説明

開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法

【課題】 コンピューターのディスプレーの枠体や、液晶テレビ或いはプラズマテレビ等のディスプレー用の枠体など、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体を、性状的に一定品質の合成樹脂成形品として一挙に成形することができる。
【解決手段】 内側に開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法であって、
前記枠体成形用の周部キャビティ300と、該周部キャビティ300に連通する溶融樹脂原料の注入ゲート400を備え、かつ、当該注入ゲート400が、前記開口部に対応する位置の領域全体に亘って設けられた溶融樹脂原料の貯留部401を備えた金型を用い、
この金型内に供給された溶融樹脂原料を前記貯留部401で一旦貯留し、この貯留部401から前記周部キャビティ300への溶融樹脂原料の注入分を閉型時に前記周部キャビティ300に注入して成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、額縁などの枠体、コンピューターのディスプレーの枠体や、液晶テレビ或いはプラズマテレビ等のディスプレー用の枠体など、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体が提供されている。そして、その成形は、枠体成形用の金型の周部キャビティに溶融樹脂原料の注入ゲートを直接設け、周部キャビティをいわば溶融原料の湯の流路として当該周部キャビティに溶融原料を打ち込み、成形する方法であった。
【0003】
しかしながら、かかる方法で成形すると、周部キャビティがいわば溶融原料の湯の流路として用いられるため、その流れに応じた成形品が成形され、また注入ゲート付近と、当該注入ゲートより最も遠い部分の溶融原料の性状は相違するため、性状的には一定品質の合成樹脂成形品を成形し難い問題があった。特に、周部キャビティの途中で一方側から流れてきた溶融原料と他方側から流れてきた溶融原料とがぶつかり合う部位ではその傾向が大きい。
かかる点は、ディスプレーの面が大きくなればなるほど、枠体の大きさや面積を小さくする成形品も多く提供されており、かかる問題の解決はきわめて重要な課題といえる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、額縁などの枠体、コンピューターのディスプレーの枠体や、液晶テレビ或いはプラズマテレビ等のディスプレー用の枠体など、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体を、性状的に一定品質の合成樹脂成形品として一挙に成形することができる成形方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、
本請求項1の発明は、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法であって、
前記枠体成形用の周部キャビティと、該周部キャビティに連通する溶融樹脂原料の注入ゲートを備え、かつ、当該注入ゲートが、前記開口部に対応する位置の領域全体に亘って設けられた溶融樹脂原料の貯留部を備えた金型を用い、
この金型内に供給された溶融樹脂原料を前記貯留部で一旦貯留し、この貯留部から前記周部キャビティへの溶融樹脂原料の注入分を閉型時に前記周部キャビティに注入して成形することを特徴とする開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法である。
【0006】
本請求項2の発明は、周部キャビティに連通する注入ゲートが、前記貯留部から前記周部キャビティへの連通を遮断する閉鎖部を備え、
当該閉鎖部が、閉型後で周部キャビティへの溶融樹脂原料の注入時に前記貯留部から軸方向に移動して当該貯留部の閉鎖を解除し、当該貯留部から溶融樹脂原料を周部キャビティ内に注入し、
注入後、当該閉鎖部が軸方向に戻り、前記貯留部を閉鎖して、成形することを特徴とする請求項1記載の、開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法である。
【0007】
本請求項3の発明は、前記閉鎖部が、金型内に断続的に供給される溶融樹脂原料の押し出し圧力で閉鎖を解除する請求項2記載の、開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、周部キャビティに前記溶融樹脂原料の注入路を設けるのではなく、前記開口部に対応する位置の領域全体に亘って設けられた溶融樹脂原料の貯留部を備えた金型を用い、この金型内に供給された溶融樹脂原料を前記貯留部で一旦貯留し、この貯留部から前記周部キャビティへの溶融樹脂原料の注入分だけを閉型時に前記周部キャビティに一度に注入して成形する方法であるため、従来のように金型内の位置によって溶融原料の性状が異なるということが回避されるため、性状的に一定品質の合成樹脂成形品をワンショットで一挙に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明を詳述する。ただし、本発明は、図面に示された態様に限られるものではない。
【0010】
図1は本発明にかかるコンピューターの液晶ディスプレー用枠体の概略平面図である。1は合成樹脂の枠体、2はこの枠体をはめ込む液晶ディスプレー用の開口部である。
【0011】
図2は上記合成樹脂製枠体を製造する金型を示す概略半断面図である。図2において、100は金型の一方の固定型、200は当該金型の他方の移動型である。CLは中心軸を示す仮想線である。PLは固定型100に対する移動型200の合わせ位置(割り位置)である。
【0012】
この金型には、前記枠体成形用の周部キャビティ300と、該周部キャビティ300に連通する溶融樹脂原料の注入ゲート400を備えている。当該注入ゲート400は、前記開口部に対応する位置の領域全体に亘って設けられた溶融樹脂原料の貯留部401を備えている。
従って、矢印Aに示すように、この金型内に供給路500を通じて供給されたされた溶融樹脂原料を前記貯留部401で一旦貯留し、この貯留部401から前記周部キャビティ300への溶融樹脂原料の注入分を閉型時に前記周部キャビティ300に注入して成形する。
【0013】
なお、本実施例では特に、前記注入ゲート400が、前記貯留部401から前記周部キャビティ300への連通を遮断する閉鎖部600を備えている。そしてこの閉鎖部600は、固定型100に対して当該固定型100方向に向かう力で付勢されており、かつ前記貯留部401に断続的に供給される溶融樹脂原料の押し出し圧力でこの前記固定型100方向に向かう力を押圧する構成となっている。
従って、当該閉鎖部600は、前記溶融樹脂原料が前記供給路500から貯留部401に断続的に供給されると、その供給に応じて貯留部401に対して閉鎖が解除され、貯留部401の周域から溶融樹脂原料がキャビティ内に一挙に注入される。注入後は、当該閉鎖部600が軸方向を前記貯留部401に戻って前記貯留部401を閉鎖し、成形することになる。なお、601は、閉鎖部600に対して固定型100方向に向かう力を与える付勢手段である。
【0014】
本実施形態の方法は、上記のとおりであるので、額縁などの枠体、コンピューターのディスプレーの枠体や、液晶テレビ或いはプラズマテレビ等のディスプレー用の枠体など、内側に開口部を有する合成樹脂製枠体を、性状的に一定品質の合成樹脂成形品として一挙に成形することができる。特に、ディスプレーの面が大きくなり、それに応じて枠体の大きさや面積を小さくする成形品を製造する必要がある場合でも、性状的に一定品質の合成樹脂成形品を一挙に成形することができる点で従来には全く提案されてこなかった格別顕著な作用効果を奏する合成樹脂製品の成形方法である。なお、前記合成樹脂原料としては格別限定されず、種々の樹脂原料を用いることができる。また各種の顔料、染料などの着色剤を用いることも可能である。特にメリック調の枠体とする場合はアルミニウム粉などの金属粉顔料を配合することもできる。なお、特に本発明では、着色剤を配合しない等、通常のインジェクション成形において樹脂の流れが現れやすかった透明又は半透明の合成樹脂の枠体においては、本発明によっる成形方法は格別好ましい方法である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、額縁などの枠体、コンピューターのディスプレーの枠体や、液晶テレビ或いはプラズマテレビ等のディスプレー用の合成樹脂製枠体の成形方法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるコンピューターの液晶ディスプレー用枠体の概略平面図である。
【図2】上記合成樹脂製枠体を製造する金型を示す概略半断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 枠体
2 開口部
100 固定型
200 移動型
300 周部キャビティ
400 注入ゲート
401 貯留部
500 供給路
600 閉鎖部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法であって、
前記枠体成形用の周部キャビティと、該周部キャビティに連通する溶融樹脂原料の注入ゲートを備え、かつ、当該注入ゲートが、前記開口部に対応する位置の領域全体に亘って設けられた溶融樹脂原料の貯留部を備えた金型を用い、
この金型内に供給された溶融樹脂原料を前記貯留部で一旦貯留し、この貯留部から前記周部キャビティへの溶融樹脂原料の注入分を閉型時に前記周部キャビティに注入して成形することを特徴とする開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法。
【請求項2】
周部キャビティに連通する注入ゲートが、前記貯留部から前記周部キャビティへの連通を遮断する閉鎖部を備え、
当該閉鎖部が、閉型後で周部キャビティへの溶融樹脂原料の注入時に前記貯留部から軸方向に移動して当該貯留部の閉鎖を解除し、当該貯留部から溶融樹脂原料を周部キャビティ内に注入し、
注入後、当該閉鎖部が軸方向に戻り、前記貯留部を閉鎖して、成形することを特徴とする請求項1記載の、開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法。
【請求項3】
前記閉鎖部が、金型内に断続的に供給される溶融樹脂原料の押し出し圧力で閉鎖を解除する請求項2記載の、開口部を有する合成樹脂製枠体の成形方法。



【図1】
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【図2】
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