空間9とされている。
家人用開口部22の後方(居室空間)側には、上記玄関スペースに連なり、第2玄関土間部15を含んだ第2玄関スペースとしての家人用玄関スペース10が形成されている。この家人用玄関スペース10は、壁体23,24及び壁体24に隣接する出入口25を開閉する扉26によって、来客用開口部21の後方(居室空間)側から区画されている。
図例では、家人用玄関スペース10は、後方側が後方壁体(内壁)23によって区画され、左右の一方側(居室空間9側)が後方壁体23に連なるように形成された側方壁体(内壁)24及び扉26によって区画され、左右の他方側が外壁3によって区画されている。
また、この家人用玄関スペース10の第2玄関土間部15の後方側には、この第2玄関土間部15から段上がり状に形成されるとともに、玄関フロアー部14に連なるように形成された第2玄関フロアー部16が設けられている。
なお、図1において、符号6は、靴収納や棚収納などを備えた収納部である。また、出入口25及び扉26の詳細については後述する。
【0017】
本実施形態に係る開口構造は、上記のように形成された来客用開口部21及び家人用開口部22の一方を閉塞させたときには、他方を開放させる構造とされた一枚のスライド扉30を備えている。つまり、本実施形態に係る開口構造は、スライド扉30を移動させて、来客用開口部21を閉塞させたときには、家人用開口部22が開放される一方、家人用開口部22を閉塞させたときには、来客用開口部21が開放される構造とされている。
このスライド扉30は、図1に示すように、壁体17の背面17a及び第2壁体19の背面に沿うようにスライド移動され、その上端部が天井8に近接した位置となるように支持される構造とされている。また、その下端面が玄関フロアー部14の上面に対面するように形成されている。つまり、このスライド扉30は、第1玄関土間部13から段上がり状に形成された玄関フロアー部14近傍から略天井8に至るような高さ寸法とされている。
また、本実施形態では、スライド扉30は、スライド移動される際に、その少なくとも一部が、玄関フロアー部14と上下で重合するように配置されている。
【0018】
上記のように本実施形態では、各開口部21,22を、それぞれ略天井8に至るように形成し、これらを開閉するスライド扉30を、上端部が天井8に近接した位置となるように支持される構造としている。従って、一方の開口部を開放させ、他方の開口部を閉塞させたときには、一方側は、高さ方向に大きく開放されて開口部としての印象を低減させることができる。また、他方側は、略天井8までの高さのスライド扉30によって壁のような外観となり、当該スライド扉30が目立ち難くなり、見栄えを向上させることができる。
【0019】
また、スライド扉30の一側部(図例では、来客用開口部21を開放する際における戸先側端部、家人用開口部22を開放する際における戸尻側端部)31に、取手31aを設けている。また、来客用開口部21及び家人用開口部22のうちのいずれか一方をスライド扉30が閉塞した状態で、このスライド扉30の取手31aを含む一側部31が壁体17とこれらの厚さ方向で重合する構造とされている。本実施形態では、図1(a)及び図2(a)に示すように、家人用開口部22を閉塞した状態で、スライド扉30の取手31aを含む一側部31が壁体17と厚さ方向で重合する構造としている。このような構造とすることで、玄関側(手前側)から見た状態では、スライド扉30の取手31aが壁体17によって隠蔽されて目立ち難くなり、見栄えを向上させることができる。また、スライド扉30を壁体17の背面17a側に配置しているので、壁体17の手前面に飾り棚を設置したり、額縁等を飾ったりでき、壁体17の手前面を有効に利用することができる。
この取手31aは、図3(b)に示すように、スライド扉30の両側表面に、厚さ方向にそれぞれ形成された凹部に嵌め込まれて固定された凹状取手31a,31aとされている。つまり、これら凹状取手31a,31aは、当該スライド扉30の表面から凹むような形状とされている。
このような凹状取手31aとすることで、壁体17の背面17aに沿うようにスライド移動されて開閉されるスライド扉30と壁体17の背面17aとの隙間(クリアランス)を、突出するようなハンドル等を設けた場合と比べて小さくすることができる。
【0020】
スライド扉30の上端部の扉幅方向(左右方向)両側端部近傍には、図2に示すように、ランナー部材33,33が連結固定されている。このランナー部材33は、公知のもので、図3(c)及び図4に示すように、スライド扉30の上端部に設けられたカップ部等に連結固定される連結固定部やこの連結固定部に回動自在に設けられた転動部(ローラー)等を備えている。本実施形態では、天井8に埋め込まれるようにして固定された上レール35に、ランナー部材33の転動部が転動自在に収容保持されて当該スライド扉30が開閉自在に支持される上吊り構造のスライド扉30とされている。
【0021】
このような上吊り構造のスライド扉30とすることで、下レールが不要となり、開放側下部の見栄えを向上させることができる。また、戸車等を下端に設けた下荷重構造とした場合において、玄関フロアー部と第2玄関土間部とに亘って開閉されるものとした場合には、段差が形成されるため、下レールの敷設が困難となる場合がある。また、第1玄関土間部に下レールを敷設することも考えられるが、見栄えが悪くなり、砂利等の噛み込み等の発生が考えられる。本実施形態のように、上吊り構造とすることで、開口部の下側に段差が形成されるような場合にも簡易な構造でスライド扉を設けることができる。
なお、上レール35を含む上枠等を天井8に埋め込むようにして固定する態様に代えて、上レールを含む上枠等を天井面に付設するようにして固定する態様としてもよい。
【0022】
上レール35は、図3(c)に示すように、上枠や天井下地等に固定される上板部と、この上板部の幅方向両側縁から垂れ下がるように連成された両側板部とを備え、これらによって下方に向けて開口する形状とされている。この上レール35の開口内にランナー部材33の転動部等が収容される。また、上レール35の両側板部の下端縁には、当該上レール35の幅方向内方側に向けて突出する案内片がそれぞれに設けられており、これら案内片に、ランナー部材33の転動部が転動自在に支持される。
なお、この上レール35には、図1(a)及び図2(a)に示すように、スライド扉30が家人用開口部22を閉塞した状態で、このスライド扉30の外壁3側(左側)への移動を防止するストッパー片等のストッパー部が設けられている。
【0023】
また、本実施形態では、この上レール35には、来客用開口部21及び家人用開口部22のうちのいずれか一方側の開口部を開放させる際におけるスライド扉30の戸尻側端部の他方側の開口部への移動を抑制する移動抑制部36が設けられている。本実施形態では、来客用開口部21を開放させる際におけるスライド扉30の戸尻側端部(他側部)32の家人用開口部22側への移動を抑制する移動抑制部36を設けた例を示している。
【0024】
移動抑制部36は、図3(c)及び図4(a)に示すように、本実施形態では、上レール35に設けられるとともに、スライド扉30のランナー部材33の移動を抑制するバネ部材36とされている。図例では、このバネ部材36は、上レール35の上板部に一端部が固定され、他端部が自由端とされ、その略中央部が下方に向けて突出するように屈曲された板バネ状とされている。このバネ部材36は、来客用開口部21を開放(家人用開口部22を閉塞)する方向に移動するスライド扉30の他側部32が、家人用開口部22と重合する略直前の位置で、ランナー部材33の連結固定部に略自然状態で屈曲部が当接する位置に設けられている(図4(b)参照)。
図4(b)に示すように、バネ部材36の屈曲部にスライド扉30のランナー部材33が当接した状態では、バネ部材36のバネ付勢力によって、来客用開口部21を開放(家人用開口部22を閉塞)する方向へのスライド扉30の移動が抑制される。この状態から更にスライド扉30を、上記方向に移動させれば、図4(c)に示すように、バネ部材36の弾性変形を伴い、スライド扉30のランナー部材33がバネ部材36を潜り抜けるようにして家人用開口部22を閉塞する方向へ移動する。つまり、バネ部材36のバネ付勢力に抗してスライド扉30のランナー部材33を上記方向へ移動させることで、スライド扉30の上記方向への移動の抑制が解除され、家人用開口部22が閉塞される。
【0025】
上記のような移動抑制部としてのバネ部材36を設けることで、閉塞する側の開口部、つまり、家人用開口部22を確認して来客用開口部21を開放させることができ、安全性を向上させることができる。
また、本実施形態では、上レール35に移動抑制部としてのバネ部材36を設けているので、当該移動抑制部を目立ち難くすることができる。また、ランナー部材33の移動を抑制するバネ部材36としているので、このバネ部材36の弾性変形を伴って開放させることができ、例えば、手動操作でロック解除等をするようなものと比べて、使い勝手が良い。
【0026】
なお、移動抑制部としてのバネ部材を上レールの上板部に設ける態様に代えて、上レールの両案内片に上方に向けて突出する山形状のバネ部材をそれぞれに設け、ランナー部材の転動部の転動を抑制することで、ランナー部材の移動を抑制する態様としてもよい。さらには、弾性変形可能とされたバネ部材によって移動抑制部を構成する態様に限られず、上レールの両案内片に、ランナー部材の転動部の転動を抑制する凹みや、バンプ状の突部などを設け、これらを移動抑制部としてもよい。
また、このような移動抑制部としては、上記方向へのスライド扉の移動を完全に防止するものではなく、手動操作でスライド開閉が可能な程度の規制を付与する程度のものとしてもよく、さらには、節度感を与える程度のものとしてもよい。
さらに、本実施形態では、来客用開口部21を開放させる際におけるスライド扉30の戸尻側端部(他側部)32の家人用開口部22側への移動を抑制する移動抑制部36を設けた例を示しているが、これに代えて、逆側への移動を抑制する移動抑制部を設けてもよい。つまり、家人用開口部22を開放させる際におけるスライド扉30の戸尻側端部(一側部)31の来客用開口部21側への移動を抑制する移動抑制部を設ける態様としてもよい。さらには、これら移動抑制部の両方を設ける態様としてもよい。
【0027】
また、スライド扉30の下端部には、図3(d)に示すように、下方(玄関フロアー部14)に向けて開口したガイド凹溝34が当該スライド扉30の扉幅方向に沿って形成されている。このガイド凹溝34には、スライド扉30の下部を開閉方向に沿ってガイドするガイド部としての固定ピン18が挿入(遊挿)される。この固定ピン18は、玄関フロアー部14の上面から上方に向けて突出するように設けられており、図1に示すように、開閉時に移動するスライド扉30のガイド凹溝34に、少なくとも一本が挿入されるように間隔を空けて複数個、設けられている。図例では、壁体17の後方側の二箇所に固定ピン18,18を設けた例を示している。
このようなガイド部としての固定ピン18を設けることで、上記のように上吊り構造とされたスライド扉30を開閉する際に、その下部がガイドされ、安定して開閉させることができる。
【0028】
なお、上記ガイド部としては、固定ピンに代えて、玄関フロアー部から出没自在とされたガイドピンを玄関フロアー部に埋め込むようにして設け、スライド扉のガイド凹溝にマグネット等を設ける態様としてもよい。このようなものでは、スライド扉が通過する際には、ガイドピンが磁力による吸着によって突出し、スライド扉のガイド凹溝に挿入され、開閉方向に沿うガイドが可能となる。一方、スライド扉が通過すれば、磁力の吸着がなくなり、ガイドピンが玄関フロアー部に没入して目立ち難くなり、見栄えをより向上させることができる。
また、図例では、見栄えを向上させる観点等から壁体17の後方側にガイド部を設けた例を示しているが、内壁7側の玄関フロアー部14の適所にも同様のガイド部を設けるようにしてもよい。
【0029】
家人用玄関スペース10の出入口25は、図1及び図3(a)に示すように、その前後両側が側方壁体24及び壁体17によって区画され、その上側及び下側は、来客用開口部21と同様、天井8及び玄関フロアー部14によって区画されている。つまり、この出入口25は、上記した来客用開口部21及び家人用開口部22と同様、略天井8に至るように形成されている。
この出入口25を開閉する扉26は、上記同様、側方壁体24の一方面(図例では、第2玄関フロアー部16側の面)に沿うようにスライド移動されるスライド扉26とされており、その上端部が天井8に近接した位置となるように支持される構造とされている。図例では、上記同様、天井8に埋め込まれるようにして設けられた上レール29に、上端部に設けられたランナー部材28の転動部が転動自在に収容保持されて支持される上吊り構造のスライド扉26とされている。なお、このスライド扉26の上レール29は、上記したスライド扉30の上レール35に干渉しないように設けられ、また、スライド扉26の手前側端面が、壁体17の背面17aに当接し得るように、手前側のランナー部材28を設けている。
【0030】
家人用玄関スペース10の出入口25及びスライド扉26を上記構造とすることで、上記同様、下レールが不要となり、出入口25の下部の見栄えを向上させることができる。また、スライド扉26を開放させれば、出入口25が高さ方向に大きく開放される一方、スライド扉26を閉塞させれば、略天井8までの高さのスライド扉26によって壁のような外観となり、当該スライド扉26が目立ち難くなり、見栄えを向上させることができる。
【0031】
なお、図3(a)において、符号27は、上記同様の取手である。
また、スライド扉26の下端部に、上記同様、玄関フロアー部14に向けて開口するガイド凹溝を設け、このガイド凹溝に玄関フロアー部14の適所に設けた上記同様の固定ピン等のガイド部を挿入させて、開閉方向に沿う移動をガイドするようにしてもよい。
さらに、家人用玄関スペース10の上記した出入口25及び扉26は、略天井までの高さとされたものに限られない。
さらにまた、図例では、スライド扉26を、側方壁体24の第2玄関フロアー部16側の面に沿わせて設けた例を示しているが、側方壁体24の玄関フロアー部14側の面に沿わせて設けるようにしてもよい。
また、側方壁体24の一方側の面に沿うようにスライド扉26を納める、いわゆるアウトセット納めに限られず、側方壁体に戸袋空間を設けてスライド扉26を収納可能とした戸袋納めとしてもよい。
さらに、上吊り構造とされたスライド扉に限られず、下荷重構造とされたものとしてもよい。
さらには、スライド開閉される扉に代えて、開き戸や折戸等を、家人用玄関スペース10と居室空間9とを連通させる出入口25に開閉可能に設けるようにしてもよい。
また、図例では、出入口25を側方壁体24と壁体17との間に設けた例を示しているが、この出入口を後方壁体23や側方壁体24の適所に設けるようにしてもよい。この場合は、側方壁体24の手前側端面が、スライド扉30の背面に近接した位置となるように側方壁体を設けるようにしてもよい。
【0032】
上記構造とされた本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1は、各スライド扉30,26を開閉させることで、以下のような態様で使用するようにしてもよい。
図1(a)及び図2(a)に示すように、スライド扉30をスライドさせて、来客用開口部21を開放させ、家人用開口部22を閉塞させる。この状態では、スライド扉30の両側部31,32が壁体17及び第2壁体19と厚さ方向で重合し、家人用開口部22が閉塞された状態となる。また、家人用玄関スペース10のスライド扉26をスライドさせて、出入口25を閉塞させる。
この状態では、玄関開口4と居室空間9とが、第1玄関土間部13上の共通玄関スペース及び来客用開口部21を介して連通し、来客用通路11が形成される。また、家人用玄関スペース10が、第1玄関土間部13上の共通玄関スペース及び居室空間9から概ね隠蔽された状態となる。
【0033】
一方、図1(b)及び図2(b)に示すように、家人用玄関スペース10のスライド扉26をスライドさせて、出入口25を開放させる。また、スライド扉30をスライドさせて、家人用開口部22を開放させ、来客用開口部21を閉塞させる。この状態では、スライド扉30の一側部31が内壁7に当接し、他側部32が壁体17と厚さ方向で重合し、来客用開口部21が閉塞された状態となる。
この状態では、玄関開口4と居室空間9とが、第1玄関土間部13上の共通玄関スペース、第2玄関土間部15上の家人用玄関スペース10及び出入口25を介して連通し、家人用通路12が形成される。
つまり、本実施形態では、各スライド扉30,26を開閉させることで、来客用通路11と家人用通路12とを選択的に容易に形成することができる。
【0034】
以上のように本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1によれば、一方の開口部21を来客用、他方の開口部22を家人用として利用でき、来客用の玄関スペースと家人用の玄関スペースとを見栄え良く区分することができる。つまり、一枚のスライド扉30によって、一方の開口部21を閉塞させることで、他方の開口部22が開放され、その開口部22を、家人用として使用できる。また、他方の開口部22を閉塞させることで、一方の開口部21が開放され、その開口部21を、来客用として使用でき、スライド扉30を、各開口部21,22を開閉する共通の扉として利用でき、状況に応じた選択的な利用が可能となる。
また、来客用開口部21を開放させ、家人用開口部22を閉塞することができるので、玄関側から第2玄関土間部15を含む家人用玄関スペース10が客人の視界に入り難くなり、見栄えを向上させることができる。
さらに、本実施形態では、二つの開口部21,22を選択的に開放または閉塞させるスライド扉30を設けているので、壁体17を挟んで各開口部21,22側にスライドさせる構造とすればよく、簡易な構造とできる。また、このスライド扉30をスライドさせることで、いずれかの開口部を容易に選択的に出入口乃至は通路として使用することができる。
【0035】
さらにまた、本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1では、第1玄関土間部13から連なるように形成された第2玄関土間部15を家人用玄関スペース10に設けているので、この第2玄関土間部15に履物等を並べることができる。また、キャスター付きのバッグや荷台、ゴルフバッグ等をスムーズに出し入れすることができ、これらを家人用玄関スペース10に収納することもできる。
また、本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1では、家人用開口部22の居室空間側に、来客用開口部21の居室空間9側から区画するように家人用玄関スペース10を設け、この家人用玄関スペース10の出入口25を開閉するスライド扉26を設けている。従って、上記のように来客用通路11を形成した状態では、この来客用通路11から家人用玄関スペース10が遮断され、居室空間9側からも家人用玄関スペース10を目立ち難くすることができ、見栄えを向上させることができる。また、このように来客用通路11から遮断することができるので、この家人用玄関スペース10を、収納スペースとして有効に利用することもできる。
【0036】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5、図6及び図7(a)は、第2実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0037】
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Aでは、開口部20を仕切る壁体、ガイド部及び移動抑制部の構成が上記第1実施形態とは主に異なる。
本実施形態では、壁体17Aを、スライド扉30の開閉方向に沿って、玄関フロアー部14から第2玄関土間部15に向けて突出するように設けている。また、第2壁体を設けておらず、家人用開口部22Aの左右両側を壁体17A及び外壁3によって区画している。このような壁体17Aを設ける構成とすることによって、玄関フロアー部14から第2玄関土間部15に向けて突出する壁体17Aの寸法を調整することで、家人用開口部22Aの配置の自由度を向上させることができる。
なお、上記第1実施形態において説明したような第2壁体を設けるようにしてもよい。
また、図例では、壁体17Aの第2玄関土間部15側に突出した下端が第2玄関土間部15から浮くように設けられた例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、この壁体の第2玄関土間部15側に突出した側の下部に、第2玄関土間部15と玄関フロアー部14との段差に応じた切欠を形成することで、その下端を玄関フロアー部14及び第2玄関土間部15に当接させて設けるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、壁体17Aの下端部に、スライド扉30の下部を開閉方向に沿ってガイドするガイド部としてのガイドレール18Aを設けている。このガイドレール18Aは、図5及び図6に示すように、壁体17Aの幅方向に沿ってその全幅に亘って設けられている。
ガイドレール18Aは、図7(a)に示すように、壁体17Aの下端部の背面に固定される固定片部18aと、この固定片部18aの下端縁から後方側に突出した水平片部18cと、この水平片部18cの後方側縁から上方に突出した係合片部18bとを備えている。
スライド扉30の下端部には、上記と略同様のガイド凹溝34Aが設けられており、このガイド凹溝34Aにガイドレール18Aの係合片部18bが係合し、スライド扉30がガイドされる。なお、スライド扉30が開閉される際に、ガイドレール18Aの係合片部18bの少なくとも一部が、スライド扉30のガイド凹溝34Aに係合する構成とされている。
このようなガイドレール18Aを壁体17Aに設けることで、図例のように、家人用開口部22Aを閉塞させた状態で、スライド扉30と玄関フロアー部14とが上下で重合しないような場合にも、スライド扉30の下部を安定してガイドすることができる。なお、家人用玄関スペース10の出入口25を開閉するスライド扉26の手前側側部の下端に、ガイドレール18Aに対応させた切欠を設けることで、このスライド扉26の手前側端面を壁体17Aの背面17aに当接させ得るようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、図7(a)に示すように、壁体17Aの一側端面(家人用開口部22A側の端面)17bに、移動抑制部としてのストッパー37を設けている。
このストッパー37は、壁体17Aの一側端面17bに基部が回動自在に連結固定された細長平板状とされており、上下方向に沿って間隔を空けて複数箇所に設けられている。また、このストッパー37は、壁体17Aの背面17aから後方に向けて突出した状態と、後方に向けて突出しない状態とに保持可能とされている。
本実施形態では、手動操作により回動させて上記突出した状態とすることで、ストッパー37の先端部と、スライド扉30の一側端面32bとが側面視において重合し、スライド扉30の他側部32(図5参照)の家人用開口部22A側への移動が抑制される。一方、上記突出しない状態とすることで、ストッパー37の先端部と、スライド扉30の一側端面32bとが側面視において重合せず、スライド扉30の他側部32(図5参照)の家人用開口部22A側への移動の抑制が解除される。
【0040】
このような移動抑制部によっても上記第1実施形態において説明した移動抑制部と概ね同様の効果を奏する。また、手動操作により解除が必要となるので、より安全性を向上させることができる。
なお、上記のような移動抑制部としてのストッパーを、壁体17Aの家人用開口部22A側の端面に設ける態様に代えて、または加えて、壁体17Aの来客用開口部21側の端面に設けるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、第2壁体を設けていないので、図6に示すように、スライド扉30の他側部32が家人用開口部22Aの左右一方側(図例では、左方側)を区画する外壁3に当接し得るように、スライド扉30を支持する上レール35Aを設けている。
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Aにおいても上記第1実施形態と概ね同様の効果を奏する。
なお、本実施形態において説明した上記第1実施形態とは異なる各構成と、上記第1実施形態において説明した対応する各構成とを適宜、組み替えて、または組み合わせて、適用するようにしてもよい。この場合、各構成を適宜、必要に応じて変形するようにしてもよい。
【0042】
次に、移動抑制部の一変形例について図7(b)、(c)に基づいて説明する。
本変形例では、壁体17Bの一側端部(家人用開口部22(22A)側の端部)の背面17a側に、移動抑制部38を設けた例を示している。この移動抑制部38は、壁体17Bの上下方向に沿って間隔を空けて複数箇所に設けられている。
この移動抑制部38は、壁体17Bの一側端部に設けられた後方側に向けて開口する凹部に埋め込まれるようにして固定されたケーシング38aと、このケーシング38a内に設けられ、壁体17Bの厚さ方向に弾性変形を伴い伸縮するバネ38bとを備えている。また、このバネ38bの後方側には、壁体17Bの背面17aから壁体17Bの厚さ方向に沿って進退可能とされた進退部が設けられており、この進退部の後方側端(先端)には、水平面域で回動自在とされたローラー38cが設けられている。
【0043】
この移動抑制部38は、図7(b)に示すように、スライド扉30と接触していない状態では、バネ38bによって後方側に付勢されたローラー38cを含む進退部が後方に突出し、ローラー38cとスライド扉30の一側端面32bとが側面視において重合する。これにより、スライド扉30の他側部32の家人用開口部22側への移動が抑制される。
上記状態からスライド扉30の更なる家人用開口部22側への移動に伴い、スライド扉30の一側端面32bがローラー38cに接触すれば、ローラー38cを含む進退部がバネ38bの弾性変形を伴い、ケーシング38aの内側(前方側)に向けて押し込まれる。これにより、上記移動の抑制が解除され、スライド扉30の前面上をローラー38cが転動しながら、スライド扉30の移動がなされる。
このような移動抑制部38を採用した場合にも上記各実施形態において説明した移動抑制部と概ね同様の効果を奏する。
また、ローラー38cを設けているので、スライド扉30の開閉がスムーズになされ、スライド扉30の背面への損傷等を防止することができる。
【0044】
なお、本変形例では、移動抑制部38を、壁体17Bの家人用開口部22(22A)側の端部に設けた例を示しているが、これに代えて、または加えて、壁体17Bの他方側の端部に設けるようにしてもよい。
また、本変形例では、進退部の先端に回動自在とされたローラーを設けた例を示しているが、進退部の先端を突湾曲形状として、スライド扉の端面及び前面に摺るようにして接するものとしてもよい。
さらに、本変形例において説明した移動抑制部は、上記各実施形態において説明した各移動抑制部に代えて、または加えて適用可能である。さらには、上記第1実施形態において説明した板バネ状の移動抑制部に代えて、本変形例において説明したようなローラーを備え、下方側にバネ等で付勢され、かつ上下に揺動可能とされた移動抑制部を、上レールの上板部等に設けるようにしてもよい。
【0045】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図8及び図9は、第3実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、上記各実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0046】
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Bでは、居室空間と家人用玄関スペースとの区画態様、及び開口部20に設けられる壁体の構成が上記各実施形態とは主に異なる。
本実施形態では、上記各実施形態と比べて、家人用玄関スペース10Aの左右の幅寸法を小さくした例を示している。図例では、第2玄関土間部15Aの左右の幅寸法を、第1玄関土間部13の略1/3程度とし、第2玄関土間部16A及び後方壁体23Aの左右の幅寸法もこれに応じた幅寸法としている。つまり、玄関フロアー部14Aの左右の幅寸法を、上記各実施形態と比べて大きく形成し、家人用玄関スペース10Aに隣接する居室空間9Aを大きく形成した例を示している。
【0047】
また、本実施形態では、来客用開口部21Aと家人用開口部22Bとを両側に形成する壁体17Cを、来客用開口部21A及び家人用開口部22Bの少なくとも一方側にスライド移動可能としている。本実施形態では、この壁体17Cを家人用開口部22B側にスライド移動可能とした例を示している。この壁体17Cは、図9に示すように、その上端部に上記同様のランナー部材17cが設けられており、このランナー部材17cを介して、上記同様の上レール39に支持される上吊り構造の可動間仕切りとされている。
この上レール39は、図9(a)に示すように、家人用開口部22B側にスライド移動された壁体17Cの一側部が外壁3に当接し得るように設けられている。この状態では、実質的には家人用開口部22Bが消滅した状態となる。また、本実施形態では、この状態において、この壁体17Cとスライド扉30とが厚さ方向で略合致するようにこれらの幅寸法を略同寸法としている。
【0048】
また、上レール39は、図9(b)に示すように、壁体17Cを来客用開口部21A側に位置させた状態では、壁体17Cの両側に来客用開口部21A及び家人用開口部22Bが形成されるように設けられている。また、この状態から、この壁体17Cの来客用開口部21A側への移動を防止するストッパー等が上レール39に設けられている。また、この状態では、上記第1実施形態と同様、壁体17Cの家人用開口部22B側の端面が、第2玄関土間部15A側の玄関フロアー部14Aの立ち上り面と略同一平面状となるように壁体17Cが配置される構造とされている。
なお、図示は省略するが、この壁体17Cの下端部には、上記同様のガイド凹溝が設けられており、このガイド凹溝に、玄関フロアー部14Aの適所に設けられた上記同様の固定ピン等のガイド部18(図8参照)が挿入され、壁体17Cの下部のガイドがなされる。
また、この壁体17Cの下端部には、上記同様のガイドレール18Bが設けられている。
また、本実施形態では、家人用玄関スペース10Aのスライド扉26の手前側端面がスライド扉30の背面に近接乃至は当接し得る構成とされている。
【0049】
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Bにおいても上記各実施形態と概ね同様の効果を奏する。
また、本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Bでは、図8(a)及び図9(a)に示すように、スライド扉30及び壁体17Cを家人用開口部22B側に向けて移動させることで、来客用開口部21Aの開口幅を大きくすることができる。これにより、来客用通路11を上記各実施形態と比べて効率的に大きくすることができる。
【0050】
なお、壁体17Cを支持する上レール39の適所に、この壁体17Cの家人用開口部22B側への移動を抑制する上記第1実施形態において説明したような移動抑制部を設けるようにしてもよい。または、壁体17Cの家人用開口部22B側への移動を防止する移動ストッパー部を設けるようにしてもよい。このような移動ストッパー部としては、例えば、玄関フロアー部14Aに係合穴を設け、壁体17Cの下端部に、この係合穴に係合する係合ピン等を下方に向けて進退自在に設けた構成としてもよい。
また、壁体17C及びスライド扉30に互いに係合する係合部等を設け、スライド扉30のスライド移動に連動して、壁体17Cがスライド移動されるものとしてもよい。
【0051】
さらに、本実施形態では、壁体17Cを、家人用開口部22Bの開口幅を小さくする方向へのみスライド移動可能とした例を示しているが、これに代えて、または加えて、家人用開口部22Bの開口幅を大きくする方向へスライド移動可能とされたものとしてもよい。つまり、図8(b)及び図9(b)に示す状態から、来客用開口部21Aの開口幅を小さくする方向へスライド移動可能とされたものとしてもよい。この場合、図例とは逆に、家人用玄関スペース10Aの左右の幅寸法を大きくし、玄関フロアー部14Aの左右の幅寸法を小さくするようにしてもよい。
さらにまた、本実施形態では、一方の開口部(図例では、家人用開口部22B)を実質的に消滅させるまでスライド移動可能とされた壁体17Cを例示しているが、その開口部の開口幅を狭めるように途中までスライド移動可能とされたものとしてもよい。
また、本実施形態において説明した上記各実施形態とは異なる各構成と、上記各実施形態において説明した対応する各構成とを適宜、組み替えて、または組み合わせて、適用するようにしてもよい。この場合、各構成を適宜、必要に応じて変形するようにしてもよい。
【0052】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図10は、第4実施形態に係る開口構造の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。
【0053】
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Cでは、家人用玄関スペース及び開口部20を仕切る壁体の構成が上記第1実施形態とは主に異なる。
本実施形態では、第2玄関フロアー部16Bを、第2玄関土間部15Bの後方側ではなく第2玄関土間部15Bの居室空間9側(図例では、右方側)に設けるようにして、第2玄関土間部15Bの奥行き寸法を、上記各実施形態と比べて大きくした例を示している。
このような構成とすることで、第2玄関フロアー部16Bをゆったりと快適に使用できるとともに、第2玄関土間部15Bを利用して、家人用玄関スペース10Bの第2玄関土間部15Bに自転車等の比較的に大きなものをスムーズに収納することもできる。
【0054】
また、本実施形態では、壁体17Dの幅寸法を、第2玄関フロアー部16Bに合わせて、上記第1実施形態において説明した壁体の幅寸法よりも大きく形成している。
また、本実施形態では、上記第2実施形態及び第3実施形態と同様、開口部20に第2壁体を設けておらず、家人用開口部22Cの左右両側を壁体17Dと外壁3とによって区画した例を示している。
本実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造1Cにおいても上記各実施形態と概ね同様の効果を奏する。
なお、本実施形態において説明した上記各実施形態とは異なる各構成と、上記各実施形態において説明した対応する各構成とを適宜、組み替えて、または組み合わせて、適用するようにしてもよい。この場合、各構成を適宜、必要に応じて変形するようにしてもよい。
【0055】
なお、上記各実施形態では、来客用開口部及び家人用開口部のスライド扉を、その下端面が玄関フロアー部に近接対面し、家人用開口部を閉塞した状態では、当該スライド扉と玄関土間部との間に隙間が形成されるものを例示しているが、このような態様に限られない。例えば、スライド扉を玄関フロアー部の手前側に配置し、その下端面が玄関土間部に近接対面する構造とされたものとしてもよい。この場合は、各開口部を形成する壁体等をスライド扉の更に手前側の玄関土間部から立設させるようにすればよい。また、この場合は、玄関土間部に上記同様の固定ピン等のガイド部を設けるようにしてもよく、玄関フロアー部の前方側の立ち上り面等に、上記同様のガイドレールをガイド部として設けるようにしてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、家人用開口部の居室空間側に、玄関スペースに連なる家人用玄関スペースを形成するように来客用開口部の居室空間側から区画する壁体及びこの壁体に隣接する出入口を開閉する扉を設けた例を示しているが、これらを設けないようにしてもよい。このようなものでも、家人用開口部を閉塞させれば、玄関側から第2玄関土間部や家人用通路などが視界に入り難くなり、見栄えを向上させることができる。
または、家人用玄関スペースを区画する壁体に出入口やこれを開閉する扉等を設けずに、このスペースを収納部としてもよい。つまり、玄関開口と居室空間とを連通させる第1開口部と、玄関開口と収納部とを連通させる第2開口部とを壁体の両側に設け、これらを選択的に開放または閉塞させる一枚のスライド扉を設けた構造としてもよい。
また、上記各実施形態では、第1玄関土間部の後方側に玄関フロアー部と第2玄関土間部とを設け、これらによって開口部の下側に段差が形成されるものを例示しているが、このような態様に限られない。例えば、平面視して略方形状とされた玄関土間部とし、その前後方向の途中部位を開口部として上記のようなスライド扉等を設け、その手前側を共通の玄関土間部、後方側の左右一方側を来客用の玄関土間部、他方側を家人用の玄関土間部として使用されるものとしてもよい。この場合には、その玄関土間部に上記同様のガイド部を設けるようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記各実施形態では、スライド扉を支持する上レールを下向きに開口し、両側板部に、ランナー部材の転動部を転動自在に支持する案内片を連成したものとしているが、このような態様に限られない。例えば、上レールは、ランナー部材の形状や構造に応じて、略L字状とされたものや、横向きに開口した略コ字状(略倒U字状)とされたものとしてもよい。
さらには、上記各実施形態では、上吊り構造とされたスライド扉を例示しているが、このような態様に限られず、下荷重構造とされたスライド扉を採用するようにしてもよい。この場合は、スライド扉の上端部に、ランナー部材に代えて、上レール等に係合する案内片やピボット等を設け、また、スライド扉の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドする下レール等を玄関土間部等に敷設するようにしてもよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、来客用開口部及び家人用開口部を、それぞれ略天井に至るように形成し、これらを選択的に開閉するスライド扉を、上端部が天井に近接した位置となるように支持されるものとした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、天井から垂れ下がるように設けられた壁によって各開口部の上側を区画し、その開口部に合わせたスライド扉としてもよい。
さらに、上記各実施形態に係る開口構造を組み込んだ玄関構造は、戸建住宅の玄関に限られず、集合住宅等の各戸の玄関への適用も可能である。
さらにまた、上記では、各実施形態に係る開口構造を玄関構造の一部に組み込んだ例を示しているが、このような態様に限られない。上記各実施形態に係る開口構造は、住居等の建物内の他の箇所にも適用可能である。例えば、和室と洋室、家人用作業室と応接室などの二つの居室空間、または収納空間と居室空間などの二つの空間にそれぞれが連通する開口部を壁体の両側に設け、これら開口部を選択的に開閉させたい場合等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
8 天井
17,17A,17B,17C,17D 壁体
17a 壁体の背面
21,21A 来客用開口部(第1開口部)
22,22A,22B,22C 家人用開口部(第2開口部)
30 スライド扉
31 一側部
31a 凹状取手(取手)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の両側に第1開口部と第2開口部とを設け、これら第1開口部及び第2開口部の一方を閉塞させたときには他方を開放させる構造とされるとともに、一側部に取手を有した一枚のスライド扉を前記壁体の背面に沿わせるように設け、かつ、前記第1開口部及び前記第2開口部のうちのいずれか一方を前記スライド扉が閉塞した状態で、このスライド扉の前記取手を含む一側部が前記壁体とこれらの厚さ方向で重合する構造とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記スライド扉は、上吊り構造とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1開口部及び前記第2開口部は、それぞれ略天井に至るように形成されており、前記スライド扉は、上端部が天井に近接した位置となるように支持される構造とされていることを特徴とする開口構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記スライド扉の取手は、当該スライド扉の表面から凹むような形状とされた凹状取手であることを特徴とする開口構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−46910(P2012−46910A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188092(P2010−188092)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】