説明

開閉動作補助装置

【課題】被捕捉体の移動による力を効率良く利用して被捕捉体を捕捉できる捕捉引込機構を備えた開閉体閉止装置を提供する。
【解決手段】引き戸を閉める際には、第1キャッチャガイド40−1が第1被捕捉体3−1に押されて、第1キャッチャ30−1に対しそのフック部31−1の基部側に相対的に移動することにより、引き戸を開く際には、第2キャッチャガイド40−2が第2ガイド部材3−2に押されて、第2キャッチャ30−2に対しその基部側に相対的に移動することにより、各キャッチャガイド40−1、40−2のガイド部42が各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2の先端部に作用して、フック部31−1、31−2を姿勢変化させ捕捉状態に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸や抽斗など開閉体をレールなど固定部材に対して移動可能に保持してなる開閉装置(引戸装置、抽斗装置、等)において、開閉体の開閉動作を補助する装置に関し、より詳細には、開閉体の閉まり際及び全開際に、被捕捉体を捕捉して所定の方向に引き寄せることにより開閉体を閉位置又は全開位置に誘導するように構成した開閉動作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定部材と開閉体のいずれか一方の部材に、開閉体の開閉方向に互いに離間させて第1及び第2の被捕捉体を取り付けるとともに他方の部材に捕捉引込機構を設け、開閉体の閉まり際には、第1被捕捉体を捕捉して第1の向きに引き寄せることにより開閉体を強制的に閉位置に誘導し、開閉体の全開際には、第2被捕捉体を捕捉して第1の向きとは逆向きの第2の向きに引き寄せることにより開閉体を強制的に全開位置に誘導するように構成した開閉動作補助装置が知られている。
【0003】
この種の開閉動作補助装置として、図22に示す捕捉引込機構を備えたものがある(特許文献1、特許文献2)。図22に示す捕捉引込機構100は、第1被捕捉体101−1を捕捉する第1フック部材102−1と、第2被捕捉体101−2を捕捉する第2フック部材102−2と、第1フック部材102−1を搭載して開閉体の開閉方向に移動する第1スライダ103−1と、第2フック部材102−2を搭載して開閉体の開閉方向に移動する第2スライダ103−2と、両スライダ103−1、103−2間に張設された引っ張りばね104と、第1フック部材102−1及び第1スライダ103−1を待機状態に保持する図示しない第1ロック機構と、第2フック部材102−2及び第2スライダ103−2を待機状態に保持する図示しない第2ロック機構と、を備えている。第1及び第2フック部材102−1、102−2は、第1及び第2スライダ103−1、103−2にそれぞれヒンジ部105を介して水平方向に回動自在に連結されている。第1及び第2フック部材102−1、102−2は、ヒンジ部105が設けられた基端部102aと、その基端部102aから延びる湾曲したフック部102bとからなる。
【0004】
図22に示す開閉動作補助装置の捕捉引込機構100は、以下のように動作する。ここでは、図23に示すように、捕捉引込機構100が引き戸(開閉体)1の上端部をガイドするガイドレール(固定部材)2に取り付けられており、第1被捕捉体101−1が引き戸1の上端の閉位置側端部近傍に、第2被捕捉体101−2が引き戸1の上端の開位置側端部近傍に、それぞれ設けられているものとする。
【0005】
引き戸1を開位置側から閉位置側に移動させていくと、引き戸1と共に第1被捕捉体101−1が閉位置側に移動し、引き戸1の閉まり際に、待機状態にある第1フック部材102−1の基端部102aに当接する。第1フック部材102−1は、その基端部102aが第1被捕捉体101−1に押されることにより回動し、そのフック部102bで第1被捕捉体101−1を捕捉する。第1フック部材102−1が待機状態から第1被捕捉体101−1を捕捉した捕捉状態に変化する過程で、第1ロック機構による第1スライダ103−1の保持が解かれる。そして、引っ張りばね104による第1フック部材102−1及び第1スライダ103−1の引き込みが開始される。この動作により、引き戸1が閉位置に強制的に誘導される。
【0006】
これとは逆に、引き戸1を閉位置側から開位置側に移動させていくと、引き戸1と共に第2被捕捉体101−2が開位置側に移動し、引き戸1が全開位置に達する間際に、待機状態にある第2フック部材102−2の基端部102aに当接する。第2フック部材102−2は、その基端部102aが第2被捕捉体101−2に押されることにより回動し、そのフック部102bで第2被捕捉体101−2を捕捉する。第2フック部材102−2が待機状態から第2被捕捉体101−2を捕捉した捕捉状態に変化する過程で、第2ロック機構による第2スライダ103−2の保持が解かれる。そして、引っ張りばね104による第2フック部材101−2及び第2スライダ103−2の引き込みが開始される。この動作により、引き戸1が全開位置に強制的に誘導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−156199号公報
【特許文献2】特開2008−144567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2記載の捕捉引込機構100によれば、引き戸(開閉体)1の閉まり際には、第1被捕捉体101−1を第1フック部材102−1で捕捉して閉位置側に引き寄せることにより引き戸1を強制的に閉位置に誘導することができ、引き戸1が全開状態になる間際には、第2被捕捉体101−2を第2フック部材102−2で捕捉して開位置側に引き寄せることにより引き戸1を強制的に全開位置に誘導することができる。
【0009】
しかし、特許文献1及び2記載の捕捉引込機構100は、引き戸1と共に移動する被捕捉体101−1、101−2が待機状態にあるフック部材102−1、102−2の基端部102aに当接してこれを押すことにより、フック部材102−1、102−2を回動させて捕捉状態に導くように構成されているため、被捕捉体101−1、101−2の移動による力をフック部材102−1、102−2を回動させるために効率良く利用して被捕捉体101−1、101−2を捕捉し得る機構にはなっていない。すなわち、フック部材102−1、102−2がその基端部102aを力点、ヒンジ部105を支点にして回動し、フック部102bの先端部を作用点にして被捕捉体101−1、101−2を捕捉するように構成されているため、てこの原理から、フック部材102−1、102−2を回動させるために比較的大きな力を要する。
【0010】
このため、特許文献1及び2記載の捕捉引込機構100では、閉り際や全開間際における引き戸1の勢い不足が原因で被捕捉体101−1、101−2の捕捉に失敗し、半閉まり或いは未全開のまま引き戸1が停止してしまうという不具合が生じやすい。また、フック部材102−1、102−2を回動させるために比較的大きな力を要するため、フック部材102−1、102−2が作動するたびに異音が発生するという問題もある。
また、被捕捉体101−1、101−2がフック部材102−1、102−2の基端部102aに当接した瞬間及び捕捉引き込み時にヒンジ部105に荷重が集中的に掛かるため、ヒンジ部105の破損や経時的劣化による故障が発生しやすいという問題もある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、被捕捉体の移動による力を効率良く利用して被捕捉体を捕捉でき且つその際に異音が発生しにくい捕捉引込機構を備えた開閉体閉止装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、固定部材と開閉体のいずれか一方に、開閉体の開閉方向に互いに離間させて第1及び第2の被捕捉体を取り付けるとともに他方に捕捉引込機構を設け、開閉体の閉まり際には、第1被捕捉体を捕捉して第1の向きに引き寄せることにより開閉体を強制的に閉位置に誘導し、開閉体の全開際には、第2被捕捉体を捕捉して第1の向きとは逆向きの第2の向きに引き寄せることにより開閉体を強制的に全開位置に誘導するように構成した開閉動作補助装置であって、
前記捕捉引込機構は、
第1被捕捉体を捕捉する第1キャッチャと、
第2被捕捉体を捕捉する第2キャッチャと、
第1キャッチャを作動させる第1キャッチャガイドと、
第2キャッチャを作動させる第2キャッチャガイドと、
両キャッチャ間に張設された引っ張りばねと、
前記引っ張りばねの張力に抗して第1キャッチャを第1被捕捉体を捕捉するための待機位置に保持するための第1ロック機構と、
前記引っ張りばねの張力に抗して第2キャッチャを第2被捕捉体を捕捉するための待機位置に保持するための第2ロック機構と、を有し、
第1キャッチャは、姿勢変化することによって第1被捕捉体を捕捉するフック部を有し、
第1キャッチャガイドは、
第1キャッチャに搭載され、開閉体の閉まり際に第1被捕捉体に押されることにより第1キャッチャに対してそのフック部の基部側に相対的に移動するストライカ部と、
当該ストライカ部と共に移動することにより第1キャッチャのフック部を待機状態から姿勢変化させて第1被捕捉体を捕捉した捕捉状態に導くガイド部と、を有し、
第1ロック機構は、
第1キャッチャのフック部の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、第1キャッチャの保持を解除するように構成され、
第2キャッチャは、姿勢変化することによって第2被捕捉体を捕捉するフック部を有し、
第2キャッチャガイドは、
第2キャッチャに搭載され、開閉体の全開際に第2被捕捉体に押されることにより第2キャッチャに対してそのフック部の基部側に相対的に移動するストライカ部と、
当該ストライカ部と共に移動することにより第2キャッチャのフック部を待機状態から姿勢変化させて第2被捕捉体を捕捉した捕捉状態に導くガイド部と、を有し、
第2ロック機構は、
第2キャッチャのフック部の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、第2キャッチャの保持を解除するように構成され、
第1及び第2キャッチャガイドのガイド部が、それぞれ第1及び第2キャッチャのフック部の先端部に作用してこれを待機状態から捕捉状態に導くように構成されていることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、開閉体が閉位置と全開位置との中間の位置にあるとき、両キャッチャはそれぞれのロック機構によりいずれも待機位置に保持されている。待機位置に保持されている時、各キャッチャは、待機状態すなわち、各フック部が各被捕捉体を受け入れ可能な姿勢に保持された状態になっている。
開閉体を閉める際、第1キャッチャガイドのストライカ部が第1被捕捉体に押される。これにより、第1キャッチャガイドのストライカ部が第1キャッチャのフック部の基部側に移動する。このストライカ部の移動に連動して、第1キャッチャガイドのガイド部が第1キャッチャのフック部の先端部に作用し、当該フック部の姿勢を変化させる。その結果、第1キャッチャが捕捉状態に導かれる。このとき、第1ロック機構による第1キャッチャの保持が解除され、引っ張りばねの張力による第1キャッチャの引き寄せが開始される。第1被捕捉体を捕捉した状態の第1キャッチャが引っ張りばねの張力で所定の方向に引き寄せられることにより、開閉体が強制的に閉位置に誘導される。
開閉体を開く際、第2キャッチャガイドのストライカ部が第2被捕捉体に押される。これにより、第2キャッチャガイドのストライカ部が第2キャッチャのフック部の基部側に移動する。このストライカ部の移動に連動して、第2キャッチャガイドのガイド部が第2キャッチャのフック部の先端部に作用し、当該フック部の姿勢を変化させる。その結果、第2キャッチャが捕捉状態に導かれる。このとき、第2ロック機構による第2キャッチャの保持が解除され、引っ張りばねの張力による第2キャッチャの引き寄せが開始される。第2被捕捉体を捕捉した状態の第2キャッチャが引っ張りばねの張力で所定の方向に引き寄せられることにより、開閉体が強制的に全開位置に誘導される。
【0014】
このように、開閉体を閉める際には、第1キャッチャガイドが第1被捕捉体に押されて、第1キャッチャに対しそのフック部の基部側に相対的に移動することにより、開閉体を開く際には、第2キャッチャガイドが第2被捕捉体に押されて、第2キャッチャに対しその基部側に相対的に移動することにより、各キャッチャガイドのガイド部が各キャッチャのフック部の先端部に作用して、フック部の姿勢を変化させて捕捉状態に導くように構成したことにより、被捕捉体の移動による力を効率良く利用し、小さい力で各キャッチャのフック部を作動させて被捕捉体を捕捉することができる。
【0015】
前記フック部の姿勢変化の形態例として、前記フック部の基部を支点にした回動又は弾性変形による姿勢変化を挙げることができる。
【0016】
本発明の開閉体閉止装置において、前記フック部は、前記先端部より更に先端側に位置する復帰用係合部と、前記フック部が前記被捕捉体を捕捉していないにもかかわらず前記捕捉状態になっているときに、前記開閉部材の移動に伴って前記被捕捉体を前記復帰用係合部に案内するべく、前記被捕捉体の移動方向に対して前記フック部の姿勢変化方向に傾斜したテーパ面と、を有することが望ましい。
この構成によれば、フック部が被捕捉体を捕捉していないにもかかわらず、何らかの原因で、捕捉状態になっている場合でも、しかるべき向きに開閉体を移動させて、被捕捉体をフック部の復帰用係合部に係合させることにより、被捕捉体をフック部に連結することができる。そして、被捕捉体をフック部に連結した状態で、連結する際の向きとは逆向きに開閉体を移動させることにより、キャッチャを待機位置に保持された状態に復帰させることができる。
【0017】
本発明の開閉体閉止装置において、第1、第2キャッチャとして、フック部を一体成型してなる樹脂成型品を採用することが望ましい。第1、第2キャッチャとして、フック部を一体成型してなる樹脂成型品を採用することにより、破損や経時的劣化が発生しやすいヒンジ部を省略し、故障の発生しにくい捕捉引込機構により開閉体閉止装置を実現することができる。
【0018】
また、本発明の開閉体閉止装置において、前記ガイド部には、ガイド孔が設けられ、前記フック部の先端部には、前記ガイド孔に係合しつつ案内されるガイド突起部が設けられていることが望ましい。
また、本発明の開閉体閉止装置において、第1、第2キャッチャガイドをそれぞれ第1、第2キャッチャの基部側から先端側に常時付勢している弾性部材を有することが望ましい。
また、本発明の開閉体閉止装置において、第1、第2ロック機構は、前記フック部の先端部と前記固定部材に対し固定されている部材の一方に形成された係止突起部と、他方に形成された係止凹部とを有し、当該係止突起部と当該係止凹部とが互いに係合することにより第1、第2キャッチャを待機位置に保持することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被捕捉体の移動による力を効率良く利用し、小さい力で各キャッチャのフック部を作動させて被捕捉体を捕捉することができ且つ異音が発生しにくい構成の捕捉引込機構により開閉体閉止装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の開閉体閉止装置を備えた引き戸装置の形態例を示す部分正面図((a)全開状態、(b)中間状態(待機状態)、(c)全閉状態)
【図2】開閉体閉止装置の捕捉引込機構の全開状態を示す斜視図
【図3】捕捉引込機構の待機状態を示す斜視図
【図4】捕捉引込機構の全閉状態を示す斜視図
【図5】捕捉引込機構の分解斜視図
【図6】(a)捕捉引込機構の全開状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構の全開状態を示す下面図
【図7】(a)捕捉引込機構の待機状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構の待機状態を示す下面図
【図8】(a)捕捉引込機構の全閉状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構の全閉状態を示す下面図
【図9】(a)捕捉引込機構と第1被捕捉体とが当接した直後の状態を示す要部平面図 (b)捕捉引込機構が第1被捕捉体を捕捉した直後の状態を示す要部平面図
【図10】(a)捕捉引込機構と第2被捕捉体とが当接した直後の状態を示す要部平面図 (b)捕捉引込機構が第2被捕捉体を捕捉した瞬間の状態を示す要部平面図
【図11】(a)捕捉引込機構が第1被捕捉体を捕捉した瞬間の状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構が第1被捕捉体を捕捉した直後における引き戸装置の状態を示す要部正面図
【図12】(a)捕捉引込機構の全閉状態を示す平面図 (b)全閉状態の引き戸装置の要部正面図
【図13】(a)捕捉引込機構が第2被捕捉体を捕捉した直後の状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構が第2被捕捉体を捕捉した直後における引き戸装置の状態を示す要部正面図
【図14】(a)捕捉引込機構の全開状態を示す平面図 (b)全開状態の引き戸装置の要部正面図
【図15】(a)待機状態であるべき捕捉引込機構が捕捉状態になっている場合を例示する要部下面図 (b)待機状態復帰機構が働き始める瞬間の要部下面図 (c)待機状態復帰機構により第2被捕捉体と捕捉引込機構とが連結された直後の状態を示す要部下面図
【図16】本発明の別の実施形態を示す要部下面図解斜視図
【図17】捕捉引込機構の分解斜視図
【図18】(a)捕捉引込機構の全開状態を示す平面図 (b)捕捉引込機構の全開状態を示す下面図
【図19】(a)捕捉引込機構と第1被捕捉体とが当接した直後の状態を示す要部平面図 (b)捕捉引込機構が第1被捕捉体を捕捉した直後の状態を示す要部平面図
【図20】(a)捕捉引込機構と第2被捕捉体とが当接した直後の状態を示す要部平面図 (b)捕捉引込機構が第2被捕捉体を捕捉した瞬間の状態を示す要部平面図
【図21】(a)待機状態であるべき捕捉引込機構が捕捉状態になっている場合を例示する要部下面図 (b)待機状態復帰機構が働き始める瞬間の要部下面図 (c)待機状態復帰機構により第2被捕捉体と捕捉引込機構とが連結された直後の状態を示す要部下面図
【図22】従来の開閉体閉止装置の捕捉引込機構を例示する要部平面図
【図23】従来の開閉体閉止装置を備えた引き戸装置を例示する部分正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。この実施形態では、本発明を引き戸装置用の開閉体閉止装置に適用した場合を例にとり説明する。
【0022】
[第1の形態例]
図1(a)、(b)、(c)は、本発明の開閉体閉止装置を備えた引き戸装置の形態例を示す部分正面図である。(a)は全開状態を、(b)は中間状態(待機状態)を、(c)は全閉状態を、それぞれ示している。
図1に示す引き戸装置は、建物の開口部を開閉する引き戸(開閉体)1と、引き戸1を全閉位置(図1(c)の位置)及び全開位置(図1(a)の位置)に誘導する開閉体閉止装置10と、を有している。
【0023】
開閉体閉止装置10は、引き戸1をその上方に敷設されているガイドレール(固定部材)2に沿わせて案内するべく引き戸2の上端に取り付けられた一対のガイド部材(第1、第2被捕捉体)3−1、3−2と、ガイドレール2に設けられた捕捉引込装置(捕捉引込機構)20と、を有している。ガイド部材3−1、3−2は、引き戸1の開閉方向(左右方向)両端近傍に設けられ、引き戸1の上端面から上方に突出している。捕捉引込装置20は、ガイドレール2の長さ方向(左右方向)中央部に取り付けられている。以下、図に向かって右側(全閉位置側)のガイド部材を第1ガイド部材(第1被捕捉体)3−1とし、図に向かって左側(全開位置側)のガイド部材を第2ガイド部材(第2被捕捉体)3−2とする。
この開閉体閉止装置10は、引き戸1の閉まり際には、第1ガイド部材3−1を捕捉して矢印Aの向き(第1の向き)に引き寄せることにより引き戸1を強制的に全閉位置に誘導し、引き戸1の全開際には、第2ガイド部材3−2を捕捉して矢印Bの向き(第2の向き)に引き寄せることにより引き戸1を強制的に全開位置に誘導する
【0024】
図2乃至図4は第1形態例の捕捉引込装置20の斜視図であり、それぞれ全開状態、中間状態及び全閉状態を示している。図5は第1形態例の捕捉引込装置20の分解斜視図である。図6(a)、(b)は、第1形態例の捕捉引込装置20の全開状態における平面図及び下面図である。図7(a)、(b)は、第1形態例の捕捉引込装置20の中間状態(待機状態)における平面図及び下面図である。図8(a)、(b)は、第1形態例の捕捉引込装置20の全閉状態における平面図及び下面図である。図9(a)、(b)は、第1形態例の捕捉引込機構20の要部平面図であり、それぞれ捕捉引込機構と第1ガイド部材3−1とが当接した瞬間の状態及び捕捉状態を示している。図10(a)、(b)は、第1形態例の捕捉引込機構20の要部平面図であり、それぞれ捕捉引込機構と第2ガイド部材3−2とが当接した瞬間の状態及び捕捉状態を示している。
【0025】
捕捉引込装置20は、樹脂製の本体21と蓋体22とを有している。本体21は、細長い箱状の部材であり、その長手方向の両端部分を残して上方に開口した矩形状の空間を有している。その開口部を塞ぐべく、本体21の上部に蓋体22が取り付けられる。
本体21の底部には、両ガイド部材3−1、3−2の通路となるスリット23が本体21の全長に亘って形成されている。スリット23は、本体21の幅方向(前後方向)中央部に形成されている。
蓋体22の幅方向(前後方向)中央部には、後述する第1キャッチャ30−1、第2キャッチャ30−2、第1キャッチャガイド40−1、及び第2キャッチャガイド40−2をガイドするためのガイドスリット22aが蓋体22の長手方向に沿って形成されている。
【0026】
図5に示すように、捕捉引込装置20は、第1ガイド部材3−1を捕捉する第1キャッチャ30−1と、第2ガイド部材3−2を捕捉する第2キャッチャ30−2と、第1キャッチャ30−1を作動させる第1キャッチャガイド40−1と、第2キャッチャ30−2を作動させる第2キャッチャガイド40−2と、両キャッチャ30−1、30−2間に張設された引っ張りばね50と、引っ張りばね50の張力に抗して第1キャッチャ30−1を第1ガイド部材3−1を捕捉するための待機位置に保持するための第1ロック機構60−1(図7(b)参照)と、引っ張りばね50の張力に抗して第2キャッチャ30−2を第2ガイド部材3−2を捕捉するための待機位置に保持するための第2ロック機構60−2(図7(b)参照)と、引き戸2の閉まり際及び全開際に圧縮され反発することにより制動力を発生する直動式のダンパユニット(緩衝機構)70と、を有している。
【0027】
第1キャッチャ30−1は、それ自体が水平方向に弾性変形することによって第1ガイド部材3−1を捕捉する第1フック部31−1を有する樹脂成型品であり、引き戸1の開閉方向にスライド可能に本体21内に収容されている。
【0028】
第1フック部31−1は、その先端を引き戸1の閉位置側(図の右側)に向けて、第1キャッチャ30−1の長手方向の基端(図の左側の端)33b寄りの位置に設けられている。第1フック部31−1は、弾性変形しやすいように薄厚に形成された矩形板状のアーム部31aと、第1ガイド部材3−1に係合してこれを捕捉するべくアーム部31aの先端に形成された捕捉部31bと、を有している。
第1キャッチャ30−1の底部には、第1ガイド部材3−1の通路となるスリット32が形成されている。このスリット32は、第1キャッチャ30−1の先端33aから第1フック部31−1の基部に延びており、本体21のスリット23と上下に重なっている。
【0029】
第1フック部31−1は、これが自然状態のとき、捕捉部31bとスリット32の内壁32aとの間隔が第1ガイド部材3−1を受け入れ可能な間隔D1に開いた待機状態にある(図9(a)参照)。そして、第1フック部31−1自体がスリット32の内壁32a側に弾性変形させられることによって捕捉状態すなわち、第1ガイド部材3−1を捕捉部31bで係止して捕捉した状態になる(図9(b)参照)。
【0030】
第1フック部31−1の先端部には、ガイド突起部35と係止突起部(第1係止部)34とが形成されている。ガイド突起部35は、後述するガイド孔42aに係合しつつ案内される突起部であり、捕捉部31bの先端近傍上面に上方に突出させて設けられている。
【0031】
係止突起部34は、捕捉部31bの基端部に下方に突出させて設けられている。本体21の底部には、この係止突起部34と係脱する係止凹部(第2係止部)24が形成されている(図5参照)。係止凹部24は、本体21の底部のスリット23の中間部に形成されている。そして、係止突起部34と係止凹部24とが互いに係合することにより第1フック部31−1が待機状態になるとともに第1キャッチャ30−1が待機位置に保持され、第1フック部31−1の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、係止突起部34と係止凹部24との互いの係合が解かれるように構成されている。すなわち、この実施形態では、第1ロック機構60−1が第1フック部31−1の先端部に形成された係止突起部34と、本体21の底部に形成された係止凹部24と、により構成されている。
【0032】
第1フック部31−1は、待機状態復帰機構80を備えている。待機状態復帰機構80は、捕捉部31bよりも更に先端側に位置する復帰用係合部81と、復帰用係合部81から更に先端側に延びるテーパ面82とを有する。テーパ面82は、第1フック部31−1が第1ガイド部材3−1を捕捉していないにもかかわらず、何らかの原因で捕捉状態になっているときに、引き戸1の開側への移動に伴って第1ガイド部材3−1を復帰用係合部81へ案内するべく、第1ガイド部材3−1の移動方向に対して第1フック部31−1の弾性変形方向に傾斜している。
【0033】
第1キャッチャガイド40−1は、第1キャッチャ30−1に搭載されている。第1キャッチャガイド40−1は、第1フック部31−1と第1キャッチャ30−1の内側面32aとの間に介在し、引き戸2の閉まり際に第1ガイド部材3−1に押されて第1フック部31−1の基部に移動するストライカ部41と、第1フック部31−1の基部側へのストライカ部41の移動に連動して、第1フック部31−1を強制的に弾性変形させて第1ガイド部材3−1を捕捉した捕捉状態に導くガイド部42と、を有している。
【0034】
ガイド部42は、ストライカ部41の上端部に一体的に設けられている。ガイド部42は、平板状に形成され、その下面が第1キャッチャ30−1の上面30aに摺接している。ガイド部42は、ストライカ部41から第1キャッチャ30−1の先端33a側に大きく張り出している。この張り出している部分に、第1フック部31−1のガイド突起部35を水平方向に案内する円弧状のガイド孔42aが設けられている。
【0035】
ストライカ部41の後端とスリット32の最奥部との間には、コイルスプリング(弾性部材)44が設けられている。コイルスプリング44は、ストライカ部41の後端部に形成された穴40aに挿入されており、ストライカ部41がスリット32の最奥部に当接しているときには、圧縮された状態で穴40a内に収容されている(図9(b)参照)。第1キャッチャガイド40−1は、このコイルスプリング44の弾性反発力によって第1キャッチャ30−1の先端33a側に常時付勢されている。
【0036】
第1フック部31−1の待機状態から捕捉状態への状態変化は、引き戸2を閉める際に、第1キャッチャガイド40−1のストライカ部41が第1ガイド部材3−1に当接して押されることによりなされる。図9(a)中の矢印Cは、第1ガイド部材3−1が第1キャッチャガイド40−1のストライカ部41を押す力の向きを示している。この力に押されて第1キャッチャガイド40−1のストライカ部41がフック部31−1の基部側に移動することにより、ガイド部42もストライカ部41と共に移動する。そして、ガイド部42の移動に伴って第1フック部31−1のガイド突起部35がガイド孔42aに沿って案内される。その結果、図9(a)中に矢印Dで示すように、第1フック部31−1が第1キャッチャ30−1の内側面32a側に弾性変形(姿勢変化)し、図9(b)に示す捕捉状態になる。
【0037】
第1キャッチャ30−1の上面及び第1キャッチャガイド40−1の上面には、これらの移動方向に延びる直線状のガイド突起30b、40bが上方に突出させて各々設けられている。ガイド突起30b、40bは、蓋体22のガイドスリット22aに摺動可能に嵌合している。第1キャッチャ30−1の上面及び第1キャッチャガイド40−1は、それぞれのガイド突起30b、40bが蓋体22のガイドスリット22aに案内されることにより、本体21の長手方向に直線的に案内される。
【0038】
第1キャッチャ30−1の先端部(図の右側端部)の後部には、引張りばね50を連結するための連結部36−1が形成され、ここに引張りばね50の一方の端部51がその括れた部分を係合させて連結されている。引張りばね50のもう一方の端部52は、第2キャッチャ30−2の連結部36−2に連結されている。
【0039】
第1キャッチャ30−1の後端部(図の左側端部)の前部には、ダンパユニット70を連結するための連結部37が形成され、ここにダンパユニット70の出力軸70Aの先端部70aがその括れた部分を係合させて連結されている。この例では、連結部37は、第1キャッチャ30−1の後端前側の角部分を直角に切欠いて形成された凹部38の後端面部に設けられている。ダンパユニット70は、出力軸70Aと、出力軸70Aを軸方向に進退自在に保持している中空円筒状のユニット本体70Bとを有する。ユニット本体70B内には、出力軸70Aの縮長方向への移動に制動力を作用させるオイルなどの抵抗流体(図示省略)が充填されている。ユニット本体70Bは、第2キャッチャ30−2に保持されている。
【0040】
第2キャッチャ30−2は、それ自体が水平方向に弾性変形することによって第2ガイド部材3−2を捕捉する第2フック部31−2を有する樹脂成型品であり、引き戸1の開閉方向にスライド可能に本体21内に収容されている。第2キャッチャ30−2は、第1キャッチャ30−1と直列に並べて本体21内に設けられている。
【0041】
第2フック部31−2は、その先端を引き戸1の開位置側(図の左側)に向けて、第2キャッチャ30−2の長手方向の基端(図の右側の端)33b寄りの位置に設けられている。
第2フック部31−2は、弾性変形しやすいように薄厚に形成された矩形板状のアーム部31aと、第2ガイド部材3−2に係合してこれを捕捉するべくアーム部31aの先端に形成された捕捉部31bと、を有している。
第2キャッチャ30−2の底部には、第2ガイド部材3−2の通路となるスリット32が形成されている。このスリット32は、第2キャッチャ30−2の先端33aからフック部31−2の基部に延びており、本体21のスリット23と上下に重なっている。
【0042】
第2フック部31−2は、これが自然状態のとき、捕捉部31bとスリット32の内壁32aとの間隔が第2ガイド部材3−2を受け入れ可能な間隔D1に開いた待機状態にある(図10(a)参照)。そして、第2フック部31−2自体がスリット32側に弾性変形させられることによって捕捉状態すなわち、第2ガイド部材3−2を捕捉部31bで係止して捕捉した状態になる。
【0043】
第2フック部31−2の先端部には、ガイド突起部35と係止突起部(第1係止部)34とが形成されている。ガイド突起部35は、後述するガイド孔42aに係合しつつ案内される突起部であり、捕捉部31bに上方に突出させて設けられている。
【0044】
係止突起部34は、捕捉部31bの基端部に下方に突出させて設けられている。本体21の底部には、この係止突起部34と係脱する係止凹部(第2係止部)24が形成されている(図5参照)。係止凹部24は、本体21の底部のスリット23の中間部に形成されている。そして、係止突起部34と係止凹部24とが互いに係合することにより第2フック部31−2が待機状態になるとともに第2キャッチャ30−2が待機位置に保持され、第2フック部31−2の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、係止突起部34と係止凹部24との互いの係合が解かれるように構成されている。すなわち、この実施形態では、第2ロック機構60−2が第2フック部31−2の先端部に形成された係止突起部34と、本体21の底部に形成された係止凹部24と、により構成されている。
【0045】
第2フック部31−2は、待機状態復帰機構80を備えている。待機状態復帰機構80は、捕捉部31bよりも更に先端側に位置する復帰用係合部81と、復帰用係合部81から更に先端側に延びるテーパ面82とを有する。テーパ面82は、第2フック部31−2が第2ガイド部材3−2を捕捉していないにもかかわらず、何らかの原因で捕捉状態になっているときに、引き戸1の開側への移動に伴って第2ガイド部材3−2を復帰用係合部81へ案内するべく、第2ガイド部材3−2の移動方向に対して第2フック部31−2の弾性変形方向に傾斜している。
【0046】
第2キャッチャガイド40−2は、第2キャッチャ30−2に搭載されている。第2キャッチャガイド40−2は、第2フック部31−2と第2キャッチャ30−2の内側面32aとの間に介在し、引き戸2の全開際に第2ガイド部材3−2に押されて第2フック部31−2の基部に移動するストライカ部41と、第2フック部31−2の基部側へのストライカ部41の移動に連動して、第2フック部31−2を強制的に弾性変形させて第2ガイド部材3−2を捕捉した捕捉状態に導くガイド部42と、を有している。
【0047】
ガイド部42は、ストライカ部41の上端部に一体的に設けられている。ガイド部42は、平板状に形成され、その下面が第2キャッチャ30−2の上面30aに摺接している。ガイド部42は、ストライカ部41から第2キャッチャ30−2の先端33a側に大きく張り出している。この張り出している部分に、第2フック部31−2のガイド突起部35を水平方向に案内する円弧状のガイド孔42aが設けられている。
【0048】
ストライカ部41の後端とスリット32の最奥部との間には、コイルスプリング(弾性部材)44が設けられている。コイルスプリング44は、ストライカ部41の後端部に形成された穴40aに挿入されており、ストライカ部41がスリット32の最奥部に当接しているときには、圧縮された状態で穴40a内に収容されている(図10参照)。第2キャッチャガイド40−2は、このコイルスプリング44の弾性反発力によって第2キャッチャ30−2の先端33a側に常時付勢されている。
【0049】
第2フック部31−2の待機状態から捕捉状態への状態変化は、引き戸2を開く際に、第2キャッチャガイド40−2のストライカ部41が第2ガイド部材3−2に当接して押されることによりなされる。図10(a)中の矢印Eは、第2ガイド部材3−2が第2キャッチャガイド40−2のストライカ部41を押す力の向きを示している。この力に押されて第2キャッチャガイド40−2のストライカ部41がフック部31−2の基部側に移動することにより、ガイド部42もストライカ部41と共に移動する。そして、ガイド部42の移動に伴って第2フック部31−2のガイド突起部35がガイド孔42aに沿って案内される。その結果、図10(a)中に矢印Fで示すように、第2フック部31−2が第2キャッチャ30−2の内側面32a側に弾性変形(姿勢変化)し、図10(b)に示す捕捉状態になる。
【0050】
第2キャッチャ30−2の上面及び第2キャッチャガイド40−2の上面には、これらの移動方向に延びる直線状のガイド突起30b、40bが上方に突出させて各々設けられている。ガイド突起30b、40bは、蓋体22のガイドスリット22aに摺動可能に嵌合している。第2キャッチャ30−2の上面及び第2キャッチャガイド40−2は、それぞれのガイド突起30b、40bが蓋体22のガイドスリット22aに案内されることにより、本体21の長手方向に直線的に案内される。
【0051】
第2キャッチャ30−2の先端部(図の左側端部)の後部には、引張りばね50を連結するための連結部36−2が形成され、ここに引張りばね50のもう一方の端部52がその括れた部分を係合させて連結されている。
【0052】
第2キャッチャ30−2の前縁部には、ダンパユニット70のユニット本体70Bを保持するダンパ保持部39が設けられている。ダンパ保持部39は、第2キャッチャ30−2の先端部の前端部に設けられた嵌合部39aと、第2キャッチャ30−2の基端部の前端部に設けられた上弦円弧状の支承部39bとを有する。ユニット本体70Bは、その基端部70Bbがダンパ保持部39の嵌合部39aの保持孔に圧入されるとともに、その先端部70Baが支承部39bに支承されて安定に保持されている。
【0053】
つぎに、上記のように構成された第1形態例の開閉体閉止装置10の作用・効果について説明する。
引き戸装置が中間状態のとき(図1(b))、第1、第2キャッチャ30−1、30−2は、それぞれ第1、第2ロック機構60−1、60−2により待機位置に保持されている(図3、図7)。第1、第2キャッチャ30−1、30−2が待機位置に保持されている時、第1、第2フック部31−1、31−2は共に自然状態にあり、それ自体の弾性に加えて、第1、第2フック部31−1、31−2の先端部に設けられているガイド突起部35が第1、第2キャッチャガイド40−1、40−2によって後方(図9(a)、図10(a)の矢印D、Fの向きとは逆向き)に案内されていることにより、待機状態すなわち、第1、第2フック部31−1、31−2の係合突起部(先端部)31bとスリット32の内壁32aとの間隔がそれぞれ第1、第2ガイド部材3−2を受け入れ可能な間隔D1に開いた状態にある(図9(a)、図10(a)参照)。
【0054】
この中間状態から引き戸2を閉めていくと、引き戸2の閉まり際に第1キャッチャガイド40−1のストライカ部41に第1ガイド部材3−1が当接する。ストライカ部41は第1ガイド部材3−1に押されて第1フック部31−1の基部側に移動する。このストライカ部41の移動に連動して、第1キャッチャガイド40−1のガイド部42により第1キャッチャ30−1の第1フック部31−1が弾性変形させられる。その結果、第1フック部31−1が捕捉状態すなわち、第1ガイド部材3−1を捕捉した状態になる。図11はこのときの引き戸装置の状態を示している。第1フック部31−1が捕捉状態になると、第1ロック機構60−1を構成する係止突起部34と係止凹部24との互いの係合が解除され、引張りばね50の張力による第1キャッチャ30−1の引き寄せが開始される。第1ガイド部材3−1を捕捉した状態の第1フック部31−1を一体的に有する第1キャッチャ30−1が引張りばね50の張力で所定の向き(矢印Aの向き)に引き寄せられることにより、引き戸2が強制的に閉じられる。その際、ダンパユニット70が作動し、引き戸2の急激な動きが制動されるため、引き戸2は静かに閉位置に導かれる。図1(c)及び図12はこのときの引き戸装置の状態を示している。第1フック部31−1は、待機位置から外れると、その先端部に設けられた係止突起部34が本体21のスリット23の内壁に摺接し、自然状態に戻る向きへの変形が阻止された状態になるため、これが再び待機位置に戻り、その係止突起部34がスリット23の中間部に設けられた係止凹部24に係合するまで、捕捉状態が解除されることはない。
【0055】
図1(c)及び図12に示す状態すなわち全閉状態から引き戸2を開側に移動させて行くと、第1ガイド部材3−1と共に第1キャッチャ30−1が開側に移動する。そして、第1フック部31−1の係止突起部34が本体21の係止凹部24に係合することにより、第1フック部31−1が待機位置に保持されるとともに、第1フック部31−1による第1ガイド部材3−1の捕捉状態が解除され、引き戸装置が中間状態になる(図1(b))。
【0056】
そして、この中間状態を経て引き戸1を更に開側に移動させて行くと、引き戸2の全閉際に第2キャッチャガイド40−3のストライカ部41に第2ガイド部材3−2が当接する。ストライカ部41は第2ガイド部材3−2に押されて第2フック部31−2の基部側に移動する。このストライカ部41の移動に連動して、第2キャッチャガイド40−2のガイド部42により第2キャッチャ30−2の第2フック部31−2が弾性変形させられる。その結果、第2フック部31−2が捕捉状態すなわち、第2ガイド部材3−2を捕捉した状態になる。図13はこのときの引き戸装置の状態を示している。第2フック部31−2が捕捉状態になると、第2ロック機構60−2を構成する係止突起部34と係止凹部24との互いの係合が解除され、引張りばね50の張力による第2キャッチャ30−2の引き寄せが開始される。第2ガイド部材3−2を捕捉した状態の第2フック部31−2を一体的に有する第2キャッチャ30−2が引張りばね50の張力で所定の向き(矢印Bの向き)に引き寄せられることにより、引き戸2が強制的に全開される。その際、ダンパユニット70が作動し、引き戸2の急激な動きが制動されるため、引き戸2は静かに全開位置に導かれる。図1(a)及び図14はこのときの引き戸装置の状態を示している。第2フック部31−2も第1フック部31−1と同様、これが再び待機位置に戻り、その係止突起部34がスリット23の中間部に設けられた係止凹部24に係合するまで、捕捉状態が解除されることはない。
【0057】
このように、引き戸2を閉める際には、第1キャッチャガイド40−1が第1ガイド部材3−1に押されて、第1キャッチャ30−1に対しその第1フック部31−1の基部側に相対的に移動することにより、引き戸2を開く際には、第2キャッチャガイド40−2が第2ガイド部材3−2に押されて、第2キャッチャ30−2に対しその基部側に相対的に移動することにより、各キャッチャガイド40−1、40−2のガイド部42が各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2の先端部に作用して、それぞれのフック部31−1、31−2を弾性変形させて捕捉状態に導くように構成したことにより、第1、第2ガイド部材3−1、3−2それぞれの移動による力を効率良く利用し、小さい力で各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2を作動させて第1、第2ガイド部材3−1、3−2を捕捉することができる。小さい力で各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2を作動させることができるので、フック部31−1、31−2の作動に伴う異音の発生を抑えることができる。
そして、第1、第2キャッチャ30−1、30−2として、フック部31−1、31−2をそれぞれ一体成型してなる樹脂成型品を採用したことにより、破損や経時的劣化が発生しやすいヒンジ部を省略し、故障の発生しにくい捕捉引込機構20により開閉体閉止装置10を実現することができる。
【0058】
また、この実施形態では、第1、第2フック部31−1、31−2が待機状態復帰機構80を備えているので、第1、第2フック部31−1、31−2が第1、第2ガイド部材3−1、3−2を捕捉していないにもかかわらず、何らかの原因で捕捉状態になっている場合でも、引き戸2を移動させる操作によって、第1、第2フック部31−1、31−2を待機状態に復帰させることができる。図15(a)は、第2フック部31−2が第2ガイド部材3−2を捕捉していないにもかかわらず捕捉状態になっている場合を例示している。この場合、引き戸2を全開位置側の向き(矢印Bの向き)に移動させることにより、図15(c)に示すように、第2ガイド部材3−2を第2フック部31−2の復帰用係合部81に係合させることができる。その際、図15(b)に示すように、引き戸2の移動に伴って、第2フック部31−2のテーパ面82と第2キャッチャ30−2のスリット32の内壁32aとの間に第2ガイド部材3−2が進入する。第2フック部31−2は、そのテーパ面82が第2ガイド部材3−2に押されて矢印Gの向きに弾性変形することにより、第2ガイド部材3−2を復帰用係合部81に受け入れる。この状態すなわち、第2ガイド部材3−2を第2フック部31−2に連結した状態で、引き戸2を開位置側の向き(矢印Aの向き)に移動させることにより、第2キャッチャ30−2を待機位置に保持された状態に復帰させることができる(図7参照)。
【0059】
なお、上記の例では、第1、第2フック部31−1、31−2が自然状態のときに、待機状態すなわち、第1、第2ガイド部材3−1、3−2を受け入れ可能な状態になっていて、第1、第2フック部31−1、31−2を第1、第2キャッチャガイド40−1、40−2により強制的に弾性変形させることにより捕捉状態が実現されるように構成した例について説明したが、これとは逆に、第1、第2フック部31−1、31−2が自然状態のときに捕捉状態になり、第1、第2ガイド部材3−1、3−2を強制的に弾性変形させることにより待機状態が実現されるように構成してもよい。
【0060】
また、上記の例では、第1、第2フック部31−1、31−2が待機状態復帰機構80を備えている装置構成について説明したが、待機状態復帰機構80は必須の構成要素ではない。すなわち、本発明の実施形態の構成として、第1、第2フック部31−1、31−2のうち両方又は一方の待機状態復帰機構80を省略した構成を採用することもできる。図16は第2フック部31−2の待機状態復帰機構80を省略した場合を例示している。
【0061】
[第2形態例]
つぎに、本発明の第2形態例について説明する。
図17は第2形態例の捕捉引込装置20の分解斜視図である。図18(a)、(b)は、第2形態例の捕捉引込装置20の全開状態における平面図及び下面図である。図19(a)、(b)は、第2形態例の捕捉引込機構20の要部平面図であり、それぞれ捕捉引込機構と第1ガイド部材3−1とが当接した瞬間の状態及び捕捉状態を示している。図20(a)、(b)は、第2形態例の捕捉引込機構20の要部平面図であり、それぞれ捕捉引込機構と第2ガイド部材3−2とが当接した瞬間の状態及び捕捉状態を示している。ここでは、図1乃至図16に示した第1形態例と一致或いは機能が共通する構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
図17に示すように、第2形態例の捕捉引込装置20は、第1、第2キャッチャ30−1、30−2と第1、第2フック部31−1、31−2とがそれぞれ別部品で構成されており、この点が第1形態例と異なる。
【0063】
第1フック部31−1は、水平方向に回動可能に第1キャッチャ30−1に組み込まれている。第1フック部31−1は、その回動支点となる円柱状の基部31cを有し、基部31cから第1キャッチャ30−1の先端33a側にアーム部31aが延びている。アーム部31aの背面すなわち捕捉部31bが突出している側とは反対側の面の一部及び復帰用係合部81の背面には、それぞれ、第1フック部31−1の回動範囲を制限する突起部91、92が設けられている。
【0064】
第1キャッチャ30−1には、第1フック部31−1の基部31cが嵌合する円筒状の支持孔93と、第1フック部31−1の二つの突起部91、92がそれぞれ係脱自在に嵌合する凹部94、95とが設けられている。第1フック部31−1は、その基部31cが支持孔93に回動自在に丁度嵌合することにより、がたつきなく回動可能に第1キャッチャ30−1に保持されている。
【0065】
第2フック部31−2は、水平方向に回動可能に第2キャッチャ30−2に組み込まれている。第2フック部31−2は、その回動支点となる円柱状の基部31cを有し、基部31cから第2キャッチャ30−2の先端33a側にアーム部31aが延びている。アーム部31aの背面の一部及び復帰用係合部81の背面には、それぞれ、第2フック部31−2の回動範囲を制限する突起部91、92が設けられている。
【0066】
第2キャッチャ30−2には、第2フック部31−2の基部31cが嵌合する円筒状の支持孔93と、第2フック部31−2の二つの突起部91、92がそれぞれ係脱自在に嵌合する凹部94、95とが設けられている。第2フック部31−2は、その基部31cが支持孔93に回動自在に丁度嵌合することにより、がたつきなく回動可能に第2キャッチャ30−2に保持されている。
【0067】
第1、第2フック部31−1、31−2にそれぞれ設けられている二つの突起部91、92は、キャッチャ30−1、30−2の凹部94、95の奥面に当接することにより、第1、第2フック部31−1、31−2の開き過ぎを防止する。
また、第1、第2フック部31−1、31−2にそれぞれ設けられている二つの突起部91、92のうち基部31c寄りの突起部91は、第1、第2フック部31−1、31−2が待機状態、捕捉状態いずれの状態にあるときも、常にキャッチャ30−1、30−2の凹部94に係合している。これにより、捕捉・引き込み時に第1、第2フック部31−1、31−2に掛かる負荷が基部31cだけに集中するのを防止している。
【0068】
この例においても、引き戸2を閉める際には、第1キャッチャガイド40−1が第1ガイド部材3−1に押されて、第1キャッチャ30−1に対しその第1フック部31−1の基部31c側に相対的に移動することにより、引き戸2を開く際には、第2キャッチャガイド40−2が第2ガイド部材3−2に押されて、第2キャッチャ30−2に対しその基部31c側に相対的に移動することにより、各キャッチャガイド40−1、40−2のガイド部42が各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2の先端部に作用する。
【0069】
その結果、それぞれのフック部31−1、31−2が回動(姿勢変化)し、待機状態から捕捉状態に移行する。各キャッチャガイド40−1、40−2のガイド部42が各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2の先端部に作用することにより、第1、第2ガイド部材3−1、3−2それぞれの移動による力を効率良く利用し、小さい力で各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2を作動させて第1、第2ガイド部材3−1、3−2を捕捉することができる。小さい力で各キャッチャ30−1、30−2のフック部31−1、31−2を作動させることができるので、フック部31−1、31−2の作動に伴う異音の発生を抑えることができる。
【0070】
なお、第2形態例においても、待機状態復帰機構80は必須の構成要素ではない。
【0071】
[その他の実施形態]
本発明は上述した第1、第2形態例に限定されない。
第1、第2ガイド部材3−1、3−2を引き戸1など開閉体に取り付け、捕捉引込装置20をガイドレール2など固定部材に取り付けた例を示したが、これとは反対に、第1、第2ガイド部材3−1、3−2をガイドレール2に取り付け、捕捉引込装置20を引き戸2に取り付けてもよい。
【0072】
また、上記の例では、第1、第2ロック機構60−1、60−2が、それぞれ第1、第2フック部31−1、31−2の先端部に形成された係止突起部34と、本体(ガイドレール2に固定されている部材)21に形成された係止凹部24とにより構成されている例について説明したが、これとは逆に、本体21に係止突起部34を、第1、第2フック部31−1、31−2の先端部に係止突起部34を形成してもよい。
【0073】
また、上記の例では、ダンパユニット70を備えている装置構成について説明したが、ダンパユニット70は必須の構成要素ではない。
また、上記の例では、第1、第2キャッチャガイド40−1、40−2のガイド部42がストライカ部41の上端部に設けられているが、ストライカ部41の下端部に設けてもよい。
また、本発明の開閉部材閉止装置は、開き戸装置や抽斗装置などその他の開閉装置の開閉部材閉止装置としても有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 引き戸(開閉体)
2 ガイドレール(固定部材)
3−1 第1ガイド部材(第1被捕捉体)
3−2 第2ガイド部材(第2被捕捉体)
20 捕捉引込機構
30−1 第1キャッチャ
30−2 第2キャッチャ
31−1 フック部(第1フック部)
31−2 フック部(第2フック部)
35 ガイド突起部
40−1 第1キャッチャガイド
40−2 第2キャッチャガイド
41 ストライカ部
42 ガイド部
42a ガイド孔
44 コイルスプリング(弾性部材)
50 引っ張りばね
60−1 第1ロック機構
60−2 第2ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材(2)と開閉体(1)のいずれか一方に、開閉体(1)の開閉方向に互いに離間させて第1及び第2の被捕捉体(3−1、3−2)を取り付けるとともに他方に捕捉引込機構(20)を設け、開閉体(1)の閉まり際には、第1被捕捉体(3−1)を捕捉して第1の向きに引き寄せることにより開閉体(1)を強制的に閉位置に誘導し、開閉体(1)の全開際には、第2被捕捉体(3−2)を捕捉して第1の向きとは逆向きの第2の向きに引き寄せることにより開閉体(1)を強制的に全開位置に誘導するように構成した開閉動作補助装置であって、
前記捕捉引込機構(20)は、
第1被捕捉体(3−1)を捕捉する第1キャッチャ(30−1)と、
第2被捕捉体(3−2)を捕捉する第2キャッチャ(30−2)と、
第1キャッチャ(30−1)を作動させる第1キャッチャガイド(40−1)と、
第2キャッチャ(30−2)を作動させる第2キャッチャガイド(40−2)と、
両キャッチャ(30−1、30−2)間に張設された引っ張りばね(50)と、
前記引っ張りばね(50)の張力に抗して第1キャッチャ(30−1)を第1被捕捉体(3−1)を捕捉するための待機位置に保持するための第1ロック機構(60−1)と、
前記引っ張りばね(50)の張力に抗して第2キャッチャ(30−2)を第2被捕捉体(3−2)を捕捉するための待機位置に保持するための第2ロック機構(60−2)と、を有し、
第1キャッチャ(30−1)は、姿勢変化することによって第1被捕捉体(3−1)を捕捉するフック部(31−1)を有し、
第1キャッチャガイド(40−1)は、
第1キャッチャ(30−1)に搭載され、開閉体(1)の閉まり際に第1被捕捉体(3−1)に押されて第1キャッチャ(30−1)のフック部(31−1)の基部側に相対的に移動するストライカ部(41)と、
当該ストライカ部(41)と共に移動することにより第1キャッチャ(30−1)のフック部(31−1)を待機状態から姿勢変化させて第1被捕捉体(3−1)を捕捉した捕捉状態に導くガイド部(42)と、を有し、
第1ロック機構(60−1)は、
第1キャッチャ(30−1)のフック部(31−1)の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、第1キャッチャ(30−1)の保持を解除するように構成され、
第2キャッチャ(30−2)は、姿勢変化することによって第2被捕捉体(3−2)を捕捉するフック部(31−2)を有し、
第2キャッチャガイド(40−2)は、
第2キャッチャ(30−2)に搭載され、開閉体(1)の全開際に第2被捕捉体(3−2)に押されて第2キャッチャ(30−2)のフック部(31−2)の基部側に相対的に移動するストライカ部(41)と、
当該ストライカ部(41)と共に移動することにより第2キャッチャ(30−2)のフック部(31−2)を待機状態から姿勢変化させて第2被捕捉体(3−2)を捕捉した捕捉状態に導くガイド部と(42)、を有し、
第2ロック機構(60−2)は、
第2キャッチャ(30−2)のフック部(31−2)の待機状態から捕捉状態への状態変化に伴って、第2キャッチャ(30−2)の保持を解除するように構成され、
第1及び第2キャッチャガイド(40−1、40−2)のガイド部(42)が、それぞれ第1及び第2キャッチャ(30−1、30−2)のフック部(31−1、31−2)の先端部に作用してこれを待機状態から捕捉状態に導くことを特徴とする、開閉体閉止装置。
【請求項2】
前記ガイド部(42)には、ガイド孔(42a)が設けられ、
前記フック部(31−1、31−2)の先端部には、前記ガイド孔(42a)に係合しつつ案内されるガイド突起部(35)が設けられている、請求項1記載の開閉体閉止装置。
【請求項3】
第1、第2キャッチャガイド(40−1、40−2)をそれぞれ第1、第2キャッチャ(30−1、30−2)の基部側から先端側に常時付勢している弾性部材(44)を有する、請求項1又は2に記載の開閉体閉止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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