説明

開環重合用固体酸触媒及び開環重合方法

【課題】環状エーテルを温和な条件下で開環重合してポリエーテルを高収率で得ることができ、しかも、回収再使用が容易な開環重合用固体酸触媒及び開環重合方法を提供する。
【解決手段】固体酸触媒は、環状エーテルの開環重合用であって、ケイ素原子(Si)と希土類金属原子(M)とのモル比(Si/M)が20〜1/3である希土類金属シリケートからなる。開環重合方法は、前記希土類金属シリケート固体酸触媒の存在下で環状エーテルを開環重合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環重合用固体酸触媒及び開環重合方法に関する。本発明によれば、環状エーテルを温和な条件下で開環重合してポリエーテルを高収率で得ることができ、しかも、使用する触媒が固体であるので、回収再使用が容易である。
【背景技術】
【0002】
鎖状オレフィンやビニルモノマーの重合や重縮合の研究開発には、長い歴史があり、膨大な研究と技術が蓄積されているのに対し、環状エーテルなどの開環重合の歴史は比較的浅く、研究が盛んに行われるようになったのは1950年代からである。しかしながら、開環重合は、他の重合には見られない特徴をもち、現在は工業的にも重要な位置を占めている。例えば、開環重合性モノマーは、通常のビニル重合性モノマーと比較して、重合時の体積収縮率が小さいことから、各種充填材料、接着材料、又は成形材料の硬化時の収縮率の低減化に応用が期待されている。
【0003】
環状エーテルモノマーを開環重合してポリエーテルを製造する際に、触媒として希土類金属有機化合物を用いる技術が知られている(特許文献1)。しかしながら、前記特許文献1に記載の触媒は液体状であるため、重合反応後に回収して再使用することは極めて困難である。また、重合反応を高温下で行う必要があり、前記特許文献1に記載の実施例1〜8では、130℃にて開環重合を行っている。
【0004】
一方、無機固体である希土類金属シリケートを触媒として使用することは知られており、具体的には、エポキシ基の開環付加反応、アルドール反応、又はマイケル付加反応に用いることが知られている。しかしながら、環状エーテルモノマーを開環重合してポリエーテルを製造する際の触媒として、前記の無機固体である希土類金属シリケートを用いることは、従来全く知られていなかった。
【特許文献1】特開2001−55439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、温和な条件下で環状エーテルモノマーを開環重合してポリエーテルを製造することができ、しかも、重合反応終了後に分離回収が可能な固体触媒を開発するために鋭意研究していたところ、固体酸触媒である希土類金属シリケートが、前記の課題を解決することができることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、
環状エーテルの開環重合用であって、ケイ素原子(Si)と希土類金属原子(M)とのモル比(Si/M)が20〜1/3である希土類金属シリケート固体酸触媒に関する。
本発明の好ましい態様の固体酸触媒は、ケイ素化合物と希土類金属化合物との反応液に中和剤を加えて得られた希土類金属シリケートゲルを焼成して得られた固体酸触媒からなる。中和剤は、アルカリ金属水酸化物水溶液又はアンモニア水が好ましい。
本発明の固体酸触媒の好ましい態様においては、希土類金属は、スカンジウム、イットリウム、又はランタン系列元素である。
本発明の固体酸触媒の好ましい態様においては、環状エーテルは3員環〜8員環である。
また、本発明は、前記の固体酸触媒の存在下で環状エーテルを開環重合することを特徴とする、ポリエーテルの製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固体酸触媒は、温和な条件下で環状エーテルモノマーを開環重合してポリエーテルを製造することができ、しかも、重合反応終了後に分離回収することができるので、再使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の固体酸触媒によって開環重合を行う場合に、モノマーとして用いる環状エーテルは、特に限定されないが、3員環から8員環であることが好ましく、特には、一般式(1):
【化1】

〔式中、Aは、直接結合、−C(R)(R)−基、又は−C(R)(R)−C(R)(R10)−基であり、R、R、R、R、R、R、R、R、R、又はR10は、それぞれ独立して、同じか又は異なり、水素原子、場合により置換されていることのある炭素原子数1〜12のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、(メタ)アクリレート基、ハロゲン原子、フェニル基、又はアミノ基である〕
で表される環状エーテルである。
【0009】
前記一般式(1)において、アルキル基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、アルデヒド基、カルボニル基、エステル基、又はエーテル基を挙げることができる。
【0010】
前記一般式(1)で表される環状エーテルにおいて、3員環の環状エーテルとしては、エポキシドが好ましく、4員環の環状エーテルとしてはオキセタンが好ましく、5員環の環状エーテルとしては、テトラヒドロフランが好ましく、6員環の環状エーテルとしては、テトラヒドロピランが好ましく、7員環の環状エーテルとしては、オキセパンが好ましく、そして8員環の環状エーテルとしては、オキソカンが好ましく、前記一般式(1)で表される環状エーテルとしては、特に、オキセタンが好ましい。なお、環状エーテルとして5員環化合物を用いる場合には、前記の4員環化合物及び/又は3員環化合物を共存させることが好ましい。
【0011】
本発明による希土類金属シリケート固体酸触媒は、環状エーテルの開環重合用であって、ケイ素原子(Si)と希土類金属原子(M)とのモル比(Si/M)が20〜1/3であり、好ましくは9〜2である。前記モル比(Si/M)が20を超えるか、あるいは、1/3未満であると、反応収率が低下することがある。
【0012】
ここで、希土類金属は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、又はランタン系列元素である。また、ランタン系列元素とは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、又はルテチウム(Lu)である。希土類金属としては、イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、又はネオジム(Nd)が好ましい。
【0013】
本発明による固体酸触媒は、ゾルーゲル法によって製造することができる。すなわち、ケイ素化合物と希土類金属化合物との反応液に中和剤を加えて得られた希土類金属シリケートゲルを焼成して固体酸触媒を得る。好適な例としては、ケイ酸水溶液と希土類金属ハロゲン化物水溶液との反応液に中和剤を加えて希土類金属シリケートゲルを調製し、得られたゲルを焼成して固体酸触媒を得ることができる。
ケイ酸水溶液は、例えば、メタケイ酸アルカリ金属塩水溶液に酸水溶液(例えば、塩酸水溶液)を加えることによって調製することができる。
希土類金属ハロゲン化物としては、塩化物、臭素化物、又はヨウ素化物を用いることができ、これらの希土類金属ハロゲン化物を蒸留水などに溶解して希土類金属ハロゲン化物水溶液を調製することができる。また、希土類トリフラート化合物を酸水溶液に加えることによって調整することもできる。
【0014】
ケイ酸水溶液と希土類金属ハロゲン化物水溶液との混合は、常温にて、好ましくは攪拌下に実施することができ、pHが7程度になった時点で反応が終了する。
ケイ酸塩と希土類金属ハロゲン化物との反応液に、中和剤を加えて、pH値を中性に調整すると、希土類金属シリケートゲルが沈殿する。中和剤の好適な例としては、アルカリ金属水酸化物水溶液又はアンモニア水を用いることができ、アンモニア水を用いるのが好ましい。
こうして得られた希土類金属シリケートゲルを、不活性ガス(例えば、アルゴンガス又は窒素ガス)の雰囲気下で、300℃〜1000℃において、30分〜6時間、焼成することによって目的とする固体酸触媒を得ることができる。
【0015】
本発明による固体酸触媒は、ルイス酸点を発現している。一般に、酸触媒の酸点が、ブレンステッド酸であるのか、あるいはルイス酸であるのかの確認は、例えば、触媒にピリジンを吸着させ、吸着状態のピリジンの赤外吸収スペクトルを観察することによって実施することができる。ブレンステッド酸点が存在する場合は、ピリジニウムイオンの吸収帯が観察されるのに対し、ルイス酸点が存在する場合には、配位結合したピリジンの吸収帯が観察される。本発明による固体酸触媒の酸点については、前記のピリジン吸着法によって、ルイス酸であることが確認されている。
【0016】
本発明による固体酸触媒を用いると、環状エーテルを温和な条件下で開環重合してポリエーテルを高収率で得ることができる。具体的には、重合温度は、0℃〜150℃であり、特に加圧する必要はない。加圧及び/又は加熱することによって、開環重合反応を促進することができる。
【0017】
反応溶媒としては、不活性な極性溶媒又は非極性溶媒を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、塩化メチレン、アセトン、又はアセトニトリルを用いることができ、非極性溶媒としては、例えば、ベンゼンを用いることができる。これら重合溶媒は、充分に脱水及び/又は脱気してから用いるのが好ましい。重合温度域において気体状態にある3員環化合物の重合は、気流中で行うこともできる。
【0018】
本発明の開環重合反応は、酸素を排した条件で行うのが好ましい。具体的には、窒素、ヘリウム、又はアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。重合圧力は、前記の通り、常圧下で行うことができるが、加圧又は減圧下で実施することもできる。
【0019】
本発明の開環重合反応において使用する固体酸触媒の量は、開環重合反応が充分に進行する量である限り限定されないが、例えば、モノマーに対して固体酸触媒が、好ましくは3〜20mol%、より好ましくは5〜10mol%で使用することができる。
【0020】
本発明の開環重合反応においては、重合反応中止剤として、低級アルコール(例えば、メチルアルコール、又はエチルアルコール)又はブチルアミン等を、例えば、モノマーに対し10mol%以上の量で添加して、開環重合反応を終了させることができる。
【0021】
本発明の開環重合反応によって、ポリエーテルを得ることができる。得られたポリエーテルは、例えば、反応混合液から吸引ろ過や濃縮によって精製することができる。
また、反応混合液から吸引ろ過や濃縮によって、本発明による固体酸触媒を分離し、回収することができる。こうして回収された固体酸触媒を300〜1000℃程度で、30分〜6時間程度焼成すると、吸着された有機物を取り除くことができ、再使用が可能となる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
《触媒合成例1:イットリウムシリケートの合成》
(1)合成
蒸留水(100mL)にメタケイ酸ナトリウム(NaSiO・9HO;28.4g,0.10mol)を溶解した後、6M(1M=1mol/L)塩酸(100mL)を加えてケイ酸水溶液を得た。更に、塩化イットリウム(YCl・6HO;15.17g,0.05mol)を蒸留水(50mL)に溶解させた水溶液を加えた後、30.0%アンモニア水を用いて溶液のpH値が7になるように調整した。この際に析出したゲルを吸引ろ過した後、蒸留水(1000mL)及びアセトン(500mL)で洗浄し、100℃条件下で24時間乾燥を行い、白色無定形のイットリウムシリケートゲル11.14gを得た。
【0024】
(2)分析
得られたイットリウムシリケートについて下記に記す手順で重量分析を行い、イットリウムシリケート中のイットリウム金属及びケイ素の含有量を求めた。
イットリウムシリケートゲル所定量(0.3g)の試料を白金るつぼにとり、過塩素酸(3mL)を加え、電気コンロ上で加熱して蒸発乾固させた。この乾固体を電気炉中にて1200℃で1時間加熱した後、ケイ素及びイットリウム金属の酸化物として秤量した。次に、フッ化水素酸(3mL)と過塩素酸(1mL)の混合溶液を加え、同様にして蒸発乾固させた後、電気炉中にて1200℃で1時間加熱した。この操作により、ケイ素成分はフッ化ケイ素として揮発するとみなした。更に、イットリウムの酸化物として秤量し、得られた酸化物は、X線解析により酸化イットリウムであることを確認した。以上の結果から試料中のケイ素及びイットリウム金属の含有量を測定した。
イットリウムシリケート中のイットリウム金属の含有量(mol/g)の算出は、以下の計算式(1):
=〔W/(M×V)〕/W (1)
〔式中、Cは、試料中のイットリウム金属の含有量(mol/g)であり、Wは、イットリウムシリケート中のYの重量であり、Mは、Yの分子量であり、Vは、イットリウムの価数であり、そしてWは、重量分析に使用した試料の重量である〕
によって行った。
同様に、イットリウムシリケート中のケイ素の含有量(mol/g)の算出は、以下の計算式(2):
=〔W/(M×V)〕/W (2)
〔式中、Cは、試料中のケイ素の含有量(mol/g)であり、Wは、イットリウムシリケート中のSiOの重量であり、Mは、SiOの分子量であり、Vは、ケイ素の価数であり、そしてWは、重量分析に使用した試料の重量である〕
によって行った。
その結果を表1に示す。
【0025】
《触媒合成例2:イットリウムシリケートの合成》
塩化イットリウムの使用量を5.16g(0.017mol)とすること以外は、触媒合成例1と同じ手順を繰り返すことによって、イットリウムシリケート7.89gを合成した。また、イットリウムシリケート中のイットリウム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0026】
《触媒合成例3:イットリウムシリケートの合成》
塩化イットリウムの使用量を3.34g(0.011mol)とすること以外は、触媒合成例1と同じ手順を繰り返すことによって、イットリウムシリケート5.60gを合成した。また、イットリウムシリケート中のイットリウム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0027】
《触媒合成例4:ネオジムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化ネオジム17.93g(0.05mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってネオジムシリケート14.33gを合成した。また、ネオジムシリケート中のネオジム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0028】
《触媒合成例5:ネオジムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化ネオジム5.97g(0.017mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってネオジムシリケート8.18gを合成した。また、ネオジムシリケート中のネオジム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0029】
《触媒合成例6:ネオジムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化ネオジム3.98g(0.011mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってネオジムシリケート5.96gを合成した。また、ネオジムシリケート中のネオジム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0030】
《触媒合成例7:サマリウムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化サマリウム18.24g(0.05mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってサマリウムシリケート11.41gを合成した。また、サマリウムシリケート中のサマリウム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0031】
《触媒合成例8:サマリウムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化サマリウム6.20g(0.017mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってサマリウムシリケート7.92gを合成した。また、サマリウムシリケート中のサマリウム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0032】
《触媒合成例9:サマリウムシリケートの合成》
塩化イットリウム9.75g(0.05mol)に代えて塩化サマリウム4.05g(0.011mol)を用いること以外は、触媒合成例1(1)と同じ手順を繰り返すことによってサマリウムシリケート5.75gを合成した。また、サマリウムシリケート中のサマリウム金属及びケイ素の含有量についても触媒合成例1と同じ手順で測定した。
その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
《重合実施例1:イットリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
【化2】

前記触媒合成例1で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=5.49×10−3mol/g,Y=2.59×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.356gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0035】
《重合実施例2:イットリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例2で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=8.69×10−3mol/g,Y=1.01×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.34gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0036】
《重合実施例3:イットリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例3で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=11.68×10−3mol/g,Y=1.76×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.332gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0037】
《重合実施例4:ネオジムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例4で製造したネオジムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたネオジムシリケート(Si=2.73×10−3mol/g,Nd=1.21×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、23℃にて6時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.30gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0038】
《重合実施例5:ネオジムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例5で製造したネオジムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=9.78×10−3mol/g,Nd=1.47×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.24gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0039】
《重合実施例6:ネオジムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例6で製造したネオジムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=11.71×10−3mol/g,Nd=1.11×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.24gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0040】
《重合実施例7:サマリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例7で製造したサマリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたサマリウムシリケート(Si=2.74×10−3mol/g,Sm=1.43×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、23℃にて6時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.156gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0041】
《重合実施例8:サマリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例8で製造したサマリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=8.61×10−3mol/g,Sm=1.56×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.24gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0042】
《重合実施例9:サマリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
前記触媒合成例9で製造したサマリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=14.14×10−3mol/g,Sm=1.21×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、25℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.144gを得た。反応生成物は、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)、H−NMR、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0043】
《重合実施例10:イットリウムシリケートによる開環重合(アセトン溶媒中)》
前記触媒合成例1で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=5.49×10−3mol/g,Y=2.59×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのアセトン4mLを加え、23℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.212gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0044】
《重合実施例11:イットリウムシリケートによる開環重合(塩化メチレン溶媒中)》
前記触媒合成例1で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=5.49×10−3mol/g,Y=2.59×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としての塩化メチレン4mLを加え、23℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.28gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0045】
《重合実施例12:イットリウムシリケートによる開環重合(アセトニトリル溶媒中)》
前記触媒合成例1で製造したイットリウムシリケートゲルを窒素雰囲気下において700℃にて3時間で焼成して得られたイットリウムシリケート(Si=5.49×10−3mol/g,Y=2.59×10−3mol/g)を触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのアセトニトリル4mLを加え、23℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.20gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0046】
《重合実施例13:回収イットリウムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
重合実施例1で使用したイットリウムシリケートを、吸引ろ過によって分離し回収した。回収したイットリウムシリケートを500℃で1時間程度焼成し、吸着された有機物を取り除いた。窒素雰囲気下において、上記イットリウムシリケートを触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、23℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.392gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0047】
《重合実施例14:回収ネオジムシリケートによる開環重合(ベンゼン溶媒中)》
重合実施例4に使用したネオジムシリケートを、吸引ろ過によって分離し回収した。回収したネオジムシリケートを、500℃で1時間程度焼成し、吸着された有機物を取り除いた。窒素雰囲気下において、上記ネオジムシリケートを触媒量として10mol%の量で使用し、トリメチレンオキシド0.4g(6.89×10−3mol)及び溶媒としてのベンゼン4mLを加え、23℃にて4時間攪拌した後、メチルアルコール10mLを加えることによって反応を停止させた。反応終了後、吸引ろ過及び濃縮によって反応生成物0.372gを得た。反応生成物は、FT−IR、H−NMR、及びGPCにより構造解析を行った。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2において、Mnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、Mw/Mnは、ポリマーの分子量分布を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の開環重合用固体酸触媒によると、環状エーテルを温和な条件下で開環重合してポリエーテルを高収率で得ることができ、しかも、使用する触媒が固体であるので、回収再使用が容易である。従って、各種充填材料、接着材料、又は成形材料の製造工程において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状エーテルの開環重合用であって、ケイ素原子(Si)と希土類金属原子(M)とのモル比(Si/M)が20〜1/3である希土類金属シリケート固体酸触媒。
【請求項2】
ケイ素化合物と希土類金属化合物との反応液に中和剤を加えて得られた希土類金属シリケートゲルを焼成して得られた固体酸触媒からなる、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
中和剤がアルカリ金属水酸化物水溶液又はアンモニア水である、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
希土類金属が、スカンジウム、イットリウム、又はランタン系列元素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
環状エーテルが3員環〜8員環である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒の存在下で環状エーテルを開環重合することを特徴とする、ポリエーテルの製造方法。

【公開番号】特開2006−131678(P2006−131678A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319764(P2004−319764)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月25日から27日 社団法人高分子学会主催の「第53回 高分子学会年次大会」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月15日から17日 社団法人高分子学会主催の「第53回 高分子討論会」において文書をもって発表
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(504408649)
【Fターム(参考)】